IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソフトバンクモバイル株式会社の特許一覧

特開2023-13228光無線通信システム及び光無線通信方法
<>
  • 特開-光無線通信システム及び光無線通信方法 図1
  • 特開-光無線通信システム及び光無線通信方法 図2
  • 特開-光無線通信システム及び光無線通信方法 図3
  • 特開-光無線通信システム及び光無線通信方法 図4
  • 特開-光無線通信システム及び光無線通信方法 図5
  • 特開-光無線通信システム及び光無線通信方法 図6
  • 特開-光無線通信システム及び光無線通信方法 図7
  • 特開-光無線通信システム及び光無線通信方法 図8
  • 特開-光無線通信システム及び光無線通信方法 図9
  • 特開-光無線通信システム及び光無線通信方法 図10
  • 特開-光無線通信システム及び光無線通信方法 図11
  • 特開-光無線通信システム及び光無線通信方法 図12
  • 特開-光無線通信システム及び光無線通信方法 図13
  • 特開-光無線通信システム及び光無線通信方法 図14
  • 特開-光無線通信システム及び光無線通信方法 図15
  • 特開-光無線通信システム及び光無線通信方法 図16
  • 特開-光無線通信システム及び光無線通信方法 図17
  • 特開-光無線通信システム及び光無線通信方法 図18
  • 特開-光無線通信システム及び光無線通信方法 図19
  • 特開-光無線通信システム及び光無線通信方法 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013228
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】光無線通信システム及び光無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/112 20130101AFI20230119BHJP
   H04B 10/073 20130101ALI20230119BHJP
   G05D 1/10 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
H04B10/112
H04B10/073
G05D1/10
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117242
(22)【出願日】2021-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】今井 弘道
(72)【発明者】
【氏名】林 英誉
【テーマコード(参考)】
5H301
5K102
【Fターム(参考)】
5H301AA06
5H301BB10
5H301CC04
5H301CC07
5H301GG08
5H301GG09
5H301KK04
5K102AA21
5K102AA28
5K102AL23
5K102AL28
5K102AM02
5K102LA03
5K102LA21
5K102LA53
5K102MH03
5K102MH14
5K102MH22
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】通信を行う通信装置同士の間に外乱が存在する場合においても、外乱を回避することにより安定した長距離の光/ミリ波無線通信を行うことを目的とする。
【解決手段】光無線通信システムは、複数の地上局と複数の飛行体を含み、複数の飛行体のそれぞれは、機体を所定の高度まで上昇させる飛行制御部と、通信相手を検出する検出部と、通信相手の位置を特定する位置特定部と、光を送出する出力部と、通信相手の出力部から送出された光を受光する受光部と、通信相手との間で光無線通信を行う光無線通信部と、光無線通信により通信相手から取得した情報を複数の地上局のうち自己が接続された地上局に送信する通信部と、を備え、出力部は、通信相手からの受光状態が良好である場合に、受光部が受光した光とは異なる光を送出し、受光部が、通信相手から、出力部が送出した光とは異なる光を受光した場合に、通信相手との間で光無線通信を行う。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の地上局、及び該複数の地上局とそれぞれ接続され、互いに光無線通信を行う複数の飛行体を含む光無線通信システムであって、
前記複数の飛行体のそれぞれは、
機体を所定の高度まで上昇させる飛行制御部と、
通信相手を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に基づいて前記通信相手の位置を特定する位置特定部と、
前記通信相手に向かって光を送出する出力部と、
前記通信相手の出力部から送出された光を受光する受光部と、
前記通信相手との間で光無線通信を行う光無線通信部と、
光無線通信により前記通信相手から取得した情報を前記複数の地上局のうち自己が接続された地上局に送信する通信部と、を備え、
前記出力部は、前記通信相手からの受光状態が良好である場合に、前記受光部が受光した光とは異なる光を送出し、
前記受光部が、前記通信相手から、前記出力部が送出した光とは異なる光を受光した場合に、前記通信相手との間で光無線通信を行う、
ことを特徴とする光無線通信システム。
【請求項2】
前記複数の飛行体は、前記通信相手から受光した光の光量が一定時間内に閾値を指定回数以上超えた場合に、受光状態が良好であると判定する判定部をさらに有する、請求項1に記載の光無線通信システム。
【請求項3】
前記複数の飛行体は、前記通信相手からの受光状態が良好である場合は、受光した光とは異なる光を生成する光生成部をさらに有する、請求項1または2に記載の光無線通信システム。
【請求項4】
前記複数の飛行体は、前記通信相手からの受光状態が良好ではない場合は、さらに高度を上昇させる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光無線通信システム。
【請求項5】
前記複数の飛行体が、予め設定した高度に到達するまでに、前記通信相手から光を正常に受光できなかった場合は、前記複数の地上局は前記複数の飛行体が移動すべき位置の再算出を行い、
前記複数の飛行体は、再算出された位置に移動する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光無線通信システム。
【請求項6】
前記複数の飛行体が、現在の高度が、到達可能な最高高度であると判断した場合は、前記複数の飛行体が取得した周辺の気象状況に関する情報、及び通信できなかった経路に関する情報のうちの少なくとも1つを前記複数の地上局のうち自己が接続された地上局にフィードバックする、請求項5に記載の光無線通信システム。
【請求項7】
前記複数の飛行体は、前記複数の地上局と無線もしくは有線で接続されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光無線通信システム。
【請求項8】
前記複数の飛行体は、
前記複数の地上局から、前記通信相手の飛行体の高度情報を予め取得し、
前記高度情報及び前記通信相手の検出結果に基づいて、前記通信相手の飛行体の位置を算出する、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光無線通信システム。
【請求項9】
前記複数の地上局は、前記複数の飛行体のうち、自己が接続された飛行体の周辺の気象情報に基づいて前記所定の高度を算出する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光無線通信システム。
【請求項10】
前記所定の高度は、大気境界層を超える高度である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光無線通信システム。
【請求項11】
前記複数の飛行体は、前記通信相手から、受光状態が良好であることを示す情報を受信した後、光無線通信を行う前に前記通信相手の飛行体の認証を行う認証部をさらに有する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の光無線通信システム。
【請求項12】
前記出力部は、多段的に前記通信相手の位置を確認するために、前記通信相手に対して指向性が異なる複数種類の光を送出する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の光無線通信システム。
【請求項13】
複数の地上局とそれぞれ接続された複数の飛行体同士の間で光無線通信を行う方法であって、
前記複数の飛行体のそれぞれは、
機体を所定の高度まで上昇させ、
通信相手を検出し、
検出結果に基づいて前記通信相手の位置を特定し、
前記通信相手に向かって光を送出し、
前記通信相手から送出された光を受光し、
前記通信相手からの受光状態が良好である場合に、受光した光とは異なる光を送出し、
前記通信相手から、送出した光とは異なる光を受光した場合に、前記通信相手との間で光無線通信を行い、
光無線通信により前記通信相手から取得した情報を前記複数の地上局のうち自己が接続された地上局に送信する、
ことを特徴とする光無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光無線通信システム及び光無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、ドローン等の無人航空機に搭載された光無線通信装置が報告されている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、複数の方向に光を発する発光部と、複数の方向からの光を受光する受光部と、他の光無線通信装置に対して送信する送信データに基づいて発光部の発光を制御することによって送信データを送信するデータ送信部と、受光部が受光した、他の光無線通信装置によって発光された光に基づいて、他の光無線通信装置からデータを受信するデータ受信部とを備える光無線通信装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-64858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の光無線通信装置においては、大気の揺らぎや、雨や雲等の外乱の影響を受けた場合には、光無線通信を行うことが難しいという問題があった。
【0005】
本開示の一実施形態に係る光無線通信システム及び光無線通信方法は、通信を行う通信装置同士の間に外乱が存在する場合においても、外乱を回避することにより安定した長距離の光/ミリ波無線通信を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る光無線通信システムは、複数の地上局、及び該複数の地上局とそれぞれ接続され、互いに光無線通信を行う複数の飛行体を含む光無線通信システムであって、複数の飛行体のそれぞれは、機体を所定の高度まで上昇させる飛行制御部と、通信相手を検出する検出部と、検出部による検出結果に基づいて通信相手の位置を特定する位置特定部と、通信相手に向かって光を送出する出力部と、通信相手の出力部から送出された光を受光する受光部と、通信相手との間で光無線通信を行う光無線通信部と、光無線通信により通信相手から取得した情報を複数の地上局のうち自己が接続された地上局に送信する通信部と、を備え、出力部は、通信相手からの受光状態が良好である場合に、受光部が受光した光とは異なる光を送出し、受光部が、通信相手から、出力部が送出した光とは異なる光を受光した場合に、通信相手との間で光無線通信を行うことを特徴とする。
【0007】
本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、複数の飛行体は、通信相手から受光した光の光量が一定時間内に閾値を指定回数以上超えた場合に、受光状態が良好であると判定する判定部をさらに有してよい。
【0008】
本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、複数の飛行体は、通信相手からの受光状態が良好である場合は、受光した光とは異なる光を生成する光生成部をさらに有してよい。
【0009】
本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、複数の飛行体は、通信相手からの受光状態が良好ではない場合は、さらに高度を上昇させてよい。
【0010】
本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、複数の飛行体が、予め設定した高度に到達するまでに、通信相手から光を正常に受光できなかった場合は、複数の地上局は複数の飛行体が移動すべき位置の再算出を行い、複数の飛行体は、再算出された位置に移動してよい。
【0011】
本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、複数の飛行体が、現在の高度が、到達可能な最高高度であると判断した場合は、複数の飛行体が取得した周辺の気象状況に関する情報、及び通信できなかった経路に関する情報のうちの少なくとも1つを複数の地上局のうち自己が接続された地上局にフィードバックしてよい。
【0012】
本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、複数の飛行体は、複数の地上局と無線もしくは有線で接続されてよい。
【0013】
本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、複数の飛行体は、複数の地上局から、通信相手の飛行体の高度情報を予め取得し、高度情報及び通信相手の検出結果に基づいて、通信相手の飛行体の位置を算出してよい。
【0014】
本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、複数の地上局は、複数の飛行体のうち、自己が接続された飛行体の周辺の気象情報に基づいて所定の高度を算出してよい。
【0015】
本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、所定の高度は、大気境界層を超える高度であってよい。
【0016】
本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、複数の飛行体は、通信相手から、受光状態が良好であることを示す情報を受信した後、光無線通信を行う前に通信相手の飛行体の認証を行う認証部をさらに有してよい。
【0017】
本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、出力部は、多段的に通信相手の位置を確認するために、通信相手に対して指向性が異なる複数種類の光を送出してよい。
【0018】
本開示の一実施形態に係る光無線通信方法は、複数の地上局とそれぞれ接続された複数の飛行体同士の間で光無線通信を行う方法であって、複数の飛行体のそれぞれは、機体を所定の高度まで上昇させ、通信相手を検出し、検出結果に基づいて通信相手の位置を特定し、通信相手に向かって光を送出し、通信相手から送出された光を受光し、通信相手からの受光状態が良好である場合に、受光した光とは異なる光を送出し、通信相手から、送出した光とは異なる光を受光した場合に、通信相手との間で光無線通信を行い、光無線通信により通信相手から取得した情報を複数の地上局のうち自己が接続された地上局に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本開示の一実施形態に係る光無線通信システム及び光無線通信方法によれば、通信を行う通信装置同士の間に外乱が存在する場合においても、外乱を回避することにより安定した長距離の光/ミリ波無線通信を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の一実施形態に係る光無線通信システムの概略構成図である。
図2】本開示の一実施形態に係る光無線通信システムを構成する飛行体及び地上局のブロック図である。
図3】本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、飛行体が大気境界層より高い位置に配置された場合において、飛行体と大気境界層との間の位置関係を概略的に示す図である。
図4】本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、飛行体同士の間で実行される光無線通信の手順について説明するためのフローチャートである。
図5】本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、飛行体と飛行体同士の間に存在する雲との位置関係を概略的に示す図である。
図6】本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、雲より高い位置に配置された飛行体と、雲の上空に存在する乱気流との間の位置関係を概略的に示す図である。
図7】本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、雲よりさらに高い位置に配置された飛行体と、雲との間の位置関係を概略的に示す図である。
図8】本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、種々の高度に配置された飛行体と、雲との間の位置関係を概略的に示す図である。
図9】本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、飛行体が所定の高度まで上昇しても光無線通信を実行できなかった場合に、飛行体を新たな位置に配置する手順について説明するためのフローチャートである。
図10】本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、飛行体が所定の高度まで上昇しても光無線通信を実行できなかった場合に、飛行体を新たな位置に配置する方法について説明するための概略図である。
図11】本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、飛行体同士の間で実行される光無線通信の準備を完了するまでの手順について説明するためのシーケンス図である。
図12】本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、地上局が気象情報に基づいて飛行体の配置位置を決定する例について説明するための概略図である。
図13】本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、飛行体同士の間で実行される認証から光無線通信を実行するまでの手順について説明するためのシーケンス図である。
図14】(a)、(b)は、それぞれ、本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、指向性が低いビーコン光及び指向性が高いビーコン光を通信相手に照射する様子を示す図である。
図15】(a)、(b)は、それぞれ、本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、指向性が低いビーコン光及び指向性が高いビーコン光の照射範囲及び飛行体の移動経路を示す図である。
図16】本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、通信相手を多段的に確認する方法について説明するためのフローチャートである。
図17】本開示の一実施形態に係る光無線通信システムにおいて、通信相手の位置を多段的に確認する方法の他の例について説明するための図である。
図18】本開示の一実施形態の変形例1に係る光無線通信システムにおいて、地上局と飛行体とを有線接続する場合の概略構成を示す図である。
図19】本開示の一実施形態の変形例2に係る光無線通信システムにおいて、海上局と飛行体とを有線接続する場合の概略構成を示す図である。
図20】本開示の一実施形態の変形例3に係る光無線通信システムにおいて、地上局と無人航空機との間で光無線通信を行う場合の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に係る光無線通信システム及び光無線通信方法について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0022】
(光無線通信システムの概略構成)
図1に、本開示の一実施形態に係る光無線通信システム1000の概略構成を示す。光無線通信システム1000においては、複数の地上局(201、202)が地表面30上に配置され、これらと通信可能に接続された複数の飛行体(101、102)同士の間で光無線通信が実行される。図1には、複数の飛行体として、第1飛行体101及び第2飛行体102の2機の飛行体を用いる例を示したが、このような例には限られず、複数の飛行体は3機以上の飛行体であってもよい。同様に、図1には、複数の地上局として、第1地上局201及び第2地上局202の2つの地上局を用いる例を示したが、このような例には限られず、複数の地上局は3つ以上の地上局であってもよい。例えば、第1飛行体101は、第2飛行体102と光無線通信行い、かつ、図示しない他の飛行体と光無線通信を行うようにしてもよい。
【0023】
複数の飛行体(101、102)の例としてドローンを用いる例について説明するが、このような例には限定されず、飛行体は、気球や飛行機等、空中を移動可能な他の移動体であってもよい。複数の飛行体(101、102)は、複数の地上局(201、202)と電波を用いて通信を行うことができる。一方、複数の飛行体(101、102)同士は光またはミリ波を用いた無線通信を実行する。光無線通信により、メガビット毎秒からギガビット毎秒程度の通信速度が得られる。光無線通信により、電波の混信や、雑音、干渉等による影響を受けることなく、安定した通信が可能である。また、光無線通信によれば、通信を傍受されることがなく、高い秘匿性が得られる。
【0024】
光無線通信においては、赤外線から可視光線までの間の波長の電磁波(光線)が用いられる。光は電波よりも直進性が高いため、通信相手の位置を正確に把握する必要がある。そこで、本開示の一実施形態に係る光無線通信システム1000においては、まず、第1飛行体101は、予め取得した第2飛行体102の位置情報と、第2飛行体102の検出結果から第2飛行体102の位置を把握する。次に、第1飛行体101は、第2飛行体102にビーコン光B1を送出する。第2飛行体102は、第1飛行体101から送出されたビーコン光B1を正常に受光できているか否かを、ビーコン光B2を用いて第1飛行体101に通知する。
【0025】
第1飛行体101と第2飛行体102との間に、雲や雨等の外乱の要因となるものが無ければ、互いの通信相手のビーコン光を正常に受光することができる。しかしながら、第1飛行体101と第2飛行体102との間に、乱層雲等の雲や雨等が存在すると、これらに遮られて通信相手のビーコン光を正常に受光することができない。従って、ビーコン光を正常に受光できた場合には、通信相手との間に、雲や雨等の局所的な外乱が存在しないと判断することができる。このように、ビーコン光を利用することにより、外乱を回避した光無線通信を行うことができる。
【0026】
第1飛行体101は、第2飛行体102がビーコン光B1を正常に受光できていることを、第2飛行体102から受光したビーコン光B2に基づいて認識することができた場合は、光軸が合っていると判断する。同様に、第2飛行体102から、第1飛行体101に向かってビーコン光B2を送出する。第1飛行体101は、第2飛行体102から送出されたビーコン光B2を正常に受光できているか否かを、ビーコン光B1を用いて第2飛行体102に通知する。第2飛行体102は、第1飛行体101がビーコン光B2を正常に受光できていることを、第1飛行体101から受光したビーコン光B1に基づいて認識することができた場合は、光軸が合っていると判断する。両者の光軸が合っている場合に、無線通信リンクが確立されていると判断し、光無線通信を実行する。
【0027】
(飛行体の構成)
図2に本開示の一実施形態に係る光無線通信システム1000を構成する飛行体(101、102)及び地上局(201、202)のブロック図を示す。飛行体(101、102)は、飛行制御部1と、検出部2と、位置特定部3と、出力部4と、受光部5と、光無線通信部6と、通信部7と、判定部8と、光生成部9と、認証部10と、を備え、これらはバス11により接続されている。位置特定部3、判定部8、及び認証部10は、CPU、ROM及びRAMなどを含む飛行体(101、102)内のコンピュータにより、ソフトウエア(プログラム)として実現される。また、飛行体(101、102)は、互いの向きを合わせるためのトラッキング装置や、向きを合わせるためのソフトウエアを有してよい。
【0028】
飛行制御部1は、第1飛行体101及び第2飛行体102のそれぞれの機体を所定の高度まで上昇させる。第1飛行体101及び第2飛行体102をドローンにより構成した場合、飛行制御部1は、高度計と、モータと、プロペラと、制御装置とを含んでよい。高度計として、例えば、気圧センサを用いてよい。気圧センサによって気圧を測定し、測定値から高度を算出することができる。制御装置は、ドローンのプロペラの回転数を制御することができる。第1飛行体101及び第2飛行体102は、目標とする高度を予め記憶しているか、あるいは、それぞれ第1地上局201及び第2地上局202から目標とする高度に関する情報(高度情報)が通知されるようにしてよい。第1飛行体101及び第2飛行体102は、高度計で測定した高度が目的とする高度に到達するまで上昇することができる。例えば、第1飛行体101及び第2飛行体102は、地上局(201、202)から上空数[km]の高度まで上昇することができる。第1飛行体101及び第2飛行体102は、光無線通信を実行する際には、互いにほぼ同じ高度まで上昇することが好ましい。
【0029】
図3に、本開示の一実施形態に係る光無線通信システム1000において、飛行体(101、102)が大気境界層41より高い位置に配置された場合において、飛行体(101、102)と大気境界層41との間の位置関係を概略的に示す。地球上の大気は、大別して、大気境界層と、自由大気とに分けられる。第1地上局201及び第2地上局202は、大気境界層に含まれ、両者の間には複数の建造物31や山岳32等が存在する。また、昼間においては地表面30が太陽光で温められて対流42が生じる。あるいは、塵等によって光が遮られる場合もある。大気境界層41より低い位置に配置した飛行体(101、102)を用いて光無線通信を行う場合、光の直進性により、複数の建造物31や山岳32等により光が遮られたり、対流42により光が曲げられたりする恐れがある。そこで、飛行体(101、102)は大気境界層41を超える自由大気に配置されることが好ましい。即ち、光無線通信を実行する際における飛行体(101、102)の高度h1は、大気境界層41の高度h0より高いことが好ましい。ここで、大気境界層41の高度h0は、一般的に約1[km]である。
【0030】
検出部2は、通信相手を検出する。例えば、検出部2としてカメラ等の撮像装置を用いてよい。例えば、第1飛行体101のカメラは、第2飛行体102の画像を撮像し、第2飛行体102のカメラは、第1飛行体101の画像を撮像する。検出部2としての撮像装置は、撮像した画像を予め記憶している通信相手の画像と対比して画像解析を行うことにより、通信相手を検出してよい。
【0031】
あるいは、検出部2として、LiDAR(Light Detection And Ranging)等のセンサを用いて第2飛行体102の位置を把握してよい。LiDARによれば、レーザ光をパルス状に照射し、第2飛行体102に当たって跳ね返ってくるまでの時間差を計測し、距離や位置、形状を高精度に測定することができる。また、レーザ光を様々な方向に照射することにより、広範囲に渡って第2飛行体102を検出することができる。
【0032】
また、検出部2として、ミリ波レーダを用いてよい。ミリ波レーダによれば、電波を使って、第2飛行体102に当たって跳ね返ってくるまでの時間差を計測し、距離や方向を測定することができる。ミリ波レーダによれば、夜間や悪天候下においても第2飛行体102の方向と距離が計測可能である。
【0033】
位置特定部3は、検出部2が検出した第2飛行体102の検出結果に基づいて通信相手の位置を特定する。例えば、検出部2としてカメラ等の撮像装置を用いた場合、撮像した第2飛行体102の画像を予め取得した第2飛行体102の画像を用いて画像解析することにより第1飛行体101から第2飛行体102までの距離や方向を算出してよい。検出部2としてミリ波レーダやLiDARを用いた場合は、検出結果から第1飛行体101から第2飛行体102までの距離や方向に関する情報を得ることができる。
【0034】
位置特定部3は、複数の地上局(201、202)から、通信相手の飛行体(102、101)の高度情報を予め取得し、高度情報及び通信相手の検出結果に基づいて、通信相手の飛行体(102、101)の位置を算出してよい。
【0035】
出力部4は、位置特定部3が特定した通信相手の位置に向かって光を送出する。出力部4が送出する光はビーコン光であってよい。ビーコン光は、光無線通信に用いる光と同じ光であってよい。また、ビーコン光は、光無線通信に用いる光より指向性が高くない光であってよい。また、ビーコン光は、雨や霧等を透過しやすい波長の光であってよい。第1飛行体101と第2飛行体102との間で光無線通信を実行する前に、互いにビーコン光をやり取りすることによって、相手との間で光無線通信を実行できる状態(無線通信リンクが確立された状態)にあるか否かを判断することによって、通信を開始する準備を整えることができる。従って、ビーコン光を送受信する所定期間は、通信相手との間の光軸合わせを開始してから、光軸合わせが完了するまでの期間としてよい。ビーコン光は、例えば、数[km]離れた位置からでも到達可能なレーザ光であってよい。出力部4は、例えば、発光ダイオードやレーザダイオード等の発光素子であってよい。
【0036】
受光部5は、通信相手の出力部4から送出された光を受光する。即ち、第1飛行体101の受光部5は、第2飛行体102の出力部4から送出されたビーコン光B2を受光し、第2飛行体102の受光部5は、第1飛行体101の出力部4から送出されたビーコン光B1を受光する。受光部5は、例えば、フォトダイオード、太陽電池、あるいはCMOSイメージセンサ等の受光素子であってよい。
【0037】
光無線通信部6は、通信相手との間で光無線通信を行う。光無線通信には、例えば、波長1.3~1.6[μm]の光を用いてよい。また、光無線通信に用いる光をビーコン光と同じ光を用いてよい。第1飛行体101と第2飛行体102の光無線通信部6の光軸は一致している必要がある。上述したように、第1飛行体101及び第2飛行体102は、ビーコン光等により光軸を合わせる機構である出力部4及び受光部5を備えているため、光無線通信部6の光軸を出力部4の光軸と合わせておくことが好ましい。光無線通信部6は、発光素子と受光素子とを備えている。光無線通信を行うことにより、第1飛行体101と第2飛行体102との間で情報を送受信することができる。ビーコン光に光無線通信と同じ光を用いる場合には、光無線通信部6と、出力部4及び受光部5とを共通化するようにしてもよい。
【0038】
ここで、出力部4は、通信相手からの受光状態が良好である場合に、受光部5が受光した光とは異なる光を送出し、受光部5が、通信相手から、出力部4が送出した光とは異なる光を受光した場合に、光無線通信のリンクが確立されたものと判断し、通信相手との間で光無線通信を行う。即ち、第1飛行体101の出力部4は、第2飛行体102から送出されたビーコン光を正常に受光できている場合は、受光部5が受光したビーコン光とは異なるビーコン光を第2飛行体102に送出する。同様に、第2飛行体102の出力部4は、第1飛行体101から送出されたビーコン光を正常に受光できている場合は、受光部5が受光したビーコン光とは異なるビーコン光を第1飛行体101に送出する。そして、第1飛行体101の受光部5が、第2飛行体102から、出力部4が送出したビーコン光とは異なるビーコン光を受光し、かつ、第2飛行体102の受光部5が、第1飛行体101から、出力部4が送出したビーコン光とは異なるビーコン光を受光した場合に、光無線通信のリンクが確立されたものと判断し、第1飛行体101と第2飛行体102との間で光無線通信を行う。このように、互いに送出したビーコン光とは異なるビーコン光を受光した場合に、光無線通信のリンクが確立されたものと判断することができる。
【0039】
第1飛行体101と第2飛行体102との間に、雲等の外乱が存在する場合には、通信相手から送出されたビーコン光を正常に受光することができない。従って、ビーコン光を正常に受光できない場合は、第1飛行体101と第2飛行体102との間に、雲等の外乱が存在し、光無線通信を行うことが難しいと判断することができる。
【0040】
通信部7は、光無線通信により通信相手から取得した情報を複数の地上局(201、202)のうち、自己が接続された地上局に送信する。即ち、第1飛行体101の通信部7は、第2飛行体102から取得した情報を第1地上局201に送信し、第2飛行体102の通信部7は、第1飛行体101から取得した情報を第2地上局202に送信する。通信部7は、電波を用いて、地上局(201、202)との間で通信を行ってよい。
【0041】
また、地上局(201、202)がデータを電波等により無線で飛行体(101、102)に送信した後、飛行体(101、102)同士の間で光無線通信を行う例には限られず、飛行体(101、102)が予め地上局(201、202)からデータを受信して保持しておき、光無線通信により通信相手に送信するようにしてもよい。
【0042】
複数の飛行体(101、102)は、通信相手から受光した光の光量が一定時間内に閾値を指定回数以上超えた場合に、受光状態が良好であると判定する判定部8をさらに有してよい。即ち、第1飛行体101の判定部8は、第2飛行体102から受光したビーコン光の光量が、一定時間内に閾値を指定回数以上超えた場合に、第2飛行体102からの受光状態が良好であると判定する。同様に、第2飛行体102の判定部8は、第1飛行体101から受光したビーコン光の光量が、一定時間内に閾値を指定回数以上超えた場合に、第1飛行体101からの受光状態が良好であると判定する。第1飛行体101と第2飛行体102と間で、ある時点で瞬間的に光無線通信リンクが確立された場合であっても、その後の気象状況の変化等により、局所的な外乱となる雲等が発生し、光無線通信リンクが確立されなくなる場合も生じうる。そこで、光無線通信リンクが確立された状態が確実に維持されていることを担保するために、受光したビーコン光の強度が一定時間内に閾値を指定回数以上超えることを条件としている。ここで、指定回数は任意に設定することができるが、受光したビーコン光の強度が閾値を1回超えた場合に光無線通信リンクが確立したものと判断すると、安定性を担保できない恐れもあるため、指定回数を複数回とすることが好ましい。
【0043】
複数の飛行体(101、102)は、通信相手からの受光状態が良好である場合は、受光した光とは異なる光を生成する光生成部9をさらに有してよい。光生成部9は、例えば、受光したビーコン光のパルスとは、幅、間隔、及び振幅の少なくとも1つが異なるパルスを有するビーコン光を生成してよい。
【0044】
複数の飛行体(101、102)は、通信相手から、受光状態が良好であることを示すビーコン光を受光した後、光無線通信を行う前に通信相手の飛行体の認証を行う認証部10をさらに有することが好ましい。認証を行う手順については後述する。認証部10が、光無線通信を実行する前に通信相手の認証を行うことにより、不正な通信相手との間で通信を行うことを防止することができる。
【0045】
(地上局の構成)
複数の地上局(201、202)は、それぞれ、通信部21と、位置算出部22と、気象情報取得部23と、を備えており、これらはバス24により接続されている。
【0046】
通信部21は、複数の飛行体(101、102)と通信を行う。即ち、第1地上局201の通信部21は、第1飛行体101の通信部7と通信を行い、第2地上局202の通信部21は、第2飛行体102の通信部7と通信を行う。
【0047】
位置算出部22は、複数の飛行体(101、102)が、外乱の影響を受けない位置を算出する。即ち、第1地上局201の位置算出部22は、第1飛行体101が外乱の影響を受けない位置を算出し、第2地上局202の位置算出部22は、第2飛行体102が外乱の影響を受けない位置を算出する。
【0048】
気象情報取得部23は、位置算出部22が複数の飛行体(101、102)が、外乱の影響を受けない位置を算出する場合に考慮する気象情報を取得する。気象情報取得部23は、例えば、複数の飛行体(101、102)の周辺の天候、気圧、気温、雲の位置、雲の種類、雲の高さ、降水量、風向き、風速等の少なくとも1つに関する気象情報を取得することが好ましい。位置算出部22は、気象情報取得部23が取得した気象情報に基づいて、複数の飛行体(101、102)のそれぞれが外乱の影響を受けない位置を算出することができる。
【0049】
図3に示した例では、地上局(201、202)を建築物に設ける例を示したが、自動車等の移動体に搭載するようにしてもよい。
【0050】
(光無線通信システムの動作手順)
図4に、本開示の一実施形態に係る光無線通信システム1000において、飛行体(101、102)同士の間で実行される光無線通信の手順について説明するためのフローチャートを示す。まず、ステップS101において、図3に示すように、第1飛行体101及び第2飛行体102が、所定の高度h1まで上昇する。ここで、上述したように、高度h1は、大気境界層41の高度h0より高いことが好ましい。
【0051】
次に、ステップS102において、第1飛行体101及び第2飛行体102の検出部2が、互いに通信相手を検出する。
【0052】
次に、ステップS103において、第1飛行体101及び第2飛行体102の位置特定部3が、検出結果に基づいて通信相手の位置を特定し、出力部4が、ビーコン光(B1、B2)を所定期間送出する。
【0053】
次に、ステップS104において、第1飛行体101及び第2飛行体102の受光部5が、通信相手から送出されたビーコン光(B2、B1)を受光する。
【0054】
次に、ステップS105において、第1飛行体101及び第2飛行体102の判定部8が、一定時間内に閾値以上のビーコン光(B2、B1)を指定回数以上受光したか否かを判定する。
【0055】
第1飛行体101及び第2飛行体102の判定部8が、一定時間内に閾値以上のビーコン光(B2、B1)を指定回数以上受光したと判定した場合(ステップS105において「Yes」)は、ステップS106において、第1飛行体101及び第2飛行体102は、通信相手に受光したビーコン光とは異なるビーコン光を送出する。
【0056】
一方、第1飛行体101及び第2飛行体102の判定部8が、一定時間内に閾値以上のビーコン光(B2、B1)を指定回数以上受光していないと判定した場合(ステップS105において「No」)は、ステップS110において、第1地上局201及び第2地上局202が、それぞれ、第1飛行体101及び第2飛行体102に対して、新たな移動位置を指定する。
【0057】
ステップS106において、第1飛行体101及び第2飛行体102が、通信相手に受光したビーコン光とは異なるビーコン光を送出した後、第1飛行体101及び第2飛行体102の受光部5は、通信相手から送出したビーコン光とは異なるビーコン光を受光したか否かを判断する。ここで、ステップS107において、「Yes」となるのは、第1飛行体101と第2飛行体102の両者が共に通信相手から送出したビーコン光とは異なるビーコン光を受光した場合である。この条件を満足する場合は、ステップS108において、光無線通信のリンクが確立できたことになり、ステップS109において、光無線通信を実行する。
【0058】
一方、ステップS107において、第1飛行体101と第2飛行体102の少なくとも一方が、通信相手から送出したビーコン光とは異なるビーコン光を受信しなかった場合は、光無線通信のリンクが確立されていないと判断する。この場合、ステップS110において、第1地上局201及び第2地上局202が、それぞれ、第1飛行体101及び第2飛行体102に対して、新たな移動位置を指定する。その後、ステップS111において、第1飛行体101及び第2飛行体102は、指定された新たな高度まで上昇し、ステップS102に戻る。
【0059】
ここで、第1飛行体101及び第2飛行体102が大気境界層41の高度h0を超える高度h1に配置されたにもかかわらず、通信相手から送出されたビーコン光を正常に受光できない場合の例について説明する。図5に、本開示の一実施形態に係る光無線通信システム1000において、飛行体(101、102)と、飛行体(101、102)同士の間に存在する雲50との間の位置関係を概略的に示す。例えば、雲50が第1飛行体101と第2飛行体102との間に発生し、雲50が地表面30から高度hcの高さまで延びているとする。例えば、高度hcは、数kmから十数kmである。この場合、雲50の高度hcが、第1飛行体101及び第2飛行体102の高度h1を超えているとすると、第1飛行体101から送出されたビーコン光B1及び第2飛行体102から送出されたビーコン光B2は雲50によって遮られ、通信相手に到達することができない。このような場合は、第1飛行体101及び第2飛行体102は、通信相手から送出されたビーコン光を正常に受光することができない。
【0060】
ステップS110において、飛行体(101、102)の新たな移動位置を地上局(201、202)が指定した後、ステップS111において、第1飛行体101及び第2飛行体102は、指定された新たな高度まで上昇し、ステップS102に戻る。この場合、第1地上局201及び第2地上局202が、それぞれ第1飛行体101及び第2飛行体102に、新たな位置情報として、両者の間に生じた雲50を超える高度に関する情報を通知することができる。
【0061】
第1飛行体101及び第2飛行体102が高度に上昇すれば、雲50の影響を受けることなく通信相手から送出されるビーコン光を受光する可能性が高くなる。しかしながら、雲50の上部において乱気流や薄い雲の発生等により外乱が発生する場合もあり得る。図6に、本開示の一実施形態に係る光無線通信システム1000において、雲50より高い位置に配置された飛行体(101、102)と、雲50の上空に存在する乱気流60との間の位置関係を概略的に示す。第1飛行体101及び第2飛行体102が高度h2まで上昇し、高度h2が雲50の高度hcを超えているものとする。この場合、雲50の上部に発生した乱気流60や薄い雲等によって外乱が生じ、通信相手に到達するビーコン光B1及びB2の光量が減少する場合が考えられる。このような場合は、第1飛行体101及び第2飛行体102は、ステップS105において、再度、通信相手が送出するビーコン光を正常に受光できないと判断する。
【0062】
この場合、ステップS111において、第1飛行体101及び第2飛行体102は、再度、指定された新たな高度まで上昇し、ステップS102に戻る。
【0063】
例えば、第1地上局201及び第2地上局202は、雲50の高度hcを十分に超える高度を新たに指定することができる。図7に、本開示の一実施形態に係る光無線通信システム1000において、雲50よりさらに高い高度h3に配置された飛行体(101、102)と、雲50との間の位置関係を概略的に示す。高度h3において、雲50によって生じる乱気流等の外乱の影響を受けることが無い場合は、第1飛行体101と第2飛行体102との間で光無線通信を実行することができる。
【0064】
以上のように、飛行体(101、102)は、通信相手が送出するビーコン光を正常に受光できない場合は、次第に高度を上昇させていき、ビーコン光を正常に受光できる高度を見出す。図8に、本開示の一実施形態に係る光無線通信システム1000において、種々の高度に配置された飛行体(101、102)と、雲50との間の位置関係を概略的に示す。飛行体(101、102)が高度h1に位置しているときは、大気境界層41の高度h0を超えているため、雲50等の外乱が無ければ、光無線通信を実行することができる。しかしながら、雲50が飛行体(101、102)同士の間に発生した場合は、外乱となり、雲50が存在する領域R1の上端の高度hcに至るまで飛行体(101、102)同士の間で光無線通信を行うことはできない。
【0065】
そこで、雲50による外乱の影響を避けるために、飛行体(101、102)が高度h2(>hc)まで上昇すると、雲50による直接的な影響は回避できるものの、乱気流や薄い雲等が発生する領域R2による影響を受けて光無線通信を行うことができない場合が生じうる。
【0066】
そのような場合は、乱気流や薄い雲等が発生する領域R2を避けるために、更に上方の領域R3を挟むように、飛行体(101、102)を高度h3(>h2)の位置まで上昇させることにより、光無線通信を実行することができる。
【0067】
以上のようにして、第1飛行体101と第2飛行体102は、ビーコン光を正常に受信できることを確認した後に、無線通信リンクを確立するようにしているため、両者の間に生じる局所的な外乱を避けて、第1飛行体101と第2飛行体102との間の光無線通信リンクを確立することができる。
【0068】
(飛行体の新たな位置の再算出)
上述したように、飛行体(101、102)がある高度で通信相手との間で光無線通信リンクを確立できなかった場合は、地上局(201、202)は飛行体(101、102)にさらに上昇するように指令を発する。しかしながら、飛行体(101、102)が上昇可能な高度にも限界が存在する。そこで、飛行体(101、102)が上昇可能な最高高度に達した場合に、地上局(201、202)が飛行体(101、102)に移動すべき他の位置を指令する手順について説明する。図9に、本開示の一実施形態に係る光無線通信システム1000において、飛行体(101、102)が所定の高度まで上昇しても光無線通信を実行できなかった場合に、飛行体(101、102)を新たな位置に配置する手順について説明するためのフローチャートを示す。図10に、本開示の一実施形態に係る光無線通信システム1000において、飛行体(101、102)が所定の高度まで上昇しても光無線通信を実行できなかった場合に、飛行体を新たな位置に配置する方法について説明するための概略図を示す。
【0069】
まず、ステップS201において、飛行体(101、102)が所定の高度まで上昇しても外乱等により通信相手と光無線通信を行うことができなかった場合に、飛行体(101、102)が地上局(201、202)によって指定された新たな高度まで上昇する。次に、ステップS202において、飛行体(101、102)が光無線通信リンクの確立を試み、成功した場合(「Yes」)はステップS203において光無線通信を実行する。
【0070】
一方、ステップS202において、光無線通信リンクを確立することができなかった場合(「No」)は、ステップS204において、飛行体(101、102)の現在の高度が、到達可能な最高高度hmであるか否かを判断する。この判断は、飛行体(101、102)が予め記憶している最高高度hmに関する情報と現在の高度とを対比することにより行われる。あるいは、地上局(201、202)が、予め記憶している最高高度hmに関する情報と、飛行体(101、102)に指示した現在の高度とを対比することにより行ってもよい。
【0071】
ステップS204において、飛行体(101、102)の現在の高度が、到達可能な最高高度であると判断した場合(「Yes」)は、ステップS205において、飛行体(101、102)が取得した周辺の気象状況等に関する情報、及び通信できなかった経路に関する情報等の少なくとも1つを地上局(201、202)にフィードバックしてよい。飛行体(101、102)は、自己の周辺の気象状況を観測するためのセンサ等を備えてよい。例えば、飛行体(101、102)自体が電波装置等を備え、リアルタイムで外乱の要因となる雲の位置や降水量等を検出してよい。このようにすることにより、飛行体(101、102)自体が観測するデータを用いて、地上局(201、202)は飛行体(101、102)の周辺の局所的な外乱の発生状況をより正確に把握することができる。
【0072】
次に、ステップS206において、地上局(201、202)が、飛行体(101、102)から取得した気象情報、及び気象情報配信サービス40から取得した気象情報の少なくとも一方に基づいて、局所的な外乱が少ない新たな位置(Q1、Q2)を再算出し、現在の位置(P1、P2)に存在する飛行体(101、102)に送信する。この場合、新たな位置(Q1、Q2)の高度は最高高度hmより低く、大気境界層より高い高度h1とすることが好ましい。その後、ステップS202に戻って、指定された新たな位置(Q1、Q2)において光無線通信リンクの確立を試みる。
【0073】
一方、ステップS204において、飛行体(101、102)の現在の高度が、到達可能な最高高度ではないと判断した場合(「No」)は、ステップS201に戻って、飛行体(101、102)はさらに新たな高度まで上昇し、光無線通信リンクの確立を試みる。
【0074】
以上のようにして、飛行体(101、102)が最高高度に達した後であっても、新たな位置に移動することにより外乱を回避して光無線通信を実行することができる。
【0075】
(光無線通信開始までのシーケンス)
次に、飛行体が高度を上昇させてから、光無線通信の開始準備を完了させるまでのシーケンスについて説明する。図11に、本開示の一実施形態に係る光無線通信システム1000において、飛行体同士の間で実行される光無線通信の準備を完了するまでの手順について説明するためのシーケンス図を示す。
【0076】
まず、ステップS301において、第1地上局201が、気象情報や第2地上局202の位置情報等を基に局所的な外乱の影響が少ない位置を算出する。同様に、ステップS302において、第2地上局202が、気象情報や第1地上局201の位置情報等を基に局所的な外乱の影響が少ない位置を算出する。
【0077】
図12に、本開示の一実施形態に係る光無線通信システム1000において、地上局(201、202)が気象情報に基づいて飛行体(101、102)の配置位置(A1、A2)を決定する例について説明するための概略図を示す。地上局(201、202)は、気象情報配信サービス40から提供される気象情報に基づいて、飛行体(101、102)が上昇を行う位置の周辺に発生している雲50の位置や、降雨51の状況、雲50の移動方向52に関する情報等を取得することができる。地上局(201、202)は、これらの気象情報に基づいて、外乱の影響が少ない位置(A1、A2)を算出する。第1飛行体101は位置A1に移動し、第2飛行体102は位置A2に移動することにより、外乱の影響を回避して光無線通信リンクの確立を試みることができる。
【0078】
次に、ステップS303において、第1地上局201が、指定位置に上昇するように第1飛行体101に命令を発する。同様に、ステップS304において、第2地上局202が、指定位置に上昇するように第2飛行体102に命令を発する。
【0079】
次に、ステップS305において、第1飛行体101が指定位置まで上昇する。同様に、ステップS306において、第2飛行体102が指定位置まで上昇する。ここで、第1飛行体101及び第2飛行体102はほぼ同一の高度まで上昇することが好ましい。
【0080】
次に、ステップS307において、第1飛行体101及び第2飛行体102が、高度情報や光学的な観測等を利用して通信相手の位置を把握し、機器または通信装置の角度を調整する。光学的な観測データには、検出部2により検出された通信相手の検出結果に関するデータを含んでよい。また、通信相手の位置を把握するための機器には出力部4及び受光部5が含まれてよい。さらに通信装置には光無線通信部6が含まれてよい。
【0081】
次に、ステップS308において、互いの飛行体(101、102)が、通信相手に向けてビーコン光を常に送出する。ここで、「常に」とは、通信相手と光無線通信リンクが確立するまでの所定期間であってよい。
【0082】
次に、ステップS309において、通信相手のビーコン光の到達光量を閾値と比較し、通信相手のビーコン光の到達光量が閾値を超えない場合、各飛行体(101、102)は高度を上昇させる。飛行体(101、102)は目標とする新たな高度まで上昇する。目標とする高度は、各飛行体(101、102)が予め記憶していてもよく、地上局(201、202)から指示されてもよい。また、飛行体(101、102)は、ほぼ同じ高度まで上昇することが好ましい。
【0083】
その後、飛行体(101、102)は、新たな高度に上昇した後に、通信相手に向けてビーコン光を送出する。ここでは、ステップS310において、第1飛行体101及び第2飛行体102が、最大まで高度を上昇させたが、通信相手のビーコン光の到達光量が閾値を超えないと判断したものとする。
【0084】
次に、ステップS311において、第1飛行体101は、第1地上局201に対して、局所的な外乱が少ない位置を再算出するよう命令すると共に、第1飛行体101が取得した気象情報や経路情報を第1地上局201にフィードバックする。同様に、ステップS312において、第2飛行体102は、第2地上局202に対して、局所的な外乱が少ない位置を再算出するよう命令すると共に、第2飛行体102が取得した気象情報や経路情報を第2地上局202にフィードバックする。
【0085】
次に、ステップS313において、第1地上局201が、気象情報や第2地上局202の位置情報等を基に局所的な外乱の影響が少ない位置を再算出する。同様に、ステップS314において、第2地上局202が、気象情報や第1地上局201の位置情報等を基に局所的な外乱の影響が少ない位置を再算出する。
【0086】
次に、ステップS315において、第1地上局201が、指定位置に上昇するよう第1飛行体101に命令を発する。同様に、ステップS316において、第2地上局202が、指定位置に上昇するよう第2飛行体102に命令を発する。
【0087】
次に、ステップS317において、互いの飛行体(101、102)が、通信相手に向けてビーコン光を常に送出する。
【0088】
次に、ステップS318において、互いの飛行体(101、102)が通信相手のビーコン光の到達光量が一定時間内に閾値を指定回数以上超えたことを確認する。
【0089】
次に、ステップS319において、互いの飛行体(101、102)が、先ほどとはパルスの異なるビーコン光を送出する。
【0090】
次に、ステップS320において、互いの飛行体(101、102)が通信相手のビーコン光のパルスが変化したことを確認する。
【0091】
以上のようにして、第1飛行体101と第2飛行体102との間の光無線通信を開始する準備が完了する。
【0092】
(飛行体の認証及び光無線通信の実行)
次に、飛行体の認証から通信の完了までのシーケンスについて説明する。図13に、本開示の一実施形態に係る光無線通信システム1000において、飛行体(101、102)同士の間で実行される認証から光無線通信を実行するまでの手順について説明するためのシーケンス図を示す。
【0093】
まず、ステップS401において、第1飛行体101が、光/ミリ波無線通信でハッシュ化した任意の文字列を第2飛行体102に送信する。
【0094】
次に、ステップS402において、第2飛行体102が、ハッシュ化した文字列に第2飛行体102の属性情報を含めた状態で光/ミリ波無線通信で第1飛行体101に送信する。
【0095】
次に、ステップS403において、第1飛行体101が、第2飛行体102の公開鍵で暗号化した任意の文字列を光/ミリ波無線通信で第2飛行体102に送信する。
【0096】
次に、ステップS404において、第2飛行体102が、受信した文字列を第2飛行体102の秘密鍵で復号化する。
【0097】
次に、ステップS405において、第2飛行体102が、復号化した文字列を第1飛行体101の公開鍵で暗号化した文字列を光/ミリ波無線通信で第1飛行体101に送信する。
【0098】
以上のようにして、第1飛行体101による第2飛行体102の認証が完了する。上記のステップS401からS405までの工程を第1飛行体101と第2飛行体102とを入れ替えて実行することにより、第2飛行体102による第1飛行体101の認証を行うことができる。
【0099】
次に、ステップS406において、第1飛行体101が、第2飛行体102の認証が完了したことを光/ミリ波無線通信で第2飛行体102を経由して第2地上局202に通知する。
【0100】
次に、ステップS407において、第2地上局202が、第2飛行体102及び第1飛行体101を経由して光/ミリ波無線通信で第1地上局201に情報を送信する。
【0101】
同様に、第2飛行体102による第1飛行体101の認証が完了している場合は、ステップS408において、第1地上局201が、第1飛行体101及び第2飛行体102を経由して光/ミリ波無線通信で第2地上局202に情報を送信する。
【0102】
以上の説明においては、第1飛行体101と第2飛行体102との間で認証を行う例について説明したが、このような例には限られない。即ち、第1地上局201と第2地上局202との間で認証を行うようにしてもよい。あるいは、飛行体(101、102)間の認証と、地上局(201、202)間の認証の両者を行うようにしてもよい。
【0103】
以上のようにして、第1地上局201と第2地上局202との間で、第1飛行体101及び第2飛行体102を介して光無線通信を実行することができる。
【0104】
上述した例では、第1地上局201と第2地上局202との間で、第1飛行体101及び第2飛行体102を経由してデータを送受信する例について説明したがこのような例には限られない。即ち、第1飛行体101と第2飛行体102との間でデータを送受信するようにしてもよい。
【0105】
(通信相手の多段的確認方法)
上記の説明においては、第1飛行体101と第2飛行体102との間でビーコン光を送受信することにより光無線通信リンクの確立を行う方法について説明したが、指向性が異なる複数種類のビーコン光を送出することにより、多段的に通信相手の位置を確認することもできる。図14(a)及び(b)に、それぞれ、本開示の一実施形態に係る光無線通信システム1000において、指向性が低いビーコン光及び指向性が高いビーコン光を通信相手に照射する様子を示す。図15(a)及び(b)に、それぞれ、本開示の一実施形態に係る光無線通信システム1000において、指向性が低いビーコン光及び指向性が高いビーコン光の照射範囲及び飛行体の移動経路を示す。図16に、本開示の一実施形態に係る光無線通信システム1000において、通信相手の位置を多段的に確認する方法について説明するためのフローチャートを示す。
【0106】
ここでは、第1飛行体101が第2飛行体102に対してビーコン光を送出する場合を例にとって説明する。まず、ステップS501において、図14(a)及び図15(a)に示すように、第1飛行体101は、広い領域を照射する指向性が低いビーコン光B11を第2飛行体102に送出する。
【0107】
次に、ステップS502において、第1飛行体101は、第2飛行体102から、第1飛行体101が送出したビーコン光とは異なるビーコン光を受光したか否かを判定する。ここでは、図15(a)、(b)に示すように、3つのケースについて説明する。
【0108】
第1のケースは、第2飛行体102が、第1の位置P10に存在し、指向性が低いビーコン光B11と指向性が高いビーコン光B12の両者を受光できるケースである。
【0109】
第2のケースは、第2飛行体102が、第2の位置P20に存在し、指向性が低いビーコン光B11は受光できるものの、指向性が高いビーコン光B12は受光できないケースである。
【0110】
第3のケースは、第2飛行体102が、第3の位置P30に存在し、指向性が低いビーコン光B11と指向性が高いビーコン光B12の両者を受光できないケースである。
【0111】
例えば、第1及び第2のケースでは、位置P10及びP20が、指向性が低いビーコン光B11の照射領域の範囲内に含まれる。そのため、第1及び第2のケースでは、第2飛行体102は第1飛行体101に対して、受光したビーコン光とは異なるビーコン光を送出し、第1飛行体101はこれを受光することにより、第2飛行体102が、指向性が低いビーコン光B11の照射範囲に存在することを確認することができる。この場合は、ステップS504において、第1飛行体101は、指向性が高いビーコン光B12を第2飛行体102に送出する。
【0112】
これに対して、第3のケースにおいては、位置P30が、指向性が低いビーコン光B11の照射範囲に含まれていないため、第2飛行体102はビーコン光B11受光することができない。この場合は、ステップS503において、第2飛行体102は、ビーコン光B11を受光できるように別の場所に移動する。例えば、図15(a)に示すように、位置P30に配置された第2飛行体102が矢印M31のように位置P31に移動したものとする。この場合は、位置P31が、指向性が低いビーコン光B11の照射範囲に含まれるため、第2飛行体102はビーコン光B11を受光することができる。そして、第2飛行体102は、受光したビーコン光とは異なるビーコン光を第1飛行体101に送出し、ステップS502において、第1飛行体101は、第2飛行体102から、送出したビーコン光とは異なるビーコン光を受光する。次に、ステップS504において、第1飛行体101は、指向性が高いビーコン光を第2飛行体102に送出する。
【0113】
図14(b)及び図15(b)に示すように、指向性が高いビーコン光B12を第2飛行体102に送出した場合、第1のケースでは、位置P10がビーコン光B12の照射範囲に含まれるため、受光することができる。この場合、ステップS505において、第1飛行体101は第2飛行体102から、送出したビーコン光とは異なるビーコン光を受光する。
【0114】
これに対して、第2のケースでは、位置P20は指向性が高いビーコン光B12の照射領域の範囲に含まれないため、ビーコン光B12を受光できず、送出したビーコン光とは異なるビーコン光を送出しない。その結果、ステップS505においては、第1飛行体101は第2飛行体102から、送出したビーコン光とは異なるビーコン光を受光できず、ステップS506において、第2飛行体102はビーコン光B12が受光できるように他の位置に移動する。
【0115】
例えば、第2飛行体102が位置P20から矢印M21に向かって位置P21に移動したものとする。この場合、位置P21はビーコン光B12の照射範囲に含まれないため、依然としてビーコン光B12を受光することができない。その結果、第2飛行体102は、元の位置P20に戻り、矢印M21とは反対側の矢印M22の方向に向かって位置P22に移動する。この場合は、位置P22がビーコン光B12の照射範囲に含まれるため、ビーコン光B12を受光することができる。そこで、第2飛行体102は、受光したビーコン光とは異なるビーコン光を第1飛行体101に送出し、ステップS505において、第1飛行体101は、第2飛行体102から送出したビーコン光とは異なるビーコン光を受光する。
【0116】
次に第3のケースについて検討すると、位置P31はビーコン光B12の照射範囲に含まれないため、ビーコン光B12を受光することができない。そこで、第2のケースと同様に、ステップS506において、移動を行い、結果的に矢印M32の方向に向かって位置P32に移動したものとする。この場合は、位置P32がビーコン光B12の照射範囲に含まれるため、ビーコン光B12を受光することができる。そこで、第2飛行体102は、受光したビーコン光とは異なるビーコン光を第1飛行体101に送出し、ステップS505において、第1飛行体101は、第2飛行体102から送出したビーコン光とは異なるビーコン光を受光する。
【0117】
上記の説明では、第1飛行体101から指向性が異なる2種類のビーコン光(B11、B12)を送出することにより、第1飛行体101が第2飛行体102の位置を確認する手順について説明した。次に、同様にして、第2飛行体102が、指向性が低いビーコン光B21と指向性が高いビーコン光B22を用いて、第1飛行体101の位置を確認することができる。
【0118】
以上のようにして、第2飛行体102が、指向性が高いビーコン光を受光した場合、ステップS507において、第1飛行体101と第2飛行体102との間で光無線通信リンクが確立する。次に、ステップS508において、第1飛行体101と第2飛行体102との間で光無線通信を実行する。
【0119】
このように、照射範囲が異なる(指向性が異なる)2種類のビーコン光を用いることにより、広い範囲から開始して多段的に目的とする通信相手の位置を確認することができる。即ち、最初に指向性が低いビーコン光を用いて通信相手の位置を確認することができるため、次の指向性が高いビーコン光を用いる段階では、高度の微調整(微小な高度の上げ下げ)を行うことにより、効率的に通信相手の位置を確認することができる。上述した例では、ビーコン光の指向性を2通りに変えた例を示したが、このような例には限定されず、指向性を3通り以上に変えたビーコン光を用いて多段的に通信相手の位置を確認するようにしてもよい。
【0120】
上記の例では、ビーコン光の指向性を変えて通信相手に送出する例について説明したが、このような例には限られず、ビーコン光とマイクロ波を組み合わせて通信相手の位置を確認するようにしてもよい。図17に、本開示の一実施形態に係る光無線通信システム1000において、通信相手の位置を多段的に確認する方法の他の例について説明するための図を示す。
【0121】
図17に示すように、第1飛行体101及び第2飛行体102は、ビーコン光とマイクロ波(B13、B23)を相手に常に送出する。雲50等の外乱の影響により、ビーコン光は通信相手まで到達することができない。しかしながら、雲50を透過するようなマイクロ波、例えば、合成開口レーザは通信相手まで届くため、通信相手を捕捉することができる。このようにマイクロ波で通信相手を捕捉できるため、高度調整の効率化を行うことができる。
【0122】
上記の例ではマイクロ波を用いる場合を例にとって説明したが、このような例には限られず、波長の異なる複数のビーコン光を用いるようにしてもよい。
【0123】
(変形例1)
上記の説明においては、地上局と飛行体とを無線接続する例について説明したが、このような例には限られず、地上局と飛行体とを有線接続するようにしてもよい。図18に、本開示の一実施形態の変形例1に係る光無線通信システム1001において、地上局と飛行体とを有線接続する場合の概略構成を示す。
【0124】
図18に示すように、第1地上局201と第1飛行体101とをケーブル70を用いて有線接続するようにしてもよい。有線接続を行うことにより電波を用いて無線接続する場合に比べて、雑音による影響を低減することができる。また、有線接続の場合は電源ケーブルを含めることができ、第1地上局201から第1飛行体101への充電を容易に行うことができる。
【0125】
また、図18に示した例では、第1地上局201と第1飛行体101とをケーブル70を用いて有線接続する例を示したが、このような例には限られず、第2地上局202と第2飛行体102とをケーブルを用いて有線接続するようにしてもよい。
【0126】
(変形例2)
上記の変形例1においては、地上局と飛行体とを有線接続する例について説明したが、このような例には限られず、海上局と飛行体とを有線接続するようにしてもよい。図19に、本開示の一実施形態の変形例2に係る光無線通信システム1002において、海上局と飛行体とを有線接続する場合の概略構成を示す。
【0127】
図19に示すように、第1海上局301と第1飛行体101とをケーブル70を用いて有線接続するようにしてもよい。有線接続を行うことにより電波を用いて無線接続する場合に比べて、雑音による影響を低減することができる。また、有線接続の場合は電源ケーブルを含めることができ、第1海上局301から第1飛行体101への充電を容易に行うことができる。
【0128】
また、図19に示した例では、第1海上局301と第1飛行体101とをケーブル70を用いて有線接続する例を示したが、このような例には限られず、第2海上局302と第2飛行体102とをケーブルを用いて有線接続するようにしてもよい。
【0129】
(変形例3)
上記の説明においては、地上局同士を、飛行体を介して光無線通信を行う例について示したが、このような例には限られず、地上局とHAPS(High Altitude Platform Station)等の無人航空機との間で光無線通信を実行するようにしてもよい。図20に、本開示の一実施形態の変形例3に係る光無線通信システム1003において、地上局と無人航空機との間で光無線通信を行う場合の概略構成を示す。
【0130】
地表面30から高度約20[km]の外乱が少ない成層圏を飛ぶ無人航空機400に基地局であるHAPSを設置してもよい。このような構成とすることにより、災害時でも途絶えることが無い、安定的な通信サービスを提供することができる。また、図20に示すように、第1地上局201と第1飛行体101とをケーブル70を用いて有線接続するようにしてもよい。
【0131】
(複数の地上局の協調利用)
以上の説明においては、複数の地上局として、第1地上局201及び第2地上局202を配置し、複数の飛行体として、第1飛行体101及び第2飛行体102を配置する例を示したが、このような例には限定されない。即ち、地上局の数は3つ以上であってもよく、飛行体の数は3機以上であってもよい。
【0132】
例えば、第1地上局及び第2地上局と、それぞれに接続された2機の飛行体が設けられた場合、これらの飛行体が最高高度に到達しても雨雲が途切れず光無線通信を行うことができないような状況にあるものとする。このような場合、雨雲が積乱雲等のように局所的な外乱を生じ、鉛直方向には広い範囲で外乱を生じているものの、水平方向には狭い範囲でのみ外乱を生じさせている場合が考えられる。このような場合、第2地上局の近隣に第3地上局が存在する場合、第1地上局は、第3地上局と接続された飛行体との間で光無線通信を行うように通信経路を切り替えるようにしてもよい。このように、地上局と飛行体の複数のセットを協調して利用することにより、外乱による影響を効率的に回避することができる。
【符号の説明】
【0133】
1 飛行制御部
2 検出部
3 位置特定部
4 出力部
5 受光部
6 光無線通信部
7 通信部
8 判定部
9 光生成部
10 認証部
11 バス
41 大気境界層
50 雲
101 第1飛行体
102 第2飛行体
201 第1地上局
202 第2地上局
301 第1海上局
302 第2海上局
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20