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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132718
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】紙葉類検査装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G07D 7/00 20160101AFI20230914BHJP
   G07D 7/04 20160101ALI20230914BHJP
   G07D 7/12 20160101ALI20230914BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
G07D7/00 J
G07D7/04
G07D7/12
G01R33/02 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038207
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 修
【テーマコード(参考)】
2G017
3E041
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AD00
2G017BA15
2G017CB01
2G017CB15
2G017CB23
2G017CB24
3E041AA03
3E041AA04
3E041BA02
3E041BA04
3E041BA11
3E041BB02
3E041BB03
3E041BC03
3E041CA09
3E041CB08
3E041CB09
(57)【要約】
【課題】 紙葉類が正常かどうかを判断するための設定範囲を得ることのできる紙葉類検査装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】 検査装置4は、第1紙葉類の物理量を示す第1検出値を検出するセンサ(4a)と、前記第1検出値が設定範囲に収まっている場合に前記第1紙葉類を正常と判断し、前記第1検出値が前記設定範囲に収まっていない場合に前記第1紙葉類を異常と判断する制御部30と、を備える。制御部30は、センサ(4a)で検出された複数の第2検出値に基づいて前記設定範囲を設定する。前記設定範囲は、第1設定値から第2設定値までの範囲である。各々の前記第2検出値は、複数枚の第2紙葉類のうち対応する1枚の第2紙葉類の物理量を示している。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1紙葉類の物理量を示す第1検出値を検出するセンサと、
前記第1検出値が設定範囲に収まっている場合に前記第1紙葉類を正常と判断し、前記第1検出値が前記設定範囲に収まっていない場合に前記第1紙葉類を異常と判断する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記センサで検出された複数の第2検出値に基づいて前記設定範囲を設定し、
前記設定範囲は、前記複数の第2検出値の最小値以下である第1設定値から前記複数の第2検出値の最大値以上である第2設定値までの範囲であり、
各々の前記第2検出値は、複数枚の第2紙葉類のうち対応する1枚の第2紙葉類の物理量を示している、
紙葉類検査装置。
【請求項2】
第1初期値から前記第1初期値より大きい第2初期値までの初期範囲を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、
前記初期範囲及び前記複数の第2検出値に基づいて前記設定範囲を設定し、
前記最小値から前記最大値までの検出範囲が前記初期範囲に収まっていると判断した場合、前記設定範囲を前記初期範囲に設定する、
請求項1に記載の紙葉類検査装置。
【請求項3】
第1初期値から前記第1初期値より大きい第2初期値までの初期範囲を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、
前記初期範囲及び前記複数の第2検出値に基づいて前記設定範囲を設定し、
前記最小値から前記最大値までの検出範囲が前記第1初期値及び前記第2初期値の少なくとも一方を跨いでいると判断した場合、前記初期範囲をずらすことで前記設定範囲を設定し、又は、前記初期範囲を広げることで前記設定範囲を設定する、
請求項1に記載の紙葉類検査装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記検出範囲が前記第2初期値を跨ぎ、かつ、前記初期範囲の大きさが前記検出範囲の大きさ以上であると判断した場合、又は、
前記検出範囲が前記第1初期値を跨ぎ、かつ、前記初期範囲の大きさが前記検出範囲の大きさ以上であると判断した場合、
前記初期範囲をずらすことで前記設定範囲を設定する、
請求項3に記載の紙葉類検査装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記初期範囲をずらすことで前記設定範囲を設定する際、前記第1設定値と前記第2設定値との中間の中間値を前記複数の第2検出値の平均値に一致させる、
請求項4に記載の紙葉類検査装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記検出範囲が前記第1初期値及び前記第2初期値の両方を跨いでいると判断した場合、
前記複数の第2検出値の分散を算出し、前記分散に基づいて前記初期範囲を広げることで前記設定範囲を設定する、
請求項3に記載の紙葉類検査装置。
【請求項7】
第1初期値から前記第1初期値より大きい第2初期値までの初期範囲と、分散閾値と、を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、
前記初期範囲及び前記複数の第2検出値に基づいて前記設定範囲を設定し、
前記最小値から前記最大値までの検出範囲が前記初期範囲に収まっていると判断した場合、前記複数の第2検出値の分散を算出し、
前記分散が前記分散閾値以上であると判断した場合、前記設定範囲を前記初期範囲に設定し、
前記分散が前記分散閾値未満であると判断した場合、前記分散に基づいて前記初期範囲を狭めることで前記設定範囲を設定する、
請求項1に記載の紙葉類検査装置。
【請求項8】
センサを備える紙葉類検査装置のコンピュータに、
設定範囲を設定する設定手順と、
前記センサにより第1紙葉類の物理量を示す第1検出値を検出する検出手順と、
前記第1検出値が設定範囲に収まっている場合に前記第1紙葉類を正常と判断し、前記第1検出値が前記設定範囲に収まっていない場合に前記第1紙葉類を異常と判断する判断手順と、
を実行させるためのプログラムであって、
前記設定手順は、前記センサで検出された複数の第2検出値に基づいて前記設定範囲を設定する手順であり、
前記設定範囲は、前記複数の第2検出値の最小値以下である第1設定値から前記複数の第2検出値の最大値以上である第2設定値までの範囲であり、
各々の前記第2検出値は、複数枚の第2紙葉類のうち対応する1枚の第2紙葉類の物理量を示している、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、紙葉類検査装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
紙葉類処理装置として、市場に流通した複数枚の紙幣を集めて処理する紙幣処理機等が知られている。紙葉類処理装置は、紙葉類の物理量を検出するセンサを有する紙葉類検査装置等を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017―107291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態は、紙葉類が正常かどうかを判断するための設定範囲を得ることのできる紙葉類検査装置及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る紙葉類検査装置は、
第1紙葉類の物理量を示す第1検出値を検出するセンサと、前記第1検出値が設定範囲に収まっている場合に前記第1紙葉類を正常と判断し、前記第1検出値が前記設定範囲に収まっていない場合に前記第1紙葉類を異常と判断する制御部と、を備え、前記制御部は、前記センサで検出された複数の第2検出値に基づいて前記設定範囲を設定し、前記設定範囲は、前記複数の第2検出値の最小値以下である第1設定値から前記複数の第2検出値の最大値以上である第2設定値までの範囲であり、各々の前記第2検出値は、複数枚の第2紙葉類のうち対応する1枚の第2紙葉類の物理量を示している。
【0006】
また、一実施形態に係るプログラムは、
センサを備える紙葉類検査装置のコンピュータに、設定範囲を設定する設定手順と、前記センサにより第1紙葉類の物理量を示す第1検出値を検出する検出手順と、前記第1検出値が設定範囲に収まっている場合に前記第1紙葉類を正常と判断し、前記第1検出値が前記設定範囲に収まっていない場合に前記第1紙葉類を異常と判断する判断手順と、を実行させる。前記設定手順は、前記センサで検出された複数の第2検出値に基づいて前記設定範囲を設定する手順である。前記設定範囲は、前記複数の第2検出値の最小値以下である第1設定値から前記複数の第2検出値の最大値以上である第2設定値までの範囲である。各々の前記第2検出値は、複数枚の第2紙葉類のうち対応する1枚の第2紙葉類の物理量を示している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る紙葉類処理装置の内部構造の一例を示す正面図である。
図2図2は、上記紙葉類処理装置の内部にて搬送される紙葉類の一例を示す平面図である。
図3図3は、上記紙葉類処理装置を機能ブロックを用いて示すブロック図である。
図4図4は、第2検出値に対する第2検出値の検出数の変化を示すグラフと、検出範囲と、初期範囲と、を示す図であり、上記検出範囲が上記初期範囲に収まっている場合を示す図である。
図5A図5Aは、図4の上記グラフ及び上記検出範囲と、初期範囲と、を示す図であり、上記検出範囲が第2初期値を跨いでいる場合を示す図である。
図5B図5Bは、図5Aの上記グラフ及び上記検出範囲と、設定範囲と、を示す図であり、図5Aの上記初期範囲をずらすことで上記設定範囲が設定された状態を示す図である。
図5C図5Cは、図4の上記グラフ及び上記検出範囲と、初期範囲と、を示す図であり、上記検出範囲が第1初期値を跨いでいる場合を示す図である。
図6A図6Aは、第2検出値に対する第2検出値の検出数の変化を示すグラフと、検出範囲と、初期範囲と、を示す図であり、上記検出範囲が第1初期値及び第2初期値の両方を跨いでいる場合を示す図である。
図6B図6Bは、図6Aの上記グラフ及び上記検出範囲と、設定範囲と、を示す図であり、図6Aの上記初期範囲を広げることで上記設定範囲が設定された状態を示す図である。
図6C図6Cは、図6Aの上記グラフ及び上記検出範囲と、初期範囲と、を示す図であり、複数の第2検出値の分散が分散閾値未満である場合を示す図である。
図7図7は、上記紙葉類処理装置の紙葉類検査装置の設定モードを説明するためのフローチャートである。
図8図8は、図7に続く、上記設定モードを説明するためのフローチャートである。
図9図9は、図8に続く、上記設定モードを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
始めに、本発明の実施形態の基本構想について説明する。
紙葉類処理装置は、紙葉類の物理量を検出するセンサ、制御部等を有する検査装置(紙葉類検査装置)を備えている。検査装置では、紙葉類の印刷品質を検査するために、検査対象領域や閾値等の設定範囲(検査パラメータ)が設定されている。制御部は、紙葉類の物理量を示す検出値が設定範囲内に収まっている場合を正常と判断し、検出値が設定範囲内に収まっていない場合を異常と判断する。
【0009】
ところで、各々の検査装置が同じ紙葉類から収集した検出値であっても、検査装置の個体差により、複数の検査装置の間で紙葉類の物理量の検出にばらつきが生じることがある。そこで、検査装置毎に、設定範囲を適切な範囲に設定する必要がある。例えば、設定範囲を適切な範囲に設定するために、検査者が手動で設定範囲を調整することが考えられる。しかしながら、検査者が手動で設定範囲を調整する場合、検査装置の台数が増える程、設定範囲の調整に長時間の作業を要することとなり、検査者の労力が増すこととなる。また、設定範囲の調整は、熟練を要する作業になる。
【0010】
かかる問題を解決すべく、本発明の実施形態においては、紙葉類が正常かどうかを判断するための設定範囲を得ることのできる紙葉類検査装置及びプログラムが得られるものである。次に、上記問題を解決するための手段及び手法について説明する。
【0011】
次に、一実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、一実施形態に係る紙葉類処理装置1の内部構造の一例を示す正面図である。
図1に示すように、紙葉類処理装置1は、取出し装置10と、搬送装置3と、紙葉類検査装置としての検査装置4と、区分処理装置7と、を備えている。
【0012】
取出し装置10は、供給された複数枚の紙葉類Pを1枚ずつ取出し可能な紙葉類取出し装置である。取出し装置10は、取出しロータ18を備えている。取出しロータ18は、回転可能に設けられ、複数の紙葉類Pから1枚ずつ取出し可能である。
搬送装置3は、取出し装置10によって取出された紙葉類Pを搬送するように構成されている。
【0013】
検査装置4は、搬送装置3の搬送路を搬送される紙葉類Pの物理量を検出する紙葉類検査装置である。検査装置4は、紙葉類Pの券種判別、真偽判別、正損判別、印刷状態の検査等を行う。一例では、検査装置4は、第1センサ4a、第2センサ4b、第3センサ4c、第4センサ4d、第5センサ4e、及び第6センサ4fを備えている。
【0014】
第1センサ4aは、光源4a1と、光検出器4a2と、を有している。光源4a1及び光検出器4a2は、搬送装置3の搬送路を挟んで対向して配置されている。第1センサ4aは、光源4a1から放出された光が紙葉類Pに遮られ、光検出器4a2で検出される光量が光量閾値未満となる第1期間と、光源4a1から放出された光が紙葉類Pで遮られることなく、光検出器4a2で検出される光量が光量閾値以上となる第2期間を検出可能である。言い換えると、第1センサ4aは、紙葉類Pが搬送装置3の搬送路の第1検出位置3aを通過する第1期間と、紙葉類が第1検出位置3aを通過していない第2期間と、を検出可能である。
【0015】
図2は、紙葉類処理装置1の内部にて搬送される紙葉類Pの一例を示す平面図である。紙葉類Pとしては、後述する第1紙葉類P1及び第2紙葉類P2等を挙げることができる。
図1及び図2に示すように、紙葉類Pは、平面視において矩形形状を有している。本実施形態において、紙葉類Pの長軸は、搬送装置3の搬送方向Xに平行である。紙葉類Pは搬送方向Xに直交する一対の短辺SI1,SI2と、搬送方向Xに平行である長辺SI3,SI4と、を有している。上記第1期間とは、紙葉類Pの短辺SI1が第1検出位置3aに到達するタイミングから紙葉類Pの短辺SI2が第1検出位置3aに到達するタイミングまで期間である。そのため、紙葉類Pが搬送される速度を考慮すると、紙葉類Pの搬送方向Xにおける紙葉類Pの長さLの検出(算出)が可能である。
【0016】
なお、光源4a1及び光検出器4a2の配置は、種々変形可能である。光源4a1及び光検出器4a2は、搬送装置3の搬送路を挟んで対向配置されていなくともよい。その場合、光源4a1は搬送装置3の搬送路の第1検出位置3aを通過する紙葉類Pに向けて光を放出し、光検出器4a2は紙葉類Pで反射される反射光を検出することができる。
また、第1センサ4aは紙葉類Pの長さLを検出することができればよく、他の光学式のセンサ等、一般に知られている各種のセンサを第1センサ4aに適用可能である。
【0017】
図1に示すように、第2センサ4bは、搬送装置3の搬送路の第2検出位置3bを通過する紙葉類Pの厚みを検出するように構成されている。なお、第2センサ4bは、紙葉類Pの厚みを検出することができればよく、一般に知られている各種のセンサを第2センサ4bに適用可能である。
【0018】
第3センサ4c、第4センサ4d、及び第5センサ4eは、紙葉類Pの画像情報を検出する。画像情報とは、例えば、輝度である。
第3センサ4cは、搬送装置3の搬送路の第3検出位置3cを通過する紙葉類Pの表面の画像情報を検出するように構成されている。第4センサ4dは、搬送装置3の搬送路の第4検出位置3dを通過する紙葉類Pの裏面の画像情報を検出するように構成されている。第5センサ4eは、搬送装置3の搬送路の第5検出位置3eを通過する紙葉類Pの透過画像情報を検出するように構成されている。
第6センサ4fは、搬送装置3の搬送路の第6検出位置3fを通過する紙葉類Pの磁気的な特徴を検出するように構成されている。磁気的な特徴とは、例えば、紙葉類Pに含まれる磁性体の量である。なお、第6センサ4fは、紙葉類Pの磁気的な特徴を検出することができればよく、一般に知られている各種のセンサを第6センサ4fに適用可能である。
【0019】
なお、検査装置4は、第1センサ4a、第2センサ4b、第3センサ4c、第4センサ4d、第5センサ4e、及び第6センサ4fに加え、紙葉類Pの物理量を検出可能な種々のセンサを備えていてもよい。
【0020】
区分処理装置7は、検査装置4にて検査された紙葉類Pを区分して集積する紙葉類区分処理装置である。区分処理装置7は、検査装置4による検査結果に基づいて紙葉類Pを区分処理する。区分処理装置7は、複数の集積結束装置7a,7b,7c,7dと、排除券集積装置7fと、を備えている。集積結束装置7a,7b,7cは、それぞれ、検査装置4で正券と判定された紙葉類Pを集積及び結束するための装置である。集積結束装置7dは、検査装置4で損券と判定された紙葉類Pを集積及び結束するための装置である。
排除券集積装置7fは、搬送装置3の搬送路の終端に設けられている。検査装置4で排除券と判定された紙葉類Pは、排除券集積装置7fに集積される。
【0021】
図3は、紙葉類処理装置1を機能ブロックを用いて示すブロック図である。図3に示すように、紙葉類処理装置1は、制御部30、記憶部31、操作部32、及び表示部33をさらに備えている。制御部30は、第1センサ4a、第2センサ4b、第3センサ4c、第4センサ4d、第5センサ4e、第6センサ4f、取出し装置10、搬送装置3、記憶部31、操作部32、及び表示部33にそれぞれ接続されている。
【0022】
検査装置4は、第1センサ4a、第2センサ4b、第3センサ4c、第4センサ4d、第5センサ4e、第6センサ4f、制御部30、及び記憶部31を備えている。なお、制御部30は、検査装置4、取出し装置10等をむ複数の装置で共用されている。記憶部31は、複数の装置で共用され得る。
【0023】
制御部30は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random-Access Memory)等を備えるコンピュータとして構成されている。制御部30は、ROMに格納されたプログラムを実行することにより、第1センサ4a、第2センサ4b、第3センサ4c、第4センサ4d、第5センサ4e、第6センサ4f、取出し装置10、搬送装置3、表示部33のそれぞれの動作等、紙葉類処理装置1の全体の動作を制御する。なお、検査装置4が第1乃至第6センサ4a乃至4f以外のセンサを備えている場合、制御部30は、検査装置4が備える種々のセンサの動作を制御する。
【0024】
例えば、制御部30は、第1センサ4aから複数枚の紙葉類Pの長さLを示す複数の検出値を取得し、複数の検出値を基に検出値が正常かどうかを判断するための設定範囲を設定する。また、制御部30は、第1センサ4aから紙葉類Pの複数枚の紙葉類Pの長さLを示す検出値を取得し、検出値が設定範囲に収まっている場合に紙葉類Pを正常と判断し、検出値が設定範囲に収まっていない場合に紙葉類Pを異常と判断する。
【0025】
ここで、設定範囲を設定するために用いる複数枚の紙葉類Pを複数枚の第2紙葉類P2、複数の第2紙葉類P2の複数の物理量を示す複数の検出値を複数の第2検出値、設定範囲を基に正常かどうか判断される紙葉類Pを第1紙葉類P1、第1紙葉類P1の物理量を示す検出値を第1検出値と定義する。また、各々の第2検出値は、複数枚の第2紙葉類P2のうち対応する1枚の第2紙葉類P2の物理量を示している。複数枚の第2紙葉類P2は、同一種類の紙葉類である。第1紙葉類P1の種類が第2紙葉類P2の種類と異なる場合、検査装置4は、第1紙葉類P1が異常であると判断することができる。また、第1紙葉類P1の種類が第2紙葉類P2の種類と同一であっても、検査装置4は、第1紙葉類P1が正常かどうか判断できるものである。
【0026】
制御部30は、操作部32を介した操作者の操作に基づいて、取出し装置10、搬送装置3等、紙葉類処理装置1の各種の装置の駆動を制御することができる。また、制御部30は、操作者による操作情報、制御部30で取得した情報、制御部30で判断した情報等を表示部33に表示可能である。
【0027】
記憶部31は、第1センサ4a、第2センサ4b、第3センサ4c、第4センサ4d、第5センサ4e、及び第6センサ4fで検出された紙葉類Pの物理量を示す検出値を記憶する。また、記憶部31は、第1検出値及び設定範囲に基づいて判断した結果も記憶する。さらに、記憶部31は、設定範囲を設定するために用いる初期範囲及び分散閾値を記憶する。初期範囲は、例えば、別の紙葉類処理装置の検査装置で複数の第2紙葉類の複数の第2検出値を基に算出された範囲である。分散閾値は、例えば、別の紙葉類処理装置の検査装置で複数の第2紙葉類の複数の第2検出値を基に算出された閾値である。
記憶部31は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の一般に知られている記憶媒体で形成されている。なお、検査装置4は、記憶部31無しに構成されることも可能である。
紙葉類処理装置1は上記のように構成されている。
【0028】
次に、制御部30によって行われる、複数枚の第2紙葉類P2の複数の第2検出値及び初期範囲を基に設定範囲を設定する方法について説明する。以下、紙葉類Pの物理量が、第1センサ4aで検出された紙葉類Pの長さLである場合を例に、設定範囲を設定する方法を説明する。但し、本明細書に記載する設定範囲を設定する手段及び方法は、紙葉類Pの長さLに関する設定範囲を求めるための手段及び方法に限定されるものではない。本明細書に記載する設定範囲を設定する手段及び方法は、紙葉類Pの厚み、輝度、磁性体の量等の長さL以外の各種の物理量に関する設定範囲を求めるための手段及び方法に適用可能である。
【0029】
図4は、第2検出値DV1に対する第2検出値DV1の検出数の変化を示すグラフと、検出範囲DR1と、初期範囲IR1と、を示す図であり、検出範囲DR1が初期範囲IR1に収まっている場合を示す図である。また、図4では、複数の第2検出値DV1の平均値AVを基準値(0)とし、基準値より大きい第2検出値DV1(基準値より右側の第2検出値DV1)を正の値で示し、基準値より小さい第2検出値DV1(基準値より左側の第2検出値DV1)を負の値で示している。
【0030】
図4に示すように、記憶部31は、初期範囲IR1を記憶している。初期範囲IR1は、第1初期値IV1から第1初期値IV1よりも大きい第2初期値IV2までの範囲である。制御部30は、第1センサ4aで検出した複数の第2検出値(検出範囲DR1)を記憶部31に記録することができる。検出範囲DR1は、複数の第2検出値DV1の最小値MINから最大値MAXまでの範囲である。
【0031】
図4の例において、検出範囲DR1は、初期範囲IR1に収まっている。言い換えると、最小値MINは第1初期値IV1以上であり、最大値MAXは第2初期値IV2以下である。
【0032】
例えば、複数の第2検出値DV1(複数枚の第2紙葉類P2の複数の長さL)の平均値AVが160.0mm、最大値MAXが161.3mm、最小値MINが158.7mmであった場合、検出範囲DR1は158.7mmから161.3mmまでの範囲となる。初期範囲IR1において、第1初期値IV1は158.7mm以下であり、第2初期値IV2は161.3mm以上である。検出範囲DR1と初期範囲IR1との関係が上述した関係である場合に、制御部30は、検出範囲DR1が初期範囲IR1に収まっていると判断し、初期範囲IR1を設定範囲として設定することができる。
なお、検出範囲DR1の大きさは2.6mmである。初期範囲IR1の大きさは2.6mm以上である。
【0033】
次に、図5A図5B、及び図5Cを参照して、制御部30が初期範囲IR2及び初期範囲IR3をそれぞれずらすことで設定範囲SR1を設定する場合について説明する。図5Aは、図4の上記グラフ及び検出範囲DR1と、初期範囲IR2と、を示す図であり、検出範囲DR1が第2初期値IV2を跨いでいる場合を示す図である。図5Bは、図5Aの上記グラフ及び検出範囲DR1と、設定範囲SR1と、を示す図であり、図5Aの初期範囲IR2をずらすことで設定範囲SR1が設定された状態を示す図である。
【0034】
図5A及び図5Bでは、図4と同様、複数の第2検出値DV1の平均値AVを基準値(0)とし、基準値より大きい第2検出値DV1を正の値で示し、基準値より小さい第2検出値DV1を負の値で示している。図4及び図5Aから分かるように、初期範囲IR2は初期範囲IR1と異なっている。
【0035】
図5Aに示すように、検出範囲DR1は、初期範囲IR2の第1初期値IV1を跨いでいないが、初期範囲IR2の第2初期値IV2を跨いでいる。言い換えると、最小値MINは第1初期値IV1以上であり、最大値MAXは第2初期値IV2を超えている。なお、初期範囲IR2の大きさは検出範囲DR1の大きさ以上である。
【0036】
例えば、複数の第2検出値DV1に関し、最小値MINは158.7mmであり、最大値MAXは161.3mmであり、平均値AVは160.0mmであり、検出範囲DR1の大きさは2.6mmであった。一方、初期範囲IR2に関し、第1初期値IV1は157.5mmであり、第2初期値IV2は160.5mmであり、初期範囲IR2の大きさは、検出範囲DR1の大きさ以上である3.0mmであった。
【0037】
図5A及び図5Bに示すように、検出範囲DR1と初期範囲IR2との関係が上述した関係にある場合に、制御部30は、検出範囲DR1が第2初期値IV2を跨ぎ、かつ、初期範囲IR2の大きさが検出範囲DR1の大きさ以上であると判断し、初期範囲IR2をずらすことで設定範囲SR1を設定する。
【0038】
設定範囲SR1は、初期範囲IR2を全体的に正側に1.0mmずらして設定された範囲である。設定範囲SR1は、最小値MIN以下である第1設定値SV1から最大値MAX以上である第2設定値SV2までの範囲である。例えば、第1設定値SV1は、初期範囲IR2の第1初期値IV1から+1.0mmずれ、第2設定値SV2は、初期範囲IR2の第2初期値IV2から+1.0mmずれている。設定範囲SR1の大きさは、初期範囲IR2の大きさと同一であり、3.0mmである。
【0039】
本実施形態において、制御部30は、初期範囲IR2をずらすことで設定範囲SR1を設定する場合、第1設定値SV1と第2設定値SV2との中間の中間値M1を複数の第2検出値DV1の平均値AVに一致させている。但し、第1設定値SV1が最小値MIN以下であり、かつ、第2設定値SV2が最大値MAX以上であれば、制御部30は、中間値M1を平均値AVに一致させなくともよい。
【0040】
図5Cは、図4の上記グラフ及び検出範囲DR1と、初期範囲IR3と、を示す図であり、検出範囲DR1が第1初期値IV1を跨いでいる場合を示す図である。図5Cでは、図4と同様、複数の第2検出値DV1の平均値AVを基準値(0)とし、基準値より大きい第2検出値DV1を正の値で示し、基準値より小さい第2検出値DV1を負の値で示している。図4図5A、及び図5Cから分かるように、初期範囲IR3は初期範囲IR1,IR2とそれぞれ異なっている。
【0041】
図5Cに示すように、検出範囲DR1は、初期範囲IR3の第2初期値IV2を跨いでいないが、初期範囲IR3の第1初期値IV1を跨いでいる。言い換えると、最小値MINは第1初期値IV1未満であり、最大値MAXは第2初期値IV2以下である。なお、初期範囲IR3の大きさは検出範囲DR1の大きさ以上である。
【0042】
図5Cの複数の第2検出値DV1は、図5Aの複数の第2検出値DV1と同一である。一方、初期範囲IR3に関し、第1初期値IV1は159.5mmであり、第2初期値IV2は162.5mmであり、初期範囲IR3の大きさは、検出範囲DR1の大きさ以上である3.0mmであった。
【0043】
図5B及び図5Cに示すように、検出範囲DR1と初期範囲IR3との関係が上述した関係にある場合に、制御部30は、検出範囲DR1が第1初期値IV1を跨ぎ、かつ、初期範囲IR3の大きさが検出範囲DR1の大きさ以上であると判断し、初期範囲IR3をずらすことで設定範囲SR1を設定する。
【0044】
設定範囲SR1は、初期範囲IR3を全体的に負側に1.0mmずらして設定された範囲である。例えば、第1設定値SV1は、初期範囲IR3の第1初期値IV1から-1.0mmずれ、第2設定値SV2は、初期範囲IR3の第2初期値IV2から-1.0mmずれている。設定範囲SR1の大きさは、初期範囲IR3の大きさと同一であり、3.0mmである。
【0045】
本実施形態において、制御部30は、初期範囲IR3をずらすことで設定範囲SR1を設定する場合、設定範囲SR1の中間値M1を平均値AVに一致させている。但し、第1設定値SV1が最小値MIN以下であり、かつ、第2設定値SV2が最大値MAX以上であれば、制御部30は、中間値M1を平均値AVに一致させなくともよい。
【0046】
次に、図6A図6B、及び図6Cを参照して、設定範囲SR2を設定する場合について説明する。なお、図5A及び図5Cでは、初期範囲IR2,IR3のそれぞれの大きさが検出範囲DR1の大きさ以上である場合について説明した。図6Aでは、初期範囲IR4の大きさが検出範囲DR2の大きさ未満である場合について説明し、図6Cでは、初期範囲IR5の大きさが検出範囲DR2の大きさ以上であるが、初期範囲IR5が大き過ぎる場合について説明する。ここでは、初期範囲IR4を広げることで設定範囲SR2を設定したり、初期範囲IR5を狭めることで設定範囲を設定したり、する場合について説明する。
【0047】
図6Aは、第2検出値DV2に対する第2検出値DV2の検出数の変化を示すグラフと、検出範囲DR2と、初期範囲IR4と、を示す図であり、検出範囲DR2が第1初期値IV1及び第2初期値IV2の両方を跨いでいる場合を示す図である。図6Bは、図6Aの上記グラフ及び検出範囲DR2と、設定範囲SR2と、を示す図であり、図6Aの初期範囲IR4を広げることで設定範囲SR2が設定された状態を示す図である。
【0048】
図6A及び図6Bでは、初期範囲IR4の第1初期値IV1と第2初期値IV2との中間の中間値M3を基準値(0)とし、基準値より大きい第2検出値DV2を正の値で示し、基準値より小さい第2検出値DV2を負の値で示している。
【0049】
図6Aに示すように、検出範囲DR2は、初期範囲IR4の第1初期値IV1及び第2初期値IV2の両方を跨いでいる。言い換えると、最小値MINは第1初期値IV1未満であり、最大値MAXは第2初期値IV2を超えている。なお、初期範囲IR4の大きさは検出範囲DR2の大きさ未満である。
【0050】
例えば、複数の第2検出値DV2に関し、最小値MINは158.9mmであり、最大値MAXは161.0mmであり、中間値M3における第2検出値DV2は160.0mmであり、検出範囲DR2の大きさは2.1mmであった。一方、初期範囲IR4に関し、第1初期値IV1は159.5mmであり、第2初期値IV2は160.5mmであり、初期範囲IR4の大きさは、検出範囲DR1の大きさ未満である1.0mmであった。
【0051】
図6A及び図6Bに示すように、検出範囲DR2と初期範囲IR4との関係が上述した関係にある場合に、制御部30は、検出範囲DR2が第1初期値IV1及び第2初期値IV2の両方を跨いでいると判断し、複数の第2検出値DV2の分散を算出し、上記分散に基づいて初期範囲IR4を広げることで設定範囲SR2を設定する。
【0052】
例えば、設定範囲SR2は、初期範囲IR4を2.0mm広げて設定された範囲である。設定範囲SR2は、最小値MIN以下である第1設定値SV1から最大値MAX以上である第2設定値SV2までの範囲である。第1設定値SV1は、初期範囲IR4の第1初期値IV1から-1.0mmずれた158.5mmであり、第2設定値SV2は、初期範囲IR4の第2初期値IV2から+1.0mmずれた161.5mmである。設定範囲SR2の大きさは、初期範囲IR4の大きさを超え、3.0mmである。
【0053】
設定範囲SR2の大きさは、複数の第2検出値DV2の分散に任意の値を乗じることで決定される。図6Aにおいて、例えば、分散は0.5である。上記任意の値を6mmとした場合、設定範囲SR2の大きさは3mmとなる。
【0054】
また、制御部30は、設定範囲SR2の中間値M2を初期範囲IR4の中間値M3に一致させている。その場合、制御部30は、初期範囲IR4の中間値M3から設定範囲SR2の大きさの半分を減算して第1設定値SV1を算出し、中間値M3に設定範囲SR2の大きさの半分を加算して第2設定値SV2を算出し、設定範囲SR2を設定することができる。
【0055】
但し、第1設定値SV1が最小値MIN以下であり、かつ、第2設定値SV2が最大値MAX以上であれば、制御部30は、設定範囲SR2の中間値M2を初期範囲IR4の中間値M3に一致させなくともよい。また、本実施形態では、上記任意の値を6mmとしたが、上記任意の値をより小さくしてもよく、これにより、検査装置4は、第1紙葉類P1をより正確に検査することができる。
【0056】
図6Cは、図6Aの上記グラフ及び検出範囲DR2と、初期範囲IR5と、を示す図であり、複数の第2検出値DV2の分散が分散閾値未満である場合を示す図である。図6Cでは、図6Aと同様、初期範囲IR5の第1初期値IV1と第2初期値IV2との中間の中間値M4を基準値(0)とし、基準値より大きい第2検出値DV2を正の値で示し、基準値より小さい第2検出値DV2を負の値で示している。図6A及び図6Cから分かるように、初期範囲IR5は初期範囲IR4と異なっている。
【0057】
図6Cに示すように、検出範囲DR2は初期範囲IR5に収まっている。言い換えると、最小値MINは初期範囲IR5の第1初期値IV1以上であり、最大値MAXは初期範囲IR5の第2初期値IV2以下である。
【0058】
図6Cの複数の第2検出値DV2は、図6Aの複数の第2検出値DV2と同一である。一方、初期範囲IR5に関し、第1初期値IV1は157.5mmであり、第2初期値IV2は162.5mmであり、初期範囲IR5の大きさは、検出範囲DR2の大きさ(2.1mm)以上である5.0mmであった。また、初期範囲IR5の第1初期値IV1と第2初期値IV2との中間の中間値M4における第2検出値DV2は160.0mmであった。
【0059】
図6B及び図6Cに示すように、検出範囲DR2と初期範囲IR5との関係が上述した関係にある場合に、制御部30は、最小値MINから最大値MAXまでの検出範囲DR2が初期範囲IR5に収まっていると判断し、複数の第2検出値DV2の分散を算出する。本実施形態において、制御部30は、上記分散が分散閾値未満であると判断し、上記分散に基づいて初期範囲IR5を狭めることで設定範囲を設定する。例えば、設定範囲を設定する場合、制御部30は、初期範囲IR5を狭めることで図6Bの設定範囲SR2を設定してもよい。
【0060】
例えば、設定範囲SR2は、初期範囲IR5を2.0mm狭めて設定された範囲である。設定範囲SR2は、最小値MIN以下である第1設定値SV1から最大値MAX以上である第2設定値SV2までの範囲である。第1設定値SV1は、初期範囲IR5の第1初期値IV1から+1.0mmずれた158.5mmであり、第2設定値SV2は、初期範囲IR5の第2初期値IV2から-1.0mmずれた161.5mmである。設定範囲SR2の大きさは、初期範囲IR5の大きさ未満であり、3.0mmである。
【0061】
設定範囲SR2の大きさは、複数の第2検出値DV2の分散に任意の値を乗じることで決定される。なお、図6Cの複数の第2検出値DV2及び初期範囲IR5に基づいた設定範囲SR2の算出方法は、図6A及び図6Bを用いて説明した設定範囲SR2の算出方法を類推適用可能である。
【0062】
また、制御部30は、設定範囲SR2の中間値M2を初期範囲IR5の中間値M4に一致させている。その場合、制御部30は、初期範囲IR5の中間値M4から設定範囲SR2の大きさの半分を減算して第1設定値SV1を算出し、中間値M4に設定範囲SR2の大きさの半分を加算して第2設定値SV2を算出し、設定範囲SR2を設定することができる。初期範囲IR5より狭い設定範囲SR2を設定することで、検査装置4は、第1紙葉類P1をより正確に検査することができる。
【0063】
但し、第1設定値SV1が最小値MIN以下であり、かつ、第2設定値SV2が最大値MAX以上であれば、制御部30は、設定範囲SR2の中間値M2を初期範囲IR5の中間値M4に一致させなくともよい。
【0064】
なお、本実施形態と異なり、制御部30は、上記分散が分散閾値以上であると判断した場合、設定範囲SR2を初期範囲IR5に設定してもよい。又は、制御部30は、複数の第2検出値DV2の分散を考慮せずに、設定範囲を初期範囲IR5に設定することも可能である。
【0065】
次に、紙葉類処理装置1の検査装置4の設定モードについて説明する。図7は、検査装置4の設定モードを説明するためのフローチャートである。図8は、図7に続く、上記設定モードを説明するためのフローチャートである。図9は、図8に続く、上記設定モードを説明するためのフローチャートである。本実施形態において、上記設定モードは、紙葉類(第1紙葉類P1)が正常かどうかを判断するための設定範囲を得るためのモードである。
【0066】
図7、及び図1乃至図3に示すように、検査装置4の設定モードを開始すると、まず、ステップS5において、操作者による操作部32の操作により、制御部30は初期範囲IR及び分散閾値を記憶部31に記憶させる。続いて、ステップS10において、制御部30は、第1センサ4aから複数枚の第2紙葉類P2のうち1枚の第2紙葉類P2の物理量を示す第2検出値DVを取得する。なお、実施形態において、上記第2検出値DVは第2紙葉類P2の長さLである。
【0067】
その後、ステップS15において、制御部30は、第2検出値DVの検出数が所定数に達したかどうか判断する。第2検出値DVの検出数が所定数に達していない場合、制御部30は、ステップS10を繰り返し実行する。
【0068】
図8、及び図1乃至図3に示すように、一方、第2検出値DVの検出数が所定数に達した場合(ステップS15)、ステップS20に移行し、ステップS20において、制御部30は、所定数の第2検出値DVの検出範囲DRが初期範囲IRに収まっているかどうかを判断する。
【0069】
検出範囲DRが初期範囲IRに収まっている場合(ステップS20)、ステップS25に移行し、ステップS25において、制御部30は、所定数の第2検出値DVの分散を算出する。その後、ステップS30において、上記分散が分散閾値以上であるかどうか判断する。
分散が分散閾値以上である場合(ステップS30)、ステップS35に移行し、ステップS35において、制御部30は、設定範囲SRを初期範囲IRに設定し、検査装置4の設定モードを終了する。
【0070】
一方、分散が分散閾値未満である場合(ステップS30)、ステップS40に移行し、ステップS40において、制御部30は、分散を基に初期範囲IRを狭くすることで設定範囲SRを設定し、検査装置4の設定モードを終了する。
【0071】
図9、及び図1乃至図3に示すように、一方、検出範囲DRの全体が初期範囲IRに収まっていない場合(ステップS20)、ステップS50に移行し、ステップS50において、制御部30は、所定数の第2検出値DVが第1条件を満たしているかどうか判断する。ここで、第1条件とは、検出範囲DRが第1初期値IV1を跨ぎ、かつ、初期範囲IRの大きさが検出範囲DRの大きさ以上であると言う条件である。又は、第1条件とは、検出範囲DRが第2初期値IV2を跨ぎ、かつ、初期範囲IRの大きさが検出範囲DRの大きさ以上であると言う条件である。
【0072】
所定数の第2検出値DVが第1条件を満たしている場合(ステップS50)、ステップS55に移行し、ステップS55において、制御部30は、初期範囲IRをずらすことで設定範囲SRを設定し、検査装置4の設定モードを終了する。
【0073】
一方、所定数の第2検出値DVが第1条件を満たしていない場合(ステップS50)、ステップS60に移行し、ステップS60において、制御部30は、所定数の第2検出値DVが第2条件を満たしているかどうか判断する。ここで、第2条件とは、検出範囲DRが第1初期値IV1及び第2初期値IV2の両方を跨いでいると言う条件である。所定数の第2検出値DVが第2条件を満たしている場合、ステップS65に移行し、ステップS65において、制御部30は、所定数の第2検出値DVの分散を算出する。その後、ステップS70において、ステップS60で算出した分散に基づいて初期範囲IRを広げることで設定範囲SRを設定し、検査装置4の設定モードを終了する。
【0074】
所定数の第2検出値DVが第2条件を満たしていない場合(ステップS60)、ステップS75に移行し、ステップS75において、制御部30は、検出範囲DR(全ての第2検出値DV)が収まる設定範囲SRを設定し、検査装置4の設定モードを終了する。ステップS75において、制御部30は、初期範囲IRを考慮すること無しに設定範囲の設定するものであり、初期範囲IRをずらしたり、初期範囲IRの大きさを変えたり、すること無しに設定範囲の設定するものである。
【0075】
本実施形態において、検査装置4は、記憶部31を備えているが、記憶部31無しに構成されてもよい。その場合、制御部30は、初期範囲IRを考慮すること無しに設定範囲SRの設定を行うことができる。具体的には、制御部30は、第2検出値DVの検出数が所定数に達するまでステップS10を繰り返し実行し、最小値MIN以下である第1設定値SV1から最大値MAX以上である第2設定値SV2までの範囲を設定範囲SRとして設定することができる。
【0076】
さらに、制御部30は、初期範囲IRを考慮するが分散閾値を考慮せずに設定範囲SRの設定を行うことができる。具体的には、制御部30は、図7のステップS5において分散閾値を記憶部31に記憶させない。図8のステップS20において、検出範囲DRが初期範囲IRに収まっている場合、制御部30は、ステップS25及びS30を実行せずにステップS35に移行し、設定範囲SRを初期範囲IRに設定し、検査装置4の設定モードを終了する。
【0077】
一方、図8のステップS20において、検出範囲DRが初期範囲IRに収まっていない場合は、ステップS50を実行する。所定数の第2検出値DVが第1条件を満たしている場合(ステップS50)、ステップS55を実行し、ステップS55において、制御部30は、初期範囲IRをずらすことで設定範囲SRを設定し、検査装置4の設定モードを終了する。所定数の第2検出値DVが第1条件を満たしていない場合(ステップS50)、制御部30は、ステップS60を実行せずにステップS75に移行し、検出範囲DRが収まる設定範囲SRを設定し、検査装置4の設定モードを終了する。
【0078】
上記のように構成された一実施形態に係る検査装置4及び検査装置4のコンピュータによって実行されるプログラムによれば、検査装置4は、第1紙葉類P1の物理量を示す第1検出値を検出するセンサとしての第1センサ4aと、制御部30と、を備えている。制御部30は、第1検出値が設定範囲SRに収まっている場合に第1紙葉類P1を正常と判断し、第1検出値が設定範囲SRに収まっていない場合に第1紙葉類P1を異常と判断することができる。
【0079】
制御部30は、第1センサ4aで検出された複数の第2検出値DVに基づいて設定範囲SRを設定することができる。設定範囲SRは、複数の第2検出値DVの最小値MIN以下である第1設定値SV1から複数の第2検出値DVの最大値MAX以上である第2設定値SV2までの範囲である。各々の第2検出値DVは、複数枚の第2紙葉類P2のうち対応する1枚の第2紙葉類P2の物理量を示している。
【0080】
第1センサ4aを備える検査装置4のコンピュータによって実行されるプログラムによれば、検査装置4のコンピュータに、設定範囲SRを設定する設定手順と、第1センサ4aにより第1紙葉類P1の物理量を示す第1検出値を検出する検出手順と、第1検出値が設定範囲SRに収まっている場合に第1紙葉類P1を正常と判断し、第1検出値が設定範囲SRに収まっていない場合に第1紙葉類P1を異常と判断する判断手順と、を実行させることができる。
【0081】
上記設定手順は、第1センサ4aで検出された複数の第2検出値DVに基づいて設定範囲SRを設定する手順である。設定範囲SRは、複数の第2検出値DVの最小値MIN以下である第1設定値SV1から複数の第2検出値DVの最大値MAX以上である第2設定値SV2までの範囲である。各々の第2検出値DVは、複数枚の第2紙葉類P2のうち対応する1枚の第2紙葉類P2の物理量を示している。
そのため、第1紙葉類P1が正常かどうかを判断するための設定範囲SRを得ることのできる検査装置4及びプログラムを得ることができる。
【0082】
検査装置4は、初期範囲IRを記憶する記憶部31をさらに備えている。制御部30は、検出範囲DRが初期範囲IRに収まっていると判断した場合、設定範囲SRを初期範囲IRに設定することができる。そのため、設定範囲SRを設定する際に、初期範囲IRを生かすことができる。
【0083】
制御部30は、検出範囲DRが第1初期値IV1及び第2初期値IV2の少なくとも一方を跨いでいると判断した場合、初期範囲IRをずらすことで設定範囲SRを設定し、又は、初期範囲IRを広げることで設定範囲SRを設定することができる。この場合も、設定範囲SRを設定する際に、初期範囲IRを生かすことができる。
【0084】
初期範囲IRをずらすことで設定範囲SRを設定する場合、制御部30は、設定範囲SRの第1設定値SV1と第2設定値SV2との中間の中間値を複数の第2検出値DVの平均値AVに一致させてもよい。これにより、検査装置4は、第1紙葉類P1をより正確に検査することができ得る。
【0085】
制御部30は、検出範囲DRが第1初期値IV1及び第2初期値IV2の両方を跨いでいると判断した場合、複数の第2検出値DVの分散を算出し、分散に基づいて初期範囲IRを広げることで設定範囲SRを設定することができる。この場合も、設定範囲SRを設定する際に、初期範囲IRを生かすことができる。
【0086】
記憶部31は、分散閾値をさらに記憶している。制御部30は、検出範囲DRが初期範囲IRに収まっている場合、複数の第2検出値DVの分散を算出する。制御部30は、分散が分散閾値以上であると判断した場合、設定範囲SRを初期範囲IRに設定することができる。一方、制御部30は、分散が分散閾値未満であると判断した場合、分散を基づいて初期範囲IRを狭めることで設定範囲SRを設定することができる。この場合も、設定範囲SRを設定する際に、初期範囲IRを生かすことができる。
【0087】
上述したことから、複数の検査装置4の個体差を考慮した設定範囲SRを設定することができる。そして、複数の検査装置4の個体差に対応するための労力を削減することができ、作業者が熟練者でなくとも、自動で設定範囲SRを設定することのできる検査装置4を得ることができる。
【0088】
本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記の新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
1…紙葉類処理装置、3…搬送装置、4…検査装置、4a~4f…センサ、
10…取出し装置、30…制御部、31…記憶部、DR…検出範囲、DV…第2検出値、
MIN…最小値、MAX…最大値、AV…平均値、IR…初期範囲、
IV1…第1初期値、IV2…第2初期値、SR…設定範囲、SV1…第1設定値、
SV2…第2設定値、M1~M4…中間値、P…紙葉類、P1…第1紙葉類、
P2…第2紙葉類、L…長さ、X…搬送方向S5~S75…ステップ。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9