(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127021
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】アンモニアボランの合成方法
(51)【国際特許分類】
C01B 6/10 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
C01B6/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030533
(22)【出願日】2022-03-01
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業/水素利用等高度化先端技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
(74)【代理人】
【識別番号】100152180
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 秀人
(72)【発明者】
【氏名】中川 鉄水
(57)【要約】
【課題】本発明は、水素貯蔵材料であるアンモニアボランを合成する新規な方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、アンモニア水中で、NaBH
4等のボロハイドライドと、NH
4Cl、(NH
4)
2SO
4等のアンモニウム塩とを反応させるアンモニアボランの合成方法、又はボロハイドライドとアンモニアとを反応させるアンモニアボランの合成方法である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中で、ボロハイドライドとアンモニウム塩とを反応させることを特徴とするアンモニアボランの合成方法。
【請求項2】
アンモニア水溶液中で反応させることを特徴とする請求項1記載のアンモニアボランの合成方法。
【請求項3】
KH2PO4、Na2HPO4、NaHCO3、NaOHの少なくとも1つの添加剤を添加して反応を行うことを特徴とする請求項1又は2記載のアンモニアボランの合成方法。
【請求項4】
アンモニウム塩が、(NH4)2HPO4、NH4NO3、(NH4)2CO3、NH4Cl及び(NH4)2SO4から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のアンモニアボランの合成方法。
【請求項5】
二酸化炭素を付与して反応を行うことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のアンモニアボランの合成方法。
【請求項6】
水中で、ボロハイドライドとアンモニアとを反応させることを特徴とするアンモニアボランの合成方法。
【請求項7】
二酸化炭素を付与して反応を行うことを特徴とする請求項6記載のアンモニアボランの合成方法。
【請求項8】
KH2PO4、Na2HPO4、NaHCO3、NaOHの少なくとも1つの添加剤を添加して反応を行うことを特徴とする請求項6又は7記載のアンモニアボランの合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素貯蔵材料であるアンモニアボランを合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市販されている燃料電池車の燃料タンクには高圧水素が採用されているが、未だにコストや水素密度に課題を有する。高密度な水素貯蔵方法として、水素貯蔵材料が期待されており、その中でもアンモニアボラン(NH3BH3)は、重量水素密度が非常に高く、注目されている。
【0003】
このようなアンモニアボランの合成方法としては、ボロハイドライド(M(BH4)n:M=金属)とアンモニウム塩とを有機溶媒中で撹拌して合成する方法(非特許文献1参照)や、ナトリウムボロハイドライドと酸又はアンモニウム塩とを有機溶媒中で反応させる方法(特許文献1参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Petit, J.F., Miele, P., Demirci, U.B., (2016) Ammonia borane H3N-BH3 for solid-state chemical hydrogen storage: Different samples with different thermal behaviors International Journal of Hydrogen Energy. 41, 15462-15470.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、アンモニアボランは水素貯蔵材料として注目されているが、上記非特許文献1の方法には、工程数やコスト、製造時間等の問題の他、例えば自然界などから回収したアンモニアから直接合成できないなどの問題がある。また、特許文献1の方法には、大量の有機溶媒を必要とするため高コストとなるという問題がある。このような問題を克服し、実用化に向けた新たなアンモニアボランの合成方法が求められている。
【0007】
本発明の課題は、水素貯蔵材料であるアンモニアボランを合成する新規な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、これまで水素貯蓄材料としてのアンモニアボランの有用性に注目し、研究してきた。そして、このアンモニアボランの新たな合成方法を探求する中で、ボロハイドライドとアンモニア塩を用いたアンモニアボランの合成を、有機溶媒を用いることなく、水を用いて(水中で)行うことが可能なことを見いだし、本発明を完成するに至った。特に、アンモニア水溶液中で反応を行うことにより、効率的にアンモニアボランを合成できることを見いだした。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]水中で、ボロハイドライドとアンモニウム塩とを反応させることを特徴とするアンモニアボランの合成方法。
[2]アンモニア水溶液中で反応させることを特徴とする上記[1]記載のアンモニアボランの合成方法。
[3]KH2PO4、Na2HPO4、NaHCO3、NaOHの少なくとも1つの添加剤を添加して反応を行うことを特徴とする上記[2]記載のアンモニアボランの合成方法。
[4]アンモニウム塩が、(NH4)2HPO4、NH4NO3、(NH4)2CO3、NH4Cl及び(NH4)2SO4から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれかに記載のアンモニアボランの合成方法。
[5]二酸化炭素を付与して反応を行うことを特徴とする上記[1]~[4]のいずれかに記載のアンモニアボランの合成方法。
[6]水中で、ボロハイドライドとアンモニアとを反応させることを特徴とするアンモニアボランの合成方法。
[7]二酸化炭素を付与して反応を行うことを特徴とする上記[6]記載のアンモニアボランの合成方法。
[8]KH2PO4、Na2HPO4、NaHCO3、NaOHの少なくとも1つの添加剤を添加して反応を行うことを特徴とする上記[6]又は[7]記載のアンモニアボランの合成方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水素貯蔵材料であるアンモニアボランの新規な合成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】アンモニアボラン溶液の
11B-NMR測定の結果の一例を示す図
【
図2】実施例1におけるアンモニアボランの生成率及び選択率を示す図
【
図3】実施例2におけるアンモニアボランの生成率及び選択率を示す図
【
図4】実施例3におけるアンモニアボランの生成率及び選択率を示す図
【
図5】実施例4におけるアンモニアボランの生成率及び選択率を示す図
【
図6】実施例5におけるアンモニアボランの生成率及び選択率を示す図
【
図7】実施例6におけるアンモニアボランの生成率及び選択率を示す図
【
図8】実施例7におけるアンモニアボランの生成率及び選択率を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の発明]
本発明のアンモニアボランの合成方法は、水中で、ボロハイドライドとアンモニウム塩とを反応させることを特徴とする。すなわち、本発明の方法は、従来、有機溶媒中で行われていた反応を水中で行うものであり、有機溶媒を用いる必要がない。これにより、安価にアンモニアボランを製造することが可能となる。
【0013】
ここで、本発明において、反応を水中で行うとは、水が主体の溶媒中で反応を行うことを意味し、一部として有機溶媒を含むことを妨げるものではない。例えば、溶媒の90質量%以上、好ましくは95質量%以上が水であることが好ましく、実質的に水のみからなる溶媒中で反応を行うことが特に好ましい。
【0014】
従来、溶媒として有機溶媒が用いられていたのは、NaBH4等のボロハイドライドが水に加水分解してしまうということが理由であると考えられるが、本発明では、水中でもアンモニアボランを合成できることを見いだした。
【0015】
反応溶液のpHとしては、7以上が好ましく、10以上がより好ましく、12以上がさらに好ましい。本発明においては、特に、溶媒として、アンモニア水溶液を用いることが好ましい。これにより、ボロハイドライドの加水分解を抑制して、効率的にアンモニアボランを合成することができる。アンモニア水溶液のアンモニア濃度としては、例えば、1質量%以上であればよく、5質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、25質量%以上が特に好ましく、30質量%以上が最も好ましい。上限は、特に制限されるものではないが、例えば、50質量%であり、35質量%が好ましい。高濃度のアンモニア水溶液とするために、液体アンモニア-水の混合溶液を用いることが特に好ましい。液体アンモニアを用いることより、ボロハイドライドアンモニア和物(例えば、Na(BH4)・nNH3)が生成し、反応が促進されると考えられる。
【0016】
なお、上記特許文献2においては、溶媒の一部(10~30質量%)に濃アンモニア水を用いて反応させることが記載されているが、かかる反応における溶媒の主体はあくまで有機溶媒(テトラヒドロフラン)であり、水を主体とする本発明とは基本コンセプトが根本的に異なる。
【0017】
本発明の方法で用いられるボロハイドライドは、(M(BH4)n:M=金属)で表され、Mとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム等の第1族元素(アルカリ金属)、及びマグネシウム、カルシウム等の第2族元素(アルカリ土類金属)が挙げられ、反応性および水中における安定性の点から、ナトリウムが特に好ましい。すなわち、ナトリウムボロハイドライド(NaBH4)が特に好ましい。
【0018】
本発明の方法で用いられるアンモニウム塩としては、例えば、(NH4)2HPO4、NH4NO3、(NH4)2CO3、NH4Cl、(NH4)2SO4等を挙げることができ、反応性の点から、NH4Cl、(NH4)2SO4が好ましい。
【0019】
本発明の方法においては、反応溶液に、所定の添加剤(反応促進剤)を添加することが好ましい。添加剤としては、KH2PO4、Na2HPO4、NaHCO3、NaOHを挙げることができ、混合して用いてもよい。例えば、KH2PO4及びNa2HPO4を含むリン酸緩衝溶液として用いてもよい。メカニズムの詳細は不明であるが、かかる添加剤を用いることにより、プロトンの生成を抑制すると共にNH4のイオン強度を増強することができると考えられ、中間体であるNH4BH4や、生成したアンモニアボランの分解を抑制できると考えられる。
【0020】
本発明の合成方法におけるボロハイドライドとアンモニウム塩との反応は、非加熱で行うことができ、冷却して行うことが好ましい。すなわち、本発明の反応は発熱反応であり、反応溶液の温度が40℃以上になると生成したアンモニアボランが分解するおそれがあるため、冷却して行うことが好ましい。また、液体アンモニアを用いる場合は、加圧下で反応を行うことが好ましい。
【0021】
原料となるボロハイドライドとアンモニウム塩の混合方法としては、1)両者をそれぞれ水溶液として混合してもよく、2)一方を溶液として他方が固体(粉末)のまま混合してもよく、3)両者固体の状態で溶媒と混合してもよいが、安定した反応環境となることから、1)の方法が好ましい。
【0022】
ボロハイドライドとアンモニウム塩との配合割合(モル比)としては、アンモニアボランを生成できれば特に制限されるものではないが、反応性の点から、0.5~5:1であることが好ましく、0.8~4:1であることがより好ましく、1~3:1であることがさらに好ましい。
【0023】
本発明のアンモニア水を用いる合成方法においては、CO2を付与して反応を行うことが好ましい。CO2を付与する方法としては、例えば、密閉した反応系にCO2を導入する方法や、CO2をバブリングする方法を挙げることができる。CO2を付与することにより、CO2と水とアンモニウムイオン又はアンモニアによって(NH4)2CO3が生成され、ボロハイドライドと反応することによりアンモニアボランの合成が促進されると考えられる。
【0024】
[第2の発明]
また、本発明のアンモニアボランの合成方法は、水中で、ボロハイドライドとアンモニアとを反応させることを特徴とする。本発明の合成方法は、アンモニウム塩が不要な態様であり、水とアンモニウムイオン又はアンモニアとにより、アンモニアボランを合成することができる。ボロハイドライド等の原料、添加剤、反応条件等は、上記第1の発明と同様であるため、説明を省略する。
【実施例0025】
[実施例1]
水中又はアンモニア水中において、ボロハイドライドとアンモニウム塩とを反応させて、アンモニアボランの合成を行った。
【0026】
NaBH4粉末1.23g(0.04mol)を50mlの蒸留水に溶解してボロハイドライド水溶液を調製した。また、(NH4)2SO4粉末2.15g(0.016mol)を50mlの蒸留水、又は50mlの28質量%アンモニア水(濃アンモニア水)に溶解してアンモニウム塩水溶液を調製した。ボロハイドライド水溶液及びアンモニウム塩水溶液をフラスコ内で混合し(蒸留水の場合pH5~7、アンモニア水の場合pH12)、空気との反応を防止するため栓をして、水浴装置を用いて冷却しながら合成反応を行った。
【0027】
(アンモニアボランの合成によるホウ素成分の定量)
8時間反応させた後、
11B-NMRで測定し、ホウ素成分の定量を行った。
11B-NMRの測定結果の一例を
図1に示す。具体的には、得られた
11B-NMRの測定結果を用いて、下記式により、NH
3BH
3の生成率(収率)及び選択率を算出した。
【0028】
【0029】
【0030】
図2に、水中及びアンモニア水中での合成におけるアンモニアボランの生成率及び選択率を示す。
図2に示すように、水中及びアンモニア水中で合成を行った両者において、アンモニアボランが得られた。アンモニア水中で合成を行った場合、水中で合成した場合に比して、アンモニアボランの生成率及び選択率が向上した。
【0031】
[実施例2]
続いて、アンモニウム塩依存性を確認するため、異なるアンモニウム塩を用いて、アンモニア水中でアンモニアボランを合成した。
アンモニウム塩水溶液として、(NH
4)
2HPO
4粉末4.28g(0.032mol)、NH
4NO
3粉末2.59g(0.032mol)、(NH
4)
2CO
3粉末3.11g(0.032mol),NH
4Cl粉末1.73g(0.032mol)及び(NH
4)
2SO
4粉末4.28g(0.032mol)を、それぞれ50mlの28質量%アンモニア水に溶解したものを用いた。
ボロハイドライド水溶液として、NaBH
4粉末1.23g(0.04mol)を50mlの蒸留水に溶解したものを用いた。
その他、実施例1と同様にして、アンモニアボランの合成を行い、ホウ素成分の定量を行った。
その結果を
図3に示す。
【0032】
図3に示すように、全ての合成例において、2mol%を超える高い生成率及び選択率でアンモニウムボランが得られた。アンモニウム塩としてNH
4Clを用いた場合が最も高い生成率及び選択率であった。
【0033】
[実施例3]
続いて、アンモニア水中に添加剤を添加した場合のアンモニアボランの生成率及び選択率を検討した。
本発明の添加剤として、KH2PO4、Na2HPO4、リン酸緩衝液(KH2PO4+Na2HPO4)、NaHCO3、NaOHを用いた。
また、ボロハイドライドとしてNaBH4を用い、アンモニウム塩として(NH4)2SO4を用いた。
【0034】
KH2PO4は、KH2PO41.00gに100ml蒸留水を加えて溶液とした(pH=5.6)。
Na2HPO4は、Na2HPO47.19gに100ml蒸留水を加えて溶液とした(pH=8.8)。
【0035】
リン酸緩衝液は、KH2PO4 1.00g、Na2HPO4 7.19gに200ml蒸留水を加えて調製した(pH=6.8)。
NaHCO3は、NaHCO3 4.20gに100ml蒸留水を加えて溶液とした(pH=7.9)。
NaOHは、NaOH 4.92gに100ml蒸留水を加えて溶液とした(pH=12)。
【0036】
添加剤を添加したこと以外は、実施例2と同様にして、アンモニア水中でアンモニアボランの合成を行い、ホウ素成分の定量を行った。
その結果を
図4に示す。なお、参考として、水のみの例をあわせて示す。
【0037】
図4に示すように、KH
2PO
4を含むアンモニア水で合成した場合、最も高収率であり(17.1mol%)、選択率も高くなった(20.4mol%)。また、Na
2HPO
4も、アンモニア水単独で合成した場合に比して、収率及び選択率が向上した(収率13.9mol%、選択率17.8mol%))。さらに、その他の添加剤も、アンモニア水単独で合成した場合に比して、収率及び選択率が向上した。
【0038】
[実施例4]
各種アンモニア源を用いてアンモニアボランを合成した。
(4-1)
アンモニアとして、アンモニアガスを用いた。
NaBH4粉末1.23g(0.04mol)を10mlの蒸留水に溶解してボロハイドライド水溶液を調製した。また、(NH4)2SO4粉末2.15g(0.016mol)を20mlの蒸留水に溶解してアンモニウム塩水溶液を調製した。ボロハイドライド水溶液及びアンモニウム塩水溶液をフラスコ内で混合し、一部穴を開けたアルミホイルで蓋をして、アンモニアガス0.2MPaを導入しつつ、8時間静置した。
(4-2)
アンモニアとして、液体アンモニアを用いた。
NaBH4粉末1.23g(0.04mol)を10mlの蒸留水に溶解してボロハイドライド水溶液を調製した。また、(NH4)2SO4粉末2.15g(0.016mol)を10mlの蒸留水に溶解してアンモニウム塩水溶液を調製した。ボロハイドライド水溶液及びアンモニウム塩水溶液をフラスコ内で混合し、液体アンモニア1.5mlを添加し、一部穴を開けたアルミホイルで蓋をして、8時間静置した。
(4-3)
アンモニアとして、アンモニア水及び液体アンモニアを用いた。
NaBH4粉末1.23g(0.04mol)、(NH4)2SO4粉末2.15g(0.016mol)、28質量%アンモニア水1ml及び液体アンモニア1.5mlを金属セル内で8時間静置した。
(4-4)
アンモニウム塩として、(NH4)2SO4粉末2.15g(0.016mol)に代えて、(NH4)2CO3粉末2.15g(0.022mol)を用いたこと以外は、(4-3)と同様にして、アンモニアボランの合成を行った。
【0039】
(4-1)~(4-4)で合成したアンモニアボランについて、実施例1と同様にして、ホウ素成分の定量を行った。
その結果を
図5に示す。
【0040】
図5に示すように、液体アンモニアを用いた場合に、アンモニアボランの生成率及び選択率が上昇した。反応液中のアンモニア濃度が高い方が、アンモニアボランの合成が進行しやすいと考えられる。
【0041】
[実施例5]
NaBH
4粉末1.23g(0.04mol)を10mlの28質量%アンモニア水に溶解し、さらに、実施例3と同様のリン酸緩衝液10mlを添加した。一部穴を開けたアルミホイルで蓋をして、8時間静置した。
その結果を
図6に示す。
【0042】
図6に示すように、アンモニア水を用いることで、アンモニウム塩を用いなくとも、アンモニアボランが得られた。
【0043】
[実施例6]
NaBH4粉末1.23g(0.04mol)を50mlの蒸留水に溶解してボロハイドライド水溶液を調製した。また、28質量%アンモニア水溶液50mlを準備した。
【0044】
フラスコ内でボロハイドライド水溶液及びアンモニア水溶液を混合すると共に、栓をしてフラスコを密閉し、反応溶液にCO
2を吹き付けた。なお、CO
2は、炭酸水素ナトリウムとクエン酸を用いて発生させてゆっくりと導入した。
その結果を
図7に示す。
【0045】
図7に示すように、CO
2を導入することで、アンモニウム塩を用いなくとも、アンモニアボランが得られた。
【0046】
[実施例7]
NaBH4粉末1.23g(0.04mol)を50mlの蒸留水に溶解してボロハイドライド水溶液を調製した。また、28質量%アンモニア水溶液50mlを準備した。
また、添加剤溶液として、KH2PO41.00gに100ml蒸留水を加えてKH2PO4溶液(pH=5.6)を調製した。また、Na2HPO47.19gに100ml蒸留水を加えてNa2HPO4溶液を調製した(pH=8.8)。
【0047】
フラスコ内でボロハイドライド水溶液、アンモニア水溶液及び添加剤水溶液を混合すると共に、栓をしてフラスコを密閉し、実施例4と同様に、CO
2を吹き付けた。
その結果を
図8に示す。
【0048】
図8に示すように、アンモニア水溶液単独の場合(実施例6)に比して、KH
2PO
4又はKH
2PO
4を用いることにより、アンモニアボランの生成率及び選択率が向上し、アンモニアボランを効率的に合成できることが明らかとなった。