(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127766
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】移動システム
(51)【国際特許分類】
B66B 9/02 20060101AFI20230907BHJP
B66B 1/16 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B66B9/02 Z
B66B1/16 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031655
(22)【出願日】2022-03-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宮川 行宏
【テーマコード(参考)】
3F301
3F502
【Fターム(参考)】
3F301DC08
3F502HA02
3F502HB02
3F502JA91
(57)【要約】
【課題】乗り部が複数の移動部を渡って移動可能な移動システムにおいて、一括管理をすることなく、乗り部が別の移動部に乗り移った後も、行き先までの移動を継続させることができる移動システムを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、軌道に沿って移動可能な移動部と各移動部に分離・装着可能な乗り部とを備え、一方の軌道に配置された移動部と他方の軌道に配置された移動部とが隣り合ったときに、隣り合う移動部間で乗り部が移動可能であり、乗り部側制御部は、乗り部の行き先を含んだ移動制御データを、乗り部が現在装着されている元移動部の移動部側制御部に送信することで元移動部を移動させ、先移動部への装着変更の際、先移動部の移動部側制御部に移動制御データを送信して先移動部を呼び出し元移動部に隣り合うように移動させ、乗り部を先移動部に移動させ、先移動部を行き先まで移動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが所定方向に延び且つ前記所定方向と直交する方向に間隔をあけて平行に並ぶ複数の軌道と、
各軌道に少なくとも一つ配置され、該軌道に沿って移動可能な複数の移動部と、
各移動部に分離・装着可能な少なくとも一つの乗り部と、を備え、
前記少なくとも一つの乗り部と前記複数の移動部とのそれぞれは、隣り合う軌道において一方の軌道に配置された移動部と他方の軌道に配置された移動部とが隣り合ったときに、隣り合う移動部間で前記乗り部が移動可能に構成され、
各移動部は、自己の移動に関して制御する移動部側制御部を備え、
各乗り部は、自己の移動に関して制御する乗り部側制御部を備え、
前記乗り部側制御部は、少なくとも前記乗り部の行き先を含んだ移動制御データを保持し、前記乗り部が現在装着されている前記移動部である元移動部が備える前記移動部側制御部に前記移動制御データを送信することで前記元移動部を移動させるものであり、
前記乗り部が行き先に到達するために、前記元移動部とは別の前記移動部である先移動部への装着変更が必要な場合、前記乗り部側制御部は、前記先移動部が備える前記移動部側制御部に前記移動制御データを送信し、前記元移動部に対して前記先移動部が隣り合うように前記先移動部又は前記元移動部を移動させた上で、前記乗り部を前記先移動部に移動させ、その後前記先移動部を行き先まで移動させる、移動システム。
【請求項2】
前記乗り部側制御部は、前記乗り部が前記先移動部に移動する際、前記元移動部が備える前記移動部側制御部の保持する前記移動制御データを、前記乗り部が装着される前の状態に初期化する、請求項1に記載の移動システム。
【請求項3】
3台以上の前記移動部を備え、
前記乗り部側制御部は、前記元移動部以外の複数の前記移動部に対する距離を認識しており、最も短時間で隣り合う状態とできる前記移動部を前記先移動部として選択する、請求項1または2に記載の移動システム。
【請求項4】
3台以上の前記移動部を備え、
前記乗り部側制御部は、前記元移動部以外の複数の前記移動部に対する距離を認識しており、前記元移動部以外の複数の前記移動部が現在の位置から前記元移動部と隣り合う状態を経て前記乗り部の行き先に到達するまでの時間を最も短時間とできる前記移動部を前記先移動部として選択する、請求項1または2に記載の移動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り部が複数の移動部を渡って移動可能な移動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本願の発明者は、乗りかごと乗りかごを昇降させる昇降駆動装置とが分離・結合するものであって、乗りかごが複数の昇降駆動装置を渡って移動可能なエレベータを提案している(特許文献1)。このエレベータでは、昇降駆動装置上に設けられた横軌道を通じて隣り合う昇降路に位置する昇降駆動装置に乗りかごを移行できる。
【0003】
また、このエレベータでは、各乗りかご及び各昇降駆動装置の運行を一括で制御する群管理制御が行われている。この群管理制御では、乗りかごの到着を待つ利用者の待ち時間が少なくなるように、乗りかご及び昇降駆動装置の配置数及び配置位置を決定し、各利用者に対して到着させる乗りかごを割り当てる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなエレベータを小規模な建物に設置する場合などに、群管理制御を行わずに、乗りかご(乗り部)や昇降駆動装置(移動部)の運行を制御したいという要請があった。
【0006】
本発明は、乗り部が複数の移動部を渡って移動可能な移動システムにおいて、群管理サーバ等によるシステム全体での一括管理をすることなく、乗り部が別の移動部に乗り移った後も、行き先までの移動を継続させることができる移動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の移動システムは、
それぞれが所定方向に延び且つ前記所定方向と直交する方向に間隔をあけて平行に並ぶ複数の軌道と、
各軌道に少なくとも一つ配置され、該軌道に沿って移動可能な複数の移動部と、
各移動部に分離・装着可能な少なくとも一つの乗り部と、を備え、
前記少なくとも一つの乗り部と前記複数の移動部とのそれぞれは、隣り合う軌道において一方の軌道に配置された移動部と他方の軌道に配置された移動部とが隣り合ったときに、隣り合う移動部間で前記乗り部が移動可能に構成され、
各移動部は、自己の移動に関して制御する移動部側制御部を備え、
各乗り部は、自己の移動に関して制御する乗り部側制御部を備え、
前記乗り部側制御部は、少なくとも前記乗り部の行き先を含んだ移動制御データを保持し、前記乗り部が現在装着されている前記移動部である元移動部が備える前記移動部側制御部に前記移動制御データを送信することで前記元移動部を移動させるものであり、
前記乗り部が行き先に到達するために、前記元移動部とは別の前記移動部である先移動部への装着変更が必要な場合、前記乗り部側制御部は、前記先移動部が備える前記移動部側制御部に前記移動制御データを送信し、前記元移動部に対して前記先移動部が隣り合うように前記先移動部又は前記元移動部を移動させた上で、前記乗り部を前記先移動部に移動させ、その後前記先移動部を行き先まで移動させる。
【0008】
かかる構成によれば、乗り部及び移動部にそれぞれ備えられた制御部が、乗り部の行き先を含んだデータを送受信することで、乗り部が別の移動部に乗り移った後も、行き先までの移動を継続させることができる。
【0009】
前記移動システムでは、
前記乗り部側制御部は、前記乗り部が前記先移動部に移動する際、前記元移動部が備える前記移動部側制御部の保持する前記移動制御データを、前記乗り部が装着される前の状態に初期化してもよい。
【0010】
かかる構成によれば、乗り部が乗り移る前に装着されていた元移動部の移動部側制御部から、不要な移動制御データを消去することができる。
【0011】
前記移動システムは、
3台以上の前記移動部を備え、
前記乗り部側制御部は、前記元移動部以外の複数の前記移動部に対する距離を認識しており、最も短時間で隣り合う状態とできる前記移動部を前記先移動部として選択してもよい。
【0012】
かかる構成によれば、乗り部が、最も短時間で隣り合う状態とできる移動部を選択して、これに乗り移るため、別の移動部に乗り移るまでの時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上より、本発明によれば、乗り部が複数の移動部を渡って移動可能な移動システムにおいて、群管理サーバ等によるシステム全体での一括管理をすることなく、乗り部が別の移動部に乗り移った後も、行き先までの移動を継続させることができる移動システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る移動システムを示す、斜視での模式図である。
【
図2】
図2は、前記移動システムのブロック図である。
【
図3】
図3は、前記移動システムにて、単体の移動部を示す、斜視での模式図である。
【
図4】
図4は、前記移動システムにて、単体の乗り部を示す、斜視での模式図である。
【
図5】
図5は、前記移動システム全体の構成を示す、正面視での模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図5を参照しつつ説明する。
【0016】
移動システム1は、
図1に示すように、それぞれが所定方向(上下方向)に延び且つ所定方向と直交する方向(水平方向)に間隔をあけて平行に並ぶ複数の軌道2と、各軌道2に少なくとも一つ配置され、該軌道2に沿って移動可能な複数の移動部3と、各移動部3に分離・装着可能な少なくとも一つの乗り部4と、を備える。また、移動システム1は、2つの軌道2、3台以上の移動部3(本実施形態では、3台の移動部3)、及び、2台の乗り部4を備える(
図1及び
図5参照)。なお、本実施形態の移動システム1は、群管理サーバを備えていない。
【0017】
この移動システム1は、
図5に示すように、建物内を複数の階(フロア)に跨って上下方向に延びる複数の昇降路6(本実施形態では、2つの昇降路6)を備えるエレベータである。本実施形態の移動システム1は、乗り部4と乗り部4を昇降させる移動部3とが分離・装着するエレベータ(昇降分離型エレベータ)である。このエレベータでは、乗り部4自体は昇降機能を有していない。また、移動部3は、昇降路6内を昇降して建物の各階に設けられる乗場7に停止可能である。
【0018】
この移動システム1では、昇降路6が図示左右に並列して2本設けられている。各昇降路6は、例えば、異なる建物に設けられている。昇降路6A、6Bは、それぞれ上下方向に5階分延びている。さらに、並列する昇降路6間で、乗り部4が水平方向に移動可能なように両昇降路6が連通している。本実施形態の移動システム1では、全ての階床において両昇降路6が連通しているが、両昇降路6の少なくとも一部(乗り部4が通過できる程度の領域)において両昇降路6が連通していればよい。例えば、両昇降路6の連通した部分は、両昇降路6における少なくとも一つの階床、両昇降路6における階床と階床との中間部分であってもよい。これら連通した部分には、開閉可能なゲートを設けておき、ゲートを閉鎖することで乗り部4の移動を制限することもできる。なお、両昇降路6は、連絡用軌道を介して連通していてもよい。また、乗り部4は、昇降路6内を昇降して建物の地下等に設けられる退避場に停止可能であってもよい。
【0019】
軌道2は、例えば、昇降路6の内部に設けられた一対のガイドレールGである(
図1参照)。このガイドレールGは、1台の移動部3に対して、移動部3を水平方向(図示左右方向)から挟むように一対設けられている。なお、ガイドレールGは、1台の移動部3に対して、1つ乃至3つ以上設けられていてもよい。
【0020】
本実施形態の移動システム1では、複数の軌道2のうち少なくとも一つの軌道2に、複数の移動部3が配置されている。具体的に、隣り合う二つの軌道2の一方の軌道2に一つの移動部3(例えば、第一の移動部31)が配置され、残りの軌道2に複数の移動部3(例えば、第二の移動部32及び第三の移動部33)が配置されている。本実施形態では、
図5に示すように、第一の移動部31が図示左側の昇降路6Aに配置され、第二の移動部32及び第三の移動部33が図示右側の昇降路6Bに配置されている。なお、各軌道2に一台の移動部3が配置されていてもよい。
【0021】
また、この移動システム1では、少なくとも一つの乗り部4と複数の移動部3とのそれぞれは、隣り合う軌道2において一方の軌道21に配置された移動部3と他方の軌道22に配置された移動部3とが隣り合ったときに、隣り合う移動部3間で乗り部4が移動可能に構成されている(
図1参照)。
【0022】
本実施形態の移動部3は、
図3に示すように、移動装置Mに含まれている。移動装置Mは、移動部3に加えて、例えば、移動部3と連動して昇降路6内を昇降するカウンターウェイト、移動部3とカウンターウェイトとを連結するロープR、及び、ロープRを駆動する巻上機等を含む。この構成により、移動部3は、昇降可能に構成されている。ここで、従来のトラクション式エレベータにおいては、ロープRに連結した乗りかごそのものを昇降させていた。これに対して、本実施形態の移動システム1では、従来の乗りかご部分を移動部3に置き換えている。なお、移動部3は、自走する構成であってもよい。
【0023】
この移動システム1では、移動部3は、水平方向(図示左右方向)に延びる横軌道30を備える構成としている。そのため、乗り部4は、
図1に示す左側の移動部31の横軌道310に沿い水平方向に移動することで、図示右側に位置する他の移動部32の横軌道320に移行できる。なお、移動部3は、移動部3から乗り部4が落下しないで移動可能な構成であればよく、例えば、横軌道30の代わりに、水平方向成分を含む斜め方向に延びる移動路を有していてもよい。
【0024】
各移動部3は、移動部3自身の位置(具体的には、どの昇降路6のどの階床にあるかに関する位置)を検知可能な位置センサを備える。さらに、本実施形態の各移動部3は、隣り合う軌道2において一方の軌道2に配置された移動部3と、他方の軌道2に配置された移動部3と、が隣り合ったときに、これを検知可能な隣接センサを備える。また、各移動部3は、該移動部の速度を検知可能な速度センサを備えることもある。なお、各移動部3は、速度を直接的に検出する代わりに、エンコーダ等により自身の位置を連続的に検出し、該検出の結果を利用して速度を導出してもよい。
【0025】
各移動部3は、検知結果を外部に送信する送信部を備える。具体的に、各移動部3は、位置センサにより検知した移動部3自身の位置を乗り部4に送信する。
【0026】
乗り部4は、
図4に示すように、利用者が搭乗する乗りかごである。なお、乗り部4は、利用者以外に荷物を載せることができるかごであってもよい。
【0027】
また、乗り部4は、例えば、利用者が搭乗する乗りかご本体401、及び、乗りかご本体401の背面に、水平方向に延びるように突出しており、移動部3の横軌道30を走行するための走行部40を備える。なお、走行部40は、乗りかご本体401の側面に設けられていてもよい。
【0028】
本実施形態の乗り部4は、該乗り部4が横軌道30を走行するための動力を、例えば、走行部40に備えており自走する。なお、乗り部4は、該乗り部4が横軌道30を走行するための動力を備えない構成であってもよく、この場合、移動部3に備えられた引き込み機構により横軌道30を走行してもよい。また、乗り部4は、装着している移動部3及びこの移動部3以外の複数の移動部3の位置を、各移動部3の位置センサから受信する受信部を備える。なお、乗り部4と各移動部3との情報の送受信は、例えば、無線により行われる。
【0029】
乗りかご本体401は、開閉により内外を連通させる乗り部ドア400を備える。本実施形態の乗り部ドア400は、両開きとされている。また、乗場7に設けられる乗場ドアも同様の形態とされている。なお、乗り部ドア400や乗場ドアは、片開きであってもよい。
【0030】
各移動部3は、
図2に示すように、自己の移動に関して制御する移動部側制御部35を備える。また、各乗り部4は、自己の移動に関して制御する乗り部側制御部45を備える。各制御部35、45は、CPU(Central Processing Unit)、このCPUによって実行される種々のプログラムやその実行に必要なデータ等を予め記憶するROM(Read Only Memory)やEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性記憶素子、このCPUのいわゆるワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶素子およびその周辺回路等を備えた基盤やマイクロコンピュータ等によって構成されている。
【0031】
以下、乗り部4が第一の移動部31から第二の移動部32に乗り移る場合を例示して、移動部3及び乗り部4の詳しい構成について説明する。なお、以下、第一の移動部31を元移動部31とも称し、第二の移動部32を先移動部32とも称する。乗り部側制御部45は、少なくとも乗り部4の行き先を含んだ移動制御データを保持する。また、乗り部4が現在装着されている移動部3である元移動部31が備える第一の移動部側制御部351に移動制御データを送信することで元移動部31を行先に向けて移動させるものである(
図1及び
図2参照)。
【0032】
さらに、乗り部4が行き先に到達するために、元移動部31だけでは行先に到達できず、元移動部31とは別の移動部3である先移動部32への装着変更が必要な場合、乗り部側制御部45は、先移動部32が備える第二の移動部側制御部352に移動制御データを送信し、元移動部31に対して先移動部32が隣り合うように先移動部32又は元移動部31を移動させた上で、乗り部4を先移動部32に移動させる。本実施形態では、装着変更が必要な場合、乗り部側制御部45は、先移動部32が備える第二の移動部側制御部352に移動制御データを送信することで先移動部32を呼び出し、元移動部31に対して先移動部32が隣り合うように先移動部32を移動させた上で、乗り部4を先移動部32に移動させる。その後、乗り部4を先移動部32に装着し、先移動部32を行き先まで移動させる。
【0033】
このように、乗り部4及び移動部3にそれぞれ備えられた制御部34、44が、乗り部4の行き先を含んだ移動制御データを送受信することで、乗り部4が別の移動部3(先移動部32)に乗り移った後も、行き先までの移動を継続させることができる。
【0034】
移動制御データは、例えば、乗り部4においてかご呼びが入ったときに、乗り部側制御部45により生成される乗り部4の行き先を含む。本実施形態では、乗り部4の行き先は、乗場呼びが入ったとき(乗場7において呼びボタンが押下されたとき)にも生成される。また、かご呼びや乗場呼びが入ったとき、移動部3がどの階床からどの階床へ移動するのかを示す経路も生成される。移動制御データは、この経路も含む。また、移動制御データは、移動部3の速度及び移動部3の加速度の少なくとも一方を含んでいてもよい。なお、移動制御データは、乗り部4の行き先のみであってもよい。
【0035】
また、乗り部側制御部45は、乗り部4が先移動部32に移動する際、元移動部31が備える第一の移動部側制御部351の保持する移動制御データを、乗り部4が装着される前の状態に初期化する。具体的に、乗り部側制御部45は、先移動部32が備える第二の移動部側制御部352に移動制御データを送信した後、元移動部31が備える第一の移動部側制御部351の保持する移動制御データを、乗り部4が装着される前の状態に初期化する。この乗り部側制御部45による元移動部31が備える第一の移動部側制御部351の保持する移動制御データの初期化は、先移動部32が備える第二の移動部側制御部352に移動制御データを送信してから、乗り部4の先移動部32の装着完了までの間に行うことが好ましい。
【0036】
かかる構成によれば、乗り部4が乗り移る前に装着されていた元移動部31の第一の移動部側制御部351から、不要な移動制御データを消去することができる。なお、初期化された移動部3は、例えば、初期化された位置で停止状態となる。また、乗り部側制御部45は、乗り部4が先移動部32に移動する際、元移動部31が備える第一の移動部側制御部351の保持する移動制御データを初期化する以外に、例えば、移動部3が待機するための所定位置に移動するためのデータを出力してもよい。また例えば、第一の移動部側制御部351の保持する移動制御データから、元々装着されていた乗り部4の行き先に関する情報のみを消去することもできる。
【0037】
以下、第一の移動部31に装着した第一の乗り部41が、昇降路6Aの2階で利用者を載せ、かご呼びに応じて行先に向かうときの各制御について説明する。なお、第一の乗り部41が利用者を載せた時点で、
図5に示すように、第二の移動部32は昇降路6Bの1階に位置し、第三の移動部33は昇降路6Bの5階に位置している。また、第一の移動部31に第一の乗り部41が装着している。さらに、第三の移動部33に第二の乗り部42が装着している(第三の移動部33が使用中である)ため、第一の乗り部41が乗り移り可能な移動部3は、第二の移動部32のみである。なお、第一の乗り部4の第一乗り部側制御部451及び第二の乗り部42の第二の乗り部側制御部452は、互いに接続されており、互いの位置を検知できる。
【0038】
例えば、第一の乗り部4が、元移動部31に装着された状態で、第一の乗り部41内の利用者が階床釦(例えば、元移動部31が配置された昇降路6Aが設けられた建物の3階を示す釦)を押下した場合、行先に到達するために、基本的には、元移動部31とは別の先移動部32への装着変更が不要である。この場合、第一の乗り部41は、元移動部31が備える第一の移動部側制御部351に移動制御データを送信することで元移動部31を行先(昇降路6Aが設けられた建物の3階)へ移動させる。
【0039】
一方、第一の乗り部41が、元移動部31に装着された状態で、第一の乗り部41内の利用者が階床釦(例えば、元移動部31が配置された昇降路6Aとは別の昇降路6Bの1階を示す釦)を押下した場合、行先に到達するために、元移動部31とは別の先移動部32への装着変更(乗り部4の乗り移り)が必要である。この場合、第一の乗り部側制御部451は、先移動部32の第二の移動部側制御部352に、第一の乗り部41の行き先(例えば、昇降路6Bの3階)を含んだ移動制御データを送信し、これを受信した先移動部32が移動する。例えば、乗り部側制御部45は、第一の乗り部41の行き先(例えば、昇降路6Bの3階)を含んだ移動制御データを、先移動部32の移動部側制御部352に送信し、これを受信した先移動部32が呼び出される。呼び出された先移動部32は、元移動部31に対して隣り合う位置(例えば、昇降路6Bの2階)まで移動する。このとき、本実施形態では、元移動部31が移動せず、先移動部32のみが移動することで、呼び出された先移動部32は、元移動部31に対して隣り合う位置まで移動する。
【0040】
なお、元移動部31及び先移動部32の両方が移動する、又は、先移動部32が移動せず、元移動部31のみが移動することで、先移動部32が元移動部31に対して隣り合う位置に配置されてもよい。また、このように隣り合う位置に移動する移動部3として、例えば、第一の乗り部41の行き先(例えば、昇降路6Bの3階)に近づく側に移動することになる移動部3を選択してもよい。例えば、第一の乗り部41が装着された元移動部31が昇降路6Aの2階に位置し、先移動部32が昇降路6Bの1階に位置するとき、第一の乗り部41の行き先が昇降路6Bの2階以上の階床であれば、先移動部32のみを移動させ、第一の乗り部41の行き先が昇降路6Bの1階であれば、元移動部31のみを移動させてもよい。
【0041】
さらに、乗り部側制御部45は、乗り部4を先移動部32に移動させる。その後、乗り部側制御部45は、先移動部32を行き先(例えば、昇降路6Bの3階)まで移動させる。なお、乗り部側制御部45は、移動部3の速度や加速度を含む移動制御データを先移動部32に送信していれば、先移動部32をこの速度や加速度で行き先(例えば、昇降路6Bの3階)まで移動させることができる。
【0042】
なお、本発明の移動システムは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0043】
例えば、第一の乗り部41の乗り移りが必要であっても、先移動部32が元移動部31に対して隣り合う位置に配置されていれば、元移動部31及び先移動部32の両方が移動しなくてもよい。この場合においても、第一の乗り部41は、元移動部31が備える第一の移動部側制御部351に移動制御データを送信することで元移動部31を行先へ移動させることができる。
【0044】
図5の構成では、第一の乗り部41が乗り移ることのできる移動部3(使用中でない移動部3、即ち、別の乗り部4が装着していない移動部3)は、一つ(第二の移動部3)のみであったが、複数ある場合も考えられる。このように、元移動部31に対して隣り合うように移動させることができ且つ乗り部4が装着可能な移動部3が複数ある場合、乗り部側制御部45は、この複数の移動部3から、最も短時間で隣り合うことができる移動部3(例えば、最も短時間で呼び出せる移動部3)を先移動部32として選択してもよい。
【0045】
この場合、例えば、乗り部側制御部45は、元移動部31以外の複数の移動部3に対する距離を認識している。具体的に、元移動部31から第二の移動部32及び第三の移動部33の両方に乗り移り可能な場合、乗り部側制御部45は、各移動部32、33から送信される各移動部32、33の位置(各移動部32、33の位置センサによる検知結果)を受信することにより、元移動部31以外の複数の移動部3に対する距離を認識できる。
【0046】
かかる構成によれば、乗り部4は、最も短時間で呼び出せる移動部3(例えば、距離の近い第二の移動部32)を呼び出し、この呼び出した移動部3(第二の移動部32)に乗り移ることで、別の移動部3(第二の移動部32)に乗り移るまでの時間を短縮することができる。
【0047】
なお、上記実施形態の移動システム1では、第一の乗り部41が乗り移ることのできる移動部3が、別の乗り部4が装着していない移動部3であり、別の乗り部4が装着していない移動部3の中から最も短時間で呼び出せる移動部3を呼び出していたが、別の乗り部4が装着している移動部3を含む複数の移動部3から最も短時間で呼び指せる移動部3を呼び出してもよい。例えば、最も短時間で呼び出せる移動部3が、別の乗り部4が装着している移動部3であった場合(具体的には、第一の乗り部41を装着した第一の移動部31が昇降路6Aの4階に位置し、昇降路6Bの1階に乗り部4が装着していない第二の移動部32が位置し、昇降路6Bの5階に第二の乗り部42が装着した第三の移動部33が位置している場合)、第一の乗り部41は、別の乗り部4が装着している移動部3の使用状態が解除されるまで(第三の移動部33)、乗り移りを待ってもよい。また、この場合、第一の乗り部41は、別の乗り部4が装着している移動部3(第三の移動部33)の使用状態が解除されるまでの間に、別の乗り部4が装着している移動部3(第三の移動部33)と隣り合う位置に移動してもよい。このように、第一の乗り部41が別の乗り部4が装着している移動部3の使用状態が解除されるまで待機する場合、第一の乗り部41内に待機中である旨のメッセージを報知してもよい。
【0048】
また、乗り部側制御部451は、元移動部31以外の複数の移動部32、33に対する距離を認識しているとき、この移動部32、33が現在の位置から元移動部31隣り合う状態を経て行先に到着するまでの時間を最も短時間とできる移動部32を先移動部として選択してもよい。これにより、移動システム1全体の運転効率を良好なものとし、乗場7での利用者の待ち時間を少なくできる。
【0049】
なお、乗り部制御部45は、先移動部を選択する際に移動部3の利用者の数を考量してもよい。例えば、乗り部制御部45は、元移動部31以外の複数の移動部32、33に対する距離を認識しているとき、この移動部32、33のうち最も利用者の少ない移動部32を先移動部として選択してもよい。
【0050】
上記実施形態の移動システム1では、複数の軌道2は、上下方向に延び且つ水平方向に間隔を空けて平行に並んでいたが、それぞれが所定方向に延び且つ所定方向と直交する方向に間隔をあけて平行に並んでいればよい。例えば、複数の軌道2は、それぞれが水平方向に延び且つ水平方向と直交する上下方向に間隔をあけて平行に並んでいてもよい。また、複数の軌道2は、いずれも水平面に沿って配置され、且つ、それぞれが横方向に延び且つ横方向と直交する縦方向に間隔をあけて平行に並んでいてもよく、この場合、移動部3は、横移動する台車等の車であってもよい。
【0051】
また、上記実施形態の移動システム1では、移動部3は3台であったが、2台、乃至、4台以上であってもよい。また、軌道2は、2つ設けられていたが、3つ以上であってもよい。この場合、移動システム1は、昇降路6を3つ以上備えていてもよい。乗り部4は、2台であったが、各昇降路6に1台設けられていればよく、3台以上であってもよい。
【0052】
なお、本実施形態では、乗り部4が、昇降路6Aの2階から昇降路6Bの3階に到達するために、一回の装着変更が必要であるが、例えば即ち、複数回(この場合は、二階)の乗り部4の乗り移りが必要である。
【符号の説明】
【0053】
1…移動システム、2…軌道、3…移動部、4…乗り部、6、6A、6B…昇降路、7…乗場、21、22…軌道、31…第一の移動部、32…第二の移動部、33…第三の移動部、35…移動部側制御部、40…走行部、41…第一の乗り部、42…第二の乗り部、45…乗り部側制御部、310、320…横軌道、351…第一の移動部側制御部、352…第二の移動部側制御部、353…第三の移動部側制御部、400…乗り部ドア、401…本体、451…第一の乗り部側制御部、452…第二の乗り部側制御部、G…ガイドレール、M…移動装置、R…ロープ