(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125591
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20230831BHJP
C10M 137/02 20060101ALI20230831BHJP
C10M 133/56 20060101ALI20230831BHJP
C10M 133/16 20060101ALI20230831BHJP
C10M 133/38 20060101ALI20230831BHJP
C10M 129/68 20060101ALI20230831BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20230831BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20230831BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20230831BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20230831BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20230831BHJP
C10N 30/12 20060101ALN20230831BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20230831BHJP
【FI】
C10M169/04 ZHV
C10M137/02
C10M133/56
C10M133/16
C10M133/38
C10M129/68
C10N40:04
C10N40:08
C10N40:25
C10N40:30
C10N30:06
C10N30:12
C10N30:00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029783
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真哉
(72)【発明者】
【氏名】中原 靖人
(72)【発明者】
【氏名】石井 励
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BA08A
4H104BB08A
4H104BB31C
4H104BB41A
4H104BE01C
4H104BE11C
4H104BE26C
4H104BF01C
4H104BF03C
4H104BH02C
4H104BH03A
4H104CB14A
4H104DA02A
4H104LA03
4H104LA06
4H104LA20
4H104PA02
4H104PA03
4H104PA05
4H104PA20
4H104PA41
(57)【要約】
【課題】各種機構の潤滑に適した特性(例えば、耐焼き付き性、クラッチ特性、及び耐銅腐食性等)を有する新規な潤滑油組成物が求められている。
【解決手段】基油(A)、亜リン酸エステル(B)、イミド系化合物(C)、アミド系化合物(D)、アミン系化合物(E)、及びベンゾトリアゾール系化合物(F)を含有する潤滑油組成物であって、成分(F)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.005~1.00質量%である、潤滑油組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油(A)、亜リン酸エステル(B)、非ホウ素変性イミド系化合物(C)、アミド系化合物(D)、アミン系化合物(E)、及びベンゾトリアゾール系化合物(F)を含有する潤滑油組成物であって、
成分(F)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.005~1.00質量%である、潤滑油組成物。
【請求項2】
成分(B)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.01~3.00質量%である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
成分(F)と成分(B)の含有量比〔(F)/(B)〕が、質量比で、0.01~0.50である、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
成分(C)が、非ホウ素変性アルケニルコハク酸イミド(C1)を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
成分(D)が、脂肪酸アミド(D1)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
脂肪酸アミド(D1)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.04質量%以上である、請求項5に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
成分(E)が、モノアミン(E1)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
成分(E)が、第1級モノアミン(E11)及び第2級モノアミン(E12)から選ばれる1種以上を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
成分(E)と成分(D)との含有量比〔(E)/(D)〕が、質量比で、0.05~0.90である、請求項1~8のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
脂肪酸部分エステル化合物の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.05質量%未満である、請求項1~9のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
クラッチ機構を備える変速機に用いられる、請求項1~10のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を充填してなる、変速機。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を、クラッチ機構を備える変速機の潤滑に適用する、潤滑油組成物の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物、変速機、及び潤滑油組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン、変速機、減速機、圧縮機、油圧装置等の各種装置は、トルクコンバータ、クラッチ、歯車軸受機構、オイルポンプ、油圧制御機構等の機構を有する。これらの機構においては、潤滑油組成物が用いられており、様々な要求に対応し得る潤滑油組成物が開発されている。
例えば、特許文献1には、異なる部位間における異なる摩擦特性を両立することができ、金属ベルト式の無段変速用潤滑油として好適に使用し得る、基油、ジアミン、グリコール酸アミド、及び亜リン酸エステルを含む潤滑油組成物に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、クラッチ機構を備える変速機に用いられる潤滑油組成物には、例えば、耐焼き付き性、クラッチ特性、及び耐銅腐食性等といった、変速機の態様に応じて様々な特性が要求される。つまり、各種機構の潤滑に適した特性(例えば、耐焼き付き性、クラッチ特性、及び耐銅腐食性等)を有する新規な潤滑油組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基油に、亜リン酸エステル、イミド系化合物、アミド系化合物、アミン系化合物、及びベンゾトリアゾール系化合物を含有する潤滑油組成物を提供する。具体的には、下記[1]、[1a]~[1c]及び[2]~[11]の態様に係る潤滑油組成物、下記[12]の態様に係る変速機、及び下記[13]の態様に係る潤滑油組成物の使用方法を提供する。
[1]
基油(A)、亜リン酸エステル(B)、非ホウ素変性イミド系化合物(C)、アミド系化合物(D)、アミン系化合物(E)、及びベンゾトリアゾール系化合物(F)を含有する潤滑油組成物であって、
成分(F)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.005~1.00質量%である、潤滑油組成物。
[1a]
基油(A)、
亜リン酸エステル(B)、
非ホウ素変性アルケニルコハク酸イミド(C1)を含む非ホウ素変性イミド系化合物(C)、
脂肪酸アミド(D1)を含むアミド系化合物(D)、
モノアミン(E1)を含むアミン系化合物(E)、及び、
下記一般式(f-0)で表されるベンゾトリアゾール系化合物(F)
【化1】
(上記式中、R
F1は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭化水素基又は水素原子である。R
F2は、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭化水素基である。f1は0~4の整数である。)
を含有する潤滑油組成物であって、
成分(F)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.005~1.00質量%である、潤滑油組成物。
[1b]
基油(A)、
亜リン酸エステル(B)、
下記一般式(c-1)で表される非ホウ素変性アルケニルコハク酸ビスイミド(C11)及び下記一般式(c-2)で表される非ホウ素変性アルケニルコハク酸モノイミド(C12)から選ばれる1種以上を含む非ホウ素変性イミド系化合物(C)、
【化2】
(上記式中、R
C1、R
C2及びR
C3は、それぞれ独立に、質量平均分子量(Mw)が500~3000のアルケニル基である。A
1、A
2及びA
3は、それぞれ独立に、炭素数2~5のアルキレン基である。z1は0~10の整数である。z2は1~10の整数である。)
下記一般式(d-1)で表される脂肪酸モノアミド(D11)及び下記一般式(d-2)で表される脂肪酸ポリアミド(D12)から選ばれる1種以上を含むアミド系化合物(D)、
【化3】
(上記一般式(d-1)中、R
D1は、炭化水素基である。R
D2およびR
D3は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基で置換されてもよい炭化水素基である。
上記一般式(d-2)中、R
D4は、水素原子又は水酸基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基である。Xは、それぞれ独立して、水素原子又は-(C=O)-R
D5で表されるアシル基(R
D5は炭化水素基)であって、複数あるXの少なくとも一つは、前記アシル基である。d1は、1~6の整数である。d2は、1以上の整数である。)
下記一般式(e-1)で表される第1級アミン(E11)及び下記一般式(e-2)で表される第2級アミン(E12)から選ばれる1種以上を含むアミン系化合物(E)、
【化4】
(上記式中、R
Eは、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基、水酸基を有する炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、環形成炭素数3~30のシクロアルキル基、フェニル基、又はベンジル基である。)
及び、
下記一般式(f-1)で表される化合物(F1)を含むベンゾトリアゾール系化合物(F)
【化5】
(上記式中、R
F2は、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭化水素基である。A
fは、2価の炭化水素基であり、R
f1及びR
f2は、それぞれ独立して、1価の炭化水素基である。f1は、0~4の整数である。)
を含有する潤滑油組成物であって、
成分(F)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.005~1.00質量%である、潤滑油組成物。
[1c]
基油(A)、
亜リン酸エステル(B)、
下記一般式(c-1)で表される非ホウ素変性アルケニルコハク酸ビスイミド(C11)及び下記一般式(c-2)で表される非ホウ素変性アルケニルコハク酸モノイミド(C12)から選ばれる1種以上を含む非ホウ素変性イミド系化合物(C)、
【化6】
(上記式中、R
C1、R
C2及びR
C3は、それぞれ独立に、質量平均分子量(Mw)が500~3000のポリブテニル基である。A
1、A
2及びA
3は、それぞれ独立に、炭素数2~5のアルキレン基である。z1は0~10の整数である。z2は1~10の整数である。)
下記一般式(d-1)で表される脂肪酸モノアミド(D11)及び下記一般式(d-2)で表される脂肪酸ポリアミド(D12)から選ばれる1種以上を含むアミド系化合物(D)、
【化7】
(上記一般式(d-1)中、R
D1は、炭素数1~30のアルキル基又は炭素数2~30のアルケニル基である。R
D2およびR
D3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~30のアルキル基、又は炭素数2~30のアルケニル基である。
上記一般式(d-2)中、R
D4は、水素原子、炭素数1~30のアルキル基、又は炭素数2~30のアルケニル基である。Xは、それぞれ独立して、水素原子又は-(C=O)-R
D5で表されるアシル基(R
D5は炭化水素基)であって、複数のXの少なくとも一つは前記アシル基である。d1は、1~6の整数である。d2は、1以上の整数である。)
下記一般式(e-1)で表される第1級アミン(E11)及び下記一般式(e-2)で表される第2級アミン(E12)から選ばれる1種以上を含むアミン系化合物(E)、
【化8】
(上記式中、R
Eは、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基、水酸基を有する炭素数1~30のアルキル基、又は炭素数2~30のアルケニル基である。)
及び、
下記一般式(f-1)で表される化合物(F1)を含むベンゾトリアゾール系化合物(F)
【化9】
(上記式中、R
F2は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基である。A
fは、炭素数1~20のアルキレン基であり、R
f1及びR
f2は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基である。f1は、0~4の整数である。)
を含有する潤滑油組成物であって、
成分(F)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.005~1.00質量%である、潤滑油組成物。
[2]
成分(B)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.01~3.00質量%である、上記[1]及び[1a]~[1c]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[3]
成分(F)と成分(B)の含有量比〔(F)/(B)〕が、質量比で、0.01~0.50である、上記[1]、[1a]~[1c]及び[2]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[4]
成分(C)が、非ホウ素変性アルケニルコハク酸イミド(C1)を含む、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[5]
成分(D)が、脂肪酸アミド(D1)を含む、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[6]
脂肪酸アミド(D1)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.04質量%以上である、上記[5]に記載の潤滑油組成物。
[7]
成分(E)が、モノアミン(E1)を含む、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[8]
成分(E)が、第1級モノアミン(E11)及び第2級モノアミン(E12)から選ばれる1種以上を含む、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[9]
成分(E)と成分(D)との含有量比〔(E)/(D)〕が、質量比で、0.05~0.90である、上記[1]、[1a]~[1c]及び[2]~[8]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[10]
脂肪酸部分エステル化合物の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.05質量%未満である、上記[1]、[1a]~[1c]及び[2]~[9]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[11]
クラッチ機構を備える変速機に用いられる、上記[1]、[1a]~[1c]及び[2]~[10]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[12]
上記[1]、[1a]~[1c]及び[2]~[11]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を充填してなる、変速機。
[13]
上記[1]、[1a]~[1c]及び[2]~[11]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を、クラッチ機構を備える変速機の潤滑に適用する、潤滑油組成物の使用方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の好適な一態様の潤滑油組成物は、各種機構の潤滑に適した特性を有する潤滑油組成物であり、より具体的な一態様の潤滑油組成物は、耐焼き付き性、クラッチ特性、及び耐銅腐食性をバランス良く向上させ得る。そのため、これらの潤滑油組成物は、例えば、変速機等の潤滑に好適に使用し得る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に記載された数値範囲については、上限値及び下限値を任意に組み合わせることができる。例えば、数値範囲として「好ましくは30~100、より好ましくは40~80」と記載されている場合、「30~80」との範囲や「40~100」との範囲も、本明細書に記載された数値範囲に含まれる。また、例えば、数値範囲として「好ましくは30以上、より好ましくは40以上であり、また、好ましくは100以下、より好ましくは80以下である」と記載されている場合、「30~80」との範囲や「40~100」との範囲も、本明細書に記載された数値範囲に含まれる。
加えて、本明細書に記載された数値範囲として、例えば「60~100」との記載は、「60以上、100以下」という範囲であることを意味する。
さらに、本明細書に記載された上限値及び下限値の規定において、それぞれの選択肢の中から適宜選択して、任意に組み合わせて、下限値~上限値の数値範囲を規定することができる。
【0008】
また、本明細書において、動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準拠して測定又は算出された値を意味する。
リン原子(P)、ホウ素原子(B)及びカルシウム原子(Ca)の含有量は、JPI-5S-38-92に準拠して測定された値を意味する。
窒素原子(N)の含有量は、JIS K2609:1998に準拠して測定された値を意味する。
硫黄原子(S)の含有量は、JIS K2541-6:2013に準拠して測定された値を意味する。
【0009】
〔潤滑油組成物の構成〕
本発明の一態様の潤滑油組成物は、基油(A)(以下、「成分(A)」ともいう)、亜リン酸エステル(B)(以下、「成分(B)」ともいう)、非ホウ素変性イミド系化合物(C)(以下、「成分(C)」ともいう)、アミド系化合物(D)(以下、「成分(D)」ともいう)、アミン系化合物(E)(以下、「成分(E)」ともいう)、及びベンゾトリアゾール系化合物(F)(以下、「成分(F)」ともいう)を含有する。
本発明の一態様の潤滑油組成物は、上記成分(A)~(F)を含有することで、各種機構の潤滑に適した特性を有する潤滑油組成物とすることができ、より具体的な態様としては、耐焼き付き性、クラッチ特性、及び耐銅腐食性をバランス良く向上させた潤滑油組成物となり得る。
特に、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B)は耐焼き付き性の向上に寄与し、成分(C)、(D)及び(E)はクラッチ特性の向上に寄与し、成分(F)は耐銅腐食性の向上に寄与する。
本発明の一態様の潤滑油組成物は、このような特性を有するため、例えば、クラッチ機構を備える各種装置に好適に用いることができ、より具体的には、クラッチ機構を備える変速機により好適に用いることができる。
【0010】
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、成分(B)~(F)以外の各種添加剤をさらに含有してもよい。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)~(F)の合計含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは75質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であり、また、100質量%以下、99.5質量%以下、99.0質量%以下、98.0質量%以下、97.0質量%以下、96.0質量%以下、95.0質量%以下、94.0質量%以下、又は93.0質量%以下としてもよい。
以下、本発明の一態様の潤滑油組成物に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0011】
<成分(A):基油>
本発明の一態様で用いる成分(A)である基油としては、鉱油及び合成油から選ばれる1種以上が挙げられる。
鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、ナフテン系原油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;これらの常圧残油を減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、及び水素化精製(水素化分解)等の精製処理を1つ以上施して得られる精製油;天然ガスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるGTLワックス(Gas To Liquids WAX))を異性化することで得られる鉱油(GTL)等が挙げられる。
【0012】
合成油としては、例えば、α-オレフィン単独重合体、又はα-オレフィン共重合体(例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体等の炭素数8~14のα-オレフィン共重合体)等のポリα-オレフィン;イソパラフィン;ポリアルキレングリコール;ポリオールエステル、二塩基酸エステル、リン酸エステル等のエステル系油;ポリフェニルエーテル等のエーテル系油;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;等が挙げられる。
【0013】
本発明の一態様で用いる成分(A)は、API(米国石油協会)基油カテゴリーのグループII及びグループIIIに分類される鉱油、並びに、合成油から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0014】
本発明の一態様で用いる成分(A)の100℃における動粘度は、好ましくは2.0mm2/s以上、より好ましくは2.2mm2/s以上、更に好ましくは2.3mm2/s以上、より更に好ましくは2.5mm2/s以上、特に好ましくは2.6mm2/s以上であり、また、好ましくは6.0mm2/s以下、より好ましくは5.7mm2/s以下、より好ましくは5.5mm2/s以下、更に好ましくは5.2mm2/s以下、更に好ましくは5.0mm2/s以下、より更に好ましくは4.8mm2/s以下、特に好ましくは4.6mm2/s以下である。
【0015】
また、本発明の一態様で用いる成分(A)の粘度指数は、好ましくは70以上、より好ましくは80以上、更に好ましくは90以上、より更に好ましくは100以上である。
【0016】
また、本発明の一態様において、成分(A)として、2種以上の基油を組み合わせた混合油を用いる場合、当該混合油の動粘度及び粘度指数が上記範囲であることが好ましい。そのため、低粘度の基油と、高粘度の基油を併用して、上記範囲の動粘度及び粘度指数となるように当該混合油を調製してもよい。
なお、前記混合油は、100℃における動粘度及び粘度指数が上述の範囲に属する基油を2種以上組み合わせた混合油であってもよく、100℃における動粘度及び粘度指数が上述の範囲に属する基油と上述の範囲に属さない基油とを組み合わせた混合油であってもよい。また、100℃における動粘度及び粘度指数が上述の範囲に属さない低粘度の基油と高粘度の基油とを組み合わせて、上述の範囲に属するように調整した混合油であってもよい。
【0017】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは55質量%以上、特に好ましくは60質量%以上であり、また、99質量%以下、98質量%以下、97質量%以下、95質量%以下、92質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、又は75質量%以下としてもよい。
【0018】
<成分(B):亜リン酸エステル>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、成分(B)として、亜リン酸エステルを含有する。成分(B)を含有することで、耐焼き付き性を向上させた潤滑油組成物とすることができる。
本発明の一態様において、成分(B)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
本発明の一態様で成分(B)として用いる亜リン酸エステルは、例えば、下記一般式(b-1)又は(b-2)で表される酸性亜リン酸エステルが挙げられる。
【化10】
【0020】
上記式中、RBは、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数1~6のアルキル基で置換されてもよい炭素数6~30のアリール基、スルフィド結合を有する基等が挙げられる。なお、複数のRBは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0021】
RBとして選択し得る、前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基)、ペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
これらのアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
前記アルキル基の炭素数は、1~30であるが、3以上、5以上、6以上、又は8以上としてもよく、また、20以下、16以下、14以下、又は12以下としてもよい。
【0022】
RBとして選択し得る、前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロぺニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。
これらのアルケニル基は、直鎖アルケニル基であってもよく、分岐鎖アルケニル基であってもよい。
前記アルケニル基の炭素数は、2~30であるが、3以上、5以上、6以上、又は8以上としてもよく、また、16以下、14以下、又は12以下としてもよい。
【0023】
RBとして選択し得る、前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェニルナフチル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
なお、これらアリール基に置換し得る「炭素数1~6のアルキル基」としては、上述のアルキル基のうち、炭素数1~6のアルキル基が挙げられる。
【0024】
R
Bとして選択し得る、スルフィド結合を有する基としては、下記一般式(b-i)で表される基が好ましい。
【化11】
上記式(b-i)中、R
b1は水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。R
b2は2価の有機基である。xは1以上の整数であり、好ましくは1~10の整数、より好ましくは1~5の整数、更に好ましくは1~3の整数、より更に好ましくは1又は2、特に好ましくは1である。*は結合位置を示す。
【0025】
Rb1として選択し得る、1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基等が挙げられるが、炭素数1~20のアルキル基、もしくは、炭素数1~20(好ましくは2~18、より好ましくは4~16、更に好ましくは6~12、より更に好ましくは8~10)のアルキル基の少なくとも1つの-CH2-構造が、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CSO-、-OCS-、-CH=CH-又は-C≡C-に置換された基であることが好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0026】
Rb2として選択し得る、2価の有機基としては、例えば、炭素数1~20のアルキレン基、シクロアルキレン基、炭素数1~20のアルケニレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基等が挙げられるが、炭素数1~20のアルキレン基、もしくは、炭素数1~20(好ましくは2~12、より好ましくは2~8、更に好ましくは2~4)のアルキレン基の少なくとも1つの-CH2-構造が、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CSO-、-OCS-、-CH=CH-又は-C≡C-に置換された基であることが好ましく、炭素数2~20のアルキレン基がより好ましい。
【0027】
前記一般式(b-1)又は(b-2)中のR
Bがスルフィド結合を有する基である場合の亜リン酸エステルとしては、例えば、下記一般式(b-11)で表される化合物及び下記一般式(b-21)で表される化合物が挙げられる。
【化12】
【0028】
前記式(b-11)、(b-21)中、Rb11及びRb12は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~20(好ましくは2~18、より好ましくは4~16、更に好ましくは6~12、より更に好ましくは8~10)のアルキル基である。当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
また、a1、a2及びa3は、それぞれ独立に、1~20の整数であるが、好ましくは1~12の整数、より好ましくは1~8の整数、更に好ましくは1~4の整数、より更に好ましくは1、2又は4、特に好ましくは2である。
【0029】
本発明の一態様で成分(B)として用いる亜リン酸エステルは、アミン塩の形態であってもよい。
アミン塩を形成するアミンとしては、下記一般式(b-3)で表される化合物であることが好ましい。当該アミンは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化13】
【0030】
上記一般式(b-3)中、rは、1~3の整数であり、1であることが好ましい。
Rxは、それぞれ独立に、炭素数6~18のアルキル基、炭素数6~18のアルケニル基、炭素数6~18のアリール基、又は炭素数6~18のヒドロキシアルキル基である。
なお、Rxが複数存在する場合、複数のRxは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0031】
Rxとして選択し得る、炭素数6~18のアルキル基、炭素数6~18のアルケニル基、及び炭素数6~18のアリール基としては、上述のRBとして選択し得るアルキル基、アルケニル基、及びアリール基として例示した基のうち、上記範囲の炭素数である基が挙げられる。
また、炭素数6~18のヒドロキシアルキル基としては、炭素数6~18のアルキル基が有する水素原子がヒドロキシ基に置換された基が挙げられ、具体的には、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシドデシル基、ヒドロキシトリデシル基等が挙げられる。
【0032】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B)の含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、耐焼き付き性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.07質量%以上、より更に好ましくは0.10質量%以上、特に好ましくは0.15質量%以上であり、さらに、0.20質量%以上、0.30質量%以上、0.40質量%以上、0.50質量%以上、0.60質量%以上、又は0.70質量%以上としてもよく、また、耐焼き付き性、クラッチ特性、及び耐銅腐食性等の各種特性のバランスが良好な潤滑油組成物とする観点から、好ましくは3.00質量%以下、より好ましくは2.70質量%以下、更に好ましくは2.50質量%以下、より更に好ましくは2.20質量%以下、特に好ましくは2.00質量%以下であり、さらに、1.80質量%以下、1.70質量%以下、又は1.60質量%以下としてもよい。
【0033】
上記観点から、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B)のリン原子換算での含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは10質量ppm以上、より好ましくは20質量ppm以上、更に好ましくは30質量ppm以上、より更に好ましくは40質量ppm以上、特に好ましくは50質量ppm以上であり、さらに、60質量ppm以上、70質量ppm以上、80質量ppm以上、90質量ppm以上、100質量ppm以上、又は110質量ppm以上としてもよく、また、好ましくは800質量ppm以下、より好ましくは700質量ppm以下、更に好ましくは600質量ppm以下、より更に好ましくは500質量ppm以下、特に好ましくは400質量ppm以下であり、さらに、350質量ppm以下、300質量ppm以下、250質量ppm以下、220質量ppm以下、200質量ppm以下、又は180質量ppm以下としてもよい。
【0034】
<リン酸エステル>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにリン酸エステルを含有してもよい。
リン酸エステルとしては、例えば、下記一般式(b’-4)で表される中性リン酸エステル、及び、下記一般式(b’-5)又は(b’-6)で表される酸性リン酸エステルが挙げられる。
【化14】
上記式中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数1~6のアルキル基で置換されてもよい炭素数6~18のアリール基、スルフィド結合を有する基等が挙げられ、具体的には、前記一般式(b-1)及び(b-2)中のR
Bとして選択し得る基と同じものが挙げられる。なお、複数のRは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
これらのリン酸エステルは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、リン酸エステルの含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、例えば、0.01質量%以上、0.03質量%以上、0.05質量%以上、0.07質量%以上、0.10質量%以上、又は0.12質量%以上としてもよく、また、2.00質量%以下、1.50質量%以下、1.20質量%以下、1.00質量%以下、0.80質量%以下、0.70質量%以下、0.60質量%以下、又は0.50質量%以下としてもよい。
【0036】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、リン酸エステルの含有量は、前記潤滑油組成物に含まれる成分(B)の全量100質量部に対して、例えば、1.0質量部以上、3.0質量部以上、5.0質量部以上、7.0質量部以上、10質量部以上、又は12質量部以上としてもよく、また、100質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、又は20質量部以下としてもよい。
【0037】
<成分(C):非ホウ素変性イミド系化合物>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、成分(C)として、非ホウ素変性イミド系化合物を含有する。成分(C)を含有することで、クラッチ特性を向上させた潤滑油組成物とすることができ、特に、クラッチ容量の向上に寄与する。
本発明の一態様において、成分(C)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
本明細書において、「イミド系化合物」とは、下記式(c-0)で表されるイミド構造を有する化合物を意味し、当該イミド構造を有する鎖状化合物や、当該イミド構造を有する環状化合物も含まれる。
【化15】
(上記式中、*は結合位置を示す。)
【0039】
本発明の一態様で用いる成分(C)は、非ホウ素変性イミド系化合物であり、ホウ素で変性されていない前記式(c-0)で表されるイミド構造を有する化合物であればよい。そのため、前記イミド構造を有する化合物を、アルコール、アルデヒド、ケトン、アルキルフェノール、環状カーボネート、エポキシ化合物、及び有機酸等から選ばれる1種以上と反応させた、イミド系化合物の変性物であってもよい。また、非変性のイミド系化合物であってもよい。
【0040】
本発明の一態様で用いる成分(C)は、クラッチ特性(特に、クラッチ容量)をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、非ホウ素変性アルケニルコハク酸イミド(C1)を含むことが好ましい。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(C)中の成分(C1)の含有割合は、当該潤滑油組成物に含まれる成分(C)の全量(100質量%)基準で、好ましくは50~100質量%、より好ましくは65~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0041】
本発明の一態様で用いる非ホウ素変性アルケニルコハク酸イミド(C1)は、例えば、下記一般式(c-1)で表される非ホウ素変性アルケニルコハク酸ビスイミド(C11)及び下記一般式(c-2)で表される非ホウ素変性アルケニルコハク酸モノイミド(C12)から選ばれる1種以上が好ましい。
【化16】
【0042】
上記一般式(c-1)及び(c-2)中、RC1、RC2及びRC3は、それぞれ独立に、質量平均分子量(Mw)が500~3000(好ましくは900~2500)のアルケニル基である。
RC1、RC2及びRC3として選択し得る、前記アルケニル基としては、例えば、ポリブテニル基、ポリイソブテニル基、エチレン-プロピレン共重合体等が挙げられ、これらの中でも、ポリブテニル基又はポリイソブテニル基が好ましい。
A1、A2及びA3は、それぞれ独立に、炭素数2~5のアルキレン基である。
z1は0~10の整数であり、好ましくは1~4の整数、より好ましくは2又は3である。
z2は1~10の整数であり、好ましくは2~5の整数、より好ましくは3又は4である。
【0043】
なお、成分(C11)及び(C12)は、アルコール、アルデヒド、ケトン、アルキルフェノール、環状カーボネート、エポキシ化合物、及び有機酸等から選ばれる1種以上の化合物と反応させた、変性アルケニルコハク酸イミドであってもよく、このような化合物による変性がされていない、非変性アルケニルコハク酸イミドであってもよい。
【0044】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(C)の含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、クラッチ特性(特に、クラッチ容量)をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.07質量%以上、より更に好ましくは0.10質量%以上、特に好ましくは0.15質量%以上であり、さらに、0.20質量%以上、0.25質量%以上、0.30質量%以上、0.35質量%以上、又は0.40質量%以上としてもよく、また、耐焼き付き性、クラッチ特性、及び耐銅腐食性等の各種特性のバランスが良好な潤滑油組成物とする観点から、好ましくは3.00質量%以下、より好ましくは2.50質量%以下、更に好ましくは2.00質量%以下、より更に好ましくは1.50質量%以下、特に好ましくは1.20質量%以下であり、さらに、1.00質量%以下、0.90質量%以下、又は0.80質量%以下としてもよい。
【0045】
上記観点から、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(C)の窒素原子換算での含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは10質量ppm以上、より好ましくは30質量ppm以上、更に好ましくは50質量ppm以上、より更に好ましくは70質量ppm以上、特に好ましくは90質量ppm以上であり、また、好ましくは600質量ppm以下、より好ましくは500質量ppm以下、更に好ましくは400質量ppm以下、より更に好ましくは300質量ppm以下、特に好ましくは200質量ppm以下である。
【0046】
<ホウ素変性イミド系化合物>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにホウ素変性イミド系化合物を含有してもよい。ホウ素変性イミド系化合物を含有することで、長期間の使用によっても、優れたクラッチ特性(特に、クラッチ容量)を保持し得る潤滑油組成物とすることができる。
ホウ素変性イミド系化合物としては、上述の非変性イミド系化合物をホウ素化合物と反応させた変性物が挙げられる。
【0047】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、ホウ素変性イミド系化合物の含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、上記観点から、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.10質量%以上、0.30質量%以上、0.50質量%以上、1.00質量%以上、1.50質量%以上、2.00質量%以上、又は2.50質量%以上とすることが好ましく、また、7.00質量%以下、6.00質量%以下、5.50質量%以下、5.00質量%以下、4.50質量%以下、4.00質量%以下、3.80質量%以下、又は3.60質量%以下とすることが好ましい。
【0048】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、ホウ素変性イミド系化合物の含有量は、前記潤滑油組成物に含まれる成分(C)の全量100質量部に対して、上記観点から、100質量部以上、200質量部以上、300質量部以上、400質量部以上、500質量部以上、又は600質量部以上とすることが好ましく、また、1200質量部以下、1000質量部以下、900質量部以下、800質量部以下、750質量部以下、又は700質量部以下とすることが好ましい。
【0049】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、ホウ素変性イミド系化合物のホウ素原子換算での含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、上記観点から、10質量ppm以上、30質量ppm以上、50質量ppm以上、70質量ppm以上、又は100質量ppm以上とすることが好ましく、また、800質量ppm以下、600質量ppm以下、500質量ppm以下、400質量ppm以下、300質量ppm以下、250質量ppm以下、200質量ppm以下、又は180質量ppm以下とすることが好ましい。
【0050】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、ホウ素変性イミド系化合物に由来するホウ素原子と、成分(C)及び前記ホウ素変性イミド系化合物に由来する窒素原子との含有量比〔B/N〕は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.07以上、更に好ましくは0.10以上、より更に好ましくは0.12以上、特に好ましくは0.15以上であり、また、好ましくは0.80以下、より好ましくは0.70以下、より好ましくは0.60以下、更に好ましくは0.50以下、更に好ましくは0.40以下、より更に好ましくは0.30以下、特に好ましくは0.25以下である。
【0051】
<成分(D):アミド系化合物>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、成分(D)として、アミド系化合物を含有する。成分(D)を含有することで、クラッチ特性(特に、シャダー防止性)を向上させた潤滑油組成物とすることができる。
本発明の一態様において、成分(D)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
本明細書において、「アミド系化合物」とは、下記式(d-0)で表されるアミド構造(イミド構造に該当する構造を除く)を有する化合物を意味し、当該アミド構造を有する鎖状化合物や、当該アミド構造を有する環状化合物も含まれる。また、「アミド系化合物」には、当該アミド構造有する化合物であればよく、例えば、脂肪酸アミド、芳香族アミド、脂環式アミド等が含まれる。
【化17】
(上記式中、*は結合位置を示す。)
【0053】
本発明の一態様で用いる成分(D)は、例えば、モノアミン又はポリアミンとカルボン酸との縮合化合物が挙げられ、具体的には、下記一般式(d-1)又は(d-2)で表される化合物が挙げられる。
【化18】
【0054】
上記一般式(d-1)中、RD1は、炭化水素基である。RD2およびRD3は、それぞれ独立して、水素原子又は水酸基で置換されていてもよい炭化水素基である。
【0055】
上記一般式(d-2)中、RD4は、水素原子又は水酸基で置換されていてもよい炭素数1~30の炭化水素基である。
Xは、それぞれ独立して、水素原子又は-(C=O)-RD5で表されるアシル基(RD5は炭化水素基)であって、複数あるXの少なくとも一つは、前記アシル基である。
d1は1~6の整数であり、好ましくは1~4の整数、より好ましくは2~3の整数、更に好ましくは2である。
d2は、1以上の整数であり、好ましくは1~20の整数、より好ましくは1~15の整数、更に好ましくは1~10の整数、より更に好ましくは2~8の整数、特に好ましくは2~6の整数である。
【0056】
RD1、RD2、RD3、RD4、及びRD5として選択し得る、前記炭化水素基としては、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数1~6のアルキル基で置換されてもよい炭素数6~30のアリール基等が挙げられる。
【0057】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基)、ペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
これらのアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
前記アルキル基の炭素数は、1~30であるが、2以上、5以上、8以上、10以上、又は12以上としてもよく、また、28以下、26以下、24以下、22以下、又は20以下としてもよい。
【0058】
前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロぺニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。
これらのアルケニル基は、直鎖アルケニル基であってもよく、分岐鎖アルケニル基であってもよい。
前記アルケニル基の炭素数は、2~30であるが、3以上、5以上、8以上、10以上、又は12以上としてもよく、また、28以下、26以下、24以下、22以下、又は20以下としてもよい。
【0059】
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェニルナフチル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
なお、これらアリール基に置換し得る「炭素数1~6のアルキル基」としては、上述のアルキル基のうち、炭素数1~6のアルキル基が挙げられる。
【0060】
本発明の一態様において、クラッチ特性(特に、シャダー防止性)を向上させた潤滑油組成物とする観点から、成分(D)は、脂肪酸アミド(D1)を含むことが好ましい。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(D)中の成分(D1)の含有割合は、当該潤滑油組成物に含まれる成分(D)の全量(100質量%)基準で、好ましくは60~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0061】
本発明の一態様で用いる成分(D1)は、前記一般式(d-1)中のRD1が炭素数1~30のアルキル基又は炭素数2~30のアルケニル基であり、RD2およびRD3が、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~30のアルキル基、又は炭素数2~30のアルケニル基である、脂肪酸モノアミド(D11)であることが好ましい。
また、本発明の別の一態様で用いる成分(D1)は、前記一般式(d-2)中のRD4が水素原子、炭素数1~30のアルキル基、又は炭素数2~30のアルケニル基であり、Xが、それぞれ独立して、水素原子又は-(C=O)-RD5で表されるアシル基(RD5は炭化水素基)であって、複数のXの少なくとも一つは前記アシル基である、脂肪酸ポリアミド(D12)であることが好ましい。
つまり、本発明の一態様で用いる成分(D)は、成分(D11)及び(D12)から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、少なくとも成分(D12)を含むことがより好ましい。
【0062】
なお、脂肪酸モノアミド(D11)及び脂肪酸ポリアミド(D12)が有する前記アルキル基の炭素数は、1~30であるが、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは8以上、より更に好ましくは10以上、特に好ましくは12以上であり、また、好ましくは28以下、より好ましくは26以下、更に好ましくは24以下、より更に好ましくは22以下、特に好ましくは20以下である。
また、脂肪酸モノアミド(D11)及び脂肪酸ポリアミド(D12)が有する前記アルケニル基の炭素数は、2~30であるが、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは8以上、より更に好ましくは10以上、特に好ましくは12以上であり、また、好ましくは28以下、より好ましくは26以下、更に好ましくは24以下、より更に好ましくは22以下、特に好ましくは20以下である。
【0063】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(D)の含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、クラッチ特性(特に、シャダー防止性)をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは0.04質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.07質量%以上、より更に好ましくは0.10質量%以上、特に好ましくは0.12質量%以上であり、また、耐焼き付き性、クラッチ特性、及び耐銅腐食性等の各種特性のバランスが良好な潤滑油組成物とする観点から、好ましくは3.00質量%以下、より好ましくは2.50質量%以下、更に好ましくは2.00質量%以下、より更に好ましくは1.50質量%以下、特に好ましくは1.20質量%以下であり、さらに、1.00質量%以下、0.90質量%以下、0.80質量%以下、0.70質量%以下、0.60質量%以下、0.50質量%以下、0.40質量%以下、又は0.30質量%以下としてもよい。
【0064】
また、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(D1)の含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、クラッチ特性(特に、シャダー防止性)をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは0.04質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.07質量%以上、より更に好ましくは0.10質量%以上、特に好ましくは0.12質量%以上であり、また、耐焼き付き性、クラッチ特性、及び耐銅腐食性等の各種特性のバランスが良好な潤滑油組成物とする観点から、好ましくは3.00質量%以下、より好ましくは2.50質量%以下、更に好ましくは2.00質量%以下、より更に好ましくは1.50質量%以下、特に好ましくは1.20質量%以下であり、さらに、1.00質量%以下、0.90質量%以下、0.80質量%以下、0.70質量%以下、0.60質量%以下、0.50質量%以下、0.40質量%以下、又は0.30質量%以下としてもよい。
【0065】
なお、本発明の一態様で用いる成分(D)は、グルコール酸アミドを含有してもよく、グルコール酸アミドを含有しなくてもよい。
グルコール酸アミドとしては、前記一般式(d-1)中のRD2およびRD3の少なくとも一方が、水酸基を少なくとも1つ有する炭化水素基である化合物、及び、前記一般式(d-2)中のRD4の少なくとも一つが、水酸基を少なくとも1つ有する炭化水素基である化合物が挙げられる。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、グルコール酸アミドの含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、0.8質量%未満、0.5質量%未満、0.1質量%未満、0.05質量%未満、0.01質量%未満、0.001質量%未満、0.0001質量%未満、又は0質量%(検出されない)としてもよい。
【0066】
<成分(E):アミン系化合物>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、成分(E)として、アミン系化合物を含有する。成分(E)を含有することで、クラッチ特性(特に、シャダー防止性)を向上させた潤滑油組成物とすることができる。
本発明の一態様において、成分(E)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
本発明の一態様で用いる成分(E)は、一分子中にアミノ窒素原子を1つ有するモノアミン、一分子中にアミノ窒素原子を2つ有するジアミン、及び、一分子中にアミノ窒素原子を3つ以上有するポリアミンのいずれであってもよい。
なお、本明細書において、成分(E)として用いる「アミン系化合物」は、例えば、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス-(2-ヒドロキシエチル)トリアジン等のような、環形成原子として、アミノ窒素原子を含む環構化合物は除かれる。そのため、後述のベンゾトリアゾール系化合物(F)は、成分(E)には含まれない。
【0068】
これらの中でも、クラッチ特性(特に、シャダー防止性)を向上させた潤滑油組成物とする観点から、本発明の一態様で用いる成分(E)は、モノアミン(E1)を含むことが好ましい。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(E)中の成分(E1)の含有割合は、当該潤滑油組成物に含まれる成分(E)の全量(100質量%)基準で、好ましくは60~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0069】
本発明の一態様で成分(E)として用いるモノアミン(E1)としては、置換基の個数によって、下記一般式(e-1)で表される第1級モノアミン(E11)、下記一般式(e-2)で表される第2級モノアミン(E12)、及び下記一般式(e-3)で表される第3級モノアミン(E3)に分類される。
ただし、本発明の一態様で用いる成分(E)は、下記一般式(e-1)で表される第1級モノアミン(E11)及び下記一般式(e-2)で表される第2級モノアミン(E12)から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【化19】
【0070】
上記式中、REは、それぞれ独立して、置換基を示す。複数のREは同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。該置換基としては、アルキル基、水酸基を有するアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、フェニル基、及びベンジル基等が挙げられる。
【0071】
置換基REとして選択し得る、前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、i-プロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基)、ペンチル基(n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基)、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
また、当該アルキル基の炭素数は、例えば、1~30であるが、好ましくは3以上、より好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上、より更に好ましくは12以上、特に好ましくは15以上であり、また、好ましくは28以下、より好ましくは26以下、更に好ましくは24以下、より更に好ましくは22以下、特に好ましくは20以下である。
【0072】
置換基REとして選択し得る、前記水酸基を有するアルキル基としては、上述のアルキル基の少なくとも1つの水素原子が水酸基に置換された基が挙げられる。
当該基を構成するアルキル基も、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
前記水酸基を有するアルキル基の炭素数の好適範囲は、上述のアルキル基の炭素数と同様である。
【0073】
置換基REとして選択し得る、前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基(ビニル基)、プロぺニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基(オレイル基)等が挙げられる。
当該アルケニル基は、直鎖アルケニル基であってもよく、分岐鎖アルケニル基であってもよい。
また、当該アルケニル基の炭素数は、例えば、2~30であるが、好ましくは3以上、より好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上、より更に好ましくは12以上、特に好ましくは15以上であり、また、好ましくは28以下、より好ましくは26以下、更に好ましくは24以下、より更に好ましくは22以下、特に好ましくは20以下である。
【0074】
置換基REとして選択し得る、前記シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基等が挙げられる。
当該シクロアルキル基の環形成炭素数は、例えば3~30であるが、好ましくは5以上、より好ましくは6以上であり、また、好ましくは24以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下、より更に好ましくは16以下、特に好ましくは12以下である。
【0075】
本発明の一態様で用いる成分(E)は、第1級モノアミン及び第2級モノアミンから選ばれる1種以上を含むことが好ましく、少なくとも第1級モノアミンを含むことがより好ましい。
【0076】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(E)の含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、クラッチ特性(特に、シャダー防止性)をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.007質量%以上、より更に好ましくは0.010質量%以上、特に好ましくは0.012質量%以上であり、また、耐焼き付き性、クラッチ特性、及び耐銅腐食性等の各種特性のバランスが良好な潤滑油組成物とする観点から、好ましくは2.00質量%以下、より好ましくは1.50質量%以下、更に好ましくは1.00質量%以下、より更に好ましくは0.50質量%以下、特に好ましくは0.20質量%以下であり、さらに、0.15質量%以下、0.10質量%以下、又は0.080質量%以下としてもよい。
【0077】
なお、本発明の一態様で用いる成分(E)は、ジアミンを含有してもよく、ジアミンを含有しなくてもよい。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、ジアミンの含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、0.07質量%未満、0.05質量%未満、0.03質量%未満、0.01質量%未満、0.001質量%未満、0.0001質量%未満、又は0質量%(検出されない)としてもよい。
【0078】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、クラッチ特性(特に、シャダー防止性)をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、成分(E)と成分(D)との含有量比〔(E)/(D)〕は、質量比で、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.07以上、更に好ましくは0.09以上、より更に好ましくは0.10以上、特に好ましくは0.11以上であり、また、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.80以下、更に好ましくは0.70以下、より更に好ましくは0.60以下、特に好ましくは0.50以下である。
【0079】
<成分(F):ベンゾトリアゾール系化合物>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、成分(F)として、ベンゾトリアゾール系化合物を含有する。成分(F)を含有することで、耐銅腐食性を向上させた潤滑油組成物とすることができる。
本発明の一態様において、成分(F)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
本発明の一態様で成分(F)として用いるベンゾトリアゾール系化合物は、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物であればよく、例えば、下記一般式(f-0)で表される化合物が挙げられる。
【化20】
【0081】
前記一般式(f-0)中、RF1は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭化水素基又は水素原子である。
RF2は、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭化水素基である。
f1は0~4の整数であり、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0~1の整数、更に好ましくは1である。
【0082】
前記炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びこれら2種以上を組み合わせてなる基等が挙げられる。
RF1として選択し得る、前記炭化水素基の炭素数は、例えば、1~30であるが、好ましくは3以上、より好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上、より更に好ましくは12以上、特に好ましくは15以上であり、また、好ましくは28以下、より好ましくは26以下、更に好ましくは24以下、より更に好ましくは22以下、特に好ましくは20以下である。
RF2として選択し得る、前記炭化水素基の炭素数は、例えば、1~20であるが、好ましくは1~16、より好ましくは1~12、より好ましくは1~8、更に好ましくは1~6、より更に好ましくは1~4、特に好ましくは1~2である。
【0083】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、i-プロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基)、ペンチル基(n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基)、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
【0084】
前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基(ビニル基)、プロぺニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基(オレイル基)等が挙げられる。
当該アルケニル基は、直鎖アルケニル基であってもよく、分岐鎖アルケニル基であってもよい。
【0085】
前記シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0086】
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェニルナフチル基等が挙げられる。
【0087】
なお、R
F1及びR
F2して選択し得る、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む炭化水素基としては、例えば、下記式(f-i)~式(f-iii)で表される基が挙げられる。
【化21】
【0088】
前記一般式(f-i)~式(f-iii)中、Afは、2価の炭化水素基であり、Rf1及びRf2は、それぞれ独立して、1価の炭化水素基である。
【0089】
Afとして選択し得る、2価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20(好ましくは1~12、より好ましくは1~8、更に好ましくは1~4、より更に好ましくは1~2)のアルキレン基、炭素数2~20(好ましくは2~12、より好ましくは2~8、更に好ましくは2~4)のアルケニレン基、環形成炭素数3~20(好ましくは3~15、より好ましくは5~12、更に好ましくは5~6)のシクロアルキレン基、環形成炭素数6~30(好ましくは6~18、より好ましくは6~15、更に好ましくは6~12)のアリーレン基等が挙げられる。
これらの中でも、Afは、炭素数1~20(好ましくは1~12、より好ましくは1~8、更に好ましくは1~4、より更に好ましくは1~2)のアルキレン基であることが好ましい。
【0090】
Rf1及びRf2して選択し得る、1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20(好ましくは1~12、より好ましくは1~8、更に好ましくは1~4、より更に好ましくは1~2)のアルキル基、炭素数2~20(好ましくは2~12、より好ましくは2~8、更に好ましくは2~4)のアルケニル基、環形成炭素数3~20(好ましくは3~15、より好ましくは5~12、更に好ましくは5~6)のシクロアルキル基、環形成炭素数6~30(好ましくは6~18、より好ましくは6~15、更に好ましくは6~12)のアリール基等が挙げられる。
これらの中でも、Rf1及びRf2は、それぞれ独立して、炭素数1~20(好ましくは1~12、より好ましくは1~8、更に好ましくは1~4、より更に好ましくは1~2)のアルキル基であることが好ましい。
【0091】
本発明の一態様で用いる成分(F)は、下記一般式(f-1)で表される化合物(F1)を含むことが好ましい。
【化22】
【0092】
上記一般式(f-1)中、RF2及びf1は、上述の前記一般式(f-0)中のRF2及びf1と同じであり、好適な基の態様も同じである。また、Af、Rf1及びRf2は、上記の一般式(f-iii)中のAf、Rf1及びRf2と同じであり、好適な基の態様も同じである。
なお、化合物(F1)の好適な態様としては、上記一般式(f-1)中、RF2は、それぞれ独立して、炭素数1~20(好ましくは1~16、より好ましくは1~12、より好ましくは1~8、更に好ましくは1~6、より更に好ましくは1~4、特に好ましくは1~2)のアルキル基であり、Afは、炭素数1~20(好ましくは1~12、より好ましくは1~8、更に好ましくは1~4、より更に好ましくは1~2)のアルキレン基であり、Rf1及びRf2は、それぞれ独立して、炭素数1~20(好ましくは1~12、より好ましくは1~8、更に好ましくは1~4、より更に好ましくは1~2)のアルキル基である。f1は、0~4の整数(好ましくは0~2の整数、より好ましくは0~1の整数、更に好ましくは1)である。
【0093】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(F)中の成分(F1)の含有割合は、当該潤滑油組成物に含まれる成分(F)の全量(100質量%)基準で、好ましくは60~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0094】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(F)の含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、耐銅腐食性を向上させた潤滑油組成物とする観点から、0.005質量%以上であるが、好ましくは0.007質量%以上、より好ましくは0.010質量%以上、更に好ましくは0.015質量%以上、より更に好ましくは0.020質量%以上、特に好ましくは0.025質量%以上であり、また、耐焼き付き性、クラッチ特性、及び耐銅腐食性等の各種特性のバランスが良好な潤滑油組成物とする観点から、1.00質量%以下であるが、好ましくは0.80質量%以下、より好ましくは0.70質量%以下、更に好ましくは0.60質量%以下、より更に好ましくは0.50質量%以下、特に好ましくは0.40質量%以下である。
【0095】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、耐銅腐食性と耐焼き付き性をバランス良くより向上させた潤滑油組成物とする観点から、成分(F)と成分(B)との含有量比〔(E)/(D)〕は、質量比で、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.015以上、更に好ましくは0.02以上、より更に好ましくは0.025以上、特に好ましくは0.028以上であり、また、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.40以下、更に好ましくは0.30以下、より更に好ましくは0.20以下、特に好ましくは0.10以下である。
【0096】
<成分(B)~(F)以外の各種添加剤>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、成分(B)~(F)以外の各種添加剤を含有してもよい。
このような各種添加剤としては、例えば、流動点降下剤、粘度指数向上剤、酸化防止剤、金属系清浄剤、防錆剤、消泡剤、着色剤等が挙げられる。
これらの潤滑油用添加剤は、それぞれ、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0097】
これらの潤滑油用添加剤のそれぞれの含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内で、適宜調整することができるが、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、それぞれの添加剤ごとに独立して、通常0.001~15質量%、好ましくは0.005~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%である。
【0098】
[流動点降下剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに流動点降下剤を含有してもよい。流動点降下剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる流動点降下剤としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等が挙げられる。
本発明の一態様で用いる流動点降下剤の質量平均分子量(Mw)は、5,000以上、7,000以上、10,000以上、15,000以上、20,000以上、25,000以上、30,000以上、35,000以上、40,000以上、45,000以上、50,000以上、55,000以上、又は60,000以上としてもよく、また、150,000以下、120,000以下、100,000以下、90,000以下、又は80,000以下としてもよい。
【0099】
[粘度指数向上剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに粘度指数向上剤を含有してもよい。粘度指数向上剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる粘度指数向上剤としては、例えば、非分散型ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン-プロピレン共重合体等)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン-ジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体等)等の重合体が挙げられる。
本発明の一態様で用いる粘度指数向上剤の重量平均分子量(Mw)は、5,000以上、7,000以上、10,000以上、15,000以上、又は20,000以上としてもよく、また、1,000,000以下、700,000以下、500,000以下、300,000以下、200,000以下、100,000以下、又は50,000以下としてもよい。
【0100】
[酸化防止剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる酸化防止剤としては、例えば、アルキル化ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、アルキル化フェニルナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤;2、6-ジ-t-ブチルフェノール、4,4’-メチレンビス(2,6ージーtーブチルフェノール)、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤;フェノチアジン、ジオクタデシルサルファイド、ジラウリル-3,3'-チオジプロピオネート、2-メルカプトベンゾイミダゾール等の硫黄系酸化防止剤;等が挙げられる。
【0101】
[金属系清浄剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに金属系清浄剤を含有してもよい。金属系清浄剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる金属系清浄剤としては、金属スルホネート、金属サリシレート、及び金属フェネート等の金属塩が挙げられる。また、当該金属塩を構成する金属原子としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる金属原子が好ましく、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、又はバリウムがより好ましく、カルシウムが更に好ましい。
【0102】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、金属系清浄剤は、カルシウムスルホネート、カルシウムサリシレート、及びカルシウムフェネートから選ばれる1種以上を含むことが好ましく、カルシウムスルホネートを含むことがより好ましい。
カルシウムスルホネートの含有割合としては、潤滑油組成物に含まれる金属系清浄剤の全量(100質量%)基準で、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、より更に好ましくは80~100質量%である。
【0103】
金属系清浄剤の塩基価としては、好ましくは0~600mgKOH/gである。
ただし、本発明の一態様の潤滑油組成物において、金属系清浄剤は、塩基価が100mgKOH/g以上の過塩基性金属系清浄剤であることが好ましい。
過塩基性金属系清浄剤の塩基価としては、100mgKOH/g以上であるが、好ましくは150~500mgKOH/g、より好ましくは200~450mgKOH/gである。
なお、本明細書において、「塩基価」とは、JIS K2501:2003「石油製品および潤滑油-中和価試験方法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による塩基価を意味する。
【0104】
[防錆剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに防錆剤を含有してもよい。防錆剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる防錆剤としては、例えば、脂肪酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、脂肪酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アミン、酸化パラフィン、アルキルポリオキシエチレンエーテル等が挙げられる。
【0105】
[消泡剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに消泡剤を含有してもよい。消泡剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる消泡剤としては、例えば、アルキルシリコーン系消泡剤、フルオロシリコーン系消泡剤、フルオロアルキルエーテル系消泡剤等が挙げられる。
【0106】
[着色剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに着色剤を含有してもよい。消泡剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる着色剤としては、染料や顔料等が挙げられる。
【0107】
[脂肪酸部分エステル化合物]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、脂肪酸部分エステル化合物を含有してもよく、含有しなくてもよい。
脂肪酸部分エステル化合物としては、炭素数6~30の炭化水素基を有する脂肪酸と、脂肪酸多価アルコールとの反応により得られる部分エステルが挙げられる。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、脂肪酸部分エステル化合物の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、0.05質量%未満、0.01質量%未満、又は0.001質量%未満としてもよい。
【0108】
<潤滑油組成物の製造方法>
本発明の一態様の潤滑油組成物の製造方法としては、特に制限はないが、生産性の観点から、成分(A)に、成分(B)~(F)、及び、必要に応じて成分(B)~(F)以外の他の添加剤を配合する工程を有することが好ましい。
ここで、成分(A)~(F)及び各種添加剤の好適な化合物及び配合量は、上述のとおりである。
また、粘度指数向上剤、流動点降下剤、及ぶ消泡剤等の添加剤については、希釈油に溶解した状態で配合することが好ましい。
【0109】
〔潤滑油組成物の性状〕
本発明の一態様の潤滑油組成物の100℃における動粘度は、好ましくは2.5mm2/s以上、より好ましくは3.0mm2/s以上、更に好ましくは3.5mm2/s以上、より更に好ましくは4.0mm2/s以上、特に好ましくは4.5mm2/s以上であり、また、好ましくは7.0mm2/s以下、より好ましくは6.7mm2/s以下、更に好ましくは6.5mm2/s以下、より更に好ましくは6.2mm2/s以下、特に好ましくは6.0mm2/s以下である。
【0110】
本発明の一態様の潤滑油組成物の粘度指数は、好ましくは80以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは120以上、より更に好ましくは140以上、特に好ましくは160以上である。
【0111】
本発明の一態様の潤滑油組成物の塩基価(過塩素酸法)は、好ましくは2.5~8.0mgKOH/g、より好ましくは2.5~7.5mgKOH/g、更に好ましくは3.0~7.0mgKOH/g、より更に好ましくは3.5~6.5mgKOH/g、特に好ましくは4.0~6.0mgKOH/gである。
【0112】
本発明の一態様の潤滑油組成物のリン原子の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは150質量ppm以上、より好ましくは200質量ppm以上、更に好ましくは250質量ppm以上、より更に好ましくは300質量ppm以上、特に好ましくは350質量ppm以上であり、また、好ましくは800質量ppm以下、より好ましくは700質量ppm以下、更に好ましくは600質量ppm以下、より更に好ましくは550質量ppm以下、特に好ましくは500質量ppm以下である。
【0113】
本発明の一態様の潤滑油組成物の窒素原子の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.10質量%以上、より更に好ましくは0.15質量%以上、特に好ましくは0.20質量%以上であり、また、好ましくは1.00質量%以下、より好ましくは0.80質量%以下、更に好ましくは0.70質量%以下、より更に好ましくは0.60質量%以下、特に好ましくは0.50質量%以下である。
【0114】
本発明の一態様の潤滑油組成物の硫黄原子の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.010質量%以上、より更に好ましくは0.030質量%以上、特に好ましくは0.050質量%以上であり、また、好ましくは0.50質量%以下、より好ましくは0.40質量%以下、更に好ましくは0.30質量%以下、より更に好ましくは0.20質量%以下、特に好ましくは0.15質量%以下である。
【0115】
本発明の一態様の潤滑油組成物のホウ素原子の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0質量ppm以上、より好ましくは10質量ppm以上、更に好ましくは50質量ppm以上、より更に好ましくは70質量ppm以上、特に好ましくは100質量ppm以上であり、また、好ましくは700質量ppm以下、より好ましくは500質量ppm以下、更に好ましくは400質量ppm以下、より更に好ましくは300質量ppm以下、特に好ましくは200質量ppm以下である。
【0116】
本発明の一態様の潤滑油組成物に対して、ASTM D 3233に準拠して、後述の実施例での測定条件にて測定された100℃における焼付荷重は、好ましくは5000N以上、より好ましくは5500N以上、更に好ましくは5700N以上、より更に好ましくは6000N以上、特に好ましくは6200N以上である。
なお、焼付荷重が高いほど、耐焼き付け性に優れた潤滑油組成物といえる。
【0117】
本発明の一態様の潤滑油組成物に対して、JASOM348-2002準拠して、後述の実施例での測定条件にて測定された、3000サイクルにおける静摩擦係数(μs)は、好ましくは0.115以上、より好ましくは0.117以上、更に好ましくは0.118以上、より更に好ましくは0.120以上、特に好ましくは0.121以上である。
なお、μsは、クラッチ容量を示す指標とし、μsが大きいほど十分な伝達トルク容量を有する潤滑油組成物といえる。
【0118】
本発明の一態様の潤滑油組成物に対して、JASOM348-2002準拠して、後述の実施例での測定条件にて測定された、3000サイクルにおける静止摩擦係数(μ0)と動的摩擦係数(μd)とのμ比(μ0/μd))は、好ましくは1.036以下、より好ましくは1.030以下、更に好ましくは1.025以下、より更に好ましくは1.020以下、特に好ましくは1.017以下である。
なお、μ比は、シャダー防止性を示す指標とし、μ比が小さいほど、シャダー防止性に優れ、スムーズな変速を可能とする潤滑油組成物といえる。
【0119】
本発明の一態様の潤滑油組成物に対して、JIS K2514-1:2013に準拠するISOT試験にて、触媒である銅板を加えて、油温175℃、試験時間48時間の条件にて劣化させた際の銅の溶出量は、好ましくは100質量ppm以下、より好ましくは80質量ppm以下、更に好ましくは70質量ppm以下、より更に好ましくは60質量ppm以下、特に好ましくは55質量ppm以下である。
なお、銅の溶出量が少ないほど、耐銅腐食性は高い潤滑油組成物であるといえる。また、銅の溶出量は、後述の実施例の記載の方法で測定された値を意味する。
【0120】
〔潤滑油組成物の用途〕
本発明の好適な一態様の潤滑油組成物は、耐焼き付き性、クラッチ特性、及び耐銅腐食性をバランス良く向上させ得る。
このような特性を考慮し、本発明の一態様の潤滑油組成物は、例えば、エンジン、変速機、減速機、圧縮機、油圧装置等の各種装置に組み込まれている、トルクコンバータ、湿式クラッチ、歯車軸受機構、オイルポンプ、油圧制御機構等の機構における潤滑に好適に使用することができる。これらの中でも、本発明の一態様の潤滑油組成物は、減速機の潤滑に用いられることが好ましく、特に、クラッチ機構を備える変速機に用いられることがより好ましく、クラッチ機構を備え、ハイブリット車に搭載される変速機に用いられることが更に好ましい。
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物は、耐焼き付き性及びクラッチ特性といった潤滑特性に優れると共に、耐銅腐食性にも優れている。そのため、本発明の一態様の潤滑油組成物をハイブリット車等のような潤滑性能と冷却性能の双方が求められる装置に用いた場合、クラッチ機構や変速機構の潤滑性を良好とすると共に、優れた耐銅腐食性を有するためにモーターの冷却に用いても、モーターを構成する銅系部材の腐食を防止し得るという特性も有している。したがって、本発明の一態様の潤滑油組成物は、クラッチ機構を備える変速機と銅系部材から構成されたモーター等の機構とが一体化した装置の潤滑及び冷却に用いることも好ましい。
【0121】
また、本発明の一態様の潤滑油組成物の上述の特性を考慮すると、本発明は、以下の[1]及び[2]も提供し得る。
[1]上述の本発明の一態様の潤滑油組成物を充填してなる、変速機。
[2]上述の本発明の一態様の潤滑油組成物を、クラッチ機構を備える変速機の潤滑に適用する、潤滑油組成物の使用。
上記[1]及び[2]に記載の潤滑油組成物の好適な態様は、上述のとおりである。
また、上記[1]及び[2]に記載の変速機は、クラッチ機構を備える変速機が好ましく、クラッチ機構を備え、ハイブリット車に搭載される変速機がより好ましい。
【実施例0122】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、各種物性の測定法は、下記のとおりである。
【0123】
(1)動粘度、粘度指数
JIS K2283:2000に準拠して測定及び算出した。
(2)リン原子、ホウ素原子、及びカルシウム原子の含有量
JPI-5S-38-92に準拠して測定した。
(3)窒素原子の含有量
JIS K2609に準拠して測定した。
(4)硫黄原子の含有量
JIS K2541-6:2013に準拠して測定した。
(5)塩基価(過塩素酸法)
JIS K2501:2003(過塩素酸法)に準拠して測定した。
(6)重量平均分子量(Mw)
ゲル浸透クロマトグラフ装置(アジレント社製、「1260型HPLC」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「Shodex LF404」を2本、順次連結したもの。
・カラム温度:35℃
・展開溶媒:クロロホルム
・流速:0.3mL/min
【0124】
実施例1、比較例1~5
表1に示す種類の基油及び各種添加剤を、表1に示す配合量にて添加し、十分に混合して潤滑油組成物をそれぞれ調製した。当該潤滑油組成物の調製に使用した各成分の詳細は以下のとおりである。
【0125】
<基油>
・「鉱油(1)」:API基油カテゴリーのグループIIに分類される70N鉱油、100℃動粘度=2.7mm2/s、粘度指数=110。
・「鉱油(2)」:API基油カテゴリーのグループIIIに分類される100N鉱油、100℃動粘度=4.1mm2/s、粘度指数=120。
【0126】
<各種添加剤>
・「亜リン酸エステル」:前記一般式(b-11)中のR
b11がn-オクチル基(-C
8H
17)、a1が2である化合物(下記式(b-11-1)で表される化合物)と、前記一般式(b-21)中のR
b11及びR
b12がn-オクチル基(-C
8H
17)、a2及びa3が2である化合物(下記式(b-21-1)で表される化合物)を含み、硫黄原子含有量=1.5質量%、リン原子含有量=1.3質量%である混合物、成分(B)に該当する亜リン酸エステルの混合物。
・「非ホウ素変性コハク酸イミド」:Mw=960のポリブテニル基を有する、非ホウ素変性コハク酸ビスイミド、成分(C11)に該当する化合物、窒素原子含有量=2.0質量%。
・「ホウ素変性コハク酸イミド」:ポリブテニル基を有する、ホウ素変性コハク酸ビスイミド、ホウ素原子含有量=0.35質量%、窒素原子含有量=1.58質量%。
・「脂肪酸アミド」:イソステアリン酸とテトラエチレンペンタミンとの縮合反応物、成分(D1)に該当。前記一般式(d-2)中のR
D4が水素原子、Xが水素原子又は-C(=O)-C
17H
35で表される基、d1が2、d2が4である化合物(下記式(d-1-1)で表される化合物)。
・「モノアミン」:オレイルアミン、成分(E1)に該当する第1級モノアミン(下記式(e-1-1)で表される化合物)。
・「ベンゾトリアゾール系化合物」:N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル-1H-メチルベンゾトリアゾール、前記一般式(f-1)中、R
F2がメチル基、f1
1、A
fがメチレン基、R
f1及びR
f2がn-オクチル基である、成分(F1)に該当する化合物(下記式(f-1-1)で表される化合物)。
【化23】
・「添加剤PKG」:以下の成分を含有する添加剤混合物。
粘度指数向上剤:Mw1.5万のオレフィンコポリマー。
流動点降下剤:Mw3万のポリメタクリレート。
酸化防止剤:フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤。
リン酸エステル:トリクレジルホスフェート。
金属系清浄剤:塩基価(過塩素酸法)=350mgKOH/gのカルシウムスルホネート。
消泡剤:ジメチルシリコーン系消泡剤、フッ化シリコーン系消泡剤。
着色剤
【0127】
調製した潤滑油組成物について、動粘度、粘度指数、及び各原子の含有量を測定もしくは算出すると共に、以下の試験を行った。これらの結果を表1に示す。
【0128】
(1)ファレックス試験
密閉ファレックス焼付試験機を用いて、ASTM D 3233に準拠して、下記測定条件にて、焼付荷重を測定した。
・油温:100℃
・ピンの材質:AISI 3135
・ブロックの材質:AISI C-1137
・回転数:290rpm
・慣らし運転:1112Nの荷重で5分間
焼付荷重が高いほど、耐焼き付け性に優れた潤滑油組成物といえる。本実施例では、焼付荷重が5000N以上であることを、耐焼き付け性の合格基準とした。
【0129】
(2)クラッチ特性の評価試験
SAENo.2摩擦試験機を用い、JASOM348-2012準拠して、下記測定条件にて、ダイナミック時に動的摩擦係数(μd)及び静止摩擦係数(μ0)を、スタティック時に静摩擦係数(μs)を測定した。
・面圧:785kPa
・油温:100℃
・ダイナミック回転数:3600rpm
・スタティック回転数:0.7rpm
上記の実験条件で、5000サイクルにおけるμsを測定し、また、μ比(μ0/μd)を求めた。μsは、クラッチ容量を示す指標とし、μsが大きいほど十分な伝達トルク容量を有する潤滑油組成物といえる。また、μ比は、シャダー防止性を示す指標とし、μ比が小さいほど、シャダー防止性に優れ、スムーズな変速を可能とする潤滑油組成物といえる。本実施例では、μsが0.115以上、且つ、μ比が1.036以下であることを、クラッチ特性の合格基準とした。
【0130】
(3)耐銅腐食性試験
JIS K2514-1:2013に準拠するISOT試験にて、試験油に触媒である銅板を加えて、油温175℃、試験時間48時間の条件にて試料油を劣化させた。劣化後の試料油について、JPI-5S-38に準拠し、銅の溶出量(質量ppm)を測定した。銅の溶出量が少ないほど、耐銅腐食性は高い潤滑油組成物であるといえる。本実施例では、銅の溶出量が100質量ppm以下であることを、耐銅腐食性の合格基準とした。
【0131】
【0132】
表1より、実施例1で調製した潤滑油組成物は、耐焼き付き性、クラッチ特性、及び耐銅腐食性がバランス良く良好であった。一方で、比較例1~5で調製した潤滑油組成物は、耐焼き付き性、クラッチ特性、及び耐銅腐食性の少なくとも1つが劣る結果であった。例えば実施例1と比較例2を対比すると、非ホウ素変性コハク酸イミドを含まない比較例2に比べて、非ホウ素変性コハク酸イミドを含む実施例1は、耐焼き付き性を良好に保持しつつも、クラッチ容量が向上し、さらに耐銅腐食性も向上していることが分かる。