(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127067
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】廃液処理装置、触媒異常判定装置、及び触媒異常判定方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/04 20230101AFI20230906BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
C02F1/04 D ZAB
B01D53/86 280
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030615
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】598140434
【氏名又は名称】株式会社コンヒラ
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】越前 浩
【テーマコード(参考)】
4D034
4D148
【Fターム(参考)】
4D034AA19
4D034AA26
4D034BA01
4D034CA12
4D034CA21
4D148AA17
4D148AB01
4D148BA30Y
4D148BB02
4D148CC38
4D148CC52
4D148CD10
4D148DA01
4D148DA02
4D148DA06
4D148DA07
4D148DA13
4D148DA20
(57)【要約】
【課題】蒸発工程により生じた気体に含まれる有害物質などの特定物質の分解に用いられる触媒の異常を判定することが可能な廃液処理装置、異常判定装置、異常判定方法を提供する。
【解決手段】廃水処理装置10は、廃水を加熱する第1加熱装置22と、蒸気を含む気体を処理槽16から外部へ案内する排気ダクト14と、前記気体に含まれる特定物質と接触することにより前記特定物質の分解反応を促進する酸化触媒43と、酸化触媒43に関する温度を検知する温度センサー44,45と、温度センサー44,45によって検知される検知温度の所定時間当たりの低下量(低下率)が所定の温度閾値以上である場合に、酸化触媒43が異常であると判定する制御部100とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽に収容された廃液を加熱して前記廃液中の含有水分を蒸発させることにより前記廃液を濃縮する廃液処理装置であって、
前記処理槽に収容される前記廃液を加熱する廃液加熱部と、
前記廃液の加熱により前記処理槽内に生じた気体を前記処理槽から外部へ案内する排気ダクトと、
前記排気ダクトの内部に設けられ、前記気体に含まれる特定物質と接触することにより前記特定物質の分解反応を促進する触媒と、
前記触媒の温度又は前記触媒の温度と相関関係を有する相関温度を検知する温度検知部と、
前記触媒が予め定められた設定温度まで加熱された後に前記温度検知部によって検知される検知温度の低下率が所定の温度閾値以上である場合に、前記触媒が異常であると判定する異常判定部と、を備える廃液処理装置。
【請求項2】
前記排気ダクトにおいて前記触媒よりも前記気体の排気方向の上流側に設けられ、前記触媒を加熱する触媒加熱部を更に備え、
前記相関温度は、前記触媒加熱部の表面温度、又は前記排気ダクトにおいて前記触媒への入口付近の内部空間における触媒入口温度である、請求項1に記載の廃液処理装置。
【請求項3】
前記温度検知部は、
前記触媒加熱部の前記表面温度を検知する第1検知部と、
前記排気ダクトにおける前記触媒入口温度を検知する第2検知部と、を有し、
前記異常判定部は、
前記第1検知部によって検知される第1検知温度の前記低下率が予め定められた第1温度閾値以上であり、且つ、前記第2検知部によって検知される第2検知温度の前記低下率が予め定められた第2温度閾値以上である場合のみ、前記触媒が異常であると判定する、請求項2に記載の廃液処理装置。
【請求項4】
前記処理槽の上部空間の内圧を検知する内圧検知部を更に備え、
前記異常判定部は、
前記検知温度の前記低下率が前記所定の温度閾値以上であり、且つ、前記内圧検知部によって検知される検知圧力が所定の圧力閾値以上である場合のみ、前記触媒が異常であると判定する、請求項1から3のいずれかに記載の廃液処理装置。
【請求項5】
前記処理槽に収容された前記廃液の液面の変動を検知する液面検知部を更に備え、
前記異常判定部は、
前記検知温度の前記低下率が前記所定の温度閾値以上であり、且つ、前記液面検知部によって検知される前記液面の変動率が所定の変動閾値以上である場合のみ、前記触媒が異常であると判定する、請求項1から3のいずれかに記載の廃液処理装置。
【請求項6】
前記処理槽の上部空間の内圧を検知する内圧検知部と、
前記処理槽に収容された前記廃液の液面の変動を検知する液面検知部と、を更に備え、
前記異常判定部は、
前記検知温度の前記低下率が前記所定の温度閾値以上であり、且つ、前記内圧検知部によって検知される検知圧力が所定の圧力閾値以上であり、且つ、前記液面検知部によって検知される前記液面の変動率が所定の変動閾値以上である場合のみ、前記触媒が異常であると判定する、請求項1から3のいずれかに記載の廃液処理装置。
【請求項7】
前記異常判定部によって前記触媒が異常と判定された場合に、前記触媒が異常であることを示す異常情報を出力する異常情報出力部を更に備える、請求項1から6のいずれかに記載の廃液処理装置。
【請求項8】
処理槽に収容される廃液を加熱して前記廃液中の含有水分を蒸発させる廃液加熱部と、
前記廃液の加熱により前記処理槽内に生じた気体を前記処理槽から外部へ案内する排気ダクトと、
前記排気ダクトの内部に設けられ、前記気体に含まれる特定物質と接触することにより前記特定物質の分解反応を促進する触媒と、
前記触媒の温度又は前記触媒の温度と相関関係を有する温度を検知する温度検知部と、
前記触媒が予め定められた設定温度まで加熱された後に前記温度検知部によって検知される検知温度の低下率が所定の温度閾値以上である場合に、前記触媒が異常であると判定する異常判定部と、を備える触媒異常判定装置。
【請求項9】
処理槽に収容された廃液を加熱して前記廃液中の含有水分を蒸発させる廃液加熱工程と、
前記処理槽に連結された排気ダクトに設けられた触媒を予め定められた設定温度まで加熱する触媒加熱工程と、
前記触媒が前記設定温度まで加熱された後に前記触媒の温度又は前記触媒の温度と相関関係を有する温度の低下率を算出し、前記低下率が所定の温度閾値以上である場合に、前記触媒が異常であると判定する異常判定工程と、を含む触媒異常判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理槽に収容された廃液を加熱して含有水分を蒸発させることにより前記廃液を濃縮する廃液処理装置、触媒異常判定装置、及び触媒異常判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水溶性切削油などを含む難分解性の物質を含む廃液を処理する装置として、処理槽に貯留されている前記廃液を加熱して水分などを蒸発させることにより、前記廃液を濃縮する廃液処理装置が知られている(特許文献1参照)。この廃液処理装置は、処理層に収容された前記廃液を加熱することにより水などを蒸発させる蒸発工程と、蒸発によって前記廃液の液面の位置が所定水位まで低下した場合に処理槽に処理前の前記廃液を供給(補給)する供給工程と、が繰り返し行われて、前記廃液を濃縮する。前記供給工程では、前記処理槽に設けられた水位センサー(水位計)によって前記処理槽の液面の位置が検知され、その検知結果に基づいて前記廃液の供給が行われる。
【0003】
また、従来の廃液処理装置においては、前記蒸発工程による前記廃液の加熱時に、水だけでなく、水以外の物質も蒸発する。例えば、水よりも沸点の低い物質或いは水の沸点と同等の物質が前記廃液に含まれている場合は、これらの物質も水と一緒に蒸発することになる。水と共に蒸発する物質の一例として、沸点が101.1℃の1,4-ジオキサン(1,4-dioxane:C4H8O2)が挙げられる。1,4-ジオキサンは、常温において水や溶媒に溶解するため、従来から有機溶剤に添加される反応剤や安定剤として用いられており、工場などから回収される前記廃液に含まれていることも多い。なお、1,4-ジオキサンは、健康に対する影響として、人に対して発がん性のリスクがあると考えられており、有害物質と認定されている。
【0004】
したがって、前記廃液に含まれる1,4-ジオキサンなどの有害物質が蒸気とともに大気に排出されないようにするため、従来の廃液処理装置は、有害物質を分解処理する装置としての酸化触媒を備えている。前記酸化触媒は、前記蒸発工程で生じた蒸気を排出する排気ダクトに設けられている。このため、前記蒸発工程で生じた蒸気は、前記排気ダクト内の前記酸化触媒を通過し、その際に、1,4-ジオキサンが無害の二酸化炭素と水蒸気とに分解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の廃液処理装置では、廃液の濃縮処理が進むと、廃液に含まれる油成分が分離して、その油成分が液面に浮上して液面に油層が形成される。このため、処理槽の廃液が加熱されることによって前記油層の油成分が高温化して油煙が発生する場合がある。また、加熱によって廃液内で生じた気泡が処理槽の液面で弾けることにより、前油成分を含むオイルミストが発生する場合がある。これらの油煙やオイルミストは、蒸気とともに排気ダクトに送り込まれて、酸化触媒に到達し、酸化触媒に付着して、酸化触媒を目詰まりさせる原因となる。前記酸化触媒が目詰まりすると、処理槽の内圧が高まり、酸化触媒に付着した油分が内圧に耐え切れなくなり、爆発的な勢いで酸化触媒を通り抜けて大気に放出され、その勢いに伴い処理槽の廃液も排気ダクトを通って大気に噴出するという問題が生じる。
【0007】
本発明の目的は、蒸発工程により生じた気体に含まれる有害物質などの特定物質の分解に用いられる触媒の異常を判定することか可能な廃液処理装置、触媒異常判定装置、及び触媒異常判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明の一実施形態に係る廃液処理装置は、処理槽に収容された廃液を加熱して前記廃液中の含有水分を蒸発させることにより前記廃液を濃縮する廃液処理装置である。前記廃液処理装置は、前記処理槽に収容される前記廃液を加熱する廃液加熱部と、前記廃液の加熱により前記処理槽内に生じた気体を前記処理槽から外部へ案内する排気ダクトと、前記排気ダクトの内部に設けられ、前記気体に含まれる特定物質と接触することにより前記特定物質の分解反応を促進する触媒と、前記触媒の温度又は前記触媒の温度と相関関係を有する相関温度を検知する温度検知部と、前記触媒が予め定められた設定温度まで加熱された後に前記温度検知部によって検知される検知温度の低下率が所定の温度閾値以上である場合に、前記触媒が異常であると判定する異常判定部と、を備える。
【0009】
このように構成されているため、廃水の加熱蒸発工程において、触媒に異常が発生していることを的確に判定することかできる。
【0010】
(2) 本発明の一実施形態に係る廃液処理装置は、前記排気ダクトにおいて前記触媒よりも前記気体の排気方向の上流側に設けられ、前記触媒を加熱する触媒加熱部を更に備える。この場合、前記相関温度は、前記触媒加熱部の表面温度、又は前記排気ダクトにおいて前記触媒への入口付近の内部空間における触媒入口温度である。
【0011】
(3) 前記温度検知部は、前記触媒加熱部の前記表面温度を検知する第1検知部と、前記排気ダクトにおける前記触媒入口温度を検知する第2検知部と、を有する。この場合、前記異常判定部は、前記第1検知部によって検知される第1検知温度の前記低下率が予め定められた第1温度閾値以上であり、且つ、前記第2検知部によって検知される第2検知温度の前記低下率が予め定められた第2温度閾値以上である場合のみ、前記触媒が異常であると判定する。
【0012】
これにより、触媒の異常の判定精度が向上する。
【0013】
(4) 本発明の一実施形態に係る廃液処理装置は、前記処理槽の上部空間の内圧を検知する内圧検知部を更に備える。この場合、前記異常判定部は、前記検知温度の前記低下率が前記所定の温度閾値以上であり、且つ、前記内圧検知部によって検知される検知圧力が所定の圧力閾値以上である場合のみ、前記触媒が異常であると判定する。
【0014】
これにより、触媒の異常の判定精度が向上する。
【0015】
(5) 本発明の一実施形態に係る廃液処理装置は、前記処理槽に収容された前記廃液の液面の変動を検知する液面検知部を更に備える。この場合、前記異常判定部は、前記検知温度の前記低下率が前記所定の温度閾値以上であり、且つ、前記液面検知部によって検知される前記液面の変動率が所定の変動閾値以上である場合のみ、前記触媒が異常であると判定する。
【0016】
これにより、触媒の異常の判定精度が向上する。
【0017】
(6) 本発明の一実施形態に係る廃液処理装置は、前記処理槽の上部空間の内圧を検知する内圧検知部と、前記処理槽に収容された前記廃液の液面の変動を検知する液面検知部と、を更に備える。この場合、前記異常判定部は、前記検知温度の前記低下率が前記所定の温度閾値以上であり、且つ、前記内圧検知部によって検知される検知圧力が所定の圧力閾値以上であり、且つ、前記液面検知部によって検知される前記液面の変動率が所定の変動閾値以上である場合のみ、前記触媒が異常であると判定する。
【0018】
これにより、触媒の異常の判定精度が向上する。
【0019】
(7) 本発明の一実施形態に係る廃液処理装置は、前記異常判定部によって前記触媒が異常と判定された場合に、前記触媒が異常であることを示す異常情報を出力する異常情報出力部を更に備える。
【0020】
これにより、ユーザーは、廃液処理装置において触媒が異常であることを早期に把握することができる。
【0021】
(8) 本発明の他の実施形態に係る触媒異常判定装置は、処理槽に収容される廃液を加熱して前記廃液中の含有水分を蒸発させる廃液加熱部と、前記廃液の加熱により前記処理槽内に生じた気体を前記処理槽から外部へ案内する排気ダクトと、前記排気ダクトの内部に設けられ、前記気体に含まれる特定物質と接触することにより前記特定物質の分解反応を促進する触媒と、前記触媒の温度又は前記触媒の温度と相関関係を有する相関温度を検知する温度検知部と、前記触媒が予め定められた設定温度まで加熱された後に前記温度検知部によって検知される検知温度の低下率が所定の温度閾値以上である場合に、前記触媒が異常であると判定する異常判定部と、を備える。
【0022】
(9) 本発明のその他の実施形態に係る触媒異常判定方法は、処理槽に収容された廃液を加熱して前記廃液中の含有水分を蒸発させる廃液加熱工程と、前記処理槽に連結された排気ダクトに設けられた触媒を予め定められた設定温度まで加熱する触媒加熱工程と、前記触媒が前記設定温度まで加熱された後に前記触媒の温度又は前記触媒の温度と相関関係を有する相関温度の低下率を算出し、前記低下率が所定の温度閾値以上である場合に、前記触媒が異常であると判定する異常判定工程と、を含む。
【0023】
なお、本発明は、前記触媒異常判定方法の各工程(各ステップ)を一又は複数のプロセッサー或いはコンピュータにより実行する方法、又は、この方法における各工程(各ステップ)を一又は複数のプロセッサー或いはコンピュータに実行させるためのプログラム、又は、このようなプログラムを非一時的に記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として捉えることもできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、蒸発工程により生じた気体に含まれる有害物質などの特定物質の分解に用いられる触媒の異常を判定することか可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る廃水処理装置10の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、廃水処理装置10の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、廃水処理装置10において実行される触媒異常判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、従来装置で行われる廃水蒸発工程における触媒入口温度Ty、ヒーター表面温度Tx、廃液温度、処理槽の液面レベルの変動を示すグラフである。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る廃水処理装置10で行われる廃水蒸発工程において、触媒入口温度Ty、ヒーター表面温度Tx、廃液温度、処理槽の液面レベルの変動を示すグラフである。
【
図6】
図6は、廃水処理装置10において実行される触媒異常判定処理の手順の他の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0027】
[廃水処理装置10]
図1に示す廃水処理装置10(本発明の廃液処理装置の一例)は、工場などから排出される廃水(廃液)を処理するものであり、具体的には、前記廃水から主に水分を蒸発させて前記廃水を濃縮化するとともに、前記廃水から生じた気体に含まれている特定物質を触媒によって分解反応させて無害の物質に分解浄化する。
【0028】
以下においては、廃水処理装置10における処理対象として、工場や事業所などで使用された後に廃棄される液体であって、不純物や有害物質などによって汚染された廃水を例示する。例えば、前記廃水には、金属の切削加工の際に潤滑及び冷却に用いられた使用済みの切削油剤や使用済みの油などの油成分(難分解性物質の一例)、1,4-ジオキサン、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどの揮発性有機化合物(VOC)などを含む。
【0029】
ここで、切削油剤は、JIS K 2241に定められるA1種の水溶性切削油剤であり、これは、水よりも比重が小さい。また、廃水には、前記切削油剤だけでなく、切削加工によって生じた金属粉も含まれる。なお、廃水処理装置10による処理対象は、A1種の水溶性切削油剤を含む廃水に限られず、例えば、他の水溶性切削油剤(A2種及びA3種)、或いは、JIS K 2241に定められる不水溶性切削油剤(N1~N4種)を含む廃水であってもよい。また、前記廃水は、有機廃水、含油廃水、医薬・食品廃水、メッキ廃水、塗装廃水など、様々な分野又は業種で使用された廃液を含む。
【0030】
図1に示すように、廃水処理装置10は、大別すると、廃水濃縮装置11と、分解処理装置12と、廃水処理装置10の動作を制御する制御装置13(
図2参照)と、を有する。
【0031】
なお、本実施形態では、本発明の廃液処理装置の一例として、廃水処理装置10を例示して説明するが、例えば、本発明の廃液処理装置は、工場などから排出される水分を含む廃油(廃液)などを処理する廃油処理装置であってもよい。
【0032】
[廃水濃縮装置11]
廃水濃縮装置11は、処理槽16に収容された廃水を加熱することにより水分を蒸発させて前記廃水を濃縮する。
図1に示すように、廃水濃縮装置11は、主として、処理槽16(本発明の処理槽の一例)と、水位槽18と、第1加熱装置22(本発明の廃液加熱部の一例)と、第2加熱装置23(本発明の触媒加熱部の一例)と、送気ブロアー24と、各種センサー32~37と、消泡剤供給部27と、供給ポンプ61と、排出ポンプ62と、を備える。
【0033】
処理槽16は、処理対象である廃水を収容する。処理槽16の内部に、所定量の廃水が貯留される。廃水を濃縮処理する工程においては、処理槽16における廃水の水位が後述する上限水位H1となるように、廃水が処理槽16に供給される。つまり、前記上限水位H1は、廃水を濃縮処理する工程において廃水が処理槽16に貯留される上限水位である。
【0034】
本実施形態では、処理槽16に貯留されて濃縮処理される廃水は、例えば、工場などにおいて工業生産に水が使用され、その使用後に廃棄される汚水(所謂工業廃水)である。前記廃水は、上述したように、JIS K 2241に定められるA1種の水溶性切削油剤(以下、単に「水溶性切削油剤」と称する場合がある。)、前記金属粉、及び水を含むものである。A1種の水溶性切削油剤は、水に溶け難い疎水性物質の一例である油成分(鉱油又は脂肪油など)と、乳化剤としての界面活性剤とを含み、水に希釈されることにより乳化して乳白色のエマルション(乳濁液)となる。
【0035】
処理対象である前記廃水には、前記水溶性切削油剤のほかに、パラフィンや、防錆油添加剤、精製鉱物油、界面活性剤、潤滑性向上用の添加剤、1,4-ジオキサンなどの揮発性有機化合物(VOC)などが含まれている場合がある。これらのうち、パラフィンや、防錆油添加剤、精製鉱物油、界面活性剤、潤滑性向上用の添加剤は、後述の酸化触媒43による分解が困難な難分解性の物質である。前記廃水における水の含有率は、概ね90%~95%程度であり、そのため、前記廃水の粘性は比較的低い。なお、1,4-ジオキサンなどの揮発性有機化合物(VOC)は、後述の酸化触媒43によって分解可能な物質であり、本発明の特定物質の一例である。
【0036】
処理対象である廃水は、別途設置された廃水タンク81に貯留されている。前記廃水における水溶性切削油剤などの難分解性物質の含有量や、水の含有量、1,4-ジオキサンなどの揮発性有機化合物(VOC)の含有量は、廃水の回収元である工場や事業所ごとによって異なる。したがって、工場や事業所から回収される濃縮処理対象の廃水の粘性は、回収元それぞれによって異なり、粘性が高い廃水が回収される場合もあれば、粘性の低い廃水が回収される場合もある。そのため、廃水タンク81に貯留される廃水の状態(粘性の程度や、難分解性物質の含有量など)は廃水タンク81に工場などから回収された廃水が追加されるたびに変動する。
【0037】
廃水タンク81は、配管51によって処理槽16に接続されている。配管51には、電気駆動によって開閉される電動弁51Aと、供給ポンプ61とが設けられている。供給ポンプ61は、廃水タンク81と電動弁51Aとの間に設けられている。供給ポンプ61は、必要に応じて廃水タンク81から処理槽16に廃水を供給するための電動ポンプである。電動弁51A及び供給ポンプ61は、制御装置13の制御部100(
図2参照)によって駆動制御される。電動弁51Aが制御部100によって制御されて開けられ、そして、供給ポンプ61が制御部100によって駆動されることにより、廃水タンク81から処理槽16に廃水が供給される。また、電動弁51Aが閉じられて、供給ポンプ61の駆動が停止されると、廃水の供給が停止される。なお、電動弁51A及び供給ポンプ61によって、廃水タンク81の廃水を処理槽16に供給する本発明の廃液供給部が実現される。
【0038】
処理槽16の底部には、多数の小孔が形成されたバブリング管26が設けられている。バブリング管26は、エアー配管55によって、外部に設置された圧縮空気源としてのエアータンク38(圧縮空気供給部)と接続されている。エアー配管55に設けられた電磁弁55Aが動作されて圧縮空気がエアー配管55に供給されると、バブリング管26から無数の気泡が生じ、処理槽16内の廃水が前記気泡の上昇流によって撹拌される。なお、前記圧縮空気源は、エアコンプレッサーであってもよい。
【0039】
第1加熱装置22は、処理槽16内に貯留された廃水を加熱する。廃水が加熱されることにより、廃水中に含まれる含有水分を蒸発させることができる。第1加熱装置22は、例えば、処理槽16に配置される燃焼炉221と、燃焼炉221に熱を放射するバーナー222と、燃料ガスの量を調整する均圧弁223と、バーナー222に空気を供給するブロアー224と、バーナー222に供給される空気の供給量を調整する電動弁225と、を有する。燃焼炉221はパイプ状に形成されており、処理槽16の内部に設けられている。燃焼炉221は、処理槽16の内部において高さ方向の中間位置よりも下方に設けられており、処理槽16に所定量の廃水が貯留された状態でその全部が液体中に配置される。バーナー222は、燃焼炉221内で燃料ガスが燃焼して、熱を供給する。燃焼後の排気ガスは、燃焼炉221から、処理槽16に接続された排気管31に送出され、排気管31から外部へ排出される。
【0040】
バーナー222には、燃料ガスを供給するための配管56が接続されており、また、配管56とは別に、ブロアー224からの空気を供給するための配管57が接続されている。電動弁225は、配管57に設けられている。電動弁225は、制御装置13の制御部100(
図2参照)によって駆動制御される。具体的には、制御部100が駆動信号を電動弁225に出力すると電動弁225が開けられ、前記駆動信号の出力を停止すると、電動弁225が閉じられる。
【0041】
均圧弁223は配管56に設けられている。また、均圧弁223には、配管57における電動弁225の二次側から分岐した分岐配管58が接続されている。均圧弁223は、分岐配管58における空気圧と概ね同じ圧力となるように配管56におけるガス圧を調整する。
【0042】
ブロアー224は、電気駆動される送風機である。第1加熱装置22は、ブロアー224を駆動制御するブロア制御部226を有する。ブロア制御部226は、インバーター制御によってブロアー224を駆動する。制御部100(
図2参照)がブロア制御部226に所定風量に応じた駆動信号を出力すると、ブロア制御部226は、所定風量に応じた周波数信号をブロアー224出力して、ブロアー224の駆動を制御する。なお、前記駆動信号の出力レベルが変更されることにより、前記周波数信号の周波数が変更されて、ブロアー224の風量が調整される。
【0043】
第1加熱装置22は、所謂均圧弁方式によって燃焼を制御して、廃水の加熱を制御する。第1加熱装置22では、ブロア制御部226によって所定風量となるように前記周波数信号がブロアー224に出力されると、ブロアー224から配管57に空気が供給される。そして、ブロアー224の風量が調整されると、配管57,58における空気圧が変動し、また、均圧弁223は配管57,58の空気圧に応じた開度に調整される。これにより、ブロアー224から供給される風量が調整されることにより、バーナー222に供給される空気と燃料ガスとの空燃比を適正値に維持しつつ、バーナー222の燃焼量を調整することが可能である。つまり、第1加熱装置22は、ブロアー224の風量が制御されることにより、処理槽16内に貯留された廃水の加熱を制御することが可能である。
【0044】
なお、第1加熱装置22は、前記均圧弁方式によって加熱する構成のものに限られない。例えば、第1加熱装置22は、均圧弁223に替えて配管56に電動弁を設け、この電動弁の開度をブロアー224の風量に応じて制御する方式によって加熱するものであってもよい。
【0045】
また、第1加熱装置22は、処理槽16内の廃水を加熱するものであれば、如何なる構成のものであってもよく、バーナー222や燃焼炉221に替えて、電気ヒーターを用いたものであってもよい。この場合、制御部100から前記電気ヒーターを駆動させる駆動信号が出力され、この駆動信号のレベルが調整されることにより、第1加熱装置22は、処理槽16内に貯留された廃水の加熱を制御する。
【0046】
廃水濃縮装置11に排気ダクト14が設けられている。排気ダクト14は、第1加熱装置22による加熱によって処理槽16に生じた蒸気などの気体を外部へ案内するダクト部材である。排気ダクト14は、第1ダクト14Aと、連結ダクト14Bと、第2ダクト14Cとを含む。
【0047】
第1ダクト14Aは、処理槽16の上面の開口から上方へ延出するダクト部材である。連結ダクト14Bは、第1ダクト14Aに連結され、水平方向へ延びるダクト部材である。第2ダクト14Cは、連結ダクト14Bに連結され、上方へ延出するダクト部材である。
【0048】
送気ブロアー24は、電気駆動される送風機である。送気ブロアー24は、第1加熱装置22による加熱によって処理槽16内の廃水から生じた蒸気を処理槽16から外部へ向けて送出する。送気ブロアー24は、配管25によって、排気ダクト14の一部である第1ダクト14Aに連結されている。第1ダクト14Aは、処理槽16の上面から上方へ延出するダクト部材である。送気ブロアー24から送出された空気は、配管25を通じて第1ダクト14Aの内部に送り込まれる。本実施形態では、送気ブロアー24によって送出された空気は、配管25によって、第1ダクト14Aの内部に上向きの気流を生じさせる方向へ送り込まれる。第1ダクト14Aに送り込まれた空気による気流によって、処理槽16で発生した蒸気等を含む気体が連結ダクト14Bへ導かれ、これにより、前記気体が処理槽16の外部に排出される。なお、連結ダクト14Bに入り込んだ前記気体は、連結ダクト14Bを通って、第2ダクト14Cに設けられた分解処理装置12に送り込まれる。
【0049】
第2加熱装置23は、連結ダクト14Bに設けられている。第2加熱装置23は、反応性を良好にするために酸化触媒43を加熱する触媒加熱部の一例である。本実施形態では、第2加熱装置23は、連結ダクト14Bを通過する気体(蒸気及び空気)を加熱し、この気体が酸化触媒43に送り込まれることによって、間接的に酸化触媒43が加熱される。
【0050】
第2加熱装置23は、例えばハロゲンヒーターなどの電気ヒーター23A(触媒加熱部)と、電気ヒーター23Aを駆動させるドライバー回路を含む第2加熱制御部23Bとが一体に構成されたユニットタイプのものである。電気ヒーター23Aは、連結ダクト14Bの内部に設けられており、第2加熱制御部23Bは、連結ダクト14Bの外部に配置されている。第2加熱装置23は、制御部100(
図2参照)によって駆動されることによって連結ダクト14B内の気体を加熱する。具体的には、制御部100から駆動信号が第2加熱制御部23Bに送られると、第2加熱制御部23Bは、前記駆動信号に基づいて電気ヒーター23Aを駆動させて加熱制御する。なお、第2加熱装置23は、連結ダクト14B内の気体を加熱するものであれば、抵抗加熱方式、赤外線加熱方式、マイクロ波加熱方式、 誘電加熱方式、誘導加熱方式のいずれの加熱方式のものであってもよい。
【0051】
第2加熱装置23によって加熱された気体は、後述する分解処理装置12が備える酸化触媒43に送り込まれる。加熱された気体が酸化触媒43の入口側の表面に到達し、その後、酸化触媒43の内部を通過することにより、酸化触媒43や酸化触媒43の入口付近が当該気体によって加熱される。本実施形態では、第2加熱制御部23Bは、酸化触媒43の入口付近の温度(以下、触媒入口温度という。)が予め定められた設定温度以上の規定温度となるように、電気ヒーター23Aを加熱制御する。
【0052】
具体的には、第2加熱制御部23Bは、分解処理装置12に設けられた後述の温度センサー44による検知温度(触媒入口温度)が前記設定温度以上の前記規定温度となるように、連結ダクト14Bにおいて電気ヒーター23Aを加熱する。本実施形態では、前記設定温度は、例えば350℃であり、前記規定温度は、例えば、酸化触媒43における酸化分解処理に適した400℃である。
【0053】
なお、酸化触媒43を前記規定温度となるように加熱する加熱装置(触媒加熱部)の一例として第2加熱装置23を例示するが、例えば、酸化触媒43の入口付近に電気ヒーター23Aとは異なる電気ヒーターを設け、当該電気ヒーターを温度センサー44の検知温度に基づいて加熱制御してもよい。
【0054】
第1ダクト14Aには、デミスター47が設けられている。デミスター47は、第1ダクト14Aを通る気体に含まれているミストや液滴、泡を捕集して分離除去する分離装置であり、ワイヤーメッシュなどで構成されている。デミスター47のメッシュ部に補足されたミストや液滴、泡は、液状に戻されるとデミスター47から離れて落下し、処理槽16に戻される。
【0055】
消泡剤供給部27は、消泡剤を収容する収容ボックス30と、電動弁29Aとを備える。電動弁29Aは、収容ボックス30と処理槽16とを連結する配管29に設けられている。後述の泡センサー33によって処理槽16内に泡が発生したことが検知されると、電動弁29Aが開けられて、収容ボックス30から配管29を通じて前記消泡剤が処理槽16内に投入(供給)される。消泡剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤や有機系消泡剤などが適用可能である。しかし、コスト面において、水道源又は水タンクなどの水供給源から供給される水を消泡剤として用いることが好ましい。なお、消泡剤として水を用いる場合は、配管29の端部に噴霧ノズルを設け、前記噴霧ノズルから処理槽16内の液面へ向けて霧状の水が噴霧される。
【0056】
また、処理槽16には、水道源又は水タンクなどの水供給源(不図示)から延びる給水管28が接続されている。給水管28には、水の供給又は停止をするための電動弁28Aが設けられている。電動弁28Aは、例えば電動ボールバルブである。電動弁28Aの開閉が制御装置13の制御部100によって制御されることにより、必要に応じて、給水管28から処理槽16に水が供給される。
【0057】
排出ポンプ62は、電動ポンプである。排出ポンプ62は、必要に応じて、処理槽16に貯留されている廃水を処理槽16の外部に排出する。本実施形態では、排出ポンプ62は、濃縮処理後の処理槽16内の濃縮水を外部タンク39に送る用途に用いられる。処理槽16の底部に配管54が接続されており、この配管54は、外部タンク39に接続されている。排出ポンプ62は、配管54に設けられている。
【0058】
また、配管54には、排出ポンプ62よりも上流側に、電気駆動によって開閉される電動弁54Aが設けられている。電動弁54Aが制御部100(
図2参照)による制御によって開けられ、そして、排出ポンプ62が制御部100によって駆動されることにより、処理槽16内の廃水(濃縮水)が外部タンク39に排出される。また、電動弁54Aが閉じられて、排出ポンプ62の駆動が停止されると、前記廃水の排出が停止する。
【0059】
水位槽18は、処理槽16の側方に並ぶように併設されており、処理槽16と同様に、内部に廃水を貯留可能に形成されている。水位槽18は、大気と連通する開口やダクト等を有しておらず、密閉型に形成されている。水位槽18は、後述するように、内部に廃水を貯留させ、その廃水の水位を測定する用途に用いられる。水位槽18は、高さ方向のサイズが処理槽16と同じであり、高さ方向において処理槽16と同じ位置に設置されている。水位槽18は、廃水の水位を測定する用途に適用可能な容量であれば十分であり、本実施形態では、処理槽16に比べて容量が小さい。
【0060】
図1に示すように、処理槽16の下部と水位槽18の下部とが、両槽間で廃水が流通可能なように、連結管52によって連結されている。このように、処理槽16及び水位槽18それぞれが連結管52によって連結されているため、処理槽16に廃水が供給されると、その廃水が水位槽18に行き渡り、水位槽18における廃水の液面の位置(水位)が処理槽16内の廃水の液面の位置と同じ高さとなる。
【0061】
また、処理槽16の上部と水位槽18の上部とが連結管53で連結されており、処理槽16の上部の空気層と水位槽18の上部の空気層とが連結管53によって連通している。したがって、水位槽18は、連結管53、処理槽16、及び排気ダクト14を介して、大気と連通している。
【0062】
水位槽18には、液面センサー34が設けられている。液面センサー34は、水位槽18に貯留されている前記廃水の液面の位置(水位)を検知するものであり、具体的には、液面へ向けて送出して液面で反射したパルス信号を受信することにより、液面の位置(水位)を検知するガイドパルス式のセンサーである。液面センサー34は、廃水の液面が、水位槽18に定められた前記上限水位H1、前記上限水位H1よりも低い補給水位H2、或いは、前記補給水位H2よりも更に低い下限水位H3のいずれかに達したことを検知するために用いられる。なお、液面センサー34は、例えば、フロートタイプのものや、静電容量を用いたものであってもよい。
【0063】
本実施形態では、前記上限水位H1は、処理槽16に規定量(例えば500リットル)の廃水が貯留されたときの水位に定められている。また、前記補給水位H2は、処理槽16に前記規定量の90%の廃水が貯留されたときの水位に定められている。前記補給水位H2は、処理槽16の廃水が蒸発して減少したことにより、廃水の補給が必要か否かを判定するために用いられる水位である。前記下限水位H3は、処理槽16内の濃縮水が排出されて、処理槽16内が空か否かを判定するために用いられる水位である。
【0064】
液面センサー34は、廃水の液面の位置に対応する検知信号を制御部100(
図2参照)に送る。制御部100は、その検知信号のレベルが前記上限水位H1や前記補給水位H2に対応するレベル値であるか否かによって、液面が前記上限水位H1、或いは前記補給水位H2に達したか否かを判定する。
【0065】
処理槽16には、温度センサー32、泡センサー33(泡検知部の一例)、温度センサー35、圧力センサー36(本発明の内圧検知部の一例)、液面センサー37(本発明の液面検知部の一例)などの各種のセンサーが設けられている。
【0066】
温度センサー32は、処理槽16に収容されている廃水の温度を検出するものであり、例えば、測温抵抗体、熱電対、或いはサーミスタなどで構成されている。温度センサー32は、検出対象の温度に応じたセンサー信号を制御装置13の制御部100に送る。制御部100は、そのセンサー信号に基づいて検出対象の温度を算出し、その温度情報を制御装置13の表示部106(
図2参照)に表示する。
【0067】
また、第1加熱装置22は、温度センサー32によって検出された温度が予め定められた設定温度を超えた場合に、加熱を停止する。前記設定温度の情報は、EEPROM104に記憶されている。本実施形態では、前記設定温度は110℃に設定されている。検出温度が110℃を超えた場合は、廃水の濃縮化が進み、廃水が異常な温度まで昇温していることを意味する。したがって、この場合は、これ以上の濃縮処理を停止するため、第1加熱装置22は加熱を停止する。
【0068】
泡センサー33は、処理槽16に貯留されている廃水の液面に発生した泡の有無を検知するものである。処理槽16の廃水が加熱されると、加熱により生じる気泡によって廃水の液面が泡立つ場合がある。廃水の粘性が高ければ高いほど、泡が発生しやくすなる。泡センサー33は、このように発生した泡の有無を検知する。泡センサー33は、例えば、処理槽16の上部の空間に所定距離を隔てて離間された発光素子及び受光素子により構成されている。前記発光素子及び前記受光素子は、前記上限水位H1よりも少し上方の位置、具体的には、前記上限水位H1よりも150mm高い位置に設けられている。
【0069】
前記発光素子は、例えば発光ダイオードである。前記受光素子は、例えばフォトトランジスタである。発光素子から受光素子に光が照射されており、その照射光に応じた電圧信号が制御部100(
図2参照)に送られる。廃水の液面に生じた泡が増加して、その泡が前記発光素子から前記受光素子に至る光路に到達すると、光路を通る前記光が遮られ、前記電圧信号の電圧レベルが低下する。制御部100は、前記電圧レベルが所定の閾値未満になった場合に、液面に泡が生じていると判定する。発生した泡が液面から離れて第1ダクト14A及び連結ダクト14Bを通って分解処理装置12に送られると、分解処理装置12が停止したり故障したりするおそれがある。そのため、制御部100は、泡が生じていると判定した場合に、電動弁29Aを制御して、消泡剤供給部27から処理槽16に消泡剤を供給する。
【0070】
温度センサー35は、処理槽16の内部の温度、具体的には、処理槽16の上部の空間内の気体の温度を検知する。温度センサー35は、例えば、測温抵抗体などで構成されている。温度センサー35は、検知対象の温度に応じたセンサー信号を制御部100(
図2参照)に送る。制御部100は、そのセンサー信号に基づいて検知対象の温度を算出し、その温度情報を表示部106(
図2参照)に表示する。
【0071】
圧力センサー36は、処理槽16の上面に設けられている。圧力センサー36は、処理槽16の上部の空間(上部空間)の内圧(検知圧力)を検知する。詳細には、処理槽16に廃水が貯留されている状態で、液面から上側の空間の圧力を検知する。圧力センサー36は、検知対象の圧力に応じたセンサー信号を制御部100(
図2参照)に送る。制御部100は、そのセンサー信号に基づいて検知対象の圧力を算出し、その圧力情報を表示部106(
図2参照)に表示する。
【0072】
液面センサー37は、処理槽16に収容された廃水の液面の変動を検知する。液面センサー37は、例えば、フロートタイプのセンサーであり、上限水位H1から補給水位H2の範囲内において、廃水の液面の変動を検知する。液面の変動に伴いフロート37Aが上下することにより、フロートの上下方向の位置に応じた信号を出力する。液面センサー37は、廃水の液面に応じたセンサー信号を制御部100(
図2参照)に送る。制御部100は、そのセンサー信号に基づいて液面の位置や、液面の変動量を算出する。なお、液面センサー37は、廃水の液面の変動を検知可能なものであれば、いかなる検知方式のものであってもよい。
【0073】
[分解処理装置12]
分解処理装置12は、排気ダクト14において連結ダクト14Bよりも下流側に設けられている。具体的には、分解処理装置12は、第2ダクト14Cに設けられている。分解処理装置12は、筒状の筐体41と、酸化触媒43(本発明の触媒の一例)と、三つの温度センサー42,44,45と、を備えている。温度センサー42,44は、本発明の温度検知部の一例である。
【0074】
筐体41は、鉛直方向に延びる断面円形の筒形状に形成されている。筐体41は、第2ダクト14Cの一部を構成しており、本実施形態では、第2ダクト14Cと概ね同形状に形成されている。
【0075】
筐体41の一方側(下側)の開口(入口)に、連結ダクト14Bから第2ダクト14Cに案内された気体が流入される。連結ダクト14Bから送られてきた気体(蒸気)は、筐体41の入口からその内部を通って上方へ案内されて、筐体41の出口から流出される。
【0076】
酸化触媒43は、排気ダクト14における気体の排出経路に設けられており、本実施形態では、筐体41の内部に設けられている。酸化触媒43は、筐体41を通る気体に含まれる特定物質と接触することにより前記特定物質の分解反応を促進する触媒である。酸化触媒43は、例えば、白金を主成分とする金属触媒であり、ハニカム構造を有する所謂メタルハニカム触媒である。酸化触媒43は、筐体41の内部に隙間なく設けられており、筐体41の入口に流入した気体は、酸化触媒43を通って出口から流出する。連結ダクト14Bから送り込まれた蒸気を含む気体が酸化触媒43のハニカム構造の内部を通ることによって、その気体に含まれている1,4-ジオキサンや、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどの揮発性有機化合物(VOC)などの有害物質(いずれも特定物質)と酸化触媒43とが酸化反応して、当該物質が二酸化炭素と水蒸気に分解される。
【0077】
なお、酸化触媒43は、前記特定物質と接触して当該特定物質の分解反応を促進する触媒であれば、どのような構成の触媒であっても適用可能である。
【0078】
温度センサー44は、酸化触媒43の温度と相関関係を有する温度(相関温度)を検知するセンサーである。温度センサー44は、筐体41において酸化触媒43の入口側の表面の近傍の内部空間における温度(触媒入口温度:第2検知温度)を検知するものであり、本発明の第2検知部の一例である。詳細には、温度センサー44は、筐体41の入口付近における空間内の気体の温度を検知する。前記触媒入口温度は、酸化触媒43の温度変化に対して相関関係を有する温度であるといえる。
【0079】
温度センサー45は、酸化触媒43の温度と相関関係を有する温度を検知するセンサーである。温度センサー45は、酸化触媒43の出口側の温度(触媒出口温度)を検知するものである。詳細には、温度センサー45は、筐体41の出口付近における空間内の気体の温度を検知する。
【0080】
温度センサー42は、酸化触媒43の温度と相関関係を有する温度(相関温度)を検知するセンサーである。温度センサー42は、第2加熱装置23の電気ヒーター23Aの表面の一部である被検知部23A1の温度(以下、ヒーター表面温度という。)を検知するものであり、本発明の第1検知部の一例である。前記被検知部23A1は、電気ヒーター23Aの表面において最も酸化触媒43に近い部分であり、被検知部23A1の温度(ヒーター表面温度)は、酸化触媒43の温度変化に対して相関関係を有する温度であるといえる。なお、前記ヒーター表面温度は、本発明の第1検知温度に相当する。
【0081】
温度センサー42,44,45は、検知対象の温度に応じたセンサー信号を制御部100(
図2参照)に送る。制御部100は、そのセンサー信号に基づいて検知対象の温度を算出し、必要に応じて、その温度情報を表示部106(
図2参照)に表示する。
【0082】
[制御装置13]
制御装置13は、第1加熱装置22による処理槽16内の廃水の加熱の制御、第2加熱装置23による気体(蒸気又は空気)の加熱の制御、供給ポンプ61等による処理槽16への廃水の供給又は補給の制御、排出ポンプ62等による濃縮後の廃水(濃縮水)の排出の制御、消泡剤供給部27の電動弁29Aによる消泡剤の供給の制御、電動弁28Aによる水の供給の制御などを行う。
【0083】
また、制御装置13は、温度センサー44,45の検出値に基づいて、酸化触媒43が異常状態であるか否かを判定する異常判定処理(
図3、
図6参照)を行う。前記異常判定処理は、制御装置13の制御部100によって実行される。なお、前記異常判定処理を行う制御部100は、本発明の異常判定部の一例である。
【0084】
ところで、廃水濃縮装置11において濃縮処理が進むと、廃水に含まれる油成分(難分解性物質)が水成分から分離して、難分解性物質が液面に浮上して液面に油層が形成される場合がある。この場合、処理槽16の廃水が加熱されることによって前記油層の油成分が高温化して油煙や悪臭が発生する。また、加熱によって廃水内部から生じた気泡が処理槽16の液面で弾けることにより、前記油層の油成分が周囲に飛び散ったり、油成分を含むオイルミストやオイル成分を含む泡が蒸気とともに、排気ダクト14を通じて分解処理装置12に送り込まれる場合がある。このような油煙やオイルミスト、泡が分解処理装置12の酸化触媒43の表面に付着すると、酸化触媒43の内部における気体の通り道が塞がれ、酸化触媒43が目詰まりする。酸化触媒43が目詰まりすると、排気ダクト14の継ぎ目の隙間から油成分がダクト外に漏れ出るおそれがある。また、処理槽16の内圧が高まり、酸化触媒43に付着した油成分などが前記内圧に耐え切れなくなり、爆発的な勢いで酸化触媒43の内部の通り道を通り抜けて大気に放出されたり、その勢いに伴い処理槽16内の廃液が排気ダクト14を通って大気に噴出したりするという問題が生じる。
【0085】
本実施形態の廃水処理装置10では、前記異常判定処理が行われることにより、処理槽16の廃水を蒸発させる工程において油成分などの難分解性物質が酸化触媒43に付着して酸化触媒43が目詰まりするなどの異常な状態になった場合に、酸化触媒43の当該異常を適切に判定することが可能である。
【0086】
図2に示すように、制御装置13は、その内部に、シーケンサーや制御ボードなどの制御部100などが設けられている。また、制御装置13の筐体には、液晶モニターなどの表示部106や、動作指示を入力するための操作部107などが設けられている。
【0087】
制御部100に、記憶部105、表示部106、操作部107、各種センサー32~37、温度センサー42,44,45、第1加熱装置22、及び第2加熱装置23などが接続されており、互いに信号やデータの相互通信が可能に構成されている。表示部106には、各センサーの出力値に基づいて、処理槽16内の廃水の水位や、廃水の温度、処理槽16内の圧力、酸化触媒43の入口の温度(触媒入口温度)、酸化触媒43の出口の温度(触媒出口温度)などが表示される。
【0088】
制御部100は、CPU101、ROM102、RAM103、EEPROM104(登録商標)等を有するコンピューターであり、廃水処理装置10を統括的に制御する。ROM102に制御プログラムが記憶されており、CPU101が前記制御プログラムを読み出した実行することによって、後述の異常判定処理(
図3、
図6参照)が実行される。
【0089】
[異常判定処理]
次に、
図3のフローチャートを参照して、処理槽16内の廃水を加熱して蒸発させる蒸発工程において実行される異常判定処理の手順の一例について説明するとともに、本発明の異常判定方法について説明する。前記異常判定処理は、廃水処理装置10の制御部100によって実行される。ここで、
図3は、廃水処理装置10の制御部100によって実行される異常判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。図中において、S11、S12、・・・は処理手順(ステップ)の番号を表している。各ステップにおける処理は、制御部100によって、より詳細にはCPU101がROM102内の制御プログラムを実行することによって行われる。
【0090】
なお、以下においては、説明の便宜上、処理槽16及び水位槽18それぞれが空の状態であり、各電動弁28A,29A,51A,54A,225が閉状態であり、電磁弁55Aが閉位置にある場合に、ステップS11以降の処理が行われる例について説明する。
【0091】
ステップS11では、制御部100は、処理槽16に廃水を供給する廃水供給処理(廃水供給工程)を行う。具体的には、制御部100は、電動弁51Aを制御して、電動弁51Aを閉位置から開位置に作動し、また、供給ポンプ61を駆動させる。これにより、廃水タンク81から処理槽16への廃水の供給が開始される。
【0092】
供給ポンプ61によって廃水が処理槽16に供給されると、処理槽16の下部から連結管52を通って廃水が水位槽18に流入する。その後、廃水が前記上限水位H1まで貯留されると、制御部100は、廃水の供給を停止する。具体的には、制御部100は、液面センサー34からの検知信号に基づいて、廃水の液面が前記上限水位H1に到達したと判定すると、電動弁51Aを閉位置に戻し、供給ポンプ61を停止して、廃水の供給を停止する。
【0093】
次のステップS12では、制御部100は、処理槽16に貯留された廃水を加熱して廃水に含まれる水分を蒸発させ廃水加熱処理(廃水蒸発工程)を開始する。具体的には、制御部100は、第1加熱装置22の電動弁225を閉位置から開位置に作動し、また、ブロアー224を駆動させて空気を配管57に供給し、その後、バーナー222において燃料ガスを着火して、燃料ガスを燃焼させる。このとき、第1加熱装置22は、予め定められた火力となるように加熱制御する。具体的には、制御部100からの駆動信号を受けたブロア制御部226は、予め定められた基準周波数(例えば、60Hz)の周波数信号をブロアー224に出力して、予め定められた定格風量となるようにブロアー224を駆動させる。なお、ステップS12は、本発明の廃液加熱工程(廃液加熱ステップ)の一例である。
【0094】
また、ステップS13において、制御部100は、処理槽16から蒸発した蒸気を含む気体を加熱するガス加熱処理(ガス加熱工程)を開始する。具体的には、制御部100は、第2加熱装置23の第2加熱制御部23Bに駆動信号を出力して、第2加熱装置23の電気ヒーター23Aを駆動させる。このとき、第2加熱制御部23Bは、PID制御によって、酸化触媒43の入口温度Ty(触媒入口温度)が、蒸発時に生じる気体に含まれる1,4-ジオキサンやトルエンなどの前記特定物質の酸化分解に最適な前記規定温度(例えば400℃)となるように電気ヒーター23Aを加熱制御する。また、制御部100は、送気ブロアー24を駆動して、第1ダクト14A内に空気を送り込む。これにより、処理槽16で生じた水蒸気を含む気体が第1ダクト14Aから連結ダクト14Bに送り込まれて、更に、第2ダクト14Cに設けられた酸化触媒43に送り込まれる。その結果、酸化触媒43が加熱される。なお、ステップS13は、本発明の触媒加熱工程(触媒加熱ステップ)の一例である。
【0095】
ステップS12の廃水加熱処理が開始されると、処理槽16内の廃水の貯留量は含有水分の蒸発によって徐々に減少して、廃水の濃縮化が進む。また、ステップS13のガス加熱処理が開始されると、酸化触媒43の温度が徐々に上昇する。
【0096】
ステップS14では、制御部100は、温度センサー44のセンサー信号に基づいて、酸化触媒43の入口温度Ty(触媒入口温度)が前記設定温度以上であるか否かを判定する。本実施形態では、加熱が開始されてから所定時間経過後にステップS14の判定が行われる。ここで、前記触媒入口温度Tyが前記設定温度以上であると判定されると、酸化触媒43の加熱が正常に行われていると判断できる。一方、前記所定時間経過しても前記触媒入口温度Tyが前記設定温度未満である場合は、酸化触媒43の加熱が正常に行われていないと判断できる。この場合は、酸化触媒43の加熱エラーを表示部106に出力し、表示部106に加熱エラーの内容を表示する(S15)。
【0097】
なお、
図3には示していないが、制御部100は、廃水が異常温度(例えば110℃)まで昇温したか否かを判定し、前記異常温度まで上昇したと判定された場合に、制御部100は、表示部106に廃水温度エラーを出力し、更に第1加熱装置22及び第2加熱装置23による加熱処理を停止するエラー処理を行ってもよい。
【0098】
図4は、従来装置で行われる廃水蒸発工程において、触媒入口温度Ty、ヒーター表面温度Tx、廃液温度、処理槽16の液面レベルの変動を示すグラフである。
図5は、本実施形態に係る廃水処理装置10で行われる廃水蒸発工程において、触媒入口温度Ty、ヒーター表面温度Tx、廃液温度、処理槽16の液面レベルの変動を示すグラフである。
図4及び
図5において、折れ線L1は触媒入口温度Tyを示し、折れ線L2はヒーター表面温度Txを示し、折れ線L3は廃液温度を示し、折れ線L4は処理槽16の液面レベルを示している。
【0099】
図4及び
図5における時点T1は、酸化触媒43や電気ヒーター23Aの表面に油成分などの難分解性物質が付着したタイミングである。
図4及び
図5から理解できるように、時点T1以降にヒーター表面温度Tx及び触媒入口温度Tyが急激に低下している。また、
図4における時点T2は、第1加熱装置22及び第2加熱装置23の加熱が停止されたタイミングである。
図4から理解できるように、酸化触媒43や電気ヒーター23Aに難分解性物質が付着した場合に比べて、時点T2以降のヒーター表面温度Tx及び触媒入口温度Tyは緩やかに低下している。つまり、酸化触媒43や電気ヒーター23Aに難分解性物質が付着したことによるヒーター表面温度Tx及び触媒入口温度Tyの低下勾配は、第1加熱装置22及び第2加熱装置23が停止された後の低下勾配に比べて大きい。言い換えると、酸化触媒43などに難分解性物質が付着して異常状態になった後のヒーター表面温度Tx及び触媒入口温度Tyの温度低下率は、第1加熱装置22及び第2加熱装置23が通常停止された後の温度低下率に比べて大きい。
【0100】
以上より、廃水蒸発工程において、ヒーター表面温度Tx、又は触媒入口温度Tyの温度低下率を閾値判定することにより、酸化触媒43が異常状態になったか否かを判定することが可能である。
【0101】
本実施形態では、ステップS14において前記触媒入口温度Tyが前記設定温度以上と判定されると、制御部100は、温度センサー42の出力値に基づいてヒーター表面温度Txを監視し、ヒーター表面温度Txの所定時間当たりの温度低下量ΔTxを算出する(S16)。なお、前記所定時間当たりの温度低下量ΔTxは、本発明の低下率の一例である。
【0102】
そして、次のステップS17において、制御部100は、前記温度低下量ΔTxが予め定められた温度閾値X1(本発明の第1温度閾値の一例)以上であるか否かを判定する。ここで、前記温度低下量ΔTxが前記温度閾値X1以上であると判定された場合、酸化触媒43の表面に油成分などの難分解性物質が付着して目詰まりを起こすなどの異常状態になっている可能性が高いと考えられる。この場合、制御部100は、酸化触媒43が異常であると判定し、ステップS20において、酸化触媒43が異常であること示す触媒エラーと、酸化触媒43をクリーニングすることを促すメッセージを表示部106に出力し、更に第1加熱装置22及び第2加熱装置23による加熱処理を停止する処理を行う(
図5参照)。なお、前記メッセージを表示部106に出力する処理を行う制御部100は、本発明の異常情報出力部の一例である。その後、一連の処理が了する。前記所定時間は、例えば1秒であり、前記温度閾値X1は、例えば30℃である。ステップS16,S17は、本発明の異常判定工程(異常判定ステップ)の一例である。
【0103】
一方、ステップS17において、前記温度低下量ΔTxが前記温度閾値X1未満であると判定されると、制御部100は、次のステップS18において、温度センサー44の出力値に基づいて酸化触媒43の入口温度Ty(触媒入口温度)を監視し、前記触媒入口温度Tyの所定時間当たりの温度低下量ΔTyを算出する。なお、前記所定時間当たりの温度低下量ΔTyは、本発明の低下率の一例である。
【0104】
そして、次のステップS19において、制御部100は、前記温度低下量ΔTyが予め定められた温度閾値Y1(本発明の第2温度閾値の一例)以上であるか否かを判定する。ここで、前記温度低下量ΔTyが前記温度閾値Y1以上であると判定された場合、酸化触媒43の表面に油成分などの難分解性物質が付着して目詰まりを起こすなどの異常状態になっている可能性が高いと考えられる。この場合、制御部100は、酸化触媒43が異常であると判定し、酸化触媒43が異常であることを示す触媒エラーと、酸化触媒43をクリーニングすることを促すメッセージを表示部106に出力し、更に第1加熱装置22及び第2加熱装置23による加熱処理を停止する処理を行う(
図5参照)。なお、前記所定時間は、例えば1秒であり、前記温度閾値Y1は、例えば20℃である。その後、一連の処理が了する。
【0105】
以上説明したように、本実施形態では、廃水処理装置10において、処理槽16に収容された廃水を加熱して前記廃水中の含有水分を蒸発させることにより前記廃水を濃縮するものであり、処理槽16に収容される前記廃水を加熱する第1加熱装置22と、前記廃水の加熱により処理槽16内に生じた蒸気を含む気体を処理槽16から外部へ案内する排気ダクト14と、排気ダクト14における前記気体の案内経路に設けられ、前記気体に含まれる特定物質と接触することにより前記特定物質の分解反応を促進する酸化触媒43と、酸化触媒43に関する温度を検知する温度センサー44,45と、酸化触媒43が予め定められた設定温度(例えば350℃)まで加熱された後に温度センサー44,45によって検知される検知温度の所定時間当たりの低下量(低下率)が所定の温度閾値以上である場合に、酸化触媒43が異常であると判定する制御部100とを備えている。このため、廃水の加熱蒸発工程において、酸化触媒43の異常を的確に判定することか可能である。
【0106】
なお、上述の実施形態では、ヒーター表面温度Txの温度低下量ΔTx、或いは、触媒入口温度Tyの温度低下量ΔTyのいずれか一方が温度閾値以上である場合に、酸化触媒43を異常と判定する処理例について説明したが、本発明はこのような処理例に限られない。例えば、ヒーター表面温度Txの温度低下量ΔTxが温度閾値X1以上であると判定され、且つ、触媒入口温度Tyの温度低下量ΔTyが温度閾値Y1以上であると判定された場合に、酸化触媒43が異常であると判定してもよい。
【0107】
また、
図6に示すように、温度低下量ΔTx又は温度低下量ΔTyの少なくとも一方が温度閾値以上であると判定され(S17,S19)、更に、制御部100によって、処理槽16内の内圧が予め定められた圧力閾値(例えば5000Pa)以上であると判定された場合に(S171)、酸化触媒43が異常であると判定してもよい。
【0108】
また、温度低下量ΔTx又は温度低下量ΔTyの少なくとも一方が温度閾値以上であると判定され(S17,S19)、更に、制御部100によって、処理槽16の液面の変動率が予め定められた変動閾値以上であると判定された場合に(S172)、酸化触媒43が異常であると判定してもよい。なお、液面の変動率は、液面センサー37の出力値の所定時間当たりの変化量である。この変化量が大きければ大きいほど、処理槽16における廃水の動きが激しく、油成分を含むオイルミストやオイル成分を含む泡が蒸気とともに、排気ダクト14を通じて分解処理装置12の酸化触媒43に送り込まれる可能性が高いと考えられる。前記変動閾値は、例えば、正常な加熱蒸発工程において液面センサー37から出力された出力値の平均値に所定の倍率を乗じた値に設定することができる。
【0109】
また、温度低下量ΔTx又は温度低下量ΔTyの少なくとも一方が温度閾値以上であると判定され(S17,S19)、更に、制御部100によって廃水の温度が予め定められた設定温度(例えば110℃)以上であると判定された場合に、酸化触媒43が異常であると判定してもよい。前記廃水の温度が前記設定温度以上の高温である場合も、酸化触媒43にオイルミストなどが付着する可能性が高いと考えられる。
【0110】
また、上述の実施形態では、本発明の温度検知部の一例として、酸化触媒43の温度と相関関係を有する温度を検知可能な温度センサー42、温度センサー44を例示して説明したが、例えば、前記温度検知部は、酸化触媒43の温度を直接検知する温度センサーであってもよい。
【0111】
なお、本実施形態では、本発明の廃液処理装置の一例として上述の廃水処理装置10を例示して説明したが、例えば、本発明は、処理槽16に収容される廃水を加熱する第1加熱装置22と、前記廃水の加熱により処理槽16内に生じた蒸気を含む気体を処理槽16から外部へ案内する排気ダクト14と、排気ダクト14における前記気体の案内経路に設けられ、前記気体に含まれる特定物質と接触することにより前記特定物質の分解反応を促進する酸化触媒43と、酸化触媒43に関する温度を検知する温度センサー44,45と、酸化触媒43が予め定められた設定温度(例えば350℃)まで加熱された後に温度センサー44,45によって検知される検知温度の所定時間当たりの低下量(低下率)が所定の温度閾値以上である場合に、酸化触媒43が異常であると判定する制御部100とを備える触媒異常判定装置として捉えることもできる。
【符号の説明】
【0112】
10 :廃水処理装置, 11 :廃水濃縮装置, 12 :分解処理装置,
13 :制御装置, 16 :処理槽, 18 :水位槽,
22 :第1加熱装置, 23 :第2加熱装置, 27 :消泡剤供給部,
32 :温度センサー, 33 :泡センサー, 34 :液面センサー,
35 :温度センサー, 36 :圧力センサー, 37 :液面センサー,
42 :温度センサー, 44 :温度センサー, 100:制御部