(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012938
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/08 20060101AFI20230119BHJP
F16F 1/38 20060101ALI20230119BHJP
F16F 1/387 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
F16F15/08 K
F16F1/38 U
F16F1/387 B
F16F1/387 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116708
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】安田 恭宣
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BA19
3J048CB05
3J048EA01
3J048EA15
3J059AA04
3J059AB11
3J059BA42
3J059BC06
3J059DA15
3J059EA14
3J059GA02
3J059GA09
(57)【要約】
【課題】非接着タイプの防振装置において、防振装置本体のアウタ部材からの抜けを防ぎつつ、防振装置本体とアウタ部材の適切な組付けを容易に実現することができる、新規な構造の防振装置を提供する。
【解決手段】インナ軸部材16に本体ゴム弾性体18が固着された防振装置本体12が、アウタ部材14の筒状部34に挿入されて非接着状態で組み付けられた防振装置10において、本体ゴム弾性体18のゴム腕部28,28がインナ軸部材16と筒状部34の間で予圧縮されており、筒状部34の軸方向両側の開口部には内周へ突出する第一の抜止片42が一体形成されて、第一の抜止片42とゴム腕部28,28の当接によって防振装置本体12の筒状部34からの抜けを防止する第一の抜止部が構成されると共に、筒状部34の少なくとも一方の開口部には1つのゴム腕部28に重ね合わされる複数の第一の抜止片42a,42aが周方向で相互に離れて設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナ軸部材の外周面に本体ゴム弾性体が固着された構造を有する防振装置本体が、アウタ部材の筒状部に挿入されて非接着状態で組み付けられて、該インナ軸部材と該アウタ部材が該本体ゴム弾性体によって弾性連結された防振装置において、
前記本体ゴム弾性体は、前記インナ軸部材と前記アウタ部材の前記筒状部とを相互に連結する複数のゴム腕部を備えており、
該複数のゴム腕部が該インナ軸部材と該筒状部の間で予圧縮されており、
該筒状部の軸方向両側の開口部には、周方向で該ゴム腕部と対応する位置において内周へ突出する第一の抜止片が一体形成されており、該第一の抜止片と該ゴム腕部の当接によって前記防振装置本体の該筒状部からの抜けを防止する第一の抜止部が構成されると共に、
該筒状部の少なくとも一方の該開口部において複数の該第一の抜止片が該筒状部の周方向で相互に離れて設けられており、それら複数の第一の抜止片がそれぞれ該ゴム腕部に対して軸方向で重ね合わされている防振装置。
【請求項2】
前記筒状部の軸方向一方側の前記第一の抜止片と軸方向他方側の該第一の抜止片が、該筒状部の周方向で互いに異なる位置に形成されて軸方向の投影において互いに重なり合うことなく配置されている請求項1に記載の防振装置。
【請求項3】
前記軸方向一方側の第一の抜止片が前記筒状部の周方向における前記ゴム腕部の中央部分と対応する位置に設けられていると共に、前記軸方向他方側の第一の抜止片が該軸方向一方側の第一の抜止片に対して該筒状部の周方向における両側にそれぞれ設けられており、
該軸方向他方側の第一の抜止片と該ゴム腕部との重ね合わせ面積の総和が、該軸方向一方側の第一の抜止片と該ゴム腕部との重ね合わせ面積の総和よりも大きい請求項2に記載の防振装置。
【請求項4】
前記ゴム腕部の前記インナ軸部材と前記筒状部との連結方向に延びる弾性主軸が、該インナ軸部材側から該筒状部側へ向けて軸方向に傾斜している請求項1~3の何れか一項に記載の防振装置。
【請求項5】
前記本体ゴム弾性体は、前記複数のゴム腕部の周方向間において前記インナ軸部材から前記筒状部に向けて突出するストッパ突部を備えており、
該筒状部の少なくとも一方の前記開口部には、周方向で該ストッパ突部と対応する位置において内周へ突出する第二の抜止片が一体形成されており、該第二の抜止片と該ストッパ突部との当接によって該防振装置本体の該筒状部からの抜けを防止する第二の抜止部が構成される請求項1~4の何れか一項に記載の防振装置。
【請求項6】
一組の前記ストッパ突部が前記インナ軸部材の径方向の両側へ突出しており、
一方の該ストッパ突部と対応する位置に設けられた前記第二の抜止片が、該一方のストッパ突部に対して前記筒状部の軸方向一方の前記開口部側に形成されていると共に、
他方の該ストッパ突部と対応する位置に設けられた該第二の抜止片が、該他方のストッパ突部に対して該筒状部の軸方向他方の該開口部側に形成されている請求項5に記載の防振装置。
【請求項7】
前記筒状部には、前記ゴム腕部に対する周方向の側方において内周へ向けて突出する回転制限突起が設けられて、
該回転制限突起が該ゴム腕部における前記インナ軸部材からの突出先端よりも該筒状部の軸方向において外側まで連続して延びており、
該ゴム腕部が該回転制限突起に対して該筒状部の周方向で係止されることにより、前記本体ゴム弾性体と該筒状部との周方向の相対回転量を制限する回転制限機構が構成される請求項1~6の何れか一項に記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のトルクロッド、エンジンマウント、サスペンションリンク等に適用され得る防振装置に関するものであって、特に本体ゴム弾性体がアウタ部材に圧入されることにより非接着で組み付けられた非接着タイプの防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、車両等においてパワーユニット等の振動源と車両ボデー等の防振対象との防振連結に用いられる防振装置が知られている。防振装置は、インナ軸部材とアウタ部材が本体ゴム弾性体に対して接着された接着タイプが一般的であるが、例えば、特開2008-082517号公報(特許文献1)に示されているように、内筒から弾性部材の脚部が延び出した構造を有する防振装置本体が、外筒に対して圧入されることにより非接着で組み付けられた非接着タイプの構造も知られている。
【0003】
接着タイプの防振装置は、インナ軸部材とアウタ部材が本体ゴム弾性体に対して強固に固着されていることにより、大きな入力荷重に対応することができるが、本体ゴム弾性体がインナ軸部材とアウタ部材の両方に固着されていることにより、本体ゴム弾性体に引張応力が作用し易いと共に、接着面への応力集中による剥離なども問題となる場合があり、耐久性や耐荷重性の向上が必要となる場合もあった。
【0004】
そこで、接着によって高い耐荷重性能の実現を図る接着タイプの防振装置とは異なる設計思想に基づいて、従来から非接着タイプの防振装置が検討されている。非接着タイプの防振装置は、本体ゴム弾性体がアウタ部材に対して非接着とされていることから、接着タイプでは本体ゴム弾性体に引張応力が発生する入力時に、本体ゴム弾性体がアウタ部材から離れることによって、本体ゴム弾性体における引張応力の発生を大幅に低減することができる。それゆえ、非接着タイプの防振装置では、本体ゴム弾性体の耐久性が有利に確保されると共に、インナ軸部材と本体ゴム弾性体の接着面の剥離などが問題になり難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、非接着タイプの防振装置は、本体ゴム弾性体がアウタ部材に対して相対変位可能であることから、本体ゴム弾性体のアウタ部材からの抜けを防止するための抜止め構造が設けられる場合がある。特許文献1では、外筒の軸方向両側において内周へ突出する側板部が抜止めとして設けられている。側板部は、弾性部材の脚部の延出端部の全体を覆うように設けられており、側板部と脚部との当接によって脚部の外筒からの抜けが防止される。
【0007】
また、非接着タイプの防振装置は、本体ゴム弾性体がアウタ部材に対して初期状態で当接することで、摩擦抵抗によって本体ゴム弾性体のアウタ部材からの抜けを防ぐ等の目的から、本体ゴム弾性体が径方向に予圧縮された状態でアウタ部材に対して圧入されている。具体的には、例えば、本体ゴム弾性体を治具によって圧縮して縮径させた状態でアウタ部材に挿入することにより、本体ゴム弾性体がアウタ部材の内周において弾性的な形状復元によって拡径して、アウタ部材の内周面に当接する。この際に、本体ゴム弾性体が初期形状まで復元することなく圧縮された状態でアウタ部材の内周面に押し当てられることにより、本体ゴム弾性体が予圧縮された状態でアウタ部材に組み付けられる。
【0008】
ところが、抜止めを備えたアウタ部材に対して本体ゴム弾性体を予圧縮された状態で組み付けようとすると、本体ゴム弾性体のアウタ部材への組付け状態が安定しないおそれがあった。即ち、本体ゴム弾性体が圧縮された状態でアウタ部材へ挿入されて、アウタ部材の内周で弾性的に形状復元する際に、例えば本体ゴム弾性体やアウタ部材の寸法誤差や本体ゴム弾性体とアウタ部材の軸方向での相対位置の誤差等によって、本体ゴム弾性体と抜止めの当接状態等にバラつきが生じ得る。その結果、本体ゴム弾性体が歪に変形した状態でアウタ部材に組み付けられてしまったり、本体ゴム弾性体が抜止めに引っ掛かる等してアウタ部材の内周面に適切に押し当てられなかったりして、本体ゴム弾性体の耐久性や抜け抗力の低下、防振性能への悪影響などが問題となるおそれもあった。
【0009】
なお、特許文献1では、抜止めを構成する側板部が、弾性部材が組み付けられる外筒とは別体とされており、例えば、外筒に弾性部材を圧入した状態で側板部を外筒に固定することによって、弾性部材の軸方向両側に抜止めが設けられる。しかし、このような特許文献1の構造では、部品点数の増加を招くと共に、弾性部材を外筒に組み付けた状態で外筒と側板部とを溶接等の手段で固定する必要が生じて、製造に要する作業工程数が多くなったり、弾性部材に対して溶接時の熱による悪影響が及ぶおそれがあった。また、弾性部材を外筒に圧入してから側板部による抜止めを設けたとしても、側板部を外筒に固定する際に弾性部材が噛み込んだり、弾性部材と側板部の軸方向の位置にバラつきが生じたりするおそれがあり、弾性部材を外筒及び側板部からなるアウタ部材に安定して組み付けることは難しかった。
【0010】
本発明の解決課題は、非接着タイプの防振装置に特有な問題である防振装置本体のアウタ部材からの抜けを有効に防ぎつつ、非接着で組み付けられる防振装置本体とアウタ部材の適切な組付けを容易に実現することができる、新規な構造の防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0012】
第一の態様は、インナ軸部材の外周面に本体ゴム弾性体が固着された構造を有する防振装置本体が、アウタ部材の筒状部に挿入されて非接着状態で組み付けられて、該インナ軸部材と該アウタ部材が該本体ゴム弾性体によって弾性連結された防振装置において、前記本体ゴム弾性体は、前記インナ軸部材と前記アウタ部材の前記筒状部とを相互に連結する複数のゴム腕部を備えており、該複数のゴム腕部が該インナ軸部材と該筒状部の間で予圧縮されており、該筒状部の軸方向両側の開口部には、周方向で該ゴム腕部と対応する位置において内周へ突出する第一の抜止片が一体形成されており、該第一の抜止片と該ゴム腕部の当接によって前記防振装置本体の該筒状部からの抜けを防止する第一の抜止部が構成されると共に、該筒状部の少なくとも一方の該開口部において複数の該第一の抜止片が該筒状部の周方向で相互に離れて設けられており、それら複数の第一の抜止片がそれぞれ該ゴム腕部に対して軸方向で重ね合わされているものである。
【0013】
本態様に従う構造とされた防振装置によれば、本体ゴム弾性体がアウタ部材に対して非接着状態で組み付けられた非接着タイプの防振装置であることから、振動入力時に本体ゴム弾性体に発生する引張応力が低減されて、本体ゴム弾性体の耐久性の向上が図られる。また、本体ゴム弾性体が予圧縮されることにより、引張応力の更なる低減やばね定数の調節が可能になる。
【0014】
アウタ部材の第一の抜止片と本体ゴム弾性体のゴム腕部とが相互に当接することにより、アウタ部材の筒状部から防振装置本体が抜けるのを防いで、防振装置本体をアウタ部材への組付け状態に安定して保持することができる。筒状部の少なくとも一方の前記開口部には複数の第一の抜止片が周方向で相互に離れて設けられていることから、ゴム腕部と第一の抜止片の当接面積の総和を大きく得易くなると共に、第一の抜止片とゴム腕部の当接箇所が周方向で分散することにより、第一の抜止片への当接によるゴム腕部の抜け防止がより効果的に実現される。
【0015】
また、筒状部の少なくとも一方の開口部に設けられた複数の第一の抜止片が、周方向で相互に離れて配されていることにより、それら複数の第一の抜止片の間を通じて第一の抜止片とゴム腕部の当接部分の様子を目視等により確認することが可能である。それゆえ、アウタ部材と本体ゴム弾性体の組付け状態を把握し易く、本体ゴム弾性体をアウタ部材に対して適切に組み付けることができる。
【0016】
第二の態様は、第一の態様に記載された防振装置において、前記筒状部の軸方向一方側の前記第一の抜止片と軸方向他方側の該第一の抜止片が、該筒状部の周方向で互いに異なる位置に形成されて軸方向の投影において互いに重なり合うことなく配置されているものである。
【0017】
本態様に従う構造とされた防振装置によれば、筒状部の軸方向で分割された簡単な金型構造によって、筒状部の内周へ向けて突出する第一の抜止片が筒状部の軸方向両側の開口端部に設けられたアウタ部材を容易に型成形することができる。なお、好適には、軸方向両側の抜止部は、何れも、ゴム腕部の外周部分に比して周方向の長さが短くされると共に、抜止部の周方向端部が、ゴム腕部の軸方向側面上で周方向に離隔して2つ以上設けられる。これにより、抜止部の軸方向内方へゴム腕部が嵌まり込むようにして正しく組み付けられていることを一層容易に且つ正しく確認することが可能になる。
【0018】
第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された防振装置において、前記軸方向一方側の第一の抜止片が前記筒状部の周方向における前記ゴム腕部の中央部分と対応する位置に設けられていると共に、前記軸方向他方側の第一の抜止片が該軸方向一方側の第一の抜止片に対して該筒状部の周方向における両側にそれぞれ設けられており、該軸方向他方側の第一の抜止片と該ゴム腕部との重ね合わせ面積の総和が、該軸方向一方側の第一の抜止片と該ゴム腕部との重ね合わせ面積の総和よりも大きいものである。
【0019】
本態様に従う構造とされた防振装置によれば、軸方向一方側に設けられた第一の抜止片が周方向においてゴム腕部の中央部分に重ね合わされることにより、第一の抜止片との当接によってゴム腕部に作用する当接反力がゴム腕部に対してバランスよく及ぼされて、ゴム腕部の軸方向一方側への抜けを少ない第一の抜止片によって効率的に防止することができる。
【0020】
また、軸方向他方側に設けられた複数の第一の抜止片が周方向で相互に離れた位置でゴム腕部に重ね合わされることにより、防振装置本体の筒状部に対する軸方向他方側への抜けが効果的に防止される。しかも、軸方向他方側に設けられた複数の第一の抜止片のゴム腕部に対する重ね合わせ面積が、軸方向一方側に設けられた第一の抜止片のゴム腕部に対する重ね合わせ面積よりも大きくされていることから、防振装置本体の軸方向他方側への抜けがより効果的に防止される。従って、防振装置本体に作用する軸方向の力が軸方向一方向きと他方向きとで異なる場合など、軸方向両側で必要とされる抜けに対する抗力が異なる場合に、軸方向両側においてそれぞれ有効な抜け抗力を得ることができる。
【0021】
第四の態様は、第一~第三の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記ゴム腕部の前記インナ軸部材と前記筒状部との連結方向に延びる弾性主軸が、該インナ軸部材側から該筒状部側へ向けて軸方向に傾斜しているものである。
【0022】
本態様に従う構造とされた防振装置によれば、例えば、ゴム腕部の外法寸法が小さい側から防振装置本体を筒状部へ挿入する等、防振装置本体の筒状部への挿入方向を考慮することにより、防振装置本体のアウタ部材への組付けを容易に行うことができる。また、傾斜したゴム腕部の外法寸法が拡大する軸方向の入力時には、ゴム腕部と筒状部との間に作用する摩擦抵抗力がゴム腕部の変形によって増大して、防振装置本体の筒状部からの抜けに対する抗力を大きく得ることができる。それゆえ、例えば、インナ軸部材とアウタ部材の間へ入力される軸方向荷重の最大値が軸方向両側で相互に異なる場合に、防振装置本体の軸方向の向きを入力荷重の大小を考慮して設定することにより、防振装置本体の筒状部からの抜けを有利に防ぐことができる。
【0023】
第五の態様は、第一~第四の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記本体ゴム弾性体は、前記複数のゴム腕部の周方向間において前記インナ軸部材から前記筒状部に向けて突出するストッパ突部を備えており、該筒状部の少なくとも一方の前記開口部には、周方向で該ストッパ突部と対応する位置において内周へ突出する第二の抜止片が一体形成されており、該第二の抜止片と該ストッパ突部との当接によって該防振装置本体の該筒状部からの抜けを防止する第二の抜止部が構成されるものである。
【0024】
本態様に従う構造とされた防振装置によれば、ストッパ突部と筒状部との当接によって、インナ軸部材とアウタ部材の軸直角方向の相対変位量が制限されることから、本体ゴム弾性体の過大な弾性変形が防止されて、本体ゴム弾性体の耐久性の向上が図られる。
【0025】
また、第一の抜止片とゴム腕部の当接による第一の抜止部だけでなく、第二の抜止片とストッパ突部の当接による第二の抜止部によっても、防振装置本体の筒状部からの抜けが防止されることから、防振装置本体とアウタ部材の適切な組付け状態がより効果的に保持される。
【0026】
第六の態様は、第一~第五の何れか1つの態様に記載された防振装置において、一組の前記ストッパ突部が前記インナ軸部材の径方向の両側へ突出しており、一方の該ストッパ突部と対応する位置に設けられた前記第二の抜止片が、該一方のストッパ突部に対して前記筒状部の軸方向一方の前記開口部側に形成されていると共に、他方の該ストッパ突部と対応する位置に設けられた該第二の抜止片が、該他方のストッパ突部に対して該筒状部の軸方向他方の該開口部側に形成されているものである。
【0027】
本態様に従う構造とされた防振装置によれば、第二の抜止片がストッパ突部に対する軸方向の片側に設けられていることから、第二の抜止片を備えるアウタ部材を型成形する場合に、第二の抜止片による軸方向でのアンダーカットが回避されて、簡単な金型構造によってアウタ部材を成形することが可能となる。
【0028】
一組のストッパ突部と当接する第二の抜止片が、筒状部の各一方の開口部側に設けられることから、第二の抜止部による防振装置本体の筒状部からの抜止効果を軸方向の両側において得ることができる。また、例えば、インナ軸部材とアウタ部材の間にこじり方向の荷重が入力される場合に、想定されるこじり荷重の入力方向に応じて第二の抜止片を配することにより、こじり荷重の入力による防振装置本体の筒状部からの抜けを防止することもできる。
【0029】
第七の態様は、第一~第六の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記筒状部には、前記ゴム腕部に対する周方向の側方において内周へ向けて突出する回転制限突起が設けられて、該回転制限突起が該ゴム腕部における前記インナ軸部材からの突出先端よりも該筒状部の軸方向において外側まで連続して延びており、該ゴム腕部が該回転制限突起に対して該筒状部の周方向で係止されることにより、前記本体ゴム弾性体と該筒状部との周方向の相対回転量を制限する回転制限機構が構成されるものである。
【0030】
本態様に従う構造とされた防振装置によれば、回転制限突起とゴム腕部の当接によって、防振装置本体の筒状部内での相対回転を制限することができ、防振装置本体を筒状部に対して適切な周方向の向きに保持することができる。回転制限突起がゴム腕部の突出先端部よりも軸方向の外側まで延びていることにより、回転制限突起とゴム腕部の周方向での当接面積が大きく確保されると共に、ゴム腕部の部分的な変形によって回転制限突起とゴム腕部の当接が解除されてしまうことがなく、防振装置本体と筒状部の相対回転量が有効に制限される。
【0031】
前記各態様に従う構造とされた防振装置では、例えばゴム腕部の軸方向両端面の径方向の傾斜角度が、径方向の内から外に向かって次第に小さくされており、抜止片が重ね合わされたゴム腕部の外周端部分では傾斜角度が最も小さくされており、当該外周端部分が略軸直角方向に所定幅をもって周方向に広がる略平坦状の重ね合わせ面とされている態様も、任意に採用され得る。また、かかる重ね合わせ面に重ね合わされる抜止片の軸方向内面も、軸直角方向に所定幅をもって周方向に広がる略平坦面形状とされることが望ましい。尤も、かかる抜止片の軸方向内面は、組み付けられるゴム腕部の案内面としての作用を考慮したり、ゴム腕部の軸方向側面への当接などを考慮して、径方向内方に行くに従って次第に軸方向外方に向かう傾斜面とされていても良い。また、前記各態様に従う構造とされた防振装置では、主たる荷重(想定される最も大きな荷重)の入力方向に対して一組のストッパ突部が突出して設けられており、かかる主たる荷重の入力方向に対して略直交する両側に向かって一組のゴム腕部が突出するように設けられている態様も、任意に採用され得る。非接着タイプの防振装置では重要と考えられていた抜止片を敢えて周方向で部分的にしか設けないことで、例えばゴム腕部の組付け状態の確認を容易にしたり、ゴム腕部への過度の拘束を回避して低ばね特性などのチューニング自由度を向上させたりできるし、特に第7の態様に示したようにゴム腕部に対して周方向の位置規定で周方向への変形量を制限することによって、荷重入力時におけるゴム腕部の外周部分の変形自由度を制限して周方向で部分的な抜止片によってもゴム腕部の抜け出しを一層効率的に且つ確実に制限することを可能とし得た。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、非接着タイプの防振装置で問題となる防振装置本体のアウタ部材からの抜けを有効に防ぎつつ、非接着で組み付けられる防振装置本体とアウタ部材の適切な組付けを容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の第一の実施形態としてのトルクロッドを示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0035】
図1~
図5には、本発明に従う構造とされた防振装置の第一の実施形態として、自動車用のトルクロッド10が示されている。トルクロッド10は、
図6にも示すように、防振装置本体12が、アウタ部材としてのロッド本体14に非接着で組み付けられた構造を有している。以下の説明において、原則として、上下方向とは後述するインナ軸部材16及び筒状部34の軸方向である
図4中の上下方向を、左右方向とはロッド本体14のロッド長さ方向である
図2中の左右方向を、幅方向とはロッド本体14の幅方向である
図2中の上下方向を、それぞれ言う。また、原則として、軸方向とは後述するインナ軸部材16及び筒状部34の軸方向を、周方向とは後述するインナ軸部材16及び筒状部34の周方向を、それぞれ言う。
【0036】
防振装置本体12は、インナ軸部材16に本体ゴム弾性体18が固着された構造を有している。インナ軸部材16は、金属や繊維補強された合成樹脂等で形成された高剛性の部材とされている。インナ軸部材16は、上下方向に直線的に延びる柱状の部材であって、上下方向に貫通するボルト孔20を備えている。インナ軸部材16は、上下方向視において略等脚台形状とされており、左右方向の一方から他方(
図2中の左方から右方)へ向けて幅寸法(
図2中の上下寸法)が大きくなっている。従って、インナ軸部材16の外周面は、左右方向で並んで互いに略平行に広がる幅寸法の異なる幅広面22と幅狭面24と、それら幅広面22と幅狭面24とを相互につなぐ一組の傾斜固着面26,26とを備えている。
【0037】
本体ゴム弾性体18は、インナ軸部材16の一組の傾斜固着面26,26から外周へ向けて突出する一組のゴム腕部28,28を備えている。ゴム腕部28は、一組の傾斜固着面26,26に固着されており、例えば本体ゴム弾性体18の成形時に加硫接着されている。ゴム腕部28は、
図2,
図3に示すように、インナ軸部材16から外周へ向けて左方へ傾斜しながら突出しており、
図2中に二点鎖線で示すゴム腕部28の突出方向に延びる弾性主軸Lが、インナ軸部材16から外周へ向けて左方へ傾斜している。ゴム腕部28の弾性主軸Lは、
図4に示すように、インナ軸部材16から外周へ向けて上傾している。ゴム腕部28は、インナ軸部材16への固着端面である内周端面よりも突出先端面である外周端面の方が、周方向の幅寸法が大きくされている。また、ゴム腕部28は、インナ軸部材16への固着端面である内周端面よりも突出先端面である外周端面の方が、上下方向の厚さ寸法が小さくされている。本実施形態において、ゴム腕部28の軸方向端面は、内周から外周へ向けて軸直角方向に対する傾斜角度が次第に小さくされており、外周端部において傾斜角度が最も小さくなっている。例えば、ゴム腕部28の軸方向端面の外周部分には、軸直角方向に広がって周方向に所定の長さで延びる平坦面が設けられており、当該平坦面に後述する第一,第二の抜止片42,44が重ね合わされる。
【0038】
本体ゴム弾性体18は、インナ軸部材16の幅広面22から突出する第一のストッパ突部30と、インナ軸部材16の幅狭面24から突出する第二のストッパ突部32とを、備えている。第一のストッパ突部30と第二のストッパ突部32は、幅広面22と幅狭面24とが並ぶ左右方向で互いに反対向きに突出している。第一のストッパ突部30と第二のストッパ突部32は、インナ軸部材16の周方向においてゴム腕部28,28の間に設けられている。第一のストッパ突部30と第二のストッパ突部32は、ゴム腕部28,28に対して、基端部分でインナ軸部材16の周方向に連続していると共に、先端部分ではインナ軸部材16の周方向で相互に離隔して独立している。
図2,
図3に示すように、第一のストッパ突部30の幅寸法は、第二のストッパ突部32の幅寸法よりも大きくされている。
図5に示すように、第一のストッパ突部30と第二のストッパ突部32は、インナ軸部材16に固着された基端面の上下寸法が相互に略同じとされていると共に、突出先端面の上下寸法が相互に略同じとされている。第一のストッパ突部30のインナ軸部材16からの突出寸法は、第二のストッパ突部32のインナ軸部材16からの突出寸法以上とされている。第一のストッパ突部30の突出方向での圧縮ばね定数は、第二のストッパ突部32の突出方向での圧縮ばね定数よりも大きくされており、第一のストッパ突部30が第二のストッパ突部32よりも突出方向の圧縮ばね特性が硬くされている。
【0039】
ゴム腕部28の突出先端面の面積は、第一のストッパ突部30の突出先端面の面積と、第二のストッパ突部32の突出先端面の面積との何れよりも大きくされている。ゴム腕部28の突出先端面の周方向寸法は、第一のストッパ突部30の突出先端面の周方向寸法よりも大きくされており、好適には、第一のストッパ突部30の突出先端面の周方向寸法の2倍以上とされている。なお、第一,第二のストッパ突部30,32の突出先端面とは、好適には、入力が想定されるストッパ荷重の作用状態下における筒状部34(後述)への当接領域であって、例えば、筒状部34の内周面に対応する形状の対向面よりも広い範囲とされる。また、第一,第二のストッパ突部30,32の突出先端面とは、例えば、筒状部34との当接に際して当接初期段階で筒状部34に当接する部分である。
【0040】
ロッド本体14は、アルミニウム合金や鉄などの金属、或いは繊維補強された合成樹脂等で形成された高剛性の部材であって、好適には、ダイカスト成形や射出成形などによって製造される型成形品とされている。ロッド本体14は、筒状部34から右方へ向けて一組の軸状部36,36が延び出した構造とされている。
【0041】
筒状部34は、略円筒形状とされており、上下方向に貫通する装着孔38を備えている。そして、筒状部34の装着孔38には、インナ軸部材16と本体ゴム弾性体18を備える防振装置本体12が非接着で挿入されている。筒状部34の内周面は、防振装置本体12におけるゴム腕部28,28の突出先端面を含む仮想的な筒状面よりも小径とされている。従って、防振装置本体12が筒状部34の装着孔38へ挿入されると、ゴム腕部28,28の突出先端面が筒状部34の内周面に押し当てられて、ゴム腕部28,28が突出方向で圧縮された状態となる。要するに、ゴム腕部28,28は、防振装置本体12がロッド本体14の筒状部34に装着された状態において、インナ軸部材16と筒状部34との間で予圧縮されている。ゴム腕部28,28の突出先端面が筒状部34に押し当てられることによって、インナ軸部材16と筒状部34を備えるロッド本体14とが、本体ゴム弾性体18のゴム腕部28,28によって弾性連結されている。ゴム腕部28,28は、筒状部34に対して非接着の当接状態で重ね合わされており、筒状部34に対して相対変位可能とされている。
【0042】
防振装置本体12は、例えば、ゴム腕部28,28が図示しない筒状の治具によって圧縮された状態で、筒状部34へ挿入される。これにより、防振装置本体12の筒状部34への挿入時に、ゴム腕部28,28と筒状部34の間で作用する摩擦抵抗が低減されて、防振装置本体12の筒状部34への挿入が容易になる。治具によって圧縮された状態のゴム腕部28,28は、突出先端面が後述する第一の抜止片42の突出先端面よりも内周に位置していることが望ましく、これによって防振装置本体12の筒状部34への挿入がより容易になると共に、ゴム腕部28,28が第一の抜止片42を乗り越えることによるゴム腕部28,28の損傷が回避される。
【0043】
また、第一,第二のストッパ突部30,32の突出先端面は、筒状部34の内周面に対して所定のストッパクリアランスだけ内周側へ離隔している。従って、第一,第二のストッパ突部30,32は、防振装置本体12の筒状部34への装着状態において、突出方向で予圧縮されていない。
【0044】
筒状部34は、各ゴム腕部28に対する周方向両側において内周へ向けて突出する回転制限突起40を備えている。回転制限突起40は、略一定の四角形断面で筒状部34の軸方向に連続して直線的に延びている。回転制限突起40は、筒状部34の軸方向全長にわたって連続して設けられており、ゴム腕部28のインナ軸部材16からの突出先端部(外周端部)よりも軸方向の両外側まで延びている。回転制限突起40は、筒状部34の周方向においてゴム腕部28と重なり合っている。回転制限突起40は、突出方向の少なくとも一部において、筒状部34に装着された防振装置本体12のゴム腕部28に対して周方向で予め当接していることが望ましい。本実施形態において、回転制限突起40は、各ゴム腕部28に対して周方向の両外側にそれぞれ設けられていることから、筒状部34において周方向で相互に離れた位置に4つが設けられている。
【0045】
筒状部34の周方向においてゴム腕部28,28と対応する部分には、第一の抜止片42がそれぞれ設けられている。第一の抜止片42は、上下方向が厚さ方向とされた板状であって、筒状部34の軸方向端部において筒状部34から内周へ向けて突出している。第一の抜止片42は、ゴム腕部28に対して上下方向の投影において重なり合う位置に設けられている。第一の抜止片42は、ゴム腕部28に対して軸方向外側へ離れた位置に設けられていてもよいが、本実施形態ではゴム腕部28に対して予め当接しており、ゴム腕部28が第一の抜止片42に押し当てられている。第一の抜止片42におけるゴム腕部28と重ね合わされる面は、軸直角方向に広がる平坦面とされている。第一の抜止片42は、筒状部34の軸方向両側の開口部にそれぞれ設けられている。第一の抜止片42は、ゴム腕部28に対して周方向両側に設けられた回転制限突起40,40の周方向間に設けられている。第一の抜止片42は、筒状部34と一体形成されている。
【0046】
筒状部34の上側の開口部には、ゴム腕部28と重ね合わされる2つの第一の抜止片42a,42aが設けられている。第一の抜止片42a,42aは、周方向において相互に離れて設けられており、ゴム腕部28の周方向両端部分に対して筒状部34の軸方向で重ね合わされている。第一の抜止片42a,42aは、一組の回転制限突起40,40に対して周方向で離隔して設けられている。第一の抜止片42a,42a間の周方向での距離は、周方向で隣り合う第一の抜止片42aと回転制限突起40との周方向での距離よりも大きくされている。複数の第一の抜止片42aは、本実施形態において略同一の形状や大きさで形成されているが、互いに異なる形状や大きさであってもよい。筒状部34の上側の開口部に設けられる第一の抜止片42aは、各ゴム腕部28に対して2つが設けられていることから、筒状部34全体に対しては4つが周方向で相互に離れた位置に設けられている。
【0047】
筒状部34の上側の開口部において複数の第一の抜止片42aが周方向で相互に離れて設けられていることにより、例えば1つのゴム腕部28に重ね合わされる第一の抜止片42a,42aの周方向間を通じて、ゴム腕部28の筒状部34に対する組付け状態を上方から目視等で確認することができる。即ち、防振装置本体12の筒状部34への挿入組付けにおいて、圧縮されたゴム腕部28,28が筒状部34の内周で弾性的に形状復元して筒状部34に押し当てられることから、ゴム腕部28,28の筒状部34に対する相対的な位置や当接態様にバラつきが生じ得る。そこで、トルクロッド10では、第一の抜止片42a,42aがゴム腕部28の突出先端部の上面全体を覆うことなく周方向で部分的に設けられていることにより、ゴム腕部28,28が筒状部34の内周面に対して適切に当接しているか、ゴム腕部28,28が筒状部34に対して軸方向及び周方向で適切な位置に配されているか等を、防振装置本体12の筒状部34への挿入後にも容易に確認可能されている。
【0048】
第一の抜止片42aは、回転制限突起40に対して周方向で離れていることから、ゴム腕部28の周方向端部におけるゴム腕部28と筒状部34の組付け状態を、第一の抜止片42aと回転制限突起40との周方向間を通じて確認することができる。また、第一の抜止片42a,42aが周方向で相互に離れてゴム腕部28の周方向両端部分に重ね合わされていることから、ゴム腕部28の周方向中央部分におけるゴム腕部28と筒状部34の組付け状態を、第一の抜止片42a,42aの周方向間を通じて確認することができる。これらにより、本実施形態では、ゴム腕部28と筒状部34の組付け状態を、組付け状態の不具合が比較的に問題となり易い組付け部分の周方向両端部分及び中央部分において確認可能であり、ゴム腕部28と筒状部34の組付け状態をより正確に把握することができる。
【0049】
ゴム腕部28の周方向両端部は、歪な変形が生じ易いことから組付け状態が不安定になり易く、本実施形態ではゴム腕部28の周方向端面と回転制限突起40との当接による摩擦抵抗によっても不適切な組付け状態となり得る。また、ゴム腕部28が周方向両端部において筒状部34に適切に組み付けられている場合には、ゴム腕部28の周方向両端部からの距離が長いゴム腕部28の周方向中央部分において組付け状態の不良が問題になり易い。そこにおいて、本実施形態では、ゴム腕部28の周方向両端部と周方向中央部の両方において組付け状態の確認が可能とされていることにより、ゴム腕部28と筒状部34の組付け状態を確実に把握することができる。
【0050】
なお、防振装置本体12の筒状部34への挿入方向は特に限定されないが、例えば、防振装置本体12が筒状部34に対して下側から挿入される場合には、ゴム腕部28の上端部において組付け状態の不良が発生し易いことから、上側の第一の抜止片42a,42a間を通じた組付け状態の確認が効果的に機能する。また、目視等によって組付け状態の不良を発見した場合には、例えば、第一の抜止片42a,42aの周方向間の隙間を通じてゴム腕部28の突出先端部に外力を加えることにより、ゴム腕部28の筒状部34に対する位置や当接態様を修正することもできる。
【0051】
筒状部34の下側の開口部には、周方向においてゴム腕部28の中央部分に重ね合わされる1つの第一の抜止片42bが設けられている。第一の抜止片42bは、筒状部34の軸方向投影において、第一の抜止片42a,42aの周方向間に位置している。第一の抜止片42a,42aと第一の抜止片42bは、筒状部34の周方向で相互に異なる位置に設けられており、筒状部34の軸方向投影において相互に重なり合わない位置に配されている。本実施形態では、第一の抜止片42a,42aがゴム腕部28の上面に当接していると共に、第一の抜止片42bがゴム腕部28の下面に当接している。第一の抜止片42a,42a,42a,42aとゴム腕部28との重ね合わせ面積の総和は、第一の抜止片42b,42bとゴム腕部28との重ね合わせ面積の総和よりも大きくされている。なお、第一の抜止片42aと第一の抜止片42bは、本実施形態において略同一の形状や大きさとされているが、例えば、想定される入力荷重の違い等に基づいて、第一の抜止片42aと第一の抜止片42bの形状や大きさなどを相互に異ならせることもできる。
【0052】
第一の抜止片42bは、ゴム腕部28の突出先端部を周方向の全長にわたって覆うことなく、ゴム腕部28の突出先端部に対して周方向で部分的に重ね合わされている。これにより、例えば1つのゴム腕部28に重ね合わされる第一の抜止片42bの周方向両側において、ゴム腕部28の筒状部34に対する組付け状態を下方から目視等で確認することができる。なお、第一の抜止片42bの周方向両側の隙間を通じてゴム腕部28の突出先端部に外力を加えることにより、ゴム腕部28の筒状部34に対する位置や当接態様を修正することもできる。
【0053】
筒状部34の周方向において第一,第二のストッパ突部30,32と対応する部分には、第二の抜止片44がそれぞれ設けられている。第二の抜止片44は、上下方向が厚さ方向とされた板状であって、筒状部34の軸方向端部において筒状部34から内周へ向けて突出している。第二の抜止片44は、第一,第二のストッパ突部30,32の突出先端部分に対して上下方向の投影において重なり合う位置に設けられている。第二の抜止片44は、第一,第二のストッパ突部30,32に対して当接していてもよいが、本実施形態では第一,第二のストッパ突部30,32から筒状部34の軸方向で外側へ離れて設けられている。第二の抜止片44は、回転制限突起40に関して第一の抜止片42と筒状部34の周方向で反対側に配されている。第二の抜止片44は、本実施形態において、回転制限突起40に対して周方向で離隔している。第二の抜止片44は、筒状部34の軸方向両側の開口部にそれぞれ設けられている。第二の抜止片44は、筒状部34と一体形成されている。第二の抜止片44と重ね合わされるストッパ突部30,32の軸方向両端面は、インナ軸部材16側から筒状部34側へ向けて軸直角方向に対する傾斜角度が次第に小さくなっており、第二の抜止片44と重ね合わされる外周端部において傾斜角度が最小となっている。
【0054】
第一のストッパ突部30と重ね合わされる第二の抜止片44aと、第二のストッパ突部32と重ね合わされる第二の抜止片44bは、筒状部34の軸方向各一方の開口部に設けられている。即ち、本実施形態では、第二の抜止片44aが筒状部34の上側の開口部に設けられていると共に、第二の抜止片44bが筒状部34の下側の開口部に設けられている。第二の抜止片44aと第二の抜止片44bは、本実施形態では互いに略同一の形状及び大きさとされているが、例えば、周方向で幅広の第一のストッパ突部30と重ね合わされる第二の抜止片44aの周方向寸法が、周方向で幅狭の第二のストッパ突部32と重ね合わされる第二の抜止片44bの周方向寸法よりも大きくされていてもよい。なお、第二の抜止片44aの周方向寸法は、第二の抜止片44aと重ね合わされる第一のストッパ突部30の突出先端部分の周方向寸法よりも大きくされていることが望ましい。同様に、第二の抜止片44bの周方向寸法は、第二の抜止片44bと重ね合わされる第二のストッパ突部32の突出先端部分の周方向寸法よりも大きくされていることが望ましい。
【0055】
筒状部34から延び出す一組の軸状部36,36は、ロッド状乃至は長手板状とされており、本実施形態では板厚方向で互いに対向して略平行に延びる長手板状の部材とされている。軸状部36,36の筒状部34からの延出方向は、第一のストッパ突部30のインナ軸部材16からの突出方向と略同じとされている。軸状部36は、長手方向一端が筒状部34と一体的につながっていると共に、長手方向他端に取付部46を備えている。取付部46は、略円環板状とされており、板厚方向である軸状部36,36の対向方向に貫通する取付用孔48を備えている。そして、一組の軸状部36,36の取付部46,46間に図示しないブッシュが配されて、当該ブッシュの内筒部材が取付部46,46に対してボルト固定されるようになっている。
【0056】
したがって、軸状部36,36の長手方向一端には、防振装置本体12と筒状部34によって構成された第一のブッシュが設けられており、軸状部36,36の長手方向他端には、取付部46,46に取り付けられる図示しない第二のブッシュが設けられる。そして、例えば、第一のブッシュのインナ軸部材16が車両ボデーに取り付けられると共に、取付部46,46に取り付けられた第二のブッシュの外筒部材がパワーユニットに取り付けられることにより、パワーユニットと車両ボデーがトルクロッド10によって防振連結される。このように、パワーユニットと車両ボデーがトルクロッド10で防振連結されることにより、パワーユニットの発生力に対する反力(トルク反力)がトルクロッド10によって受けられて、パワーユニットの変位が規制される。また、トルクロッド10の両端部分にそれぞれブッシュが設けられていることから、パワーユニットから車両ボデーに伝達される振動が低減されて、良好な乗り心地等が実現される。
【0057】
防振装置本体12の本体ゴム弾性体18は、ロッド本体14の筒状部34に対して、非接着で挿入されて圧入状態で組み付けられている。それゆえ、インナ軸部材16とロッド本体14の筒状部34とを弾性連結する本体ゴム弾性体18のゴム腕部28,28は、引張応力が発生する方向の振動入力時に、筒状部34から離れることによって引張応力が発生し難い。その結果、引張応力の発生によるゴム腕部28,28の損傷や破断等が防止されて、ゴム腕部28,28の優れた耐久性が実現される。
【0058】
さらに、インナ軸部材16の幅広面22と筒状部34の内周面とが第一のストッパ突部30を介して当接することによる第一のストッパ機構と、インナ軸部材16の幅狭面24と筒状部34の内周面とが第二のストッパ突部32を介して当接することによる第二のストッパ機構とによって、インナ軸部材16と筒状部34の相対変位量が制限されている。これにより、ゴム腕部28,28の弾性変形量が過度に大きくなり難く、ゴム腕部28,28の過大な変形に起因する耐久性の低下が防止される。
【0059】
本実施形態では、インナ軸部材16と筒状部34との連結方向に延びるゴム腕部28,28の弾性主軸(
図2中の二点鎖線)Lが、インナ軸部材16側から筒状部34側である外周側へ向けて第二のストッパ突部32の突出方向(
図2中の左方)へ傾斜している。これにより、インナ軸部材16が筒状部34に対して第二のストッパ突部32側へ変位する場合には、ゴム腕部28,28の圧縮ばね成分によってもインナ軸部材16と筒状部34の相対変位量が制限される。一方、インナ軸部材16が筒状部34に対して第一のストッパ突部30側へ変位する場合には、ゴム腕部28,28の圧縮ばね成分が小さく、インナ軸部材16と筒状部34の相対変位量はゴム腕部28,28のばねによっては制限され難い。そこで、第一のストッパ突部30は、幅寸法が第二のストッパ突部32よりも大きくされており、突出方向の圧縮ばね定数が第二のストッパ突部32よりも大きくされている。それゆえ、ゴム腕部28,28のばね定数が小さいことでインナ軸部材16と筒状部34の相対変位量が大きくなり易い方向において、第一のストッパ突部30による優れたストッパ作用が発揮される。なお、インナ軸部材16におけるゴム腕部28,28の固着面は、幅広面22と幅狭面24とをつなぐ傾斜固着面26,26とされていることから、インナ軸部材16が筒状部34に対して第二のストッパ突部32側へ変位する際に、ゴム腕部28,28において圧縮ばね成分による硬いばね特性を得ることができる。
【0060】
ところで、ロッド本体14の筒状部34に対して非接着で組み付けられる防振装置本体12は、筒状部34からの抜けが生じ得るが、このような防振装置本体12の筒状部34からの抜けを防止する抜止部が設けられている。
【0061】
すなわち、第一の抜止片42がゴム腕部28の突出先端部分と当接して係止されることによって、防振装置本体12の筒状部34に対する上下方向の変位量を制限して防振装置本体12の筒状部34からの抜けを防止する第一の抜止部が構成される。そして、ゴム腕部28,28を含む本体ゴム弾性体18を備えた防振装置本体12が、非接着で組み付けられたロッド本体14の筒状部34から抜けるのを、第一の抜止部によって防ぐことができる。
【0062】
第一の抜止片42は、筒状部34の軸方向両側の開口部にそれぞれ設けられていることから、防振装置本体12の筒状部34からの抜けが、筒状部34の軸方向両側において防止されている。即ち、4つの第一の抜止片42a,42a,42a,42aとゴム腕部28との当接によって、防振装置本体12の筒状部34から上側への抜けを防止する上側の第一の抜止部が構成されると共に、2つの第一の抜止片42b,42bとゴム腕部28との当接によって、防振装置本体12の筒状部34から下側への抜けを防止する下側の第一の抜止部が構成される。
【0063】
特に防振装置本体12の抜け出しが問題となり易い筒状部34の上側開口部では、各ゴム腕部28に対して2つの第一の抜止片42a,42aが設けられている。そして、上側の第一の抜止部における第一の抜止片42a,42a,42a,42aとゴム腕部28との当接面積の総和は、下側の第一の抜止部における第一の抜止片42b,42bとゴム腕部28との当接面積の総和よりも大きくされている。それゆえ、防振装置本体12の筒状部34に対する上側への抜けが、各ゴム腕部28が2つの第一の抜止片42a,42aによって変位規制されることによって、より効果的に防止される。しかも、それら2つの第一の抜止片42a,42aは、周方向で相互に離れた位置においてゴム腕部28に重ね合わされている。これにより、ゴム腕部28が周方向で相互に離れた2箇所において第一の抜止片42a,42aに当接係止されて、ゴム腕部28の筒状部34に対する変位が効果的に規制される。
【0064】
本実施形態では、インナ軸部材16と筒状部34との連結方向に延びるゴム腕部28,28の弾性主軸(
図4中の二点鎖線)Lが、インナ軸部材16側から筒状部34側である外周側へ向けて上傾している。これにより、ゴム腕部28がインナ軸部材16と筒状部34との間で圧縮される際に、ゴム腕部28の外周端部には上向きの分力が作用することから、ゴム腕部28が筒状部34から上側へ変位し易い。ここにおいて、筒状部34の上側開口部には、ゴム腕部28に対する当接面積が大きく且つゴム腕部28を周方向の二箇所において変位規制する第一の抜止片42aが設けられていることから、防振装置本体12の抜け出しが問題となり易い筒状部34の上側開口部において、防振装置本体12の筒状部34からの抜けが効果的に防止される。
【0065】
一方、筒状部34の下側開口部には、各ゴム腕部28に対して1つの第一の抜止片42bだけが設けられており、第一の抜止片42bとゴム腕部28の重ね合わせ面積が、第一の抜止片42a,42aとゴム腕部28の重ね合わせ面積の総和よりも小さくされている。これにより、防振装置本体12の抜け出しが生じ難い筒状部34の下側開口部では、第一の抜止片42bの数が少なくされることによって、有効な抜止効果を得ながら、軽量化や構造の簡単化等を図ることができる。
【0066】
筒状部34の下側開口部に設けられた第一の抜止片42bは、周方向においてゴム腕部28の中央部分に重ね合わされている。これにより、1つの第一の抜止片42bによってゴム腕部28の下方への抜けをバランスよく防ぐことができる。また、筒状部34の上側開口部に設けられた第一の抜止片42aと、筒状部34の下側開口部に設けられた第一の抜止片42bは、筒状部34の軸方向の投影において互いに重なり合うことなく配置されている。それゆえ、例えば、上側の第一の抜止片42aと下側の第一の抜止片42bとを備える筒状部34が型成形によって形成される場合に、筒状部34の軸方向で分割される簡単な金型構造を採用しても、第一の抜止片42がアンダーカットになるのを防ぐことができる。
【0067】
本実施形態では、防振装置本体12のロッド本体14への装着状態において、ゴム腕部28の外周端部が第一の抜止片42に予め当接していることから、防振装置本体12の筒状部34に対する位置ずれもゴム腕部28,28の第一の抜止片42への当接によって抑えられる。
【0068】
また、ロッド本体14の筒状部34に対して非接着で組み付けられる防振装置本体12は、第一,第二のストッパ突部30,32と筒状部34に設けられた第二の抜止片44との当接により構成される第二の抜止部によっても、筒状部34からの抜けが防止される。
【0069】
すなわち、第一のストッパ突部30の突出先端部の上側に設けられた第二の抜止片44aと第一のストッパ突部30とが軸方向で当接して係止されることにより、防振装置本体12の筒状部34に対する上側への相対変位量を制限する上側の第二の抜止部が構成される。また、第二のストッパ突部32の突出先端部の下側に設けられた第二の抜止片44bと第二のストッパ突部32とが軸方向で当接して係止されることにより、防振装置本体12の筒状部34に対する下側への相対変位量を制限する下側の第二の抜止部が構成される。このように、第一,第二のストッパ突部30,32と第二の抜止片44との当接係止により構成される第二の抜止部によっても、防振装置本体12の筒状部34からの抜けが防止される。
【0070】
第二の抜止片44aが第一のストッパ突部30の上側に設けられていると共に、第二の抜止片44bが第二のストッパ突部32の下側に設けられていることにより、防振装置本体12の筒状部34からの抜けが、第二の抜止部によって筒状部34の軸方向両側で防止される。また、例えば、筒状部34に対して第一のストッパ突部30が上側へ変位し且つ第二のストッパ突部32が下側へ変位するこじり方向の荷重が入力される場合に、第一,第二のストッパ突部30,32と第二の抜止片44a,44bとの当接によって、インナ軸部材16と筒状部34のこじり変位量も制限され得る。
【0071】
筒状部34の周方向における第二の抜止片44aの幅寸法が、第一のストッパ突部30の幅寸法よりも大きくされており、第一のストッパ突部30の突出先端部が幅方向の全体にわたって第二の抜止片44aと重ね合わされている。また、筒状部34の周方向における第二の抜止片44bの幅寸法が、第二のストッパ突部32の幅寸法よりも大きくされており、第二のストッパ突部32の突出先端部が幅方向の全体にわたって第二の抜止片44bと重ね合わされている。これらによって、ゴム腕部28よりも周方向の幅寸法が小さい第一,第二のストッパ突部30,32を利用した第二の抜止部において、抜止効果を有効に得ることができる。
【0072】
また、非接着で組み付けられた防振装置本体12と筒状部34は、周方向の相対回転を生じ得るが、本実施形態では、ゴム腕部28の側面が筒状部34に設けられた回転制限突起40と周方向で当接して係止されることによって、防振装置本体12と筒状部34の周方向での相対回転量を制限する回転制限機構が構成される。本実施形態では、ゴム腕部28と回転制限突起40が周方向で予め当接しており、防振装置本体12と筒状部34が周方向で相互に位置決めされている。本実施形態では、防振装置本体12の筒状部34に対する回転変位量が、複数の回転制限突起40によって周方向の両側において制限される。回転制限突起40がゴム腕部28の突出先端部よりも軸方向の外側まで連続して設けられており、ゴム腕部28の突出先端部が軸方向の略全長にわたって回転制限突起40に当接することから、ゴム腕部28と回転制限突起40の当接係止がゴム腕部28の変形によって解除され難い。
【0073】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、第一の抜止片42の数、配置、形状、大きさなどは、何れも限定されない。また、上側の第一の抜止片42aと下側の第一の抜止片42bは、互いに形状や大きさが異なっていてもよいし、筒状部34の軸方向投影において互いに重なる位置に設けられていてもよい。
【0074】
前記実施形態では、上側の第一の抜止片42aと下側の第一の抜止片42bが何れも筒状部34と一体形成された構造を例示したが、例えば、上側の第一の抜止片42aと下側の第一の抜止片42bとの少なくとも一方が筒状部34とは別体の部品に設けられていてもよい。具体的には、例えば、筒状部34の下面に重ね合わされて固定される円環板状の抜止部材を筒状部34とは別に形成し、当該抜止部材に第一の抜止片42bを一体的に形成することにより、抜止部材の筒状部34への固定をもって第一の抜止片42bを筒状部34に対して内周へ突出するように設けることができる。なお、第二の抜止片44や回転制限突起40を筒状部34とは別体で形成して、筒状部34に固定的に設けることもできる。
【0075】
第一の抜止片42は、筒状部34の軸方向端部に設けられることが、ゴム腕部28のゴムボリュームを確保する等の観点から望ましいが、例えば、筒状部34の軸方向の途中に設けられていてもよい。第二の抜止片44についても同様に筒状部34の軸方向の途中に設けられ得る。要するに、第一の抜止片42又は第二の抜止片44が筒状部34の開口部に設けられるとは、筒状部34の軸方向端部に設けられる場合だけを意味するのではなく、ゴム腕部28に対して筒状部34の軸方向外方に位置していれば、筒状部34の軸方向の途中に設けられる場合を含む。
【0076】
第一の抜止片42a,42aの周方向間を通じたゴム腕部28と筒状部34の組付け状態の確認は、目視による確認に限定されるものではなく、例えば、レーザーや電波による測量機器を用いてゴム腕部28の突出先端部と筒状部34との相対的な位置関係を自動的に確認することもできる。
【0077】
第一の抜止片42とゴム腕部28との重ね合わせ面は、前記実施形態のように軸方向に対して略直交していてもよいし、内周へ向けて軸方向外方へ傾斜して、防振装置本体12の筒状部34への組付けを容易にしてもよいし、内周へ向けて軸方向内方へ傾斜して、防振装置本体12の筒状部34からの抜けをより効果的に防止してもよい。
【0078】
第二の抜止片44は、必須ではなく、省略することもできる。また、1つのストッパ突部30(32)に対する軸方向の両側に第二の抜止片44a,44bを設けて、1つのストッパ突部30(32)とそれら第二の抜止片44a,44bとの当接によって、軸方向両側の第二の抜止部を構成することもできる。
【0079】
インナ軸部材16は、例えば、楕円筒状を含む円筒状、矩形筒状、四角形以外の多角柱状、異形筒状などであってもよく、形状を限定されるものではない。また、インナ軸部材16は、中実のロッド状であってもよく、その場合には、例えば、軸方向端部にねじなどの車両等への取付構造が設けられ得る。
【0080】
ゴム腕部28の弾性主軸Lは、必ずしも上下方向や長さ方向で傾斜していなくてもよい。ゴム腕部28は、3つ以上が設けられ得る。また、必ずしも全てのゴム腕部28と対応する部分に第一の抜止片42を設ける必要はなく、複数のゴム腕部の1つ又は全部ではない幾つかと対応する部分において第一の抜止片42が設けられていなくてもよい。
【0081】
ロッド本体は、筒状部34を備えていれば、軸状部36等の具体的な構造は特に限定されない。具体的には、例えば、筒状部34の外周面から延び出す1つの軸状部を有しており、当該軸状部の筒状部34と反対側の端部には、筒状部34とは別の筒状のブッシュ圧入部が設けられていてもよい。
【0082】
本発明は、トルクロッド以外の防振装置にも適用することができる。具体的には、本発明は、例えば、サスペンションリンク、サスペンションブッシュ等の筒型防振装置などにも適用可能である。また、本発明は、内部に封入された液体の流動作用等による防振効果が発揮される流体封入式の防振装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
10 トルクロッド(防振装置)
12 防振装置本体
14 ロッド本体(アウタ部材)
16 インナ軸部材
18 本体ゴム弾性体
20 ボルト孔
22 幅広面
24 幅狭面
26 傾斜固着面
28 ゴム腕部
30 第一のストッパ突部
32 第二のストッパ突部
34 筒状部
36 軸状部
38 装着孔
40 回転制限突起
42 第一の抜止片
44 第二の抜止片
46 取付部
48 取付用孔