IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社サンワードの特許一覧

特開2023-132001再生材料の製造方法、及び、サンダルのソール構造
<>
  • 特開-再生材料の製造方法、及び、サンダルのソール構造 図1
  • 特開-再生材料の製造方法、及び、サンダルのソール構造 図2
  • 特開-再生材料の製造方法、及び、サンダルのソール構造 図3
  • 特開-再生材料の製造方法、及び、サンダルのソール構造 図4
  • 特開-再生材料の製造方法、及び、サンダルのソール構造 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132001
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】再生材料の製造方法、及び、サンダルのソール構造
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/06 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
C08J11/06 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037073
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】592014355
【氏名又は名称】株式会社サンワード
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【弁理士】
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】宮本 梨紗
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA05
4F401AC20
4F401BA09
4F401CA14
4F401EA72
4F401EA90
4F401FA20Z
(57)【要約】
【課題】従来廃棄物として処理されてきたウェットスーツの端切れや使用済みのウェットスーツ(ウェットスーツ廃材)を有効利用することができる再生材料の製造方法を提供する。また、ウェットスーツ廃材を有効利用し、環境負荷を低減することができるサンダルのソール構造を提供する。
【解決手段】ウェットスーツ廃材を破砕して破砕片を得る破砕工程と、前記破砕片に接着材料を混合攪拌して接着材料混合塊を得る混合工程と、前記接着材料混合塊を圧縮して成型体を得る圧縮工程とを備えることを特徴とする再生材料の製造方法。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェットスーツ廃材を破砕して破砕片を得る破砕工程と、
前記破砕片に接着材料を混合攪拌して接着材料混合塊を得る混合工程と、
前記接着材料混合塊を圧縮して成型体を得る圧縮工程とを備えることを特徴とする再生材料の製造方法。
【請求項2】
前記圧縮工程は、上部に開口部を有する有底筒状の保持容器内に前記接着材料混合塊を投入する混合塊投入ステップと、前記開口部を介して押圧部材を前記保持容器内に挿入して前記保持容器内に投入された前記接着材料混合塊を圧縮して筒状の前記成型体を形成する押圧部材挿入ステップとを備えることを特徴とする請求項1に記載の再生材料の製造方法。
【請求項3】
前記成型体をスライスしてシート状成型体を形成するスライス工程を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の再生材料の製造方法。
【請求項4】
前記成型体をスライスしてシート状成型体を形成するスライス工程を更に備え、
前記スライス工程は、筒状の前記成型体の軸を中心に回転させながら筒状の前記成型体の表面部を所定厚みでスライスしてシート状成型体を形成することを特徴とする請求項2に記載の再生材料の製造方法。
【請求項5】
前記ウェットスーツ廃材を破砕して得られる前記破砕片の最大径は50mm以下であり、
前記混合工程において、前記接着材料は、前記破砕片10kgに対して、0.8L以上1.2L以下添加され、
前記圧縮工程において、前記接着材料混合塊の体積を圧縮前の体積に対して70%以下に圧縮することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の再生材料の製造方法。
【請求項6】
サンダルのソール構造であって、ウェットスーツ廃材を破砕して得られる破砕片から形成された再生材料によって構成されることを特徴とするサンダルのソール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生材料の製造方法、及び、サンダルのソール構造に関する。特に、ウェットスーツ廃材を有効利用する再生材料の製造方法、及び、ウェットスーツ廃材を有効利用したサンダルのソール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からサーフィンやスキューバダイビングといったマリンスポーツにおいて、実施者の保温や怪我を防止するためにウェットスーツが着用される場合が多い。このウェットスーツは、例えば、発泡合成ゴム弾性体を心材としてジャージーの伸縮性布を張り合わせてなる複合材料が使用されている。そして発泡合成ゴム弾性体としては、例えば強靱で耐侯性にすぐれたクロロプレンゴムを加硫、発泡してなる独立気泡発泡体が主に使用されている。また、熱可塑性塩化ビニル樹脂発泡体を素材として用いられる場合もある。
【0003】
このようなウェットスーツは、例えば、胴部や腕部、脚部等の各パーツごとの型紙を発泡合成ゴム弾性体の生地シートにあてがい、当該型紙に沿ってローラーカッターやハサミで裁断して各パーツ生地を形成し、その後、各パーツ生地を接着・縫製することによって製造される。係る製造過程においては、生地シートから胴部や腕部、脚部等の各パーツを切り出す際に端切れが生じることになるが、このような端切れは、廃棄物として処理される。なお、使用済みのウェットスーツでリサイクル使用できないものも同様に廃棄物として処理される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、ウェットスーツの製造過程で生じる端切れや使用済みウェットスーツは廃棄物として処理されるが、ウェットスーツ素材である発泡合成ゴム弾性体は、塩素を含む素材であるため、ごみ焼却時にダイオキシンを発生さてしまうおそれがあり、環境負荷の観点から問題があった。また、仮に焼却しなくても、塩素系廃棄物は大量を占めるので埋立地不足によりゴミ問題を益々悪化させ、ゼロエミッション化にも逆行することになる。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたものであり、従来廃棄物として処理されてきたウェットスーツの端切れや使用済みのウェットスーツ(ウェットスーツ廃材)を有効利用することができる再生材料の製造方法を提供することを目的とする。また、ウェットスーツ廃材を有効利用し、環境負荷を低減することができるサンダルのソール構造を提供することをもう一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、ウェットスーツ廃材を破砕して破砕片を得る破砕工程と、前記破砕片に接着材料を混合攪拌して接着材料混合塊を得る混合工程と、前記接着材料混合塊を圧縮して成型体を得る圧縮工程とを備えることを特徴とする再生材料の製造方法により達成される。
【0007】
上記再生材料の製造方法においては、前記圧縮工程は、上部に開口部を有する有底筒状の保持容器内に前記接着材料混合塊を投入する混合塊投入ステップと、前記開口部を介して押圧部材を前記保持容器内に挿入して前記保持容器内に投入された前記接着材料混合塊を圧縮して筒状の前記成型体を形成する押圧部材挿入ステップとを備えることが好ましい。
【0008】
また、前記成型体をスライスしてシート状成型体を形成するスライス工程を更に備えることが好ましい。
【0009】
また、前記成型体をスライスしてシート状成型体を形成するスライス工程を更に備え、前記スライス工程は、筒状の前記成型体の軸を中心に回転させながら筒状の前記成型体の表面部を所定厚みでスライスしてシート状成型体を形成することが好ましい。
【0010】
また、前記ウェットスーツ廃材を破砕して得られる前記破砕片の最大径は50mm以下であり、前記混合工程において、前記接着材料は、前記破砕片10kgに対して、0.8L以上1.2L以下添加され、前記圧縮工程において、前記接着材料混合塊の体積を圧縮前の体積に対して70%以下に圧縮することが好ましい。
【0011】
また、サンダルのソール構造であって、ウェットスーツ廃材を破砕して得られる破砕片から形成された再生材料によって構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来廃棄物として処理されてきたウェットスーツの端切れや使用済みのウェットスーツ(ウェットスーツ廃材)を有効利用することができる再生材料の製造方法を提供することができる。また、ウェットスーツ廃材を有効利用し、環境負荷を低減することができるサンダルのソール構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る再生材料の製造方法のブロック図である。
図2】本発明に係る再生材料の製造方法が備える圧縮工程を説明するための説明図である。
図3】本発明に係る再生材料の製造方法により製造したシート状成型体を示す画像である。
図4】本発明に係る再生材料の製造方法の変形例を示すブロック図である。
図5図4に示すスライス工程を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る再生材料の製造方法について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る再生材料の製造方法を説明するためのブロック図である。再生材料の製造方法は、ウェットスーツ廃材を有効利用するものであり、図1に示すように、破砕工程S1と、混合工程S2と、圧縮工程S3とを備えている。ここで、ウェットスーツ廃材とは、ウェットスーツの製造過程で生じる端切れや使用済みのウェットスーツを意味する。
【0015】
破砕工程S1は、ウェットスーツ廃材を破砕して破砕片を得る工程である。この破砕工程S1では通常破砕機が使用されるが、破砕機の構成等に関しては、従来から知られている各種破砕機を用いることができるが、例えば、一軸破砕機、二軸破砕機、シュレッダー等のせん断式の破砕機を用いることが好適である。せん断式の破砕機によってウェットスーツ廃材を破砕する場合、破砕時にウェットスーツ廃材の圧縮が生じにくく、形成される再生材料に与えるダメージを軽減することができる。特に、回転刃と固定刃とで破砕を行う一軸破砕機を用いる場合、破砕片の大きさを制御しやすく、また、破砕片が刃の下部に落下するため、ウェットスーツ廃材が刃に絡まったり、付着等することを抑制することができ、効率よく破砕を実施することができる。
【0016】
破砕工程S1で得られる破砕片の大きさは、形成される再生材料の用途や大きさによって変動するものではあるが、例えば、その最大径(破砕片を互いに平行な2つの平面で挟んだときに平面間の距離が最大となるときの距離)が50mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましい。破砕片の最大径が50mmを超えると、得られる再生材料において、割れ等が生じるリスクが高くなるおそれがある。また、破砕工程S1の効率の観点からは、破砕片の最大径は1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましい。また、破砕片の形状は特に制限されない。
【0017】
混合工程S2は、破砕工程S1によって形成されたウェットスーツ廃材の破砕片に接着材料を混合攪拌して接着材料混合塊を得る工程である。ウェットスーツ廃材の破砕片と接着材料とを混合攪拌する手法は特に限定されないが、例えば、バッチ式混錬機や一軸混錬機を用いて行うことができる。これら混錬機を用いることにより、ウェットスーツ廃材の破砕片と接着材料とが均一に混ぜ合わされる接着材料混合塊を効率よく得ることができる。混錬機に投入されるウェットスーツ廃材の破砕片と接着材料との比率は、形成される再生材料の用途等によって変動するものではあるが、例えば、ウェットスーツ廃材の破砕片10kgに対して接着剤0.8L~1.2Lの比率に設定することが好ましく、0.9L~1.1Lに設定することがより好ましい。
【0018】
混合工程S2において用いられる接着材料としては、様々な種類の接着材料を使用することができる。例えば、ウレタン系樹脂接着剤、エポキシ系樹脂接着剤、変性シリコーン系樹脂接着剤等を好ましく用いることができる。
【0019】
圧縮工程S3は、上記混合工程S2において形成される接着材料混合塊を圧縮して硬化させることにより成型体を得る工程である。接着材料混合塊を圧縮する方法としては、特に限定されないが、例えば、上部に開口部を有する有底筒状(有底円筒状)の保持容器と、開口部を介して保持容器内に挿入される押圧部材とを備えるような圧縮装置を用いて実施することができる。具体的には、図2(a)~(d)に示すように、保持容器1の上部開口部から該保持容器1内に接着材料混合塊Zを所定量投入し(混合塊投入ステップS31)、その後、開口部を介して押圧部材2を保持容器1内に挿入して保持容器1内に投入された接着材料混合塊Zを上方側から圧縮することにより筒状の成型体を形成する(押圧部材挿入ステップS32)。この圧縮状態を所定時間維持することにより接着材料混合塊に含まれる接着材料を硬化させ、保持容器1内から圧縮硬化後の接着材料混合塊Zを取り出すことにより成型体(再生材料)が完成する。なお、保持容器1内に投入された接着材料混合塊Zを圧縮するために用いられる押圧部材2は、保持容器1の上部における開口の面積と略同一の面積となるように形成され、かつ、その周縁部が保持容器1の内周面に摺接するように形成されることが好ましい。また、押圧部材2は軸体3を介して油圧装置等の駆動部(図示せず)に接続しており、油圧装置等の駆動により、上下動可能に構成される。
【0020】
また、製造効率の観点から、接着材料混合塊Zを圧縮する際には、保持容器1の内部に蒸気を注入して接着材料混合塊Zを加熱することが好ましい。また、圧縮工程S3において、接着材料混合塊Zの体積を圧縮前の体積に対して30%以上70%以下に圧縮することが好ましく、40%以上60%以下に圧縮することがより好ましい。接着材料混合塊Zの体積を圧縮前の体積に対して30%以上70%以下に圧縮させつつ接着材料を硬化させることにより、ウェットスーツ廃材の破砕片の持つ弾力性を維持させつつ、かつ、内部に含まれる気泡を大きく破壊せずに、形成される成型体(再生材料)の強度を向上させ、該成型体に含まれるウェットスーツ廃材の破砕片が成型体から脱落することを効果的に抑制することができる。
【0021】
また、上述の再生材料の製造方法によれば、ウェットスーツ端切れや使用済みのウェットスーツといったウェットスーツ廃材を有効利用して別の新たな素材(再生材料)に生まれ変わらせることができるため、従来のように廃棄物として焼却処理や埋め立て処理等されていたウェットスーツ廃材量を減じ、環境負荷を低減させることができ、ゼロエミッション化にも貢献することができる。
【0022】
また、上記のようにして形成された成型体(再生材料)は、弾力性がありまた内部に多くの気泡を含むウェットスーツ廃材から構成されているため、マットやシート、クッション材、建材、断熱材、防音材等様々な用途の材料(素材)として使用することができる。なお、マットやシート等として使用する場合、例えば、筒状の成型体から所望の部分を適宜スライス(スライス工程)してシート状成型体を形成することにより得ることができる(図3)。
【0023】
また、シート状成型体を形成した後、所定の型抜きを行うことによりサンダルのソール構造を得ることもできる。なお、ソール構造としては、所定厚みの単一のシート状成型体を型抜きすることにより形成してもよく、或いは、所定の型抜きがなされたシート状成型体を、接着剤を介して複数枚積層して形成してもよい。更に、所定の厚みのシート状成型体を、接着剤を介して複数枚積層したものに対して型抜きを行うことにより形成するようにしてもよい。また、所定の型抜きがなされたシート状成型体の一方面に別素材シートから型抜きされたソール底部を、他方面に別素材シートから型抜きされたソール表面部を接着して、本発明に係るシート状成型体をクッション材として挟み込むようにして、ソール構造を構成してもよい。なお、シート状成型体同士や別素材シートを積層する場合に用いられる接着剤の種類は特に限定されないが、上記再生材料の製造方法の混合工程S2において用いられる接着材料と同種の接着剤を用いることが接着効果を高めるという観点から好ましい。
【0024】
ウェットスーツ廃材を破砕して得られる破砕片から形成された再生材料によって形成される本発明に係るサンダルのソール構造は、ウェットスーツ廃材を有効利用して形成されるものであるため、環境負荷を低減することができる。また、本発明に係るサンダルのソール構造は、様々な色・形の破砕片がその表面に分散した模様を形作るため(図3参照)、審美性が高いものとなる。また、サンダルのソール構造の表面に現れる様々な色・形の破砕片の模様は、各サンダルのソール構造ごとに異なるものとなるため、使用者が自身のサンダルの特徴的な模様部分(破砕片の色や大きさ、形、その配置等)を把握することにより、仮に、同種のサンダル(ウェットスーツ廃材破砕片の再生材料によって形成されるソール構造を有するサンダル)が、玄関先に並んでいたとしても、他人のサンダルと履き間違いしてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0025】
以上、本発明の一実施形態に係る再生材料の製造方法について説明したが、その具体的構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、図4のブロック図及び図5の説明図に示すように、上記圧縮工程S3により形成される筒状の成型体をスライスしてシート状成型体を形成するスライス工程S4を更に備え、当該スライス工程S4が、筒状の成型体10の軸を中心に該成型体10を回転させながら、スライサー5で筒状の成型体10の表面部を所定厚みでスライスして帯状のシート状成型体15を形成するように構成してもよい。なお、スライスされたシート状成型体15は、別途巻取軸にロール状に巻回されることが好ましい。ここで、スライスして形成されるシート状成型体15の厚みとしては、特に限定されないが、例えば、3mm~10mmであることが好ましい。3mm未満の厚みでスライスする場合、平坦性が損なわれるおそれがあり、また、10mmを超えると丸まりやすくなるおそれがある。
【0026】
また、上記実施形態においては、図2に示す圧縮装置が備える保持容器1の形態を有底円筒状としているが、このような形態に限定されず、保持容器1の形態として、有底角柱状に構成してもよい。また、上記実施形態においては、図2に示す圧縮装置が備える保持容器1の形態を有底円筒状とし、圧縮後の成型体(再生材料)の形態として、ブロック状の円柱となるように形成しているが、圧縮後の成型体(再生材料)が、シート状の形態を有するように、保持容器がトレイ状の形態となるように圧縮装置を構成してもよい。
【符号の説明】
【0027】
S1 破砕工程
S2 混合工程
S3 圧縮工程
S31 混合塊投入ステップ
S32 押圧部材挿入ステップ
S4 スライス工程
1 保持容器
2 押圧部材
3 軸体
5 スライサー
10 筒状の成型体
15 シート状成型体
Z 接着材料混合塊
図1
図2
図3
図4
図5