(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130054
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ロック装置付き台車
(51)【国際特許分類】
G01B 15/02 20060101AFI20230912BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20230912BHJP
B21B 38/04 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
G01B15/02 A
B21C51/00 K
B21B38/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034499
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】堀越 孝弘
【テーマコード(参考)】
2F067
【Fターム(参考)】
2F067BB12
2F067HH04
2F067PP11
(57)【要約】
【課題】自動で固定できるロック装置付き台車を提供する。
【解決手段】ロック装置付き台車1は、台車10と、台車10が所定の位置に到達したときに台車10を停止させるリミットスイッチ50と、エアシリンダ30と、エアシリンダ30により第一方向に沿って往復運動可能なロックピン40と、を備える。ロックピン40が受け座103に挿入されることにより、台車10の位置が固定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車と、
前記台車が所定の位置に到達したときに前記台車を停止させるリミットスイッチと、
エアシリンダと、
前記エアシリンダにより第1方向に沿って往復運動可能なロックピンと、
を備え、
前記ロックピンが受け座に挿入されることにより、前記台車の位置が固定されるロック装置付き台車。
【請求項2】
前記第1方向に対して交差した第2方向に延びるノックピンをさらに備え、
前記エアシリンダは、
エアが注入及び排出される筐体と、
前記エアによって前記筐体に対して往復運動可能なロッドと、
を有し、
前記ノックピンは前記ロッドに固定されており、
前記ロックピンには、穴が形成されており、
前記ノックピンは前記穴内を前記第1方向に沿って摺動可能であり、
前記ロックピンの先端部は先端に近づくほど細くなる請求項1に記載のロック装置付き台車。
【請求項3】
前記ロックピンの先端部の形状は、先端に近づくほど連続的に細くなるテーパ状である請求項1または2に記載のロック装置付き台車。
【請求項4】
台車と、
前記台車が所定の位置に到達したときに前記台車を停止させるリミットスイッチと、
エアシリンダと、
前記エアシリンダにより往復運動可能な一対のロック部材と、
を備え、
前記一対のロック部材がレールを挟むことにより、前記台車の位置が固定されるロック装置付き台車。
【請求項5】
前記台車に搭載されたX線厚み計をさらに備えた請求項1~4のいずれか1つに記載のロック装置付き台車。
【請求項6】
前記台車に搭載され、前記台車に対して移動可能な子台車と、
前記台車に固定され、前記子台車を移動させる移動手段と、
をさらに備え、
前記X線厚み計は前記子台車に搭載された請求項5に記載のロック装置付き台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、ロック装置付き台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鋼板を製造する際には、厚みを高精度に制御するために、板幅方向に沿った厚みプロファイルを測定している。鋼板の厚みプロファイルは、台車に搭載したX線厚み計により測定することが多い。鋼板を圧延する際には、台車は圧延ラインから離れた位置に退避しており、厚みプロファイルを測定する際には、圧延ラインを停止して、X線厚み計が鋼板を厚さ方向において挟むような位置に台車を移動させる。厚みの測定中は台車が完全に停止している必要があるため、台車にロックピンを設け、工場の床等に設けられた受け座にロックピンを挿入する。しかしながら、作業者が手動でロックピンを抜き差しすると、手間と時間がかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の目的は、自動で固定できるロック装置付き台車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るロック装置付き台車は、台車と、前記台車が所定の位置に到達したときに前記台車を停止させるリミットスイッチと、エアシリンダと、前記エアシリンダにより第1方向に沿って往復運動可能なロックピンと、を備える。前記ロックピンが受け座に挿入されることにより、前記台車の位置が固定される。
【0006】
実施形態に係るロック装置付き台車は、台車と、前記台車が所定の位置に到達したときに前記台車を停止させるリミットスイッチと、エアシリンダと、前記エアシリンダにより往復運動可能な一対のロック部材と、を備える。前記一対のロック部材がレールを挟むことにより、前記台車の位置が固定される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るロック装置付き台車を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態におけるエアシリンダを示す図である。
【
図3】
図3(a)~(c)は、第1の実施形態におけるロックピン及びその周辺を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は側面断面図であり、(c)は正面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態におけるリレースイッチを示す図である。
【
図5】
図5(a)~(d)は、ロックピンが下方に移動する動作を示す図である。
【
図6】
図6(a)及び(b)は、ロックピンが上方に移動する動作を示す図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係るロック装置付き台車を示す図である。
【
図8】
図8(a)及び(b)は、第2の実施形態におけるエアシリンダを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1の実施形態>
先ず、第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るロック装置付き台車を示す図である。
図2は、本実施形態におけるエアシリンダを示す図である。
図3(a)~(c)は、本実施形態におけるロックピン及びその周辺を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は側面断面図であり、(c)は正面図である。
図4は、本実施形態におけるリレースイッチを示す図である。
なお、各図は模式的なものであり、適宜強調及び簡略化されている。後述する他の図についても同様である。
【0009】
図1に示すように、本実施形態に係るロック装置付き台車1は、例えば工場内で使用される。工場には、鋼板200を圧延する圧延ライン(図示せず)が設置されている。鋼板200は、
図1の紙面垂直方向に移動しながら圧延される。ロック装置付き台車1は、鋼板200における幅方向の厚みプロファイルを測定するための装置である。
【0010】
工場の床101にはレール102が設置されており、ロック装置付き台車1はレール102上に配置されている。レール102は鋼板200の幅方向に延びている。また、床101には、受け座103が設けられている。受け座103は、例えば、上下方向に延びる円柱形の穴である。さらに、床101にはリミットスイッチ50のスイッチ部51及びアクチュエータ52が設けられている。
【0011】
ロック装置付き台車1においては、親台車10が設けられている。親台車10は駆動手段15を有し、レール102に沿って往復移動が可能である。駆動手段15は例えばモータである。親台車10の側面には、リミットスイッチ50のストライカ53が固定されている。床101に固定されたスイッチ部51及びアクチュエータ52、並びに、親台車10に固定されたストライカ53により、リミットスイッチ50が構成されている。リミットスイッチ50は、親台車10がレール102上の所定の位置に到達したときに、親台車10を停止させる。
【0012】
親台車10上には、子台車11が搭載されている。また、親台車10には、子台車11を移動させる移動手段12が固定されている。移動手段12は例えばパワーシリンダーである。子台車11は親台車10に対して鋼板200の幅方向に移動可能である。
【0013】
子台車11には、X線厚み計13が搭載されている。X線厚み計13は鋼板200に対してX線を照射し、鋼板200を透過したX線を検出することにより、鋼板200の厚みを測定する。
【0014】
また、親台車10には、ロック装置20が設けられている。ロック装置20には、エアシリンダ30及びロックピン40が設けられている。以下、ロック装置20の構成について説明する。
【0015】
図2に示すように、エアシリンダ30においては、電磁弁31と、電磁弁31にエアを供給する配管32と、筐体33と、筐体33に対して往復運動可能なロッド34と、電磁弁31から筐体33にエアを供給する配管35及び配管36と、が設けられている。電磁弁31は、配管32から供給されたエアを、配管35に供給するか、配管36に供給するか、配管35及び36のいずれにも供給しないか、を切り替える。
【0016】
筐体33の形状は例えば略円筒形である。筐体33の上面は封止され、下面にはロッド34の軸部34bが挿通されている。ロッド34には、筐体33内に配置された円板部34aと、円板部34aに連結され、筐体33の内部と外部をつなぐ軸部34bと、軸部34bに連結され、筐体33の外部に配置されたブロック部34cが設けられている。円板部34aは筐体33の内部を気密的に区画しながら移動可能である。
【0017】
電磁弁31が配管35にエアを供給すれば、ロッド34はエアの圧力差によって筐体33から突出する方向に移動する。電磁弁31が配管36にエアを供給すれば、ロッド34はエアの圧力差によって筐体33内に引っ込む方向に移動する。本実施形態においては、ロッド34の運動方向は上下方向に設定されている。
【0018】
図3(a)~(c)に示すように、ロックピン40の形状は上下方向に延びる略円柱形であり、ロックピン40の先端部はテーパ部41となっている。テーパ部41の形状は、先端に近づくほど連続的に細くなるテーパ状である。ロックピン40の上部には、上下方向に延びる円柱形の凹部42が形成されており、凹部42を囲む側壁には、一対の穴43が形成されている。一対の穴43は相互に対向する位置に形成されており、凹部42の内部とロックピン40の外部とを連通させている。側方から見て、穴43の形状は上下方向に延びる長円形である。凹部42内には、ロッド34のブロック部34cが配置される。
【0019】
ロッド34のブロック部34cには水平方向に延びる貫通孔37が形成されている。貫通孔37はロックピン40の一対の穴43に対応する位置に形成されている。貫通孔37にはノックピン38が挿入されて固定されている。ノックピン38の形状は例えば円柱状であり、ロッド34の運動方向(第1方向)に対して交差、例えば直交する水平方向(第2方向)に延びている。
【0020】
ノックピン38の両端部は、一対の穴43内に配置されている。水平方向におけるノックピン38の幅は、穴43の幅と略等しく、上下方向におけるノックピン38の長さは、穴43の長さよりも短い。これにより、ノックピン38は穴43内を上下方向に摺動可能である。このため、ロッド34のブロック部34cはロックピン40の凹部42内を上下方向に移動可能である。この結果、ロックピン40はロッド34に対して一定の範囲内で上下方向に沿って往復運動可能である。
【0021】
ロックピン40は親台車10に対して、水平方向に沿った移動は規制されているが、後述するように、上下方向に沿った移動は一定の範囲内で可能である。ロックピン40が下方に移動して、床101に形成された受け座103に挿入されることにより、親台車10の位置が固定される。ロックピン40が上方に移動して受け座103の外部に出ると、親台車10の固定が解除される。
【0022】
図4に示すように、リミットスイッチ50においては、床101に固定されたスイッチ部51からアクチュエータ52が突出している。アクチュエータ52はスイッチ部51を軸として回動可能である。アクチュエータ52に外力が印加されていない状態では、アクチュエータ52は例えば真上に向けて起立している。
【0023】
親台車10に固定されたストライカ53は、親台車10がレール102上の所定の位置に到達したときに、アクチュエータ52の先端を水平方向に押圧するような位置に配置されている。ストライカ53においては、例えば、水平板53aが設けられており、水平板53aの両端から斜め上方に向かって延びる一対の傾斜板53bが設けられている。一対の傾斜板53bの配列方向は、親台車10の移動方向であり、鋼板200の幅方向である。アクチュエータ52はストライカ53の傾斜板53bによって押圧されることにより回動し、これにより、スイッチ部51が切り替わる。この結果、親台車10の駆動手段15を停止させ、親台車10の移動を停止させる。
【0024】
次に、本実施形態に係るロック装置付き台車1の動作について説明する。
図5(a)~(d)は、ロックピンが下方に移動する動作を示す図である。
図6(a)及び(b)は、ロックピンが上方に移動する動作を示す図である。
【0025】
図1に示すように、圧延ライン(図示せず)が鋼板200を圧延しているときは、親台車10は圧延ラインから離れた位置に待避している。また、
図5(a)に示すように、エアシリンダ30において、電磁弁31は配管36にエアを供給しており、ロッド34の円板部34aは筐体33内の上部に位置している。さらに、ノックピン38の両端部はロックピン40の穴43の上部に位置している。この結果、ロックピン40の下端は床101よりも上方に配置されており、親台車10の移動を規制しない。
【0026】
圧延ラインが停止し、鋼板200の厚みプロファイルを測定するときは、親台車10が駆動手段15を駆動してレール102上を走行し、X線厚み計13によって鋼板200を測定できる位置まで移動する。親台車10が所定に位置に到達すると、
図4に示すように、ストライカ53の前方側の傾斜板53bがリミットスイッチ50のアクチュエータ52に接触し、アクチュエータ52を押圧する。これにより、アクチュエータ52が回動し、スイッチ部51が切り替わり、駆動手段15を停止させる。これにより、親台車10が所定の位置に停止する。このとき、親台車10の停止位置には誤差が生じる場合がある。
【0027】
次に、
図5(b)に示すように、電磁弁31が切り替わり、配管35にエアを供給する。これにより、ロッド34の円板部34aがエアの圧力差によって下方に移動し、ブロック部34c及びノックピン38も下方に移動する。ロックピン40の位置が受け座103に対して僅かにずれている場合は、ロックピン40のテーパ部41の側面が受け座103の上端縁に接触する。
【0028】
このとき、ロックピン40のテーパ部41の側面は受け座103の上端縁から上向きの力を受けるものの、ノックピン38が穴43内を下方に摺動し、ロックピン40はノックピン38に対して相対的に上方に移動する。この結果、エアシリンダ30によってロッド34に伝達された力が、ノックピン38の摺動によって緩和され、ロックピン40は弱い下向きの力でゆっくりと下方に移動する。これにより、テーパ部41の側面が受け座103の上端縁に対してゆっくりと摺動し、水平方向におけるロックピン40の位置が自己整合的に修正される。これに伴い、親台車10の位置も修正される。
【0029】
図5(c)に示すように、ロッド34がさらに下方に移動し、ノックピン38が穴43の下端に到達すると、エアシリンダ30によってロッド34に伝達された力が緩和されずにそのままロックピン40に伝わり、ロックピン40が強い力で下方に移動する。
【0030】
これにより、
図5(d)に示すように、ロックピン40が受け座103内に収納され、水平方向の位置がロックされる。この結果、親台車10の位置もロックされる。その後、電磁弁31が切り替わり、配管35へのエアの供給を停止してもよい。
【0031】
次に、
図1に示すように、移動手段12が駆動し、子台車11を親台車10上で移動させる。移動手段12は子台車11を所定量だけ移動させては停止させる。そして、子台車11が停止しているときに、X線厚み計13が鋼板200に対してX線を照射し、鋼板200を透過したX線を検出することにより、鋼板200の厚みを測定する。このように、子台車11の移動及び停止を繰り返しつつ、X線厚み計13が鋼板200の厚みを測定することにより、鋼板200の幅方向における厚みプロファイルを取得する。
【0032】
移動手段12が子台車11の移動を開始するとき、及び、子台車11を停止させるときには、移動手段12から親台車10に反力が印加されるが、親台車10はロックピン40及び受け座103により固定されているため、親台車10が意図せずに移動することを抑制できる。この結果、X線厚み計13は精度が高い厚みプロファイルを測定できる。
【0033】
厚みプロファイルの測定が終了したら、
図6(a)に示すように、エアシリンダ30の電磁弁31が切り替わり、配管36にエアを供給する。これにより、ロッド34の円板部34aがエアの圧力差によって上方に移動し、これに伴い、ブロック部34c及びノックピン38も上方に移動する。このとき、ロックピン40も弱い力で上方に移動する。
【0034】
図6(b)に示すように、ロックピン40が移動可能範囲の上端に到達すると、ロックピン40はそれ以上移動できなくなり、ノックピン38は穴43内を上方に摺動する。そして、ノックピン38が穴43の上端に到達する。このようにして、ロックピン40が受け座103から排出され、親台車10のロックが解除される。
【0035】
次に、
図1に示すように、駆動手段15が駆動して、親台車10を鋼板200から遠ざける方向に移動させる。その後、圧延ラインが作動し、鋼板200の圧延を再開する。
【0036】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、ロック装置付き台車1にリミットスイッチ50及びロック装置20が設けられているため、親台車10が所定の位置に到達したときに、リミットスイッチ50によって親台車10を自動的に停止させ、ロック装置20によってロックピン40を受け座103に自動的に挿入することができる。また、鋼板200の厚みプロファイルを取得した後で、ロック装置20によってロックピン40を受け座103から自動的に抜き出すことができる。これにより、作業者が手動でロックピンを抜き差しする場合と比較して、手間と時間を低減できる。
【0037】
また、本実施形態においては、ロックピン40の先端がテーパ部41となっている。これにより、ロックピン40の位置が受け座103から僅かにずれていても、テーパ部41の側面が受け座103の上端縁に接触する。その後、ロックピン40を下方に押し込むことにより、水平方向におけるロックピン40の位置を自己整合的に修正することができる。この結果、水平方向における親台車10の位置も修正できる。
【0038】
さらに、本実施形態においては、ロッド34とロックピン40がノックピン38及び穴43を介して連結されていることにより、ノックピン38が穴43内を摺動している間、ロックピン40にはエアシリンダ30がロッド34に印加した力の全ては伝わらず、弱い力でロックピン40を移動させることができる。これにより、ロックピン40の位置が受け座103から僅かにずれていて、テーパ部41の側面が受け座103の上端縁に接触した場合でも、受け座103からロックピン40に伝わる衝撃を抑制し、ロックピン40を受け座103内に滑らかに誘導することができる。この結果、親台車10の位置が修正される前にロックピン40が受け座103内に無理に押し込まれ、受け座103内で引っかかってしまうことを抑制できる。また、ロックピン40が受け座103の上端縁又は側面に衝突する衝撃により、親台車10が過度に移動してしまうことを抑制できる。
【0039】
なお、本実施形態においては、ロックピン40の先端部がテーパ部41である例を示したが、ロックピン40の先端部の形状はテーパ状には限定されない。但し、ロックピン40の先端部は先端に近づくほど細くなっていることが好ましい。例えば、ロックピン40の先端部は半球状又は円錐状であってもよい。また、本実施形態においては、受け座103が工場の床101に設けられている例を示したが、これには限定されず、受け座103は工場の壁又は天井に設けられていてもよい。また、本実施形態においては、リミットスイッチ50のスイッチ部51及びアクチュエータ52が床101に設けられており、ストライカ53が親台車10に設けられている例を示したが、ストライカ53が床101に設けられ、スイッチ部51及びアクチュエータ52が親台車10に設けられていてもよい。また、ストライカ53又はスイッチ部51及びアクチュエータ52は、親台車10の側面ではなく下面に配置されていてもよい。
【0040】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。
図7は、本実施形態に係るロック装置付き台車を示す図である。
図8(a)及び(b)は、本実施形態におけるエアシリンダを示す図である。
【0041】
図7に示すように、本実施形態においては、工場の天井105にレール106が設置されており、本実施形態に係るロック装置付き台車2はレール106に吊り下げられた状態で移動可能となっている。また、工場には、ロック用のレール107も設けられている。レール106及び107は、鋼板200の幅方向に延びている。さらに、天井105にはリミットスイッチ50のスイッチ部51及びアクチュエータ52が設けられている。アクチュエータ52はスイッチ部51から下方に向けて突出している。
【0042】
ロック装置付き台車2においては、台車16が設けられている。台車16は駆動手段15を有し、レール106に沿って往復移動が可能である。台車16の側面には、リミットスイッチ50のストライカ53が固定されている。天井105に固定されたスイッチ部51及びアクチュエータ52、並びに、台車16に固定されたストライカ53により、リミットスイッチ50が構成されている。リミットスイッチ50は、台車16がレール106上の所定の位置に到達したときに、台車16を停止させる。ストライカ53においては、水平板53aの両端から斜め下方に延びるように、一対の傾斜板53bが設けられている。
【0043】
台車16にはX線厚み計13が搭載されている。本実施形態においては、第1の実施形態とは異なり、X線厚み計13は子台車を介さずに台車16に直接搭載されており、台車16に固定されている。また、台車16には、ロック装置60が設けられている。ロック装置60には、エアシリンダ70及び一対のロック部材80が設けられている。以下、ロック装置60の構成について説明する。
【0044】
図8(a)及び(b)に示すように、エアシリンダ70においては、電磁弁71と、電磁弁71にエアを供給する配管72と、一対の筐体73と、各筐体73に対して往復運動可能なロッド74と、電磁弁71から各筐体73にエアを供給する配管75及び配管76と、が設けられている。電磁弁71は、配管72から供給されたエアを、一対の配管75に供給するか、一対の配管76に供給するか、配管75及び76のいずれにも供給しないか、を切り替える。エアシリンダ70において、電磁弁71及び配管72は1つのみ設けられており、筐体73、ロッド74、配管75及び配管76は2つずつ設けられている。
【0045】
筐体73の形状は例えば略円筒形である。筐体73の一方の端面は封止され、他方の端面にはロッド74の軸部74bが挿通されている。各ロッド74には、筐体73内に配置された円板部74aと、円板部74aに連結され、筐体73の内部と外部をつなぐ軸部74bと、軸部74bに連結され、筐体73の外部に配置されたジョイント部74cが設けられている。円板部74aは筐体73の内部を気密的に区画しながら移動可能である。一対の筐体73は、軸部74bが挿通された端面が相互に対向するように配置されている。各ロッド74のジョイント部74cには、ロック部材80が取り付けられている。
【0046】
ロッド74の運動方向は、水平方向であってレール106及び107が延びる方向に対して直交する方向に設定されている。また、一対のロック部材80はロック用のレール107を挟む位置に配置されている。電磁弁71が配管75にエアを供給すれば、ロッド74はエアの圧力差によって筐体73から突出する方向に移動する。これにより、一対のロック部材80は相互に近づき、レール107を挟む。一方、電磁弁71が配管76にエアを供給すれば、ロッド74はエアの圧力差によって筐体73内に引っ込む方向に移動する。これにより、一対のロック部材80は相互に離れ、レール107からも離れる。
【0047】
次に、本実施形態に係るロック装置付き台車2の動作について説明する。
図7に示すように、圧延ライン(図示せず)が鋼板200を圧延しているときは、台車16は圧延ラインから離れた位置に待避している。このとき、
図8(a)に示すように、エアシリンダ70において、電磁弁71は配管76にエアを供給しているか、配管75及び76のいずれにもエアを供給しておらず、ロック部材80はレール107から離れている。このため、ロック装置60は台車16の移動を規制しない。
【0048】
圧延ラインが停止し、鋼板200の厚みプロファイルを測定するときは、台車16が駆動手段15を駆動してレール106に吊り下がった状態で移動する。台車16が所定に位置に到達すると、ストライカ53の前方側の傾斜板53bがリミットスイッチ50のアクチュエータ52に接触し、アクチュエータ52を押圧する。これにより、アクチュエータ52が回動し、スイッチ部51が切り替わり、駆動手段15を停止させる。これにより、台車16が所定の位置に停止する。
【0049】
次に、
図8(b)に示すように、電磁弁71が切り替わり、配管75にエアを供給する。これにより、一対のロッド74の円板部74aがエアの圧力差によって移動し、一対のロック部材80が相互に近づく方向に移動し、レール107を挟む。これにより、台車16の位置がロックされる。
【0050】
次に、
図7に示すように、X線厚み計13が鋼板200の厚みプロファイルを測定する。X線厚み計13が厚みプロファイルを測定している間、電磁弁71は配管75にエアを供給し続け、レール107を挟圧し続ける。
【0051】
厚みプロファイルの測定が終了したら、
図8(a)に示すように、エアシリンダ70の電磁弁71が切り替わり、一対の配管76にエアを供給する。これにより、ロッド74の円板部74aがエアの圧力差によって移動し、一対のロック部材80がレール107から離れる。この結果、台車16のロックが解除される。その後、電磁弁71を切り替えて、配管75及び76のいずれにもエアを供給しないようにしてもよい。
【0052】
次に、
図7に示すように、駆動手段15が駆動して、台車16を鋼板200から遠ざける方向に移動させる。その後、圧延ラインが作動し、鋼板200の圧延を再開する。
【0053】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、ロック装置付き台車2にリミットスイッチ50及びロック装置60が設けられているため、台車16が所定の位置に到達したときに、リミットスイッチ50によって台車16を自動的に停止させることができる。また、ロック装置60によって一対のロック部材80にレール107を自動的に挟圧させることができる。さらに、鋼板200の厚みプロファイルを取得した後で、ロック装置60によって一対のロック部材80をレール107から自動的に離すことができる。これにより、作業者が手動で台車16をロックする場合と比較して、手間と時間を低減できる。
【0054】
また、ロック装置60においては、一対のロック部材80により、レール107が延びる方向に対して直交する方向からレール107を挟んでいる。これにより、台車16の位置が停止させる予定の位置から僅かにずれていたとしても、支障なく台車16をロックすることができる。
【0055】
なお、台車16が小刻みに移動と停止を繰り返し、停止するたびにX線厚み計13が鋼板200の一部について厚みを測定することにより、鋼板200の厚みプロファイルを取得してもよい。この場合も、台車16が停止するたびにロック装置60が台車16をロックすることにより、厚みの測定中に台車16が移動することを抑制し、精度が高い厚みプロファイルを取得できる。この場合は、ロックピンを受け座に抜き差しする方式と比較して、短時間で台車16のロックとロック解除を行うことができ、厚みプロファイルを短時間で取得できる。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0056】
以上説明した実施形態によれば、自動で固定できるロック装置付き台車を実現することができる。
【0057】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びその等価物の範囲に含まれる。また、前述の実施形態は、相互に組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0058】
1、2:ロック装置付き台車
10:親台車
11:子台車
12:移動手段
13:X線厚み計
15:駆動手段
16:台車
20:ロック装置
30:エアシリンダ
31:電磁弁
32:配管
33:筐体
34:ロッド
34a:円板部
34b:軸部
34c:ブロック部
35、36:配管
37:貫通孔
38:ノックピン
40:ロックピン
41:テーパ部
42:凹部
43:穴
50:リミットスイッチ
51:スイッチ部
52:アクチュエータ
53:ストライカ
53a:水平板
53b:傾斜板
60:ロック装置
70:エアシリンダ
71:電磁弁
72:配管
73:筐体
74:ロッド
74a:円板部
74b:軸部
74c:ジョイント部
75、76:配管
80:ロック部材
101:床
102:レール
103:受け座
105:天井
106:レール
107:固定用のレール
200:鋼板