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  • 特開-住宅下地用止水シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132222
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】住宅下地用止水シート
(51)【国際特許分類】
   E04D 12/00 20060101AFI20230914BHJP
   E04D 5/00 20060101ALI20230914BHJP
   D04H 1/4374 20120101ALI20230914BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20230914BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20230914BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230914BHJP
   E04F 13/02 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
E04D12/00 P
E04D5/00 B
D04H1/4374
B32B5/26
B32B27/12
B32B27/00 Z
E04F13/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037416
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【弁理士】
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】細川 泰志
【テーマコード(参考)】
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
4F100AK01
4F100AK01C
4F100AK03
4F100AK03A
4F100AK03C
4F100AK04
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AK04D
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AK07C
4F100AK25
4F100AK25A
4F100AK25C
4F100BA04
4F100BA07
4F100DG01
4F100DG01A
4F100DG01C
4F100DG11
4F100DG11B
4F100DG15
4F100DG15A
4F100DG15D
4F100GB07
4F100JD05
4L047AA14
4L047AA27
4L047AB07
4L047BA09
4L047BB09
4L047CA05
4L047CA19
4L047CC14
(57)【要約】
【課題】釘等による貫通孔が形成された場合であっても、この貫通孔を通じた水分の浸入の抑制性能に優れた住宅下地用止水シートを提供する。
【解決手段】少なくとも、表側不織布層2、クロスシート3、フィルム4、及び裏側不織布層5を積層してなる住宅下地用止水シート1であって、裏側不織布層5は、吸水性樹脂を含み、表側不織布層2、及び裏側不織布層5は、夫々基材としてポリオレフィン系樹脂を原材料とした不織布を含み、表側不織布層2の毛羽厚みd1は、裏側不織布層5の毛羽厚みd2よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、表側不織布層、クロスシート、フィルム、及び裏側不織布層を積層してなる住宅下地用止水シートであって、
前記裏側不織布層は、吸水性樹脂を含む住宅下地用止水シート。
【請求項2】
前記表側不織布層、及び前記裏側不織布層は、夫々基材としてポリオレフィン系樹脂を原材料とした不織布を含み、
前記表側不織布層の毛羽厚みは、前記裏側不織布層の毛羽厚みよりも大きい請求項1に記載の住宅下地用止水シート。
【請求項3】
前記表側不織布層に含まれる前記ポリオレフィン系樹脂を原材料とした不織布は、エアスルー不織布である請求項2に記載の住宅下地用止水シート。
【請求項4】
前記裏側不織布層に含まれる前記ポリオレフィン系樹脂を原材料とした不織布は、スパンボンド不織布である請求項2に記載の住宅下地用止水シート。
【請求項5】
前記表側不織布層、及び前記裏側不織布層の目付は、夫々15~28g/mである請求項1~4の何れか一項に記載の住宅下地用止水シート。
【請求項6】
前記裏側不織布層における前記吸水性樹脂の含有量は、5~10g/mである請求項1~5の何れか一項に記載の住宅下地用止水シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも、表側不織布層、クロスシート、フィルム、及び裏側不織布層を積層してなる住宅下地用止水シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の建築物において壁面にモルタル仕上げをすることが行われている。モルタル仕上げにおいては、貫、木摺板等の下地(以下、単に「下地」ともいう)に固結前のモルタル材料が塗布される際に、モルタル材料に含まれる水分が下地を濡らしたり、モルタル材料が固結した後に、モルタルを通じて雨水が下地に浸入したりしないように、下地の表面にアスファルトフェルトやタールフェルト等の止水シートが張り付けられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の止水シートは、その外側から金網やメタルラス等の補強材と共に、釘、タッカー等(以下、「釘等」ともいう)で打ち付けられ、補強材を介してモルタル材料が下地に塗布される。
【0003】
また、貫通孔を通じた水分の浸入を抑制すべく、布帛の表面に伸縮性及び粘着性を有する樹脂層を形成した止水シートが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の止水シートによれば、釘等が打ち付けられて貫通孔が形成されると、伸縮性及び粘着性を有する樹脂層が釘等の周辺に凝集することにより、水分の浸入が抑制されるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1-105732公報
【特許文献2】特開平2-269277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された止水シートは、釘等の打ち付けによって止水シートに貫通孔が形成されると、貫通孔を通じてモルタル材料に含まれる水分や、雨水等の水分が浸入するおそれがある。
【0006】
特許文献2に記載された止水シートは、樹脂層が貫通孔を十分に塞ぐことが困難であり、貫通孔を通じた水分の浸入を十分に抑制し得るとはいい難い。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、釘等による貫通孔が形成された場合であっても、この貫通孔を通じた水分の浸入の抑制性能に優れた住宅下地用止水シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明に係る住宅下地用止水シートの特徴構成は、
少なくとも、表側不織布層、クロスシート、フィルム、及び裏側不織布層を積層してなる住宅下地用止水シートであって、
前記裏側不織布層は、吸水性樹脂を含むことにある。
【0009】
本構成の住宅下地用止水シートによれば、表側不織布層が積層されていることにより、この表側不織布層をモルタルに密着させることができる。クロスシートが積層されていることにより、当該住宅下地用止水シートは、引っ張り強度が高められたものとなり、下地に張り付けられるべく引っ張られた際、破れ難いものとなる。フィルムが積層されていることにより、当該住宅下地用止水シートは、釘等による貫通孔(以下、単に「貫通孔」ともいう)以外の部分において水分の浸入を抑制することができるものとなる。そして、裏側不織布層が積層されていることにより、この裏側不織布層を下地に接触させることができる。また、裏側不織布層が吸水性樹脂を含むことにより、当該住宅下地用止水シートに貫通孔が形成された場合において、モルタル材料中の水分や、雨水等の水分が貫通孔を通過する際、この水分を吸水性樹脂が吸収して膨潤する。膨潤した吸水性樹脂によって貫通孔と釘等との隙間が塞がれるため、貫通孔を通じた水分の浸入を抑制することが可能となる。さらに、フィルムよりも下地側に吸水性樹脂が存在することにより、フィルムに存在する貫通孔を通って浸入した水分を吸水性樹脂が吸収し、膨潤することによって貫通孔が塞がれ、それ以降の水分の浸入を阻止することができる。
【0010】
本発明に係る住宅下地用止水シートにおいて、
前記表側不織布層、及び前記裏側不織布層は、夫々基材としてポリオレフィン系樹脂を原材料とした不織布を含み、
前記表側不織布層の毛羽厚みは、前記裏側不織布層の毛羽厚みよりも大きいことが好ましい。
【0011】
ポリオレフィン系樹脂はアルカリ耐性を有する樹脂である。このため、本構成の住宅下地用止水シートによれば、表側不織布層、及び裏側不織布層が夫々基材としてポリオレフィン系樹脂を原材料とした不織布を含むことにより、当該住宅下地用止水シートにモルタル材料を塗布する際、このモルタル材料に含まれるアルカリ成分によって表側不織布層及び裏側不織布層が可溶化されたり変性したりすることを抑制することができる。また、表側不織布層の毛羽厚みが裏側不織布層の毛羽厚みよりも大きいことにより、表側不織布層とモルタルとのアンカー効果が高められるため、当該住宅下地用止水シートは、モルタルとの密着性に優れたものとなる。また、表側不織布層の毛羽厚みが裏側不織布層の毛羽厚みよりも大きい(すなわち、裏側不織布層の毛羽厚みが表側不織布層の毛羽厚みよりも小さい)ことにより、裏側不織布層に基材として含まれる不織布に吸水性樹脂が強固に固着することができるため、裏側不織布層からの吸水性樹脂の脱離を抑制することができる。従って、フィルムに存在する貫通孔を通って浸入した水分を吸水性樹脂が吸収し、膨潤することによって貫通孔が塞がれ、それ以降の水分の浸入を阻止することができる。
【0012】
本発明に係る住宅下地用止水シートにおいて、
前記表側不織布層に含まれる前記ポリオレフィン系樹脂を原材料とした不織布は、エアスルー不織布であることが好ましい。
【0013】
本構成の住宅下地用止水シートによれば、表側不織布層に含まれるポリオレフィン系樹脂を原材料とした不織布がエアスルー不織布であることにより、表側不織布層とモルタルとのアンカー効果がより高められるため、当該住宅下地用止水シートは、モルタルとの密着性がより高められたものとなる。
【0014】
本発明に係る住宅下地用止水シートにおいて、
前記裏側不織布層に含まれる前記ポリオレフィン系樹脂を原材料とした不織布は、スパンボンド不織布であることが好ましい。
【0015】
本構成の住宅下地用止水シートによれば、裏側不織布層に含まれるポリオレフィン系樹脂を原材料とした不織布がスパンボンド不織布であることにより、吸水性樹脂がより強固に固着することができるため、裏側不織布層からの吸水性樹脂の脱離をより抑制することができる。従って、フィルムに存在する貫通孔を通って浸入した水分を吸水性樹脂が吸収し、膨潤することによって貫通孔が塞がれ、それ以降の水分の浸入を阻止することができる。
【0016】
本発明に係る住宅下地用止水シートは、
前記表側不織布層、及び前記裏側不織布層の目付は、夫々15~28g/mであることが好ましい。
【0017】
本構成の住宅下地用止水シートによれば、表側不織布層、及び裏側不織布層の目付が夫々15g/m以上であることにより、当該住宅下地用止水シートは、引っ張られた際に破れ難いものとなる。また、表側不織布層、及び裏側不織布層の目付が夫々28g/m以下であることにより、当該住宅下地用止水シートは、透視性が高められたものとなる。
【0018】
本発明に係る住宅下地用止水シートは、
前記裏側不織布層における前記吸水性樹脂の含有量は、5~10g/mであることが好ましい。
【0019】
本構成の住宅下地用止水シートは、裏側不織布層における吸水性樹脂の含有量が5g/m以上であることにより、吸水性樹脂の吸水及び膨潤によって、より確実に貫通孔を塞ぐことが可能となる。裏側不織布層における吸水性樹脂の含有量が10g/m以下であることにより、裏側不織布層からの吸水性樹脂の脱離をより抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に係る住宅下地用止水シートの層構成例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の住宅下地用止水シートについて、図面を参照しながら説明する。ただし、図に示した層構成は、説明を容易にするため適宜誇張又は簡略化してあり、各層の厚みの大小関係、縮尺関係は、実際の住宅下地用止水シートを正確に反映したものとは限らない。以下の説明において、「表側」とは、モルタルと対向する側を意味し、「裏側」とは、下地と対向する側を意味する。
【0022】
<住宅下地用止水シート>
【0023】
図1は本発明に係る住宅下地用止水シートの層構成例を模式的に示す断面図である。住宅下地用止水シート1は、少なくとも表側不織布層2、クロスシート3、フィルム4、及び裏側不織布層5を備え、裏側不織布層5は、吸水性樹脂を含む。
【0024】
<表側不織布層>
表側不織布層2は、この表側不織布層2上にモルタルを形成するためのものである。具体的には、表側不織布層2は、この表側不織布層2にモルタル材料を塗布する際、及び塗布されたモルタル材料を固結してモルタルを形成した後に、モルタルが剥落することを防ぐためのものである。
【0025】
モルタルは、住宅下地用止水シート1を釘等によって下地に打ち付けた後、表側不織布層2にモルタル材料を塗布し、養生することによって固結させることにより、形成することができる。なお、住宅下地用止水シート1の裏側不織布層5を下地に接触させ、表側不織布層2に従来公知のラス網等の金網を被せた状態で、金網と共に住宅下地用止水シート1を釘等で下地に打ち付けた後、金網を介して表側不織布層2にモルタル材料を塗布してもよい。
【0026】
モルタルの剥落を防ぐという観点から、表側不織布層2は、基材として毛羽立ちが大きい不織布を含むことが好ましい。ここで、毛羽立ちの大きさは、表側不織布層2の表面(図1中の拡大円X中に示す表側不織布層2の断面のベースラインBL1)からの毛羽2aの平均長さである毛羽厚みd1、及び裏側不織布層5の表面(図1中の拡大円Y中に示す裏側不織布層5の断面のベースラインBL2)からの毛羽5aの平均長さである毛羽厚みd2として評価される。この場合、表側不織布層2の毛羽厚みd1は、裏側不織布層5の毛羽厚みd2よりも大きいことが好ましい。表側不織布層2の毛羽厚みd1が裏側不織布層5の毛羽厚みd2よりも大きいことにより、表側不織布層2とモルタルとのアンカー効果が高められるため、住宅下地用止水シート1は、モルタルとの密着性に優れたものとなる。このような表側不織布層2の毛羽厚みd1としては、100~600μmが好ましく、150~600μmがより好ましく、200~600μmがさらに好ましい。
【0027】
表側不織布層2の目付は、15~28g/mが好ましく、16~28g/mがより好ましく、17~28g/mがさらに好ましい。表側不織布層2の目付が15g/m以上であることにより、住宅下地用止水シート1が引っ張られた際に、表側不織布層2が破れることを抑制することができる。表側不織布層2の目付が28g/m以下であることにより、表側不織布層2は、透視性が高められたものとなる。
【0028】
表側不織布層2に基材として含まれる不織布(以下、「表側不織布」ともいう)は、ポリオレフィン系樹脂を原材料とした不織布(以下、「ポリオレフィン系樹脂不織布」ともいう)であることが好ましい。すなわち、表側不織布層2は、基材としてポリオレフィン系樹脂不織布を含むことが好ましい。表側不織布層2が基材としてポリオレフィン系樹脂不織布を含むことにより、住宅下地用止水シート1にモルタル材料を塗布する際、このモルタル材料に含まれるアルカリ成分によって表側不織布層2が可溶化されたり変性したりすることを抑制することができる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。このような樹脂からなる繊維は、単独で用いてもよいし、複数種を混在させてもよいし、芯鞘繊維として用いてもよい。例えば、熱ラミネートで表側不織布層2を、フィルム4を含む他の層と積層する際に、加熱を受けても毛羽厚みd1を保持し得るという点で、芯鞘繊維が好ましく、特に、鞘糸よりも融点が高い芯糸を有するポリオレフィン系樹脂の芯鞘繊維が好ましい。なお、熱ラミネート以外の方法で表側不織布層2を他の層と積層することもできるが、工数を削減し得る点、接着剤を不要とし、コストを削減し得る点等から、熱ラミネートを用いることが好ましい。
【0029】
上記ポリオレフィン系樹脂不織布の種類は特に限定されるものではなく、適宜設定され得る。上記ポリオレフィン系樹脂不織布としては、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、エアスルー不織布、ニードルパンチ不織布などが挙げられる。これらのなかでは、エアスルー不織布が好ましい。すなわち、表側不織布層2に含まれるポリオレフィン系樹脂不織布が、エアスルー不織布であることが好ましい。エアスルー不織布は、スパンボンド不織布等の不織布よりも毛羽厚みが大きい。よって、表側不織布層2に含まれるポリオレフィン系樹脂不織布がエアスルー不織布であることにより、表側不織布層2とモルタルとのアンカー効果がより高められるため、住宅下地用止水シート1は、モルタルとの密着性がより高められたものとなる。
【0030】
表側不織布層2は、上記表側不織布のみを含んでもよく、それ以外の添加剤等を含んでもよい。
【0031】
<クロスシート>
クロスシート3は、住宅下地用止水シート1の引っ張り強度を高めるためのものであり、補強材に相当する。すなわち、クロスシート3は、住宅下地用止水シート1を下地に貼り付ける際、及び貼り付けた後に、住宅下地用止水シート1が引っ張られて破れないようにするための補強材である。クロスシート3としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)系フラットヤーンをタテ及びヨコの2軸に整列させたクロス状のものが挙げられる。クロスシート3がポリオレフィン系フラットヤーンによって構成されることにより、住宅下地用止水シート1にモルタル材料を塗布する際、このモルタル材料に含まれるアルカリ成分によってクロスシート3が可溶化されたり変性したりすることを抑制することができる。
【0032】
クロスシート3の目付は、10~25g/mが好ましく、15~20g/mがより好ましい。クロスシート3の目付が10g/m以上であることにより、クロスシート3は、強度がより高められたものとなる。クロスシート3の目付が25g/m以下であることにより、クロスシート3は、透視性がより高められたものとなる。
【0033】
<フィルム>
フィルム4は、住宅下地用止水シート1に主たる止水性(貫通孔以外の部分の止水性)を付与するためのものであり、それ自身が水分を透過させないように構成されたものである。フィルム4の素材は、水分を透過させないものであればよく、特に限定されず、適宜設定され得る。また、フィルム4は、透視性を有することが好ましい。このようなフィルム4としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系フィルムが好ましい。フィルム4がポリオレフィン系フィルムであることにより、住宅下地用止水シート1にモルタル材料を塗布する際、このモルタル材料に含まれるアルカリ成分によってフィルム4が可溶化されたり変性したりすることを抑制することができる。
【0034】
フィルム4には、公知の添加剤を含有させることができ、このような添加剤としては、例えば、填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、老化防止剤、帯電防止剤、離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光剤、着色剤(顔料、染料等)、結晶核剤等が挙げられる。
【0035】
フィルム4の厚みは、特に限定されず、適宜設定され、例えば透視性、及び止水性を考慮して、0.04~1.0mmとされる。
【0036】
<裏側不織布層>
裏側不織布層5は、下地に張り付けられる(下地と接触される)ためのものである。裏側不織布層5は、吸水性樹脂を含み、この吸水性樹脂は、住宅下地用止水シート1を下地に貼り付ける際に形成された貫通孔を通じて水分が浸入することを抑制するためのものである。
【0037】
吸水性樹脂は、例えば裏側不織布層5に基材として含まれる不織布(以下、「裏側不織布」ともいう)の外側(裏側)の面(すなわち、住宅下地用止水シート1の裏面)側に担持される。吸水性樹脂が上記裏側不織布に担持される態様は、特に限定されず、適宜設定することができ、例えば上記裏側不織布の外側の面側の隙間に吸水性樹脂が担持される。
【0038】
裏側不織布層5は、吸水性樹脂が脱離することを抑制するという観点から、基材として毛羽立ちが小さい不織布を含むことが好ましい。また、裏側不織布層5の毛羽厚みd2は、表側不織布層2の毛羽厚みd1よりも小さい(換言すれば、上述したように、表側不織布層2の毛羽厚みd1は、裏側不織布層5の毛羽厚みd2よりも大きい)ことが好ましい。裏側不織布層5の毛羽厚みd2が表側不織布層2の毛羽厚みd1よりも小さいことにより、裏側不織布層5に基材として含まれる上記裏側不織布に吸水性樹脂が強固に固着することができるため、裏側不織布層5からの吸水性樹脂の脱離を抑制することができる。従って、フィルム4に存在する貫通孔を通って浸入した水分を吸水性樹脂が吸収し、膨潤することによって貫通孔が塞がれ、それ以降の水分の浸入を阻止することができる。このような裏側不織布層5の毛羽厚みd2としては、30~100μmが好ましく、30~90μmがより好ましく、30~80μmがさらに好ましい。
【0039】
裏側不織布層5の目付は、15~28g/mが好ましく、16~28g/mがより好ましく、17~28g/mがさらに好ましい。裏側不織布層5の目付が15g/m以上であることにより、住宅下地用止水シート1が引っ張られた際に、裏側不織布層5が破れることを抑制することができる。裏側不織布層5の目付が28g/m以下であることにより、裏側不織布層5は、透視性が高められたものとなる。
【0040】
上記裏側不織布は、上記表側不織布と同様、ポリオレフィン系樹脂不織布であることが好ましい。すなわち、裏側不織布層5は、基材としてポリオレフィン系樹脂不織布を含むことが好ましい。裏側不織布層5が基材としてポリオレフィン系樹脂不織布を含むことにより、住宅下地用止水シート1にモルタル材料を塗布する際、このモルタル材料に含まれるアルカリ成分によって裏側不織布層5が可溶化されたり変性したりすることを抑制することができる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。このような樹脂からなる繊維は、単独で用いてもよいし、複数種を混在させてもよいし、芯鞘繊維として用いてもよい。例えば、熱ラミネートで裏側不織布層5を、フィルム4を含む他の層と積層する際に、加熱を受けても毛羽厚みd2を保持し得るという点で、芯鞘繊維が好ましく、特に、鞘糸よりも融点が高い芯糸を有するポリオレフィン系樹脂の芯鞘繊維が好ましい。なお、熱ラミネート以外の方法で裏側不織布層5を他の層と積層することもできるが、工数を削減し得る点、接着剤を不要とし、コストを削減し得る点等から、熱ラミネートを用いることが好ましい。
【0041】
上記ポリオレフィン系樹脂不織布の種類は特に限定されるものではなく、適宜設定され得る。上記ポリオレフィン系樹脂不織布としては、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、エアスルー不織布、ニードルパンチ不織布などが挙げられる。これらのなかでは、スパンボンド不織布が好ましい。すなわち、裏側不織布層5に含まれるポリオレフィン系樹脂不織布が、スパンボンド不織布であることが好ましい。スパンボンド不織布は、エアスルー不織布等の不織布よりも毛羽厚みが小さい。よって、裏側不織布層5に含まれるポリオレフィン系樹脂不織布が、スパンボンド不織布であることにより、吸水性樹脂がより強固に固着することができるため、裏側不織布層5からの吸水性樹脂の脱離を抑制することができる。従って、フィルム4に存在する貫通孔を通って浸入した水分を吸水性樹脂が吸収し、膨潤することによって貫通孔が塞がれ、それ以降の水分の浸入を阻止することができる。
【0042】
吸水性樹脂は、水分と接触した際にこの水分を吸収して膨潤し、膨潤した状態において非流動状態を維持し得るような樹脂であればよく、特に限定されるものではない。このような吸水性樹脂としては、例えば水溶性の電解質ポリマーに架橋結合を導入した樹脂が挙げられる。吸水性樹脂としては、天然の吸水性樹脂、及び合成された吸水性樹脂の何れであってもよいが、耐久性の観点から、合成された吸水性樹脂が好ましい。吸水性樹脂を構成する素材としては、例えば、ポリビニルアルコール系であるポリビニルアルコール架橋重合体、ポリアクリル系であるポリアクリル酸塩架橋体、アクリル酸ナトリウム-ビニルアルコール共重合体、ポリエーテル系であるポリエチレングリコールジアクリレート架橋重合体、無水マレイン酸系重合体、ビニルピロリドン系重合体等の付加重合体が挙げられる。
【0043】
吸水性樹脂は、バインダー樹脂を介して上記裏側不織布(例えばその外側の面側)に固着されることによって裏側不織布層5において上記裏側不織布に担持されることが好ましい。バインダー樹脂としては、ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂等が挙げられる。これらのうち、加工時の取扱性の良さや、コスト低減の観点から、アクリル系樹脂が好ましい。裏側不織布層5における上記裏側不織布に対する吸水性樹脂の固着(担持)方法は、特に限定されないが、例えば、吸水性樹脂と、バインダー樹脂と、トルエンなどの有機溶媒とからなる混合液をコーティング法、グラビアロール法等によって上記裏側不織布の裏側となる面に塗布し、熱処理を施して固化させる方法等が挙げられる。
【0044】
裏側不織布層における吸水性樹脂の含有量は、5g/m以上であることが好ましく、6g/m以上であることがより好ましい。また、裏側不織布層における吸水性樹脂の含有量は、10g/m以下であることが好ましい。裏側不織布層における吸水性樹脂の含有量が5g/m以上であることにより、吸水性樹脂の吸水及び膨潤によって、より確実に貫通孔を塞ぐことが可能となる。裏側不織布層における吸水性樹脂の含有量が10g/m以下であることにより、裏側不織布層からの吸水性樹脂の脱離をより抑制することができる。
【0045】
<住宅下地用止水シートの製造方法>
住宅下地用止水シート1の製造方法としては、例えば表側不織布層2、クロスシート3、フィルム4、及び裏側不織布層5を、この順に重ね、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、押出ラミネート法、ホットメルトラミネート法、サーマルラミネート法等によって各層を接着することによって積層する方法が挙げられる。なお、住宅下地用止水シート1には、上述した表側不織布層2、クロスシート3、フィルム4、及び裏側不織布層5に加え、これら以外の層が含まれてもよい。
【0046】
<住宅下地用止水シートの特性>
住宅下地用止水シート1は、流水保持率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。流水保持率が80%以上であることにより、住宅下地用止水シート1の貫通孔に水分が浸入した際に膨潤して貫通孔を塞いだ吸水性樹脂が、貫通孔から脱離し難くなる。これにより、貫通孔を通じた水分の浸入をより確実に抑制することができる。流水保持率の上限は、特に限定されず、100%であってもよい。なお、流水保持率は、後述する方法によって測定される。
【0047】
住宅下地用止水シート1は、釘穴止水性試験における貫通孔を通じて浸入した水分の広がり(釘孔止水性)が貫通孔から20mm以下であることが好ましく、15mm以下であることがより好ましい。ここで、貫通孔を通じて浸入した水分の広がりが小さい程、吸水性樹脂による水分の吸収量が大きく、貫通孔を塞ぐ性能が高いことになる。この点に関し、上記釘孔止水性が20mm以下であることにより、貫通孔を通じた水分の浸入をより確実に抑制することができる。また、吸水性樹脂による水分の吸収量が大きいことにより、下地が周囲環境等から吸収した水分も吸水性樹脂によって吸収することができるため、下地が乾き易くなって腐り難くなる。上記釘孔止水性の下限は、特に限定されず、例えば5mmであってもよい。釘孔止水性は、後述する方法によって測定される。
【0048】
住宅下地用止水シート1は、表側不織布層2のモルタルとの密着性(付着強さ)が、3N/25mm以上が好ましく、3.5N/25mm以上がより好ましく、4N/25mm以上がさらに好ましい。上記密着性が3N/25mm以上であることにより、表側不織布層2からのモルタルの剥落をより確実に抑制することができる。上記密着性の上限は、特に限定されず、例えば10N/25mmであってもよい。上記密着性は、後述する方法によって測定される。
【0049】
住宅下地用止水シート1は、透視性を有することが好ましい。住宅下地用止水シート1が透視性を有することにより、下地に住宅下地用止水シート1を重ねて釘等で打ち付ける際、下地を視認し、打ち付け位置を確認することができるため、施工作業が容易となる。住宅下地用止水シート1の透視性は、少なくとも表側不織布層2、クロスシート3、フィルム4、及び裏側不織布層5の各層の透視性によって付与される。上記透視性は、後述する方法によって評価される。
【実施例0050】
本発明の特徴構成を有する住宅下地用止水シート(実施例1~4)を作製し、各種測定及び評価を行った。また、比較のため、本発明の特徴構成を有しない住宅下地用止水シート(比較例1、2)を作製し、同様の測定及び評価を行った。測定及び評価項目は、表側不織布層及び裏側不織布層の毛羽厚み、並びに住宅下地用止水シートの流水保持率、釘穴止水性、透視性、及びモルタルとの密着性とした。各項目について、以下、説明する。
【0051】
[表側不織布層及び裏側不織布層の毛羽厚み]
表側不織布層及び裏側不織布層の夫々の毛羽厚みを、デジタルマイクロスコープ(例えば、株式会社キーエンス製VHX-100)を用いて測定した。具体的には、住宅下地用止水シートの切断面を、上記デジタルマイクロスコープを用いて100~300倍の倍率で無荷重にて観察し、上記切断面における表側不織布層及び裏側不織布層の毛羽厚みを、各不織布層の表面(ベースライン)からの毛羽の長さの平均値(平均長さ)として算出した。
【0052】
[流水保持率]
住宅下地用止水シートを10cm×10cmに10枚カットして試験片とし、得られた試験片の重量を測定し、10枚の試験片の平均重量(浸漬前の平均重量)を求めた。次いで、容器中で静水の状態、及び流水の状態に夫々設定した20~25℃(常温)の水に、試験片を夫々5枚ずつ、10分間浸漬させた。試験片を静水、及び流水に夫々浸漬させる際、試験片が浮き上がらないように、クリップなどで容器の内側に固定した。流水の状態は、スターラーと、長さ3cmのテーパー型回転子とを使用し、これらを回転数1100rpmで回転させることによって発生させた。10分間の浸漬後、静水に浸漬させた5枚の試験片の平均重量(静水浸漬後の平均重量)と、流水に浸漬させた5枚の試験片の平均重量(流水浸漬後の平均重量)とを求め、下記式(1)に基づいて流水保持率を求めた。
流水保持率 = (流水浸漬後の平均重量 - 浸漬前の平均重量) / (静水浸漬後の平均重量 - 浸漬前の平均重量) ×100 ・・・ (1)
算出された流水保持率について、以下の評価基準で評価した。
+:流水保持率が80%以上(良好)
-:流水保持率が80%未満(不良)
【0053】
[釘穴止水性]
アスファルトルーフィング工業会規格「改質アスファルトルーフィング材 7.8 釘穴シーリング性」に準じ、水頭を150mmに設定し、ステープル釘(マックスステープル T3-10MB)を用いて釘穴止水性を測定した。合板はMDF合板(100mm×100mm)を用いた。住宅下地用止水シートから10枚の試験片を切り取り(N=10)、各試験片について24時間後の貫通孔から広がった水分(水跡)の距離を測定し、10枚の試験片の中で貫通孔から広がった水跡が一番広かったもの(すなわち、水跡の外周縁と貫通孔との最大距離)について、以下の評価基準で評価した。
・評価基準
+:水跡の広がりが20mm以下(良好)
-:水跡の広がりが20mm超(不良)
【0054】
[透視性]
MDF合板に線幅3mmのマジックペンで、縦及び横に約30mmの大きさの文字を記入し、その上に住宅下地用止水シートを重ね合わせ、住宅下地用止水シートの上から(すなわち、住宅下地用止水シートを通して)上記で記入した文字を目視し、住宅下地用止水シートの透視性を、以下の評価基準で評価した。
・評価基準
+ :文字が見える(良好)
+-:文字が霞んで見える(普通)
- :文字が見えない(不良)
【0055】
[モルタルとの密着性]
住宅下地用止水シートから幅50mm×長さ200mmの試験片を6枚切り出し、表側不織布層の上にモルタルを幅50mm×長さ110mm×厚み15mmで施工した。23℃、気中養生の環境下にて2週間養生した後、JIS Z0237 10.4.6に準拠し、モルタルが施工された試験片についての90°引きはがし粘着力試験を行うことによって、密着性の指標として付着強さを測定した。測定後、6枚の試験片の付着強さの平均値をモルタルとの密着性とした。モルタルを形成するためのモルタル材料としては、富士川建材工業株式会社製のスミリンモルタルACを用いた。
【0056】
<実施例1>
吸水性樹脂(株式会社日本触媒製、アクアリックCS)と、アクリル系樹脂(株式会社トウペ製、XE―3782)とを、吸水性樹脂:アクリル系樹脂=0.7:1(質量比)の割合で配合し、ソルビタンモノオレート系分散剤で分散後、トルエンで希釈し、さらに架橋剤(三井化学株式会社製、タケネートD―101E、材質:アクリル系樹脂)を配合することにより、吸水性樹脂含有液を得た。得られた吸水性樹脂含有液を、基材としての目付17g/mの裏側不織布(蝶理株式会社製、PP/PE芯鞘スパンボンド不織布)の裏側となる面に、グラビア機を用いた転写によって塗布し、次いで乾燥することにより、7g/mの吸水性樹脂を含む裏側不織布層を得た。表側不織布層として、基材としての目付18g/mの表側不織布(蝶理株式会社製、PP/PE芯鞘エアスルー不織布)のみを含むものを用いた。この表側不織布層、目付17g/mのクロスシート(住化積水フィルム株式会社製、HN55、材質:PE)、フィルム(酒井化学工業株式会社製、LLシート、材質:PE、厚み:0.05mm)、及び上記で得られた裏側不織布層をこの順で重ね合わせ、ラミネート加工することにより、実施例1の住宅下地用止水シートを得た。得られた住宅下地用止水シートについて、上述の方法にて各種測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0057】
<実施例2>
基材としての目付25g/mの裏側不織布(前田工繊株式会社製、スパンボンド不織布、SP-1025E-WH、材質:PP)の裏側となる面に、実施例1と同様にして得られた吸水性樹脂含有液を、グラビア機を用いた転写によって塗布し、次いで乾燥することにより、10g/mの吸水性樹脂を含む裏側不織布層を得た。表側不織布層として、基材としての目付28g/mの表側不織布(蝶理株式会社製、PP/PE芯鞘エアスルー不織布)のみを含むものを用いた。この表側不織布層、目付17g/mのクロスシート(住化積水フィルム株式会社製、HN55、材質:PE)、フィルム(酒井化学工業株式会社製、LLシート、材質:PE、厚み:0.05mm)、及び上記で得られた裏側不織布層を重ね合わせ、ラミネート加工することにより、実施例2の住宅下地用止水シートを得た。得られた住宅下地用止水シートについて、上述の方法にて各種測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
<実施例3>
基材としての目付15g/mの裏側不織布(前田工繊株式会社製、スパンボンド不織布、SP-1015E、材質:PP)の裏側となる面に、実施例1と同様にして得られた吸水性樹脂含有液を、グラビア機を用いた転写によって塗布し、次いで乾燥することにより、7g/mの吸水性樹脂を含む裏側不織布層を得た。表側不織布層として、基材としての目付15g/mの表側不織布(蝶理株式会社製、PP/PE芯鞘エアスルー不織布)のみを含むものを用いた。この表側不織布層、目付17g/mのクロスシート(住化積水フィルム株式会社製、HN55、材質:PE)、フィルム(酒井化学工業株式会社製、LLシート、材質:PE、厚み:0.05mm)、及び上記で得られた裏側不織布層をこの順で重ね合わせ、ラミネート加工することにより、実施例3の住宅下地用止水シートを得た。得られた住宅下地用止水シートについて、上述の方法にて各種測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0059】
<実施例4>
実施例2と同様にして、裏側不織布層(吸水性樹脂を含む)を得た。表側不織布層として、基材としての目付13g/mの表側不織布(蝶理株式会社製、PP/PE芯鞘エアスルー不織布)のみを含むものを用いた。この表側不織布層、目付17g/mのクロスシート(住化積水フィルム株式会社製、HN55、材質:PE)、フィルム(酒井化学工業株式会社製、LLシート、材質:PE、厚み:0.05mm)、及び上記で得られた裏側不織布層をこの順で重ね合わせ、ラミネート加工することにより、実施例4の住宅下地用止水シートを得た。得られた住宅下地用止水シートについて、上述の方法にて各種測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
<比較例1>
基材としての目付18g/mの表側不織布(蝶理株式会社製、PP/PE芯鞘エアスルー不織布)の表側となる面に、実施例1と同様にして得られた吸水性樹脂含有液を、グラビア機を用いた転写によって塗布し、次いで乾燥することにより、7g/mの吸水性樹脂を含む表側不織布層を得た。裏側不織布層として、基材としての目付17g/mの裏側不織布(蝶理株式会社製、PP/PE芯鞘スパンボンド不織布)のみを含むものを用いた。上記で得られた表側不織布層、目付17g/mのクロスシート(住化積水フィルム株式会社製、HN55、材質:PE)、フィルム(酒井化学工業株式会社製、LLシート、材質:PE、厚み:0.05mm)、及び上記裏側不織布層をこの順で、重ね合わせ、ラミネート加工することにより、比較例1の住宅下地用止水シートを得た。なお、比較例1の住宅下地用止水シートにおいては、表側不織布層が吸水性樹脂を含み、裏側不織布層は吸水性樹脂を含んでいない。得られた住宅下地用止水シートについて、上述の方法にて各種測定及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0061】
<比較例2>
表側不織布層として、基材としての目付18g/mの表側不織布(蝶理株式会社製、PP/PE芯鞘エアスルー不織布)のみを含むものを用いた。裏側不織布層として、基材としての目付17g/mの裏側不織布(蝶理株式会社製、PP/PE芯鞘スパンボンド不織布)のみを含むものを用いた。上記表側不織布層、目付17g/mのクロスシート(住化積水フィルム株式会社製、HN55、材質:PE)、フィルム(酒井化学工業株式会社製、LLシート、材質:PE、厚み:0.05mm)、及び上記裏側不織布層をこの順で、重ね合わせ、ラミネート加工することにより、比較例2の住宅下地用止水シートを得た。なお、比較例2の住宅下地用止水シートにおいては、表側不織布層及び裏側不織布層の何れも、吸水性樹脂を含んでいない。得られた住宅下地用止水シートについて、上述の方法にて各種測定及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
表1に示すように、表側不織布層、クロスシート、フィルム、及び裏側不織布層が積層され、裏側不織布層が吸水性樹脂を含む実施例1~4の住宅下地用止水シートは、流水保持率、及び釘穴止水性に優れており、釘等による貫通孔が形成された場合であっても、この貫通孔を通じた水分の浸入の抑制性能に優れたものであった。
【0065】
実施例1、3、及び4の住宅下地用止水シートは、表側不織布層、及び裏側不織布層の少なくとも一方の目付が小さいため、特に透視性が高められたものであった。
【0066】
表側不織布層の目付が裏側不織布層の目付よりも大きい実施例1~2の住宅下地用止水シートは、表側不織布層の目付が裏側不織布層の目付と等しい実施例3の住宅下地用止水シート、及び表側不織布層の目付が裏側不織布層の目付よりも小さい実施例4の住宅下地用止水シートよりも、モルタルとの密着性が高められたものであった。
【0067】
一方、表2に示すように、表側不織布層が吸水性樹脂を含み、裏側不織布層が吸水性樹脂を含まない比較例1の住宅下地用止水シートは、流水保持率、及び釘孔止水性が劣るものであった。この理由としては、エアスルー不織布を含む表側不織布層は、スパンボンド不織布を含む裏側不織布層よりも毛羽立ちが大きく、表側不織布層に含まれる表側不織布に吸水性樹脂が強固に付着し難いため、表側不織布層から吸水性樹脂が脱離し易くなったことによるものと推察される。
【0068】
表側不織布層、及び裏側不織布層の何れも吸水性樹脂を含まない比較例2の住宅下地用止水シートは、釘等によって形成された貫通孔を塞ぐものが無いため、釘穴止水性が劣ったものとなった。また、貫通孔を塞ぐものがないため、そもそも流水保持率を測定することができず、それゆえ評価することもできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の住宅下地用止水シートは、例えば、住宅の建築の際、下地を覆う止水シートとして好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 住宅下地用止水シート
2 表側不織布層
3 クロスシート
4 フィルム
5 裏側不織布層
d1、d2 毛羽厚み
図1