(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132191
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】改札機および改札処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G07B 15/00 20110101AFI20230914BHJP
【FI】
G07B15/00 H
G07B15/00 G
G07B15/00 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037371
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 勝秀
【テーマコード(参考)】
3E127
【Fターム(参考)】
3E127AA03
3E127BA16
3E127CA02
3E127CA37
3E127DA02
3E127DA17
3E127DA20
3E127DA30
3E127EA02
3E127FA27
3E127FA43
3E127FA50
(57)【要約】
【課題】 不正利用を防止しつつ乗車券媒体の再提示を許容できる改札機および改札処理プログラムを提供する。
【解決手段】 実施形態によれば、改札機は、メモリと券処理部とプロセッサとを有する。メモリは、情報を保持する。券処理部は、利用者が提示する乗車券媒体から情報を読み取る。プロセッサは、券処理部により乗車券媒体から読み取った情報が通行可である場合には通行可とした券に関する情報を含む処理済の券情報をメモリに保存し、券処理部により乗車券媒体から読み取った情報が通行不可である場合には乗車券媒体から読み取った情報記メモリに保存した処理済の券情報とが一致すれば当該利用者を通行可とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅の改札口に設置される改札機において、
情報を保持するメモリと、
利用者が提示する乗車券媒体から情報を読み取る券処理部と、
前記券処理部により乗車券媒体から読み取った情報が通行可である場合には通行可とした券に関する情報を含む処理済の券情報を前記メモリに保存し、前記券処理部により乗車券媒体から読み取った情報が通行不可である場合には乗車券媒体から読み取った情報と前記メモリに保存した処理済の券情報とが一致すれば当該利用者を通行可とするプロセッサと、
を有する改札機。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記券処理部により乗車券媒体から読み取った情報が通行可である場合には通行可として処理した乗車券媒体の識別情報を含む処理済の券情報を前記メモリに保存し、前記券処理部により乗車券媒体から読み取った情報が通行不可である場合には読み取った乗車券媒体の識別情報が前記メモリに保存した処理済の券情報に含まれる識別情報と一致であれば当該利用者を通行可とする、
請求項1に記載の改札機。
【請求項3】
前記プロセッサは、さらに、前記券処理部により乗車券媒体から読み取った情報が通行可である場合には通行可として乗車券媒体を処理した処理時刻を含む処理済の券情報を前記メモリに保存し、前記券処理部により乗車券媒体から読み取った情報が通行不可である場合には乗車券媒体から読み取った情報と前記メモリに保存した処理済の券情報とが一致し、かつ、前記メモリに保存した処理済の券情報に含まれる処理時刻からの経過時間が所定の再提示時間内であれば当該利用者を通行可とする、
請求項1又は2の何れか1項に記載の改札機。
【請求項4】
前記プロセッサは、さらに、前記券処理部により乗車券媒体から読み取った情報が通行可である場合には通行可とした乗車券媒体に書き込んだ書込み情報を含む処理済の券情報を前記メモリに保存し、前記券処理部により乗車券媒体から読み取った情報が通行不可である場合には乗車券媒体から読み取った情報が前記メモリに保存した処理済の券情報に含まれる書込み情報と一致すれば当該利用者を通行可とする、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の改札機。
【請求項5】
さらに、通過を検知する検知センサを有し、
前記プロセッサは、前記検知センサを用いて券を提示した利用者が通過したことを検出した場合に前記メモリに保存した処理済の券情報を削除する、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の改札機。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記券処理部が前記券を処理してから所定の再提示時間を経過した場合に前記メモリに保存した処理済の券情報を削除する、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の改札機。
【請求項7】
駅の改札口に設置され、情報を保持するメモリと利用者が提示する乗車券媒体から情報を読み取る券処理部と備える改札機のプロセッサに、
前記券処理部により乗車券媒体から読み取った情報が通行可である場合には通行可とした券に関する情報を含む処理済の券情報を前記メモリに保存し、
前記券処理部により乗車券媒体から読み取った情報が通行不可である場合には乗車券媒体から読み取った情報と前記メモリに保存した処理済の券情報とが一致すれば通行可とする、
ことを実行させるための改札処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、改札機および改札処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道の駅等に設置した改札機は、入場処理又は出場処理において利用者が提示する乗車券に書き込まれた情報から入場又は出場(通行)の可否を判定する。改札機は、通行の可否を判定する場合に、乗車券に記録される情報から特定する有効区間および有効期限などに基づいて通行の可否を判定するとともに、乗車券に記録された入出場のサイクルが正常であるか否かにより通行の可否を判定する。つまり、従来の改札機は、入場又は出場が連続した場合に通行を不可と判定する。
【0003】
また、従来の改札機は、乗車券として非接触式の通信を備えるICカード又は携帯端末などの携帯可能な電子装置が用いられる。たとえば、改札機は、所定の読取位置に翳された非接触式のICカードから非接触通信によって読み取る情報に基づいて通行の可否を判定する。改札機は、非接触式のICカードに対しても入出場サイクルのチェックによって通行の可否を判定する。このため、改札機は、通行可として処理済みとなったICカードが直後に再度翳されると当該ICカードによる通行を不可として処理する。
【0004】
しかしながら、実際の運用では、1度の入場又は出場においてICカードが通行可として処理済みとなったことに気づかずに、利用者が処理済みとなったICカードを再度翳してしまうことがある。このような場合、従来の改札機は、再度ICカードを翳した利用者を一律に通過不可として処理するため、利用者は、係員対応などによって改札口を通過するようにしなければならないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、不正利用を防止しつつ乗車券媒体の再提示を許容できる改札機および改札処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、改札機は、メモリと券処理部とプロセッサとを有する。メモリは、情報を保持する。券処理部は、利用者が提示する乗車券媒体から情報を読み取る。プロセッサは、券処理部により乗車券媒体から読み取った情報が通行可である場合には通行可とした券に関する情報を含む処理済の券情報をメモリに保存し、券処理部により乗車券媒体から読み取った情報が通行不可である場合には乗車券媒体から読み取った情報記メモリに保存した処理済の券情報とが一致すれば当該利用者を通行可とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る改札機を含む改札システムの構成例を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る改札機の通路側の側面における外観を示す例を示す側面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る改札機における制御系の構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る改札機がメモリに保存する処理済のカード情報の例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る改札機による改札処理の動作例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、実施の形態に係る改札システム1の全体構成を概略的に示す図である。
改札システム1は、各駅の改札口に設置される改札機13を接続するシステムである。
図1に示す構成例において、改札システム1は、サーバ11、監視盤12、および、改札機13などを有する。たとえば、サーバ11は、改札口又は駅などの監視対象ごとに設置される監視盤12に接続される。各駅の監視盤12には、各駅の改札口に設置される複数の改札機13が接続される。
【0010】
サーバ11は、ネットワークを介して監視盤12に接続される。サーバ11は、監視盤12に対して各改札機13へ提供すべき情報を供給する。また、サーバ11は、監視盤12を介して各改札機13の動作状態を示す情報や各改札機13における改札処理の結果を示す情報などを取得するようにしても良い。
【0011】
監視盤12は、サーバ11に接続されると共に複数の改札機13に接続される。監視盤12は、たとえば、監視対象とする改札口に設置された改札機13に接続される。監視盤12は、接続される各改札機13の動作状態を監視し、各改札機13に対して遠隔で動作指示を供給する。また、監視盤12は、サーバ11から供給される情報を各改札機13へ配信する機能を有する。
【0012】
各改札機13は、各駅の改札口に設置され、改札口における改札処理(入場処理および出場処理)を実行する。サーバ11、監視盤12および改札機13は、駅などの改札口における改札処理を実現する改札システムを構成する。改札機13は、監視盤12からの指示に応じて動作モードを切り替えたり、監視盤12からの情報を用いて改札処理を実行したりする。
【0013】
以下の説明において、本実施形態に係る改札機13は、利用者が所持する乗車券媒体として非接触式のICカードに基づいて改札処理を実行するものする。ただし、改札機13が乗車券として処理する乗車券媒体は、改札機13が読み取り可能な情報が記録されるものであれば良い。
【0014】
たとえば、乗車券媒体は、磁気記録部に情報が記録される磁気式の記録媒体(磁気券)、2次元コードなどのコード化した情報を記録(印刷又は表示)する記録媒体(コード券)、非接触通信により情報の送受信を行う非接触式ICカード、非接触ICカードと同様な機能を有する携帯電話機などのモバイル端末、或は、2次元コードなどのコード化した情報を表示するモバイル端末などであっても良い。
【0015】
次に、実施形態に係る改札機13の構成について説明する。
図2は、実施形態に係る改札機13の構成例を概略的に示す側面図である。
改札機13は、たとえば、2台1組で1つの改札(入場又は出場)用の通路を形成する。改札機13は、改札用の通路を1方向にのみ通過可能な入場専用あるいは出場専用の専用機として用いられる場合と、改札用の通路を両方向に通過可能な両用機として用いられる場合とがある。改札機13は、予め入場用の専用機、出場用の専用機あるいは両用機の何れかに設定される。
【0016】
図2に示す構成例において、改札機13は、入場用あるいは出場用の通路を形成する筐体30を有する。改札機13を形成する筐体には、利用者が所持する乗車券から情報を読み取る処理などの券処理を行う券処理部(乗車券処理部)32が設けられる。利用者が乗車券を提示するための券処理部32の読取部(通信部)は、改札機13を形成する筐体30上面の一端部(入口側の端部)に設けられる。券処理部32は、利用者が読取部に提示する乗車券としてのICカードに記録されている情報を読み取る。
【0017】
たとえば、券処理部32は、所定の読取部に利用者が提示する乗車券としてのICカードから情報を読み取るカードリーダライタを含む。なお、券処理部32は、乗車券として使用されるICカード以外の媒体を処理するデバイスを備えるものであっても良い。たとえば、券処理部32は、磁気記録部に券情報を記録した磁気券を処理する磁気券処理部を含む構成であっても良い。また、券処理部32は、乗車券情報としてのコード情報が印刷された媒体からコード情報を読み取るコードリーダを含む構成であっても良い。
【0018】
改札機13を形成する筐体上面には、利用者あるいは係員などに対して案内を行うための表示部33が設けられている。表示部33は、たとえば、液晶表示装置などにより構成される。表示部33は、通路を通行する利用者に対する改札処理の結果などを案内する案内画面を表示する。表示部33には、利用者が表示内容を確認できる位置に設ければ良い。表示部33は、筐体上面の退出口側の端部に設定するものに限定されず、たとえば、筐体上面の中央部や筐体上面において券処理部32の読取部に隣接して設けても良い。
【0019】
改札機13を形成する筐体30の通路側の側面における両端部には、それぞれ通行者の通行の許可不許可を行う開閉動作可能なドア34、35が設けられている。
図2に示す構成例では、矢印aの方向が退出口への進行方向とすると、ドア34は、通路の退出口(出場口)側の端部に設けられ、利用者が通路を通過することを阻止する。また、ドア35は、通路の進入口(入口)側の端部に設けられ、利用者が通路内へ進入してくることを阻止する。
【0020】
改札機13を形成する筐体30の上面のセンサカバー内および筐体30の側面には、複数の検知センサ(人間検知センサ)36が設けられている。検知センサ36は、反射型の検知センサ、あるいは透過型の検知センサにより構成される。検知センサ36からの出力信号は、「明」あるいは「暗」の何れかとなる。検知センサ36は、所定の検知位置に人物が存在するか否かを検知するものである。改札機13は、複数の検知センサ36により通路内の各検知位置における人物の有無を検知する。これにより、改札機13は、複数の検知センサ36の検知結果に基づいて通路を通過中の利用者の位置を判定するようになっている。
【0021】
さらに、改札機13は、券処理部32の読取部が設けられている側(通路の入口側)の通路進入方向に面する側面に接近センサ37が設けられる。接近センサ37は、改札機13に接近してくる人物を検知する。改札機13は、接近センサ37により通路に接近している人物を検知し、当該人物が改札処理をスムーズに受けられるようにする。たとえば、接近センサ37は、券処理部32の読取部に乗車券としてのICカードを提示できる位置にいる人物を検知するようにしても良い。この場合、改札機13は、接近センサ37の検知結果に応じて券処理部32を動作可能になるように制御しても良い。
【0022】
また、通路を両方向に通行する運用形態である場合、改札機13は、接近センサ37の検知結果に応じてドア35の開閉を制御することにより利用者の通行方向(改札方向)を制御する。また、改札機13は、接近センサ37の検知結果に応じて、表示部33の消灯などによって消費電力を低減させる省電力モードと通常動作モード(改札処理を実行する動作モード)との切り替え制御を行うようにしても良い。
【0023】
また、改札機13は、券処理部32の読取部が設けられている側(通路の進入口側)の通路進入方向に面する側面に、通行案内表示部を設けても良い。たとえば、改札機13は、通行案内表示部に当該改札機への通路への進入可否などを表示するようにしても良い。
【0024】
次に、本実施形態に係る改札機13の構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る改札機13における制御系の構成例を示すブロック図である。
図3に示す構成例において、改札機13は、プロセッサ41、ROM42、RAM43、記憶部44、通信部45、クロック46、ドア制御部47、券処理部32、表示部33、検知センサ36、および、接近センサ37などを有する。
【0025】
プロセッサ41、ROM42およびRAM43は、改札機13全体を制御する制御部として機能する。プロセッサ41は、たとえば、CPUなどの演算部である。プロセッサ41は、ROM42又は記憶部44が記憶するプログラムを実行することにより種々の処理機能を実現する。たとえば、プロセッサ41は、ROM42又は記憶部44に記憶した後述する改札処理を実行するための改札処理プログラムを実行する。
【0026】
ROM42は、不揮発性のメモリである。ROM42は、プロセッサ41が実行するプログラムなどを記憶するプログラムメモリとして機能する。ROM42は、プロセッサ41が実行するプログラムや制御データなどを記憶する。
【0027】
RAM43は、一時的にデータを保持するメモリである。RAM43は、ワーキングメモリとして機能する。RAM43は、プログラムをロードしたり、プロセッサ41が処理中のデータを保持したりする。RAM43は、通信データなどを一時的に保持するバッファメモリとしても機能する。
【0028】
記憶部44は、データを記憶するメモリである。記憶部44は、HDD或はSSDなどの書き換え可能な不揮発性メモリを含む。記憶部44は、改札処理に用いる運賃情報などの情報を記憶する。また、記憶部44は、プロセッサ41が実行するプログラムや制御情報などを記憶しても良い。
【0029】
通信部45は、監視盤12と通信するための通信インターフェースである。通信部45は、監視盤12と有線で通信するインターフェースであっても良いし、無線で通信するインターフェースであっても良い。通信部45は、監視盤12へ動作状態を示す情報を送信したり、監視盤12からの動作モードなどの制御指示を受信したりする。
【0030】
クロック46は、時間を計時する。プロセッサ41は、クロック46が計時する時間によって経過時間を取得する。クロック46は、プロセッサ41から指示された時からの経過時間を計測するタイマであっても良い。
【0031】
券処理部32は、利用者が提示する乗車券媒体を処理するものである。本実施形態において、券処理部32は、乗車券媒体としての非接触式ICカード(又は非接触式ICカードと同等の機能を備える携帯端末装置)と非接触通信を行うカードリーダライタにより構成されるものとする。なお、券処理部32は、乗車券媒体としての磁気券を処理する機構を含むものであっても良い。
【0032】
券処理部32は、読取部(所定の読取範囲)に翳された乗車券媒体としての非接触式ICカードと通信し、当該ICカードに記録されている情報を取得する。また、券処理部32は、読取部にICカードを翳した利用者を通行可とする場合、翳されたICカードに対して改札処理の結果などを示す情報を書き込む。
【0033】
表示部33は、改札口を通過する利用者に対する案内を表示する表示器である。表示部33は、たとえば、改札口を通過する利用者が視認しやすいように、改札機13本体の退出口側付近又は中央付近に設置される。表示部33に表示される案内などの表示内容は、プロセッサ41により制御される。
【0034】
ドア制御部47は、ドア34およびドア35を開閉させるドア開閉機構を含む。ドア制御部47は、ドア34およびドア35を開閉させることにより利用者の通行を制御するものである。たとえば、ドア制御部47は、ドア34を閉鎖することにより当該改札機13が改札口に形成する通路の通過を阻止する。
【0035】
検知センサ36は、人物(物体)の有無を検知するセンサである。検知センサ36は、
図2に示すように、改札機13の側面において通路内の各位置が検知位置となるように設置され、各位置おける人物の有無を示す検知信号をプロセッサ41へ出力する。プロセッサ41は、検知センサ(人間検知センサ)36の検出結果に基づいて通路内における人物の位置および人物による通路の通過の有無などを検出することができる。
【0036】
接近センサ37は、改札機13に接近する人物を検知する。接近センサ37は、改札機13の筐体における進入口側に設けられ、改札機13の進入口付近にいる人物の有無を示す検知信号をプロセッサ41へ出力する。
【0037】
次に、実施形態に係る改札システム1における改札機13が実現する処理について概略的に説明する。
本実施形態に係る改札機13は、有効区間や有効期間などの乗車券としての有効性だけでなく、入出場の状態(入出場サイクル)に応じて利用者の通行の可否を制御する。さらに、本実施形態に係る改札機13は、特定の条件内であれば、利用者が同一のICカードを再度翳した場合であっても当該利用者の通行を許可する。
【0038】
たとえば、本実施形態に係る改札機13は、あるICカードに対して通行を許可した場合に所定の再提示時間内であれば当該ICカードが再度翳されることを許容して当該利用者の通行を許可する。このような運用を実現するため、改札機13は、通行可と判定したICカードに関する情報を保持しておき、所定の再提示時間内に通行可として処理したICカードが再度提示された場合には当該ICカードを提示した利用者の通行を許可するようにすれば良い。
【0039】
図4は、実施形態に係る改札機13が保持する通行可として処理したICカードに関する情報の例を示す図である。
改札機13のプロセッサ41は、利用者が提示したICカードを通行可として処理した場合、当該ICカードに関する
図4に示すような情報をRAM43に保持する。
図4に示す例では、通行可として処理したICカードに関する情報(処理済のカード情報)として、カード番号、処理時刻および書込み情報などをRAM43に記憶する。
【0040】
カード番号は、通行可として処理したICカードを識別する情報である。カード番号は、ICカードから読み取れるユニークな情報であれば良い。
処理時刻は、当該ICカードを通行可として処理した時刻を示す情報である。処理時刻は、当該ICカードから情報を読み取った時刻であっても良いし、当該ICカードに書込み情報を書き込んだ時刻であっても良い。また、処理済のカード情報としては、処理時刻の代わりに、当該ICカードを通行可として処理した時からの経過時間を随時更新して記憶するようにしても良い。
【0041】
書込み情報は、通行可として処理したICカードに書き込んだ情報(書込みエンコード)である。改札機13は、通行可として処理するICカードには、たとえば、入場状態である出場状態であるかを示す入出場情報を含む処理結果を示す情報をエンコードした情報を書き込む。このため、処理済のカード情報として書込み情報は、ICカードに書き込んだエンコード情報を記憶する。
【0042】
次に、実施形態に係る改札機13による利用者が提示するICカードに基づく改札処理(通行制御処理)について説明する。
図5は、実施形態に係る改札機13による利用者が提示するICカードに対する改札処理を説明するためのフローチャートである。
改札機13のプロセッサ41は、待機中において接近センサ37および検知センサ36の検知結果を監視する。プロセッサ41は、接近センサ37および検知センサ36の検知結果によって利用者の通路内への進入を検出する。
【0043】
プロセッサ41は、通路内への利用者の進入を検出すると、券処理部32を動作させて利用者が読取部に翳すICカードを読取可能な状態とする。券処理部32は、通路内の利用者が読取部にICカードを翳す(提示する)と、読取部に翳されたICカードに記録されている情報を読み取る。券処理部32は、読取部に翳されたICカードから読み取った情報をプロセッサ41へ供給する。プロセッサ41は、券処理部32が読取部に翳されたICカードから読み取った情報を取得する(ST11)。
【0044】
券処理部32が読取部に翳されたICカードから読み取った情報を取得すると、プロセッサ41は、ICカードから読み取った情報に基づいて当該利用者の通行の可否を判定する通行判定を実行する(ST12)。プロセッサ41は、ICカードから読み取った情報から特定する有効区間および有効期限などの乗車券情報に基づく乗車券の有効性によって通行の可否を判定するとともに、ICカードから読み取る入出場情報が示す入出場の状態(入出場サイクル判定)によって通行の可否を判定する。
【0045】
すなわち、プロセッサ41は、乗車券としての有効性と入出場の状態とよって当該利用者の通行の可否を判定する。プロセッサ41は、入出場サイクル判定として、入場又は出場が連続していないか否かにより入出場情報が正常であるか否かを判定する。たとえば、プロセッサ41は、入場方向に通行する利用者が読取部に翳したICカードから読み取った入出場情報が入場状態を示す場合には入場が連続するため入出場サイクルが正常でない(通行不可)と判定する。また、プロセッサ41は、入場方向に通行する利用者が読取部に翳したICカードから読み取った入出場情報が出場状態を示す場合には入出場サイクルが正常であると判定する。
【0046】
ICカードから読み取った情報により利用者が通行可と判定した場合(ST13、YES)、プロセッサ41は、通行可としたICカードに書き込む書込情報を生成し、生成した書込情報をエンコードした書込みエンコード情報を当該ICカードに書き込む(ST14)。たとえば、プロセッサ41は、利用者の入場を許可する場合、入場駅および日時などの情報に加えて、入出場情報を入場状態とする情報を券処理部32により当該ICカードに書き込む。また、プロセッサ41は、利用者の出場を許可する場合、出場駅および日時などの情報に加えて、入出場情報を出場状態とする情報を券処理部32によりICカードに書き込む。
【0047】
通行可と判定したICカードに書込み情報を書き込むと、プロセッサ41は、通行可としたICカードのカード番号(識別情報)、処理時刻、および、書込み情報(書き込みエンコード情報)を処理済のカード情報としてRAM43(又は記憶部44)に保存する(ST15)。処理済のカード情報は、通路内にいる利用者が提示して通行可として処理されたICカードに関する情報である。また、利用者が連続してICカードを複数回翳すことを想定した運用であれば、処理済のカード情報は、直前に通行可として処理したICカードに関する情報としても良い。
【0048】
プロセッサ41は、処理済のカード情報を保存すると、当該ICカードを提示した利用者の通行を可とし、当該利用者の通行を促す処理を実行する(ST16)。たとえば、プロセッサ41は、ドア制御部47により出場側のドア34を開放し、通行可を示す案内を表示部33に表示することにより当該利用者を通行させる。
【0049】
また、利用者の通行を可とした場合、プロセッサ41は、当該利用者が通路を通過(退出口からの退出)するまで、検知センサ36による利用者の位置を監視するとともに、通路内に留まっている利用者に対して通行を許可した時(通行可と判定した時)からの経過時間を計時する。
【0050】
利用者が通路を通過(退出口からの退出)したことを検出した場合(ST17、YES)、プロセッサ41は、当該利用者が提示したカードに関する処理済のカード情報をRAM43からクリアする(ST24)。
【0051】
また、利用者が通路に留まっている場合(ST17、NO)、プロセッサ41は、通行を許可した時からの経過時間が所定の再提示時間を超えたか否かを判定する(ST18)。利用者が通路に留まったままで通行を許可した時からの経過時間が所定の再提示時間を超えた場合(ST18、YES)、プロセッサ41は、当該利用者が提示したカードに関する処理済のカード情報をRAM43からクリアする(ST24)。
【0052】
これにより、改札機13は、通路内に所定の再提示時間を超えて長時間留まっている利用者が通行可として処理されたICカードを再度翳した場合には当該利用者の通行を不可とすることができる。なお、経過時間に対する再提示時間を変更することにより、改札機13は、通行可として処理されたICカードの再度の提示(再翳し)を許容する時間を設定できる。
【0053】
また、利用者が通路に留まっている時間が所定の再提示時間内である場合(ST18、NO)、プロセッサ41は、処理済のカード情報をRAM43に保持したまま、利用者によるICカードの提示を受け付ける。通行を許可した時からの経過時間が所定の再提示時間内にICカードが読取部に翳されたことを検出した場合(ST19、YES)、プロセッサ41は、処理済のカード情報を保持したままで、ST11へ戻って当該ICカードの読み取りを実行し、上述した処理を実行する。
【0054】
通行可として処理されたICカードが当該改札機13の読取部に再度提示された場合、再度提示されたICカードは、入場又は出場が連続することとなるため、入出場情報が正常な状態でないと判定される。すなわち、処理済のカード情報を保持したままで再度翳されたICカードを読み取った場合、プロセッサ41は、ST12の通行判定における入出場サイクル判定によって通行を不可と判定する。
【0055】
読取部に翳されたICカードが通行不可と判定した場合(ST13、NO)、プロセッサ41は、読み取ったICカード(翳されたICカード)のカード番号と処理済のカード情報におけるカード番号とが一致するか判定する(ST20)。読み取ったICカードのカード番号と処理済のカード情報におけるカード番号とが一致する場合、プロセッサ41は、当該ICカードが通行可として処理された後に再度翳されたICカードであると特定できる。
【0056】
読み取ったICカードのカード番号と処理済のカード情報におけるカード番号とが一致しない場合(ST20、NO)、プロセッサ41は、通行不可と判定された通行判定の結果に従って当該ICカードを提示した利用者の通行を不可とする(ST23)。読み取ったICカードのカード番号と処理済のカード情報のカード番号とが異なる場合、読み取ったICカードは、通行判定後に再度翳されたICカードではないと特定できる。このため、プロセッサ41は、カード番号が異なる場合には当該ICカードに記憶されている情報による通行判定結果に基づいて利用者の通行を不可とすることにより不正な利用を防止できる。
【0057】
また、読み取ったICカードのカード番号と処理済のカード情報におけるカード番号とが一致する場合(ST20、YES)、プロセッサ41は、さらに、カード番号が一致した処理済のカード情報における書込情報と読取部に翳されたICカードから読み取った読取情報とが一致するか否かを判定する(ST21)。
【0058】
処理済のカード情報における書込情報とICカードから読み取った読取情報とが一致しない場合(ST21、NO)、プロセッサ41は、当該ICカードを提示した利用者の通行を不可とする(ST23)。再度翳されたICカードに書き込まれている情報が処理済のカード情報の書込み情報と異なる場合、再度翳されたICカードは、再度翳されるまでの間に別の情報が不正に書き込まれたこと、あるいは、処理異常となったことなどが考えられる。このため、プロセッサ41は、処理済のカード情報における書込情報とICカードから読み取った読取情報とが一致しない場合には当該ICカードを提示した利用者の通行を不可として係員対応を促すことで不正な利用などを防止できる。
【0059】
処理済のカード情報における書込情報と読取部に翳されたICカードから読み取った読取情報とが一致する場合(ST21、YES)、プロセッサ41は、カード番号および書込み情報が一致する処理済のカード情報における処理時刻とクロック46が計時する現在時刻とから経過時間(ICカードを再度翳すまでの時間)を算出し、経過時間が所定の再提示時間内であるか否かを判定する(ST22)。
【0060】
経過時間が所定の再提示時間を越える場合(ST22、NO)、プロセッサ41は、当該ICカードを提示した利用者の通行を不可とする(ST23)。利用者が意図せずにICカードを複数回翳してしまうことは、短時間で行われることが想定されることから、所定の再提示時間を越えて再び同じICカードが翳された場合に通行を不可とすることにより不正な利用などを防止できる。
【0061】
経過時間が所定の再提示時間内の場合(ST22、NO)、つまり、同じカード番号で書込み情報も一致するICカードが所定の再提示時間内に再度翳された場合、プロセッサ41は、ST15へ進み、当該ICカードを読取部に翳した(再度翳した)利用者の通行を許可する。
【0062】
以上のように、実施形態に係る改札機は、利用者が提示したICカードを通行可として処理する場合に当該ICカードに関する情報を処理済のカード情報としてRAMなどのメモリに保持しておく。改札機は、利用者が提示したICカードを通行不可と判定した場合に当該ICカードの情報と直前に処理したICカードに関する情報としての処理済のカード情報とが一致すれば、当該ICカードを提示した利用者の通行を許可する。
【0063】
これにより、利用者が誤って同一のICカードを複数回翳してしまった場合であっても、当該ICカードの情報と処理済のカード情報とが一致すれば、当該利用者の通行を可として処理することができる。この結果、ICカードに記録される情報をチェックして不正な利用を防止しつつ、利用者がICカードを再度翳してしまうことも許容して通行を許可することができ、利用者にストレスをかけることが少ない改札機を提供できる。
【0064】
また、実施形態に係る改札機は、さらに、利用者が提示したICカードを通行不可と判定した場合、当該ICカードのカード番号と直前に処理したICカードに関する情報としての処理済のカード情報に含まれるカード番号とが一致すれば、当該ICカードを提示した利用者の通行を許可する。
【0065】
これにより、利用者が同一のICカードを複数回翳してしまったことを確実にチェックすることができ、利用者による意図しないICカードを再翳しを許容した通行制御を実現することができる改札機を提供できる。
【0066】
また、実施形態に係る改札機は、さらに、利用者が提示したICカードを通行不可と判定した場合、当該ICカードの情報と処理済のカード情報とが一致し、かつ、処理済のカード情報が示す処理時刻からの経過時間が所定の再提示時間内であれば、当該ICカードを提示した利用者の通行を許可する。
これにより、利用者が同一のICカードを所定の再提示時間内で複数回翳してしまうことを許容した通行制御を実現することができる改札機を提供できる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1…改札システム、11…サーバ、12…監視盤、13…改札機、41…プロセッサ、42…ROM、43…RAM(メモリ)、44…記憶部(メモリ)、45…通信部、46…クロック、32…券処理部、33…表示部、34、35…ドア、36…検知センサ、37…接近センサ、47…ドア制御部。