(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012206
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】音響処理システム、音響処理方法、および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20230118BHJP
【FI】
H04R3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115712
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】野口 真太郎
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220EE11
5D220EE41
5D220EE44
(57)【要約】 (修正有)
【課題】音信号処理を柔軟、かつ、容易に分散処理させる音響処理システム、音響処理方法及び情報処理装置を提供する。
【解決手段】音響処理システムは、音信号処理用のパラメータを保持する第1メモリであるカレントメモリ351及びカレントメモリ351に保持されたパラメータの操作を受け付ける操作部を含む第1装置である情報処理装置12と、カレントメモリ351に保持されたパラメータと同期したパラメータを保持する第2メモリであるカレントメモリ251及びシステム制御を行う第1CPU2041を含む第2装置であるマネージャ503及び音信号処理を行う第2CPU2042を含む第3装置であるプレーヤ502を有するプロセッサ11と、を備える。第1CPUは、カレントメモリ251に保持されているパラメータに基づいて音信号処理を制御するための制御情報をプレーヤに送信する。第2CPUは、受信した制御情報に基づいて音信号処理を行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音信号処理用のパラメータを保持する第1メモリ、および当該第1メモリに保持された前記パラメータの操作を受け付ける操作部を含む第1装置と、
前記第1メモリの前記パラメータと同期したパラメータを保持する第2メモリ、およびシステム制御を行う第1CPUを含む第2装置と、
音信号処理を行う第2CPUを含む第3装置と、
を備え、
前記第1CPUは、前記第2メモリに保持されている前記パラメータに基づいて前記音信号処理を制御するための制御情報を前記第3装置に送信し、
前記第2CPUは、前記制御情報を受信して、該制御情報に基づいて前記音信号処理を行う、
音響処理システム。
【請求項2】
前記第1装置は、前記第1メモリに保持された前記パラメータとは異なるパラメータを保持する第3メモリを備え、
前記音響処理システムは、前記第3メモリと同期する第4メモリおよびシステム制御を行う第3CPUを含む第4装置をさらに備える、
請求項1に記載の音響処理システム。
【請求項3】
前記第2装置および前記第3装置は、同一の物理装置内で仮想的に別装置として構成されている、
請求項1または請求項2に記載の音響処理システム。
【請求項4】
音信号処理を行う第4CPUを含む第5装置を備え、
前記第1CPUは、前記制御情報を前記第5装置に送信し、
前記第4CPUは、前記制御情報を受信して、該制御情報に基づいて前記音信号処理を行う、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の音響処理システム。
【請求項5】
前記第1CPUは、前記制御情報を、
前記第2装置には第1のプロトコルで送信し、
前記第5装置には第2のプロトコルで送信する、
請求項4に記載の音響処理システム。
【請求項6】
前記第1メモリおよび前記第2メモリは、さらに前記システム制御の設定情報を保持する、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の音響処理システム。
【請求項7】
第1装置が、
音信号処理用のパラメータを第1メモリに保持し、
当該第1メモリに保持された前記パラメータの操作を操作部で受け付け、
第2装置が、
前記第1メモリの前記パラメータと同期したパラメータを第2メモリに保持し、
第1CPUでシステム制御を行い、
第3装置が、
第2CPUで音信号処理を行う、
音響処理方法であって、
前記第1CPUは、前記第2メモリに保持されている前記パラメータに基づいて前記音信号処理を制御するための制御情報を前記第3装置に送信し、
前記第2CPUは、前記制御情報を受信して、該制御情報に基づいて前記音信号処理を行う、
音響処理方法。
【請求項8】
前記第1装置は、前記第1メモリに保持された前記パラメータとは異なるパラメータを第3メモリに保持し、
第4装置が、
前記第3メモリを第4メモリに同期する
第3CPUで、システム制御を行う、
請求項7に記載の音響処理方法。
【請求項9】
前記第2装置および前記第3装置は、同一の物理装置内で仮想的に別装置として構成されている、
請求項7または請求項8に記載の音響処理方法。
【請求項10】
第5装置が、第4CPUで音信号処理を行い、
前記第1CPUは、前記制御情報を前記第5装置に送信し、
前記第4CPUは、前記制御情報を受信して、該制御情報に基づいて前記音信号処理を行う、
請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載の音響処理方法。
【請求項11】
前記第1CPUは、前記制御情報を、
前記第2装置には第1のプロトコルで送信し、
前記第5装置には第2のプロトコルで送信する、
請求項10に記載の音響処理方法。
【請求項12】
前記第1メモリおよび前記第2メモリは、さらに前記システム制御の設定情報を保持する、
請求項7乃至請求項11のいずれか1項に記載の音響処理方法。
【請求項13】
音信号処理用のパラメータを保持する第1メモリと、
当該第1メモリに保持された前記パラメータの操作を受け付ける操作部と、
を備える情報処理装置であって、
該情報処理装置は、
前記第1メモリの前記パラメータと同期したパラメータを保持する第2メモリ、およびシステム制御を行う第1CPUを含む第2装置と、
音信号処理を行う第2CPUを含む第3装置と、
通信し、
前記第1CPUは、前記第2メモリに保持されている前記パラメータに基づいて前記音信号処理を制御するための制御情報を前記第3装置に送信し、
前記第2CPUは、前記制御情報を受信して、該制御情報に基づいて前記音信号処理を行う、
情報処理装置。
【請求項14】
音信号処理用のパラメータを保持する第1メモリ、および当該第1メモリに保持された前記パラメータの操作を受け付ける操作部を含む第1装置と通信する情報処理装置であって、
該情報処理装置は、前記第1メモリの前記パラメータと同期したパラメータを保持する第2メモリと、システム制御を行う第1CPUと、を備え、
該情報処理装置は、音信号処理を行う第2CPUを含む第3装置と通信し、
前記第1CPUは、前記第2メモリに保持されている前記パラメータに基づいて前記音信号処理を制御するための制御情報を前記第3装置に送信し、
前記第2CPUは、前記制御情報を受信して、該制御情報に基づいて前記音信号処理を行う、
情報処理装置。
【請求項15】
音信号処理用のパラメータを保持する第1メモリ、および当該第1メモリに保持された前記パラメータの操作を受け付ける操作部を含む第1装置と、
前記第1メモリの前記パラメータと同期したパラメータを保持する第2メモリ、およびシステム制御を行う第1CPUを含む第2装置と、
を備えた音響処理システムに用いられる情報処理装置であって、
前記第1CPUは、前記第2メモリに保持されている前記パラメータに基づいて前記音信号処理を制御するための制御情報を前記情報処理装置に送信し、
該情報処理装置は、前記制御情報を受信して、該制御情報に基づいて前記音信号処理を行う第2CPUを備える、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の一実施形態は、音響処理システム、音響処理方法、および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、音楽ソフトウェアにプラグイン可能な遠隔制御ソフトウェアを多数インストールしたパーソナルコンピュータが開示されている。パーソナルコンピュータは、各遠隔制御ソフトウェアと対応する外部機器との間で動作パラメータの同期処理を行う。
【0003】
特許文献2の制御装置は、相互通信可能な第1および第2の制御基板を含む。第1および第2の制御基板は、パラメータを保存するパラメータ記憶部を含む。第1および第2の制御基板のパラメータは、同期される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-072656号公報
【特許文献2】特開2021-018590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2ともに単にある機器とある機器のメモリ(パラメータ)を同期する構成が開示されているだけである。いずれの先行技術でも音信号処理を分散させることは考慮されていない。
【0006】
そこで、この発明の一実施形態は、音信号処理を柔軟かつ容易に分散処理させることができる音響処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
音響処理方法は、音信号処理用のパラメータを保持する第1メモリ、および当該第1メモリに保持された前記パラメータの操作を受け付ける操作部を含む第1装置と、前記第1メモリの前記パラメータと同期したパラメータを保持する第2メモリ、およびシステム制御を行う第1CPUを含む第2装置と、音信号処理を行う第2CPUを含む第3装置と、を備える。前記第1CPUは、前記第2メモリに保持されている前記パラメータに基づいて前記音信号処理を制御するための制御情報を前記第3装置に送信し、前記第2CPUは、前記制御情報を受信して、該制御情報に基づいて前記音信号処理を行う。
【発明の効果】
【0008】
この発明の一実施形態は、音信号処理を柔軟かつ容易に分散処理させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】音響処理システム1の構成を示すブロック図である。
【
図2】プロセッサ11のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】情報処理装置12の構成を示すブロック図である。
【
図4】プロセッサ11および情報処理装置12の機能的ブロック図である。
【
図5】音響処理システムの動作を示すフローチャートである。
【
図6】クラウドサーバ20をさらに備えた音響処理システム1のブロック図である。
【
図7】プロセッサ11、クラウドサーバ20、および情報処理装置12の機能的ブロック図である。
【
図8】プロセッサ11、クラウドサーバ20、および情報処理装置12の機能的ブロック図である。
【
図9】プロセッサ11Aをさらに備えた音響処理システム1のブロック図である。
【
図10】プロセッサ11、プロセッサ11A、および情報処理装置12の機能的ブロック図である。
【
図11】プロセッサ11、プロセッサ11A、クラウドサーバ20、および情報処理装置12の機能的ブロック図である。
【
図12】プロセッサ11および情報処理装置12の機能的ブロック図である。
【
図13】オーディオアンプ20Aに制御情報を送信する例を示す機能的ブロック図である。
【
図14】信号処理コンポーネントをDLLとして保存する例を示す機能的ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、音響処理システム1の構成を示すブロック図である。音響処理システム1は、プロセッサ11、情報処理装置12、ネットワーク13、スピーカ14、およびマイク15を備えている。
【0011】
プロセッサ11および情報処理装置12は、ネットワーク13を介して接続されている。ネットワーク13は、LAN(ローカルエリアネットワーク)またはインターネットを含む。プロセッサ11は、オーディオケーブルを介してスピーカ14およびマイク15に接続されている。
【0012】
ただし、本発明において、機器間の接続は、この例に限るものではない。例えば、プロセッサ11、スピーカ14、およびマイク15は、ネットワークを介して接続されていてもよい。また、プロセッサ11および情報処理装置12は、USBケーブル等の通信線で接続されていてもよい。
【0013】
プロセッサ11は、音信号処理装置の一例である。プロセッサ11は、マイク15から音信号を受信する。また、プロセッサ11は、スピーカ14に音信号を出力する。本実施形態ではプロセッサ11に接続される音響機器の一例としてスピーカ14およびマイク15を示すが、さらに多数の音響機器が接続されてもよい。
【0014】
図2は、プロセッサ11の構成を示すブロック図である。プロセッサ11は、表示器201、ユーザI/F202、オーディオI/O(Input/Output)203、CPU204、ネットワークI/F205、フラッシュメモリ206、およびRAM207を備えている。
【0015】
表示器201は、LEDまたはLCD等からなり、種々の情報(例えば電源ON/OFF状態等)を表示する。ユーザI/F202は、スイッチあるいはボタン等の操作子である。ユーザI/F202は、電源ON/OFF等のユーザの操作を受け付ける。
【0016】
CPU204は、システム制御を行うための制御部(第1CPU)として機能する。また、CPU204は、音信号処理を行うための信号処理部(第2CPU)としても機能する。CPU204は、記憶媒体であるフラッシュメモリ206に記憶された所定のプログラムをRAM207に読み出して実行することにより制御部および信号処理部の動作を行う。
【0017】
CPU204は、オーディオI/O203またはネットワークI/F205を介してマイク15等の音響機器から入力される音信号に、フィルタ処理等の音信号処理を施す。CPU204は、信号処理後の音信号を、オーディオI/O203またはネットワークI/F205を介して、スピーカ14等の音響機器に出力する。
【0018】
音信号処理の内容を示すパラメータは、フラッシュメモリ206内のカレントメモリ251に保持される。CPU204は、カレントメモリ251に保持されたパラメータに基づいて、音信号処理を行う。
【0019】
システム制御の設定内容(設定情報)は、フラッシュメモリ206内の設定メモリ252に保持される。CPU204は、設定メモリ252に保持された設定情報に基づいてシステム制御を行う。システムの制御は、例えば音信号を入力する入力ポート(物理ポート)と入力チャンネルのパッチ設定(結線の管理)等を含む。
【0020】
なお、CPU204が読み出すプログラムは、自装置内のフラッシュメモリ206に記憶する必要はない。例えば、プログラムは、サーバ等の外部装置の記憶媒体に記憶されていてもよい。この場合、CPU204は、該サーバから都度プログラムをRAM207に読み出して実行すればよい。
【0021】
次に、
図3は、情報処理装置12の構成を示すブロック図である。情報処理装置12は、例えばパーソナルコンピュータまたは専用の組み込みシステム(embedded system)等の情報処理装置である。
【0022】
情報処理装置12は、表示器301、ユーザI/F302、CPU303、RAM304、ネットワークI/F305、およびフラッシュメモリ306を備えている。
【0023】
CPU303は、記憶媒体であるフラッシュメモリ306に記憶されているプログラムをRAM304に読み出して、所定の機能を実現する。なお、CPU303が読み出すプログラムも、自装置内のフラッシュメモリ306に記憶されている必要はない。例えば、プログラムは、サーバ等の外部装置の記憶媒体に記憶されていてもよい。この場合、CPU303は、該サーバから都度プログラムをRAM304に読み出して実行すればよい。
【0024】
フラッシュメモリ306は、カレントメモリ351および設定メモリ352を有する。カレントメモリ351は、プロセッサ11のカレントメモリ251と同期する。また、設定メモリ352は、プロセッサ11の設定メモリ252と同期する。
【0025】
例えば、利用者がプロセッサ11のユーザI/F202を操作してパラメータを変更すると、プロセッサ11は、カレントメモリ251の内容を更新し、更新した後のカレントメモリ251の内容を情報処理装置12に送信する。CPU303は、ネットワークI/F305を介して、更新後のカレントメモリ251の内容を受信し、更新後のカレントメモリ251の内容にカレントメモリ351の内容を同期する。また、利用者が情報処理装置12のユーザI/F302を操作してパラメータを変更すると、情報処理装置12は、カレントメモリ351の内容を更新し、更新した後のカレントメモリ351の内容をプロセッサ11に送信する。CPU204は、ネットワークI/F205を介して、更新後のカレントメモリ351の内容を受信し、更新後のカレントメモリ351の内容にカレントメモリ251の内容を同期する。
【0026】
なお、プロセッサ11および情報処理装置12は、互いに非接続状態である場合、それぞれ独立してカレントメモリの内容を変更する。そして、プロセッサ11および情報処理装置12は、接続状態になった場合に、プロセッサ11のカレントメモリ251、または情報処理装置12のカレントメモリ351のいずれか一方の内容で、他方の内容を更新する。利用者は、プロセッサ11のカレントメモリ251かあるいは情報処理装置12のカレントメモリ351のどちらの内容を利用するかを選択してもよい。
【0027】
次に、
図4は、プロセッサ11および情報処理装置12の機能的ブロック図である。
図5は、音響処理システムの動作を示すフローチャートである。
図4に示す様に、プロセッサ11は、機能的にプレーヤ502およびマネージャ503を構成する。マネージャ503は、システム制御を行うための制御部(第1CPU2041)を構成する。プレーヤ502は、音信号処理を行うための信号処理部(第2CPU2042)を構成する。この例において、情報処理装置は、第1装置の一例であり、マネージャ503は、第2装置の一例であり、プレーヤ502は、第3装置の一例である。
【0028】
プレーヤ502およびマネージャ503は、同一の物理装置内で仮想的に別装置として構成されている。プレーヤ502およびマネージャ503は、所定のプロトコル(例えばTCP/IP:Transmission Control Protocol / Internet Protocol)で通信する。なお、この例では、第1CPU2041および第2CPU2042は、1つの物理的CPU204を仮想的に別のCPUとして機能している。ただし、第1CPU2041および第2CPU2042は、複数コアを備えた1つの物理的CPU内の別のコアであってもよい。また、第1CPU2041および第2CPU2042は、物理的に別のCPUであってもよい。
【0029】
情報処理装置12のCPU303は、操作部であるユーザI/F302を介してパラメータの操作を受け付ける(S11)。CPU303は、変更されたパラメータで第1メモリであるカレントメモリ351を更新する(S12)。
【0030】
マネージャ503は、第1メモリであるカレントメモリ351に第2メモリであるカレントメモリ251を同期する(S22)。また、この時に、マネージャ503は、設定メモリ252および設定メモリ352を同期してもよい。マネージャ503は、同期後の設定メモリ252に基づいてシステム制御を行う。すなわち、第1メモリは、カレントメモリ351および設定メモリ352の両方を含んでいてもよいし、第2メモリは、カレントメモリ251および設定メモリ252の両方を含んでいてもよい。
【0031】
次に、第1CPU2041は、カレントメモリ251に保持されているパラメータに基づいて、音信号処理を制御するための制御情報をプレーヤ502に送信する(S23)。制御情報は、例えばフィルタ処理におけるフィルタ係数を含む。上述の様に、マネージャ503およびプレーヤ502は、仮想的に別の装置として構成されていて、マネージャ503は、TCP/IP等のプロトコルを用いて、プレーヤ502に制御情報を送信する。
【0032】
プレーヤ502の第2CPU2042は、制御情報を受信して(S31)、該制御情報に基づいて音信号処理を行う(S32)。具体的には、第2CPU2042は、マイク15等の音響機器から入力される音信号に、フィルタ処理等の音信号処理を施し、信号処理後の音信号を、スピーカ14等の音響機器に出力する。
【0033】
以上の様に、本実施形態の音響処理システム1によれば、プロセッサ11は、マネージャ503およびプレーヤ502を別の装置として構成し、マネージャ503は、TCP/IP等のプロトコルを用いて、プレーヤ502に制御情報を送信する。したがって、マネージャ503は、プロセッサ11内のプレーヤ502に限らず、TCP/IP等のプロトコルで情報を受信可能などの様な音信号処理装置に対しても、制御情報を送信して音信号処理を制御することができる。例えば、
図6は、クラウドサーバ20をさらに備えた音響処理システム1のブロック図である。
図7は、プロセッサ11、クラウドサーバ20、および情報処理装置12の機能的ブロック図である。
【0034】
クラウドサーバ20は、音信号処理装置の一例である。この場合、マネージャ503の第1CPU2041は、TCP/IP等のプロトコルを用いてクラウドサーバ20に制御情報を送信する。クラウドサーバ20は、第2CPU211を構成する。第2CPU211は、第1CPU2041から制御情報を受信して、該制御情報に基づいて音信号処理を行う。このとき、第1CPU2041は、同じくTCP/IP等のプロトコルを用いて、マイク15等の音響機器から入力される音信号を第2CPU211に送信する。第2CPU211は、第1CPU2041から制御情報および音信号を受信して、該制御情報に基づいて受信した音信号に音信号処理を行う。第2CPU211は、信号処理後の音信号を、TCP/IP等のプロトコルで第1CPU2041に送信する。第1CPU2041は、受信した音信号をスピーカ14等の音響機器に出力する。
【0035】
この様に、システム制御を行う第2装置および音信号処理を行う第3装置は、同一の物理装置内で仮想的に別装置として構成されている必要はなく、物理的に別の装置であってもよい。すなわち、第2装置および第3装置は、それぞれ独立した情報処理装置であってもよい。
【0036】
本実施形態の音響処理システム1によれば、自装置のプレーヤ502に音信号処理を実行させることもできるし、クラウドサーバ20等の他装置に音信号処理を実行させることもできる。また、
図8に示す様に、マネージャ503の第1CPU2041は、自装置のプレーヤ502の第2CPU2042と、クラウドサーバ20の第2CPU211の両方に音信号処理を実行させることもできる。この場合、マネージャ503は、第2CPU2042および第2CPU211のそれぞれの処理能力に基づいて、第2CPU2042に実行させる音信号処理と、第2CPU211に実行させる音信号処理を決定すればよい。あるいは、マネージャ503は、フィルタ処理におけるレイテンシの許容範囲に応じて、第2CPU2042に実行させる音信号処理と、第2CPU211に実行させる音信号処理を決定してもよい。クラウドサーバ20に音信号を送受信する場合、通信によるレイテンシが大きくなる。そこで、マネージャ503は、例えばレイテンシの許容範囲が広い音信号処理を第2CPU211に実行させてもよい。
【0037】
以上の様に、マネージャ503は、TCP/IP等の汎用プロトコルを用いるため、音信号処理を柔軟かつ容易に分散処理させることができる。また、利用者は、情報処理装置12を用いてプロセッサ11のパラメータを遠隔で変更するだけであり、信号処理側のプレーヤ502を制御する必要はなく、どの装置にどの様な信号処理をさせるか、管理する必要もない。
【0038】
さらに、情報処理装置12は、1つの音信号処理装置だけではなく複数の音信号処理装置に対するパラメータの変更を行うこともできる。
図9は、プロセッサ11Aをさらに備えた音響処理システム1のブロック図である。
図10は、プロセッサ11、プロセッサ11A、および情報処理装置12の機能的ブロック図である。プロセッサ11Aのハードウェアおよび機能的構成はプロセッサ11と同一である。
【0039】
この例では、情報処理装置12は、カレントメモリ351とは別のパラメータを保持するカレントメモリ351Aを備える。カレントメモリ351Aは、第3メモリの一例である。カレントメモリ351Aは、プロセッサ11Aのカレントメモリ251Aと同期する。なお、プロセッサ11Aおよび情報処理装置12は、互いに非接続状態である場合、それぞれ独立してカレントメモリの内容を変更する。そして、プロセッサ11Aおよび情報処理装置12は、接続状態になった場合に、プロセッサ11Aのカレントメモリ251、または情報処理装置12のカレントメモリ351のいずれか一方の内容で、他方の内容を更新する。つまり、情報処理装置12は、プロセッサ11Aと非接続状態において独立してカレントメモリ351の内容を変更することもできるし、プロセッサ11と非接続状態において独立してカレントメモリ351の内容を変更することもできる。
【0040】
図10に示す様に、プロセッサ11Aは、プロセッサ11と同様に、機能的にプレーヤ502Aおよびマネージャ503Aを構成する。マネージャ503Aは、システム制御を行うための制御部(第3CPU2041A)を構成する。プレーヤ502Aは、音信号処理を行うための信号処理部(第4CPU2042A)を構成する。この例において、マネージャ503Aは、第4メモリであるカレントメモリ251Aを備え、システム制御を行う第4装置の一例であり、プレーヤ502Aは、音信号処理を行う第5装置の一例である。
【0041】
この例では、プレーヤ502Aおよびマネージャ503Aは、同一の物理装置内で仮想的に別装置として構成されている。プレーヤ502Aおよびマネージャ503Aは、TCP/IP等のプロトコルで通信する。無論、システム制御を行う第4装置および音信号処理を行う第5装置は、同一の物理装置内で仮想的に別装置として構成されている必要はなく、物理的に別の装置であってもよい。すなわち、第4装置および第5装置も、それぞれ独立した情報処理装置であってもよい。
【0042】
第3CPU2041Aは、カレントメモリ251Aに保持されているパラメータに基づいて、音信号処理を制御するための制御情報をプレーヤ502Aに送信する。プレーヤ502Aの第4CPU2042Aは、制御情報を受信して、該制御情報に基づいて音信号処理を行う。
【0043】
この様に、情報処理装置12は、複数の音信号処理装置の信号処理の内容(カレントメモリ)をリモートで制御することもできる。
【0044】
また、プロセッサ11Aのマネージャ503Aも、マネージャ503と同様に、クラウドサーバ20等の他装置に音信号処理を実行させることもできる。また、
図11に示す様に、マネージャ503Aの第3CPU2041Aは、自装置のプレーヤ502Aの第4CPU2042Aと、クラウドサーバ20の第2CPU211の両方に音信号処理を実行させることもできる。この場合、マネージャ503Aは、第4CPU2042Aおよび第2CPU211のそれぞれの処理能力に基づいて、第4CPU2042Aに実行させる音信号処理と、第2CPU211に実行させる音信号処理を決定すればよい。あるいは、マネージャ503Aは、フィルタ処理におけるレイテンシの許容範囲に応じて、第4CPU2042Aに実行させる音信号処理と、第2CPU211に実行させる音信号処理を決定してもよい。
【0045】
本実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0046】
音信号処理装置は、プロセッサだけでなく、例えばアンプ、ミキサ、あるいはオーディオアンプ等も含む。
【0047】
上記実施形態では、音信号処理を行う機能は、CPUにより構成されていた。しかし、例えば
図12に示す様に、プロセッサ11は、信号処理機能をハードウェア(例えばDSPやFPGA)で行ってもよい。
図12に示すプロセッサ11は、FPGA902を備える信号処理装置702をさらに備えている。マネージャ503は、カレントメモリ251に保持されているパラメータに基づいて、音信号処理を制御するための制御情報をプレーヤ502および信号処理装置702に送信する。信号処理装置702のFPGA902は、制御情報を受信して、該制御情報に基づいて音信号処理を行う。
【0048】
マネージャ503は、第2CPU2042およびFPGA902のそれぞれの処理能力に基づいて、第2CPU2042に実行させる音信号処理と、FPGA902に実行させる音信号処理を決定すればよい。あるいは、マネージャ503は、フィルタ処理におけるレイテンシの許容範囲に応じて、第2CPU2042に実行させる音信号処理と、FPGA902に実行させる音信号処理を決定してもよい。
【0049】
マネージャ503は、複数の音信号処理装置に制御情報を送信する場合、ある装置には第1のプロトコルで送信し、他のある装置には第2のプロトコルで送信してもよい。
図13は、オーディオアンプ20Aに制御情報を送信する例を示す機能的ブロック図である。オーディオアンプ20Aは、音信号処理を行う第4CPU211Aを備える。マネージャ503は、プレーヤ502にはTCP/IPで制御情報を送信し、オーディオアンプ20Aの第4CPU211Aに他のプロトコル(例えばTMDS:Transition Minimized Differential Signaling)で制御情報を送信してもよい。
【0050】
図14は、信号処理コンポーネントをDLL(Dynamic Link Library)として保存する例を示す機能的ブロック図である。信号処理コンポーネントは、信号処理の具体的な内容を情報としてまとめたものであり、パラメータの内容およびフィルタ係数などを含む。プロセッサ11は、機能的に、SDK(Software Development Kit)80を備える。SDK80は、信号処理コンポーネントをDLLとして保存するためのアプリケーションプログラムの一例である。SDK80は、第1CPUで管理するパラメータと、第2CPUで管理するフィルタ係数と、を含む信号処理コンポーネントをDLL80として生成する。DLL80は、例えばフラッシュメモリ206に記憶される。
【0051】
これにより、プロセッサ11は、ユーザの設定した信号処理の内容をDLLとして保存することができる。DLLを展開可能な音信号装置であればどの様な装置であっても、当該DLLを実行することで音信号処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0052】
1…音響処理システム
11,11A…プロセッサ
12…情報処理装置
13…ネットワーク
14…スピーカ
15…マイク
20…クラウドサーバ
20A…オーディオアンプ
80…DLL
201…表示器
202…ユーザI/F
203…オーディオI/O
204…CPU
205…ネットワークI/F
206…フラッシュメモリ
207…RAM
251,251A…カレントメモリ
252…設定メモリ
301…表示器
302…ユーザI/F
303…CPU
304…RAM
305…ネットワークI/F
306…フラッシュメモリ
351,351A…カレントメモリ
352…設定メモリ
502,502A…プレーヤ
503,503A…マネージャ
702…信号処理装置
902…FPGA