(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125548
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】輻射体、コンクリート構造体、輻射ユニット及び冷暖房システム
(51)【国際特許分類】
F24D 19/00 20060101AFI20230831BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20230831BHJP
F28F 13/18 20060101ALI20230831BHJP
F25B 23/00 20060101ALI20230831BHJP
F24D 5/08 20060101ALI20230831BHJP
E04B 5/43 20060101ALI20230831BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
F24D19/00 Z
F24F5/00 101B
F28F13/18 Z
F25B23/00 Z
F24D5/08 Z
E04B5/43 A
E04B5/43 Z
E04B9/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029686
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】321008734
【氏名又は名称】株式会社ユカリラ
(71)【出願人】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角田 正
【テーマコード(参考)】
3L071
3L073
【Fターム(参考)】
3L071AA04
3L071AA05
3L073BB03
(57)【要約】
【課題】熱媒体が保有する熱を効率よく伝達する輻射体、コンクリート構造体、輻射ユニット及び冷暖房システムを提供する。
【解決手段】輻射体10は、気体熱媒体Aが流れる送気筒11と、送気筒11を流れる熱媒体Aを送気筒11の内壁に沿った流れとする集散部材12とを備える。集散部材12は、案内部材13と、その下流側に配置された方向変換部材17とを有する。案内部材13は熱媒体Aを送気筒11の軸線の方向に寄せ、方向変換部材17は案内部材13を通過した熱媒体Aを内壁に沿った流れに流れの方向を変える。集散部材12は、軸線方向に間隔をあけて複数設けられている。コンクリート構造体は、輻射体10と、その周囲を覆うコンクリートとを備える。輻射ユニットは、輻射体10と、その近傍に配置された反射板とを備える。冷暖房システムは、コンクリート構造体又は輻射ユニットと、熱媒体Aの温度を調節する温度調節機とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体の熱媒体が流れる送気筒と、
前記送気筒の内部に設けられ、前記送気筒を流れる前記熱媒体を前記送気筒の内壁に沿った流れとする集散部材と、を備え、
前記集散部材は、案内部材と、前記熱媒体の流れ方向に見て前記案内部材の下流側に配置された方向変換部材と、を有し、
前記案内部材は、前記熱媒体の前記内壁に隣接して流れる部分を前記送気筒の軸線の方向に寄せるものであり、
前記方向変換部材は、前記案内部材を通過した前記熱媒体を、前記内壁に沿った流れに流れの方向を変えるものであり、
前記集散部材は、前記軸線が延びる方向に間隔をあけて複数が設けられている、
輻射体。
【請求項2】
前記案内部材は、前記軸線に交差する方向の断面における前記送気筒の内部の周縁を塞ぐ周縁板を有し、前記周縁板の内側に前記熱媒体が通過可能な通過孔が形成されている、
請求項1に記載の輻射体。
【請求項3】
前記方向変換部材は、錐体の形状に形成されていると共に、前記錐体の頂点が前記熱媒体の流れ方向の上流側に位置し、前記錐体の底部と前記送気筒の前記内壁との間に隙間が形成されるように配置されており、
前記案内部材及び前記方向変換部材は、所定の距離を隔てて配置されている、
請求項1又は請求項2に記載の輻射体。
【請求項4】
前記方向変換部材は、前記案内部材を通過した前記熱媒体を、前記軸線に交差する方向の断面における前記送気筒の周方向に旋回する旋回流とする旋回流生成部材である、
請求項1又は請求項2に記載の輻射体。
【請求項5】
前記旋回流生成部材は、前記軸線が延びる方向に対して交差する方向に面が広がる受板と、前記受板の前記案内部材に対向する面に設けられて前記案内部材の方に立設した側壁板と、を有し、
前記側壁板は、前記軸線から前記内壁の方向に向かって湾曲して延びている、
請求項4に記載の輻射体。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の輻射体と、
前記輻射体の周囲を覆うコンクリートと、を備える、
コンクリート構造体。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の輻射体と、
前記輻射体の近傍に配置された反射板であって、前記輻射体から輻射された熱を所定の方向に反射させる反射板と、を備える、
輻射ユニット。
【請求項8】
請求項6に記載のコンクリート構造体又は請求項7に記載の輻射ユニットと、
前記送気筒に流入させる前記熱媒体の温度を調節する温度調節機と、を備える、
冷暖房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は輻射体、コンクリート構造体、輻射ユニット及び冷暖房システムに関し、特に熱媒体からの伝熱効率を向上させた輻射体、コンクリート構造体、輻射ユニット及び冷暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーと快適性とを両立する冷暖房方式として、輻射熱で冷暖房を行う輻射冷暖房システムが採用されることが増加してきている。輻射冷暖房システムは、冷暖房対象空間に面する部材(天井、床、壁など)を、冷房時は冷やし暖房時は暖めて、冷却又は加熱した部材からの輻射熱により対象空間の冷暖房を行うシステムである。輻射冷暖房システムに用いられる部材として、対象空間に面する表面板の裏側に、温度調節した空気を流す流路を複数設け、この流路を流れる空気の熱を表面板に伝達させて、表面板から冷熱又は温熱を輻射する仕切パネルがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
輻射による冷暖房では、冷熱又は温熱を輻射する部材に、空気が保有する冷熱又は温熱をより多く伝達させることができれば、冷暖房をより効果的に行うことができ、省エネルギーにも資することとなる。
【0005】
本開示は上述の課題に鑑み、熱媒体が保有する冷熱又は温熱を効率よく伝達することができる輻射体、コンクリート構造体、輻射ユニット及び冷暖房システムを提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係る輻射体は、気体の熱媒体が流れる送気筒と、前記送気筒の内部に設けられ、前記送気筒を流れる前記熱媒体を前記送気筒の内壁に沿った流れとする集散部材と、を備え、前記集散部材は、案内部材と、前記熱媒体の流れ方向に見て前記案内部材の下流側に配置された方向変換部材と、を有し、前記案内部材は、前記熱媒体の前記内壁に隣接して流れる部分を前記送気筒の軸線の方向に寄せるものであり、前記方向変換部材は、前記案内部材を通過した前記熱媒体を、前記内壁に沿った流れに流れの方向を変えるものであり、前記集散部材は、前記軸線が延びる方向に間隔をあけて複数が設けられている。
【0007】
このように構成すると、案内部材によって軸線寄りに集められた熱媒体が方向変換部材によって内壁に沿う流れとなる際に、熱媒体が保有する冷熱又は温熱が送気筒に効率よく伝達され、送気筒が冷熱又は温熱を発することができるようになる。
【0008】
また、本開示の第2の態様に係る輻射体は、上記本開示の第1の態様に係る輻射体において、前記案内部材は、前記軸線に交差する方向の断面における前記送気筒の内部の周縁を塞ぐ周縁板を有し、前記周縁板の内側に前記熱媒体が通過可能な通過孔が形成されている。
【0009】
このように構成すると、周縁板に行く手を阻まれた熱媒体が軸線の方向に寄って通過孔を通過することとなり、簡便な構成で熱媒体を軸線の方に集めることができる。
【0010】
また、本開示の第3の態様に係る輻射体は、上記本開示の第1の態様又は第2の態様に係る輻射体において、前記方向変換部材は、錐体の形状に形成されていると共に、前記錐体の頂点が前記熱媒体の流れ方向の上流側に位置し、前記錐体の底部と前記送気筒の前記内壁との間に隙間が形成されるように配置されており、前記案内部材及び前記方向変換部材は、所定の距離を隔てて配置されている。
【0011】
このように構成すると、錐体の側面に沿って流れる熱媒体は隙間を流れる際に流速が上がるため、熱媒体が保有する冷熱又は温熱を効率よく送気筒に伝達させることができる。
【0012】
また、本開示の第4の態様に係る輻射体は、上記本開示の第1の態様又は第2の態様に係る輻射体において、前記方向変換部材は、前記案内部材を通過した前記熱媒体を、前記軸線に交差する方向の断面における前記送気筒の周方向に旋回する旋回流とする旋回流生成部材である。
【0013】
このように構成すると、方向変換部材を通過した熱媒体が送気筒の内壁に接する時間を長くすることができ、熱媒体が保有する冷熱又は温熱を比較的多く送気筒に伝達させることができる。
【0014】
また、本開示の第5の態様に係る輻射体は、上記本開示の第4の態様に係る輻射体において、前記旋回流生成部材は、前記軸線が延びる方向に対して交差する方向に面が広がる受板と、前記受板の前記案内部材に対向する面に設けられて前記案内部材の方に立設した側壁板と、を有し、前記側壁板は、前記軸線から前記内壁の方向に向かって湾曲して延びている。
【0015】
このように構成すると、簡便な構成で熱媒体の旋回流を生成することができる。
【0016】
また、本開示の第6の態様に係るコンクリート構造体は、上記本開示の第1の態様乃至第5の態様のいずれか1つの態様に係る輻射体と、前記輻射体の周囲を覆うコンクリートと、を備える。
【0017】
このように構成すると、送気筒の発する冷熱又は温熱がコンクリートに伝達し、コンクリートの表面から冷熱又は温熱を輻射することができる。
【0018】
また、本開示の第7の態様に係る輻射ユニットは、上記本開示の第1の態様乃至第5の態様のいずれか1つの態様に係る輻射体と、前記輻射体の近傍に配置された反射板であって、前記輻射体から輻射された熱を所定の方向に反射させる反射板と、を備える。
【0019】
このように構成すると、送気筒から輻射された冷熱又は温熱を反射板によって所定の方向に輻射させることができる。
【0020】
また、本開示の第8の態様に係る冷暖房システムは、上記本開示の第6の態様に係るコンクリート構造体又は上記本開示の第7の態様に係る輻射ユニットと、前記送気筒に流入させる前記熱媒体の温度を調節する温度調節機と、を備える。
【0021】
このように構成すると、温度を調節した熱媒体を送気筒に流入させることができ、熱媒体が保有する熱を送気筒を介してコンクリート又は反射板に伝達させ、コンクリート又は反射板からの冷熱又は温熱の輻射により冷暖房対象空間の冷暖房を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、案内部材によって軸線寄りに集められた熱媒体が方向変換部材によって内壁に沿う流れとなる際に、熱媒体が保有する冷熱又は温熱が送気筒に効率よく伝達され、送気筒が冷熱又は温熱を発することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】(A)は一実施の形態に係る輻射体の側面断面図、(B)は輻射体が備える集散部材の斜視図、(C)は輻射体の拡大部分側面断面図である。
【
図2】一実施の形態に係る冷暖房システムの概略構成を示す斜視図である。
【
図3】(A)は一実施の形態の変形例に係る冷暖房システムの概略構成を示す分解斜視図、(B)は一実施の形態の変形例に係る冷暖房システムの概略構成を示す斜視図である。
【
図4】(A)は一実施の形態の変形例に係る輻射体の側面断面図、(B)は輻射体が備える集散部材の分解斜視図、(C)は集散部材の斜視図、(D)は集散部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0025】
まず
図1(A)~
図1(C)を参照して、一実施の形態に係る輻射体10を説明する。
図1(A)は輻射体10の側面断面図、
図1(B)は輻射体10が備える集散部材12の斜視図、
図1(C)は輻射体10の拡大部分側面断面図である。輻射体10は、気体の熱媒体としての温度が調節された空気(以下「温調空気A」という。)を内部に流し、温調空気Aが保有する冷熱又は温熱が伝達されて冷却又は加熱された外面から冷熱又は温熱を輻射するものである。ここで、輻射体10の外面を冷却して冷熱を輻射する際は、周囲よりも温度が低い輻射体10の外面が、周囲から吸熱するのであるが、便宜上、輻射体10が冷熱を輻射すると表現することとする。輻射体10は、送気筒11と、集散部材12とを備えている。
【0026】
送気筒11は、内部に温調空気Aを流す部材であり、温調空気Aの流路を形成するものである。送気筒11は、筒状の部材であり、その両端は開口面になっている。送気筒11は、典型的にはスパイラルダクトが用いられるが、角ダクトが用いられてもよい。つまり、送気筒11は、筒状の軸線に直交する断面の形状が、典型的には円であるが、矩形やその他の多角形でもよく、楕円であってもよい。ここで、筒状の軸線とは、筒形状の長手方向に直交する面における形状の図心を通り、当該長手方向に延びる仮想線である。送気筒11は、典型的には鋼板で形成されているが、鋼板以外の金属や、樹脂で形成されていてもよい。送気筒11は、スパイラルダクトが用いられる場合、例えば直径が100mm~250mm、あるいは150mm~200mmのものが用いられる場合があるが、用途に応じて直径を適宜変更することができる。送気筒11は、1本のダクトが一体に形成されていてもよく、複数本のダクトを軸線方向に接続して1本のダクトを形成してもよい。
【0027】
集散部材12は、本実施の形態では、送気筒11内を流れる温調空気Aを、送気筒11の軸線方向に、送気筒11の内壁に沿って、流速を上げて流すものであり、案内部材13と、方向変換部材17とを有している。集散部材12は、送気筒11の内部に、複数が設けられている。隣り合う集散部材12の間隔は、本実施の形態では、300mm~600mm、好ましくは400mm~500mmとしているが、送気筒11の直径の2倍~6倍、あるいは3倍~4倍~5倍としてもよく、その他、状況に応じてこれ以外の距離に設定してもよい。ここでの隣り合う集散部材12の間隔は、集散部材12の基準位置の間の距離であり、例えばそれぞれの案内部材13の間の距離である。本実施の形態では、複数の集散部材12が、軸棒31に取り付けられていることで、相互の間隔を維持している。軸棒31は、送気筒11の軸線上に配置されている。
【0028】
図1(B)を参照することで、案内部材13及び方向変換部材17の構成をより詳しく把握することができる。案内部材13は、送気筒11を流れる温調空気Aのうち、送気筒11の内壁近傍を流れるものを送気筒11の内側(送気筒11の軸線の方向)に近づける部材である。案内部材13は、本実施の形態では、断面円形のスパイラルダクトの内部に設けられるので、円板状の部材を加工して形成されている。案内部材13は、その外径が、送気筒11の内径と実質的に同じ寸法に形成されている。ここで、案内部材13の外径が送気筒11の内径と実質的に同じとは、理想的には同寸法であるが、送気筒11の内部に装着できるように案内部材13の外径を送気筒11の内径よりわずかに小さくすることを含むことを意図している。
【0029】
案内部材13は、円板状の外周部分に、所定の幅(円板状の径方向の長さ)の環状の周縁板14が設けられている。周縁板14の所定の幅は、案内部材13の円板状の半径の1/4~1/2程度、典型的には円板状の半径の1/3程度としてもよい。案内部材13は、周縁板14の内側に、ハブスポーク15が設けられていると共に通過孔16が形成されている。ハブスポーク15は、案内部材13の円板状の中心部分、及びこの中心部分と周縁板14とを接続する部分の総称である。ハブスポーク15の、中心部分と周縁板14とを接続する部分は、
図1(B)では4つとしているが、3つ又は2つ又は1つとしてもよく、あるいは5つ以上としてもよく、中心部分が周縁板14を支持できる範囲で極力小面積とするとよい。ハブスポーク15の中心部分は、軸棒31に支持されることができる範囲で極力小面積とするとよい。通過孔16は、送気筒11の内部を流れる温調空気Aを通過させる開口である。案内部材13を通過する温調空気Aは、すべてが通過孔16を通過することになる。通過孔16を通過する温調空気Aの乱流の発生を抑制する観点から、ハブスポーク15全体は極力小面積であることが好ましい。
【0030】
方向変換部材17は、案内部材13を通過した温調空気Aを、送気筒11の内壁に向かう流れに方向を変換する部材である。方向変換部材17は、錐部18と、筒部19とを有している。錐部18は、錐体の形状をした部分であり、本実施の形態では円錐状に形成されている。錐部18は、その軸線(軸棒31が通る部分に相当)と錐体の側面とのなす角が、例えば30度~60度に形成されているとよく、45度に形成されていてもよい。筒部19は、錐部18の底(錐体の底面に相当する部分)に取り付けられた筒状の部材であり、本実施の形態では円筒状に形成されている。円筒状の筒部19の直径は、円錐状の錐部18の底の直径に等しくなっている。また、筒部19の直径は、送気筒11の内径よりも小さく形成されており、筒部19と送気筒11の内壁との間に隙間35(
図1(A)及び
図1(C)参照)が形成される大きさに形成されている。隙間35は、筒部19の外側全周にわたって形成されている。隙間35は、送気筒11の内部を流れる温調空気Aの流速を大きくして静止空気(速度境界層)を除去又は静止空気(速度境界層)の厚さを減少させるために形成されている。このような観点から、隙間35は、ここを通過する温調空気A流速が概ね3m/s~5m/sとなるような寸法にするとよい。これらの事情を勘案して、筒部19の直径は、例えば送気筒11の内径の0.8倍~0.9倍にしてもよく、0.85倍であってもよい。錐部18に筒部19が接続した方向変換部材17の全体は、軽量化の観点から典型的には中空になっているが、内部の一部又は全部に物質(方向変換部材17を形成する物質又は異なる物質)が充填されていてもよい。
【0031】
方向変換部材17は、錐部18の頂点が案内部材13の側で筒部19が案内部材13から遠い側に位置する向きで配置されている。案内部材13と方向変換部材17とは、案内部材13を通過した温調空気Aが極力外側に(送気筒11の内壁の方に)広がる前に方向変換部材17に到達する間隔で配置されているとよい。案内部材13と方向変換部材17の最後部(温調空気Aの流れ方向で最下流に位置する筒部19の端部)との距離は、例えば、50mm~100mmとしてもよく、送気筒11の内径の0.5倍~1.2倍程度としてもよい。案内部材13及び方向変換部材17は、典型的には樹脂成形品が用いられるが、鋼板等の金属を加工して形成したものでもよい。案内部材13及び方向変換部材17は、両方とも同じ材料で形成されていてもよく、それぞれが異なる材料で形成されていてもよい。
【0032】
上述のように構成された輻射体10では、温調空気Aが供給されると、送気筒11の内部を温調空気Aが概ね層流で流れる。温調空気Aは、送気筒11内を流れる際、温調空気Aが保有する冷熱又は温熱を送気筒11に伝達する。送気筒11の内部を流れる温調空気Aは、案内部材13が配置されている位置に至ると、送気筒11の軸直角断面における外周部分を流れている分が、周縁板14に行く手を阻まれて、当該断面における中心の方向(軸棒31の方向)に向かう。周縁板14に遮られて軸棒31の方向に流れ方向を変えた温調空気Aは、もとより送気筒11の内部側(軸線側)を流れていた温調空気Aと共に、案内部材13の通過孔16を通過して案内部材13の下流側に至る。案内部材13を通過した温調空気Aは、少し下流側に流れると、方向変換部材17に至る。方向変換部材17に到着した温調空気Aは、錐部18の頂点から底部に向かって側面に沿って放射状に拡散しながら流れる。錐部18の底部に着いた温調空気Aは、筒部19の外側面と送気筒11の内面との間に形成された隙間35を通り、方向変換部材17の下流側に流れる。温調空気Aは、隙間35を通過する際、送気筒11全体を通過する場合に比べて流路断面積が小さくなるので、流速が上がり、概ね3m/s~5m/sの速度で流れる。隙間35を通過する温調空気Aの流速が上記のように上昇することで、遅い流速であったならば送気筒11の内壁付近に存在することになる静止空気(速度境界層)が除去され又は厚さが減少し、熱伝達率が増加することとなる。熱伝達率が増加することで、温調空気Aが保有する冷熱又は温熱のより多くが送気筒11に伝達することになる。このため、輻射体10は、内部に何も(例えば集散部材12)が設けられていない単なるダクトに温調空気Aを流す場合に比べて、冷熱又は温熱の放出量を増大させることができる。1つの集散部材12を通り過ぎた温調空気Aは、その下流側の集散部材12に向かって送気筒11内を流れ、以下、上述の作用を繰り返す。このように作用する輻射体10は、以下のものに応用(適用)することができる。
【0033】
図2は、一実施の形態に係る冷暖房システム100の概略構成を示す斜視図である。冷暖房システム100は、典型的には建物内に設置され、建物内の空間の冷暖房を行うものである。ここで、冷暖房を行うとは、状況に応じて冷房又は暖房のいずれかを行うことをいう。冷暖房システム100としては、季節等に応じて、冷房及び暖房のいずれをも行うことができる能力を有している。
【0034】
冷暖房システム100は、一実施の形態に係るコンクリート構造体50を備えている。コンクリート構造体50は、上述の輻射体10を仮想平面上に複数本平行に並べ、これをコンクリート51で覆って構成されている。コンクリート51は、複数の輻射体10の送気筒11の外周側面全体を覆って一体に成形されており、送気筒11の両端面は覆っていない。なお、
図2では、コンクリート51の内部の構成を示すために、コンクリート51の一部を切り欠いて示している。また、以下の説明において輻射体10の構成に言及しているときは、適宜
図1(A)~
図1(C)を参照することとする。隣り合う輻射体10の間には、コンクリート51が、30mm以上、好ましくは40mm以上、より好ましくは50mm以上充填されるように、輻射体10の間隔を決定するとよい。各輻射体10が配列された方向に対して直交する方向(各輻射体10を水平に配置した場合の上方及び下方)には、それぞれ、コンクリート51のかぶりが30mm~40mm~50mm程度となるようにするとよい。コンクリート51は、現場(建物の施工場所)で打設してもよく、工場でプレキャストコンクリートとして製造したコンクリート構造体50を現場に搬入することとしてもよい。コンクリート51に複数の輻射体10が埋設されたコンクリート構造体50は、床(階下の空間にとっては天井)に用いられる場合、ボイドスラブとして機能し得る。換言すれば、コンクリート構造体50は、ボイドスラブのボイド内に集散部材12を設けたものと見ることができ、あるいは送気筒11をボイド型枠と見ることができる。したがって、コンクリート構造体50は、床に用いられる場合、ボイドスラブの特徴である、遮音性の高い高剛性スラブとすることができる、小梁のない空間を実現することができる、等といった利点を享受することができる。
【0035】
冷暖房システム100は、上述のコンクリート構造体50のほか、空調機61を備えている。空調機61は、温調空気Aの温度を調節する機器であり、温度調節機に相当する。空調機61は、天井裏の空間に配置してもよく、その他の空間に配置してもよい。空調機61は、コイル(不図示)と、ファン(不図示)とを有している。コイルは、空調機61に導入された温調空気Aを冷却又は加熱するものである。コイルは、熱源機(不図示)で温度が調節された冷水又は温水を内部に流すチューブを有している。コイルのチューブには、多数のフィンが設けられている。コイルは、多数のフィンの間に温調空気Aを通過させて、冷水又は温水と温調空気Aとの間で熱交換させることにより、冷水又は温水の熱を温調空気Aに伝達させるように構成されている。ファンは、コイルで温度が調節された温調空気Aをコンクリート構造体50の輻射体10に向けて圧送するものである。なお、空調機61は、温調空気Aの温度を調節することができれば足り、温調空気Aの湿度を調節するための構成は有しなくてよい。しかしながら、空調機61から供給された温調空気Aに含まれる水分が結露するおそれがある場合は、結露を発生させないようにするため、空調機61が温調空気Aの湿度を調節するための構成を有することが好ましい。
【0036】
冷暖房システム100は、本実施の形態では、空調機61とコンクリート構造体50との間における温調空気Aの搬送のため、さらに、分配ダクト63と、収集ダクト65と、往ダクト68とを備えている。分配ダクト63は、コンクリート構造体50内の各輻射体10の送気筒11に、温調空気Aを分配する部材である。分配ダクト63は、複数の送気筒11が並ぶ方向(幅方向)に細長い筒状に形成されている。分配ダクト63は、長手方向に直交する断面の形状が、典型的には矩形に形成されているが、円形や楕円形、多角形であってもよい。分配ダクト63は、長手方向の大きさ(筒状の側面の大きさ)が、複数の輻射体10の各端面全体を包含する大きさになっており、当該筒状の側面に、各輻射体10の端面が接続されている。分配ダクト63の、各輻射体10が接続される側面の高さは、コンクリート構造体50の厚さと同じになっていることが好ましい。分配ダクト63と輻射体10とは、両者の接続部分において連絡しており、温調空気Aが分配ダクト63から輻射体10内に流入することができるようになっている。分配ダクト63は、細長い筒状の一端に、温調空気Aを導入する導入口64が形成されている。分配ダクト63は、本実施の形態では、輻射体10との連絡口及び導入口64以外の部分に開口が形成されておらず、導入口64から導入した温調空気Aのすべてを各輻射体10へ導くことができるようになっている。
【0037】
収集ダクト65は、各輻射体10を流れた温調空気Aを収集する部材である。収集ダクト65は、典型的には、分配ダクト63と同じ大きさ及び形状を有している。しかしながら、温調空気Aを収集する機能を果たすことができれば、分配ダクト63と異なる形状や大きさであってもよい。収集ダクト65は、長手方向の大きさ(筒状の側面の大きさ)が、複数の輻射体10の各端面全体を包含する大きさになっており、当該筒状の側面に、各輻射体10の端面が接続されている。収集ダクト65の、各輻射体10が接続される側面の高さは、コンクリート構造体50の厚さと同じになっていることが好ましい。収集ダクト65と輻射体10とは、両者の接続部分において連絡しており、温調空気Aが輻射体10内から収集ダクト65に流入することができるようになっている。収集ダクト65は、細長い筒状の一端に、温調空気Aを排出する還流口66が形成されている。本実施の形態では、分配ダクト63の導入口64から最も遠い輻射体10に対して、収集ダクト65の還流口66が最も近くなるように、収集ダクト65の長手方向端部に還流口66が形成されている。還流口66には、本実施の形態ではガラリが設けられている。収集ダクト65は、本実施の形態では、輻射体10との連絡口及び還流口66以外の部分に開口が形成されておらず、輻射体10から収集ダクト65へ流出した温調空気Aのすべてを還流口66へ導くことができるようになっている。なお、コンクリート構造体50がプレキャストコンクリートとして工場で製造される場合、工場においてコンクリート構造体50に分配ダクト63及び/又は収集ダクト65を取り付けることとしてもよい。また、分配ダクト63及び/又は収集ダクト65をコンクリート51で覆って一体に成形してもよい。換言すれば、分配ダクト63及び/又は収集ダクト65がコンクリート構造体50の構成要素に含まれていてもよい。
【0038】
コンクリート構造体50に分配ダクト63及び収集ダクト65が取り付けられたもの(以下、これを「集合体」という場合がある。)は、全体として矩形の板状に形成されている。分配ダクト63の導入口64と、収集ダクト65の還流口66とは、全体として矩形の集合体の対角に位置するように構成されている。空調機61の吐出側と分配ダクト63の導入口64とは、往ダクト68で接続されている。収集ダクト65の還流口66には、本実施の形態では、ダクトが接続されておらず、還流口66が表れている空間に開放されている。これに伴い、空調機61には、空調機61の周囲の空気が取り込まれるようになっている。
【0039】
引き続き
図2を参照して、冷暖房システム100の作用を説明する。なお、以下の説明において、輻射体10の構成に言及しているときは、適宜
図1(A)~
図1(C)を参照することとする。冷暖房システム100を作動させる際、まず、空調機61を起動する。すると、空調機61の周辺の空気が空調機61に導入される。空調機61に導入された空気は、コイルを通過する際、冷房時は冷やされ、暖房時は温められ、温度が調節された温調空気Aとなる。コイルを通過することで生成された温調空気Aは、ファンによって、空調機61から吐出される。空調機61から吐出された温調空気Aは、往ダクト68を流れた後に分配ダクト63に流入する。分配ダクト63に流入した温調空気Aは、往ダクト68が接続された側とは反対側の端部に向けて流れる。分配ダクト63内を流れる温調空気Aは、長手方向に配列された輻射体10に出会う度に、輻射体10に流入する。分配ダクト63から各輻射体10に流入した温調空気Aは、収集ダクト65が接続された側の端部に向けて流れる。
【0040】
分配ダクト63から各輻射体10に流入した温調空気Aは、各輻射体10を流れる際、温調空気Aが保有する冷熱(冷房時)又は温熱(暖房時)を、送気筒11に伝達する。このとき、温調空気Aは、集散部材12が存在する位置において、前述のように流速が上がることによって熱伝達率が増加するため、より多くの冷熱又は温熱を送気筒11に伝達することができる。このように、輻射体10では、温調空気Aが流れることによって、温調空気Aが保有する冷熱又は温熱が効果的に送気筒11に伝達される。送気筒11に伝達された冷熱又は温熱は、送気筒11を包み込んでいるコンクリート51に伝達され、コンクリート51の温度を低下又は上昇させる。
【0041】
送気筒11からの冷熱又は温熱の伝達により、冷房時は冷やされ、暖房時は温められたコンクリート51は、表面から冷熱又は温熱を輻射して、コンクリート51に面した空間の冷房又は暖房を行う。なお、冷房時は、冷房対象空間に存在する物体の熱がコンクリート51に吸収されることで納涼感を得られるのであるが、本明細書では、便宜上、コンクリート51から冷熱が輻射されると表現している。冷暖房システム100では、コンクリート51を冷却又は加熱する熱媒体が温調空気Aであるので、冷水又は温水を熱媒体とする場合に比べて、結露の発生を抑制することができ、漏水を回避することができる。仮に、熱媒体を冷水として輻射冷房を行う場合、輻射面の結露を防止するために冷水の温度を23℃以上(露点より高い温度)とすることが考えられるが、23℃一定の冷水を流した場合、負荷の変動があったときに迅速に追従することが困難となる。この点、本実施の形態に係る冷暖房システム100は、熱媒体が温調空気Aであるので、負荷変動時の追従性に優れている。
【0042】
各輻射体10を流れ終えた温調空気Aは、収集ダクト65に流入する。各輻射体10から収集ダクト65に流入した温調空気Aは、還流口66に向けて収集ダクト65を流れる。このとき、還流口66が設けられた収集ダクト65の端部は、前述のように、往ダクト68が接続された分配ダクト63の端部に対して対角に位置している。このため、各輻射体10を流れた温調空気Aが導入口64から還流口66まで移動した距離が概ね等しくなり(リバースレタン方式)、コンクリート51の全体をムラなく冷却又は加熱することができる。収集ダクト65を流れて還流口66に到達した温調空気Aは、還流口66が表れている空間(典型的にはコンクリート51からの冷熱又は温熱の輻射により冷暖房が行われる空間)に拡散される。還流口66から拡散された分の空気は、別途空調機61の周囲の空気から空調機61に取り込まれ、以降、上述の作用を繰り返す。
【0043】
以上で説明したように、本実施の形態に係る輻射体10によれば、集散部材12によって、内部を流れる温調空気Aの流速を上昇させている。これにより、送気筒11の内壁の近傍の速度境界層を除去又は厚さを減少させることができ、温調空気Aが保有する冷熱又は温熱を、送気筒11に効率よく伝達することができる。また、本実施の形態に係るコンクリート構造体50によれば、床に用いられる場合にボイドスラブとして機能させることができ、輻射板及びボイドスラブの利点を併せ持つ構造体とすることができる。また、本実施の形態に係る冷暖房システム100によれば、上述の輻射体10を備えるコンクリート構造体50を備えるので、コンクリート51から熱輻射が行われることで、冷暖房対象空間を効率よく冷房又は暖房することができる。
【0044】
次に
図3(A)及び
図3(B)を参照して、一実施の形態の変形例に係る冷暖房システム200を説明する。
図3(A)は冷暖房システム200の概略構成を示す分解斜視図、
図3(B)は冷暖房システム200の概略構成を示す斜視図である。冷暖房システム200は、冷暖房システム100(
図2参照)と構成が類似しているが、コンクリート構造体50(
図2参照)に代えて、一実施の形態に係る輻射ユニット70が設けられている点が、主として異なっている。輻射ユニット70は、前述の輻射体10を仮想平面上に複数本平行に並べ、これを反射板71で覆って構成されている。つまり、輻射ユニット70は、コンクリート構造体50(
図2参照)において複数の輻射体10をコンクリートで覆う代わりに、反射板71を設けた構成になっている。反射板71は、輻射体10から輻射された冷熱又は温熱の一部を所定の方向(所望の方向)に反射させることで、当該所定の方向に輻射される熱量を増加させるものである。
【0045】
反射板71は、典型的には、仮想平面上に配列された複数の輻射体10のすべてを平面視において包含できる大きさに形成されている。反射板71は、本実施の形態では、矩形の薄い平板を基本形状として、対向する一対の辺が、当該辺に直交する断面において1/4円弧状に湾曲して形成されている。しかしながら、反射板71の形状は、輻射体10からの輻射熱を反射させたい方向や熱量等に応じて、適宜決定することができる。反射板71は、輻射体10に対向する面であって輻射体10からの輻射熱を反射させる反射面72が、輻射率が大きくなるように構成されていることが好ましい。反射面72の輻射率を大きくする措置として、例えば撥水性を有する黒色の塗料を反射面72全体に塗布することが挙げられる。他方、反射面72の裏側の裏面73は、例えば金属光沢を有する輻射率の小さい銀色等にして、裏面73からの輻射を抑制することが好ましい。このような反射板71を設けると、輻射体10からの熱輻射に指向性を持たせることができる。反射板71は、仮想平面上に配列された複数の輻射体10を全体として矩形板と見立てたときに、当該矩形板の一方の面を覆うように設けられている。
【0046】
冷暖房システム200は、上述の輻射ユニット70のほか、冷暖房システム100(
図2参照)と同様の、空調機61と、分配ダクト63と、収集ダクト65とを備えている。輻射ユニット70の各輻射体10に対する分配ダクト63及び収集ダクト65の接続態様は、冷暖房システム100(
図2参照)と同様である。また、空調機61と分配ダクト63の導入口64とが往ダクト68で接続されている点も、冷暖房システム100(
図2参照)と同様である。しかしながら、冷暖房システム200では、収集ダクト65の還流口66に関し、ガラリを介して還流口66が表れている空間に開放されているのではなく、還ダクト69によって還流口66と空調機61の吸い込み側とが接続されている。冷暖房システム200は、典型的には、輻射ユニット70及び空調機61が共に冷暖房対象空間の天井に設置される。このため、輻射ユニット70と空調機61とが相互に近接して配置され、往ダクト68及び還ダクト69が比較的短くて済む。輻射ユニット70は、反射板71が冷暖房対象空間に対して輻射体10よりも遠い位置になるように配置される。したがって、反射板71の反射面72が、冷暖房対象空間の方を向くようになる。冷暖房システム200の上記以外の構成は、冷暖房システム100(
図2参照)と同様である。
【0047】
上述のように構成された冷暖房システム200の作用を説明する。冷暖房システム200の作動に際し、空調機61を起動すると、空調機61において温調空気Aが生成され、生成された温調空気Aが往ダクト68及び分配ダクト63を介して各輻射体10に流入することは、冷暖房システム100(
図2参照)と同様である。また、各輻射体10に流入した温調空気Aが、収集ダクト65に至るまでの間に、保有する冷熱又は温熱を送気筒11に伝達すること、特に集散部材12が存在する位置においてより多くの熱を伝達することも、冷暖房システム100(
図2参照)と同様である。
【0048】
そして、冷暖房システム200では、温調空気Aからの冷熱又は温熱の伝達により冷やされ又は温められた送気筒11は、表面から冷熱又は温熱を輻射して、送気筒11に面した冷暖房対象空間の冷房又は暖房を行う。このとき、冷暖房対象空間の反対側を向く送気筒11の面から輻射された熱は、反射板71の反射面72で反射して、冷暖房対象空間に輻射される。このため、送気筒11の側面全体から輻射された熱は、ほとんどが冷暖房対象空間に向かうこととなり、効率的に冷暖房対象空間の冷暖房を行うことができる。なお、冷房時は、冷房対象空間に存在する物体の熱が送気筒11に吸収されることで納涼感を得られるのであるが、本明細書では、便宜上、送気筒11から冷熱が輻射されると表現している。また、冷暖房システム200においても、結露の発生を抑制することができ、漏水を回避することができ、負荷変動時の追従性に優れている。
【0049】
各輻射体10を流れ終えた温調空気Aが、収集ダクト65に流入し、還流口66に向けて収集ダクト65を流れることは、冷暖房システム100(
図2参照)と同様である。その後、冷暖房システム200では、還流口66に到達した温調空気Aが、還ダクト69を流れて空調機61に導入される。空調機61に導入された温調空気Aは、再び温度調節された後に空調機61から吐出され、以降、上述の作用を繰り返す。このように作用する冷暖房システム200によれば、輻射体10(送気筒11)から輻射された冷熱又は温熱が、反射板71の助けを借りて、ほとんどが冷暖房対象空間に向けられるので、冷暖房対象空間に対する効率のよい輻射冷暖房を行うことができる。
【0050】
次に
図4(A)~
図4(D)を参照して、一実施の形態の変形例に係る輻射体20を説明する。
図4(A)は輻射体20の側面断面図、
図4(B)は輻射体20が備える集散部材22の分解斜視図、
図4(C)は集散部材22の斜視図、
図4(D)は集散部材22の正面図である。なお、
図4(D)では、内部構造を明示するために、案内部材13のハブスポーク15を破線で示している(実際には正面から視認できる)。輻射体20は、冷暖房システム100(
図2参照)及び冷暖房システム200(
図3(B)参照)において、輻射体10に代えて適用できるものである。輻射体20は、輻射体10(
図1(A)参照)と比較して、輻射体10の集散部材12(
図1(B)参照)に代えて、集散部材22(
図4(B)~
図4(D)参照)が設けられている点が異なっている。輻射体20が備える送気筒11は、輻射体10(
図1(A)参照)が備えるものと同じである。また、輻射体20においても、輻射体10(
図1(A)参照)と同様に、軸棒31を用いて集散部材22を送気筒11の軸線上に配置してもよい。以下、集散部材22の詳細を説明する。
【0051】
集散部材22は、本変形例では、送気筒11内を流れる温調空気Aを、送気筒11の周方向に旋回させて流すものであり、案内部材13と、方向変換部材25とを有している。集散部材22は、送気筒11の内部に、複数が設けられている。隣り合う集散部材22の間隔は、本変形例では、300mm~600mm、好ましくは350mm~500mmとしているが、送気筒11の直径の2倍~6倍、あるいは3倍~4倍~5倍としてもよく、その他、状況に応じてこれ以外の距離に設定してもよい。ここでの隣り合う集散部材22の間隔は、集散部材22の基準位置の間の距離であり、例えばそれぞれの案内部材13の間の距離である。集散部材22の案内部材13は、輻射体10(
図1(A)参照)における案内部材13と同じ構成である。
【0052】
方向変換部材25は、案内部材13を通過した温調空気Aを、送気筒11の周方向に旋回する流れに方向を変換する部材であり、旋回流生成部材として機能する。方向変換部材25は、受板26と、径側壁板27と、周側壁板28とを有している。受板26は、円板状の部材で構成されている。受板26は、直径が、案内部材13の周縁板14の内径(周縁板14と通過孔16との境界部分の径)と同程度に形成されているとよい。受板26の直径は、周縁板14の内径以上であることが好ましく、周縁板14の内径に周縁板14の外径と内径との差の半分を加えた距離(内径+(外径-内径)/2)以下であることが好ましい。
【0053】
径側壁板27は、受板26の一方の面に設けられている。径側壁板27は、受板26と案内部材13とに挟まれている。径側壁板27は、本変形例では、互いに平行に配置されている受板26と案内部材13との両者に対して、直交している。受板26と案内部材13との距離(受板26からの径側壁板27の高さ)は、5mm~30mm程度、好ましくは10mm~20mm程度とするとよい。径側壁板27は、受板26の図心から受板26の外周まで湾曲しながら延びている。径側壁板27の湾曲の程度は、その曲率半径が、案内部材13の外周の半径の0.8倍~2.5倍程度、好ましくは1.5倍~2倍程度とするとよく、1倍程度としてもよい。径側壁板27は、複数個が設けられており、本変形例では4つが等間隔で配置されているが、3つとしてもよく、5つ以上としてもよい。複数配置された径側壁板27は、それぞれ同じ方向に湾曲している。
【0054】
周側壁板28は、径側壁板27の外周側の先端に接続されている。周側壁板28は、径側壁板27と同じ数が設けられている。周側壁板28は、径側壁板27と同じ高さに形成されている。周側壁板28も、受板26と案内部材13とに挟まれて配置されている。周側壁板28は、受板26の外周に沿って設けられている。周側壁板28は、受板26の外周の半径と同じ曲率半径を有している。周側壁板28は、接続されている径側壁板27が凸になっている方向に延びており、隣接する径側壁板27には到達しない長さになっている。この構成により、周側壁板28と、受板26の外周上における隣接する径側壁板27と、の間に、流出口29が形成されることになる。受板26の周方向における流出口29の長さは、受板26の周方向における周側壁板28の長さの1/4倍~2/3倍程度、あるいは1/3倍~1/2倍程度としてもよい。
【0055】
方向変換部材25は、径側壁板27及び周側壁板28が案内部材13に接するように設けられている。また、方向変換部材25は、受板26の図心と案内部材13の図心とが一直線上(軸棒31上)に位置するように配置されている。このように構成された輻射体20では、温調空気Aが供給されると、送気筒11の内部を温調空気Aが概ね層流で流れる。温調空気Aは、送気筒11内を流れる際、温調空気Aが保有する冷熱又は温熱を送気筒11に伝達する。送気筒11の内部を流れる温調空気Aは、案内部材13が配置されている位置に至ると、送気筒11の軸直角断面における外周部分を流れている分が、周縁板14に行く手を阻まれて、当該断面における中心の方向(軸棒31の方向)に向かう。周縁板14に遮られて軸棒31の方向に流れ方向を変えた温調空気Aは、もとより送気筒11の内部側(軸線側)を流れていた温調空気Aと共に、案内部材13の通過孔16を通過して案内部材13の下流側に至る。案内部材13を通過した温調空気Aは、受板26に衝突し、受板26の外周に向かう方向に流れの向きを変換する。受板26に衝突して受板26の図心から外周へ向かう方向へと流れの向きを変えた温調空気Aは、径側壁板27の湾曲に沿って流れることで旋回流となり、流出口29を通って方向変換部材25から流出して、送気筒11の内壁に到達する。送気筒11の内壁に到達した温調空気Aは、旋回流の成分が残っているため、送気筒11の周方向成分を持って送気筒11の内壁に沿って流れる。これにより、温調空気Aが送気筒11の内壁に接する時間が長くなるので、温調空気Aが保有する冷熱又は温熱のより多くが送気筒11に伝達される。送気筒11の周方向成分を持って送気筒11の内壁に沿って流れる温調空気Aは、送気筒11の軸線方向成分も持っているため、引き続き下流側の集散部材22に向けて流れる。1つの集散部材22を通り過ぎた温調空気Aは、その下流側の集散部材22に向かって送気筒11内を流れ、以下、上述の作用を繰り返す。
【0056】
上述のように作用する輻射体20は、仮想平面上に複数本平行に並べ、これをコンクリート51(
図2参照)で覆って、コンクリート構造体を構成することができる。コンクリート51は、現場(建物の施工場所)で打設してもよく、工場でプレキャストコンクリートとして製造したコンクリート構造体を現場に搬入することとしてもよい。輻射体20を備えるコンクリート構造体は、前述のように、冷暖房システム100(
図2参照)と同様の冷暖房システムに適用することができる。また、輻射体20は、仮想平面上に複数本平行に並べ、これを反射板71(
図3(A)及び
図3(B)参照)で覆って、輻射ユニットを構成することができる。輻射体20を備える輻射ユニットは、前述のように、冷暖房システム200(
図3(B)参照)と同様の冷暖房システムに適用することができる。
【0057】
以上の説明では、コンクリート構造体50が床(階下の空間にとっては天井)に用いられる場合について言及したが、壁に用いられることとしてもよい。また、以上の説明では、輻射ユニット70が冷暖房対象空間の天井に設置されることとしたが、壁に設置されることとしてもよい。
【0058】
以上の説明では、冷暖房システム100(
図2参照)において、収集ダクト65の還流口66が、ガラリを介して還流口66が表れている空間に開放されていることとした。しかしながら、冷暖房システム100(
図2参照)において、冷暖房システム200(
図3(B)参照)のように還流口66と空調機61とを還ダクト69で接続してもよい。他方、冷暖房システム200(
図3(B)参照)においては、収集ダクト65の還流口66と空調機61とが還ダクト69で接続されていることとした。しかしながら、冷暖房システム200(
図3(B)参照)において、冷暖房システム100(
図2参照)のように、還ダクト69を設けずに、収集ダクト65の還流口66がガラリを介して還流口66が表れている空間に開放されることとしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 輻射体
11 送気筒
12 集散部材
13 案内部材
14 周縁板
16 通過孔
17 方向変換部材
18 錐部
20 輻射体
22 集散部材
25 方向変換部材(旋回流生成部材)
26 受板
27 径側壁板
35 隙間
50 コンクリート構造体
51 コンクリート
61 空調機
70 輻射ユニット
71 反射板
100、200 冷暖房システム
A 温調空気