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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131747
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】クリップ及びクリップ付きハンガー
(51)【国際特許分類】
   A47G 25/32 20060101AFI20230914BHJP
   A47G 25/50 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A47G25/32 B
A47G25/50
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036677
(22)【出願日】2022-03-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】594162490
【氏名又は名称】株式会社タヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100134533
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 夏香
(74)【代理人】
【識別番号】100186451
【弁理士】
【氏名又は名称】梅森 嘉匡
(72)【発明者】
【氏名】杉田 発雄
(72)【発明者】
【氏名】杉田 潔
【テーマコード(参考)】
3K099
【Fターム(参考)】
3K099AA04
3K099AA05
3K099BA03
3K099CB06
3K099CB33
3K099CB34
3K099CB35
(57)【要約】
【課題】接着剤を用いることなく、クリップ本体に対して樹脂片を装着することが可能なクリップ及びクリップ付きハンガーを提供する。
【解決手段】クリップ本体2Aは、先端側立設部241と、左側立設部242及び左側爪部252と、右側立設部243及び右側爪部253とを備えている。樹脂片3の背面部31には、先端側立設部嵌入溝37が形成され、樹脂片3の左側面部35には左側爪部嵌入溝38が形成され、樹脂片3の右側面部36には右側爪部嵌入溝39が形成されている。樹脂片3の内側面部34側を樹脂片挿入エリア21に挿入した後(図6(a))、左側爪部嵌入溝38に左側爪部252を嵌め込み、右側爪部嵌入溝39に右側爪部253を嵌め込み、先端側立設部嵌入溝37に先端側立設部241を嵌め込むことにより、クリップ本体2Aに対して樹脂片3を装着する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに回動自在に連結され一端側に挟み部を備え他端側に摘み部を備える一対のクリップ本体と、当該挟み部に装着される一対の樹脂片と、当該クリップ本体に装着され当該挟み部が互いに接する方向に付勢するバネ部材とを有し、当該摘み部を摘まむことによりバネ力に抗して当該挟み部を離隔させることが可能な開閉式のクリップであって、
前記樹脂片のそれぞれが、前記クリップ本体に装着された状態において、前記挟み部に接する平坦な背面部と、対となる他方の樹脂片に対向して配置される正面部と、前記挟み部の先端縁側に配置される外側面部と、前記摘み部側に配置される内側面部と、前記挟み部の左側縁側に配置される左側面部と、前記挟み部の右側縁側に配置される右側面部と、を備えており、
前記クリップ本体のそれぞれが、前記挟み部の先端縁に立設される先端側立設部と、前記挟み部の左側縁に立設される左側立設部及び当該左側立設部に連設され内向きに屈曲する左側爪部により構成される左側固定手段と、前記挟み部の右側縁に立設される右側立設部及び当該右側立設部に連設され内向きに屈曲する右側爪部により構成される右側固定手段と、を備えており、
前記樹脂片の前記背面部には、前記外側面部側寄りに、前記外側面部に対し略平行に設けられ前記左側面部及び前記右側面部に開口する先端側立設部嵌入溝が形成され、
前記樹脂片の前記左側面部には、前記背面部に対し略平行に設けられ直線的に延びて前記内側面部に開口する左側爪部嵌入溝が形成され、
前記樹脂片の前記右側面部には、前記背面部に対し略平行に設けられ直線的に延びて前記内側面部に開口する右側爪部嵌入溝が形成されることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記クリップ本体の前記挟み部が、
前記左側縁から前記右側縁までの幅寸法が一定である先端縁側の樹脂片挿入エリアと、
前記樹脂片挿入エリアに隣接し前記幅寸法が前記摘み部に近づくほど小さくなる樹脂片ガイドエリアと、を備えており、
前記左側固定手段が、前記樹脂片挿入エリアの左側縁と前記樹脂片ガイドエリアの左側縁のそれぞれに設けられ、
前記右側固定手段が、前記樹脂片挿入エリアの右側縁と前記樹脂片ガイドエリアの右側縁のそれぞれに設けられることを特徴とする請求項1記載のクリップ。
【請求項3】
前記左側爪部が、前記左側立設部と前記左側爪部とのなす角が鋭角となるように形成され、
前記右側爪部が、前記右側立設部と前記右側爪部とのなす角が鋭角となるように形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のクリップ。
【請求項4】
前記樹脂片の前記背面部には、一端が先端側立設部嵌入溝に開口し他端が前記内側面部に開口する山型に切り込まれた折り曲げ用溝が設けられることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のクリップ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載されるクリップと、
前記クリップが取り付けられるフレームと、
前記フレームに設けられるフックと、
を有することを特徴とするクリップ付きハンガー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等を挟み込んで保持するクリップに関し、特に、衣類が吊り下げられるハンガーに取り付けられて好適なクリップに関する。また、本発明は、当該クリップを有するクリップ付きハンガーに関する。
【背景技術】
【0002】
衣類を吊り下げる用具として、クリップ付きハンガーが知られている(例えば、特許文献1の図17図18参照)。かかるクリップ付きハンガーに取り付けられるクリップとして、互いに回動自在に連結され一端側に挟み部を備え他端側に摘み部を備える一対のクリップ本体と、当該挟み部に装着される一対の樹脂片と、当該クリップ本体に装着され当該挟み部が互いに接する方向に付勢するバネ部材とを有し、当該摘み部を摘まむことによりバネ力に抗して当該挟み部を離隔させることが可能な開閉式のクリップが知られている。例えば、特許文献1の図1には、芯棒を介して互いに回動自在に連結される一対のクリップ本体と、挟み部に装着される一対の樹脂片(滑り止め部)と、当該クリップ本体に装着され当該挟み部を互いが接する方向に付勢するバネ部材(バネ)とを有し、摘み部(クリップ片の図中上端側)を摘まむことによりバネ力に抗して挟み部を離隔させ、衣類等を挟み込んで保持することが可能な開閉式のクリップが開示されている。
【0003】
上述の樹脂片は、滑り止め機能を向上させ、かつ、衣類等の被狭持物を痛めない(保護する)ことを目的として挟み部に装着され、例えばエラストマー製のものが選好される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3878961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、金属製のクリップ本体に対して樹脂片を装着する手段として接着剤が用いられていたが、長期間にわたり優れた接着力を有する実用的な接着剤が無く、また、製造工程上、塗布量のコントロールや接着度の確認等が煩雑であった。一方、近年では環境保護意識の高まりからゴミの分別収集が求められているが、接着剤を用いた装着手段では金属製のクリップ本体と樹脂片との分別廃棄が困難であった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、接着剤を用いることなく、クリップ本体に対して樹脂片を装着することが可能なクリップ及びクリップ付きハンガーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るクリップは、
互いに回動自在に連結され一端側に挟み部を備え他端側に摘み部を備える一対のクリップ本体と、当該挟み部に装着される一対の樹脂片と、当該クリップ本体に装着され当該挟み部が互いに接する方向に付勢するバネ部材とを有し、当該摘み部を摘まむことによりバネ力に抗して当該挟み部を離隔させることが可能な開閉式のクリップであって、
前記樹脂片のそれぞれが、前記クリップ本体に装着された状態において、前記挟み部に接する平坦な背面部と、対となる他方の樹脂片に対向して配置される正面部と、前記挟み部の先端縁側に配置される外側面部と、前記摘み部側に配置される内側面部と、前記挟み部の左側縁側に配置される左側面部と、前記挟み部の右側縁側に配置される右側面部と、を備えており、
前記クリップ本体のそれぞれが、前記挟み部の先端縁に立設される先端側立設部と、前記挟み部の左側縁に立設される左側立設部及び当該左側立設部に連設され内向きに屈曲する左側爪部により構成される左側固定手段と、前記挟み部の右側縁に立設される右側立設部及び当該右側立設部に連設され内向きに屈曲する右側爪部により構成される右側固定手段と、を備えており、
前記樹脂片の前記背面部には、前記外側面部側寄りに、前記外側面部に対し略平行に設けられ前記左側面部及び前記右側面部に開口する先端側立設部嵌入溝が形成され、
前記樹脂片の前記左側面部には、前記背面部に対し略平行に設けられ直線的に延びて前記内側面部に開口する左側爪部嵌入溝が形成され、
前記樹脂片の前記右側面部には、前記背面部に対し略平行に設けられ直線的に延びて前記内側面部に開口する右側爪部嵌入溝が形成されることを特徴とする。
【0008】
前記クリップは、
前記クリップ本体の前記挟み部が、
前記左側縁から前記右側縁までの幅寸法が一定である先端縁側の樹脂片挿入エリアと、
前記樹脂片挿入エリアに隣接し前記幅寸法が前記摘み部に近づくほど小さくなる樹脂片ガイドエリアと、を備えており、
前記左側固定手段が、前記樹脂片挿入エリアの左側縁と前記樹脂片ガイドエリアの左側縁のそれぞれに設けられ、
前記右側固定手段が、前記樹脂片挿入エリアの右側縁と前記樹脂片ガイドエリアの右側縁のそれぞれに設けられるものであっても良い。
【0009】
また、前記クリップは、
前記左側爪部が、前記左側立設部と前記左側爪部とのなす角が鋭角となるように形成され、
前記右側爪部が、前記右側立設部と前記右側爪部とのなす角が鋭角となるように形成されるようにしても良い。
【0010】
また、前記クリップは、
前記樹脂片の前記背面部には、一端が先端側立設部嵌入溝に開口し他端が前記内側面部に開口する山型に切り込まれた折り曲げ用溝が設けられるものであっても良い。
【0011】
本発明に係るクリップ付きハンガーは、
前述したいずれかの形態の前記クリップと、前記クリップが取り付けられるフレームと、前記フレームに設けられるフックと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、接着剤を用いることなく、クリップ本体に対して樹脂片を装着することが可能なクリップ及びクリップ付きハンガーを提供することができ、製造工程上の上記問題点を解決することができるとともに、分別廃棄も容易である。とくに、本発明によれば、特殊な工具を用いることなく、簡易な作業で、クリップ本体に対して樹脂片を装着したり、クリップ本体から樹脂片を取り外したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1のクリップ(クリップ本体に樹脂片を装着した状態)を示す図である。
図2】本発明の実施例1のクリップのクリップ本体の構成を示す図であり、(a)が正面図、(b)が上面図、(c)が底面図、(d)が左側面図、(e)が右側面図、(f)が背面図である。
図3】(a)が図2(a)に示すA-A線方向の概略断面図、(b)が図2(a)に示すB-B線方向の概略断面図である。
図4】本発明の実施例1のクリップの樹脂片の構成を示す図であり、(a)が正面図、(b)が上面図、(c)が底面図、(d)が左側面図、(e)が右側面図、(f)が背面図である。
図5図4(d)に示すC-C線方向の概略断面図である。
図6図2に示すクリップ本体に図4に示す樹脂片を装着する手順を示す図である。
図7】本発明の実施例1のクリップを有するクリップ付きハンガーを示す図である。
図8】本発明の実施例2のクリップ(クリップ本体に樹脂片を装着した状態)のクリップ本体の一部(挟み部側先端部分)を示す図である。
図9】本発明の実施例2のクリップのクリップ本体の構成の一部(挟み部側先端部分)を示す図である。
図10】本発明の実施例2のクリップの樹脂片の構成を示す図であり、(a)が正面部、外側面部及び右側面部が表れる斜視図であり、(b)が(a)と同方向から見た内部構成を点線等で示した斜視図であり、(c)が背面部、内側面部及び右側面部が表れる斜視図である。
図11】本発明の実施例2のクリップの樹脂片のうち折り曲げ用溝90が設けられた部分の変形前後の状態を示す図であり、(a)がD-D線を切断面とする斜視断面図(変形前)、(b)が変形後の状態を示す斜視断面図である。
図12図9に示すクリップ本体に図10に示す樹脂片を装着する手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明を具体的に説明するが、本発明は図面に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない限りにおいて適宜変更可能である。
【実施例0015】
本発明の実施例1に係るクリップ1は、衣類が吊り下げられるハンガーに取り付けられて好適なクリップ1である。図1は、本発明の実施例1のクリップ1(クリップ本体2A、2Bに樹脂片3を装着した状態)を示す図である。クリップ1は、互いに回動自在に連結され一端側に挟み部231を備え他端側に摘み部232を備える一対のクリップ本体2A、2Bと、挟み部231に装着される一対の樹脂片3と、クリップ本体2A、2Bに装着され挟み部231が互いに接する方向に付勢するバネ部材4とを有し、摘み部232を摘まむことによりバネ力に抗して挟み部231を離隔させることが可能な開閉式のクリップである。以下、クリップ1を構成する部材ないし部位、並びに、クリップ本体2A、2Bへの樹脂片3の装着手順につき詳細に説明する。
【0016】
図2は、本発明の実施例1のクリップ1のクリップ本体2Aの構成を示す図であり、(a)が正面図、(b)が上面図、(c)が底面図、(d)が左側面図、(e)が右側面図、(f)が背面図である。図3は、(a)が図2(a)に示すA-A線方向の概略断面図、(b)が図2(a)に示すB-B線方向の概略断面図である。なお、クリップ本体2Bは、クリップ本体2Aと略同一形状であるので説明を省略する。クリップ本体2A、2Bは金属製であり、樹脂片3はエラストマー製の弾性部材であり、指の力でたわませてクリップ本体2A、2Bに嵌め込むことが可能である。
【0017】
クリップ本体2Aは、中腹部がややくびれた略長方形状のベース23と、ベース23の正面側の外周縁に沿って立設される立設部24と、立設部24に連設される爪部252、253とにより構成され、ベース23の一端側が挟み部231であり、他端側が摘み部232である。クリップ本体2Aは、挟み部231の先端縁に立設される先端側立設部241と、挟み部231の左側縁に立設される左側立設部242及び左側立設部242に連設され内向きに、即ち右側立設部243に向けて屈曲する左側爪部252により構成される左側固定手段と、挟み部231の右側縁に立設される右側立設部243及び右側立設部243に連設され内向きに、即ち左側立設部242に向けて屈曲する右側爪部253により構成される右側固定手段と、を備えている。詳細に説明すると、クリップ本体2Aは、先端側立設部241と、左側固定手段と、右側固定手段とを備える。先端側立設部241は、挟み部231の先端縁に立設される。左側固定手段は、左側立設部242、及び、左側爪部252により構成される。そして、左側立設部242は、挟み部231の左側縁に立設される。左側爪部252は、左側立設部242に連設され、右側立設部243に向けて内向きに屈曲する。同様に、右側固定手段は、右側立設部243、及び、右側爪部253により構成される。そして、右側立設部243は、挟み部231の右側縁に立設される。右側爪部253は、右側立設部243に連設され、左側立設部242に向けて内向きに屈曲する。
【0018】
先端側立設部241と右側爪部253及び左側爪部252との間のスペースが樹脂片挿入エリア21であり、後述のとおり、樹脂片挿入エリア21から樹脂片3を挿入してクリップ本体2Aに樹脂片3を装着する。左側立設部242の中腹部及び右側立設部243の中腹部は凸状に形成され、当該中腹部には芯棒5が挿入される貫通孔28が形成されている。実施例1においては、ベース23の外周縁全体に立設部が形成されることによりベース23、先端側立設部241、左側立設部242及び右側立設部243が一体として設けられている。一対のクリップ本体2A、2Bは、クリップ1を製作する過程において、それぞれのベース23の表面側を向かい合わせて組み立てる。一対のクリップ本体2A、2Bは、芯棒5を介して、互いに回動自在に連結される。
【0019】
図4は、本発明の実施例1のクリップ1の樹脂片3の構成を示す図であり、(a)が正面図、(b)が上面図、(c)が底面図、(d)が左側面図、(e)が右側面図、(f)が背面図である。樹脂片3の内側面部34が図4(b)に表れ、樹脂片3の外側面部33が図4(c)に表れる。図5は、図4(d)に示すC-C線方向の概略断面図である。なお、クリップ本体2Aに装着される樹脂片、及び、クリップ本体2Bに装着される樹脂片は、いずれも同一形状である。
【0020】
樹脂片3は、クリップ本体2Aに装着された状態において、挟み部231に接する平坦な背面部31と、対となる他方の樹脂片に対向して配置される正面部32と、挟み部231の先端縁側に配置される外側面部33と、摘み部232側に配置される内側面部34と、挟み部231の左側縁側に配置される左側面部35と、挟み部231の右側縁側に配置される右側面部36と、を備える。加えて、樹脂片3の背面部31には、外側面部33側寄りに、外側面部33に対し略平行に設けられ左側面部35及び右側面部36に開口する先端側立設部嵌入溝37が形成され、樹脂片3の左側面部35には、背面部31に対し略平行に設けられ直線的に延びて内側面部34に開口する左側爪部嵌入溝38が形成され、樹脂片3の右側面部36には、背面部31に対し略平行に設けられ直線的に延びて内側面部34に開口する右側爪部嵌入溝39が形成されている。
【0021】
先端側立設部嵌入溝37、左側爪部嵌入溝38、及び、右側爪部嵌入溝39のそれぞれは、図6(c)に示すように、クリップ本体2Aに装着された状態において背面部31がクリップ本体2のベース23の表面から浮き上がることなく平坦に接するような深さに形成される。なお、図示する樹脂片3の形状は一例に過ぎず、例えば、被狭持物が軽量である場合の樹脂片としては、左側爪部嵌入溝38及び右側爪部嵌入溝39を先端側立設部嵌入溝37まで開口するように形成しても良い。
【0022】
後述するとおり、樹脂片3は、クリップ本体2Aに装着された状態において、先端側立設部241が先端側立設部嵌入溝37に嵌め込まれ、左側爪部252が左側爪部嵌入溝38に嵌め込まれ、右側爪部253が右側爪部嵌入溝39に嵌め込まれるようになっている。すなわち、先端側立設部嵌入溝37は、先端側立設部241の形状に対応して形成され、実施例1においては直線的に形成されているが、必ずしもこれに限られない。一方、左側爪部嵌入溝38及び右側爪部嵌入溝39は直線的に形成されており、樹脂片3の平坦な背面部31をクリップ本体2Aの平坦なベース23の表面上を摘み部22方向に向けて直線的に滑らせるようにしてスライドさせることにより、左側爪部252及び右側爪部253が嵌入溝38、39内に入り込むように構成されている。
【0023】
図6は、図2に示すクリップ本体2Aに図4に示す樹脂片3を装着する手順を示す図であり、(a)が樹脂片3の内側面部34側を樹脂片挿入エリア21に挿入した状態を示し、(b)が左側爪部嵌入溝38に左側爪部252を入り込ませた状態を示し、(c)が、先端側立設部嵌入溝37に先端側立設部241を嵌め込んだ状態を示している。クリップ本体2Aに対する樹脂片3の装着は、一方の手でクリップ本体2Aを把持し、他方の手で樹脂片3を摘まんだ状態で、図6(a)に示すように、樹脂片3の内側面部34側を樹脂片挿入エリア21に挿入し、内側面部34に開口する左側爪部嵌入溝38及び右側爪部嵌入溝39に対して左側爪部252及び右側爪部253のそれぞれが入り込むように樹脂片3を押し込む。樹脂片3は柔軟性を有しており、先端側立設部241を支点として反り返るように変形する。
【0024】
次いで、図6(b)に示すように、樹脂片3の平坦な背面部31をクリップ本体2Aの平坦なベース23の表面上を摘み部22方向に向けて直線的に滑らせるようにして押し込むことにより、左側爪部252を左側爪部嵌入溝38の奥側まで押し込み、右側爪部253を右側爪部嵌入溝39の奥側まで押し込む。先端側立設部241に対して先端側立設部嵌入溝37を嵌め込むことが可能な位置まで押し込んだら、図6(c)に示すように、先端側立設部241を先端側立設部嵌入溝37に嵌め込む。これらの手順により、樹脂片3は、左側爪部252が左側爪部嵌入溝38に嵌め込まれ、右側爪部253が右側爪部嵌入溝39に嵌め込まれ、先端側立設部241が先端側立設部嵌入溝37に嵌め込まれた状態となり、樹脂片3がクリップ本体2Aに装着される。
【0025】
他方のクリップ本体2Bに他方の樹脂片3を装着する手順は、上記手順と同様であるので説明を省略する。このように本発明によれば、接着剤や特殊な工具を用いることなく、簡易な手作業で、クリップ本体2A、2Bに対して樹脂片3を装着することができ、装着手順と逆の手順を踏むことにより、クリップ本体2A、2Bから樹脂片3を取り外すことができる。樹脂片3は、クリップ本体2A、2Bに装着された状態において、先端側立設部241が樹脂片3により覆われた状態となるので、被挟持物を傷めにくい。なお、クリップ本体2A、2Bに対する樹脂片3の装着は、手作業に限らず、工具や装置を用いて装着するようにしても良い。
【0026】
前述の通り、従来、金属製のクリップ本体に対して樹脂片を長期間にわたり固着することが可能な実用的な接着剤がなく、接着剤を用いて樹脂片を一時的に装着するとしても、接着剤の経年劣化による接着力の低下や衣類の吊り下げによる外的負荷の作用により剥離して脱落しやすいという問題があり、金属製のクリップに対して樹脂片を装着するための手段については各メーカーとも表面処理等でも解決が困難であった。特に、接着剤には一般的に紫外線に弱い性質があり、樹脂片の装着手段として接着剤を用いたクリップないしクリップ付きハンガーは、一般家庭における使用のような紫外線を浴びやすい環境下での使用に長期間耐えうるものではなかった。この点、本発明に係るクリップは、接着剤を用いることなく樹脂片を装着するものである。したがって、本発明のクリップによれば、金属と樹脂という異質な材料同士を接着することの困難性を解消することができる。また、本発明のクリップによれば、製造工程における接着剤の塗布量のコントロールや接着度の確認といった煩雑な作業を回避することができる。
【0027】
樹脂片3が装着されたクリップ本体2A、2Bを、互いの貫通孔28が連通するようにベース23の表面同士を向かい合わせて嵌め合わせた後、バネ部材4をクリップ本体2A、2Bの摘み部232内側に組み込んで、貫通孔28に芯棒5を嵌入することにより、図1に示すようなクリップ1を製作することができる。なお、かかる製作手順は一例に過ぎず、芯棒5を介して互いに回動自在に連結された後の一対のクリップ本体2A、2Bに対して、樹脂片3を図6に示す手順により装着するようにしても良い。樹脂片3は、クリップ本体2A、2Bに装着された状態において、樹脂片3の両側面部35、36が爪部252、253により保持され、樹脂片3の外側面部33が先端側立設部241により保持されており、衣類等の被狭持物が左右や下方に引っ張られることにより樹脂片3に外力が作用した場合でも、クリップ本体2A、2Bから脱落し難い。
【0028】
樹脂片3は、後説する図8及び図9に示すクリップ本体8のように左側立設部842から右側立設部843までの幅寸法が一定であるストレートタイプのものでも装着可能である。また、樹脂片3が装着されるクリップ本体2A、2Bの形状としては、図2(a)等に示すように、その挟み部231が、左側縁から右側縁までの幅寸法が一定である先端縁側の樹脂片挿入エリア21と、樹脂片挿入エリア21に隣接し幅寸法Lが摘み部232に近づくほど小さくなる樹脂片ガイドエリア22と、を備えるようにしても良い。また、左側固定手段が、樹脂片挿入エリア21の左側縁と樹脂片ガイドエリア22の左側縁のそれぞれに設けられ、右側固定手段が、樹脂片挿入エリア21の右側縁と樹脂片ガイドエリア22の右側縁のそれぞれに設けられるようにしても良い。例えば、左側爪部252が樹脂片挿入エリア21内にある左側縁と樹脂片ガイドエリア22内にある左側縁のそれぞれに1箇所ずつ設けられており、右側爪部253が樹脂片挿入エリア21内にある右側縁と樹脂片ガイドエリア22内にある右側縁のそれぞれに1箇所ずつ設けられるものであっても良い。
【0029】
樹脂片3は、樹脂片挿入エリア21及び樹脂片ガイドエリア22の形状に対応して、クリップ本体2Aに装着された状態において樹脂片挿入エリア21内に配置される部分の幅寸法L1が一定であり、樹脂片ガイドエリア22内に配置される部分の幅寸法L2が内側面部34に近づくほど小さくなるように形成されている。別言すれば、樹脂片3は、外側面部33側の幅寸法L1よりも内側面部34側の幅寸法L2の方が小さくなるように形成され、樹脂片3の挿入側(内側面部34側)の幅寸法L2が樹脂片挿入エリア21の幅寸法よりも小さくなるように形成されている(図4(f)参照)。したがって、樹脂片挿入エリア21に樹脂片3を挿入しやすく、また、押し込まれた樹脂片3が樹脂片ガイドエリア22を区画する立設部242、243により所定の位置に向けて誘導されるとともに、樹脂片3がクリップ本体2Aの奥側(摘み部232側)に押し込まれ過ぎないため、樹脂片3を装着し易い。
【0030】
さらに、クリップ本体2A、2Bは、図3(b)に示すように、左側爪部252が、左側立設部242と左側爪部252とのなす角が鋭角となるように形成され、右側爪部253が、右側立設部243と右側爪部253とのなす角が鋭角となるように形成されるようにしても良く、爪部252、253のそれぞれが装着後の樹脂片3に食い込むことで樹脂片3が脱落しにくいようにしても良い。
【0031】
図7は、本発明の実施例1のクリップ1を有するクリップ付きハンガー6を示す図である。クリップ付きハンガー6は、2つのクリップ1と、クリップ1が取り付けられるフレーム61と、フレーム61に設けられるフック62と、を有する。本発明に係るクリップは、衣類が吊り下げられるハンガーに適用することもできる。
【0032】
前述した実施例1では、クリップ本体2A、2Bの長手方向(挟み部231から摘み部232に向かう方向)に樹脂片3をスライド移動させることにより、各爪部252、253に対して各爪部嵌入溝38、39を嵌め込んで装着する形態のものであるが、装着形態としてはこれに限られず、例えば、図8ないし図12に示す構成のクリップ本体8及び樹脂片9のように樹脂片3を折り畳むようにたわませることにより各爪部852、853に対して各爪部嵌入溝98、99を嵌め込んで装着する形態のものであっても良い。
【実施例0033】
図8は、本発明の実施例2のクリップ(クリップ本体8に樹脂片9を装着した状態)のクリップ本体8の一部(挟み部831側先端部分)を示す図である。図9は、本発明の実施例2のクリップのクリップ本体8の構成の一部(挟み部831側先端部分)を示す図である。なお、図8ないし図12において、前述のクリップ本体2A、B及び樹脂片3と共通する部位ないし部分については説明を簡略ないし省略する。
【0034】
クリップ本体8は、金属製である。クリップ本体8は、先端側立設部841と、左側固定手段と、右側固定手段とを備える。先端側立設部841は、挟み部831の先端縁に立設される。左側固定手段は、左側立設部842、及び、左側爪部852により構成される。そして、左側立設部842は、挟み部831の左側縁に立設される。左側爪部852は、左側立設部842に連設され右側立設部843に向けて内向きに屈曲する。同様に、右側固定手段は、右側立設部843、及び、右側爪部853により構成される。そして、右側立設部843は、挟み部831の右側縁に立設される。右側爪部853は、右側立設部843に連設され左側立設部842に向けて内向きに屈曲する。左側立設部842から右側立設部843までの幅寸法は一定である。
【0035】
図10は、本発明の実施例2のクリップの樹脂片9の構成を示す図であり、(a)が正面部92、外側面部93及び右側面部96が表れる斜視図であり、(b)が(a)と同方向から見た内部構成を点線等で示した斜視図であり、(c)が背面部91、内側面部94及び右側面部96が表れる斜視図である。樹脂片9は、例えばエラストマー製の柔軟性を有する樹脂片である。また、樹脂片9は、クリップ本体8に装着された状態において、背面部91と、正面部92と、外側面部93と、内側面部94と、左側面部95と、右側面部96と、を備える。背面部91は、平坦で、挟み部831に接する。正面部92は、対となる他方の樹脂片に対向して配置する。外側面部93は、挟み部831の先端縁側に配置する。内側面部94は、摘み部側に配置する。左側面部95は、挟み部831の左側縁側に配置する。右側面部96は、挟み部831の右側縁側に配置する。左側面部95と右側面部96とは、挟み部831の形状に対応して、幅寸法が一定となるように形成される。また、その背面部91には、先端側立設部嵌入溝97が形成してある。先端側立設部嵌入溝97は、外側面部93側寄りに形成され、左側面部95及び右側面部96に開口する。先端側立設部嵌入溝97は、外側面部93に対し略平行に設けられる。樹脂片9の左側面部95には、左側爪部嵌入溝98が形成してある。左側爪部嵌入溝98は、背面部91に対し略平行に設けられ、直線的に延びて内側面部94に開口する。樹脂片9の右側面部96には、右側爪部嵌入溝99が形成してある。右側爪部嵌入溝99は、背面部91に対し略平行に設けられ、直線的に延びて内側面部94に開口する。
【0036】
さらに、樹脂片9の背面部91には、折り曲げ用溝90が樹脂片9の長手方向に沿って設けてある。折り曲げ用溝90は、山型に切り込まれた溝で、一端が先端側立設部嵌入溝97に開口し他端が内側面部94に開口する。図11は、本発明の実施例2のクリップの樹脂片9のうち折り曲げ用溝90が設けられた部分の変形前後の状態を示す図であり、(a)がD-D線を切断面とする斜視断面図(変形前)、(b)が変形後の状態を示す斜視断面図である。樹脂片9は、山型の切り込み面が互いに接する方向に力を負荷して折り曲げ用溝90に沿って折り畳むようにたわませることにより、その左側面部95から右側面部96までの長さを小さくすることができる(図11(b)参照)。樹脂片9は、無負荷状態では図11(a)に示す状態に復元する。樹脂片9の左側面部95から右側面部96までの幅寸法は、折り曲げ用溝90に沿って折り畳むように変形させた状態で、左側爪部852と右側爪部853との間から差し込んで嵌め込むことが可能な長さに設定される。
【0037】
図12は、図9に示すクリップ本体8に図10に示す樹脂片9を装着する手順を示す図である。前述の構成を有する樹脂片9によれば、折り曲げ用溝90が設けられる箇所である先端側立設部嵌入溝97から内側面部94に至る部分に左側爪部嵌入溝98及び右側爪部嵌入溝99が形成される。したがって、樹脂片9は、図12(a)に示すように山型の切り込み面が互いに接するようにたわませることにより、左側爪部852と右側爪部853の間から樹脂片9を差し込むことができる。また、樹脂片9は、無負荷状態とすることにより、樹脂片9の復元力で図12(b)に示すように各爪部嵌入溝98、99に各爪部852、853を嵌め込むことができる。次いで、図12(c)に示すように先端側立設部841を先端側立設部嵌入溝97に嵌め込む。これらの手順により、樹脂片9の左側爪部852が左側爪部嵌入溝98に嵌め込まれ、樹脂片9の右側爪部853が右側爪部嵌入溝99に嵌め込まれ、樹脂片9の先端側立設部841が先端側立設部嵌入溝97に嵌め込まれた状態となり、したがって、樹脂片9がクリップ本体8に装着される。装着後の状態は図8に示すとおりであり、先端側立設部841が樹脂片9により覆われた状態となる。したがって、本発明の実施例2によれば、被挟持物を傷めにくい。
【0038】
図8に示す樹脂片9が装着されたクリップ本体8は、図1等に示す樹脂片3が装着されたクリップ本体2に代えて用いることができる。また、樹脂片9が装着されたクリップ本体8を用いて製作されるクリップについても、ハンガーのクリップとして適用することが可能である。なお、樹脂片9は、樹脂片3に共通する特徴を有する部材であり、前述のクリップ本体2A、2Bに対して前述したスライド式の装着形態により取り付けることも可能である。
【0039】
本発明は、上記実施例ないし実施の形態に限定されず、その発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形実施が可能である。例えば、クリップ本体がプラスチック製のクリップに対しても本発明を適用することができる。図2等に示す本発明の実施例1においては、左側爪部及び右側爪部はそれぞれ2つずつ設けられているが、1つ又は3つ以上であっても良い。クリップ本体や樹脂片の幅寸法が一定のタイプのクリップに対しても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、スカートやズボン、手袋等の衣類を挟み込んで保持するクリップとして利用可能であるが、被狭持物としてはこれらに限られず、ブーツや靴下等の履物、カーテンやシーツ等の布製品、カーペット等の敷物、紙製品、その他各種産業用品を挟み込んで保持するためのクリップとして幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 クリップ
2A、2B クリップ本体
21 樹脂片挿入エリア
22 樹脂片ガイドエリア
23 ベース
231 挟み部
232 摘み部
24 立設部
241 先端側立設部
242 左側立設部
243 右側立設部
252 左側爪部
253 右側爪部
28 貫通孔
3 樹脂片
31 背面部
32 正面部
33 外側面部
34 内側面部
35 左側面部
36 右側面部
37 先端側立設部嵌入溝
38 左側爪部嵌入溝
39 右側爪部嵌入溝
4 バネ部材
5 芯棒
6 ハンガー
61 フレーム
62 フック
7 クリップ
8 クリップ本体
83 ベース
831 挟み部
841 先端側立設部
842 左側立設部
843 右側立設部
852 左側爪部
853 右側爪部
9 樹脂片
90 折り曲げ用溝
91 背面部
92 正面部
93 外側面部
94 内側面部
95 左側面部
96 右側面部
97 先端側立設部嵌入溝
98 左側爪部嵌入溝
99 右側爪部嵌入溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12