(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130781
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】包装用材料
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20230913BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230913BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20230913BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B32B27/00 M
B32B27/00 H
B32B3/30
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035264
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】591015784
【氏名又は名称】共同技研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜野 尚吉
(72)【発明者】
【氏名】浜野 尚
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 達雄
(72)【発明者】
【氏名】大曲 翔太
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA35
3E086BA44
3E086BB35
3E086CA31
3E086DA08
4F100AA37E
4F100AK03
4F100AK03B
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4F100AN00A
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4F100JM01
(57)【要約】
【課題】基材フィルムの両面又は片面に形成された自己接着層同士を互いに感圧接着させて品物を結束,被包するテープ状又はシート状の包装用材料であって,良好な手切れ性を有する包装用材料を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の包装用材料1は,基材層2が,少なくとも片面に幅方向に複数の凹溝23が所定間隔で形成された凹凸面22を有するポリオレフィン樹脂製フィルム又は,可塑性樹脂製フラットヤーンからなる織布の片面又は両面にポリオレフィンフィルムのラミネート層が積層された積層フィルムから成り,前記基材層2の片面又は両面に形成された自己接着層3同士を互いに感圧接着させて品物を結束又は包装するテープ状又はシート状である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層が,少なくとも片面に幅方向に複数の凹溝が所定間隔で形成された凹凸面を有するポリオレフィン樹脂製フィルムから成り,
前記基材層の片面又は両面に形成された自己接着層同士を互いに感圧接着させて品物を結束又は包装するテープ状又はシート状の包装用材料。
【請求項2】
基材層が,熱可塑性樹脂製フラットヤーンからなる織布の片面又は両面にポリオレフィンフィルムのラミネート層が積層された積層フィルムから成り,
前記基材層の片面又は両面に形成された自己接着層同士を互いに感圧接着させて品物を結束又は包装するテープ状又はシート状の包装用材料。
【請求項3】
前記基材層がコロナ放電処理されている請求項1又は2記載の包装用材料。
【請求項4】
前記基材層と前記自己接着層との間に,前記自己接着層同士を引き剥がす際の剥離力よりも強い力で前記基材層に接着するプライマー層が介在されている請求項1~3いずれか1項記載の包装用材料。
【請求項5】
前記プライマー層に,導電性フィラーとなるカーボン粉末が均一に混入されると共に,前記カーボン粉末の粒子が,各粒子間に電子の移動を妨げない程度の間隔をあけて分散させられている請求項1~4いずれか1項記載の包装用材料。
【請求項6】
前記基材層と前記自己接着層との間に,帯電防止剤が添加されたコーティング樹脂により形成された帯電防止層が設けられている請求項1~5いずれか1項記載の包装用材料。
【請求項7】
前記自己接着層が,自着性を有するゴム系材料と,接着に寄与する官能基を有する低分子材料とを混合して成る自己接着性材料から形成されている請求項1~6いずれか1項記載の包装用材料。
【請求項8】
前記自己接着層の外表面の幅方向に複数の凹溝が所定間隔で形成されている請求項1~7いずれか1項記載の包装用材料。
【請求項9】
前記自己接着層の外表面に,前記自己接着層同士を互いに感圧接着させることにより相互に嵌り合う凹凸が形成されている請求項1~7いずれか1項記載の包装用材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,品物の結束や緊締,被包等の各種態様の包装に用いられるテープ状またはシート状の包装用材料であって,表面に備えた自己接着層同士の結合と剥離を繰り返し行うことができる包装用材料に関する。
【背景技術】
【0002】
品物を結束又は緊締する包装用材料としては,セロハンテープやビニールテープ,ガムテープなどの粘着テープ(結束用テープ)が一般的であるが,このような粘着テープで品物を直に結束したり,品物が詰められた段ボール箱やプラスチックフィルム製のパック容器(包装袋)などを梱包したりした場合,該粘着テープを引き剥がす際に,品物の表面にテープの粘着剤が付着残存してその表面を汚損したり,テープの粘着力で段ボール箱の表面やパック容器のプラスチックフィルムが引き破られたり,また,その反動で前記パック容器から品物が飛び出して散乱するという問題があった。
【0003】
また,滑剤を含まない,低分子系塩化ビニリデン,PO(ポリオレフィン)系を使用したラップフィルムが包装用材料として用いられているが,ラップフィルム同士の結合機構がナノ領域であるため,接合面が固定されやすく,再結合,再剥離には適さない問題があった。従って,例えば,上述のラップフィルムを用いて結束された本,園芸用パイプ等から一部を取り出した後,再結束する場合,上述を理由に新しいラップフィルムを用意して結束しなければならなかった。
【0004】
このような事情に鑑み,基材フィルムの片面又は両面に,他物に対しては実質的に粘着性を発揮しない自己接着層を形成し,その自己接着層同士を互いに感圧接着させて品物を包装するテープ状又はシート状の包装用材料であって,再結合,再剥離可能なものが開発されている(特許文献1~4)。
【0005】
ここで,例えば,基材の表裏両面に前記自己接着層が形成されたテープ状の包装用材料は,該包装用材料を品物や段ボール箱の周囲に巻き付けたときに,表裏両面の自己接着層がそれ相互間でのみ感圧接着し,品物や段ボール箱の表面に対しては接着しないので,その表面を傷つけたり,汚損したりするおそれがない上,再結合,再剥離(繰り返し利用)可能という利点があった。
【0006】
また,例えば,基材フィルムの片面にのみ自己接着層が形成されたシート状の包装用材料は,その自己接着層を対面させるように配した二枚のシート間に品物を挟んでそれらを加圧ロール間に通せば,品物の周囲に沿って自己接着層同士が互いに感圧接着して品物を密封包装することができ,ヒートシール装置を用いなくてもストリップ包装と同じような区画包装が行え,さらに,再結合,再剥離可能という利点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭63-11228号公報
【特許文献2】特公平2-16944号公報
【特許文献3】特公平5-20281号公報
【特許文献4】特開平3-45673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで,上述のような利点を有する包装用材料は,結束,被包等に好適であると思われたが,前記基材フィルムの手切れに難があり,手で引き裂くとテープやシートがやや伸びてまっすぐ切れず(例えば,テープの長手方向に対する直交切れが得られず),また,手切れにより歪んだ端末(切断部)は浮き上がりやすく,剥がれの原因,さらには外観上に問題があった。
【0009】
ここで,包装用材料がテープ状の場合は,ロール状に巻かれている状態から必要分取り出した際に手で綺麗にまっすぐ切り取れると便利であり,また,包装用材料がシート状のもので上述のように密封包装した場合は,開封の際に手で簡単に切り取って開封できると便利である。
【0010】
本発明は,上述の課題を解決するためになされたものであり,基材フィルムの片面又は両面に形成された自己接着層同士を互いに感圧接着させて品物を結束,被包するテープ状又はシート状の包装用材料であって,良好な手切れ性を有する包装用材料を提供することを目的とする。また,手切れ性に加え,導電性(帯電防止性)を有する包装用材料や水に濡れていても再結合ができる包装用材料を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするために記載したものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0012】
上記目的を達成するために,本発明の包装用材料1は,
基材層2が,少なくとも片面に幅方向に複数の凹溝23が所定間隔で形成された凹凸面22を有するポリオレフィン樹脂製フィルムから成り,前記基材層2の片面又は両面に形成された自己接着層3同士を互いに感圧接着させて品物を結束又は包装するテープ状又はシート状を成すものである(請求項1)。
【0013】
また,本発明の包装用材料は,基材層2が,熱可塑性樹脂製フラットヤーンからなる織布の片面又は両面にポリオレフィンフィルムのラミネート層が積層された積層フィルムから成り,前記基材層2の片面又は両面に形成された自己接着層3同士を互いに感圧接着させて品物を結束又は包装するテープ状又はシート状を成すものであっても良い(請求項2)。
【0014】
また,前記基材層2はコロナ放電処理されていることが好ましい(請求項3)。
【0015】
また,前記基材層2と前記自己接着層3との間に,前記自己接着層3同士を引き剥がす際の剥離力よりも強い力で前記基材層2に接着するプライマー層4が介在されていると良い(請求項4)。
【0016】
また,前記プライマー層4に,導電性フィラーとなるカーボン粉末6が均一に混入されると共に,前記カーボン粉末6の粒子が,各粒子間に電子の移動を妨げない程度の間隔をあけて分散させられていることが好ましい(請求項5)。
【0017】
また,前記基材層2と前記自己接着層3との間に,帯電防止剤が添加されたコーティング樹脂により形成された帯電防止層5が設けられていても良い(請求項6)。
【0018】
前記自己接着層3が,自着性を有するゴム系材料と,接着に寄与する官能基を有する低分子材料とを混合して成る自己接着性材料から形成されていてもよい(請求項7)。
【0019】
前記自己接着層3の外表面に幅方向に複数の凹溝32が所定間隔で形成されても良い(請求項8)。
【0020】
また,前記自己接着層3の外表面に,自己接着層3同士を互いに感圧接着させることにより相互に嵌り合う凹凸33が形成されても良い(請求項9)。
【発明の効果】
【0021】
以上で説明した,上述の構成を備える基材層2を有する包装用材料1は,結合と剥離を繰り返し行えるものでありながら,手で簡単にまっすぐ切れる良好な手切れ性を有することができる。
【0022】
また,包装用材料1は,上述の帯電防止層5やカーボン粉末6が混入されたプライマー層4を有することで,導電性が付与され,半導体素子などの工業包装に用いることができる。
【0023】
また,前記自己接着層3が上述の自己接着性材料から形成されたものである場合,自己接着層3,3’同士を感圧接着した後剥離を試みると,自己接着層3,3’間で剥離して,剥離表面に凹凸形状31,31’が形成されるため(
図4を参照。),再シールの際,剥離表面(再シール面)が面ファスナ効果をも有し,たとえ表面に水分や油分が付着していても何ら支障を来さずシールでき,さらに,密着力(接着力)が強いという優れた効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】基材層2となる凹凸面22を有するポリオレフィン樹脂製フィルムの製造方法の説明図。
【
図3】一度結合した包装用材料1を剥離した状態を示す図。
【
図4】自己接着層3が自己接着性材料で形成された包装用材料1を一度結合した後,剥離した状態を示す図。
【
図5】
図1の包装用材料1’の自己接着層3の外表面に凹溝32を形成した包装用材料1の断面模式図。
【
図6】
図1の包装用材料1’の自己接着層3の外表面に凹凸33を形成した包装用材料1の断面模式図。
【
図7】(a)は,自己接着層3,3’間での剥離(層間剥離)が得られない状態を例示する参考図。(b)は,プライマー層4を有する包装用材料1を一度結合した後,剥離した状態を示す図。
【
図8】帯電防止層5を有する包装用材料1の断面模式図。
【
図9】テープ状の包装用材料1の使用状態の一例を示す図。
【
図10】シート状の包装用材料1の使用状態の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の包装用材料1は,後述する基材層2の片面又は両面に自己接着層3が積層された構造を有するものであって,全体がテープ状又はシート状に成形されたものであり,前記自己接着層3同士を互いに感圧接着させて品物を結束したり,被包したりすることができるものである。
【0026】
本発明では,前記基材層2には,良好な手切れ性を備えるために,少なくとも片面に長手方向と直交する方向に凹溝23が所定間隔で形成された凹凸面22を有するポリオレフィン樹脂製フィルム又は,熱可塑性樹脂製フラットヤーンからなる織布の片面又は両面にポリオレフィンフィルムのラミネート層が積層された積層フィルムを使用する。
【0027】
まず,前記ポリオレフィン樹脂製フィルムについては,未延伸のポリオレフィン樹脂のフィルムであることが好ましく, 該フィルムは公知のポリオレフィン樹脂を使用して製造することができる。
【0028】
このようなポリオレフィン樹脂としては,例えばポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,エチレンとプロピレンとの共重合体樹脂,エチレン及び/又はプロピレンと他の一種または二種以上のα-オレフィンとの共重合体樹脂などを例示することができる。
【0029】
このうちのα-オレフィンとしては,例えばブテン-1,ペンテン-1,ヘキセン-1,ヘプテン-1,オクテン-1,ノネン-1,4-メチルペンテン-1,デセン-1等を挙げることができる。
【0030】
なお,好ましいポリオレフィン樹脂の例としては, ポリエチレン樹脂を挙げることができる。
【0031】
ポリオレフィン樹脂の分子量は, フィルムに成形し得る範囲であれば特に制限されないが,樹脂の流れ性を表す尺度であるメルトインデックス(MFR)で表すと,一般に0.2~20g/10分の範囲,好ましくは1~10g/10分(いずれも荷重2.16kg,温度190℃ )の範囲である。
【0032】
本発明の包装用材料1の基材層2となる前述のポリオレフィン樹脂のフィルムの厚さは,一例として40~400μmの範囲であるが,この厚さに限定されず,用途等に応じて適宜の厚さに設定し得る。
【0033】
ポリオレフィン樹脂製フィルムに形成される凹溝23は,テープを手で切断する際に基材層2に破断が生じる位置となるもので,このような手による切断を可能と成すものであれば,その断面形状は,
図1で示すようなV字状の他,矩形状,(半)円形状等,如何なる形状であっても良い。また,前記凹部の深さは,特に限定されるものではないが,例えば前述したシート厚400μmのポリオレフィン樹脂フィルムを基材層2として使用する場合,前記凹部の深さは,30μm(シート厚に対して7.5%)未満では手切れ性が損なわれる。そこで,例えば30~200μm,好ましくは40~120μmの凹溝を形成し,凹溝23の形成部分における肉厚を10~370μmとすることが好適である。
【0034】
前記凹溝23の間隔は,0.5mm未満ではテープの長手方向に強度が不足し,5mmを超えると本来の手切れ性が不十分となる可能性があることから,一例として0.5~5mm,好ましくは0.6~1.4mm間隔に設定することができる。但し,これよりも広く,又は狭く形成しても良い。
【0035】
なお,基材層2は,片面に長手方向に対し直交方向を成す凹溝23が多数形成された樹脂フィルムを使用することで一方の面が凹凸面22で他方の面が平滑面21であるものでも良く,又は,両面に長手方向に対し直交方向を成す凹溝23が多数形成された樹脂フィルムを使用することで両面が凹凸面22であるものでも良い。
【0036】
前述したポリオレフィン樹脂を原料として,一方の面を平滑面21,他方の面を凹凸面22としたポリオレフィン樹脂フィルムを製造する方法の一例を,
図2に示す。
【0037】
図2に示す例では,ポリオレフィン樹脂を溶融して押出機81の押出ダイ82よりフィルム状に押出した後,押し出されたフィルムが未だ完全に室温まで冷却されていない状態でエンボスロール83とゴムロール84間を通過させることにより,ゴムロール84との接触側に平滑面21,エンボスロール83との接触側にエンボスロール83の表面に設けた凸条83aに対応する形状の凹溝23が形成されている。
【0038】
なお,基材層2の両面に凹凸面22,22’を形成する場合は,例えば,前記ゴムロール84の代わりにエンボスロール83’(図示せず。)を用意し,前記エンボスロール83とエンボスロール83’間を通過させることにより,両面に凹溝23,23’を形成することができる。
【0039】
また,後述する自己接着層3を形成する粘着剤との馴染みを良好なものとして自己接着層3と基材層2間での層間剥離が生じることを防止するために,ポリオレフィン樹脂フィルムに形成された凹凸面22には,
図2に示す放電電極85と平滑な表面を有する処理ロール86間を通過させる際に,コロナ放電処理を行うものとしても良い。
【0040】
このようにコロナ放電処理を行うことで,基材層2の凹凸面22と後述する自己接着層3との親和性(凹凸面22に対する下塗り剤の投錨性や,凹凸面22のぬれ性)を向上させることができ,感圧接着した自己接着層3同士を剥離する際に界面剥離(接合面での剥離)が生じて,自着性を維持(再結合)することができる。
【0041】
なお,上述したように,基材層2の表面にコロナ放電処理を施すことで,基材層2と自己接着層3との馴染みや,基材層2と後述するプライマー層4との馴染みを良好にすることができるため好ましいが,本発明の包装用材料1においてこの基材層2のコロナ放電処理は必須ではなく,必要に応じて処理を行うものである。
【0042】
また,本発明の包装用材料1は,上述した少なくとも片面に長手方向と直交する方向に凹溝23が所定間隔で形成された凹凸面22を有するポリオレフィン樹脂製フィルムの他に,熱可塑性樹脂製フラットヤーンから成る経糸と緯糸を交差せしめて(織ることで)形成されるフラットヤーン織布(割布)の片面又は両面にポリオレフィンからなるラミネート層が積層された積層フィルムを基材層2として使用できる。
【0043】
本発明で用いられるフラットヤーンは,熱可塑性樹脂をTダイ方式やインフレーション方式等の製膜機を用いてフィルム状にした後,所定の細幅にスリットして一軸延伸を施した(又は,一軸延伸して細幅にスリットした)テープ状の糸である。
【0044】
前記熱可塑性樹脂としては,高圧法低密度ポリエチレン,線状低密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン・プロピレンブロック共重合体,エチレン-酢酸ビニル共重合体,エチレン-アクリル酸アルキル共重合体,エチレン-プロピレンランダム共重合体等のポリオレフィンやオレフィン系重合体,ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル,ナイロン6,ナイロン66のポリアミド等が挙げられる。
【0045】
なお,上述の熱可塑性樹脂の中でも,ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0046】
また,上述したフラットヤーンから成る経糸及び緯糸の繊度は35~50番手であることが好ましい。
【0047】
そして,経織密度が好ましくは20~50本/インチ,緯織密度が前記経織密度の好ましくは40~100%,より好ましくは40~70%の密度(経方向を密に,緯方向を疎にすることが好ましい。)となるように製織してフラットヤーン織布とする。
【0048】
さらに,製織された前記フラットヤーン織布の片面又は両面にポリオレフィンフィルムを好ましくは層厚み5~25μmとなるように熱溶融押出して積層する。なお,ポリオレフィンからなるラミネート層を積層する目的は,フラットヤーンの動きを制御(固定)して積層シートを引き裂き易くする目的がある他,織布のほつれ防止,積層シート表面の平滑化,幅つなぎをする際のヒートシール層,硬さの調節,その他機能性の付与等の目的がある。
【0049】
前記ラミネート層の主原料に使用されるポリオレフィンとしては,ポリエチレン,分岐状低密度ポリエチレン,直鎖状低密度ポリエチレン,プロピレン,エチレン-酢酸ビニル共重合体,エチレン-アクリル酸アルキル共重合体,エチレン-プロピレンランダム共重合体等を単体又は複数種混合したものが使用される。
【0050】
また,ラミネート層に使用されるポリオレフィンとしては,フラットヤーン織布の目の間にラミネート樹脂が入り込んでいる方がフラットヤーン(経糸,緯糸)の動きを制御しやすいため,フラットヤーンに使用したものよりも高いMFRを有するものを選択することが好ましく,例えば,MFRが3~50g/10minであることが好ましい。
【0051】
基材層2に上述のフラットヤーン織布(割布)の片面又は両面にポリオレフィンからなるラミネート層が積層された積層フィルムを用いて作成された包装用材料1は,経方向,緯方向を問わず,織り目に沿って素手で直線的に引裂くことができる。
【0052】
なお,例えば,基材層2に上述のフラットヤーン織布を使用したテープ又はシート状の包装用材料を横断する方向(緯方向)に手でより容易かつまっすぐ綺麗に引き裂くことができるようにするには,経糸を形成する熱可塑性樹脂の選択が重要であり,MFRが0.1~5.0g/10min,好ましくは0.3~2.50g/10min,密度が0.930~0.970g/cm3,好ましくは0.944~0.965g/cm3の範囲の高密度ポリエチレンを選択することによって横断する方向により手切れ性のよいものを得ることができる。
【0053】
また,経糸の肉厚を,緯糸の肉厚より薄くすることも好適な方法である。経糸の肉厚を,緯糸の肉厚の1/1.1~1/3.0とすることが好ましい。経糸の肉厚が緯糸の肉厚の1/1.5を上回るときは,手で引裂いたとき,経糸の切断が横にそれて経糸の先が緯糸より突出した突出片が発生し易くなり,1/3.0を下回るときは,引張り強度が低下し易くなる。特に,経糸の厚みを10μm~15μm,緯糸の厚みを20μm以上とすることが好ましい。経糸の厚みを前述の範囲とすることによって,手で横断する方向に引裂く際に,経糸の局所に応力が集中して引裂き易くなり,包装用材料1を手で横断する方向により容易かつ直線的に引き裂くことができる。
【0054】
次に,本発明の自己接着層3は,自己接着層3相互間においてのみ感圧接着し,他物に対しては実質的に接着しない性質を有するものである。
【0055】
自己接着層3の一例としては,例えばゴムラテックスと水溶性接着剤を0.48~1.80の範囲内の接着剤/ラテックス重量比で均一に混合した水溶液を塗布および乾燥させて5~20μm程度の厚さに形成するものでも良い。なお,水溶性接着剤としては,アクリレート系およびビニルアセテート系の水性エマルジョン接着剤又はポリビニルアルコール等が用いられる。
【0056】
自己接着層3の他の例としては,乾燥後は全く粘着性を示さない水性ポリマーのメチルメタアクリレート・アクリル酸ブチル樹脂と,乾燥後もある程度の粘着性を示す水性ポリマーのポリアクリル酸エステル共重合樹脂とを所定の配合比(前記水性ポリマーのメチルメタアクリレート・アクリル酸ブチル樹脂と前記ポリアクリル酸エステル共重合樹脂の配合比を,1/1.6~8の範囲とするのが好ましい。)で混合したエマルジョン型接着剤を塗布し,乾燥させて,3~8μm程度の厚さに形成するものでも良い。
【0057】
なお,自己接着層3を形成し得るエマルジョン型接着剤としては,他にエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンなどがある。
【0058】
上述の自己接着層3,3’同士を感圧接着した後剥離を試みると,
図3(基材層2の凹凸面22の図示を省略。)に示すように,接合面から剥離(界面剥離)することが可能で自己接着層3,3’同士が再び感圧接着することができるため,繰り返し使用(再結合・再剥離)することができる。
【0059】
また,自己接着層の他の例としては,天然ゴムや,IR(イソプレンゴム),SIS(スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体ゴム),アクリルゴム,ブタジエンゴム,スチレン-ブタジエンゴム,クロロプレンゴム等の合成ゴムといった自着性を有するゴム系材料と,接着に寄与する官能基を有する樹脂からなる低分子材料とを混合した自己接着性材料から形成されるものであっても良い。
【0060】
前記低分子材料(樹脂)が有する前記官能基としては,例えば,カルボキシル基,カルボニル基,ヒドロキシル基,アルデヒド基,スルホ基,エポキシ基,アルコキシ基等が挙げられる。
【0061】
また,これらの官能基を有する低分子材料としては,例えば,アクリル酸エステル系,シアノアクリレート系,エチレンと他の単量体(酢酸ビニル,アクリル酸エチル,アクリル酸,メタクリル酸等)との共重合体等からなるエチレン共重合体系,セルロ-ス系,ポリエステル系,ポリアミド系,ポリイミド系,尿素またはメラミン等からなるアミノ系,フェノール系,エポキシ系,ポリオール(ポリビニルアルコール,ポリエーテルポリオール,ポリエステルポリオール等)とイソシアネートおよび/またはイソシアヌレートと架橋させるポリウレタン系,反応型(メタ)アクリル系等であって平均分子量1万以下の低分子量のものが挙げられる。
【0062】
上述のゴム系材料と低分子材料を含む自己接着性材料から形成された自己接着層3,3’同士を感圧接着した後剥離を試みると,
図4(基材層2の凹凸面22の図示を省略。)に示すように,自己接着層3,3’間で剥離して,剥離表面に凹凸形状31,31’が形成されるため,再シールの際,剥離表面(再シール面)が面ファスナ効果をも有し,たとえ表面に水分や油分が付着していても何ら支障をきたさずにシールでき,さらに,密着力(接着力)が強いという優れた効果を発揮する。
【0063】
また,自己接着層3の外表面(自己接着層同士が接触する面)は,平滑面であっても良く,または,長手方向と直交する方向(幅方向)に凹溝32が所定間隔で形成されても良い。前記凹溝32の形成により,包装用材料1の幅方向への手切れ性がより良くなる。前記凹溝32の断面形状は,
図5で示すようなV字状の他,矩形状,(半)円形状等,如何なる形状であっても良い。特に,
図5に示すように,基材層2の各凹溝23の真上に位置するように自己接着層3の各凹溝32を形成するとより手切れ性が向上する。なお,
図5の包装用材料1’は,
図1の包装用材料1’の自己接着層3の外表面に凹溝32を形成したもので基材層2にポリオレフィン樹脂製フィルムを使用しているが,基材層2に熱可塑性樹脂製フラットヤーンを使用しても同様に手切れ性向上の効果が得られる。また,基材層2の両面に自己接着層3が積層される場合は,両方の自己接着層3の外表面に凹溝32を形成しても良く,いずれか一方の自己接着層3の外表面に凹溝32を形成するものでも良い。
【0064】
前記凹溝32の形成は,例えば,エンボスローラによるエンボス加工を施す等により行うことができる。
【0065】
上述の他,自己接着層3の外表面には,自己接着層3同士を貼り合わせて押圧することで相互に嵌り合う凹凸33を形成しても良い。強く押圧して互いの凹凸33が嵌り合えば,接触面積が拡大すると共に面ファスナ効果が得られ自己接着層3同士の接着力が著しく向上する。自己接着層3の外表面に形成にする凹凸33のパターンは,自己接着層3同士を押圧(感圧接着)して互いの凹凸が嵌り合うものであれば特に限定されるものではなく,例えば,複数の縦横格子状の凹凸33を設けて相互に嵌り合う凹凸33を形成したものや,
図6に示すように,長手方向と直交する方向(幅方向)に等間隔に凹溝を設けて(縞状の凹凸が形成されている。)相互に嵌り合う凹凸33を形成するようにしても良い。また,上述の通り,押圧して互いの凹凸33が嵌り合えば良く,例えば,押圧するときの押圧力により凹凸33が変形して互いの凹凸33が嵌り合うものでも構わない。なお,
図6の例では,包装用材料1の幅方向への手切れ性も向上するので好適である。また,
図6の包装用材料1’は,
図1の包装用材料1’の自己接着層3の外表面に凹凸33を形成したもので基材層2にポリオレフィン樹脂製フィルムを使用しているが,基材層2に熱可塑性樹脂製フラットヤーンを使用しても同様の効果が得られる。また,基材層2の両面に自己接着層3が積層される場合は,両方の自己接着層3の外表面に凹凸33を形成しても良く,いずれか一方の自己接着層3の外表面に凹凸33を形成するものでも良い。
【0066】
なお,前記凹凸33の形成は,例えば表面に所定の凹凸パターンが形成されたエンボスロールによるエンボス加工を施す等により行うことができる。
【0067】
また,本発明の包装用材料1は,前記基材層2と前記自己接着層3との間にプライマー層4を介在させる(積層構造:基材層2/プライマー層4/自己接着層3)ことが,包装用材料1の自着の信頼性を高める上で好ましい。
【0068】
本発明の前記プライマー層4は,互いに接着した自己接着層3同士を引き剥がす際に生ずる剥離力よりも強い力で基材層2の表面に接着するもので,例えば,2液反応型のポリウレタン系グラビアインキやエポキシ系スクリーンインキ等の印刷インキを塗布し,乾燥させて成る厚さ5~100μm程度のインキ皮膜で形成されている。なお,透明なプライマー層4を形成する場合は,色料が添加されていない印刷インキを使用する。
【0069】
プライマー層4の他の例としては,市販のアクリル系プライマー剤(東洋化学株式会社製#1000A)を使用し,これに架橋剤を加えたポリエチレンイミンの溶液を基材フィルム1の表面に塗布し,その塗膜を60~80℃の加熱下で乾燥させて,2~80μm程度の厚さに形成するものでも良い。
【0070】
自己接着層3が上述したプライマー層4に貼着されるので,自己接着層3,3’同士を感圧接着した後剥離する際に,
図6(基材層2の凹凸面22の図示を省略。)に示すように,一方の自己接着層3に引っ張られて他方の自己接着層3’が基材層2から剥がれてしまう(
図7(a)に図示。)ことが防止され,接合面から剥離(界面剥離)する(
図7(b)に図示。)ことが可能で自己接着層同士3,3’が再び感圧接着することができるため,繰り返し使用(再結合・再剥離)することができる。
【0071】
また,包装用材料1は,半導体素子などの工業包装に用いられるように,導電性が付与されていることが好ましい。包装用材料1が導電性を有することで,例えば,摩擦による静電気の発生防止や,静電放電により例えば包装されたメモリ素子の電荷が反転してメモリ素子が誤作動するソフトエラー現象を引き起こすことを防止することができる。
【0072】
包装用材料1に導電性を付与するには,まず,包装用材料1に帯電防止層5を設ける方法がある。前記帯電防止層5は,帯電防止剤が添加されたコーティング樹脂により形成されるもので,
図8に示すように基材層2と自己接着層3の間や,基材層2の表面に形成された前記プライマー層4と自己接着層3の間に介在されるものである。該帯電防止層5により,表面抵抗率や体積抵抗率が低下するため,摩擦などによる静電気の発生が確実に防止される。
【0073】
なお,前記帯電防止層5は,ビヒクルとして,アクリルやエポキシ,ポリエステル,フェノール,あるいはウレタンなどの塗膜形成物質が使用され,これに,溶媒と,帯電防止剤となる四級アンモニウム塩などの各種界面活性剤が添加されたものが,前記基材層2や前記プライマー層4の表面上に塗布され,その塗膜が加熱乾燥され,2~5μm程度の厚さに形成されるものであることが好ましい。また,前記帯電防止剤は,単なる添加に限らず,添加物をマトリックスに共有結合で固定したものなども含まれる。
【0074】
なお,帯電防止層5を基材層2の両面に設けても良く,また,片面に設けるだけでも,静電気電荷の放電によるトラブルを防止する機能は十分に得られる。また,帯電防止層5は,上述した通り,自己接着層3の表面ではなく,基材層2やプライマー層4の表面に形成されることから,自己接着層3同士の感圧接着性を阻害してその接着力を低下させるおそれは全くない。
【0075】
また,包装用材料1に導電性を付与するための他の方法として,前記基材層2と前記自己接着層3との間に介在するプライマー層4に導電性フィラーとなるカーボン粉末6を均一に混入すると共に,該カーボン粉末6の粒子が,各粒子間に電子の移動を妨げない程度の間隔をあけて分散させる方法がある。
【0076】
プライマー層4に混入されるカーボン粉末6は,その粒子径が1~30μm(好ましくは,2~15μm)に選定され,基材層2やプライマー層4の表面に対して強固な接着性を示す固体ポリマー成分(プライマー固形分)100重量部に対して2~20重量部(好ましくは,5~10重量部)の比率で配合されている。
【0077】
なお,カーボン粉末6の配合比を上記比率より少なくすれば,各粒子間の間隔が開きすぎて電子の移動が妨げられるので十分な導電効果が得られない。
【0078】
また,カーボン粉末6が混入されたプライマー層4は,表面にカーボン粉末6の粒子が無数に浮き出てサンダー処理を施したときのような微細な凹凸を生ずるので,その凹凸によって自己接着層3の投錨性が却って高められる。
【0079】
さらに,カーボン粉末6は品物の表面に接触しないプライマー層4に混入されており,また,品物の表面に接触する自己接着層3は,粘着性を有しないので,その品物の表面を破損したり汚損したりするおそれもない。
【0080】
例えば,基材層2の両面に自己接着層3が積層されたテープ状の包装用材料1は,
図9に示すように,紙管91にロール状に巻き取った状態で製品化されるもので,使用するときは,必要な長さ分だけ紙管91から巻き出して,包装すべき品物92の周囲に緊張状態で重ね巻きする。紙管91から巻き出される包装用材料1は,基材層2の表裏両面側で互いに重なり合って接着する自己接着層3同士が一旦引き剥がされて,次に,品物92の周囲に重ね巻きするように巻き付けたときに,その重ね巻きの部分で自己接着層3同士が再び感圧接着して,品物92がしっかりと緊縛される。
【0081】
また,品物92とその周囲に巻き付ける包装用材料1との間に接触摩擦が生ずるが,包装用材料1が,上述した帯電防止層5やカーボン粉末6が混入されたプライマー層4を備えることで導電性を有する場合,静電気荷電の発生が確実に防止される。したがって,品物92が半導体素子やそのパッケージであっても,包装用材料1の表面に摩擦により発生した静電気電荷の放電によって前記半導体素子が電磁気的に汚染されるというような恐れは無い。
【0082】
また,例えば,基材層2の片面に自己接着層3が積層されたシート状の包装用材料1は,
図10に示すように,二枚のシート状の包装用材料1,1’間に品物93を挟んで被包することができる。
【0083】
二枚のシート状の包装用材料1,1’を自己接着層3,3’同士が互いに向き合うように対面させてその間に品物93を挟むと共に,その品物93の周囲に沿って自己接着層3,3’同士を感圧接着させると,品物93が
図10の如く密封包装される。
【符号の説明】
【0084】
1(1’) 包装用材料
2 基材層
21 平滑面
22(22’) 凹凸面
23(23’) 凹溝
3(3’) 自己接着層
31(31’) 凹凸形状
32 凹溝
33 凹凸
4 プライマー層
5 帯電防止層
6 カーボン粉末
81 押出機
82 押出ダイ
83(83’) エンボスロール
83a 凸条
84 ゴムロール
85 放電電極
86 処理ロール
91 紙管
92 品物
93 品物