(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121490
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】画像形成体
(51)【国際特許分類】
G09F 19/14 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
G09F19/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024856
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 寛之
(72)【発明者】
【氏名】木村 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 ちたお
(57)【要約】 (修正有)
【課題】所定の観察方向では、円弧状又は円形の要素で構成されている画像が動的及び立体的に視認することができ、所定の観察方向とは異なる方向の観察ではモアレ画像が視認できる画像形成体を提供する。
【解決手段】基材の一部に画像を有し、有意味情報としての第1の画像と、モアレを表す第2の画像とから成り、第1の画像は円弧状の軌道を有する第1要素が規則的に複数配列され、凹形状又は凸形状の断面形状及び明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくとも一つの特性を有して成り、第2の画像は第2-1要素が所定のピッチ及び所定の配置角度にて複数配列されて成る第2-1模様と、第2-1要素の所定のピッチ又は配置角度と少なくとも一つが異なる第2-2要素が複数配列されて成る第2-2要素から成る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一部に画像を有し、前記画像は有意味情報としての第1の画像と、モアレを表す第2の画像とから成り、
前記第1の画像は、円弧状の軌道を有する第1要素が規則的に複数配列され、
前記第1要素は、凹形状又は凸形状の断面形状を有するとともに、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくとも一つの特性を有して成り、
前記第2の画像は、第2-1要素が所定のピッチ及び所定の配置角度にて複数配列されて成る第2-1模様と、前記第2-1要素の所定のピッチ又は配置角度の少なくとも一つが異なる第2-2要素が、複数配列されて成る第2-2模様から成り、
前記第2-1要素又は前記第2-2要素の少なくとも一方の要素は、断面形状が凹形状又は凸形状、かつ、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくとも一方の特性を有し、
前記第2-1要素と前記第2-2要素の一部が重なるように配置されて成る重複領域によってモアレが形成され
前記基材を、円弧状の軌道方向に沿った第1の方向において、所定の角度から光源に対して異なる角度へと連続的に変化させることで、動的及び立体的効果を有する前記第1の画像が支配的に視認でき、
前記第1の方向とは異なる第2の方向において、所定の角度から光源に対して異なる角度へと連続的に変化させることで、前記第2の画像が支配的に視認できることを特徴とする画像形成体。
【請求項2】
前記第1要素は、円弧状の軌道を延在した円形状の要素であることを特徴とする請求項1記載の画像形成体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察方向の変化に応じて、支配的に視認できる画像が立体及び動的効果を有する画像からモアレ画像へと変化する画像形成体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のスキャナ、プリンター、カラーコピー機等のデジタル機器の進展により、貴重印刷物の精巧な複製物を作製することが可能となっている。そのため、前述したような複製や偽造を防止するため、セキュリティを要する貴重印刷物には、様々な偽造防止技術が必要とされている。例えば、偽造防止効果を有する技術の一つとして、立体的に文字や図形等が視認される立体視を用いた技術が知られている。
【0003】
文字や図形が立体的に浮かび上がって見える視覚的効果や、画像が動いて見える動画的な視覚効果は人目を惹きやすく、また、偽造することは困難である。立体視を用いて画像を形成した印刷物の例としては、レンチキュラーやホログラム等を貼付し、両目視差を用いたものが公知である。
【0004】
両眼視差とは、人間の左右の目が離れていることに起因する、左右の目で視認される観察画像の違いを利用し、観察者の脳内で立体画像を生成するものである。平面画像であっても、左右の目で異なった画像を絶縁して見せることで、観察者には立体的な画像として認識される。
【0005】
両眼視差を用いた立体表示形成体の例として、光輝性を有する材料から成る円弧状の画線を、万線状に配列することで、入射光に対する反射光により裸眼で立体画像を視認することを可能とした技術が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。この技術は、連続的に観察角度を変化させることで、反射光が円弧状の画線上で徐々に移動し、立体的、かつ、連続的に動いて画像が視認される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1において、円弧状画線に沿った方向に角度を変化させて観察した場合、画像が動的及び立体的に視認することができる。しかしながら、円弧状画線に沿った方向とは異なる方向から観察した場合、反射光が画線上に連続的に移動することはなく、画像が動的及び立体的に視認することはできないという課題があった。
【0008】
本発明は上述した課題の解決を目的とするものであり、所定の方向の観察では、円弧状又は円形の要素で構成されている画像が動的及び立体的に視認することができ、所定の観察方向とは異なる方向の観察では、観察角度の依存性を低減させるための半球状のドットから構成されたモアレ画像が視認できる画像形成体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
基材の少なくとも一部に画像を有し、前記画像は有意味情報としての第1の画像と、モアレを表す第2の画像とから成り、前記第1の画像は、円弧状の軌道を有する第1要素が規則的に複数配列され、前記第1要素は、凹形状又は凸形状の断面形状を有するとともに、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくとも一つの特性を有して成り、前記第2の画像は、第2-1要素が所定のピッチ及び所定の配置角度にて複数配列されて成る第2-1模様と、前記第2-1要素の所定のピッチ又は配置角度と、少なくとも一つが異なる第2-2要素が、複数配列されて成る第2-2要素から成り、前記第2-1要素又は前記第2-2要素は、いずれかの断面形状が凹形状又は凸形状、かつ、少なくとも一方が、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくとも一方の特性を有し、前記第2-1要素と前記第2-2要素の一部が重なるように配置された重複領域を有し、前記基材を、円弧状の軌道方向に沿った第1の方向において、所定の角度から光源に対して異なる角度へと連続的に変化させることで、動的及び立体的効果を有する前記第1の画像が支配的に視認でき、前記第1の方向とは異なる第2の方向において、所定の角度から光源に対して異なる角度へと連続的に変化させることで、前記第2の画像が支配的に視認できることを特徴とする画像形成体。
【0010】
前記第1要素は、円弧状の軌道を延在した円形状の要素であることを特徴とする請求項1記載の画像形成体。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、第1の画像と第2の画像を形成することによって、第1の画像を形成する要素である円弧状の軌道方向に沿った観察方向での観察では、動的及び立体効果を有した画像が支配的に視認でき、また、円弧状の軌道方向とは異なる方向での観察では、モアレ画像が支配的に視認できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】観察方向の変化に伴い、視認できる画像(3)の変化を示す図。
【
図6】
図3に示す第1要素(11)の一つを拡大した図。
【
図8】立体模様領域(12)の他の配置形態を示す図。
【
図9】第1の画像(10)の他の形状を示す平面図。
【
図11】画像形成体(1)が付与された基材(2)を観察するための視点を示す図。
【
図12】第2の観察角度(E2)における第1要素(11)の視認原理を示す模式図。
【
図13】第1要素(11)が同じ方向に配置された形成体(1)を、第1の観察角度(E1)から観察した際の平面図。
【
図14】第1要素(11)が同じ方向に配置された形成体(1)を、第2の観察角度(E2)から観察した際の平面図。
【
図15】基材(2)に対する観察角度の連続的な変化を示す模式図。
【
図20】第2の画像(20)を構成する要素の詳細を示す図
【
図21】第2の画像(20)において、第2-1要素(21b)と、第2-2要素(22b)のピッチを一部異ならせた形態を示す図。
【
図22】第2の画像(20)において、第2-1模様(21a)と第2-2模様(22a)を円に沿って配置した形態を示す図。
【
図23】第2の画像(20)において、第2-1要素(21b)と、第2-2要素(22b)の配列方向を異ならせた形態を示す図。
【
図24】第2の画像(20)において、第2-2要素(22a)を画素とした形態を示す図。
【
図25】第2の画像(20)における第2-2模様(22´´a)の詳細を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限られるものではない。
【0014】
(第1の実施形態)
本発明の形態について図面を用いて説明する。
図1は、基材(2)の少なくとも一部に画像(3)を有する画像形成体(1)の構成図である。
図1は、基材(2)の一部に画像(3)が形成された例であるが、本発明の画像形成体(1)は、基材(2)の全体に画像(3)が形成される構成でもよい。
【0015】
画像(3)は、光反射性を有する材料から成る。光反射性を有する材料としては、アルミ、ステンレスなどの一般的な金属材料や、フィルム、プラスチック等の樹脂材料の他にパールインキ、平滑な表面を形成可能な塗料等が塗工された用紙等がある。
【0016】
本発明の画像形成体(1)の画像(3)を所定の観察方向から観察すると、立体的な模様が視認される。本実施の形態では立体的に視認できる模様は「N」である。また、所定の観察方向とは異なる方向から観察した場合、モアレ模様が視認できる。
【0017】
図2は、本発明の画像(3)の構成図である。画像(3)は、第1の画像(10)と第2の画像(20)を有する。第1の画像(10)は、光輝性を有する断面形状が凹形状又は凸形状の第1要素(11)が円弧状に配置されている。第2の画像(20)は、断面形状が半球状の円形状の要素から形成されているモアレ模様である。
【0018】
図2において、第1の画像(10)と第2の画像(20)は重なった位置に配置した構成を示しているが、第1の画像(10)と第2の画像(20)を異なった位置に配置してもよい。なお、本発明は、所定の画像の動的及び立体効果が視認できない観察方向においてモアレ画像を視認させることを課題としているため、第1の画像(10)と第2の画像(20)は、同じ画像領域内で重なった位置に配置した構成が好ましい。
【0019】
図3に本発明の効果を示す。
図3(a)に示す画像(3)中の円弧状の軌道方向(F-F´線)に沿った観察方向をI1方向とし、円弧状の軌道方向とは異なる(G-G´線)観察方向をI2方向とする。
図3(b)に示す画像(3)を第1要素の配列方向であるI1方向に沿って観察した場合、観察角度の変化に伴い、円弧状画線上に入射光に対する反射光も連続的に変化する。この連続的な変化により、第1の画像(10)が動的及び立体的に視認される。なお、I1方向からの観察では、モアレ模様である第2の画像(20)も同時に視認されるが、光輝性の要素で形成された第1の画像(10)による動的効果及び立体効果が強調されるため、第2の画像(20)を視認することは困難となり、第1の画像(10)が支配的に視認される。
【0020】
また、I2方向に沿って観察した場合、
図3(c)に示す第2の画像(20)が画像(3)として視認される。これは、第1の画像(10)における円弧状画線上の入射角に対する反射光の変化は不連続であり、第1の画像(10)は動的及び立体的に視認することはできず、モアレ模様である第2の画像(20)が支配的に視認されるからである。
【0021】
(第1の画像)
第1の画像(10)について説明する。
図4は、第1の画像(10)の詳細を示す平面図である。本発明において第1の画像(10)は、少なくとも一つの立体模様領域(12)から成り、
図4は、太線で囲む5つの立体模様領域(12a、12b、12c、12d、12e)によって第1の画像(10)が形成された例である。立体模様領域(12)は、それぞれが第1の画像(10)を構成するパーツであり、立体模様領域(12)は複数配置されて、全体で第1の画像(10)を形成している。例えば、
図4における第1の画像(10)は、「N」を示す模様である。なお、明確に説明するために、立体模様領域(12a、12b、12c、12d、12e)を示す太線を図示しているが、仮想の線であり、実際の第1の画像(10)には形成されない。立体模様領域(12)の分割方法の詳細については後述する。
【0022】
図4における立体模様領域(12а)の拡大図に示すように、立体模様領域(12а)は、4つの円弧状の第1要素(11)から成る例を示している。また、第1要素(11)は、第1の方向(X1)に第1のピッチ(P1)で複数形成されている。
図4の拡大図は、立体模様領域(12а)に第1要素(11)が、複数の円弧状要素から構成された状態を示しているが、本発明の立体模様領域(12)における第1要素(11)は、立体模様領域(12a)内に少なくとも一つ以上有すればよい。
【0023】
図4の拡大図に示す立体模様領域(12a)内に配置された第1要素(11)において、始点(U)と終点(D)を結ぶ直線を基準線(H1)とした場合、基準線(H1)は同じ方向で万線状に配置される。その際、複数の第1要素(11)において、基準線(H1)は平行となる。基準線(H1)を同じ方向とすることで、第1要素(11)は、立体模様領域(12)内において、直線状の第1の方向(X1)に配置される。
【0024】
第1要素(11)は、平行に配置すると説明したが、異なる方向とすることも可能である。
図5は、第1要素(11)の他の配置形態を示す模式図である。
図5に示す立体模様領域(12)において、第1要素(11)の基準線(H1a、H1b、H1c、H1d)は、異なる方向で配置される。
【0025】
図6は、
図4に示す第1要素(11)を拡大した図である。第1要素(11)は、始点(U)、頂点(T)及び終点(D)を有し、始点(U)と終点(D)を結ぶ直線を基準線(H1)とした円弧状の要素である。始点(U)における基準線(H1)に対する第1要素(11)の接線(H2)が成す角度を、第1の角度(θ1)、終点(D)における基準線(H1)に対する第1要素(11)の接線(H3)が成す角度を、第2の角度(θ2)とする。
【0026】
第1要素(11)の始点(U)と終点(D)間とで、光源からの入射光は両眼視差が可能な範囲内において、異なる方向に反射することで、第1の画像(10)が立体画像として視認される。始点(U)において、基準線(H1)に対する円弧状の第1要素(11)の接線(H2)が成す角度(θ1又はθ2)が2度未満である場合には、光源からの反射光が、ほぼ同じ方向に反射するため、適当な観察距離において両眼視差が不可能となり、好ましくない。反対に、始点(U)において、基準線(H1)に対する円弧状の第1要素(11)の接線(H2)が成す角度(θ1又はθ2)が90度を超える場合には、始点(U)側と、終点(D)側とで、異なる方向に入射光は反射するが、両眼視差可能な範囲外となるため、好ましくない。
【0027】
始点(U)における基準線(H1)に対する第1要素の接線(H2)が成す第1の角度(θ1)と、終点(D)における基準線(H1)に対する第1要素の接線(H3)が成す第2の角度(θ2)が大きい(90度に近い)場合、肉眼で定位置の光源に対して、第1要素(11)上の光輝性を有して視認される範囲が大きくなる。
【0028】
反対に第1の角度(θ1)と第2の角度(θ2)が小さい(0度に近い)場合、肉眼で定位置の光源に対して、第1要素(11)上の光輝性を有して視認される範囲が小さくなる。
【0029】
第1の画像(10)は、基材(2)に対する観察角度を変化させることで、動的及び立体的に視認することが可能である。動的及び立体的に視認される理由は、基材(2)に対する観察角度の変化に伴い、光輝性を有する第1要素(11)の光源からの光を反射する箇所が変化するためである。第1要素(11)を円弧状又は円弧を延在させた円形状の要素とすることで、第1要素(11)の光源からの光を反射する箇所は、円弧状又は円弧を延在させた円形状の要素上を連続的に変化していく。よって、第1の画像(10)は連続的に動いているように視認される。
【0030】
前述したように、第1要素の形状は、基本的に始点と終点が1つずつから成る円弧状であるが、
図7(a)に示す第1要素(11a)と第1要素(11b)の円弧の始点(U)と終点(D)それぞれが連結して円形を形成してもよい。
図7(b)に示す第1の画像(10)は、
図7(a)に示す第1要素(11a)と第1要素(11b)が連結した要素から構成される。そして、
図7(b)を所定の観察角度から観察した際、視認される画像が、
図7(c)である。
図7(c)は立体画像である円の一部が重なった状態で2つ視認することができる。これは、1つの円弧状画線によって、反射光が1つ生じるため、一つの画像が形成でき、円弧状画線を2つ合わせた円形では、2つの反射光が同時に生じるため、2つの画像が出現するためである。第1要素(11)が円形状であった場合、始点(U)、頂点(T)、終点(D)を第1要素(11)から見出すことはできないが、円弧状の第1要素(11)からなる第1の画像(10)と同様に、連続的に動いているように視認される。
【0031】
次に、第1要素(11)を配置する第1のピッチ(P1)について説明する。第1要素(11)の形成方法、用いる基材(2)及び画線幅を考慮して、第1のピッチ(P1)は適宜設定する。人が手に取って観察するようなセキュリティ印刷物を作製する場合、ピッチ(P1)は5~1000μmの範囲内とする。第1のピッチ(P1)が5μm未満である場合、基材(2)上に第1要素(11)を形成しづらくなる。反対に、第1のピッチ(P1)が1000μmを超える場合には、隣り合う第1要素(11)間の光輝性を有しない領域が肉眼で視認可能となる。それにより、立体模様領域(12)内において、光輝性を有しない面積が存在し、「N」の模様を立体的に視認する際の視認性が低下するため、好ましくない。なお、画像形成体(1)を、ポスター、広告物等に意匠性の向上を目的として用いる場合には、画像形成体(1)が大きくなることから、画像形成体(1)の大きさの変化に伴い、第1のピッチ(P1)も変化する。よって、ポスターに形成される画像形成体(1)と観察者との距離により、第1のピッチ(P1)は、前述した範囲に限らず適宜設定する。
【0032】
なお、
図4における第1の画像(10)の拡大図では、第1のピッチ(P1)は、すべて同じ規則的なピッチを図示しているが、ランダムなピッチとすることも可能である。
【0033】
基準線(H1)の長さは、第1の画像(10)の大きさや、第1の画像(10)と観察者との距離に合わせて適宜設定する必要がある。なお、人が手に取って観察するような印刷物を作製する場合、基準線(H1)の長さは0.5~65mmの範囲内とする。本発明の第1の画像(10)は、両眼視差を用いることで、立体視することが可能である。そのため、基準線(H1)の長さは、一般的な人間の両目間の距離である65mm以下に留める必要がある。また、万人がそれと感じる適当な遠近感を生み出すためには、0.5mm以上の所定距離で形成する必要がある。よって、基準線(H1)の長さを、前述の範囲内とすることで、両眼視差により第1の画像(10)を視認しやすくなる。
【0034】
また、画像形成体(1)を、ポスター、広告物等に意匠性の向上を目的として用いる場合には、画像形成体(1)が大きくなることから、画像形成体(1)の大きさの変化に伴い、基準線(H1)の長さは長くなる。よって、画像形成体(1)と観察者との距離により、基準線(H1)の長さは、前述した範囲に限らず適宜設定する。
【0035】
本発明において、
図4の拡大図に示す第1要素(11)は、頂点(T)を中心として左右対称の形状として図示しているが、
図8(b)のように左右非対称とすることも可能である。
【0036】
図8(b)に示す、第1要素(11)は、頂点(T)を中心とした左右非対称である場合の拡大図である。左右非対称の形状とした場合には、始点(U)における基準線(H1)に対する第1要素(11)の接線(H2)が成す角度(θ1)と、終点(D)における基準線(H1)に対する第1要素(11)の接線(H3)が成す角度(θ2)は異なる。その範囲はそれぞれ2度~90度の範囲内で適宜設定することが可能である。
【0037】
なお、第1の画像(10)は、前述した文字形状に限らず、第1要素(11)を複数配置することが可能であれば、限定はされない。
図9は、第1の画像(10)の他の形状を示す平面図である。第1の画像(10)は、
図9(a)に示す円形状や、
図9(b)に示す文字形状「A」や、
図9(c)に示す顔形状とすることも可能である。
図9(a)、
図9(b)及び
図9(c)においても、立体模様領域(12)とは、太線に示すように、第1の画像(10)を構成するパーツそれぞれのことであり、第1の画像(10)が立体視可能とするように、適宜形成する。
【0038】
第1の画像(10)を形成する複数の第1要素(11)の各基準線(H1)の中心を結ぶ仮想線(J)が、一つの立体模様領域(12)内で一本となるように、第1の画像(10)を立体模様領域(12)に分割する。例えば、
図9(a)において、第1の画像(10)を形成する複数の第1要素(11)の各基準線(H1)の中心を結ぶ仮想線(J)は一本である。よって、第1の画像(10)は、一つの立体模様領域(12)から構成される。
【0039】
また、
図9(b)において、第1の画像(10)を形成する複数の第1要素(11)を、立体模様領域(12a)の下側から配置した場合、第1要素(11)の配列がくずれる箇所が発生する。この配列がくずれる箇所を、立体模様領域(12b)に示すように分割することで、各立体模様領域(12)内において、各基準線(H1)の中心を結ぶ仮想線(J)が一本となり、第1の画像(10)は、立体視可能な画像となる。
【0040】
なお、複数の立体模様領域(12)は、領域ごとに異なる方向に第1要素(11)を配置することも可能である。
【0041】
例えば、
図9(c)に示す第1の画像(10)において、立体模様領域(12)である目、鼻及び口において、それぞれの立体模様領域(12)内において、第1要素(11)の基準線は、いずれも直線状の第1の方向で配置されているが、目をX11の方向(X11)で配置し、鼻をX12の方向(X12)で配置し、口をX13の方向(X13)で配置し、X11の方向(X11)、X12の方向(X12)及びX13の方向(X13)を互いに異なる方向とすることも可能である。
【0042】
また、
図5において説明したように、本発明の画像形成体(1)は、一つの立体模様領域(12)内において、第1要素(11)の基準線(H1)は異なる方向とすることも可能である。
【0043】
例えば、
図9(c)に示す第1の画像(10)において、立体模様領域(12)である目、鼻及び口において、目は第1要素(11)の基準線(H1)を
図5にて説明した異なる方向で配置し、鼻及び口は、
図4にて説明した基準線(H1)を同じ方向で配置することも可能である。
【0044】
基準線(H1)が同じ方向で配列した立体模様領域(12)と、異なる方向で配列した立体模様領域(12)は、観察角度の変化により、互いに異なる方向に動的及び立体的に視認される。よって、
図9(c)においては、鼻及び口は同じ方向に動的及び立体的に視認されるが、目は鼻及び口とは異なる方向に動的及び立体的に視認され、第1の画像(10)は、より複雑に動的及び立体的に視認される。
【0045】
図10は、第1要素(11)の断面形状を示す図である。
図10(a)は、第1要素(11)の平面図であり、
図10(b)及び
図10(c)は、
図10(a)のA-A’線における断面図である。
図10(b)及び
図10(c)に示すように、第1要素(11)は、基材(2)に対して、凸形状又は凹形状である。
【0046】
図10(b)示す凸形状の第1要素(11)の高さ(Y1)は、人が手にして観察するような画像形成体(1)を作製する場合、5~1000μmの範囲内で適宜設定する必要がある。なお、基材(2)に対する第1要素(11)の高さが1000μm以上になると、基材(2)に対して、凸形状要素として作製しづらくなり、好ましくない。ポスターや看板のように画像形成体(1)のサイズが大きくなる場合は、高さ(Y1)も高くする必要がある。
【0047】
図10(c)示す凹形状の第1要素(11)の深さ(Z1)は、人が手にして観察するような画像形成体(1)を作製する場合、5~1000μmの範囲内で適宜設定する。なお、基材(2)に対する第1要素(11)の深さが1000μm以上になると、基材(2)に対して、要素として作製しづらくなり、好ましくない。また、基材の厚さが2mm未満である場合、深さ(Z1)が大きくなると基材(2)の強度が低下するため、基材(2)の厚さの1/2以下に留めることが望ましい。なお、ポスターや看板のように画像形成体(1)のサイズが大きくなる場合は、深さ(Z1)も大きくする必要がある。
【0048】
以下、第1要素(11)の形成方法について説明する。第1要素(11)を形成する方法には、基材(2)上に、光輝性を有するインキで盛りのある第1要素(11)として形成する方法と、光輝性を有する基材(2)を凹形状及び凸形状の少なくとも一方に変形させて第1要素(11)を形成する方法がある。
【0049】
インキで盛りのある要素として形成する方法とは、基材(2)に対して公知の印刷方法に適した版面及び光輝性を有するインキを用いて印刷を行うことで形成する。第1要素(11)を凹版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷により形成する場合には、形成された第1要素(11)は、基材(2)に対して、盛りのある凸形状の要素として形成される。
【0050】
基材(2)を凹形状又は凸形状に変形させて第1要素(11)を形成する方法とは、光輝性を有する基材(2)をエンボス加工、レーザ加工等を行うことが可能な公知の加工機により、第1要素(11)の形状に合わせて加工することで形成される。
【0051】
なお、光輝性を有しない基材(2)を用いた際においても、凹形状又は凸形状に変形させた後、基材(2)における変形箇所上に、光輝性を有するインキを印刷により付与することで第1要素(11)を形成することが可能である。例えば、公知の抄紙機を用いてすき入れにより基材(2)を、凹形状又は凸形状に変形させた後、変形箇所上に、光輝性を有するインキをベタ印刷により付与することで、第1要素(11)が形成される。
【0052】
続いて、第1要素(11)を形成する材料について説明する。第1要素(11)は、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性を有する光輝性材料によって形成される。
【0053】
明暗フリップフロップ性とは、観察角度の変化により明度の変化が生じることであり、本発明において、動的及び立体的に視認される画像は、第1要素(11)上の入射光を正反射する部位から成る。正反射した入射光と拡散反射した入射光のコントラストが大きいことで、肉眼において、動的及び立体的に画像を視認することが可能となる。
【0054】
明暗フリップフロップ性を有する材料には、アルミニウム粉末、銅粉末、亜鉛粉末、錫粉末、真鍮粉末又はリン化鉄等の一般的な金属粉顔料や、虹彩色パール顔料、鱗片状顔料等の一般的なパール顔料を含むインキや、透明インキ、グロス系のインキがある。
【0055】
また、カラーフリップフロップ性とは、観察角度の変化により色彩の変化が生じることであり、本発明において、動的及び立体的に視認される画像は、第1要素(11)上の入射光を正反射する部位から成る。正反射光下の色彩と拡散反射光下の色彩のコントラストが大きいことで、肉眼において動的及び立体的に画像を視認することが可能となる。
【0056】
カラーフリップフロップ性を有する材料には、ガラスフレーク顔料、コレステリック液晶顔料、エフェクト顔料等が存在し、機能性インキとしてはOVI(Optical Variable Ink)、CSI(Color Shifting Ink)、コレステリック液晶インキ等がある。
【0057】
また、基材(2)に用いることが可能な明暗フリップフロップ性及び/又はカラーフリップフロップ性を有する材料には、アルミ、ステンレス等の一般的な金属材料や、フィルム、プラスチック等の樹脂材料の他に、パールインキ、平滑な表面を形成可能な塗料等が塗工された基材(2)があるが、第1要素(11)が、明暗フリップフロップ性及び/又はカラーフリップフロップ性を有していれば、形成する材料に限定はない。第1要素(11)は、本出願人が先に開示した特許第4783943号に記載の微細構造、いわゆる回折格子で形成してもよい。以下、本実施の形態においては、第1要素(11)が光輝性を有する材料により形成された例について説明する。
【0058】
次に、第1の画像(10)を視認するための観察角度について説明する。
図11は、画像形成体(1)が付与された基材(2)を観察するための視点(E1、E2)を示す図である。なお、第1要素(11)は、基材(2)上における第1の方向(X1)に配置されている。
【0059】
本発明において、基材(2)、定位置の光源(Q)及び視点は、
図11(a)に示す[002]に記載のF-F´線に沿ったI1方向からの位置関係であり、第1の観察角度(θ3)から観察したとき、
図11(a)に示す位置関係であり、第2の観察角度(θ4)から観察したとき、
図11(b)に示す位置関係である。
【0060】
第1の観察角度(θ3)とは、拡散反射光下での観察において、第1要素(11)が定位置の光源(Q)からの入射光に対して、光輝性を有して視認されない観察角度である。例えば、第1要素(11)を、パールインキで形成した場合、パールインキは拡散反射光下の観察においては、光源(Q)からの入射光を反射しない。よって、第1要素(11)は、肉眼では反射光が視認できず、光輝性を有しない要素として視認される。
【0061】
第2の観察角度(θ4)とは、正反射光下での観察であって、第1要素(11)が定位置の光源(Q)からの入射光に対して、光輝性を有して視認される観察角度である。例えば、第1要素(11)を、パールインキで形成した場合、パールインキは、正反射光下の観察においては、光源(Q)からの入射光を反射する。よって、第1要素(11)は、反射光を有し、肉眼において光輝性を有する要素として視認される。
【0062】
なお、第1の観察角度(θ3)及び第2の観察角度(θ4)は、第1要素(11)を形成する材料により、基材(2)、光源(Q)及び視点の位置関係は変化する。前述のとおり、本発明における第1の観察角度(θ3)とは、第1要素(11)が定位置の光源(Q)からの入射光に対して、光輝性を有して視認されない領域のことであり、第2の観察角度(θ4)とは、第1要素(11)が定位置の光源(Q)からの入射光に対して、光輝性を有して視認される領域のことである。
【0063】
図12は、第2の観察角度(θ4)における第1要素(11)の視認原理を示す模式図である。
図12(a)に示すように、第2の観察角度(θ4)において、第1要素(11)を形成する光輝性を有する材料は、光源(Q)からの入射光を反射する。
【0064】
前述のとおり、本発明の第1要素(11)は、基材(2)に対して凹形状又は凸形状の円弧状又は円形状の要素である。よって、光源(Q)からの反射光(V1、V2、V3、V4、V5)は、一方向ではなく、他方向に反射する。なお、円弧状の要素を、始点と終点を一点に合わせて配置した
図7(b)のような円形状とした場合には、
図12(b)に示す反射光(V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10)はもう一つ形成される反対側の円弧状の要素からも反射する。
【0065】
図12(a)に示すように、観察者の左目(L)の視野角度(θL)から反射光(V1、V2)は視認される。一方、反射光(V3、V4、V5)は、左目(L)の視野角度(θL)の範囲外であることから、視認されない。よって、第1要素(11)は、観察者の左目(L)には、
図12(c)に示すように、左目(L)の視野角度(θL)内となる始点(U)側の点線部は、光輝性を有して視認されるが、左目(L)の視野角度(θL)外となる終点(D)側の実線部は、光輝性を有しない要素として視認される。
【0066】
一方、観察者の右目(R)の視野角度(θR)内にある反射光(V4、V5)は視認されるが、反射光(V1、V2、V3)は、右眼(R)の視野角度(θR)の範囲外であることから、視認されない。よって、第1要素(11)は、観察者の右目(R)には、
図12(d)に示すように、右眼(R)の視野角度(θR)内となる終点(D)側の点線部は光輝性を有して視認されるが、右眼(R)の視野角度(θR)外となる始点(U)側の実線部は光輝性を有しない要素として視認される。
【0067】
図12(c)に示す左目(L)で視認される第1要素(11)の光輝性を有して視認される箇所と、
図12(d)に示す右目(R)で視認される第1要素(11)の光輝性を有して視認される箇所は、左右の視点を結ぶ線(G)に対して、左右に位相差を持った要素として視認される。よって、同一画像を複数並べで形成しなくても、両眼視差により、観察者には
図12(e)に示すように、第1要素(11)は立体画像として視認される。
【0068】
次に、画像形成体(1)を、各観察角度(θ3、θ4)にて観察した際の視認原理について説明する。
【0069】
図13は、第1要素(11)における基準線が、同じ方向で万線状に配置された画像形成体(1)を、第1の観察角度(θ3)にて観察した際の平面図である。基材(2)に対して第1の観察角度(θ3)にて観察した場合、第1要素(11)は、光輝性を有しない要素として視認される。よって、複数の第1要素(11)から成る第1の画像(10)は、平面的な画像として視認される。
【0070】
図14(a1)は、観察者の左目(L)に視認される第1Lの画像(3L)を示す平面図であり、
図14(a2)は、
図14(a1)の一部を拡大した図である。
図14(a2)に示すように、第2の観察角度(θ4)において観察者の左目(L)には、第1要素(11)における点線部が光輝性を有して視認され、実線部は、光輝性を有しない要素として視認される。よって、観察者の左目(L)には、
図14(a2)に示す、複数の第1要素(11)における、光輝性を有して視認される箇所から成る第1Lの画像(3L)が視認される。
【0071】
図14(b1)は、観察者の右目(R)に視認される第1Rの画像(3R)を示す平面図であり、
図14(b2)は、
図14(b1)の一部を拡大した図である。
図14(b2)に示すように、第2の観察角度(E2)において観察者の右目(R)には、第1要素(11)における点線部が光輝性を有して視認され、実線部は、光輝性を有しない要素として視認される。よって、観察者の右目(R)には、
図14(b2)に示す、複数の第1要素(11)における、光輝性を有して視認される箇所から成る第1Rの画像(3R)が視認される。
【0072】
図14(c1)は、観察者の両目(L、R)に視認される第1の画像(10)を示す平面図であり、
図14(c2)は、
図14(c1)の一部を拡大した図である。前述したように、第2の観察角度(θ4)において観察者の左目(L)には、
図14(a1)に示す第1Lの画像(3L)が視認され、右目(R)には、
図14(b1)に示す第1Rの画像(3R)が視認される。
【0073】
前述のとおり、左目(L)で視認される第1要素(11)と、右目で視認される第1要素(11)は、始点(U)と終点(D)を結ぶ直線である基準線(H1)に対して、位相差を持った画線として視認されることから、第1Rの画像(3R)と、第1Lの画像(3L)においても、基準線(H1)に対して位相差を持った画像として観察者の両目(L、R)にそれぞれ視認される。よって、右目で視認される第1の画像(10)と、左目で視認される第1の画像(10)の位相が異なることで、両眼視差により観察者には第1の画像(10)が、立体的な画像として視認される。
【0074】
さらに、観察角度を変化させることで、その観察角度の変化に伴い、動的及び立体的に第1の画像(10)を視認することが可能である。次に、第1の画像(10)が動的及び立体的に視認される原理について説明する。
【0075】
図15(a)は、
図13に示す画像形成体(1)における、基材(2)に対する観察角度の変化を示す模式図であり、
図15(b1)及び
図15(b2)は、
図15(a)において視認される第1の画像(10)を示す平面図及び拡大図である。
【0076】
図15(a)に示すように、第1要素(11)が光輝性を有する画線として視認される領域(θ5)内において、基材(2)に対する視点を、連続的に変化させて観察した場合、視点の変化に伴い、第1要素(11)における光源(Q)からの入射光を反射する位置が始点側から終点側へと徐々に変化する。それにより、
図15(b2)に点線で示す第1要素(11)の光輝性を有する箇所も、
図15(b1)に示す矢印方向に連続的に動いているように視認される。
【0077】
例えば、
図15(a)において視点をE2aからE2bへと連続的に角度を変化させて観察した場合、第1の画像(10)は、右から左へと動いているように視認され、反対に、視点がE2bからE2aへと連続的に変化させて観察した場合、第1の画像(10)は、左から右へと動いているように視認される。なお、第1の画像(10)の左右に動く最大幅(動き量)は、第1要素(11)の光輝性を有する箇所の変化量と同一であることから、基準線(H1)の長さと同一の範囲内で、左右に動く。
【0078】
このように、本発明の第1の画像(10)は、立体的、かつ、連続的に動いているように視認することが可能となる。
【0079】
なお、画像形成体(1)が、
図4に示した基準線(H1)を同じ方向とした第1要素(11)から成る場合、
図12(a)に示す、左右の視点を結ぶ線(G)と、基準線(H1)が略平行となるように観察することで、第1要素(11)及び第1の画像(10)を立体的に視認することが可能となる。
【0080】
なお、画像形成体(1)が、
図5に示した基準線(H1)を異なる方向とした第1要素(11)から成る場合、例えば、
図5に示した基準線(H1a)を0度、基準線(H1b)を5度、基準線(H1c)を10度及び基準線(H1d)を15度とした場合には、観察者の右目(R)の視野角度(θR)と、左目の視野角度(θL)の範囲内に、異なる方向に配置した基準線の最小角度(
図4においては、基準線(H1a)の0度が最小角度)と最大角度(
図4においては、基準線(H1d)の15度が最大角度)の第1要素(11)が視認可能となるように、画像形成体(1)と観察者の目の距離とを適宜調節する。
【0081】
(第2の画像)
次に、モアレを形成する第2の画像(20)について説明する。
図16(a)は、第2の画像(20)の平面図であり、第2の画像(20)は基材(2)の少なくとも一部に形成されている。
図16(b)に示すように、第2の画像(20)は、第2-1模様(21a)と第2-2模様(22a)が重なる配置で形成されて成る。モアレ模様とは、模様を構成する要素のピッチや配置角度、要素の形状が異なることで要素同士の干渉により生じる模様である。第2-1模様(21a)と第2-2模様(22a)を重ね合わせることによって、第2-1模様(21a)を構成する第2-1要素(21b)と第2-2模様(22a)を構成する第2-2要素(22b)が干渉し、モアレが視認できる。なお、
図16に示した第2-1模様(21a)と第2-2模様(22a)は、説明を簡単にするものであり、
図16に示す模様に限定されるものではない。
【0082】
(第2-1模様)
図17を用いて、第2-1模様(21a)について説明する。
図17(a)は、第2-1模様(21a)の平面図、
図17(b)は第2-1模様(21a)の一部拡大図、
図17(c)は
図17(b)のB‐B´線における第2-1要素(21b)を凹形状とした第2-1模様(21a)の断面図、
図17(d)は、
図17(b)のB‐B´線における第2-1要素(21b)を凸形状とした第2-1模様(21a)の断面図である。
図17(b)に示すように、第2-1模様(21a)は、第2-1要素(21b)を複数配置して成る。具体的には、第1の直径(S1)を有する第2-1要素(21b)が、第2の方向(X2)に第2のピッチ(P2)かつ、第3の方向(X3)に第3のピッチ(P3)にて複数配列して成る。
図17(c)に示す第2-1模様(21a)を構成する第2-1要素(21b)の凹形状の断面図は第2の深さ(Z2)を有し、
図17(d)に示す第2-1模様(21a)を構成する第2-1要素(21b)の凸形状の断面図は第2の高さ(Y2)を有す。
【0083】
第2-1要素(21b)の第1の直径(S1)と第2の深さ(Z2)は、いずれも全て同じ大きさであることが好ましい。なお、人が手にして観察するような画像形成体(1)を作製する場合、第1の直径(S1)は、20μmから500μmの範囲内に設計する。前述した直径の範囲内であれば、それぞれ異なる径であってもよい。第2の深さ(Z2)は、10μmから250μmの範囲内に設計する必要がある。なお、前述した深さの範囲内であれば、それぞれ異なる深さであってもよい。第1の直径(S1)と、第2の深さ(Z2)又は第2の高さ(Y2)が、当該範囲未満の場合は、モアレ模様が不鮮明となる。
【0084】
また、第2-1要素(21b)の第2のピッチ(P2)及び第3のピッチ(P3)の間隔は、40μmから1000μmである。各ピッチ(P2、P3)は、第2-1要素(21b)の第1の直径(S1)に合わせて適宜設定することができる。第1の直径(S1)が大きい場合は、一定面積当たりに占める第2-1要素(21b)の割合が少なくなる。すなわち、第2の画像(20)を構成する要素の数が少なくなるため、モアレの視認性が低下する。例えば、各ピッチ(P2、P3)が第1の直径(S1)の4倍だと、発現するモアレの視認性が低下する傾向がある。
【0085】
(第2-2模様)
図18を用いて、第2-2模様(22a)について説明する。
図18(a)は、第2-2模様(22a)の平面図、
図18(b)は第2-2模様(22a)の一部拡大図、
図18(c)は
図18(b)のC‐C´線における第2-2要素(22b)を凹形状とした第2-2模様(22a)の断面図、
図18(d)は、
図18(b)のC‐C´線における第2-2要素(22b)を凸形状とした第2-2模様(22a)の断面図である。
図18(b)に示すように、第2-2模様(22a)は、第2-2要素(22b)を複数配置して成る。具体的には、第2の直径(S2)を有する第2-2要素(21b)が、第2の方向(X2)に第2のピッチ(P2)かつ、第4の方向(X4)に第5のピッチ(P5)にて複数配列して成る。
図18(c)に示す第2-2模様(22a)を構成する第2-2要素(22b)の凹形状の断面図は第3の深さ(Z3)を有し、
図18(d)に示す第2-2模様(22a)を構成する第2-2要素(22b)の凸形状の断面図は第3の高さ(Y3)を有す。
【0086】
第2-2要素(22b)の第2の直径(S2)と第3の深さ(Z3)は、前述した第2-2要素(22b)と同様に、いずれもすべて同じ大きさであることが好ましい。なお、人が手にして観察するような画像形成体(1)を作製する場合、第2の直径(S2)は、20μmから500μmの範囲内に設計する。前述した直径の範囲内であれば、異なる径であってもよい。第3の深さ(Z3)は、10μmから250μmの範囲内に設計する必要がある。なお、前述した深さの範囲内であれば、異なる深さであってもよい。第2の直径(S2)と、第3の深さ(Z3)又は第3の高さ(Y3)が、当該範囲未満の場合は、モアレ模様が不鮮明となる。
【0087】
また、第2-2要素(22b)の第4のピッチ(P4)と第5のピッチ(P5)の間隔は、40μmから1000μmである。各ピッチ(P4、P5)は、第2-2要素(22b)の第2の直径(S2)に合わせて適宜設定することができる。第2の直径(S2)が大きい場合は、一定面積当たりの第2-2要素(22b)が占める割合が少なくなるため、モアレの視認性が低下する。例えば、各ピッチ(P4、P5)が、第2の直径(S2)の4倍だと、発現するモアレの視認性が低下する傾向がある。
【0088】
(第2の画像における実施の形態)
次に、
図19を用いて、第2の画像(20)における実施の形態を説明する。第2の画像(20)における実施の形態1は、
図17(a)に示す第2-1模様(21a)と、
図18(a)に示す第2-2模様(22a)によって形成される。第2-1要素(21b)と第2-2要素(22b)の少なくともどちらか一方は、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性を有し、
図19に示す第2-1要素(21b)の第3のピッチ(P3)と、第2-2要素(22b)の第5のピッチ(P5)は異なるピッチで形成されている。
図19の拡大図において示される重複領域(23b)は、第2-1要素(21b)と第2-2要素(22b)によって形成される。なお、重複領域(23b)の詳細については後述する。
図19では、第2-1要素(21b)の第3のピッチ(P3)と、第2-2要素(22b)の第5のピッチ(P5)は同じピッチとしているが、異なったピッチであってもよい。また、第2の方向(X2)と第4の方向(X4)、第3の方向(X3)と第5の方向(X5)は必ずしも同一とする必要はなく、角度のずれが生じても構わない。これは前述のとおり、第2-1要素(21b)と第2-2要素(22b)のピッチ、配列角度の少なくとも一つが異なることで、要素同士の干渉によりモアレを生じさせることができるためである。
【0089】
第2-1要素(21b)と第2-2要素(22b)のいずれか一方が明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性を有する必要がある。これは、第2-1要素(21b)と、第2-2要素(22b)との光源からの光の反射率を異ならせることで、モアレを視認させるために必要な条件である。
【0090】
(要素の形状)
図20を用いて、重複領域(23b)について説明する。
図20に示す構成において、第2-1要素(21b)と第2-2要素(22b)は、断面形状が半球の円形状で構成された例を示しているが、半球状の楕円形状でもよく、曲面を有すれば形状は問わない。また、第2-1要素(21b)と第2-2要素(22b)のどちらか一方を円形状とし、他方の形状を異なる楕円形状としてもよく、また、第2-1要素(21b)と第2-2要素(22b)の形状を共に楕円形状あるいは、他の形状としてもよい。また、第2-1要素(21b)と第2-2要素(22b)の直径(S1、S2)は互いに異なる大きさにしてもよく、深さ(Z2、Z3)もしくは高さ(Y2、Y3)についても、同じでも互いに異ならせてもよい。なお、ポスターや看板のように、画像形成体(1)が大きくなる場合は、第1の直径(S1)と第2の直径(S2)の大きさの範囲と、第2の深さ(Z2)と第3の深さ(Z3)、第2の高さ(Y2)と第3の高さ(Y3)についても大きくする必要があり、モアレの視認性に応じて適宜調整する。
【0091】
モアレに動的効果を付与するために要素(21b、22b)を凹形状又は凸形状とする必要がある。要素を凹形状又は凸形状とすることで、光源の位置の変化に伴い、要素上の光源を反射する面も変化するため、凹形状又は凸形状の要素から構成されるモアレ画像を動的に視認することができる。
【0092】
図20(a)は、第2の画像(20)の拡大図である。重複領域(23b)は、
図20(a)に示すように、第2-1要素(21b)と第2-2要素(22b)によって形成される。
図20(b)は、
図20(a)に示す平面図における重複領域(23b)の一つを拡大したものである。重複領域(23b)は、
図20(b)に示す第2-1要素(21b)と第2-2要素(22b)が重なり合った幅(S3)を有する。
図20(c)は、
図20(a)のD-D´線における断面図である。断面図の拡大図である
図20(d)に示す第2-3要素(23b)は、第2-1要素(21b)の第2の深さ(Z2)と、第2-2要素(22b)の第3の深さ(Z3)とは異なる第4の深さ(Z4)を有する。なお、モアレが発現するように重複領域(23b)が形成されれば、
図20(d)に示すような第2-1要素(21b)と第2-2要素(22b)の深さ(Z4)に制約はない。
【0093】
重複領域(23b)は、第2-1要素(21b)の第2のピッチ(P2)と第2-2要素(22b)の第4のピッチ(P4)が異なるピッチで配列されていることから、第3の幅(S3)と第3の深さ(Z3)は、第2-1要素(21b)の第2のピッチ(P2)と第2-2要素(22b)の第4のピッチ(P4)の差に応じて周期的に変化する。
【0094】
図21において、第2-1要素(21b)の第3のピッチ(P3)と、第2-2要素(22b)の第5のピッチ(P5)は同じピッチとしているが、
図21に示すように、第2-1要素(21b)の第3のピッチ(P3)と、第2-2要素(22b)の第5のピッチ(P5)を異ならせてもよい。
図21では、第5のピッチ(P5)は、第3のピッチ(P3)より間隔が短い構成となっている。
【0095】
また、
図22(a)に示すように、第2-1要素(21b)における第2の方向(X2)及び、第2-2要素(22b)における第4の方向(X4)を曲線、第2-1要素(21b)における第3の方向(X3)及び、第2-2要素(22b)における第5の方向(X5)を中心方向とし、第2-1要素(21b)及び第2-2要素(22b)の配列方向をずらして形成して、
図24(b)に示すように、同心円状の第2の画像(20)を形成してもよい。
【0096】
また、
図23(a)に示すように、第2-1模様(21a)を構成する第2-1要素(21b)と、第2-2´模様(22´a)を構成する第2-2´要素(22´b)の配列方向をずらして配置してもよい。
図23(b)に示すように、第2-2´要素(22´b)の配列方向を第6の方向(X6)として、第2-1要素(21b)の配列方向である第2の方向(X2)に対し、第6の角度(θ6)だけ傾けて配置したものとなっている。
【0097】
別の形態として、第2-1模様(21a)と第2-2模様(22a)の一方を構成する要素を半球状のドット形状、他方を画素としたものがある。この例について、以下説明する。
【0098】
図24(a)は、第2の画像(20)における実施の形態の平面図であり、
図24(b)は構成図である。第2の画像(20)は、第2-1模様(21a)と第2-2´´模様(22´´a)が重なる配置で形成されてなる。なお、
図25において示す複数の「N」が、第2-2´´模様(22´´a)であり、1つ1つの「N」は最小単位である画素により形成されている。
【0099】
図25を用いて、第2-2´´模様(22´´a)について説明する。
図25は、第2-2´´模様(22´´a)の平面図である。
図25に示す第2-2´´模様(22´´a)は、第2-2´´要素(22´´b)が第2の方向(X2)に第6のピッチ(P6)、第3の方向(X3)に第7のピッチ(P7)にて複数配列して成る。
【0100】
なお、本発明における画素とは、画像形成体(1)の画像(3)を形成する最小単位であり、1つ以上の画素により、第2-2´´模様(22´´a)を形成している。
図25では画素の集合により「N」を構成しているが、他の文字を表してもよい。また、画素の形状は、円や三角形、四角形を含む多角形、星形等の各種図形、あるいは記号数字などであってもよい。
【0101】
第2-2´´要素(22´´b)はいずれも全て同じ大きさであることが好ましい。なお、人が手にして観察するような画像形成体(1)を作製する場合、第2-2´´要素(22´´b)の縦幅(R1)及び横幅(R2)は、20μmから500μmの範囲内に設計する。前述した直径の範囲内であれば、それぞれ長さであってもよい。第2-2´´要素(22´´b)の縦幅(R1)及び横幅(R2)が当該範囲未満の場合は、モアレ模様が不鮮明となる。当該範囲を超えた場合は、モアレ模様の発現性が低下する。なお、ポスターや看板のように、画像形成体(1)が大きくなる場合は、縦幅(R1)及び横幅(R2)も大きくする必要があり、モアレの視認性に応じて、縦幅(R1)及び横幅(R2)適宜調整する。
【0102】
また、第2-2´´要素間の第6のピッチ(P6)と第7のピッチ(P7)の間隔は、40μmから1000μmである。各ピッチ(P6、P7)は、第2-2´´要素(22´´b)の縦幅(R1)及び横幅(R2)に合わせて適宜設定することができる縦幅(R1)及び横幅(R2)が大きい場合は、一定面積当たりに占める第2-2´´要素(22´´b)の割合が少なくなる。すなわち、第2の画像(20)を構成する要素の数が少なくなるため、モアレの視認性が低下する。例えば、各ピッチ(P6、P7)が縦幅(R1)及び横幅(R2)の4倍だと、発現するモアレの視認性が低下する傾向がある。
【0103】
図26を用いて第2の画像(20)について説明する。第2の画像(20)における実施形態は前述したとおり、第2-1模様(21a)と第2-2´´模様(22´´a)によって形成される。第2-1要素(21b)と第2-2´´要素(22´´b)の少なくともどちらか一方は、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性を有す。
【0104】
図26(b)は、
図26(a)の拡大図を示す。
図26(b)に示すように、第2-1要素(21b)の第3のピッチ(P3)と第2-2´´要素(22´´b)の第7のピッチ(P6)、第2-1要素(21b)の第2のピッチ(P2)と第2-2´´要素(22´´b)の第6のピッチ(P6)はそれぞれ異なるピッチで形成されている。また、第2の方向(X2)と第4の方向(X4)、第3の方向(X3)と第5の方向(X5)は必ずしも平行に重ね合わせる必要はなく、角度のずれが生じてもかまわない。
【0105】
図26(c)は、
図26(b)の拡大図を示す。
図26(c)に示すように、第2-1要素(21b)が重なっている箇所は、本発明における重複領域である(図中の破線)である。
【0106】
図26(d)は、
図26(c)のE-E´線における断面図である。
図26(d)に示す重複領域(23´´b)は、第2-1要素(21b)の第2の深さ(Z2)と、第2-2´´要素(22´´b)の第5の深さ(Z5)とは異なる第6の深さ(Z6)を有する。なお、モアレが発現するように重複領域(23´´b)が形成されれば、
図26(d)に示すような第2-1要素(21b)と第2-2´´要素(22´´b)の第6の深さ(Z6)に制約はない。
【実施例0107】
本発明の実施例について説明するが、この説明は本発明を限定するものではない。なお、実施例において画像形成体(1)は、
図1を例として説明する。
【0108】
ステンレス板を基材(2)とし、基材(2)の上に第1の画像(10)及び第2の画像(20)を作製する。
【0109】
図1に示す第1の画像(10)を構成する第1要素(11)を左右対称の円弧状画線とし、第1のピッチ(P1)を100μmとし、基準線(H1)を3mmとした。
【0110】
また、第1要素(11)において、始点(U)における基準線(H1)に対する円弧状の第1要素の接線(H2)が成す角度(θ1)は45度とし、終点(D)における基準線に対する接線(H3)が成す角度(θ2)は45度とした。
【0111】
第1要素(11)を、パールインキ(ファインインキ パールメジューム DIC製)により、スクリーン印刷機を用いて基材(2)上にスクリーン印刷により印刷することで、「N」形状の第1の画像(10)を形成した。なお、パールインキは、第1の観察角度(E1)では半透明であり、第2の観察角度(E2)では、金色の干渉光を呈するインキである。第1要素(11)を印刷する際には、公知の製版方法により作製した、スクリーン印刷版面を用いた。
【0112】
第2の画像(20)は、第2-1模様(21a)上に第2-2模様(22a)に重ねて形成する。第2-1模様(21a)を構成する第2-1要素(21a)における第2のピッチ(P2)を100μm、また、第2-2要素(22b)における第3のピッチ(P3)を95μmとし、第2-1模様(21a)を構成する第2-1要素(21b)を、直径30μmの半球状のドットとなるように設定した。この設定に基づいて、YVO4レーザを用いてレーザ加工により、基材(2)上に第2-1模様(21a)を形成した。
【0113】
第2-2模様(22a)を構成する第2-2要素(22b)における第4のピッチ(P4)を96μm、また、第2-2要素(22b)における第5のピッチ(P5)を91μmとし、また、第2-2模様(22a)を構成する第2-2要素(22b)を、直径30μmの半球状のドットとなるように設定した。この設定に基づき、第2-2模様(22a)を、基材及び第2-1模様(21a)と重畳するようにYVO4レーザを用いてレーザ加工を行い、第2-1要素(21b)と第2-2要素(22d)が重畳して成る重複領域(23b)を形成した。
【0114】
作製した画像形成体(1)を一方向から観察すると立体及び動的効果を有する第1の画像(10)が視認され、別の方向から観察すると、モアレ画像である第2の画像(20)が視認された。