(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122513
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】プロペラ用計測器具及び製造方法
(51)【国際特許分類】
G01B 5/20 20060101AFI20230825BHJP
【FI】
G01B5/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086698
(22)【出願日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2022025553
(32)【優先日】2022-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522070226
【氏名又は名称】株式会社サボテンプロジェクト
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】桑原 将光
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA51
2F062BC40
2F062EE01
2F062EE62
2F062MM01
(57)【要約】
【課題】積層造形によって製造される、精度が高く扱いやすいプロペラ用計測器具の提供、またプロペラ計測器具の積層造形による製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】上記課題を解決する本願発明は、筒状のプロペラボスを中心に備えるプロペラの羽の形状を計測する計測器具であって、前記プロペラボスの内部に当接して位置合わせを行うと調整部と、前記羽の形状測定を行う測定部と、前記調整部と前記測定部とを接続する接続部を備え、前記測定部は、前記羽と当接する計測面と、一面を平面とするテーブル面と、を有する計測器具である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラの羽の形状を計測する計測器具であって、
前記プロペラの一部と当接して位置合わせを行うと調整部と、
前記羽の形状測定を行う測定部と、
前記調整部と前記測定部とを接続する接続部を備え、
前記測定部は、前記羽と当接する計測面と、一面を平面とするテーブル面と、を有する計測器具。
【請求項2】
前記調整部及び前記接続部は、前記テーブル面を含む水平面の上側に位置する請求項1に記載の計測器具。
【請求項3】
前記計測面は、前記テーブル面に対して傾斜を付けて設けられ、
前記計測面の端部は、前記羽の形状測定を行う計測端である請求項1に記載の計測器具。
【請求項4】
前記調整部は、前記接続部と接続する調整部本体と、プロペラボスに貫入するシャフト部とを有し、
前記シャフト部は、前記調整部本体から取り外し自在に設けられている請求項1~3の何れかに記載の計測器具。
【請求項5】
前記シャフト部は、軸方向に溝部を有する請求項4に記載の計測器具。
【請求項6】
前記シャフト部は、軸方向に伸びる芯部と、前記芯部の周縁を覆う覆い部を含み、
前記芯部と前記覆い部との間には空隙が設けられる請求項5に記載の計測器具。
【請求項7】
プロペラの羽の形状測定を行う測定部を備え、
前記測定部は、前記羽と当接する計測面と、一面を平らとする平面状のテーブル面を有する計測器具を、
前記テーブル面を第一層として積層して設ける計測器具の製造方法。
【請求項8】
前記測定部と、
プロペラボスに篏合するシャフトに取り付けられる調整部本体と、
前記測定部と前記調整部本体を接続する接続部と、を備え、
前記接続部と、前記測定部と、前記調整部本体とを一体に形成する請求項7に記載の計測器具の製造方法。
【請求項9】
前記調整部本体に取り付け自在で、軸方向に溝部を有するシャフト本体を、軸方向に積層して形成する請求項8に記載の計測器具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測面をプロペラの面に押し当てて、形状が所定通りであるかを計測検討するための器具である。
【背景技術】
【0002】
一般にプロペラの形状は、舟艇の走行性能に大きく影響することが知られており、効率的に水をかくためにはプロペラを水理学的に定まる所定の形状としなければならない。特に厚みが薄いプロペラにおいては、使用によって変形が生じやすいため、形状の修正がたびたび必要になる。
形状の修正にあたっては、所定の形状に沿うように作成した計測具の計測面をプロペラに押し当てて、プロペラに密着するか否かで修正の必要があるかの判断を行い、密着しなかった場合はハンマー等でプロペラを変形させることによって修正を行う。
特許文献1には、上記のような方法でプロペラの形状を計測し、修正を行うためのプロペラゲージが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、造形物を積層して製造する3Dプリンターは、短時間で比較的自由度の高い構造物の製造を可能とし、いわゆる小ロット品の製造において非常に優れた効果を発揮する。ここにおいて、プロペラは使用者が求める使用感や使用目的によって好ましい形状が異なるため、計測器具は小ロット生産を行うことが通常であり、積層造形を行うことが好ましい。
一方、特許文献1に記載の従来型のプロペラ用計測器具では、その形状から積層造形を行うことが難しく、積層造形を行っても精度を上げることが難しいという課題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑み、積層造形によって製造される、精度が高く扱いやすいプロペラ用計測器具の提供、またプロペラ計測器具の積層造形による製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本願発明は、筒状のプロペラボスを中心に備えるプロペラの羽の形状を計測する計測器具であって、前記プロペラの一部と当接して位置合わせを行うと調整部と、前記羽の形状測定を行う測定部と、前記調整部と前記測定部とを接続する接続部を備え、前記測定部は、前記羽と当接する計測面と、一面を平面とするテーブル面と、を有する計測器具。
このようにテーブル面を有することによって、積層造形の安定性を高め、造形の精度を高めることができる。また、平面になる部分を有することによって、不使用時に載置することを容易にし、取り扱い性能を向上させることができる。
【0007】
本発明の好ましい形態では、前記調整部及び前記接続部は、前記テーブル面を含む水平面の上側に位置する。
このような構成によって、テーブル面を下面にして載置すると、持ちやすい接続部や脱着作業に供される調整部が上方に位置するようになるため、手に取って使いやすくなる。また、テーブル面を第一層として積層造形を行ったときでも、他の部材がステージと干渉しなくなり、造形を容易にすることができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記調整部は、前記接続部と接続する調整部本体と、プロペラボスに貫入するシャフト部を有し、前記シャフト部は、前記調整部本体から取り外し自在に設けられている。
このような構成によって、プロペラボスと調整部との位置関係の調整を容易にすることができる。
また、計測器具において突出する構成要素であるシャフト部を分解収納することができるため、計測器具の収納を容易にすることができる。また複数の計測器具によるプロペラ計測にあたっては調整部本体を取り外してシャフト部を流用することができるため、必要な部品点数を減らすことができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記シャフト部は、軸方向に溝部を有する。
このような構成によって、プロペラボスや調整部本体と弾性力によって固定されるようになるため、プロペラに対する調整部の位置固定の精度が上昇する。
【0010】
上記課題を解決する本願発明は、プロペラの羽の形状測定を行う測定部を備え、前記測定部は、前記羽と当接する計測面と、一面を平らとする平面状のテーブル面を有する計測器具を、前記テーブル面を第一層として積層して製造する計測器具の製造方法である。
このような方法によって、積層造形の安定性を高め、造形の精度を高めることができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、プロペラボスに篏合するシャフトに取り付けられる調整部本体と、前記測定部と前記調整部本体を接続する接続部と、を備え、前記測定部と、前記調整部本体と、前記接続部と、を一体に形成する。
このように一体に形成することによって、測定部、接続部、調整部本体が接続する部分による誤差が発生することがなくなるため、位置精度をより高めることができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記調整部本体に取り付け自在で、軸方向に溝部を有するシャフト本体を、軸方向に積層して形成する。
このように形成することによって、シャフト本体を同時に製作することができる。
【発明の効果】
【0013】
上記課題を解決する本発明は、積層造形によって製造される、精度が高く扱いやすいプロペラ用計測器具を提供することができ、また、プロペラ計測器具の積層造形による製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る、計測器具及びプロペラの分解斜視図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係る、計測器具及びプロペラの取り付け斜視図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態に係る、シャフトを様々な角度から見た図である。
【
図4】本発明の第一の実施形態に係る、シャフトの断面図である。
【
図5】本発明の第一の実施形態に係る、計測器具の製造方法の説明図である。
【
図6】本発明の第二、第三の実施形態に係る、シャフトの断面図である。
【
図7】本発明の第四の実施形態に係る、計測器具の製造方法の説明図である。
【
図8】本発明の第五の実施形態に係る、計測器具の取り付け斜視図及び製造方法の説明図である。
【
図9】本発明の第六の実施形態に係る、シャフトの斜視図である。
【
図10】本発明の第六の実施形態に係る、シャフトの断面図及び底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて、本発明の各実施形態に係るプロペラ計測器具について説明する。説明は、実施形態の構成、製造方法、実施の方法、他の実施例の順に詳述する。また、以下において、符号Pはプロペラを表し、符号Xは、計測器具を表す。
なお、以下に示す各実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の各実施形態に限定するものではない。
【0016】
≪第一の実施形態≫
プロペラPは、舟艇に装着するための筒状のプロペラボスP1と、プロペラボスP1の外周に取り付けられ、水を掻くために適切な形状を有する羽P2とによって構成されている。
本発明に係る計測器具Xは、
図1、2に示すように羽P2の所定領域P21が適切な形状であるかを測定するために使用される。
計測器具Xは、プロペラボスP1と位置合わせを行う調整部1と、羽P2と当接することによって羽P2の形状測定を行う測定部2と、調整部1と測定部2とを接続する接続部3とを備える。
【0017】
調整部1は、羽P2において測定部2が測定すべき場所に当接するように、プロペラPの軸方向および該軸方向を中心とした回転方向の位置調整を行う部分であって、接続部3と接続する調整部本体11と、プロペラボスP1に貫入して設けられるシャフト部12とによって構成されている。
さらに、本実施形態においては、調整部本体11とシャフト部12とが取り外し可能に設けられている。
ここで、
図3は、本実施形態におけるシャフト部12を様々な方向から見た様子を表す。詳述すると、
図3(a)は、平面図であり、
図3(b)は正面図であり、
図3(c)は底面図である。なお、正面図、側面図、背面図については、いずれの方向から見ても正面図と略同一となるため、記載を省略している。そして、
図4は、
図3(a)のQ―Q’断面におけるシャフト部12の断面図を表している。
【0018】
調整部本体11は、底面を有する筒状の部品であって、
図4に示すように、その内側にシャフト部12を嵌め込んで取り付けられるように構成されている。さらに詳述すると、調整部本体11の有する穴の下端には、後述する上端部122の径及び厚みと対応するように、深溝111が設けられている。
【0019】
深溝111は、調整部本体の底面近傍に設けられる幅広の空隙部分である。ここにおいて上端部122が当接する部分は底面に対して傾斜しており、これによって取付けを容易にしている。また、深溝111に上側面溝S1に対応するように突出部分を設けることによって、回転方向に固定できるようにしても良い。
【0020】
シャフト部12は、円柱状の部材であって、一端が調整部本体11に篏合し、他端がプロペラボスP1に篏合するように構成されており、シャフト本体121と、シャフト本体121よりも径の大きい上端部122とを有する。
【0021】
シャフト本体121は、その外径がプロペラボスP1の内径と略同一か少し大きくなるように設けられており、また、その長さは少なくとも調整部本体11の長さよりも長くなるように設けられ、好ましくはプロペラボスP1よりも長くなるように設けられている。これによって、調整部本体11及びプロペラボスP1への嵌め合わせを強固にすることができる。好ましくは、シャフト本体121は、調整部本体11に嵌め込まれた状態で、一部分がプロペラボスP1の端部からはみ出さない程度の長さとすることが好ましい。
また、シャフト本体121は、
図3(b)に示すように、上端部122から伸びる空隙部分である上端溝123と、下端から伸びる空隙部分である下端溝124を有する。
【0022】
上端部122は、シャフト本体の上部から1~5mm程度突出した円盤状の部分であり、その半径は、シャフト本体121よりも1~3mm程度大きくなるように形成されている。シャフト本体121から連続するように、上端溝123が設けられている。
【0023】
上端溝123は、中心に形成された穴部である上中心溝C1と、側面から上中心溝C1にかけて形成された溝である上側面溝S1によって構成されている。上中心溝C1の半径は、少なくとも上端部122の半径とシャフト本体121の半径との差よりも大きくなるように設けられており、上側面溝S1の幅は、少なくとも上端部122の円周長さとシャフト本体121の円周長さとの差よりも大きくなるように形成されている。
なお、上側面溝S1は、同一形状の複数の溝が等間隔に配置されるように形成されていることが好ましく、より好ましくは、溝は3つか4つあるとよい。このような場合、上側面溝S1の幅は、すべての溝の幅を合算した長さが少なくとも上端部122とシャフト本体121との円周長さの差よりも大きくなるように形成されている。
また、上端溝123の長さは、調整部本体11の深さと略同一か少し短くなるように構成されており、これによって調整部本体11にはめ込みやすくしてある。
【0024】
下端溝124は、上端溝123と同様に下中心溝C2と、下側面溝S2によって構成されている。下中心溝C2の半径は、少なくともシャフト本体121の半径とプロペラボスP1の半径との差よりも大きくなるように設けられており、下側面溝S2の幅は、少なくともシャフト本体121の円周長さとプロペラボスP1の円周長さとの差よりも大きくなるように形成されている。
なお、下側面溝S2は、複数の溝が等間隔に配置されるように形成されていることが好ましく、より好ましくは、溝は3つか4つあるとよい。このような場合、下側面溝S2の幅は、すべての溝の幅を合算した長さが少なくとも上端部122とシャフト本体121との円周長さの差よりも大きくなるように形成されている。
また、下端溝124の長さは、プロペラボスP1の深さと略同一になるように構成されていることで、プロペラボスP1にはめ込みやすくしてある。なお、シャフト本体121の周方向断面には、上端溝123及び下端溝124のいずれの溝も設けられていない領域を設けることによって、シャフト本体121の耐久性を高めている。
【0025】
測定部2は、羽P2と当接することによって形状の測定を行う計測面21と、計測面と隣接して設けられる平面状のテーブル面22と、接続部3と接続する接続面23と、が含まれる板状の部品である。
【0026】
計測面21は、測定部2を板状とみなしたときに厚み方向にあたる面に設けられている。
調整部1及び接続部3は、計測面21が所定領域P21に当接するように位置調整ができるようにしてあり、計測面21は、所定領域P21の形状に沿うような計測面を形成している。
なお、羽P2において所定領域P21とする領域には、プロペラボスP1から羽P2の先端部に向かう線上の領域や、その線に垂直な線上の領域、羽P2を平面視した際に格子を形成する線上を含む領域等が挙げられる。所定領域とする部分は長さ1~10cm、幅0.2~2cm程度とすることが好ましい。
【0027】
テーブル面22は、計測面21に隣接して設けられる面であり、平面状になるように設けられている。また、テーブル面22を含む水平面Aを考えた際、調整部1や接続部3は、水平面Aと干渉しないようにいずれも上方に設けられている。
【0028】
接続面23は、テーブル面22と略平行に設けられている面であって、接続部3が一体に形成されている。
接続面23とテーブル面22との間隔は、2~10mm程度が想定され、テーブル面22と接続面23との間に形成される一面が計測面21となる。
【0029】
接続部3は、調整部1と、測定部2とを結ぶ棒状部材であって、適切な長さにすることによってプロペラPの軸から測定部2までの距離の位置調整を行う。
接続部3の測定部2との接続位置は、計測面21に相対する面の近傍に設けられていることが好ましく、また、調整部1との接続位置は、筒状の調整部本体11において面張りされる面の付近に設けられていることが好ましい。これによって、測定部2が羽P2に当接する際に接続部3が他の部材と接触しないようにして、計測面を当接しやすくすることができる。また、これに伴って接続部3が羽P2に対して上方へ湾曲するように設けられていてもよい。
さらに、接続部3と他の部材とが接続する部分にはリブ加工を施して補強がなされていることが好ましい。
【0030】
以下、
図5を用いて、本発明の計測器具Xの製造方法について説明を行う。計測器具Xは、製造者によって製造される。なお、製造方法は以下に記載の方法に限られず、順番は前後してもよい。
【0031】
まず、製造者は、適切な形状を有する模範プロペラP’を用意し、模範プロペラP’の形状を3Dスキャナ等の形状を取り込む装置によって取り込み、デジタルデータに変換する。
【0032】
次に、製造者は、得られたデジタルデータを利用して測定部2をデジタル上で作成する。作成には、模範プロペラP’の所定領域P21の形状に沿った計測面21を作成する工程と、計測面21およびテーブル面22を含む板体を作成する工程を含む。
【0033】
次に、製造者は、調整部1及び接続部3をデジタル上で作成する。
調整部1の作成は、プロペラボスP1の内径よりも大径の柱体にシャフト本体121の断面と略同一形状の穴部を形成することによって行う。
接続部3の作成は、接続面23と調整部1とに棒状部材を接続することによって行う。ここにおいて、製造者は、計測面21が所定領域P21に当接する際、接続部3が羽P2に接触することが見込まれる場合は、接続部3が調整部1や接続面23と接続する位置を計測面21から離れる方向へ移動させ、または接触しないように湾曲させる。
製造者は、併せて、シャフト部12をデジタル上で作成し、これによって計測器具Xの3Dデータを作成する。
【0034】
続いて、製造者は、上記の3Dデータを3Dプリンターによる積層造形によって出力する。材はPLAやABS、UVレジンを使用することが好ましい。
積層造形にあたっては、
図5に示すように、第一層(最も下層にあたり、ステージ40またはラフト41に密着する部分)がテーブル面22となるように積層を行う。これによって、隣接する計測面21の長辺方向に積層痕が発生しなくなるため、計測面21と所定領域P21とをより密着させることができるようになり、精度が向上する。
【0035】
併せて、製造者は、シャフト部12の端部を第一層として積層造形を行う。これにより、上端溝123及び下端溝124を容易に造形することができるようになる。なお、上記の同一のステージ40上に作成することで造形時間を短縮することができる。
【0036】
造形された計測器具Xの模式図を
図5に示す。ここにおいて、
図5(a)はステージ40上に造形された計測器具Xの斜視図を表しており、
図5(b)は、その側面図を表している。
図5(b)に示すように、ステージ40に載置された際に、上部に接続部3や調整部1を有するテーブル面22が第一層となることによって、造形の安定性を高め、造形に必要なラフト41やサポート材42の量を減ずることができる。
【0037】
以下、
図1、2を用いて、本発明の実施の方法について詳述する。本発明は、プロペラPの形状の修正を行う使用者によって実施される。また、以下に示す実施の方法は一例であり、実施の方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。使用者は様々な所定領域P21に対応した調整部本体11、測定部2、接続部3を組み合わせた部品(以下、計測器具本体)と、それに対応する1本のシャフト部12を利用して修正を行う。
【0038】
まず、使用者は、上端部122に調整部本体11を嵌め合わせる。上端部122は、通常の状態においては調整部本体11に嵌め合わせることができないが、その側面から内側方向に力を加えることによって径が収縮し、調整部本体11の穴に嵌め込むことができるようになる。使用者はその状態で調整部本体11にシャフト部12を貫入させる。ここにおいて、上端部122が深溝111の位置まで移動すると、その弾性力によって深溝111と篏合し、調整部本体11が高さ方向に固定される。
【0039】
次に、使用者は、シャフト本体121をプロペラボスP1の中に貫入する。ここにおいて、調整部本体11への篏合と同様に、シャフト本体121は内側方向に縮小変形した状態で貫入するため、外側方向に向かう弾性力によってプロペラボスP1の内部に緊篏合される。これにより、シャフト本体121がプロペラボスP1に対して垂直に固定され、位置の精度を向上させることができる。
【0040】
次に、使用者は、計測面21と所定領域P21とが当接するように計測器具Xを軸方向に回転させ、計測を行う。所定領域P21に計測面21が密着した場合はプロペラ形状が正しい物としてその位置での計測を終了する。一方、密着しなかった場合は、プロペラボスP1から計測器具Xを取り外し、ハンマー等で叩くことによってプロペラ形状を修正し、再び計測器具Xによる計測を行う。上記作業を、所定領域P21に計測面21が密着するようになるまで繰り返す。
【0041】
次に、使用者は、調整部本体11をシャフト本体121から取り外し、別の所定位置に対応する計測器具本体をシャフト本体121に取り付け、これを用いてプロペラPの修正を行う。
使用者は、上記作業を繰り返すことによって、模範プロペラP’と同じ形状となるように羽P2の形状を修正することができる。
【0042】
上記構成によって、積層造形によって製造される、精度が高く扱いやすいプロペラ用計測器具の提供、またプロペラ計測器具の積層造形による製造方法の提供をすることができる。
【0043】
以下に、
図6、
図7を用いて、他の実施形態について詳述する。なお、第一の実施形態と同様の構成については同じ符号を用いて説明を省略する。
ここで、
図6は、調整部本体11およびシャフト本体121の形状をそれぞれ変更した、第二の実施形態及び第三の実施形態における調整部の断面図を表す。
また、
図7は、第四の実施形態に係る、ステージ40上に置かれた計測器具Xの側面図を表す。
【0044】
《第二の実施形態》
図6(a)に示す形態では、シャフト本体121において、上端部122の下方からシャフト本体121の軸に向かって湾曲する湾曲部125を設けることによって、調整部本体11への取付けを容易にしている。さらにシャフト本体121に下端部126を設けることによって、プロペラボスP1に取り付けられるようにしてある。
【0045】
湾曲部125は、上端が上端部122の下端部に位置し、下端が取り付けられた状態における調整部本体11の下端に位置して軸方向に向かう凹部を形成する部分であって、全周に渡って設けられることによって徳利のような形状となる。これにより、上端部122の取り外しを容易にすることができるようになる。
【0046】
下端部126は、シャフト本体121の下端において、径方向に向けて突出する部分である。下端部126の外径をプロペラボスP1の内径よりも大きくし、前述の上端部122のように、下中心溝C2の径及び下側面溝S2を適切な幅に構成することによって、シャフト部12をプロペラボスP1に貫入可能としている。
また、調整部本体11にシャフト部12が取り付けられた状態において、調整部本体11の下面から下端部126の上面までの高さは、プロペラボスP1の高さと略同一になるように設けられている。これによって、プロペラボスP1の高さ方向所定位置においての位置固定を容易にすることができる。
【0047】
《第三の実施形態》
図6(b)に示す形態では、調整部1は、接続部3と接続する筒状の調整部本体11と、調整部本体11の穴に貫入するシャフト部12と、調整部本体11の内部に設けられるネジである内ネジ13と、によって構成されている。
【0048】
調整部本体11は、一面が閉じられた略筒状の部材であり、開口した穴の奥部には、開口面における穴よりも穴径が大きい深溝111が設けられている。また、深溝111の周縁には内側方向に突出する突出材が設けられており、ここにおいて内ネジ13の側面に設けられた溝と係合する。
【0049】
シャフト部12の上端には、雌ネジ部127が設けられており、後述する調整部本体11の内部に取り付けられている雄ネジ部132に螺設される。
なお、シャフト本体121の下端に、下端部126を設けても良い。
【0050】
内ネジ13は、頭部131と雄ネジ部132とによって構成されている。
頭部131は、上端部122と同様に、深溝111に係合できるような溝が設けられており、また、側面に形成された溝が深溝111に設けられている突出材に係合することで軸方向に回転固定される。
【0051】
使用者は、調整部本体11に、内ネジ13を頭部131から入れ込んで固定し、その後、シャフト部12をねじ入れることによって、計測器具Xを形成する。
このようにすることで、シャフト部12をプロペラボスP1に貫入させたまま調整部本体11等を回転・交換・高さの調整を行えるようになるため、取り扱い性能が向上する。
【0052】
《第四の実施形態》
水平面A上に形成される平面は、測定部2のテーブル面22だけでなく、調整部1や接続部3にも設けられていてもよい。例えば、
図7に示すように調整部1から突出する調整サポート112の底面を水平面A上に含まれるように設けても良い。
このようにすることによって、積層造形の安定性をより高め、製造をさらに容易にすることができる。
【0053】
《第五の実施形態》
本実施形態に係る発明では、
図8に示すように、計測面21はテーブル面22から接続面23にかけて、外側方向に拡がる方向に傾斜を付けて設けられており、当該傾斜の端部が実際に所定領域P21と接触する計測端211となる。
上述の傾斜は、
図8(a)に示すように、計測端211が所定領域P21に接触したときに計測端211を除いた計測面21が羽P2に接触しないために、羽P2と所定領域P21における羽P2の接線のなす角よりも、テーブル面22に対する計測面21の角度の方が鋭角になるように設けられている。
なお、傾斜の方向は、テーブル面22から接続面23に向けて、内側方向に狭まるように設けていてもよく、積層して製造する場合にはこのように形成することが好ましい。
【0054】
計測端211は、テーブル面22あるいは接続面23の外端部として突出して設けられており、計測器具Xを適切に使用した際に、計測端211は所定領域P21と接触し、ここにおいて羽P2の計測を行うことができる。
このように、テーブル面22に対して平行な面を計測端211とする構成によって、計測面21の全体をそのまま所定領域P21に接触させて測定する場合と比較して、使用者は所定領域P21のどの位置において形状のズレが発生しているのかを視認によって把握しやすくなり、プロペラPの測定及び修正を容易にすることができるようになる。
【0055】
《第六の実施形態》
本実施形態では、
図9及び
図10に示すように、シャフト本体121の一部を芯部128とし、芯部128の周囲を覆い部129によって囲うように構成している。そして、芯部128と覆い部129との間には、空隙S4が設けられている。
ここにおいて、
図10(a)はS―S’断面の断面図を示し、
図10(b)はT―T’断面の断面図を表している。
【0056】
本実施形態のシャフト部12は、若干の弾性変形ができるように設けられた略円柱状の部材であって、一端が調整部本体11に篏合し、他端がプロペラボスP1に篏合するように構成されており、軸状のシャフト本体121と、シャフト本体121よりも径の大きい上端部122及び下端部126を有することで、押し込んで取り付けられた際に、内側から外側に押し付ける力が発生するようにしている。
【0057】
シャフト本体121は、その外径が調整部本体11の内径より0.5mm~5mm程度大きくなるように設けられる略円柱状の部材であって、その下端は芯部128と一体に接続されている。
また、シャフト本体121は、
図9に示すように、上端部122からシャフト本体121を通り、芯部128まで高さ方向に伸びる溝部分である上端溝123を有している。
【0058】
上端部122は、シャフト本体の上部から0.1~5mm程度突出した円盤状の部分であり、その半径は、シャフト本体121よりも0.1~3mm程度大きくなるように形成されている。シャフト本体121から連続するように、上端溝123が設けられている。なお、本実施形態においては設けられてなくとも良い。
【0059】
上端溝123は、中心に形成された穴部である上中心溝C1と、側面から上中心溝C1にかけて設けられている溝である上側面溝S1によって構成されている。上中心溝C1の半径は、少なくともシャフト本体121の半径とシャフト本体121の半径との差よりも大きくなるように設けられており、上側面溝S1すべての溝の幅を合算した長さが、少なくとも調整部本体11の円周長さとシャフト本体121の円周長さとの差よりも大きくなるように形成されている。これによって、シャフト本体121が径方向に収縮し、調整部本体11に貫入できるようにしてある。
なお、実施形態においては、等間隔に3つの上側面溝S1が設けられていることとしているが、構成はこれに限られない。また、上端溝123がシャフト本体121の全体を通ることによって、調整部本体11に容易に貫入できるようにしてある。
【0060】
本実施形態における下端部126は、
図10(c)に示すように、プロペラボスP1の内径と略同一又は少し大きい外径を有する円柱状の部材であって、所定の位置に設けられる切り込み部分である下端溝124と、下端部126の中心にプロペラボスの内部断面と同形の円を配置したと仮定したときに、外側に突出する突出片S21を有する。
また、下端部126の上部には、芯部128及び覆い部129が一体に形成されている。
【0061】
下端溝124は、中心に設けられる円柱状の溝である下中心溝C2と、側面に設けられる溝である下側面溝S2がそれぞれ独立して設けられている。
下中心溝C2の半径は、少なくとも覆い部129の半径と同一であり、その高さは下端部126の高さよりも少し低くすることが好ましい。また、下側面溝S2の幅は、少なくとも突出片S21の幅よりも大きくなるように設けられている。
一方、下中心溝C2の高さは覆い部129の付近よりも高い位置まで伸びていてもよく、これによって下端部126の全体が径方向に収縮可能となっていても良い。
【0062】
下側面溝S2は、下端部126の側面から中心に向かう径方向に形成される径溝S22を2つ有しており、さらに径溝S22の中心側の端部同士を結ぶ結合溝S23が、突出片S21に沿うような形状で設けられている。径溝S22の位置は、上側面溝S1に対応させることが好ましいが、どのように構成されていてもよい。結合溝S23の幅は、少なくとも突出片S21の突出する幅よりも大きくなるように設けられ、また好ましくは、底面視した結合溝S23の形状が突出片S21の外周縁と平行になるように設けられている。
このような構成によって、突出片S21は内側方向に収縮可能となり、下端部126をプロペラボスP1の内部に貫入することができるようになる。
また、シャフト部12の周方向断面には、上端溝123、下端溝124及び覆い側面溝S3のいずれの溝も設けられていない領域を設けることによって、シャフト本体121の耐久性を高めている。
【0063】
芯部128は、シャフト本体121と下端部126とを接続する円柱状の部材であって、その外径はシャフト本体121及び下端部126のいずれよりも小さくなるように設けられている。ここにおいて、シャフト本体121との接続は、テーパが設けられることによって外周面同士が接続されており、また下端部126との接続は、下端部126の上端の中心から芯部128が伸びるように形成されていることによる。
なお実施形態においては、シャフト部12は一体成型されることを想定しているが、シャフト本体121及び芯部128と、下端部126は取り外し可能に構成されてもよい。
【0064】
覆い部129は、芯部128を取り囲むように設けられている略円筒状の部材であって、その厚みは1~5mm程度、その外径は調整部本体11及びプロペラボスP1の内径よりも少し大きくなるように設けられ、シャフト本体121及び下端部126の外径と略同一になるように設けられている。覆い部129には、所定の間隔で高さ方向に形成される溝部である覆い側面溝S3が設けられており、さらに、芯部128との間には空隙S4が設けられていることによって径方向に変形することが可能となっている。
【0065】
覆い側面溝S3は、高さ方向に形成される溝であって、平面部分において所定の間隔において設けられる。
覆い側面溝S3すべての溝の幅を合算した長さが、少なくとも覆い部129の内周長さと芯部128の外周長さとの差よりも大きくなるように形成されている。
また、覆い側面溝S3は、上端溝123及び下端溝124のいずれとも位置をずらして配置することによって、内側から押圧する力の配分を分散し、保持力を高められるようにしてある。
【0066】
空隙S4は、芯部128と覆い部129との間に設けられる、1mm~5mm程度の所定の幅で設けられる空隙部分であって、芯部128がテーパとなっている部分においては覆い部129に切り欠きを設けることによって空隙を保持してある。
【0067】
以下に本実施形態における発明の使用の方法について詳述する。シャフト部12は、プロペラボスP1と調整部1とを接続する目的を持つ使用者によって使用される。なお、使用の実態はこれに限られず、順番は前後してもよい。
【0068】
まず、使用者は、調整部1に上端部122を接続する。
使用者が調整部本体11に上端部122を押し込み入れると、上端溝123の作用によって上端部122及びシャフト本体121が径方向に収縮する。このとき、シャフト本体121の弾性力によってもとの形状に戻ろうとする動きが働き、これによって調整部本体11の内側から外側に向かって押し付ける力が発生し、ここにおいてガタつきを抑えたはめ込みすることができるようになる。
【0069】
次に、使用者は、さらにシャフト部12を調整部1に押し込み、調整部本体11の端部が覆い部129の中途に位置するようにする。覆い部129においても、シャフト本体121と同様にその弾性力によってもとの形状に戻ろうとする動きが働き、これによって調整部本体11の内側から外側に向かって押し付ける力が発生し、ここにおいてガタつきを抑えたはめ込みすることができるようになる。
【0070】
最後に、使用者は、下端部126をプロペラボスに121に押し込む。この際、下端溝124の作用によって下端部126が径方向に収縮することで、下端部126をプロペラボスP1に取り付けることができる。
続けて、下端部126をさらに押し込むことによって、プロペラボスP1の上端を覆い部129の中途に位置するようにすると、上記と同様にプロペラボスP1の内側から外側に向かって押し付ける力が発生し、ここにおいてガタつきを抑えたはめ込みすることができるようになる。
【0071】
このように構成することによって、上端部122、シャフト本体121、覆い部129、下端部126のいずれの領域においても弾性力による径方向に押し付ける力が発生する。すなわち、シャフト部12を貫入する調整部本体11及びプロペラボスP1のいずれの部品においても、少なくとも2箇所において外側方向に押圧する部分が配置されるため、取り付け時のガタつきを大幅に軽減することができる。
【0072】
特に、従来は押圧力を強めることによってガタつきを抑えていたところ、本実施形態の構成によれば、押圧力を強めずにガタつきを抑えることができるので、シャフト部12の抜き差しを容易にできる。
また、上端溝123、下端溝124及び覆い側面溝S3は、3以上の溝部が均等な間隔で配置されていることによって、調整部本体11及びプロペラボスP1に対して均一に押圧作用を起こし、ガタつきをより軽減し、さらに軸を合わせた取り付けを容易にできる。
【符号の説明】
【0073】
X 計測器具
1 調整部
11 調整部本体
111 深溝
112 調整サポート
12 シャフト部
121 シャフト本体
122 上端部
123 上端溝
C1 上中心溝
S1 上側面溝
124 下端溝
C2 下中心溝
S2 下側面溝
125 湾曲部
126 下端部
127 雌ネジ部
128 芯部
129 覆い部
S3 覆い側面溝
S4 空隙
13 内ネジ
131 頭部
132 雄ネジ部
2 測定部
21 計測面
211 計測端
22 テーブル面
23 接続面
3 接続部
40 ステージ
41 ラフト
42 サポート材
P プロペラ
P1 プロペラボス
P2 羽
P21 所定領域
A 水平面