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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120941
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】法面用ブロック及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/02 20060101AFI20230823BHJP
【FI】
E02D29/02 303
E02D29/02 311
E02D29/02 312
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024098
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】391039106
【氏名又は名称】岩手ハネダコンクリート株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093148
【弁理士】
【氏名又は名称】丸岡 裕作
(72)【発明者】
【氏名】菊池 優治
【テーマコード(参考)】
2D048
【Fターム(参考)】
2D048AA24
2D048BA02
2D048CA02
(57)【要約】
【課題】 緑化を目的として用いる場合の壁面の外観品質の向上を図るとともに、壁面の緑化を目的とせずに用いる場合の施工性の向上及び排水性の向上を図る。
【解決手段】
溝Gにより区画された擬石状の凸部2を備えた前壁1と後壁3とをこの間に空間Eを形成して連結壁4で連結し、前壁1と後壁3との間の空間Eを形成し、前壁1に前側排水口10を形成し、後壁3に後側排水口11を形成し、前側排水口10及び後側排水口11を、夫々、法面を覆った際、法面側の水を前壁1の外側に排出するための排水パイプHPが挿通可能な柱状の孔で形成するとともに、後壁3から前壁1に向かって前下がりになる軸線Q上に形成し、前側排水口10の外側開口10aを、ハンマーで叩打して取り外し可能な蓋20で塞ぎ、この蓋20の表面側を、溝Gにより区画された擬石状に形成した。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に溝により区画された擬石状の複数の凸部を備えた前壁と、該前壁に対して所定間隔離間して設けられる後壁と、上記前壁及び後壁を連結するとともに該前壁及び後壁間に空間を形成する連結壁とを一体に備え、複数がこれらの前壁が連続するように段積されて法面を覆うコンクリート製の法面用ブロックであって、
上記前壁の上面及び/または下面に、上記前壁の上面と該上面に段積された他の法面保護用ブロックの前壁の下面との間に植物が生えてくることができる隙間を形成する凹部を形成し、
上記前壁に、上記空間に連通する前側排水口を形成し、上記後壁に、上記空間に連通する後側排水口を形成した法面用ブロックにおいて、
上記前側排水口及び後側排水口を、夫々、上記法面を覆った際、該法面側の水を上記前壁の外側に排出するための排水パイプが挿通可能な柱状の孔で形成するとともに、上記後壁から前壁に向かって前下がりになる軸線上に形成し、上記前側排水口の外側開口を、ハンマーで叩打して取り外し可能な蓋で塞ぎ、該蓋の表面側を、溝により区画された擬石状に形成したことを特徴とする法面用ブロック。
【請求項2】
上記蓋を囲繞するように上記凸部を複数形成し、該蓋を区画する溝を、該蓋に隣接する凸部を形成する溝と共用するようにしたことを特徴とする請求項1記載の法面用ブロック。
【請求項3】
上記蓋を、表面側部と基端部とを備えて構成し、上記蓋の基端部の形状及び大きさを、上記前側排水口の外側開口内縁部の形状及び大きさと同じに形成し、該蓋の基端部を上記前側排水口の外側開口内縁部に一体に連設し、該基端部の厚さをTとしたとき、T=5mm~15mmに設定し、上記蓋の表面側部を上記前側排水口を通過可能な大きさに形成したことを特徴とする請求項2記載の法面用ブロック。
【請求項4】
上記前側排水口を、その外側開口よりも内側開口の方が大きい錐台状に形成し、上記後側排水口を、その内側開口よりも外側開口の方が大きい錐台状に形成したことを特徴とする請求項3記載の法面用ブロック。
【請求項5】
上記前壁の下面及び後壁の下面を基準平面上に形成し、上記前壁の上面及び後壁の上面を上記基準平面に平行な平行平面上に形成し、上記前壁の横幅及び後壁の横幅を同じに設定して、上記前壁及び後壁を正面から見て互いに重なる矩形状に形成し、上記連結壁を上から見て前後方向中心線に対して互いに所定間隔で離間し且つ対称位置に位置するように一対設け、各連結壁の上端に平行平面から上に突出する凸条部を設け、各連結壁の下端に基準平面より凹み上記凸条部が係合する凹条部を設け、上記前側排水口及び後側排水口を、その軸線が上から見て上記中心線に重なるように形成し、上記凹部を、上記前壁の上面中央に形成するとともに該前壁の両側に対称に形成し、該凹部の上記前壁の上面からの深さをDとしたとき、D=10mm~30mmに設定したことを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の法面用ブロック。
【請求項6】
上記請求項1乃至5何れかに記載の法面用ブロックを複数用い、これらの法面用ブロックを段積して法面を被覆する法面用ブロックの施工方法であって、
上記前壁側の隙間から植物が生えてくるように施工するときは、上記蓋はそのままにして必要数の法面用ブロックを段積し、上記空間に植物が育成可能な中詰め材を充填し、
上記前壁側の隙間から植物が生えてこないように施工するときは、必要な法面用ブロックの上記蓋をハンマーで叩打して取り外し、該蓋を取り除いた法面用ブロックにおいては、これらの前側排水口及び後側排水口に排水パイプを挿通し、該前側排水口及び後側排水口に充填材を入れて該排水パイプを固定し、該排水パイプを固定した法面用ブロックを含む必要数の法面用ブロックを段積し、上記空間にコンクリートを充填することを特徴とする法面用ブロックの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川や道路等の法面を被覆するとともに壁面を緑化することができる法面用ブロック及びその施工方法に係り、特に、壁面の緑化が必要ない場合にも対応することができる法面用ブロック及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁面を緑化することができる法面用ブロックとしては、例えば、特許第4139723号公報(特許文献1)に記載されたタイプのものが知られている。これは、表面を擬石状に成形した前壁と、前壁に対して所定間隔離間して設けられる後壁と、前壁及び後壁を連結するとともに前壁及び後壁間に空間を形成する連結壁とを一体に備えて構成され、複数がこれらの前壁が連続するように段積されて法面を覆う。前壁の上面には、上に段積された他の法面保護用ブロックの前壁の下面との間に植物が生えてくることができる隙間を形成する凹部が形成されている。また、前壁には空間に連通する小孔の前側排水口が形成され、後壁には空間に連通する矩形状の後側排水口が形成されているとともに、連結壁にも横側排水口が形成されている。
【0003】
そして、この法面用ブロックを用いて法面を被覆する際は、必要数の法面用ブロックを段積し、空間に植物が育成可能な砕石や土砂等の中詰め材を充填する。これにより、区画された空間の中詰め材には、法面側から後側排水口を通して供給される水が、上下方向及び左右方向に流通するので、植物が前壁の隙間から生えてくることから、壁面の緑化を図ることができる。
【0004】
ところで、この法面用ブロックで被覆する法面においては、必ずしも壁面の緑化を必要としない場合もある。この場合には、必要数の法面用ブロックを段積した後、区画された空間にコンクリートを充填する。これにより、前壁の隙間から植物が生えてくることが阻止される。しかも、このタイプの法面用ブロックは、前壁と後壁が所定間隔隔てて在るので厚さが厚く、更には、前壁と後壁間にはコンクリートが充填されるので、強度が高くなり、法面を極めて強固に保護することができるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4139723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の法面用ブロックにおいては、壁面の緑化を目的として用いる場合には、前壁の表面に、前側排水口が露出するので、その分、外観品質を低下させるという問題がある。特に、表面側を擬石状に形成した場合には、見栄えの悪さが顕著になる。一方、壁面の緑化を目的とせずに、空間にコンクリートを充填して用いる場合には、後側排水口及び前側排水口が塞がれてしまうので、法面側に生じる水の排水が不十分になるという問題がある。これを解決するために、法面から壁面まで排水路を形成することが考えられるが、前側排水口は小孔になっており、後側排水口は矩形状なので、これらを利用するとしても、施工性が極めて悪くなる。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、緑化を目的として用いる場合の壁面の外観品質の向上を図るとともに、壁面の緑化を目的とせずに用いる場合の施工性の向上及び排水性の向上を図った法面用ブロック及びその施工方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するための本発明の法面用ブロックは、表面側に溝により区画された擬石状の複数の凸部を備えた前壁と、該前壁に対して所定間隔離間して設けられる後壁と、上記前壁及び後壁を連結するとともに該前壁及び後壁間に空間を形成する連結壁とを一体に備え、複数がこれらの前壁が連続するように段積されて法面を覆うコンクリート製の法面用ブロックであって、
上記前壁の上面及び/または下面に、上記前壁の上面と該上面に段積された他の法面保護用ブロックの前壁の下面との間に植物が生えてくることができる隙間を形成する凹部を形成し、
上記前壁に、上記空間に連通する前側排水口を形成し、上記後壁に、上記空間に連通する後側排水口を形成した法面用ブロックにおいて、
上記前側排水口及び後側排水口を、夫々、上記法面を覆った際、該法面側の水を上記前壁の外側に排出するための排水パイプが挿通可能な柱状の孔で形成するとともに、上記後壁から前壁に向かって前下がりになる軸線上に形成し、上記前側排水口の外側開口を、ハンマーで叩打して取り外し可能な蓋で塞ぎ、該蓋の表面側を、溝により区画された擬石状に形成した構成としている。
【0009】
これにより、前壁側の隙間から植物が生えてくるように施工するときは、前壁の蓋はそのままにして必要数の法面用ブロックを段積し、空間に植物が育成可能な砕石や土砂等の中詰め材を充填する。法面用ブロックが構築された状態では、法面用ブロックによって区画された空間の中詰め材には、法面側から後側排水口を通して供給される水が流通するので、植物が前壁の隙間から生えてくることから、壁面の緑化を図ることができる。余分な水は前壁の隙間から排出される。この場合、前壁の蓋はそのままになっており、蓋の表面側は、溝により区画された擬石状に形成されているので、即ち、前壁の表面全部が擬石状になるので、前側排水口として視認されにくくなり、擬石状の複数の凸部と相まって、見栄えが良くなり、外観品質を向上させることができる。
【0010】
一方、前壁側の隙間から植物が生えてこないように施工するときは、必要な法面用ブロックの蓋をハンマーで叩打して取り外す。これにより、前側排水口が開放される。次に、蓋を取り除いた法面用ブロックにおいては、これらの前側排水口及び後側排水口に排水パイプを挿通し、前側排水口及び後側排水口にモルタル等の充填材を入れて排水パイプを固定する。この場合、前側排水口及び後側排水口は、後壁から前壁に向かって前下がりになる軸線上に形成されているので、排水パイプをこれらに引き通して装着し易くなり、それだけ施工性を向上させることができる。そして、排水パイプを固定した法面用ブロックを含む必要数の法面用ブロックを段積し、その後、空間にコンクリートを充填する。
【0011】
法面用ブロックが構築された状態では、空間にコンクリートが充填されたので、前壁の隙間が塞がれることから、この隙間から植物が生えてくることが阻止される。しかも、この法面用ブロックにおいては、前壁と後壁が所定間隔隔てて在るので厚さが厚く、更には、前壁と後壁間にはコンクリートが充填されるので、強度が高くなり、法面を極めて強固に保護することができる。また、法面側に生じる水は、排水パイプを通って排水することができるとともに、排水パイプは、後壁から前壁に向かって前下がりになるので、排水が円滑に行われることから、排水性を向上させることができる。
【0012】
そして、必要に応じ、上記蓋を囲繞するように上記凸部を複数形成し、該蓋を区画する溝を、該蓋に隣接する凸部を形成する溝と共用するようにした構成としている。このため、蓋が凸部の中に形成される場合に比較して、凸部及び蓋は、夫々、独立した擬石に視認できることから、それだけ、外観品質を向上させることができる。また、蓋を取外した場合においても、前側排水口が見えるが、その開口が擬石状の凸部の表面に開けられたようには見えず、周囲の凸部が擬石状に独立して見えるので、前側排水口やこれに臨む排水パイプの開口が目立たなくなり、この点でも外管品質を向上させることができる。
【0013】
また、必要に応じ、上記蓋を、表面側部と基端部とを備えて構成し、上記蓋の基端部の形状及び大きさを、上記前側排水口の外側開口内縁部の形状及び大きさと同じに形成し、該蓋の基端部を上記前側排水口の外側開口内縁部に一体に連設し、該基端部の厚さをTとしたとき、T=5mm~15mmに設定し、上記蓋の表面側部を上記前側排水口を通過可能な大きさに形成した構成としている。基端部の厚さTは、望ましくは、T=10±2mmである。
【0014】
これにより、蓋をハンマーで叩打すると、前側排水口の外側開口内縁部と基端部との連設部にひびが入って、この部位から蓋が分離する。この場合、基端部の厚さTを、T=5mm~15mmに設定したので、ひびが入って分離し易くなり、それだけ、作業性を向上させることができる。また、蓋の表面側部は前側排水口を通過可能な大きさに形成されているので、分離した蓋を、前側排水口を通ってその内側開口から落下させることができる。そのため、蓋の取り外しを極めて容易且つ確実に行うことができ、それだけ、作業性が良くなり、施工性を向上させることができる。
【0015】
更に、必要に応じ、上記前側排水口を、その外側開口よりも内側開口の方が大きい錐台状に形成し、上記後側排水口を、その内側開口よりも外側開口の方が大きい錐台状に形成した構成としている。これにより、前側排水口においては、ハンマーで叩打して分離した蓋は、外側開口からこれよりも大きい内側開口に向かって移動するので、この内側開口から容易に落下させやすくなり、この点でも、作業性を向上させることができる。また、排水パイプを装着するときは、後側排水口から挿入し、それから前側排水口に挿入してこれから突出させるようにすればよい。この場合、排水パイプの先端は、後側排水口においては、内側開口よりも大きい外側開口から挿入され、前側排水口においては、外側開口よりも大きい内側開口から挿入されることになるので、排水パイプの挿入を極めて容易に行うことができ、この点でも、作業性が良くなり、施工性を向上させることができる。
【0016】
更にまた、必要に応じ、上記前壁の下面及び後壁の下面を基準平面上に形成し、上記前壁の上面及び後壁の上面を上記基準平面に平行な平行平面上に形成し、上記前壁の横幅及び後壁の横幅を同じに設定して、上記前壁及び後壁を正面から見て互いに重なる矩形状に形成し、上記連結壁を上から見て前後方向中心線に対して互いに所定間隔で離間し且つ対称位置に位置するように一対設け、各連結壁の上端に平行平面から上に突出する凸条部を設け、各連結壁の下端に基準平面より凹み上記凸条部が係合する凹条部を設け、上記前側排水口及び後側排水口を、その軸線が上から見て上記中心線に重なるように形成し、上記凹部を、上記前壁の上面中央に形成するとともに該前壁の両側に対称に形成し、該凹部の上記前壁の上面からの深さをDとしたとき、D=10mm~30mmに設定した構成としている。
【0017】
これにより、全体が中心線を中心にして略対称に形成され、前側排水口及び後側排水口も幅方向中央に位置させることができることから、極めてバランスが良く、この点でも外管品質を向上させることができる。また、凹部の深さDを、D=10mm~30mmに設定したので、植物の育成を確保しつつ、空間をコンクリートで充填したときに、隙間からコンクリートが漏れにくくなり、それだけ、施工性を向上させることができる。
【0018】
また、上記目的を達成するため、本発明の法面用ブロックの施工方法は、上記の法面用ブロックを複数用い、これらの法面用ブロックを段積して法面を被覆する法面用ブロックの施工方法であって、
上記前壁側の隙間から植物が生えてくるように施工するときは、上記蓋はそのままにして必要数の法面用ブロックを段積し、上記空間に植物が育成可能な中詰め材を充填し、
上記前壁側の隙間から植物が生えてこないように施工するときは、必要な法面用ブロックの上記蓋をハンマーで叩打して取り外し、該蓋を取り除いた法面用ブロックにおいては、これらの前側排水口及び後側排水口に排水パイプを挿通し、該前側排水口及び後側排水口に充填材を入れて該排水パイプを固定し、該排水パイプを固定した法面用ブロックを含む必要数の法面用ブロックを段積し、上記空間にコンクリートを充填する構成としている。上記と同様の作用,効果を奏する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、前壁側の隙間から植物が生えてくるように施工するときは、前壁の蓋はそのままにしておくが、蓋の表面側は、溝により区画された擬石状に形成されているので、即ち、前壁の表面全部が擬石状になるので、前側排水口として視認されにくくなり、擬石状の複数の凸部と相まって、見栄えが良くなり、外観品質を向上させることができる。一方、前壁側の隙間から植物が生えてこないように施工するときは、必要な法面用ブロックの蓋をハンマーで叩打して取り外し、これらの前側排水口及び後側排水口に排水パイプを挿通して固定するが、この場合、前側排水口及び後側排水口は、後壁から前壁に向かって前下がりになる軸線上に形成されているので、排水パイプをこれらに引き通して装着し易くなり、それだけ施工性を向上させることができる。
【0020】
また、排水パイプを固定した法面用ブロックを含む必要数の法面用ブロックを段積し、その後、空間にコンクリートを充填した状態では、隙間から植物が生えてくることを阻止することができるとともに、この法面用ブロックにおいては、前壁と後壁が所定間隔隔てて在るので厚さが厚く、更には、前壁と後壁間にはコンクリートが充填されるので、強度が高くなり、法面を極めて強固に保護することができる。また、法面側に生じる水は、排水パイプを通って排水することができるとともに、排水パイプは、後壁から前壁に向かって前下がりになるので、排水が円滑に行われるので、排水性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係る法面用ブロックを示す正面側から見た斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る法面用ブロックを示す側面側から見た斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係る法面用ブロックを示す側面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る法面用ブロックにおいて、蓋を取外して排水パイプを装着した状態を示す側面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る法面用ブロックにおいて、蓋のある部位を示す正面要部図である。
図6】本発明の実施の形態に係る法面用ブロックにおいて、蓋のある部位を示す側面要部断面図である。
図7】本発明の実施の形態に係る法面用ブロックにおいて、蓋を取外すときの状態を示す側面要部断面図である。
図8】本発明の実施の形態に係る法面用ブロックを、蓋をそのままにして施工した状態を示す側面断面図である。
図9】本発明の実施の形態に係る法面用ブロックを、蓋を取外し排水パイプを装着して施工した状態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る法面用ブロック及びその施工方法について説明する。
図1乃至図9に示すように、本発明の実施の形態に係る法面用ブロックBは、成形型により一体成形されるコンクリート製であり、表面側に溝Gにより区画された擬石状の複数の凸部2を備えた前壁1と、前壁1に対して所定間隔離間して設けられる後壁3と、前壁1及び後壁3を連結するとともに前壁1及び後壁3間に空間Eを形成する連結壁4とを一体に備え、複数がこれらの前壁1が連続するように段積されて法面(図示せず)を覆うものである。凸部2は、前壁1の基準となる基準表面1aから突出形成されている。凸部2の表面は擬石状に凹凸形成されている。
【0023】
詳しくは、前壁1及び後壁3は、略平盤状に形成され、図3に示すように、側面から見て、前壁1の基準表面1a及び後壁3の裏面3aは、互いに平行で、その水平な基準平面Saに対する傾斜角度θは、例えば、θ=60°~70°に設定されている。実施の形態では、θ=65°に設定されている。傾斜角度θは、これに限定されるものではなく、適宜に定めてよい。
【0024】
また、前壁1の下面1b及び後壁3の下面3bは、基準平面Sa上に形成され、前壁1の上面1c及び後壁3の上面3cは、基準平面Saに平行な平行平面Sb上に形成されている。前壁1の横幅及び後壁3の横幅は同じに設定され、前壁1及び後壁3は、正面から見て互いに重なる矩形状に形成されている。実施の形態では、前壁1及び後壁3の横幅は、例えば、2000mm、前壁1及び後壁3の高さは、例えば、500mmに設定されている。横幅及び高さも、これに限定されるものではなく、適宜に定めてよい。
【0025】
更に、連結壁4は、図1に示すように、上から見て前後方向中心線Pに対して互いに所定間隔で離間し且つ対称位置に位置するように一対設けられている。各連結壁4の上端には、平行平面Sbから上に突出する凸条部5が設けられており、各連結壁4の下端には、基準平面Saより凹み凸条部5が係合する凹条部6が設けられている。この凸条部5と凹条部6との係合により、下位の法面用ブロックBに対する上位の法面用ブロックBの位置決めが行われる。
【0026】
更にまた、前壁1の上面1c及び/または下面1b(実施の形態では上面1c)には、前壁1の上面1cとこの上面1cに段積された他の法面保護用ブロックの前壁1の下面1bとの間に植物が生えてくることができる隙間C(図8)を形成する凹部7が形成されている。凹部7は、前壁1の上面中央に形成されるとともに、前壁1の両側に対称に形成されている。凹部7の前壁1の上面からの深さをDとしたとき、例えば、D=10mm~30mmに設定されている。実施の形態では、D=15mmに設定されている。
【0027】
また、前壁1には、空間Eに連通する前側排水口10が形成され、後壁3には、空間Eに連通する後側排水口11が形成され、連結壁4には、空間Eに連通する連通口12が形成されている。図4及び図9に示すように、前側排水口10及び後側排水口11は、夫々、法面を覆った際、法面側の水を前壁1の外側に排出するための排水パイプHPが挿通可能な柱状の孔で形成されている。また、前側排水口10及び後側排水口11は、後壁3から前壁1に向かって前下がりになる軸線Q上に形成されているとともに、その軸線Qが上から見て上記の中心線Pに重なるように形成されている。前側排水口10は、その外側開口10aよりも内側開口10bの方が大きい錐台状に形成され、後側排水口11は、その内側開口11bよりも外側開口11aの方が大きい錐台状に形成されている。実施の形態では、前側排水口10及び後側排水口11は、図3及び図4に示すように、下側の母線が基準平面Saに略平行になる円錐台状若しくは斜め円錐台状(実施の形態では斜め円錐台状)に形成されている。
【0028】
このように、法面用ブロックBは、全体が中心線Pを中心にして略対称に形成され、前側排水口10及び後側排水口11も幅方向中央に位置させることができることから、極めてバランスが良く、そのため、外管品質を向上させることができる。
【0029】
更に、前側排水口10の外側開口10aは、ハンマー(図示せず)で叩打して取り外し可能な蓋20で塞がれており、蓋20の表面側は、溝Gにより区画された擬石状に形成されている。上述したように、前壁1の表面側には、溝Gにより区画された擬石状の複数の凸部2が形成されており、特に、図1及び図5に示すように、蓋20の周囲にはこれを囲繞するように凸部2が複数形成されている。実施の形態では、蓋20の周囲に3つの凸部2が形成されている。そして、蓋20を区画する溝Gは、蓋20に隣接する凸部2を形成する溝Gと共用するように形成されている。即ち、溝Gは擬石の外輪を規定する。
【0030】
また、蓋20は、図6及び図7に示すように、表面側部21と基端部22とを備えて構成され、蓋20の基端部22の形状及び大きさは、前側排水口10の外側開口内縁部13の形状及び大きさと同じに形成され、この蓋20の基端部22は、前側排水口10の外側開口内縁部13に一体に連設されて成形されている。そして、前壁1の基準表面1aに直交する方向の基端部22の厚さをTとしたとき、T=5mm~15mmに設定され、蓋20の表面側部21は、前側排水口10を通過可能な大きさに形成されている。実施の形態では、T=10mmである。
【0031】
次に、実施の形態に係る法面用ブロックBの施工方法について説明する。
<前壁の隙間Cから植物が生えてくるように施工するとき>
図1図3図5図6及び図8に示すように、蓋20はそのままにして必要数の法面用ブロックBを段積し、図8に示すように、各法面用ブロックBの空間Eに植物が育成可能な砕石や土砂等の中詰め材30を充填する。充填は、数段積み上げる毎に行うことができる。尚、各法面用ブロックBの後壁3と法面との間には裏込め材(図示せず)が充填される。尚また、この場合、一般には、蓋20をそのままにするが、必ずしもそうしなければならないということではなく、蓋20を取り外して前側排水口10から植物が出てくるようにすることは差支えない。
【0032】
<前壁の隙間Cから植物が生えてこないように施工するとき>
図7に示すように、必要な法面用ブロックBの蓋20をハンマーで叩打して取り外す。これにより、前側排水口10が開放される。蓋20をハンマーで叩打すると、前側排水口10の外側開口内縁部13と基端部22との連設部にひびが入って、この部位から蓋20が分離する。この場合、基端部22の厚さTを、T=5mm~15mmに設定したので、ひびが入って分離し易くなり、それだけ、作業性を向上させることができる。また、蓋20の表面側部21は前側排水口10を通過可能な大きさに形成されているので、分離した蓋20を、前側排水口10を通ってその内側開口10bから落下させることができる。そのため、蓋20の取り外しを極めて容易且つ確実に行うことができ、それだけ、作業性が良くなり、施工性を向上させることができる。更に、前側排水口10においては、ハンマーで叩打して分離した蓋20は、外側開口10aからこれよりも大きい内側開口10bに向かって移動するので、この内側開口10bから容易に落下させやすくなり、この点でも、作業性を向上させることができる。
【0033】
次に、図4に示すように、蓋20を取り除いた法面用ブロックBにおいては、これらの前側排水口10及び後側排水口11に排水パイプHPを挿通し、前側排水口10及び後側排水口11にモルタル等の充填材31を入れて、この排水パイプHPを固定する。この排水パイプHPを装着するときは、後側排水口11から挿入し、それから前側排水口10に挿入してこれから突出させるようにすればよい。この場合、排水パイプHPの先端は、後側排水口11においては、内側開口11bよりも大きい外側開口11aから挿入され、前側排水口10においては、外側開口10aよりも大きい内側開口10bから挿入されることになるので、排水パイプHPの挿入を極めて容易に行うことができ、この点でも、作業性が良くなり、施工性を向上させることができる。これにより、排水パイプHPは、前側排水口10及び後側排水口11が後壁3から前壁1に向かって前下がりになる軸線Q上に形成されているので、後壁3から前壁1に向かって前下がりに装着される。
【0034】
それから、図9に示すように、排水パイプHPを固定した法面用ブロックBを含む必要数の法面用ブロックBを段積し、空間Eにコンクリート32を充填する。充填は、数段積み上げる毎に行うことができる。この場合、凹部7の深さDを、D=10mm~30mmに設定したので、空間Eをコンクリートで充填したときに、隙間Cからコンクリートが漏れにくくなり、それだけ、施工性を向上させることができる。尚、各法面用ブロックBの後壁3と法面との間には裏込め材(図示せず)が充填される。
【0035】
このようにして法面用ブロックBが施工されて構築された法面においては、以下のような作用及び効果を呈する。
<前壁の隙間Cから植物が生えてくるように施工したとき>
図8に示すように、法面用ブロックBが構築された状態では、法面用ブロックによって区画された空間Eの中詰め材30には、法面側から後側排水口11を通して供給される水が流通するので、植物が前壁1の隙間Cから生えてくることから、壁面の緑化を図ることができる。余分な水は前壁1の隙間Cから排出される。この場合、前壁1の蓋20はそのままになっており、蓋20の表面側は、溝Gにより区画された擬石状に形成されているので、即ち、前壁1の表面全部が擬石状になるので、前側排水口10として視認されにくくなり、擬石状の複数の凸部2と相まって、見栄えが良くなり、外観品質を向上させることができる。
【0036】
特に、蓋20を囲繞するように凸部2を複数形成し、蓋20を区画する溝Gを、蓋20に隣接する凸部2を形成する溝Gと共用するようにしたので、蓋20が凸部2の中に形成される場合に比較して、凸部2及び蓋20は、夫々、独立した擬石に視認できることから、それだけ、外観品質を向上させることができる。
【0037】
<前壁の隙間Cから植物が生えてこないように施工したとき>
図9に示すように、法面用ブロックBが構築された状態では、空間Eにコンクリート32が充填されたので、前壁1の隙間Cが塞がれることから、この隙間Cから植物が生えてくることが阻止される。しかも、この法面用ブロックBにおいては、前壁1と後壁3が所定間隔隔てて在るので厚さが厚く、更には、前壁1と後壁3間にはコンクリート32が充填されるので、強度が高くなり、法面を極めて強固に保護することができる。
【0038】
また、この場合、蓋20が取り外されて排水パイプHPの先端が前側排水口10の外側開口10aに臨むが、蓋20を囲繞するように凸部2を複数形成し、蓋20を区画する溝Gを、蓋20に隣接する凸部2を形成する溝Gと共用するようにしたので、前側排水口10の外側開口10aが擬石状の凸部2の表面に開けられたようには見えず、周囲の凸部2が擬石状に独立して見えるので、前側排水口10やこれに臨む排水パイプHPの開口が目立たなくなり、それだけ、外管品質を向上させることができる。
【0039】
そして、法面側に生じる水は、排水パイプHPを通って排水することができる。この場合、排水パイプHPは、後壁3から前壁1に向かって前下がりになるので、排水が円滑に行われることから、排水性を向上させることができる。
【0040】
尚、上記実施の形態において、前側排水口10及び後側排水口11を1つの法面用ブロックBに1組設けたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、複数組設けてよい。また、上記実施の形態において、連結壁4は1対設けたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、1つであっても良く、あるいは、3以上設けるようにしても良く、適宜変更して差支えない。更に、前壁1及び後壁3を傾斜させたが、これらの傾斜角度も適宜に定めて良い。例えば、前壁1及び後壁3を直立するように形成し、施工時に法面に沿って傾斜させるようにしても良く、適宜変更して差支えない。更にまた、上記実施の形態において、凸部2及び蓋20を擬石状に形成するが、そのデザインは適宜に定めてよいことは勿論である。本発明は、上述した本発明の実施の形態に限定されず、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
B 法面用ブロック
1 前壁
1a 基準表面
1b 下面
1c 上面
2 凸部
G 溝
3 後壁
3a 裏面
3b 下面
3c 上面
Sa 基準平面
Sb 平行平面
4 連結壁
E 空間
P 中心線
5 凸条部
6 凹条部
7 凹部
C 隙間
10 前側排水口
10a 外側開口
10b 内側開口
11 後側排水口
11a 外側開口
11b 内側開口
12 連通口
13 外側開口内縁部
HP 排水パイプ
Q 軸線
20 蓋
21 表面側部
22 基端部
30 中詰め材
31 充填材
32 コンクリート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9