(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121595
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】地下構造物用蓋
(51)【国際特許分類】
E02D 29/14 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
E02D29/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025018
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000227593
【氏名又は名称】日之出水道機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立石 栄一
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147BB21
(57)【要約】
【課題】地下構造物の内部に収容される無線通信機器から送信される電磁波を、所望の周波数(波長)の電磁波に変換して透過させることが可能な地下構造物用蓋を提供する。
【解決手段】地下構造物用蓋1Aの蓋体5は、開口部3を閉塞可能な蓋本体部10と、蓋本体部10を第1の方向D1に貫通する貫通孔部20Aと、地下構造物2の内部に収容される無線通信機器6から送信される電磁波が貫通孔部20Aを透過する際に、電磁波の波長を変化させる波長制御部30Aとを含む。波長制御部30Aは、第1の電磁波透過特性を有する第1の透過部70Aと、第1の透過部70Aに対して第1の方向D1に隣接する第2の透過部80Aであって、第1の電磁波透過特性と異なる第2の電磁波透過特性を有する第2の透過部80Aとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と地下構造物とを繋ぐ開口部を形成する枠体により開閉可能に支持される蓋体を備える地下構造物用蓋であって、
前記蓋体は、前記開口部を閉塞可能な蓋本体部と、
前記蓋本体部を第1の方向に貫通する貫通孔部と、
前記地下構造物の内部に収容される無線通信機器から送信される電磁波が前記貫通孔部を透過する際に、前記電磁波の波長を変化させる波長制御部とを含み、
前記波長制御部は、第1の電磁波透過特性を有する第1の透過部と、前記第1の透過部に対して前記第1の方向または前記第1の方向に交差する第2の方向に隣接する第2の透過部であって、前記第1の電磁波透過特性と異なる第2の電磁波透過特性を有する第2の透過部とを含む、地下構造物用蓋。
【請求項2】
前記波長制御部は前記貫通孔部の内部に配置され、
前記第1の透過部と前記第2の透過部とは前記第1の方向に隣接しており、
前記第1の電磁波透過特性は、第1の誘電率を含み、
前記第2の電磁波透過特性は、前記第1の誘電率よりも大きい第2の誘電率を含む、請求項1に記載の地下構造物用蓋。
【請求項3】
前記第1の電磁波透過特性は、第1の誘電正接を含み、
前記第2の電磁波透過特性は、前記第1の誘電正接よりも大きい第2の誘電正接を含む、請求項2に記載の地下構造物用蓋。
【請求項4】
前記第1の透過部は、前記第1の方向に第1の長さを含み、
前記第2の透過部は、前記第1の方向に前記第1の長さよりも小さい第2の長さを含む、請求項2または3に記載の地下構造物用蓋。
【請求項5】
前記第1の透過部は前記第2の透過部よりも前記開口部の中心軸方向における前記地下構造物の側に配置されており、
前記第1の透過部は、前記第1の方向の周方向に形成される第1の外周部を含み、
前記第2の透過部は、前記周方向に形成される第2の外周部を含み、
前記第1の外周部は、前記貫通孔部の内周部に対して全周にわたり接触する第1の外壁面と、前記第1の外壁面に対して、前記第1の方向に交差する第3の方向に突出または窪む第2の外壁面とを含み、
前記第2の外周部は、前記内周部に対して全周にわたり接触する第3の外壁面を含む、請求項4に記載の地下構造物用蓋。
【請求項6】
前記波長制御部は前記貫通孔部の内部に配置され、
前記第1の透過部と前記第2の透過部とは前記第2の方向に隣接しており、
前記第1の透過部は、導電性部を含み、
前記第2の透過部は、絶縁性部を含む、請求項1に記載の地下構造物用蓋。
【請求項7】
前記波長制御部は前記貫通孔部の外部に配置され、
前記第1の透過部と前記第2の透過部とは前記第2の方向に隣接しており、
前記第1の透過部は、導電性部を含み、
前記第2の透過部は、絶縁性部を含み、
前記導電性部は、前記第2の方向に第1の長さを含み、
前記絶縁性部は、前記第2の方向に第2の長さを含み、
前記蓋体は、前記第1の長さを第3の長さ分だけ大きくすると同時に前記第2の長さを前記第3の長さ分だけ小さくする長さ調整機構を含む、請求項1に記載の地下構造物用蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面と地下構造物とを繋ぐ開口部を形成する枠体により開閉可能に支持される蓋体を備える地下構造物用蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無線で位置情報やメンテナンス情報等の読取り、書込みが可能な情報記憶媒体を蓋本体に設置した場合に、その情報記憶媒体と通信するための電磁波に乱れが生じにくく安定した通信を行うことができる地下構造物用蓋を提供するために、蓋本体とこの蓋本体を開閉可能に支持する受枠とを備えた地下構造物用蓋において、蓋本体を樹脂で形成し、蓋本体の裏面に設けた凹部内に、無線で位置情報やメンテナンス情報等の情報の読取り、書込みが可能な情報記憶媒体を配置し、凹部の底面側に固定部材を嵌め込んだことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-84408号公報(要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地下構造物用蓋においては、従来、蓋本体に設置した情報記憶媒体と安定した通信を行うことが検討されているが、地下構造物の内部に収容される無線通信機器から送信される電磁波を透過させることは容易ではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、路面と地下構造物とを繋ぐ開口部を形成する枠体により開閉可能に支持される蓋体を備える地下構造物用蓋である。蓋体は、開口部を閉塞可能な蓋本体部と、蓋本体部を第1の方向に貫通する貫通孔部と、地下構造物の内部に収容される無線通信機器から送信される電磁波が貫通孔部を透過する際に、電磁波の波長を変化させる波長制御部とを含む。波長制御部は、第1の電磁波透過特性を有する第1の透過部と、第1の透過部に対して第1の方向または第1の方向に交差する第2の方向に隣接する第2の透過部であって、第1の電磁波透過特性と異なる第2の電磁波透過特性を有する第2の透過部とを含む。
【0006】
この地下構造物用蓋においては、波長制御部が、互いに隣接する異なる電磁波透過特性を有する透過部を含む。このため、異なる電磁波透過特性を有する透過部同士の組み合わせ方を変えることにより、電磁波が貫通孔部を透過する際に、電磁波の波長を制御することができる。したがって、地下構造物の内部に収容される無線通信機器から送信される電磁波を、所望の周波数(波長)の電磁波に変換して貫通孔部を透過させることが可能な地下構造物用蓋を提供することができる。
【0007】
この地下構造物用蓋においては、波長制御部は貫通孔部の内部に配置され、第1の透過部と第2の透過部とは第1の方向に隣接しており、第1の電磁波透過特性は、第1の誘電率を含み、第2の電磁波透過特性は、第1の誘電率よりも大きい第2の誘電率を含むものであってもよい。貫通孔部に入力される電磁波が、異なる誘電率を有する2つの透過部の両方を透過することにより、電磁波が貫通孔部を透過する際に、電磁波に対して2段階の波長変換を付与することができる。
【0008】
この場合、第1の電磁波透過特性は、第1の誘電正接を含み、第2の電磁波透過特性は、第1の誘電正接よりも大きい第2の誘電正接を含むことができ、波長の短縮効果と電磁波の減衰効果とをリニアに制御しやすい。
【0009】
この場合、第1の透過部は、第1の方向に第1の長さを含み、第2の透過部は、第1の方向に第1の長さよりも小さい第2の長さを含むことが好ましい。低誘電率かつ低誘電正接の第1の透過部の長さに対して、高誘電率かつ高誘電正接の第2の透過部の長さを小さくすることにより、第2の透過部による電磁波変換作用を緩和するとともに波長制御部を小型化しやすい。
【0010】
この場合、第1の透過部は第2の透過部よりも開口部の中心軸方向における地下構造物の側に配置されており、第1の透過部は、第1の方向の周方向に形成される第1の外周部を含み、第2の透過部は、周方向に形成される第2の外周部を含み、第1の外周部は、貫通孔部の内周部に対して全周にわたり接触する第1の外壁面と、第1の外壁面に対して、第1の方向に交差する第3の方向に突出または窪む第2の外壁面とを含み、第2の外周部は、内周部に対して全周にわたり接触する第3の外壁面を含むことが好ましい。
【0011】
この地下構造物用蓋においては、第1の透過部が、第2の透過部よりも開口部の中心軸方向における地下構造物の側(例えば、下側)に配置されている。さらに、第1の透過部の外周部が、貫通孔部の内周部に対して全周にわたり接触する第1の外壁面だけでなく、第1の外壁面に対して、第1の方向に交差する第3の方向(例えば、横向き)に突出または窪む第2の外壁面を含む。このため、例えば、貫通孔部の下側に配置される第1の透過部の横向きに突出または窪む第2の外壁面を、貫通孔部の内周部に対して引っ掛けることにより、波長制御部の貫通孔部に対する配置姿勢を維持しやすい。したがって、所望の周波数(波長)の電磁波へと安定的に変換して貫通孔部を透過させることが可能な地下構造物用蓋を提供することができる。
【0012】
この地下構造物用蓋においては、波長制御部は貫通孔部の内部に配置され、第1の透過部と第2の透過部とは第2の方向に隣接しており、第1の透過部は、導電性部を含み、第2の透過部は、絶縁性部を含むものであってもよい。貫通孔部に入力される電磁波が、絶縁性部のみを透過することにより、貫通孔部を透過する電磁波に対して導電性部による電磁波変換作用を排除することができる。
【0013】
この地下構造物用蓋においては、波長制御部は貫通孔部の外部に配置され、第1の透過部と第2の透過部とは第2の方向に隣接しており、第1の透過部は、導電性部を含み、第2の透過部は、絶縁性部を含み、導電性部は、第2の方向に第1の長さを含み、絶縁性部は、第2の方向に第2の長さを含み、蓋体は、第1の長さを第3の長さ分だけ大きくすると同時に第2の長さを第3の長さ分だけ小さくする長さ調整機構を含むものであってもよい。長さ調整機構を用いて絶縁性部による電磁波変換作用を制御することができるため、貫通孔部を透過する電磁波を地下構造物用蓋の設置環境に応じて所望の周波数(波長)へと変換しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る地下構造物用蓋の断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す地下構造物用蓋の要部の断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る地下構造物用蓋の要部の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第3の実施形態に係る地下構造物用蓋の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る地下構造物用蓋1Aの断面図である。地下構造物用蓋1Aは、路面RSと地下構造物2とを繋ぐ開口部3を形成する枠体4と、枠体4により開閉可能に支持される蓋体5とを備える。枠体4は、開口部3を画定し円筒形状をなす内周面4aを有する。開口部3は、枠体4の内周面4aによって形成されているため、円形状をなしている。本例の開口部3の中心軸C1は、鉛直方向VDに沿って延びている。なお、開口部3の中心軸C1は、路面RSに対して交差する方向であり、典型的には路面RSに対して直交する方向である。図示はしないが、地下構造物用蓋1Aは、蓋体5の一端側に、枠体4に対して蓋体5を開閉可能に連結する蝶番機構を備えるとともに、蓋体5の下面の他端側に施錠機構を備えていてもよい。地下構造物用蓋1Aの一例は、下水道における地下埋設物または地下構造施設等と地上とを通じる開口部を閉塞するマンホール蓋,大型鉄蓋,汚水桝蓋、電気設備または通信設備における地下施設機器または地下ケーブル等を保護する開閉可能な共同溝用鉄蓋,送電用鉄蓋,配電用鉄蓋、上水道またはガス配管における路面下の埋設導管およびその付属機器と地上とを結ぶ開閉扉としての機能を有する消火栓蓋,制水弁蓋,仕切弁蓋,空気弁蓋,ガス配管用蓋,量水器蓋等である。
【0016】
蓋体5は、開口部3を閉塞可能な蓋本体部10と、蓋本体部10を第1の方向D1(本例では、鉛直方向VD)に貫通する貫通孔部20Aと、貫通孔部20Aの内部に配置される波長制御部30Aとを含む。蓋本体部10は、略円板形状であり、枠体4に対して蓋体5が閉じられた閉塞状態(以下単に「閉塞状態」という。)において路面RS上に露出する上面11と、閉塞状態において開口部3に対向する下面12と、上面11および下面12を連ねる円形状の外周面13とを含む。本例の第1の方向D1は、開口部3の中心軸C1が延びる方向(中心軸方向)と一致している。貫通孔部20Aは、蓋本体部10の上面11を第1の方向D1に貫く上面開口部11aと、蓋本体部10の下面12を第1の方向D1に貫く下面開口部12aと、上面開口部11aと下面開口部12aとを繋ぐ貫通通路部14とを含む。貫通孔部20Aは、例えば、上面視において蓋本体部10の円形状の外周面13に沿う円弧形状の内周部21を有する。したがって、貫通孔部20Aの内部に配置される波長制御部30Aは、上面視において貫通孔部20Aの内周部21に沿う形状の外周部を有する。波長制御部30Aは、当該波長制御部30Aの外周部を貫通孔部20Aの内周部21に密着させることにより、貫通孔部20Aに対して着脱可能に固定されている。波長制御部30Aは、地下構造物2の内部に収容される無線通信機器6から送信される電磁波が貫通孔部20Aを透過する際に、電磁波の波長を変化させる。本明細書における電磁波とは、放射線、光、電波等の電界と磁界とが互いに影響し合いながら空間を伝達するエネルギー波のことをいう。
【0017】
無線通信機器6は、送信機能を有しており、この無線通信機器6には、例えば、地下構造物2内を流れる下水の水位を計測する水位センサ(図示せず)が接続されている。水位センサによって計測された水位情報は、無線通信機器6から電波として発信される。無線通信機器6から発信された水位情報を含む電波は、貫通孔部20Aを通過して発信され、地下構造物2外に設置された受信機能を有する無線設備(図示せず)で受信される。無線通信機器6から発信される情報は、水位情報に限られず、地下構造物2内の臭気に関する情報または特定のガスの濃度を含む情報であってもよいし、これらのうちの複数の情報が無線通信機器6から発信されてもよい。なお、無線通信機器6は、送信機能を有するものに限られず、受信機能を有するものであってもよいし、送信機能および受信機能の両方を有するものであってもよい。
【0018】
図2は、地下構造物用蓋1Aの要部の断面図である。
図2に示すように、貫通孔部20Aの貫通通路部14は、上面開口部11aと下面開口部12aとを繋ぐ途中に第1の方向D1に対して傾斜する1つ以上の通路部を含んでいてもよい。本例の貫通通路部14は、全体がクランク状に形成されており、上面開口部11aから第1の方向D1における地下構造物2の側(地下構造物側D12、本例では、下側)に向けて延びる第1の通路部40と、第1の通路部40に連なるとともに第1の方向D1に交差する第2の方向D2(本例では、水平方向HD)に延びる第2の通路部60と、第2の通路部60に対して連なるとともに地下構造物側D12に延びて下面開口部12aに達する第3の通路部50とを含む。本例の第2の方向D2は、第1の方向D1に直交する方向である。
【0019】
第1の通路部40は、第2の方向D2に対向する一対の上側壁面41,42(第1の上側壁面41および第2の上側壁面42)を含む。第2の通路部60は、第1の上側壁面41に対して連なるとともに第2の方向D2に延びる第1の中間壁面61と、第1の中間壁面61に対して連なるとともに地下構造物側D12に延びる第2の中間壁面62と、第2の上側壁面42に対して連なるとともに地下構造物側D12に延びる第3の中間壁面63と、第3の中間壁面63に対して連なるとともに第2の方向D2に延びる第4の中間壁面64とを含む。第3の通路部50は、第2の中間壁面62に対して連なるとともに地下構造物側D12に延びる第1の下側壁面51と、第4の中間壁面64に対して連なるとともに地下構造物側D12に延びる第2の下側壁面52とを含む。第1の下側壁面51と第2の下側壁面52とは、第2の方向D2に対向している。これらの壁面41,42,61,62,63,64,51および52は、貫通通路部14の内周部21を構成している。したがって、貫通孔部20Aの内部は、上面開口部11aと下面開口部12aとの間において、貫通通路部14の内周部21により囲まれた内部空間である。
【0020】
貫通孔部20Aの内部に配置される波長制御部30Aは、第1の電磁波透過特性を有する第1の透過部70Aと、第1の透過部70Aに対して第1の方向D1に隣接し、第1の電磁波透過特性と異なる第2の電磁波透過特性を有する第2の透過部80Aとを含む。第2の透過部80Aは、第1の透過部70Aよりも第1の方向D1における路面RSの側(路面側D11、本例では、上側)に配置されている。第1の電磁波透過特性は、第1の誘電率を含み、第2の電磁波透過特性は、第1の誘電率よりも大きい第2の誘電率を含む。また、第1の電磁波透過特性は、第1の誘電正接を含み、第2の電磁波透過特性は、第1の誘電正接よりも大きい第2の誘電正接を含む。第1の透過部70Aは、第1の方向D1に第1の長さL1を含み、第2の透過部80Aは、第1の方向D1に第1の長さL1よりも小さい第2の長さL2を含む。第2の透過部80Aは、第1の透過部70Aよりも耐候性が優れていることが好ましい。第1の透過部70Aは、例えば、天然ゴム製であり、第2の透過部80Aは、例えば、クロロプレンゴム製である。クロロプレンゴムは、天然ゴムよりも耐候性に優れており、かつ、天然ゴムよりも誘電率および誘電正接が大きい。
【0021】
第1の透過部70Aは、第1の方向D1の周方向CDに形成される第1の外周部71と、第1の外周部71の地下構造物側D12の端部に連なるとともに第2の方向D2に拡がる下壁面72aと、第1の外周部71の路面側D11の端部に連なるとともに第2の方向D2に拡がる上壁面72bとを含む。第2の透過部80Aは、周方向CDに形成される第2の外周部81と、第2の外周部81の地下構造物側D12の端部に連なるとともに第2の方向D2に拡がる下壁面82aと、第2の外周部81の路面側D11の端部に連なるとともに第2の方向D2に拡がる上壁面82bとを含む。波長制御部30Aは、上壁面72bと下壁面82aとが互いに付着され、第1の透過部70Aと第2の透過部80Aとが一体になることにより形成されている。
【0022】
第1の透過部70Aの第1の外周部71は、貫通孔部20Aの内周部21に対して全周にわたり接触する第1の外壁面73と、第1の外壁面73に対して、第1の方向D1に交差する第3の方向D3に突出または窪む第2の外壁面76とを含む。第3の方向D3は、この例では、第1の方向D1に直交する方向である。また、第3の方向D3は、この例では、第2の方向D2と平行である。第1の外壁面73は、一対の上側壁面41,42に接触する一対の接触面74,75(第1の接触面74および第2の接触面75)を含む。第1の接触面74は、第1の上側壁面41に接触し、第2の接触面75は、第2の上側壁面42に接触する。第2の外壁面76は、第2の通路部60において第2の中間壁面62に対して空間Sを隔てた状態で配置されている。第2の外壁面76は、第1の接触面74に連なるとともに第1の接触面74に対して窪む凹部77と、凹部77の底部77aから突出する突出部78とを含む。突出部78は、突出部78の先端部78aが第1の中間壁面61に近付くように突出している。第2の透過部80Aの第2の外周部81は、貫通孔部20Aの内周部21に対して全周にわたり接触する第3の外壁面82を含む。
【0023】
この地下構造物用蓋1Aにおいては、蓋本体部10の貫通孔部20Aの内部に配置される波長制御部30Aが、互いに隣接する異なる電磁波透過特性を有する透過部70A,80Aを含む。このため、異なる電磁波透過特性を有する透過部70A,80A同士の組み合わせ方を変えることにより、電磁波が貫通孔部20Aを透過する際に、電磁波の波長を制御することができる。したがって、地下構造物2の内部に収容される無線通信機器6から送信される電磁波を、所望の周波数(波長)の電磁波に変換して貫通孔部20Aを透過させることができる。
【0024】
さらに、この地下構造物用蓋1Aにおいては、第1の透過部70Aと第2の透過部80Aとは第1の方向D1に隣接しており、第1の電磁波透過特性は、第1の誘電率を含み、第2の電磁波透過特性は、第1の誘電率よりも大きい第2の誘電率を含む。このため、貫通孔部20Aに入力される電磁波が、異なる誘電率を有する2つの透過部70A,80Aの両方を透過することにより、貫通孔部20Aを通る電磁波に対して2段階の波長変換を付与することができる。
【0025】
さらに、第1の電磁波透過特性は、第1の誘電正接を含み、第2の電磁波透過特性は、第1の誘電正接よりも大きい第2の誘電正接を含むため、波長の短縮効果と電磁波の減衰効果とをリニアに制御しやすい。
【0026】
さらに、低誘電率かつ低誘電正接の第1の透過部70Aの長さ(第1の長さL1)に対して、高誘電率かつ高誘電正接の第2の透過部80Aの長さ(第2の長さL2)を小さくすることにより、第2の透過部80Aによる電磁波変換作用を緩和するとともに波長制御部30Aを小型化することができる。
【0027】
さらに、この地下構造物用蓋1Aにおいては、第1の透過部70Aが、第2の透過部80Aよりも地下構造物側D12に配置されている。さらに、第1の透過部70Aの第1の外周部71が、貫通孔部20Aの内周部21に対して全周にわたり接触する第1の外壁面73だけでなく、第1の外壁面73に対して、第3の方向D3(例えば、横向き)に突出または窪む第2の外壁面76を含む。このため、例えば、波長制御部30Aを路面側D11に移動させようとする外力等が作用した場合であっても、第1の透過部70Aの横向きに突出または窪む第2の外壁面76を、貫通孔部20Aの内周部21に対して引っ掛けることにより、波長制御部30Aの貫通孔部20Aに対する配置姿勢を維持することができる。具体的には、突出部78が第1の中間壁面61に対して引っ掛かることにより、貫通孔部20Aに対する波長制御部30Aの配置姿勢が維持される。したがって、所望の周波数(波長)の電磁波へと安定的に変換することができる。
【0028】
また、第1の透過部70Aの長さ(第1の長さL1)を第2の透過部80Aの長さ(第2の長さL2)よりも大きくすることで、貫通孔部20Aに密着するだけの簡易な形状ではない複雑な形状を、単一材質(第1の透過部70Aを形成する材質)で成形することができる。複雑な形状としては、本実施形態のように、第2の外壁面76、すなわち、凹部77および突出部78が形成されている場合が挙げられるが、このような形状であっても成形が容易である。このように、波長制御部30Aのうち、路面側D11の第2の透過部80Aの長さよりも地下構造物側D12の第1の透過部70Aの長さを大きくするとともに、地下構造物側D12の第1の透過部70Aに凹部77および突出部78といった複雑形状を有する第2の外壁面76を配置することにより、第2の外壁面76に上壁面72bと下壁面82aとの付着面が含まれないようにすることができる。したがって、突出部78が第1の中間壁面61に対して引っ掛かる際に発生し得る応力等を原因として、当該付着面において第1の透過部70Aと第2の透過部80Aとが剥離する事態を未然に防止することができる。なお、この例では、第3の方向D3は第2の方向D2と平行であるが、第2の外壁面76が突出または窪む第3の方向D3が第2の方向D2と非平行になるように設計することもできる。
【0029】
<第2の実施形態>
図3は、本発明の第2の実施形態に係る地下構造物用蓋1Bの要部の断面図である。第2の実施形態において、第1の実施形態と共通の構成については共通の符号を付して説明を省略する場合がある。第2の実施形態に係る地下構造物用蓋1Bが第1の実施形態に係る地下構造物用蓋1Aと主に異なる点は、波長制御部30Bの第1の透過部70Bおよび第2の透過部80Bが、第1の方向D1に交差(この例では直交)する第2の方向D2に隣接している点である。
【0030】
地下構造物用蓋1Bの貫通孔部20Bの貫通通路部14は、上面開口部11aと下面開口部12aとを第1の方向D1に繋ぐ通路部を含む。第1の透過部70Bは、導電性部90を含み、第2の透過部80Bは、絶縁性部100を含む。例えば、導電性部90および絶縁性部100は、ともにゴムによって形成されており、導電性部90に用いられるゴムは、絶縁性部100に用いられるゴムよりも導電性が高い。導電性部90は、第2の方向D2に第1の長さL3を含み、絶縁性部100は、第2の方向D2に第2の長さL4を含む。
【0031】
この地下構造物用蓋1Bにおいては、蓋本体部10の貫通孔部20Bの内部に配置される波長制御部30Bが、互いに隣接する異なる電磁波透過特性を有する透過部70B,80Bを含む。このため、異なる電磁波透過特性を有する透過部70B,80B同士の組み合わせ方を変えることにより、電磁波が貫通孔部20Bを透過する際に、電磁波の波長を制御することができる。したがって、地下構造物2の内部に収容される無線通信機器6から送信される電磁波を、所望の周波数(波長)の電磁波に変換して貫通孔部20Bを透過させることができる。
【0032】
さらに、この地下構造物用蓋1Bにおいては、第1の透過部70Bと第2の透過部80Bとは第2の方向D2に隣接しており、第1の透過部70Bは、導電性部90を含み、第2の透過部80Bは、絶縁性部100を含む。このため、貫通孔部20Bに入力される電磁波が、絶縁性部100のみを透過することにより、貫通孔部20Bを通る電磁波に対して導電性部90による電磁波変換作用を排除することができる。
【0033】
さらに、この地下構造物用蓋1Bにおいては、第2の方向D2における波長制御部30Bの長さLwを、第2の方向D2における貫通孔部20Bの長さLhと等しくすることによって、波長制御部30Bを貫通孔部20Bに固定することができる。例えば、予め貫通孔部20Bの長さLhよりも長い波長制御部30Bを準備しておき、施工現場において導電性部90および絶縁性部100の少なくとも一方を切断して第2の方向D2における波長制御部30Bの長さLwを貫通孔部20Bの長さLhと等しくすることによって、無線通信機器6から送信される電磁波を所望の周波数の電磁波に変換するのに適した導電性部90の長さ(第1の長さL3)および絶縁性部100の長さ(第2の長さL4)を容易に調整することができる。
【0034】
<第3の実施形態>
図4は、本発明の第3の実施形態に係る地下構造物用蓋1Cの要部の断面図である。第3の実施形態において、第2の実施形態と共通の構成については共通の符号を付して説明を省略する場合がある。第3の実施形態に係る地下構造物用蓋1Cが第2の実施形態に係る地下構造物用蓋1Bと主に異なる点は、波長制御部30Cが、貫通孔部20Cの内部ではなく外部に配置され、蓋体5が、導電性部90の第1の長さL3を第3の長さL5分だけ大きくすると同時に、絶縁性部100の第2の長さL4を第3の長さL5分だけ小さくする長さ調整機構110を含む点である。波長制御部30Cは、地下構造物側D12から貫通孔部20Cの一部を覆う導電性部90としての金属板部120と、金属板部120に対して第2の方向D2に隣接する絶縁性部100としての空間121とを含む。
【0035】
本例の長さ調整機構110は、回転運動を直線運動に変換する送りねじ機構であり、金属板部120に取り付けられ、金属板部120を第2の方向D2に移動させる送りねじ部材111と、送りねじ部材111に回転力を付与することで送りねじ部材111を第2の方向D2に移動させるナット部材112と、蓋本体部10に取り付けられ、ナット部材112を回転可能に支持するナット軸受け部材113とを含む。
【0036】
この地下構造物用蓋1Cにおいては、蓋本体部10の貫通孔部20Cの外部に配置される波長制御部30Cが、互いに隣接する異なる電磁波透過特性を有する透過部70C,80Cを含む。このため、異なる電磁波透過特性を有する透過部70C,80C同士の組み合わせ方を変えることにより、貫通孔部20Cを透過する電磁波の波長を制御することができる。したがって、地下構造物2の内部に収容される無線通信機器6から送信される電磁波を、所望の周波数(波長)の電磁波に変換して貫通孔部20Cを透過させることができる。
【0037】
さらに、この地下構造物用蓋1Cにおいては、第1の透過部70Cと第2の透過部80Cとは第2の方向D2に隣接しており、第1の透過部70Cは、導電性部90(金属板部120)を含み、第2の透過部80Cは、絶縁性部100を含む。このため、貫通孔部20Cに入力される電磁波が、絶縁性部100(空間121)のみを透過することにより、貫通孔部20Cを通る電磁波に対して導電性部90による電磁波変換作用を排除することができる。
【0038】
さらに、この地下構造物用蓋1Cにおいては、長さ調整機構110を用いることで、導電性部90(金属板部120)の第1の長さL3と、絶縁性部100(空間121)の第2の長さL4とを同時に調整することができる。このため、絶縁性部100による電磁波変換作用を施工現場において容易に制御することができる。したがって、貫通孔部20Cを通る電磁波を地下構造物用蓋1Cの設置環境に応じて所望の周波数(波長)へと容易に変換可能な地下構造物用蓋1Cを提供することができる。
【0039】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に規定されたものを含む。
貫通孔部20Aは、蓋本体部10の上面11を第1の方向D1に貫く上面開口部11aと、蓋本体部10の下面12を第1の方向D1に貫く下面開口部12aとを含んでいれば、上面開口部11aと下面開口部12aとを繋ぐ途中の通路部は第1の方向D1に対して傾斜していてもよく、「蓋本体部を第1の方向に貫通する」とは、貫通孔部の両端に形成される上面開口部11aおよび下面開口部12aが蓋本体部10を第1の方向D1に貫くことを意味する。また、上記の実施形態では、第1の透過部と、第1の透過部に対して第1の方向または第2の方向に隣接する第2の透過部とが積層された2層構造の波長制御部について説明したが、波長制御部は、第1、第2および第3の透過部が第1の方向または第2の方向に隣接した状態で積層された3層構造であってもよく、4層構造以上であってもよい。低コストかつコンパクトな波長制御部により所望の周波数(波長)への電磁波変換作用を実現するためには2層構造が好ましい。また、透過部の積層方向は、第1の方向および第2の方向の片方であってもよく、両方であってもよい。さらに、上記の実施形態では、貫通孔部が上面視において円弧形状の内周部を有し、その円弧形状の半径方向を第2の方向とした例を示したが、第2の方向は第1の方向に交差する任意の方向であり得る。具体的には、貫通孔部の内周部の周方向(長手方向)を第2の方向とし、この第2の方向に第1の透過部および第2の透過部を隣接させる配置も可能である。
【0040】
また、上記の実施形態では、「水平」、「鉛直」、「円形状」、「円板形状」、「円弧形状」、「円筒形状」といった表現を用いたが、厳密にこれらの状態であることを要しない。すなわち、これらの各表現は、製造精度、設置精度等のずれを許容するものである。
【符号の説明】
【0041】
1A,1B,1C 地下構造物用蓋、2 地下構造物、3 開口部、4 枠体、5 蓋体、6 無線通信機器、10 蓋本体部、20A,20B,20C 貫通孔部、30A,30B,30C 波長制御部、70A,70B,70C 第1の透過部、71 第1の外周部、73 第1の外壁面、76 第2の外壁面、80A,80B,80C 第2の透過部、81 第2の外周部、82 第3の外壁面、90 導電性部、100 絶縁性部、110 長さ調整機構、D1 第1の方向、D2 第2の方向、RS 路面、L1,L3 第1の長さ、L2,L4 第2の長さ、L5 第3の長さ