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特開2023-120514防護柵および継手プレートならびに防護柵の構築工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120514
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】防護柵および継手プレートならびに防護柵の構築工法
(51)【国際特許分類】
   E01F 15/04 20060101AFI20230823BHJP
【FI】
E01F15/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023443
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000192615
【氏名又は名称】日鉄神鋼建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174207
【弁理士】
【氏名又は名称】筬島 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 慶太
(72)【発明者】
【氏名】星 透
【テーマコード(参考)】
2D101
【Fターム(参考)】
2D101CA06
2D101DA00
2D101EA02
2D101FA13
2D101FA22
2D101FA27
2D101FB14
(57)【要約】
【課題】一定の強度を見込める木製のビーム材を用いることはもとより、ビーム材を仮置きして施工することができる、施工性、安全性に優れた防護柵および継手プレートならびに防護柵の構築工法を提供する。
【解決手段】支柱1と、支柱1間に架設されるビーム材2と、前記支柱1に取り付けられて前記ビーム材2を支持するブラケット3及び継手プレート4とを有する防護柵10であって、前記継手プレート4には、前記ビーム材2を受け支持するサポート部41が車道側Rに突き出して設けられている。前記ビーム材2は、クロス・ラミネーテッド・ティンバー(CLT、直交集成板)が好適に用いられる。前記継手プレート4は、前記ブラケット3に掛け留めるための掛け留め部が設けられている。前記サポート部41は、前記ビーム材2の段数に合わせた段数に設定されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱と、支柱間に架設されるビーム材と、前記支柱に取り付けられて前記ビーム材を支持するブラケット及び継手プレートとを有する防護柵であって、
前記継手プレートには、前記ビーム材を受け支持するサポート部が車道側に突き出して設けられていることを特徴とする、防護柵。
【請求項2】
前記ビーム材は、クロス・ラミネーテッド・ティンバー(CLT、直交集成板)、集成材、単板積層材(LVL)、又は合板によって構成されていることを特徴とする、請求項1に記載した防護柵。
【請求項3】
前記継手プレートは、前記ブラケットに掛け留めるための掛け留め部が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載した防護柵。
【請求項4】
前記サポート部の突き出し寸法は、前記ビーム材の幅寸の半分以上に設定されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載した防護柵。
【請求項5】
前記サポート部には凹部又は凸部が設けられ、前記ビーム材には前記凹部又は凸部に嵌まり合う凸部又は凹部が設けられていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載した防護柵。
【請求項6】
前記サポート部は、前記ビーム材の段数に合わせた段数に設定されていることを特徴とすることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載した防護柵。
【請求項7】
前記ブラケットと前記継手プレートとは、前記ビーム材の段数に合わせた段数に設定されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載した防護柵。
【請求項8】
支柱と、前記支柱間に架設されるビーム材と、前記支柱に取り付けられて前記ビーム材を支持するブラケット及び継手プレートとを有する防護柵の前記継手プレートであって、
前記ブラケットに重ね合わせて前記支柱に取り付けられる構成で、前記ビーム材を受け支持するサポート部が車道側に突き出して設けられていることを特徴とする、継手プレート。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載の防護柵を構築する工法であって、
前記継手プレートに設けたサポート部に前記ビーム材を仮置きしておき、しかる後、前記ビーム材と前記継手プレートとをボルト接合して一体化する工程を備えることを特徴とする、防護柵の構築工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、支柱と、前記支柱間に架設されるビーム材と、前記支柱に取り付けられて前記ビーム材を支持するブラケット及び継手プレートとを有する防護柵の技術分野に属し、更に言えば、前記ビーム材を木製とした防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
車道の側部に沿って設置されている防護柵について、資源の有効利用の一環として間伐材等を用いてなる木製ビームを有する防護柵の技術が開示され、実施されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0003】
前記特許文献1には、同文献1の図1等に示したように、車両通行域の路側部に所定間隔を置いて立設した複数の支柱2と、各支柱2の地上部前面で上下に所定間隔を置いて横架した複数の木材ビーム5、6とを備えて柵状に構成され、前記車両の接触ないし衝突を前面側から受け、前記車両の挙動を安全規準に適合させる木製防護柵1であって、少なくとも2本の木材ビーム5、6と、木材ビーム取付部を道路側に備えた複数のコンクリート製支柱地上部と、該支柱地上部の下面に設けられた剛性の脚体8と、地表近傍に埋設された開孔付の台座ブロック18と、台座ブロック18の開孔を通して地下に埋設され、上部に脚体8を収容するとともにモルタル23で固定する鋼管杭17とを備えたことを特徴とする木製防護柵1が開示されている(請求項1の記載等を参照)。
【0004】
前記特許文献2には、同文献2の図1等に示したように、道路1の路側に沿って立設された複数の支柱3の地上部内側に、前記支柱3の単位スパンに合わせて定めた長さの木製ビーム4、5を連続的に継ぎ合わせ横架して成る木製防護柵2であって、前記木製ビーム4、5の前記継ぎ合わせの位置を中心として、前記木製ビーム4、5の長さの9~27%長さを規定値とし、これより大きな長さで、かつ拡張力2トン以上のジョイントプレート11を水平方向に配置し、前記ジョイントプレート11の前記規定値に対応して前記木製ビーム4、5に明けた取付穴13を介して、前記ジョイントプレート11及び前記木製ビーム4、5相互を連結し、これらを前記支柱3に固定したことを特徴とする木製防護柵2が開示されている(請求項1の記載等を参照)。
【0005】
前記特許文献3には、同文献3の図1図2等に示したように、所定間隔を置いて立設される複数の支柱2と、隣接する該各支柱間2を架け渡してボルト接合される木製のビーム1とからなり、該ビーム1は、前記ビーム1の長さ方向Lに繊維方向が配された繊維方向単板10と、前記ビーム1の長さ方向に対して略直角方向に繊維方向が配された繊維直交単板11とを、積層面が略垂直方向Hになるよう積層状に重ね合わせてなり、前記繊維直交単板11が、前記繊維方向単板10で挟まれるように配されていることを特徴とする木製ガードレールが開示されている(請求項1の記載等を参照)。
【0006】
前記特許文献1~3に係る木製防護柵(木製ガードレール)によれば、共通して、ビーム材を木製で実施しているので、資源の有効利用の一環として間伐材等を用いることができ、地球環境性に優れた防護柵を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-322622号公報
【特許文献2】特開2004-27825号公報
【特許文献3】特開2006-37572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1、2に係る木製防護柵は、ビーム材に天然木材(丸太)を使用している(同文献1の段落[0034]、[0040]参照、同文献2の段落[0020]、[0046]参照)。前記天然木材は、低強度でばらつきが大きい材料であるため、ロングスパンに対応できないことはもとより、防護柵の強度を確保するにはより大きい丸太を用いる等、材料を分厚くする必要があった。そのため、木製防護柵の占有幅がどうしても厚くなり、道路幅員が狭くなる等、改善するべき課題があった。
また、防護柵を構築する際、形状的特性ゆえ、ビーム材を仮置き施工することができず、ボルトで支柱に固定するまではビーム材を吊り支持等する必要があり、安全性、施工性の点において改善するべき課題があった。
【0009】
上記特許文献3に係る木製防護柵は、木製ビーム材に工夫を施して強度を見込める集成材を用いるため、上記特許文献1、2と比し、ロングスパンを可能にしたり、木製防護柵の占有幅をある程度薄くしたりすることはできる。しかしながら、上記特許文献1、2と同様、ビーム材を仮置き施工することができず、安全性、施工性の課題は依然として残されている。
【0010】
したがって、本発明は、上述した背景技術の課題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、一定の強度を見込める木製のビーム材を用いることはもとより、ビーム材を仮置きして構築することができる、施工性、安全性に優れた防護柵および継手プレートならびに防護柵の構築工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る防護柵は、支柱と、支柱間に架設されるビーム材と、前記支柱に取り付けられて前記ビーム材を支持するブラケット及び継手プレートとを有する防護柵であって、
前記継手プレートには、前記ビーム材を受け支持するサポート部が車道側に突き出して設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載した防護柵は、請求項1に記載した防護柵において、前記ビーム材は、クロス・ラミネーテッド・ティンバー(CLT、直交集成板)、集成材、単板積層材(LVL)、又は合板によって構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載した防護柵は、請求項1又は2に記載した防護柵において、前記継手プレートは、前記ブラケットに掛け留めるための掛け留め部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載した防護柵は、請求項1~3のいずれか1項に防護柵において、前記サポート部の突き出し寸法は、前記ビーム材の幅寸の半分以上に設定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載した防護柵は、請求項1~4のいずれか1項に防護柵において、
前記サポート部には凹部又は凸部が設けられ、前記ビーム材には前記凹部又は凸部に嵌まり合う凸部又は凹部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載した防護柵は、請求項1~5のいずれか1項に防護柵において、前記サポート部は、前記ビーム材の段数に合わせた段数に設定されていることを特徴とすることを特徴とする。
請求項7に記載した防護柵は、請求項1~5のいずれか1項に防護柵において、前記ブラケットと前記継手プレートとは、前記ビーム材の段数に合わせた段数に設定されていることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載した発明に係る継手プレートは、支柱と、前記支柱間に架設されるビーム材と、前記支柱に取り付けられて前記ビーム材を支持するブラケット及び継手プレートとを有する防護柵の前記継手プレートであって、
前記ブラケットに重ね合わせて前記支柱に取り付けられる構成で、前記ビーム材を受け支持するサポート部が車道側に突き出して設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載した発明に係る防護柵の構築工法は、請求項1~6のいずれかに記載の防護柵を構築する工法であって、
前記継手プレートに設けたサポート部に前記ビーム材を仮置きしておき、しかる後、前記ビーム材と前記継手プレートとをボルト接合して一体化する工程を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る防護柵および継手プレートならびに防護柵の構築工法によれば、以下の効果を奏する。
一定の強度を見込める木製のビーム材を用いて実施する構成であるがゆえに、従来技術に係る天然木材のビーム材と比し、高強度で、且つばらつきが少ないので、ロングスパンにも対応することができる。よって、施工性、経済性、及び品質性に優れた防護柵および継手プレートならびに防護柵の構築工法を実現することができる。
また、継手プレートに形成したサポート部に前記ビーム材を安定した状態で仮置き施工することができるので、作業員が吊り支持等することなく楽な姿勢でスムーズに取り付け作業を行うことができる。よって、施工性、安全性に優れた防護柵および継手プレートならびに防護柵の構築工法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】Aは、本発明(実施例1)に係る防護柵を示した正面図であり、Bは、同平面図であり、Cは、同右側面図である。
図2図1Aの要部の拡大図である。
図3図1Bの要部の拡大図である。
図4図1Cの要部の拡大図である。
図5図3を分解して示した説明図である。
図6図4を分解して示した説明図である。
図7】Aは、図1に係る防護柵に用いるビーム材を示した正面図であり、Bは、同平面図であり、Cは、同右側面図である。
図8】Aは、図1に係る防護柵に用いるブラケットを示した正面図であり、Bは、同平面図である。
図9】Aは、図1に係る防護柵に用いる継手プレートを示した正面図であり、Bは、同平面図であり、Cは、同右側面図である。
図10】前記継手プレートのバリエーションを示した右側面図である。
図11】Aは、本発明(実施例2)に係る防護柵を示した正面図であり、Bは、同平面図であり、Cは、同右側面図である。
図12図11Aの要部の拡大図である。
図13図11Bの要部の拡大図である。
図14図11Cの要部の拡大図である。
図15図13を分解して示した説明図である。
図16図14を分解して示した説明図である。
図17】Aは、図11に係る防護柵に用いるビーム材を示した正面図であり、Bは、同平面図であり、Cは、同右側面図である。
図18】Aは、図11に係る防護柵に用いるブラケットを示した正面図であり、Bは、同平面図である。
図19】Aは、図11に係る防護柵に用いる継手プレートを示した正面図であり、Bは、同平面図であり、Cは、同右側面図である。
図20】前記継手プレートのバリエーションを示した右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る防護柵および継手プレートならびに防護柵の構築工法の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例0022】
本発明(実施例1)に係る防護柵10は、図1図9に示したように、支柱1と、前記支柱1間に架設されるビーム材2と、前記支柱1に取り付けられて前記ビーム材2を支持するブラケット3及び継手プレート4とを有し、前記継手プレート4には、前記ビーム材2を受け支持するサポート部41が車道側Rに突き出して設けられている。
【0023】
前記支柱1は、一例として、高さ寸法が2175mm程度の中空丸形鋼管(φ114.3×4.5mm)が用いられ、頂部に蓋材11が装着され、例えば車道の延長方向に2000mm程度の間隔をあけて複数本(図面では図示の便宜上3本)立設されている。
前記支柱1の材質、形態(形状、大きさ)、設置部位、設置本数、および設置間隔はもちろん前記に限定されず、構造設計に応じて適宜設計変更可能である。
また、前記支柱1は、一例として、下方部(高さ1400mm程度)を地面9に埋め込む手段により立設されている。必要に応じて、地面9に埋め込んだコンクリート基礎から立ち上がる構成で実施することもできる。
さらに、前記支柱1は、前記ブラケット3を取り付けるためのボルト通し孔(丸孔)12が車道延長方向と略直交する方向に設けられている。
上記構成の支柱1を必要な本数立設した後は、前記立設した支柱1の車道側Rに前記ブラケット3を取り付ける作業を行う。
【0024】
前記ビーム材2は、クロス・ラミネーテッド・ティンバー(CLT、直交集成板)、集成材、単板積層材(LVL)、又は合板によって構成されたものが好適に用いられる。本実施例では、一例として、クロス・ラミネーテッド・ティンバー(CLT、直交集成板)2が採用されている(以下、CLTという。)。前記CLTは、直交集成板の英語表記(Cross Laminated Timber)の略称で、ひき板(ラミナ)等を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料を指す。
前記CLTで形成されたビーム材2は、一例として、高さが350mm程度、幅が90mm程度、長さが1990mm程度の横長の直方体状に形成され、車道延長方向に沿って連続的に架設される。
前記ビーム材2を前記支柱1へ架設する手法は種々あるが、本実施例では、前記支柱1の車道側Rへ順に取り付けたブラケット3、継手プレート4を介して架設される。そのため、前記ビーム材2の両端部には、上下に、前記支柱1に取り付けられたブラケット3及び継手プレート4と共締めするためのボルト通し孔21が穿設されている。前記ボルト通し孔21は、本実施例では、図5図6が分かりやすいように、ボルト8の頭部まで収容可能な段付き状に形成されている。
前記ビーム材2の形態(形状、大きさ)はもちろん前記に限定されず、構造設計に応じて適宜設計変更可能である。例えば、本実施例では、背が高い(350mm程度)単体のビーム材2で実施しているがこれに限定されず、これよりも背が低いビーム材を2段、3段等、複数段タイプ(複数本を平行に配置する構成)で実施することもできる。前記複数段タイプで実施する場合、例えば図9Cに破線で示したように、継手プレート4から突き出すサポート部41の段数をこれに合わせた段数(同数)になるよう設定(増設)したり、又は、後述する実施例2(図11図19)に例示したように、前記ビーム材2’の段数(図示例では2段)に合わせた段数に設定するべく、背の低い前記ブラケット3’及び前記継手プレート4’を用いて実施する等の工夫は適宜行われるところである。
【0025】
前記ブラケット3は、図8が分かりやすいように、その横断面形状が、後フランジ部31と、前記後フランジ31の両端部から前方へ屈曲して延びる一対のウエブ部32と、前記ウエブ部32の前端部から外方へ屈曲して延びる一対の前フランジ部33とで均等断面の略ハット状に形成されている。
本実施例に係るブラケット3は、一例として、高さが270mm程度、幅が300mm程度で実施されている(図8A参照)。また、板厚が6mm程度、後フランジ部31の幅寸(内法寸法)が100mm程度、一対のウエブ部32の長さがそれぞれ35mm程度、一対の前フランジ部33の幅寸がそれぞれ100mm程度で実施されている(図8B参照)。
前記後フランジ31には、その中央部に、前記支柱1へ取り付けるためのボルト通し孔31aが1つ穿設されている。前記ボルト通し孔31aは、横方向に長いルーズ孔(22×50mm)に形成されている。また、前記左右の前フランジ部33にはそれぞれ、前記ビーム材2を取り付けて支持するためのボルト通し孔33aが上下左右の四隅部に計4箇所穿設されている。前記ボルト通し孔33aは、横方向に長いルーズ孔(24×40mm)に形成されている。
そして、前記支柱1に固定するブラケット3の略中央部で左右に隣り合うビーム材2の端部同士を突き合わせるように配置し、もって、左右に2箇所ずつ設けたボルト通し孔33aが、左右に隣り合うビーム材2にそれぞれ対応する構成で実施される。
【0026】
前記継手プレート4は、正面方向から見て矩形状で、上端部に、前記ブラケット3に上方から掛け留めるための掛け留め部(フック)42が設けられ、下端部に、前記ビーム材2を受け支持するためのサポート部41が車道側Rに突き出して設けられている。
この継手プレート4を設ける意義は、この継手プレート4を介して各ビーム材2を強固に一体化することにより良好な車両誘導性を実現し、衝突車両が急停止することを未然に防止するためである。
本実施例に係る継手プレート4は、一例として、高さが前記ブラケット3よりも長い311mm程度、幅が前記ブラケット3と同じ300mm程度、前記サポート部41の突き出し寸法が84mm程度、厚さが4mm程度の均等断面形状で実施されている。
ちなみに、継手プレート4の矩形状の本体には、その中央部に、前記ブラケット3のルーズ31aと芯が略一致する部位に、横方向に長いルーズ孔4b(24×80mm)が1つ穿設されており、また、上下左右の四隅部に、前記ブラケット3のルーズ孔33aとそれぞれ芯が略一致する部位に、横方向に長いルーズ孔4a(24×30mm)が穿設されている。
なお、前記継手プレート4の中央部に設けたルーズ孔4bは、ブラケット3に継手プレート4を取り付けた後でもブラケット3を支柱に固定するためのボルト7の頭部をスパナで押さえることができるように形成されたものであり、ボルト7・ナット17の本締めを継手プレート4を取り付けた後に行うことができ、また、メンテナンス時に利用することができる。
前記掛け留め部42は、本実施例では左右の端部にバランスよく2箇所設けて実施しているがこれに限定されず、前記ブラケット3に安定的に掛け留め可能な構成であれば適宜設計変更可能である。
前記サポート部41は、本実施例では前記継手プレート4の下端部から車道側Rに略水平に(本実施例では折り曲げ成形して)突き出す構成で実施しているがこれに限定されず、前記ビーム材2を安定的に受け支持可能な構成であれば適宜設計変更可能である。例えば、前記ビーム材2の下端部を丸みを帯びた半円形断面で実施する場合や、ビーム材2そのものを円形断面で実施する場合に、前記継手プレート4を、図10に示したような、J字形状に形成したサポート部43を有する継手プレート14で実施する等の工夫は適宜行われるところである。
もっとも、本実施例のように、前記サポート部41を略水平に突き出した形状で実施する場合、突き出し寸法(本実施例では前記84mm程度)は、前記ビーム材2の幅寸(本実施例では前記90mm程度)の半分以上に設定することが好ましい。
【0027】
次に、上記構成の支柱1、ビーム材2、ブラケット3、及び継手プレート4を用いて防護柵10を構築する工法について説明する。
【0028】
本実施例に係る防護柵10は、先ず、道路脇等に設置する設置領域から導き出した設置間隔(本実施例では一例として2000mm程度)、設置本数にしたがい、蓋材11を装着した前記支柱1を所定の地面9に設置する。前記支柱1は、本実施例では、前記2175mm程度の高さのうち、下端部の1400mm程度を地面9に建て込み、地上に775mm程度突き出した状態で立設する。
【0029】
次に、前記立設した支柱1の車道側Rに前記ブラケット3の後フランジ部31を当てがい、支柱1のボルト通し孔12と後フランジ部31のボルト通し孔31aとの芯を一致させる等の位置合わせを行う。前記位置合わせを行った前記ボルト通し孔12、31aに頭付きボルト7を車道側Rから貫通させてナット17で締結し、もって、前記支柱1の車道側Rにブラケット3を取り付ける。
【0030】
次に、前記ブラケット3の上端部に前記継手プレート4の掛け留め部42を引っ掛けて掛け留めると共に、前記ブラケット3の前フランジ33の4つのボルト通し孔33aと、前記継手プレート4の4つのボルト通し孔4aとの芯を一致させる等の位置合わせを行う。
【0031】
次に、前記ブラケット3に前記継手プレート4を掛け留めた状態のまま、前記継手プレート4のサポート部41の略中央部で左右に隣り合うビーム材2の端部同士を突き合わせた状態で仮置きする。そして仮置きした状態のまま、前記ボルト通し孔33a、4aと、前記左右に隣り合うビーム材2のそれぞれの対応するボルト通し孔21との芯を一致させる等の位置合わせを行う。位置合わせを行う作業員は、ビーム材2を支持等する必要がないので楽な姿勢でスムーズな位置合わせ作業を行うことができる。
しかる後、前記位置合わせを行った計4箇所の前記ボルト通し孔33a、4a、及び21に頭付きボルト8を車道側Rから貫通させてナット18で締結し、前記支柱1の車道側Rに取り付けたブラケット3に、さらに継手プレート4とビーム材2とを取り付けて一体化する作業を行う。前記頭付きボルト8を通すボルト通し孔21は、前記ボルト8の頭部が収まる段付き状に形成されているので、前記ボルト8(の頭部)がビーム材2の表面から突出することがない。この作業を支柱1(ブラケット3)の数量に応じて繰り返し行い、もって、車道延長方向に沿う防護柵10を構築する。
【0032】
なお、本実施例では、前記左右に隣り合う2本のビーム材2を同時期に取り付けているが勿論これに限定されず、いずれか一方のビーム材2毎に順に取り付ける手法で実施することもできる。
【実施例0033】
図11図19は、実施例2に係る防護柵および継手プレートならびに防護柵の構築工法を示している。
この実施例2は、上記実施例1と比し、上記ビーム材2を背の低い上下2段構成のビーム材2’で実施し、これに伴い上記ブラケット3と上記継手プレート4とを、前記ビーム材2’の形態(段数)に合わせた背の低い上下2段構成のブラケット3’と継手プレート4’で実施している点が主に相違する。
【0034】
すなわち、実施例2に係る防護柵10’は、図11図19に示したように、支柱1’と、前記支柱1’間に架設される上下2段構成をなす2本のビーム材2’と、前記支柱1’に取り付けられて前記ビーム材2’を支持する一対のブラケット3’及び一対の継手プレート4’とを有し、前記一対の継手プレート4’にはそれぞれ、前記ビーム材2’を受け支持するサポート部41’が車道側Rに突き出して設けられている。
【0035】
前記支柱1’は、一例として、高さ寸法が2175mm程度の中空丸形鋼管(φ114.3×4.5mm)が用いられ、頂部に蓋材11’が装着され、例えば車道の延長方向に2000mm程度の間隔をあけて複数本(図面では図示の便宜上3本)立設されている。
前記支柱1’の材質、形態(形状、大きさ)、設置部位、設置本数、および設置間隔はもちろん前記に限定されず、構造設計に応じて適宜設計変更可能である。
また、前記支柱1’は、一例として、下方部(高さ1400mm程度)を地面9に埋め込む手段により立設されている。必要に応じて、地面9に埋め込んだコンクリート基礎から立ち上がる構成で実施することもできる。
さらに、前記支柱1’は、前記一対のブラケット3’を取り付けるためのボルト通し孔(丸孔)12’が車道延長方向と略直交する方向に上下に2箇所設けられている。
上記構成の支柱1’を必要な本数立設した後は、前記立設した支柱1’の車道側Rに前記ブラケット3’を取り付ける作業を行う。
【0036】
前記ビーム材2’は、クロス・ラミネーテッド・ティンバー(CLT、直交集成板)、集成材、単板積層材(LVL)、又は合板によって構成されたものが好適に用いられる。本実施例では、一例として、上記実施例1と同様に、クロス・ラミネーテッド・ティンバー(CLT、直交集成板)2’が採用されている(以下、CLTという。)。
前記CLTで形成されたビーム材2’は、一例として、高さが150mm程度、幅が90mm程度、長さが1990mm程度の横長の直方体状に形成され、車道延長方向に沿って連続的に架設される。
前記ビーム材2’を前記支柱1’へ架設する手法は種々あるが、本実施例では、前記支柱1’の車道側Rへ順に取り付けたブラケット3’、継手プレート4’を介して架設される。そのため、前記ビーム材2’の両端部には、前記支柱1’に取り付けられたブラケット3’及び継手プレート4’と共締めするためのボルト通し孔21’が穿設されている。前記ボルト通し孔21’は、本実施例では、図15図16が分かりやすいように、ボルト8’の頭部まで収容可能な段付き状に形成されている。
前記ビーム材2’の形態(形状、大きさ)はもちろん前記に限定されず、構造設計に応じて適宜設計変更可能である。
【0037】
前記ブラケット3’は、図18が分かりやすいように、その横断面形状が、後フランジ部31’と、前記後フランジ31’の両端部から前方へ屈曲して延びる一対のウエブ部32’と、前記ウエブ部32’の前端部から外方へ屈曲して延びる一対の前フランジ部33’とで均等断面の略ハット状に形成されている。
本実施例に係るブラケット3’は、一例として、高さが70mm程度、幅が300mm程度で実施されている(図18A参照)。また、板厚が4.5mm程度、後フランジ部31’の幅寸(内法寸法)が100mm程度、一対のウエブ部32’の長さがそれぞれ31mm程度、一対の前フランジ部33’の幅寸がそれぞれ100mm程度で実施されている(図8B参照)。
前記後フランジ31’には、その中央部に、前記支柱1’へ取り付けるためのボルト通し孔31a’が1つ穿設されている。前記ボルト通し孔31a’は、横方向に長いルーズ孔(22×50mm)に形成されている。また、前記左右の前フランジ部33’にはそれぞれ、前記ビーム材2’を取り付けて支持するためのボルト通し孔33a’が穿設されている。前記ボルト通し孔33a’は、横方向に長いルーズ孔(22×28mm)に形成されている。
そして、前記支柱1’に固定するブラケット3’の略中央部で左右に隣り合うビーム材2’の端部同士を突き合わせるように配置し、もって、左右に設けたボルト通し孔33a’が、左右に隣り合うビーム材2’にそれぞれ対応する構成で実施される。
【0038】
前記継手プレート4’は、正面方向から見て横長の矩形状で、上端部に、前記ブラケット3’に上方から掛け留めるための掛け留め部(フック)42’が設けられ、下端部に、前記ビーム材2’を受け支持するためのサポート部41’が車道側Rに突き出して設けられている。
この継手プレート4’を設ける意義は、この継手プレート4’を介して各ビーム材2’を強固に一体化することにより良好な車両誘導性を実現し、衝突車両が急停止することを未然に防止するためである。
本実施例に係る継手プレート4’は、一例として、高さが前記ブラケット3’よりも長い111mm程度、幅が前記ブラケット3’と同じ300mm程度、前記サポート部41’の突き出し寸法が84mm程度、厚さが4mm程度の均等断面形状で実施されている。
ちなみに、継手プレート4’の矩形状の本体には、左右の上方隅部に、前記ブラケット3’のルーズ孔33a’とそれぞれ芯が略一致する部位に、横方向に長いルーズ孔4a’(24×30mm)が穿設されている。
前記掛け留め部42’は、本実施例では左右の端部にバランスよく2箇所設けて実施しているがこれに限定されず、前記ブラケット3’に安定的に掛け留め可能な構成であれば適宜設計変更可能である。
前記サポート部41’は、本実施例では前記継手プレート4’の下端部から車道側Rに略水平に(本実施例では折り曲げ成形して)突き出す構成で実施しているがこれに限定されず、前記ビーム材2’を安定的に受け支持可能な構成であれば適宜設計変更可能である。例えば、前記ビーム材2’の下端部を丸みを帯びた半円形断面で実施する場合や、ビーム材2’そのものを円形断面で実施する場合に、前記継手プレート4’を、図20に示したような、J字形状に形成したサポート部43’を有する継手プレート14’で実施する等の工夫は適宜行われるところである。
もっとも、本実施例のように、前記サポート部41’を略水平に突き出した形状で実施する場合、突き出し寸法(本実施例では前記84mm程度)は、前記ビーム材2’の幅寸(本実施例では前記90mm程度)の半分以上に設定することが好ましい。
【0039】
次に、上記構成の支柱1’、ビーム材2’、ブラケット3’、及び継手プレート4’を用いて防護柵10’を構築する工法について説明する。
【0040】
本実施例に係る防護柵10’は、先ず、道路脇等に設置する設置領域から導き出した設置間隔(本実施例では一例として2000mm程度)、設置本数にしたがい、蓋材11’を装着した前記支柱1’を所定の地面9に設置する。前記支柱1’は、本実施例2では、上記実施例1と同様に、前記2175mm程度の高さのうち、下端部の1400mm程度を地面9に建て込み、地上に775mm程度突き出した状態で立設する。
【0041】
次に、前記立設した支柱1’の車道側Rに前記ブラケット3’の後フランジ部31’を当てがい、支柱1’のボルト通し孔12’と後フランジ部31’のボルト通し孔31a’との芯を一致させる等の位置合わせを行う。前記位置合わせを行った前記ボルト通し孔12’、31a’に頭付きボルト7’を車道側Rから貫通させてナット17’で締結し、もって、前記支柱1’の車道側Rに一対のブラケット3’を上下2段構成をなすよう取り付ける。
【0042】
次に、前記一対のブラケット3’の上端部に前記一対の継手プレート4’の掛け留め部42’をそれぞれ引っ掛けて掛け留めると共に、前記ブラケット3’の前フランジ33’の左右2つのボルト通し孔33a’と、前記継手プレート4’の左右2つのボルト通し孔4a’との芯を一致させる等の位置合わせを行う。
【0043】
次に、前記一対のブラケット3’に前記一対の継手プレート4’をそれぞれ掛け留めた状態のまま、前記継手プレート4’のサポート部41’の略中央部で左右に隣り合うビーム材2’の端部同士を突き合わせた状態で仮置きする。そして仮置きした状態のまま、前記ボルト通し孔33a’、4a’と、前記左右に隣り合うビーム材2’のそれぞれの対応するボルト通し孔21との芯を一致させる等の位置合わせを行う。位置合わせを行う作業員は、ビーム材2’を支持等する必要がないので楽な姿勢でスムーズな位置合わせ作業を行うことができる。
しかる後、前記位置合わせを行った前記ボルト通し孔33a’、4a’、及び21’に頭付きボルト8’を車道側Rから貫通させてナット18’で締結し、前記支柱1’の車道側Rに取り付けたブラケット3’に、さらに継手プレート4’とビーム材2’とを取り付けて一体化する作業を行う。前記頭付きボルト8’を通すボルト通し孔21’は、前記ボルト8’の頭部が収まる段付き状に形成されているので、前記ボルト8’(の頭部)がビーム材2’の表面から突出することがない。この作業を支柱1’(ブラケット3’)の数量に応じて繰り返し行い、もって、車道延長方向に沿う防護柵10’を構築する。
【0044】
なお、本実施例でも、前記左右に隣り合う2本のビーム材2’を同時期に取り付けているが勿論これに限定されず、いずれか一方のビーム材2’毎に順に取り付ける手法で実施することもできる。
【0045】
以上、実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
例えば、図示は省略するが、前記継手プレート4(又は4’)のサポート部41(又は41’)に凹部又は凸部を設け、前記ビーム材2’の両端部(或いは、一端部又は中央部等)に、前記凹部又は凸部に嵌まり合う凸部又は凹部を設けることにより、前記サポート部41(又は41’)上に仮置きするビーム材2(又は2’)の位置決め機能、滑落防止機能を高める構成で実施することもできる。
【符号の説明】
【0046】
1 支柱
11 蓋材
12 ボルト通し孔
2 ビーム材
21 ボルト通し孔
3 ブラケット
31 後フランジ
31a ボルト通し孔
32 ウエブ
33 前フランジ
33a ボルト通し孔
4 継手プレート
4a ボルト通し孔
4b 貫通孔
41 サポート部
43 サポート部
42 掛け留め部(フック)
7 ボルト
8 ボルト
9 地面(地盤)
10 防護柵
14 継手プレート
17 ナット
18 ナット
R 車道側
1’ 支柱
11’ 蓋材
12’ ボルト通し孔
2’ ビーム材
21’ ボルト通し孔
3’ ブラケット
31’ 後フランジ
31a’ボルト通し孔
32’ ウエブ
33’ 前フランジ
33a’ボルト通し孔
4’ 継手プレート
4a’ ボルト通し孔
4b’ 貫通孔
41’ サポート部
43’ サポート部
42’ 掛け留め部(フック)
7’ ボルト
8’ ボルト
10’ 防護柵
14’ 継手プレート
17’ ナット
18’ ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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図13
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図16
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図18
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図20