(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121763
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】波形モニタ及び表示生成方法
(51)【国際特許分類】
H04N 23/63 20230101AFI20230824BHJP
H04N 5/262 20060101ALI20230824BHJP
G03B 17/18 20210101ALI20230824BHJP
【FI】
H04N23/63 300
H04N5/262
G03B17/18
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097146
(22)【出願日】2023-06-13
(62)【分割の表示】P 2020074258の分割
【原出願日】2015-04-06
(31)【優先権主張番号】61/975566
(32)【優先日】2014-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/313794
(32)【優先日】2014-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】319013861
【氏名又は名称】プロジェクト・ジャイアンツ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ジー・ベーカー
(57)【要約】
【課題】なじみのある絞り(F)段数を用いて、広いダイナミック・レンジをコンパクトに表示可能にする。
【解決手段】波形モニタ20は、カメラ12のオリジナル画像から、変更画像を生成する。波形モニタ20の輝度測定システムは、オリジナル画像の画素の輝度値を生成し、これを等価なF段数値に変換する。カーソル範囲選択ブロック70は、F段数値の範囲を生成し、カラー・カーソル・ミキサ80は、オリジナル画像中のF段数値の範囲に入る画素を選択的に疑似カラーで着色して変更する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置の出力信号に関する表示を生成する方法であって、
複数の画素から構成されるオリジナル画像を受ける処理と、
上記画素から輝度情報を抽出する処理と、
上記画素の上記輝度情報を等価なF段数値に変換する処理と、
F段数値の第1範囲に入る等価な上記F段数値を選択する処理と、
上記F段数値の上記第1範囲に入るオリジナル画素を変更することによって、上記オリジナル画像を変更し、変更画像を生成する処理と、
上記変更画像を表示する処理と
を具える表示生成方法。
【請求項2】
複数の画素から構成されるオリジナル画像を受ける処理と、
上記画素の等価なF段数値を求める処理と、
上記等価なF段数値に基いて上記オリジナル画像の一部を疑似カラーに着色し、変更画像を生成する処理と、
上記変更画像を表示する処理と
を具える表示生成方法。
【請求項3】
画像入力部と、測定値の表示を見るためのモニタとを有する波形モニタであって、
上記画像入力部で受けたオリジナル画像の画素の輝度値を測定する測定システムと、
上記輝度値からF段数値を生成するよう構成された変換部と、
F段数値の範囲を生成するよう構成された選択部と
上記F段数値の範囲に入る選択された画素に関して上記オリジナル画像を変更するよう構成された変更部と
を具える波形モニタ。
【請求項4】
時間対F段数波形を生成する出力信号生成構造を更に具える請求項3記載の波形モニタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波形モニタ上に情報を表示する技術に関し、特に、カメラの出力信号波形を監視するための波形モニタと、その表示生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影現場におけるビデオ制作や映画制作では、撮影シーンのライティングやカメラの利得又は絞りを調整するのに、入射光メータ又は反射光(スポット)メータを使用することが度々必要になる。こうした露出計(光メータ)による測定やライティング調整が、絞り段数(F段数:F-stop)ような相対的な値で行われる。ユーザは、周知のように、撮像素子の露出時間(シャッター速度)と、レンズの絞り値(F値)との組み合わせを調整する過程で絞り段数を変化させる。F値は、レンズの焦点距離を有効口径で割り算して導かれる無次元の比率である。例えば、レンズの絞りを1段開ける(例えば、F値を2.8から2に小さくする)と、レンズを通過する光の量が2倍又は約6dB増加する。逆にレンズの絞りを1段絞る(例えば、F値を2から2.8に大きくする)と、レンズを通過する光の量が1/2になる。しかし、F値を1段変化させてもF値は、2の平方根(=1.4142・・・)の比率でしか変化しない(非特許文献1参照)。F値は、典型的には、レンズの絞り(開口)調整のための指標として機能している。
【0003】
現在、映画制作及びビデオ制作の両方で、電子的な撮像素子を用いたカメラが利用されており、この撮像素子は、非常に大きなダイナミック・レンジと、非常に大きな可変利得を有している。例えば、典型的なデジタル一眼レフ・カメラ(例えば、ニコン製D800型など)では14.4段あるのに比較して、ネガ・フィルムの場合では13段である(約6dB/段)。映画制作やビデオ制作では、12ビット分解能のデジタル・ビデオ出力信号に圧縮する場合はもちろん、10ビット分解能のデジタル・ビデオ出力信号に圧縮する場合でさえ、カメラ内での比較的新しい対数(log)処理に加えて、伝統的なガンマ(power-law)補正が、ダイナミック・レンジに関して引き続き大きな地位を占めている。なお、最近の流行として、デジタル一眼レフ・カメラで静止画だけでなく、動画制作が行われている。これによると、従来のプロ用映像機材に比較して大幅に安価でありながら、大きなボケのある映像が制作できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-174128号公報
【特許文献2】特開2000-224618号公報
【特許文献3】特開2011-146936号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「絞り値(F値)」の解説、特に「絞り値の変わり方」の項、株式会社ニコンイメージングジャパン、[オンライン]、[2015年4月4日検索]、インターネット<http://www.nikon-image.com/enjoy/phototech/manual/04/04.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
撮影時などでは、カメラの調整(利得や絞り)及び撮影シーン・ライティングに基いて、ダイナミック・レンジをどのように上手に利用するか判断することが非常に重要である。これは、典型的には、カメラの出力信号をピクチャ・モニタ(ダイナミック・レンジは10段より小さい)上で観測することによって、カメラの出力信号に対して行う。このとき、良く校正されたピクチャ・モニタを用いても、これを単純に観察した場合では、目が順応するために、詳細な部分は黒色に沈んで認識できない状態となり、ダイナミック・レンジは約7段に制限されてしまうことに注意されたい。ビデオ波形モニタも度々利用されるが、現在のところ、こうした波形モニタは、線形な電圧表示に限定されており、ダイナミック・レンジの大部分は、0に近いわずか数mVに圧縮された黒色に近いものである。高ダイナミック・レンジの無線周波数(RF)信号を分析する場合と同様に、線形な波形のスケーリングは適切なものではない。
【0007】
本発明の実施形態は、こうした従来技術の課題やその他の問題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態には、重み付けしたカメラの出力信号波形をリアルタイムで観察するため方法及び装置があり、これは、カメラの撮像素子に適用するガンマ補正やその他の非線形補正と、波形をlog2の「F段数」で重み付けした波形に変換して校正された目盛りとカーソルと共に表示することとを組み合わるものである。
【0009】
加えて、本発明の実施形態には、校正されたF段数重み付け波形の任意の領域を、F段数値を読み出せる可変マーカ又はカーソルを用いて選択可能にする方法及び装置が含まれる。これら可変マーカによれば、好ましくは、このマーカで選択したF段数値に対応して、カメラ画像の画像表示上の対応する領域を示すことができる。
【0010】
本発明の実施形態としては、オリジナル画像から変更画像を生成する波形モニタもあり、この波形モニタは、輝度値を生成し、続いてこれと等価なF段数値に変換する輝度測定システムを含んでいる。選択部は、F段数値の範囲を選択するのに用いられる。画像変更部は、選択されたF段数値の範囲に入る選択された画素に関してオリジナル画像を変更する。例えば、オリジナル画像に関して、選択された画素を着色した画素と入れ替えるか又は着色した画素と混ぜる、即ち、オリジナル画像の選択された画素を擬似的に着色する(本来の色を代わりの色に変更する)ことによって、オリジナル画像を変更するようにしても良い。このような手法で、画像を変更する方法に関しても開示する。
【0011】
本発明をいくつかの観点から見ていくと、本発明の概念1は、測定装置の出力信号に関する表示を生成する方法であって、
複数の画素から構成されるオリジナル画像を受ける処理と、
上記画素から輝度情報を抽出する処理と、
上記画素の上記輝度情報を等価なF段数値(f-stop equivalent)に変換する処理と、
F段数値の第1範囲に入る等価な上記F段数値を選択する処理と、
上記F段数値の上記第1範囲に入るオリジナル画素を変更することによって、上記オリジナル画像を変更し、変更画像を生成する処理と、
上記変更画像を表示する処理と
を具えている。
【0012】
本発明の概念2は、上記概念1の表示生成方法であって、このとき、上記F段数値の上記第1範囲の幅を、ユーザが調整可能である。
【0013】
本発明の概念3は、上記概念1の表示生成方法であって、このとき、上記F段数値の上記第1範囲の中心を、ユーザが調整可能である。
【0014】
本発明の概念4は、上記概念1の表示生成方法であって、このとき、上記オリジナル画素を変更することによって、上記オリジナル画像を変更する処理は、上記F段数値の上記第1範囲に入る上記オリジナル画素の少なくとも一部分をカラー画素と入れ替える処理を含んでいる。
【0015】
本発明の概念5は、上記概念1の表示生成方法であって、このとき、上記オリジナル画素を変更することによって、上記オリジナル画像を変更する処理は、上記F段数値の上記第1範囲に入る上記オリジナル画素の少なくとも一部の画素の輝度値を、色の値と組み合わせる処理を含んでいる。
【0016】
本発明の概念6は、上記概念1の表示生成方法であって、
F段数値の第2範囲に入る等価な上記F段数値を選択する処理と、
上記F段数値の上記第2範囲に入るオリジナル画素を変更することによって、上記オリジナル画像を変更し、変更画像を生成する処理と
を更に具え、
このとき、上記F段数値の上記第2範囲に入る上記オリジナル画素を変更する処理が、上記F段数値の上記第1範囲に入る上記オリジナル画素を変更する処理と異なっている。即ち、上記第1範囲及び上記第2範囲が異なり、それぞれの処理で異なる画素を変更する。
【0017】
本発明の概念7は、上記概念6の表示生成方法であって、このとき、上記F段数値の上記第1範囲に入る上記オリジナル画素を変更する処理は、第1カラーを上記オリジナル画素に適用することによって上記オリジナル画素を変更する処理を含み、また、上記F段数値の上記第2範囲に入る上記オリジナル画素を変更する処理は、第2カラーを上記オリジナル画素に適用することによって上記オリジナル画素を変更する処理を含んでいる。
【0018】
本発明の概念8は、測定装置の出力信号に関する表示を生成する方法であって、
複数の画素から構成されるオリジナル画像を受ける処理と、
上記画素の等価なF段数値(f-stop equivalent)を求める処理と、
上記等価なF段数値に基いて上記オリジナル画像の一部を疑似カラーに着色し、変更画像を生成する処理と、
上記変更画像を表示する処理と
を具えている。
【0019】
本発明の概念9は、上記概念8の表示生成方法であって、このとき、上記オリジナル画像の一部を上記疑似カラーに着色する処理が、上記F段数値の上記第1範囲に入るオリジナル画素の少なくとも一部分をカラー画素に入れ替える処理を含んでいる。
【0020】
本発明の概念10は、上記概念8の表示生成方法であって、このとき、上記オリジナル画像の一部を上記疑似カラーに着色する処理が、上記F段数値の上記第1範囲に入るオリジナル画素の少なくとも一部分をカラー画素と混ぜ合わせる処理を含んでいる。
【0021】
本発明の概念11は、画像入力部と、測定値の表示を見るためのモニタとを有する波形モニタであって、
上記画像入力部で受けたオリジナル画像の画素の輝度値を測定する測定システムと、
上記輝度値からF段数値を生成するよう構成された変換部と、
F段数値の範囲を生成するよう構成された選択部と
上記F段数値の範囲に入る選択された画素に関して上記オリジナル画像を変更するよう構成された変更部と
を具えている。
【0022】
本発明の概念12は、上記概念11の波形モニタであって、このとき、上記変更部は、上記選択された画素をカラー画素に入れ替えるよう構成されている。
【0023】
本発明の概念13は、上記概念11の波形モニタであって、このとき、上記変更部は、上記選択された画素をカラー画素と組み合わせるよう構成されている。
【0024】
本発明の概念14は、上記概念11の波形モニタであって、このとき、上記選択部は、ユーザが制御可能である。
【0025】
本発明の概念15は、上記概念11の波形モニタであって、このとき、上記選択部は、第2のF段数値の範囲を生成するよう更に構成されている。
【0026】
本発明の概念16は、上記概念15の波形モニタであって、このとき、上記変更部が、上記第2のF段数値の範囲に入る選択された画素に関して上記オリジナル画像を変更するよう更に構成されている。
【0027】
本発明の概念17は、上記概念11の波形モニタであって、時間対F段数波形を生成する出力信号生成構造を更に具えている。
【0028】
本発明の概念18は、上記概念11の波形モニタであって、このとき、上記F段数値を生成するよう校正された上記コンバータは、ルックアップ・テーブル(LUT)を有することを特徴としている。
【0029】
本発明の概念19は、上記概念18の波形モニタであって、このとき、上記LUTは、波形モニタがアクセス可能な予め記憶された複数のLUTの中の1つであることを特徴としている。
【0030】
本発明の概念20は、上記概念17の波形モニタであって、このとき、上記モニタは、上記時間対F段数波形を表示すると共に、上記F段数値の範囲を定めるためのユーザが制御可能なカーソルを表示することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本発明によるモニタ・マーカを有するビデオ波形モニタの例のブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、従来の時間対電圧波形の表示出力の例である。
【
図2B】
図2Bは、
図1の波形モニタで生成された新しい時間対F段数値の表示出力の例である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態を説明するのに使用するオリジナルのキャプチャ画像である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態によるFS低及びFS高のカーソルを有する
図3の画像に関するF段数波形を示す。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に従って、
図3のキャプチャ画像を色を用いて強調表示することで変更した画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
上述のように、本発明の実施形態は、伝統的な線形電圧表示やIREレベルに加えて、相対的な絞り段数(log2スケール:光の量が2倍変化する毎にF値が1段変わる)の観点から、カメラからのライブのビデオ信号を評価するのに利用できる。これは、アナログ・カメラの出力信号でさえも、絞り段数(F段数:f-stop)の観点で、露出計(光メータ)の相対的なライティング及び露出の値に効果的に変換する。なお、IRE(Institute of Radio Engineers)とは、ビデオのコンポジット映像信号のペデスタル・レベルを0%とし、完全な白レベルを100%として表現したときの単位で、100IREは、NTSCでは714mV、PALでは700mVに相当する。
【0033】
図1は、本発明によるビデオ波形モニタの例のハードウェア部分を中心とするブロック図である。
図1に示すように、波形モニタ20は、カメラ12とつながって、入力信号を受ける。カメラ12は、被写体14に向けられ、被写体14は、ライティング16によって照らされている。カメラ12には、通常、絞り及び露出指数の調整機構があり、これらはカメラの操作者が制御しても良いし、カメラ12によって自動的に調整されるようにしても良い。カメラ12の出力信号は、波形モニタ20に入力される。
【0034】
カメラ12の出力信号は、最初に入力プロセッサ30で処理され、続いてルーマ(Luma:輝度)フィルタ32を通過する。フィルタ32は、例えば、ローパス・フィルタであり、ユーザ・インタフェース(UI)50などを用いて、ユーザがフィルタ32をオン/オフするようにしても良い。フィルタ処理出力信号又はフィルタ非処理の出力信号は、ルックアップ・テーブル(LUT)40に供給される。LUT40は、予め設定したテーブル(プリセット・テーブル)を用いて、ユーザ・インタフェース50を介してロードされる。プリセット・テーブルは、予めいくつか用意しておき、その中から1つをユーザが選んでロードするようにしても良い。例えば、LUT40の1つのオプションとして、ルーマ信号(輝度信号)に対してガンマ補正(ガンマ除去)又は対数(log)処理を行うためのLUT40Aを用いても良い。LUT40の別のオプションとしては、ルーマ信号YをLog
2(Y/Ymax)スケールに変換し、これによって、リアルタイムでF段数ルーマ信号を波形表示するようにするLUT40Bがある(このような波形表示を、
図2Bに示す)。このとき、Ymaxは、ルーマ信号(輝度信号)の最大値、即ち、白レベル(PALでは700mV)である。底が2の対数を用いているので、(Y/Ymax)が2倍になると、F段数値が1つ増加する。例えば、この例におけるF段数値-2.4は、電圧に換算すると132.6mVに相当し、F段数値-5.9は11.7mVに相当する。このように、
図2A及び2Bに示す表示例の上では、同じような位置にあるカーソル1及び2であるが、
図2Bのカーソル1及び2の間の差(デルタ)は、電圧に換算して考えると、
図2Aに示すような線形な電圧スケールで表示した場合に比較して、大幅に大きいことがわかる。また、線形な電圧スケールに比較し、黒レベル(0電圧)付近を詳細に表示できることもわかる。LUTのサイズを小さくするため、乗算と対数スケーリングの両方の演算処理が予め正確に行われて、LUTの全ワードが単一なデータ・セットへと変換されるので、線形な光量値の広いダイナミック・レンジを表現するのに大きなワード・サイズを必要としない。
【0035】
上述の如く、波形モニタ20に記憶されるLUTは、複数あっても良い。ユーザは、ユーザ・インタフェース50を用いて、記憶された複数のLUTの中のどれをアクティブなLUT40としてロードするかを制御できる。例えば、種々のLUTを予め波形モニタ20に記憶しておいても良く、これによって、ユーザが、カメラのガンマや黒レベルに基いてアクティブなLUT40を選択できるようにしても良い。
【0036】
波形モニタ20上の表示モニタ(表示装置)60は、ユーザに対して出力信号を表示する。モニタ60は、
図2Aに示すような伝統的な時間対電圧波形を表示するのに使用できる一方で、
図2Bに示すような新しい時間対F段数波形を示すのにも使用できる。この新しい時間対F段数波形表示では、伝統的な時間対電圧波形表示と同じく、ユーザが調整可能なカーソルを利用できるが、出力信号のスケールが電圧ではなく「F段数」である点で異なっている。
図2A及び2Bに示すように、水平時間軸は両方の表示で同じであり、例えば、1ライン、2ライン、フィールド掃引などのような従来からのスケールが選択できる。
【0037】
加えて、カーソル範囲(ウィンドウ)選択ブロック70は、ユーザ・インタフェース50を通してユーザからの入力を受けて、ユーザが設定した複数の可変カーソル値を読み取る。これら可変カーソル値は、2値ゲート信号として、波形モニタ20のモノクローム出力信号を変更するのに利用される。具体的には、入力プロセッサ30がカメラからの入力信号を受けて必要な処理を行い、カラー・カーソル・ミキサ80は、入力プロセッサ30に結合されて、入力プロセッサ30から処理した信号を処理された入力信号を受ける。なお、カラー・カーソル・ミキサ80は、波形モニタ20の別の構成要素から処理された入力信号を受けるようにしても良い。カラー・カーソル・ミキサ80は、カーソル範囲選択ブロック70にも結合されている。カーソル範囲選択ブロック70からの2値ゲート信号は、オリジナルのモノクローム出力信号のどの領域を着色するか、即ち、出力信号中の強調表示する領域を決定するのに利用される。このように、カラー・カーソル・ミキサ80は、画像変更部として機能する。
【0038】
例えば、
図3と
図6の出力信号を比較すると、
図3はオリジナルのモノクローム出力信号であり、一方、
図6の出力信号は、オリジナルのモノクローム画像上に、ユーザが選択したF段数範囲に入る画像領域を示すため、色を用いて強調表示された部分がある。
図3に示すキャプチャ画像がルーマ(輝度)だけ、つまり、モノクローム画像である一方で、
図6では、詳しくは後述のように、2つの色によるカーソル範囲(例として、赤色と青色)が加えられている。なお、
図6では、図面がグレースケールであるため、赤色領域を水平方向の縞模様で、青色領域を垂直方向の縞模様(人物のあごの下部分など)で示している。
【0039】
図1を再度参照すると、
図6の出力信号を生成するため、カーソル範囲選択ブロック70内の検出回路で、LUT40(具体的には、LUT40B)からのlog
2(Y/Ymax)信号と、ユーザが制御可能な2つのカーソル範囲とが比較される。ユーザは、カーソル範囲の位置と大きさを制御できる。具体的には、ある実施形態では、ユーザがF段数の値の中心値と、カーソル範囲の大きさを制御しても良い。別の実施形態では、2つのカーソルを用いて、ユーザがカーソル範囲を定めても良い。システムでは、この範囲を用いて、2値ゲート信号を生成する。ルーマ出力信号中の画素のF段数の値(輝度値)が特定されたカーソル範囲内に入っている場合、その画素は表示上で色つきの画素として示され、これによって、出力信号中のどの画素が指定したF段数範囲内にあるかという情報をユーザに提供する。残りの画素、つまり、オリジナル画素中の指定されたカーソル範囲外のレベルの輝度を有する画素は、表示上で変化なしで示される。
【0040】
カーソル範囲は、例えば、1/4段のステップで調整できるようにしても良い。また、例えば、カーソル範囲は、ユーザが設定したF段数中心値からプラス・マイナス1/4段の範囲に予め設定しておいても良い。F段数中心値は、LUT40から得られる信号の全範囲に渡って調整可能である。この方法では、ユーザは、1つのカーソルを調整して画像の特定領域を強調表示でき、これによって、
図2B又は
図5に示すF段数波形上のそのカーソルの値から、そのF段数値の輝度値を有する画像上の特定領域に加えて、プラス・マイナス1/4段の幅があるので、ほぼ同じF段数値の輝度値を有する他の領域を特定できる。
【0041】
カラー・カーソル・ミキサ80は、例えば、赤色及び青色画素の着色信号を生成し、オリジナル画像に合成して、
図6に示すようは変更画像を生成する。ある実施形態では、カラー・カーソル・ミキサ80は、例えば、設定したF段数範囲に入るオリジナル画素を、単色の赤色又は青色の画素に単純に入れ替える。別の実施形態では、カラー・カーソル・ミキサ80が、その下地となる輝度データに色調を加えることで色の混じった出力信号を生成しても良い。また、これら例では、モノクロームを基本とする画像を示したが、本発明の実施形態は、ルーマ(輝度)ベースのものに限定されず、例えば、赤、緑、青の各色のチャンネルで独立に実施しても良い。
【0042】
図6に示した実施例では、2つ色のカーソル範囲が存在するが、波形モニタ20は、もっと多数のカーソル範囲も生成できるし、もっと少ないカーソル範囲も生成できる。
【0043】
図4は、
図3の画像の伝統的な電圧波形(VmV_wfm
n)を示している。
図5は、同様に
図3の画像に関する出力信号を示しているが、
図5では、本発明の実施形態による
図3の画像に関するF段数波形(Fstop_wfm
n)を示しており、2つのカーソルFS低(F段数低の意味)とFS高(F段数高の意味)を有している。
【0044】
本発明の実施形態を利用することで、撮影シーンのライティングに連動させて、カメラの利得/絞り/シャッター・スピードの調整が、なじみのあるF段数単位で容易に行え、カメラを露出計として効果的に利用できる。例えば、本発明の実施形態を利用することで、ユーザは、
図5に示したように、F段数単位で線形化したスケールの目盛りが示された表示上でF段数で重み付けされた波形を見ることができる。また、本発明の実施形態によれば、F段数波形とモノクローム画像表示上の疑似カラー領域とを利用して、画像/シーンのコンテンツ要素のデルタF段数の差分測定値をユーザが制御できるようにすることで、2つのカーソルを用いてユーザがF段数単位でシーンのホット・スポットやライティング不均一性を測定できるようにもなる。更に、本発明の実施形態によれば、正確な黒レベル調整や高分解能でのブラック・バランス調整(黒を正確に再現するために、RGB三原色のレベルを調整すること)してカメラの特性を調整(カメラ・マッチング)でき、また、カメラのノイズを高分解能で表示できる。更には、本発明の実施形態は、映像シーンのコンテンツのダイナミック・レンジを評価するツールとして利用でき、これによって、芸術性(映像表現)の観点からダイナミック・レンジを最適化するのに利用できる。
【0045】
波形モニタ20やその任意の構成部分は、ASICのような特定用向けに設計された回路やFPGAにおいて、ファームウェアで実現しても良いし、又は、1つ以上のプロセッサ上で実行される1つ以上のソフトウェア・プロセスとして実現しても良い。別の実施形態では、波形モニタ20が、例えば、ファームウェア、ASIC、FPGA及びソフトウェア上で実行されるコンポーネント又は処理の組み合わせを含んでいても良い。
【0046】
本発明の具体的な実施形態を実例で説明し、実例を説明する目的で記述してきたが、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、多様な変形が可能なことは明らかであろう。
【符号の説明】
【0047】
12 カメラ
14 被写体
16 ライティング
20 波形モニタ
32 ルーマ・フィルタ(輝度フィルタ)
40 F段数ルックアップ・テーブル(変換部)
50 ユーザ・インタフェース
60 表示装置(モニタ)
70 カーソル範囲選択ブロック(選択部)
80 カラー・カーソル・ミキサ(画像変更部)
【手続補正書】
【提出日】2023-07-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像入力部と、測定値の表示を見るためのモニタとを有する波形モニタであって、
上記画像入力部で受けたオリジナル画像から画素の輝度値を測定する測定システムと、
該測定された輝度値に対しガンマ除去又は対数処理を行い、更に、ルックアップ・テーブルを用いて上記ガンマ除去又は対数処理が行われた輝度値を等価なF段数Log
2
(Y/Ymax)スケールに変換することによって、上記測定された輝度値から等価なF段数値を生成するように構成された変換部であって、このうちYが上記測定された輝度値の輝度値であり、Ymaxが上記測定された輝度値のうちの最大輝度値である変換部と、
第1のF段数値の範囲を生成するように構成された選択部と、
上記第1のF段数値の範囲内に入る選択された画素に関して、上記オリジナル画像を変更画像に変更するよう構成された変更部と、
上記変更画像を表示するように構成された出力信号生成構造と
を具備する波形モニタ。
【請求項2】
上記変更部が、上記選択された画素をカラー画素に入れ替えるか、及び/若しくは、上記選択された画素をカラー画素と組み合わせるように構成されている請求項1に記載の波形モニタ。
【請求項3】
上記選択部が、ユーザ制御可能である請求項1又は2に記載の波形モニタ。
【請求項4】
上記選択部が、第2のF段数値の範囲を生成するよう更に構成されている請求項1~3のうちのいずれか一つに記載の波形モニタ。
【請求項5】
上記変更部が、上記第2のF段数値の範囲内に入る選択された画素に関して上記オリジナル画像を変更するよう更に構成されている請求項4に記載の波形モニタ。
【請求項6】
上記ルックアップ・テーブルが、波形モニタによってアクセス可能である、予め記憶された複数のルックアップ・テーブルのうちの一つである請求項1に記載の波形モニタ。
【請求項7】
測定装置からの出力の表示を生成する方法であって、
複数の画素から構成されるオリジナル画像を受けることと、
上記複数の画素から輝度情報を抽出することと、
該抽出された輝度情報に対しガンマ除去又は対数処理を行い、更に、ルックアップ・テーブルを用いて上記ガンマ除去又は対数処理が行われた輝度情報を等価なF段数Log2(Y/Ymax)スケールであって、Yが上記抽出された輝度情報の輝度値であり、Ymaxが上記抽出された輝度情報のうちの最大輝度値である等価なF段数値に変換することによって、上記複数の画素の輝度情報を等価なF段数値に変換することと、
F段数値の第1の範囲内に入る上記等価なF段数値を選択することと、
上記F段数値の上記第1の範囲内に入るオリジナル画像の画素を変更することによって、上記オリジナル画像を変更して、変更画像を生成することと、
上記変更画像を表示することとを具備する出力表示生成方法。
【請求項8】
上記F段数値の上記第1の範囲の大きさを、ユーザが調整可能である請求項7に記載の出力表示生成方法。
【請求項9】
上記F段数値の上記第1の範囲の中心値を、ユーザが調整可能である請求項7又は8に記載の出力表示生成方法。
【請求項10】
上記オリジナル画像の画素を変更することによって、上記オリジナル画像を変更して上記変更画像を生成することが、上記F段数値の上記第1の範囲内に入る上記オリジナル画像の画素の少なくとも一部分をカラー画素と入れ替えることを含む請求項7に記載の出力表示生成方法。
【請求項11】
上記オリジナル画像の画素を変更することによって、上記オリジナル画像を変更して上記変更画像を生成することが、上記F段数値の上記第1の範囲内に入る上記オリジナル画像の画素の少なくとも一部の画素の輝度値を、色の値と組み合わせることを含む請求項7に記載の出力表示生成方法。
【請求項12】
上記F段数値の第2の範囲内に入る等価なF段数値を選択することと、
上記F段数値の上記第2の範囲内に入るオリジナル画像の画素を変更することによって、上記オリジナル画像を変更し、変更画像を生成することと
を更に具え、
上記F段数値の上記第2の範囲内に入るオリジナル画像の画素を変更することが、上記F段数値の上記第1の範囲内に入るオリジナル画像の画素を変更することと異なっている請求項7に記載の出力表示生成方法。
【請求項13】
上記F段数値の上記第1の範囲内に入るオリジナル画像の画素を変更することが、第1のカラーを適用することによって上記オリジナル画像の画素を変更することを含み、また、上記F段数値の上記第2の範囲内に入るオリジナル画像の画素を変更することが、第2のカラーを適用することを含む請求項12に記載の出力表示生成方法。