(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121007
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】チョコレート
(51)【国際特許分類】
A23G 1/36 20060101AFI20230823BHJP
A23G 1/54 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
A23G1/36
A23G1/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024195
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺井 悠晃
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GB02
4B014GB04
4B014GG14
4B014GP18
4B014GY04
(57)【要約】
【課題】
油脂の染み出しが発生し難い被覆用に適したチョコレートを提供することにある。
【解決手段】
チョコレートに含まれる油脂が下記の条件(a)から(d)を満たすチョコレート。
(a)構成脂肪酸として、炭素数14以下の飽和脂肪酸を30~75質量%含有する。
(b)構成脂肪酸として、炭素数16~18の飽和脂肪酸を15~55質量%含有する。
(c)構成脂肪酸として、不飽和脂肪酸を18質量%以下含有する。
(d)構成する脂肪酸残基の総炭素数が42~48のトリグリセリドを15~50質量%含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョコレートに含まれる油脂が下記の条件(a)から(d)を満たすチョコレート。
(a)構成脂肪酸として、炭素数14以下の飽和脂肪酸を30~75質量%含有する。
(b)構成脂肪酸として、炭素数16~18の飽和脂肪酸を15~55質量%含有する。
(c)構成脂肪酸として、不飽和脂肪酸を18質量%以下含有する。
(d)構成する脂肪酸残基の総炭素数が42~48のトリグリセリドを15~50質量%含有する。
【請求項2】
チョコレートに含まれる油脂がさらに下記の条件(e)を満たす請求項1に記載のチョコレート。
(e)構成する脂肪酸残基の総炭素数が32~40のトリグリセリドを30~70質量%含有する。
【請求項3】
前記チョコレートが被覆用チョコレートである請求項1又は請求項2に記載のチョコレート。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載のチョコレートと食品からなる複合食品。
【請求項5】
前記食品が前記チョコレートで被覆されている請求項4に記載の複合食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆用に適したチョコレートに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
チョコレートは、チョコレートのみからなる製品以外に、チョコレートと他の食品とを組み合わせた製品にも利用されている。チョコレートと他の食品とを組み合わせた製品のうち、チョコレートが被覆されたドーナツ、ワッフル、パン、ケーキ、シュー、エクレア、ビスケット等の食品は、非常に人気のある製品であり、需要が高く、広く市場に流通している。被覆用のチョコレートとしては、例えば、特許文献1~5のチョコレートが提案されている。
【0003】
チョコレートが被覆されている食品は、経時的に、チョコレートの表面に油脂が染み出ることがある。このチョコレートが被覆されている食品におけるチョコレートの表面への油脂の染み出しは、チョコレートが被覆されている食品中に含まれる油脂の含有量が多いほど、発生しやすいとされている。チョコレートが被覆されている食品のチョコレートの表面に油脂が染み出すと、外見が悪くなるばかりか、持ちにくい、袋から出しにくいといった不具合を生じるので、商品価値が大きく損なわれる。従って、被覆用のチョコレートには、食品に被覆された後、油脂の染み出しが発生し難いことが必要である。
【0004】
以上のような背景から、油脂の染み出しが発生し難い被覆用のチョコレートの開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-227001号公報
【特許文献2】特開2008-113570号公報
【特許文献3】特開2005-185153号公報
【特許文献4】特開2003-284497号公報
【特許文献5】特開2003-274855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、油脂の染み出しが発生し難い被覆用に適したチョコレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、チョコレートに含まれる油脂が特定のトリグリセリド及び特定の脂肪酸を特定量含有することにより、本課題が解決できることが見いだされた。これにより、本発明が完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明は、チョコレートに含まれる油脂が下記の条件(a)から(d)を満たすチョコレートである。
(a)構成脂肪酸として、炭素数14以下の飽和脂肪酸を30~75質量%含有する。
(b)構成脂肪酸として、炭素数16~18の飽和脂肪酸を15~55質量%含有する。
(c)構成脂肪酸として、不飽和脂肪酸を18質量%以下含有する。
(d)構成する脂肪酸残基の総炭素数が42~48のトリグリセリドを15~50質量%含有する。
本発明の第2の発明は、チョコレートに含まれる油脂がさらに下記の条件(e)を満たす第1の発明に記載のチョコレートである。
(e)構成する脂肪酸残基の総炭素数が32~40のトリグリセリドを30~70質量%含有する。
本発明の第3の発明は、前記チョコレートが被覆用チョコレートである第1の発明又は第の2発明に記載のチョコレートである。
本発明の第4の発明は、第1の発明~第3の発明の何れか1つの発明に記載のチョコレートと食品からなる複合食品である。
本発明の第5の発明は、前記食品が前記チョコレートで被覆されている第4の発明に記載の複合食品である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、油脂の染み出しが発生し難い被覆用に適したチョコレートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態のチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が下記の条件(a)から(d)を満たすチョコレートである。
(a)構成脂肪酸として、炭素数14以下の飽和脂肪酸を30~75質量%含有する。
(b)構成脂肪酸として、炭素数16~18の飽和脂肪酸を15~55質量%含有する。
(c)構成脂肪酸として、不飽和脂肪酸を18質量%以下含有する。
(d)構成する脂肪酸残基の総炭素数が42~48のトリグリセリドを15~50質量%含有する。
【0011】
本発明でチョコレートとは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)乃至法規上の規定により限定されるものではなく、油脂、糖質を主原料とし、必要によりカカオ成分(カカオマス、ココアパウダー等)、乳製品、香料、乳化剤等を加え、チョコレート製造の工程(混合工程、微粒化工程、精練工程、調温工程、成形工程、冷却工程等の全部乃至一部)を経て製造され、油脂が連続相をなし、実質的に水を含まない(水分が好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。)食品のことである。また、本発明でチョコレートは、ダークチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート、カラーチョコレートのいずれであってもよい。
【0012】
本発明でチョコレートに含まれる油脂とは、チョコレートに含まれる油脂の全てを合わせた全油脂分である。例えば、チョコレートがカカオマス、全脂粉乳、油脂aを含む場合、油脂は、カカオマスに含まれるココアバターと、全脂粉乳に含まれる乳脂と、油脂aとの混合油である。すなわち、本発明でチョコレートに含まれる油脂は、チョコレートに配合される油脂の他に、含油原料(カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳等)に含まれる油脂(ココアバター、乳脂等)を含む。
【0013】
本発明の実施の形態のチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が、構成脂肪酸として、炭素数14以下の飽和脂肪酸を30~75質量%含有し、好ましくは40~70質量%含有し、より好ましくは45~68質量%含有し、さらに好ましくは52~67質量%含有する(条件(a))。以下、炭素数14以下の飽和脂肪酸は、C14以下SFAと記載することがある。
【0014】
本発明の実施の形態のチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が、構成脂肪酸として、炭素数16~18の飽和脂肪酸を15~55質量%含有し、好ましくは20~50質量%含有し、より好ましくは23~45質量%含有し、さらに好ましくは25~40質量%含有する(条件(b))。以下、炭素数16~18の飽和脂肪酸は、C16~18SFAと記載することがある。
【0015】
本発明の実施の形態のチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が、構成脂肪酸として、不飽和脂肪酸を18質量%以下含有し、好ましくは16質量%以下含有し、より好ましくは1~14質量%含有し、さらに好ましくは2~13質量%含有する(条件(c))。以下、不飽和脂肪酸は、USFAと記載することがある。
【0016】
本発明の実施の形態のチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が、構成する脂肪酸残基の総炭素数が42~48のトリグリセリドを15~50質量%含有し、好ましくは18~45質量%含有し、より好ましくは20~40質量%含有し、さらに好ましくは23~37質量%含有する(条件(d))。以下、構成する脂肪酸残基の総炭素数が42~48のトリグリセリドは、C42~48TGと記載することがある。
【0017】
本発明の実施の形態のチョコレートが、チョコレートに含まれる油脂が上記条件(a)から(d)を満たすと、食品に被覆された場合に、チョコレートからの油脂の染み出しが発生し難い。
【0018】
本発明の実施の形態のチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が、構成する脂肪酸残基の総炭素数が32~40のトリグリセリドを好ましくは30~70質量%含有し、より好ましくは37~65質量%含有し、さらに好ましくは42~63質量%含有し、最も好ましくは47~62質量%含有する(条件(e))。以下、構成する脂肪酸残基の総炭素数が32~40のトリグリセリドは、C32~40TGと記載することがある。
【0019】
本発明の実施の形態のチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂の構成脂肪酸中のステアリン酸の含有量(質量%)に対するパルミチン酸の含有量(質量%)の質量比が、好ましくは0.55~2.00であり、より好ましくは0.65~1.80であり、さらに好ましくは0.70~1.60であり、最も好ましくは0.85~1.50である。以下、ステアリン酸の含有量に対するパルミチン酸の含有量の質量比は、P/Stと記載することがある。また、ステアリン酸はSt、パルミチン酸はPと記載することがある。
【0020】
本発明の実施の形態のチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂の構成脂肪酸中のステアリン酸の含有量(質量%)に対するラウリン酸の含有量(質量%)の質量比が、好ましくは1.20~4.00であり、より好ましくは1.30~3.70であり、さらに好ましくは1.50~3.20である。以下、構成脂肪酸中のステアリン酸の含有量に対するラウリン酸の含有量の質量比は、La/Stと記載することがある。また、ラウリン酸はLaと記載することがある。
【0021】
本発明の実施の形態のチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が、構成脂肪酸として、炭素数10以下の飽和脂肪酸を好ましくは10質量%以下含有し、より好ましくは8質量%以下含有し、さらに好ましくは6質量%以下含有する。以下、炭素数10以下の飽和脂肪酸は、C10以下SFAと記載することがある。
【0022】
本発明の実施の形態のチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が、構成脂肪酸として、炭素数20~22の飽和脂肪酸を好ましくは5質量%以下含有し、より好ましくは3質量%以下含有し、さらに好ましくは1質量%以下含有する。以下、炭素数20~22の飽和脂肪酸は、C20~22SFAと記載することがある。
【0023】
本発明の実施の形態のチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が、構成脂肪酸として、トランス脂肪酸を好ましくは5質量%以下含有し、より好ましくは3質量%以下含有し、さらに好ましくは1質量%以下含有する。以下、トランス脂肪酸は、TFAと記載することがある。
【0024】
本発明の実施の形態のチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が、構成する脂肪酸残基の総炭素数が40以下のトリグリセリドを好ましくは30~70質量%含有し、より好ましくは35~65質量%含有し、さらに好ましくは40~63質量%含有する。以下、構成する脂肪酸残基の総炭素数が40以下のトリグリセリドは、C40以下TGと記載することがある。
【0025】
本発明の実施の形態のチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂中の構成する脂肪酸残基の総炭素数が42~48のトリグリセリドの含有量(質量%)に対する構成する脂肪酸残基の総炭素数が40以下のトリグリセリドの含有量(質量%)の質量比が、好ましくは0.70~3.00であり、より好ましくは1.20~2.75であり、さらに好ましくは1.50~2.50である。以下、構成する脂肪酸残基の総炭素数が42~48のトリグリセリドの含有量に対する構成する脂肪酸残基の総炭素数が40以下のトリグリセリドの含有量の質量比は、C40以下TG/C42~48TGと記載することがある。
【0026】
本発明の実施の形態のチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が、構成する脂肪酸残基の総炭素数が58以上のトリグリセリドを好ましくは3質量%未満含有し、より好ましくは1質量%未満含有し、さらに好ましくは0.05質量%未満含有する。以下、構成する脂肪酸残基の総炭素数が58以上のトリグリセリドは、C58以上TGと記載することがある。
【0027】
本発明の実施の形態のチョコレートの製造には、チョコレートに含まれる油脂のトリグリセリド組成、脂肪酸組成等が前記範囲であれば、特に制限されることなく、通常、チョコレートの製造に使用される油脂を使用することができる。油脂の具体例としては、ココアバター、パーム核油、ヤシ油、パーム油、パーム分別油(パーム中融点部、パームステアリン、パームオレイン等)、シア脂、サル脂、イリッペ脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、乳脂等や、これらの加工油脂(混合、分別、水素添加、エステル交換のうち、1以上の処理がなされた油脂)等が挙げられる。前記油脂は2種以上組み合せて使用することもできる。
【0028】
本発明の実施の形態のチョコレートの製造には、好ましくはラウリン系油脂のランダムエステル交換油脂、非エステル交換ラウリン系油脂が使用され、より好ましくはラウリン系油脂のランダムエステル交換油脂、非エステル交換ラウリン系油脂、ココアバターが使用される。
なお、本発明でラウリン系油脂のランダムエステル交換油脂とは、ランダムエステル交換反応を行うことで得られる油脂であって、ランダムエステル交換反応に供する原料油脂として、ラウリン系油脂を含む油脂のことである。また、本発明でラウリン系油脂とは、油脂を構成する脂肪酸のうちラウリン酸が30質量%以上の油脂のことである。また、本発明で非エステル交換ラウリン系油脂とは、エステル交換反応を行っていないラウリン系油脂のことである。以下、ラウリン系油脂のランダムエステル交換油脂は油脂Aとし、非エステル交換ラウリン系油脂は油脂Bとする。
【0029】
本発明の実施の形態のチョコレートは、含まれる油脂中に、好ましくは油脂Aが10~70質量%、油脂Bが20~80質量%、ココアバターが0~15質量%配合され、より好ましくは油脂Aが15~65質量%、油脂Bが25~77質量%、ココアバターが3~12質量%配合され、さらに好ましくは油脂Aが18~55質量%、油脂Bが40~75質量%、ココアバターが5~10質量%配合される。
【0030】
本発明の実施の形態のチョコレートは、含まれる油脂中の油脂Bの配合量(質量%)に対する構成する油脂Aの配合量(質量%)の質量比が、好ましくは0.10~3.00であり、より好ましくは0.25~2.70であり、さらに好ましくは0.65~2.50である。以下、油脂Bの配合量に対する油脂Aの配合量の質量比は、油脂A/油脂Bと記載することがある。
【0031】
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される油脂Aは、好ましくはラウリン系油脂と非ラウリン系油脂とのランダムエステル交換油脂である。
なお、本発明で非ラウリン系油脂とは、ラウリン系油脂以外の油脂のことである。
【0032】
前記油脂Aの製造に使用されるラウリン系油脂の具体例は、ヤシ油、パーム核油及びこれらの分別油、エステル交換油脂、硬化油等である。前記油脂Aの製造において、ラウリン系油脂は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記油脂Aの製造に使用されるラウリン系油脂は、好ましくはパーム核油の極度硬化油、パーム核オレインの極度硬化油、パーム核油であり、より好ましくはパーム核油の極度硬化油である。
【0033】
前記油脂Aの製造に使用される非ラウリン系油脂は、好ましくはパーム系油脂である。
なお、本発明でパーム系油脂とは、パーム油及びパーム分別油等のパーム油の加工油脂のことである。また、本発明でパーム分別油のエステル交換油等のパーム分別油の加工油脂もパーム系油脂である。
前記油脂Aの製造に使用されるパーム系油脂の具体例は、パーム油、パームオレイン、パームオレインのエステル交換油脂、パームステアリン、パーム中融点部(パームミッドフラクション(PMF))等である。前記油脂Aの製造において、パーム系油脂は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記油脂Aの製造に使用されるパーム系油脂は、好ましくはヨウ素価25~60のパーム系油脂であり、より好ましくはヨウ素価27~37のパームステアリン、ヨウ素価40~50のパーム中融点部、パームステアリンの極度硬化油、パーム油であり、さらに好ましくはヨウ素価27~37のパームステアリン、ヨウ素価40~50のパーム中融点部である。
【0034】
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される油脂Aは、ヨウ素価が好ましくは45以下であり、より好ましくは35以下であり、さらに好ましくは20~30である。
【0035】
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸として、ラウリン酸を好ましくは15質量%以上30質量%未満含有し、より好ましくは17質量%以上27質量%未満含有し、さらに好ましくは18質量%以上25質量%未満含有する。
【0036】
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸として、パルミチン酸を好ましくは20質量%以上40質量%未満含有し、より好ましくは25質量%以上38質量%未満含有し、さらに好ましくは27質量%以上35質量%未満含有する。
【0037】
前記油脂Aは、ランダムエステル交換反応を行う原料油脂のラウリン系油脂と非ラウリン系油脂との混合比(ラウリン系油脂:非ラウリン系油脂)が好ましくは質量比35:65~65:35であり、より好ましくは質量比40:60~60:40であり、さらに好ましくは質量比45:55~55:45である。
前記油脂Aを製造する時のランダムエステル交換の方法は、特に制限はなく、従来公知の方法により行うことができる。
前記油脂Aを製造する時には、必要に応じて水素添加を行うこともできる。水素添加の方法は、特に制限はなく、従来公知の方法により行うことができる。
【0038】
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される油脂Bの具体例は、ヤシ油、パーム核油及びこれらの分別油、硬化油等である。前記油脂Bは、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される油脂Bは、上昇融点が好ましくは20~50℃であり、より好ましくは25~48℃であり、さらに好ましくは30~45℃である。
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される油脂Bは、好ましくはラウリン系油脂の極度硬化油であり、より好ましくはパーム核油の極度硬化油、パーム核ステアリンの極度硬化油である。
【0039】
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用されるココアバターは、チョコレートに配合されるココアバターの他に、ココアバターを含有するカカオマスやココアパウダー等のカカオ原料中のココアバターも含む。
【0040】
本発明の実施の形態のチョコレートは、油脂を好ましくは20~60質量%含有し、より好ましくは30~55質量%含有し、さらに好ましくは40~50質量%含有する。
【0041】
本発明の実施の形態のチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂の固体脂含量(以下、SFCとする。)が、好ましくは10℃で67%以上、20℃で45~90%、30℃で15~50%であり、より好ましくは10℃で70~98%、20℃で50~87%、30℃で18~45%であり、さらに好ましくは10℃で75~95%、20℃で55~85%、30℃で20~40%である。
【0042】
油脂の脂肪酸含有量は、AOCS Ce1f-96に準じて、ガスクロマトグラフィー法で測定することができる。
油脂のトリグリセリド含有量は、AOCS Ce5-86に準じて、ガスクロマトグラフィー法で測定することができる。
油脂のヨウ素価は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.3.4.1-1996 ヨウ素価(ウィイス-シクロヘキサン法)」に準じて測定することができる。
油脂の上昇融点は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.2.4.2-1996 融点(上昇融点)」に準じて測定することができる。
油脂のSFCは、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の2.2.9-2003 固体脂含量(NMR法)に準じて測定することができる。
【0043】
本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくは糖質を含有する。なお、本発明で糖質とは、炭水化物から食物繊維を除いたもののことである。糖質の具体例は、糖類、糖アルコール(マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、ラクチトール、マンニトール、還元水飴等)、でんぷん、オリゴ糖、デキストリン等である。また、本発明で、糖類は、単糖類、二糖類(ブドウ糖、果糖、ガラクトース、砂糖(ショ糖)、乳糖、麦芽糖等)のことである。また、本発明で糖質は、糖質そのものであり、その他の原材料(例えば、粉乳等)に含まれる糖質は含めない。
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される糖質は、好ましくは糖類であり、より好ましくは砂糖、乳糖である。
本発明の実施の形態のチョコレートは、糖質を好ましくは25~60質量%含有し、より好ましくは30~55質量%含有し、さらに好ましくは40~50質量%含有する。
【0044】
本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくはカカオ成分を含有する。なお、本発明でカカオ成分とは、カカオ豆から得られるカカオ原料のうち、油脂以外の固形分含むカカオ原料のことである。カカオ成分の具体例は、カカオマス、ココアパウダー等である。
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用されるカカオ成分は、好ましくはカカオマス、ココアパウダーである。
本発明の実施の形態のチョコレートは、カカオ成分を好ましくは0~30質量%含有し、より好ましくは5~25質量%含有し、さらに好ましくは10~20質量%含有する。
【0045】
本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくは粉乳を含有する。粉乳の具体例は、脱脂粉乳、全脂粉乳等である。本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される粉乳は、好ましくは脱脂粉乳、全脂粉乳である。
本発明の実施の形態のチョコレートは、粉乳を好ましくは20質量%以下含有し、より好ましくは15質量%以下含有し、さらに好ましくは5質量%以下含有する。
【0046】
本発明の実施の形態のチョコレートは、油脂、糖質、カカオ成分、粉乳以外にも、チョコレートに一般的に配合される原料を使用することができる。具体的には、例えば、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等)、大豆粉、大豆蛋白、果実加工品、野菜加工品、抹茶粉末、コーヒー粉末等の各種粉末、ガム類、澱粉類、酸化防止剤、着色料、香料等を使用することができる。
【0047】
本発明の実施の形態のチョコレートは、従来公知のチョコレートの製造方法で製造することができる。本発明の実施の形態のチョコレートは、例えば、油脂、カカオ成分、糖質、乳製品、乳化剤等を原料として、混合工程、微粒化工程(リファイニング)、精練工程(コンチング)、冷却工程等を経て製造することができる。また、本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくは微粒化工程を経て製造される。
【0048】
本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくはノンテンパリング型のチョコレートである。
【0049】
本発明の実施の形態のチョコレートは、油脂の染み出しが発生し難い。また、本発明の実施の形態のチョコレートは、食品と組み合わせた場合、特に食品に被覆された場合や油脂含有量の高い食品と組み合わせた場合においても、油脂の染み出しが発生し難い。
【0050】
本発明の実施の形態のチョコレートは、食品に被覆された場合に、油脂の染み出しが発生し難いことから、被覆用チョコレートに適している。本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくは被覆用チョコレートである。
【0051】
本発明の実施の形態のチョコレートは、油脂含有量の高い食品と組み合わせた場合に、油脂の染み出しが発生し難いことから、本発明の実施の形態のチョコレートは、油脂含有量の高い食品用に適している。本発明の実施の形態のチョコレートと組み合わせる食品の油脂含有量は、好ましくは15~45質量%であり、より好ましくは20~40質量%であり、さらに好ましくは25~35質量%であり、最も好ましくは25~33質量%である。従って、本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくは油脂を15~45質量%含有する食品用に使用され、より好ましくは油脂を20~40質量%含有する食品用に使用され、さらに好ましくは油脂を25~35質量%含有する食品用に使用され、最も好ましくは油脂を25~33質量%含有する食品用に使用される。
【0052】
本発明の実施の形態のチョコレートは、油脂の染み出しが発生し難いことから、本発明の実施の形態のチョコレートを使用した商品は、賞味期限の延長が期待できる。そのため、本発明の実施の形態のチョコレートは、フードロス問題の改善にも期待できる。
【0053】
本発明の実施の形態の複合食品は、本発明の実施の形態のチョコレートと食品とからな複合食品である。本発明で、食品は、チョコレート以外の食品のことである。
【0054】
本発明の実施の形態の複合食品の製造に使用される食品の具体例は、例えば、食パン、塩パン、コッペパン、フルーツブレッド、バターロール、フランスパン、ロールパン、菓子パン、スイートドウ、マフィン、ブリオッシュ、フォカッチャベーグル、クロワッサン、デニッシュペーストリー等のパン類、ドーナツ、カステラ、ワッフル、ボーロ、八つ橋、せんべい、かりんとう、スポンジケーキ、ロールケーキ、パウンドケーキ、バウムクーヘン、フルーツケーキ、マドレーヌ、シュトーレン、シュー、エクレア、ミルフィーユ、パイ、タルト、マカロン、ビスケット、クッキー、クラッカー、サブレ、ラングドシャ、蒸しパン、プレッツェル、ウエハース、ポテトチップス、スナック菓子、クレープ、スフレ、乾パン等の菓子類、バナナ、りんご、イチゴ等の果物等である。
【0055】
本発明の実施の形態の複合食品の製造に使用される食品は、油脂を好ましくは15~45質量%含有し、より好ましくは20~40質量%含有し、さらに好ましくは25~35質量%含有し、最も好ましくは25~33質量%含有する。
【0056】
本発明の実施の形態の複合食品の製造に使用される食品は、好ましくは菓子類、パン類であり、より好ましくはワッフル、クッキー、ドーナツであり、さらに好ましくはワッフルである。
【0057】
本発明の実施の形態の複合食品は、従来公知の方法で、チョコレートと食品とを組み合わせることで製造することができる。本発明の実施の形態のチョコレートと食品とを組み合わせる方法は、被覆、注入、巻く、挟む、付着、練り込み等が挙げられ、好ましくは被覆である。本発明の実施の形態の複合食品は、好ましくは食品が本発明の実施の形態のチョコレートで被覆されている。
【0058】
本発明の実施の形態の複合食品は、チョコレート部分の油脂の染み出しが発生し難い。
【実施例0059】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
〔油脂の脂肪酸の分析方法〕
油脂の脂肪酸含有量は、AOCS Ce1f-96に準じて、ガスクロマトグラフィー法で測定した。
〔油脂のトリグリセリドの分析方法〕
油脂のトリグリセリド含有量は、AOCS Ce5-86に準じて、ガスクロマトグラフィー法で測定した。
〔油脂のヨウ素価の測定方法〕
油脂のヨウ素価は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.3.4.1-1996 ヨウ素価(ウィイス-シクロヘキサン法)」に準じて測定した。
〔油脂の上昇融点の測定方法〕
油脂の上昇融点は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.2.4.2-1996 融点(上昇融点)」に準じて測定した。
〔油脂のSFCの測定方法〕
油脂のSFCは、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の2.2.9-2003 固体脂含量(NMR法)に準じて測定した。
【0060】
〔油脂A1の製造〕
パームステアリン(ヨウ素価:32)15質量部とパーム中融点部(ヨウ素価:45)35質量部とパーム核油の極度硬化油(ラウリン酸含有量:48.4質量%)50質量部を混合した。得られた混合油に、ランダムエステル交換反応を行うことにより、油脂A1(ヨウ素価:23、ラウリン酸含有量:23.7質量%、パルミチン酸含有量:30.4質量%)を得た。
エステル交換反応は、常法に従い、原料油脂を十分に乾燥させ、ナトリウムメトキシドを原料油脂に対して0.2質量%添加した後、減圧下、120℃で0.5時間攪拌しながら反応を行った。反応は50質量%のクエン酸水溶液を添加して中和することで終了し、その後等量の熱湯で3回洗浄して脱水乾燥し、常法により脱色、脱臭してエステル交換油脂とした。
【0061】
〔油脂A2の製造〕
パーム核オレイン(ラウリン酸含有量:41質量%)50質量部とパームステアリン(ヨウ素価:32)50質量部とを混合した。得られた混合油に、ランダムエステル交換反応を行った後、ヨウ素価が2以下になるまで水素添加を行うことにより、油脂A2(ヨウ素価:1未満、ラウリン酸含有量:20.3質量%、パルミチン酸含有量:33.5質量%)を得た。
エステル交換反応は、油脂A1と同様の方法で行った。
水素添加反応は、ニッケル触媒を用いて160~200℃にて、ヨウ素価が2以下になるまで行った。水素添加反応が終了後、ニッケル触媒をろ過により除去し、脱色、脱臭を行うことで、極度硬化油を得た。
【0062】
〔油脂A3の製造〕
パーム油60質量部とパーム核油(ラウリン酸含有量:47.1質量%)40質量部を混合した。得られた混合油に、ランダムエステル交換反応を行うことにより、油脂A3(ヨウ素価:39、ラウリン酸含有量:18.8質量%、パルミチン酸含有量:29.9質量%)を得た。
ランダムエステル交換反応は、油脂A1の製造と同様の方法で行った。
【0063】
〔油脂A4〕
市販品のラウリン系油脂とパーム系油脂のランダムエステル交換油脂を油脂A4(ラウリン酸含有量:25.1質量%、パルミチン酸含有量:24.1質量%)とした。
【0064】
〔油脂B1〕
パーム核ステアリンの極度硬化油(ラウリン酸含有量:53.9質量%、上昇融点:35.6℃)を油脂B1とした。
〔油脂B2〕
パーム核油とパーム油の混合油の極度硬化油(ラウリン酸含有量:43.5質量%、上昇融点:42.0℃)を油脂B2とした。
〔油脂B3〕
パーム核油の極度硬化油(ラウリン酸含有量:45.7質量%、上昇融点:39.1℃)を油脂B3とした。
【0065】
〔その他の油脂〕
市販品のブルーム耐性油脂を油脂C1(ヨウ素価:1未満、ラウリン酸含有量:0質量%、パルミチン酸含有量:2.4質量%、上昇融点:48.0℃)とした。
ハイエルシン菜種油の極度硬化油を油脂C2(ヨウ素価:1未満、ラウリン酸含有量:0質量%、パルミチン酸含有量:3.8質量%)とした。
【0066】
〔チョコレートの製造〕
表1~2に示された配合のチョコレートを、通常のチョコレートの製造方法(混合、微粒化、精練、冷却)により、テンパリングを行わずに製造した(チョコレートに含まれる水分は3質量%以下だった。)。チョコレート中の油脂含有量、チョコレートに含まれる油脂中の各油脂の含有量、脂肪酸組成、トリグリセリド組成及びSFCを表3~4に示した。なお、配合及び含有量の単位は質量%である(質量比の単位はなし)。
得られた各チョコレートを、25℃で7日間保存した後、油脂の染み出しを下記評価基準にて評価した。評価結果が◎、○又は△である場合、油脂の染み出しが発生し難いと判断した。評価結果を表3~4に示した。
【0067】
〔複合食品の製造及び評価〕
完全に融解させたテンパリングを行っていない各チョコレートを、ワッフル(油脂含有量30質量%)に被覆した後、チョコレートを冷却固化させることで、チョコレートが被覆されたワッフルを得た。各チョコレートが被覆されたワッフルを25℃で90日間保存した後、チョコレート部分の油脂の染み出しを下記評価基準にて評価した。評価結果が◎、○又は△である場合、油脂の染み出しが発生し難いと判断した。評価結果を表3~4に示した。
【0068】
〔油脂の染み出しの評価基準〕
◎:油脂の染み出しがない
○:油脂の染み出しがほとんどない
△:油脂の染み出しが少ない
×:油脂の染み出しが多い
××:油脂の染み出しが非常に多い
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
表3、4から分かるように、実施例のチョコレート及び実施例のチョコレートを使用した複合食品は、油脂の染み出しが発生し難かった。
一方、表3から分かるように、比較例のチョコレートを使用した複合食品は、油脂の染み出しが発生しやすかった。