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特開2023-132763インクジェットインク用酸化チタン水系分散体及び記録用インクジェットインク組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132763
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】インクジェットインク用酸化チタン水系分散体及び記録用インクジェットインク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20230914BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230914BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C09D11/322
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038279
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000180058
【氏名又は名称】山陽色素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】高松 昌一
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EE18
2C056FC01
2H186BA08
2H186DA17
2H186FA07
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB56
4J039BA35
4J039BC12
4J039BE12
4J039BE22
4J039EA48
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】酸化チタンの沈降、ハードケーキ化を従来よりも抑制することができ、また、沈降した場合でも、沈降した酸化チタンの再分散を従来よりも容易に行うことが可能なインクジェットインク用酸化チタン水系分散体及び記録用インクジェットインク組成物を提供すること。
【解決手段】酸化チタン、分散剤、特定の構造単位を有するポリアルキレンオキサイド及び水を含み、前記ポリアルキレンオキサイドが固形分基準で前記酸化チタン100重量部に対して0.1~25重量部含まれる、インクジェットインク用酸化チタン水系分散体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン、分散剤、下記式(1)で示される構造単位を有するポリアルキレンオキサイド及び水を含み、
前記ポリアルキレンオキサイドが固形分基準で前記酸化チタン100重量部に対して0.1~25重量部含まれる、インクジェットインク用酸化チタン水系分散体。
【化1】
(式(1)中、Lは、水素原子の少なくとも一つがZ-Rで置換された直鎖アルキレン基を表し、Z-R以外の他の置換基を有していても有していなくても良く、
は、直鎖アルキレン基を表し、水素原子の少なくとも一つが置換基で置換されていても、置換されていなくても良く、
Z-Rは、1でも複数でも良く、複数の場合は同一でも異なっていても良く、
Zは、LとRを結合する連結基であり、前記連結基は、アルキレン鎖、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びイミド結合を、それぞれ含んでいても含んでいなくても良く、
Rは、置換基を有してもよいアリル基、置換基を有しても良いアクリロイル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基又は置換基を有してもよいフタルイミド基であり、1つのZに対し1でも複数でも良く、複数の場合は同一でも異なっても良く、
n及びmは、それぞれ1以上の整数であり、
及びLは、それぞれ1種類でも複数種類でも良い。)
【請求項2】
前記ポリアルキレンオキサイドが固形分基準で前記酸化チタン100重量部に対して0.1~15.0重量部含まれる、請求項1記載のインクジェットインク用酸化チタン水系分散体。
【請求項3】
前記分散剤が、酸価が1~300mgKOH/gの(メタ)アクリル系樹脂型分散剤である請求項1又は2に記載のインクジェットインク用酸化チタン水系分散体。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のインクジェットインク用酸化チタン水系分散体を含む記録用インクジェットインク組成物。
【請求項5】
酸化チタン、分散剤、下記式(1)で示される構造単位を有するポリアルキレンオキサイド、水及び水溶性有機溶媒を含み、
前記ポリアルキレンオキサイドが固形分基準で前記酸化チタン100重量部に対して0.1~25重量部含まれる、記録用インクジェットインク組成物。
【化2】
(式(1)中、Lは、水素原子の少なくとも一つがZ-Rで置換された直鎖アルキレン基を表し、Z-R以外の他の置換基を有していても有していなくても良く、
は、直鎖アルキレン基を表し、水素原子の少なくとも一つが置換基で置換されていても、置換されていなくても良く、
Z-Rは、1でも複数でも良く、複数の場合は同一でも異なっていても良く、
Zは、LとRを結合する連結基であり、前記連結基は、アルキレン鎖、エーテル結合、エステル結合及びイミド結合を、それぞれ含んでいても含んでいなくても良く、
Rは、置換基を有してもよいアリル基、置換基を有しても良いアクリロイル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基又は置換基を有してもよいフタルイミド基であり、1つのZに対し1でも複数でも良く、複数の場合は同一でも異なっても良く、
n及びmは、それぞれ1以上の整数であり、
及びLは、それぞれ1種類でも複数種類でも良い。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインク用酸化チタン水系分散体及び記録用インクジェットインク組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の記録方法は各種の分野において広く利用されている。近年では、従来の白色の記録媒体のみならず、着色されたものや、透明なものに対する印刷が要求されるようになっている。着色又は透明な記録媒体に対して印刷を行う場合、白色を表現する目的、また、特に透明な記録媒体を用いる場合の記録画像の鮮明度を高める等の目的から白色インクが使用される。このような白色インクに用いられる白色顔料としては、隠蔽性に優れる酸化チタンが使用されている。しかし、この酸化チタンは、例えばインクの保管中などに沈降してケーキ化し易いことが知られている。特に、振とうなどによっても再分散させることが困難な程度にハードケーキ化すると、記録画像の画質が低下したり、印刷に支障をきたしたり、或いは、インクとして使用できない場合がある。
【0003】
そこで、酸化チタンの沈降、ハードケーキ化を防止するための提案がなされている。例えば、特許文献1には、吸油量が25~50g/100gである二酸化チタン粒子(A)、分散剤(B)、塩基性化合物、および水を含み、二酸化チタン粒子(A)は、D10平均分散粒子径が120~220nm、およびD90平均分散粒子径が350~650nmであるインクジェットインキ用水性白色分散体が記載されている。このような分散体により、顔料粒子の沈降を抑制する経時分散安定性を有し、白色度が良好な白色インキ層を形成できるとされている。
【0004】
特許文献2には、ルチル型酸化チタンとポリマー分散剤を含有する水系インクを用いて、インクジェット記録装置により記録するインクジェット記録方法において、ポリマー分散剤が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72質量%以上含有し、その重量平均分子量が3000以上50000以下であり、記録装置が水系インク中の酸化チタンを分散する分散手段を有していることが記載されている。このような方法により、隠蔽性を有し、ルチル型酸化チタンが沈降しても簡易な攪拌により容易に再分散すると共に、優れた抑泡性又は消泡性により速やかにインク物性が回復するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-105087号公報
【特許文献2】特開2021-120223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献1、2に記載の発明により、インクジェットインク組成物中の酸化チタンの沈降を抑制し、ハードケーキ化を抑制すること、沈降した場合に酸化チタンを再分散することはある程度可能であると考えられるが、改善の余地がある。この改善を検討したところ、酸化チタンの沈降は抑制できても、粘度が高くなり、インクジェットインク組成物の調製ができない場合や、インクジェット印刷機における吐出が困難になる場合があるとの知見を得た。そこで、本発明の目的は、酸化チタンの沈降、ハードケーキ化を従来よりも抑制することができ、また、沈降した場合でも、沈降した酸化チタンの再分散を従来よりも容易に行うことが可能なインクジェットインク用酸化チタン水系分散体及び記録用インクジェットインク組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前述の課題解決のために鋭意検討を行った。その結果、分散剤と特定の構造単位を有するポリアルキレンオキサイドを併用し、このポリアルキレンオキサイドの含有量を所定の範囲にすることで前述の課題を解決可能であることを見出した。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0008】
(1)酸化チタン、分散剤、下記式(1)で示される構造単位を有するポリアルキレンオキサイド及び水を含み、
前記ポリアルキレンオキサイドが固形分基準で前記酸化チタン100重量部に対して0.1~25重量部含まれる、インクジェットインク用酸化チタン水系分散体。
【0009】
【化1】
【0010】
(式(1)中、Lは、水素原子の少なくとも一つがZ-Rで置換された直鎖アルキレン基を表し、Z-R以外の他の置換基を有していても有していなくても良く、
は、直鎖アルキレン基を表し、水素原子の少なくとも一つが置換基で置換されていても、置換されていなくても良く、
Z-Rは、1でも複数でも良く、複数の場合は同一でも異なっていても良く、
Zは、LとRを結合する連結基であり、前記連結基は、アルキレン鎖、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びイミド結合を、それぞれ含んでいても含んでいなくても良く、
Rは、置換基を有してもよいアリル基、置換基を有しても良いアクリロイル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基又は置換基を有してもよいフタルイミド基であり、1つのZに対し1でも複数でも良く、複数の場合は同一でも異なっても良く、
n及びmは、それぞれ1以上の整数であり、
及びLは、それぞれ1種類でも複数種類でも良い。)
【0011】
(2)前記ポリアルキレンオキサイドが固形分基準で前記酸化チタン100重量部に対して0.1~15.0重量部含まれる、前項(1)記載のインクジェットインク用酸化チタン水系分散体。
(3)前記分散剤が、酸価が1~300mgKOH/gの(メタ)アクリル系樹脂型分散剤である前項(1)又は(2)に記載のインクジェットインク用酸化チタン水系分散体。
(4)前項(1)~(3)の何れか一項に記載のインクジェットインク用酸化チタン水系分散体を含む記録用インクジェットインク組成物。
【0012】
(5)酸化チタン、分散剤、下記式(1)で示される構造単位を有するポリアルキレンオキサイド、水及び水溶性有機溶媒を含み、
前記ポリアルキレンオキサイドが固形分基準で前記酸化チタン100重量部に対して0.1~25重量部含まれる、記録用インクジェットインク組成物。
【0013】
【化2】
【0014】
(式(1)中、Lは、水素原子の少なくとも一つがZ-Rで置換された直鎖アルキレン基を表し、Z-R以外の他の置換基を有していても有していなくても良く、
は、直鎖アルキレン基を表し、水素原子の少なくとも一つが置換基で置換されていても、置換されていなくても良く、
Z-Rは、1でも複数でも良く、複数の場合は同一でも異なっていても良く、
Zは、LとRを結合する連結基であり、前記連結基は、アルキレン鎖、エーテル結合、エステル結合及びイミド結合を、それぞれ含んでいても含んでいなくても良く、
Rは、置換基を有してもよいアリル基、置換基を有しても良いアクリロイル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基又は置換基を有してもよいフタルイミド基であり、1つのZに対し1でも複数でも良く、複数の場合は同一でも異なっても良く、
n及びmは、それぞれ1以上の整数であり、
及びLは、それぞれ1種類でも複数種類でも良い。)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、酸化チタンの沈降、ハードケーキ化を従来よりも抑制することができ、また、沈降した場合でも、沈降した酸化チタンの再分散を従来よりも容易に行うことが可能なインクジェットインク用酸化チタン水系分散体及び記録用インクジェットインク組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係るインクジェットインク用酸化チタン水系分散体(以下、単に「水系分散体」と称する場合がある。)は、酸化チタン、分散剤、下記式(1)で示される構造単位を有するポリアルキレンオキサイド(以下、「特定のポリアルキレンオキサイド」と称する場合がある。)及び水を含む。また、この特定のポリアルキレンオキサイドは固形分基準で酸化チタン100重量部に対して0.1~25重量部含まれる。
【0017】
【化3】
【0018】
(式(1)中、Lは、水素原子の少なくとも一つがZ-Rで置換された直鎖アルキレン基を表し、Z-R以外の他の置換基を有していても有していなくても良く、
は、直鎖アルキレン基を表し、水素原子の少なくとも一つが置換基で置換されていても、置換されていなくても良く、
Z-Rは、1でも複数でも良く、複数の場合は同一でも異なっていても良く、
Zは、LとRを結合する連結基であり、前記連結基は、アルキレン鎖、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びイミド結合を、それぞれ含んでいても含んでいなくても良く、
Rは、置換基を有してもよいアリル基、置換基を有しても良いアクリロイル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基又は置換基を有してもよいフタルイミド基であり、1つのZに対し1でも複数でも良く、複数の場合は同一でも異なっても良く、
n及びmは、それぞれ1以上の整数であり、
及びLは、それぞれ1種類でも複数種類でも良い。)
【0019】
このように、特定のポリアルキレンオキサイドを特定の含有量の範囲で分散剤と併用することで、記録用インクジェットインク組成物(以下、「インク組成物」と称する場合がある。)を調製した際にインクジェット印刷機で吐出が可能な程度に低く維持すると同時に、溶媒中で沈降し易い特性を有する酸化チタンの沈降を抑制し、沈降した場合でも、沈降した酸化チタンの再分散(ケーキ回復性とも称する。)を従来よりも容易に行うことが可能となる。
【0020】
前記酸化チタンは、特に限定はなく、本技術分野において一般的なもの等を用いることができる。詳述すると以下のとおりである。酸化チタンは、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型などの結晶構造を有するが、いずれの結晶構造でもよい。酸化チタンは、表面処理されたもの、表面処理されていないものの何れでも用いることができる。水系分散体及びインク組成物中におけるより良好な分散性を得る観点からは、表面処理されたものが好ましい。酸化チタンの表面処理としては、アルミナ、シリカ(高密度シリカ、多孔質シリカ)、ジルコニア等の無機物、チタンカップリング剤、シランカップリング剤、シリコーンオイル、脂肪酸、ポリオール、アミン等の有機物、及び、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0021】
酸化チタンの形態は、水系分散体及びインク組成物中において分散させやすい形態であればよく、例えば、粉体状、粉末状等が挙げれれる。また、これらの粒子の大きさは、各種用途に応じて適宜決定することができるが、より良好な低粘度化及びインク吐出性の観点、より良好なケーキ回復性の観点からは、酸化チタンの粒子の平均一次粒子径が、100~400nmが好ましく、200~300nmがより好ましい。酸化チタンの一次粒子径は、例えば、顔料を透過型電子顕微鏡にて倍率10万倍で撮影した画像から測定できる。また、平均一次粒子径については、例えば、100個の粒子の一次粒子径を測定し、その平均値を平均一次粒子径とすることができる。
【0022】
酸化チタンの水系分散体中の含有量は、特に限定はないが、インク組成設計の自由度の観点から高い方が好ましく、20重量%以上60重量%以下が好ましく、40重量%以上~60重量%以下がより好ましい。
【0023】
前記分散剤は、特に限定はなく、本技術分野において一般的なもの等を用いることができる。例えば、樹脂型分散剤、界面活性剤型分散剤等が挙げられる。
【0024】
樹脂型分散剤としては、例えば、ポリウレタン;ポリエステル;不飽和ポリアミド;燐酸エステル;ポリカルボン酸及びそのアミン塩、アンモニウム塩、アルキルアミン塩、アルカリ金属塩;ポリカルボン酸エステル;水酸基含有ポリカルボン酸エステル;ポリシロキサン;変性ポリアクリレート;アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム等の水溶性高分子化合物;ビニル系樹脂;ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン等のアミン系樹脂;等が挙げられる。
【0025】
樹脂型分散剤は、顔料の分散を効率よく行う観点から、ビニル系モノマーの付加重合により得られるビニル系樹脂が好ましく、塩生成基を有するモノマーと疎水性基を有するモノマーとノニオン性基を有するモノマーから選ばれる1種以上を含むモノマー混合物を共重合させてなる樹脂がより好ましい。
【0026】
塩生成基を有するモノマーとしては、アニオン性モノマー、カチオン性モノマーが挙げられる。塩生成基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等のアニオン性基、アミノ基、アンモニウム基等のカチオン性基が挙げられる。より良好な低粘度化及びインク吐出性の観点、より良好なケーキ回復性の観点から、カルボキシ基を有するアニオン性モノマーを含む混合物から重合されることが好ましい。カルボキシ基を有するアニオン性モノマーとしては、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
【0027】
樹脂型分散剤の酸価及びアミン価は、特に限定はない。アニオン性樹脂型分散剤及びカチオン性樹脂型分散剤のいずれも使用することができる。
【0028】
カチオン性樹脂型分散剤を使用する場合、アミン価は、1~200mgKOH/gが好ましい。また、酸価は10mgKOH/g以下が好ましく、0mgKOH/gがより好ましい。
【0029】
より良好な低粘度化及びインク吐出性の観点、より良好なケーキ回復性の観点から、アニオン性樹脂型分散剤を使用することが好ましい。アニオン性樹脂型分散剤を使用する場合、酸価は、1~800mgKOH/gが好ましく、1~300mgKOH/gがより好ましく、5~300mgKOH/gがさらに好ましく、100~300mgKOH/gが特に好ましい。尚、樹脂型分散剤に含まれる酸性基が中和された塩を含む場合は中和前の値とする。また、アミン価は、10mgKOH/g以下が好ましく、0mgKOH/gがより好ましい。
【0030】
アミン価(固形分換算したときのアミン価)は、例えば、DIN 16945に準拠する方法により求めることができる。酸価(固形分換算したときの酸価)は、例えば、DIN EN ISO 2114に準拠する方法により求めることができる。
【0031】
樹脂型分散剤の分子量は、特に限定はないが、重量平均分子量が3000~40000であるのが好ましく、8000~30000がより好ましい。
【0032】
界面活性剤型分散剤としては、イオン性に応じて、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル等のアニオン活性剤(アニオン型)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン活性剤(ノニオン型)、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン活性剤(カチオン型)等が挙げられる。
【0033】
このうち、分散剤としては、より良好な低粘度化及びインク吐出性の観点、より良好なケーキ回復性の観点から、樹脂型分散剤が好ましい。
【0034】
分散剤の含有量は、特に限定はないが、分散安定性向上及び粘度の観点から、酸化チタン100重量部に対して、固形分基準で3~30重量部が好ましい。
【0035】
ポリアルキレンオキサイドは、前記式(1)で示される構造単位を有するものであればよい。式(1)で示される構造単位を有するポリアルキレンオキサイドのうち、Rが置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基又は置換基を有してもよいフタルイミド基であるものは、例えば、特許第5789335号公報、特許第6461169号公報に記載のものを用いることができる。これを適宜参照しつつ、式(1)で示される構造単位を有するポリアルキレンオキサイドを説明すると以下のとおりである。
【0036】
式(1)中、Lは、水素原子の少なくとも一つがZ-Rで置換された直鎖アルキレン基を表す。Lにおいて、直鎖アルキレンとしては、特に限定はなく、例えば、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、n-プロピレン基[-(CH-]、n-ブチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]、ヘキサメチレン基[-(CH-]、ヘプタメチレン基[-(CH-]、オクタメチレン基[-(CH-]、ノナメチレン基[-(CH-]、デカメチレン基[-(CH10-]等が挙げられる。
【0037】
式(1)で表されるポリアルキレンオキサイドの原料であるモノマーの反応性などの観点から、Lにおける直鎖アルキレン基は、炭素数1~4の直鎖アルキレン基が好ましく、炭素数2~3の直鎖アルキレン基がより好ましく、炭素数2の直鎖アルキレン基がさらに好ましい。
【0038】
式(1)中、Zは、LとRを結合する連結基であるか、又は、Zが存在せずにLとRが直接結合されていても良い。Zにおいて、連結基は、アルキレン鎖、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びイミド結合を、それぞれ含んでいても含んでいなくても良い。連結基の主鎖原子数は、特に限定されないが、例えば1~24、または、主鎖がポリエーテルの場合は、例えば5~50である。
【0039】
アルキレン鎖のL-Z-Rとしては、例えば、L-CH-Rなどが挙げられる。エーテル結合のL-Z-Rとしては、例えば、L-CHO-R、L-CHO-CR3、-CHOCH-R、L-CHO-(CHCHO)-Rなどが挙げられる。エステル結合のL-Z-Rとしては、例えば、L-CHOC(=O)-Rなどが挙げられる。アミド結合のL-Z-Rとしては、例えば、L-CHNHC(=O)-R、L-CHN(CH)C(=O)-Rなどが挙げられる。イミド結合のL-Z-Rとしては、例えば、L-CHN(C(=O)-R)などが挙げられる。尚、Rが複数の場合は同一でも異なっていても良い。
【0040】
式(1)中、Rは、置換基を有してもよいアリル基、置換基を有しても良いアクリロイル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基又は置換基を有してもよいフタルイミド基である。Rは、1つのZに対し1つでも良いし、2つ以上でも良い。
【0041】
置換基を有してもよいアリル基は、置換基を有さないアリル基(単にアリル基と称する)又は置換基を有するアリル基である。アリル基は、-CHCH=CHで示される構造を有する。置換基としては、特に限定されないが、アルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシル基、及びハロアルキル基からなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。置換基は1つでも良いし、2つ以上でもよい。これらのうち、置換基を有してもよいアリル基としては、アリル基が好ましい。
【0042】
置換基を有しても良いアクリロイル基は、置換基を有さないアクリロイル基(単にアクリロイル基と称する)又は置換基を有するアクリロイル基である。アクリロイル基は、-C(=O)-CH=CHで示される構造を有する。置換基の種類及び数は、置換基を有してもよいアリル基の場合と同様である。これらのうち、置換基を有してもよいアクリロイル基としては、アクリロイル基、アルキル基で置換されたアクリロイル基が好ましい。アルキル基で置換されたアクリロイル基としては、例えば、-C(=O)-C(CH)=CH(メタクリロイル基)などが挙げられる。
【0043】
置換基を有してもよいフェニル基は、置換基を有さないフェニル基(単にフェニル基と称する)又は置換基を有するフェニル基である。フェニル基は、-Cで示される構造を有する。置換基の種類及び数は、置換基を有してもよいアリル基の場合と同様である。
【0044】
置換基を有してもよいナフチル基は、置換基を有さないナフチル基(単にナフチル基と称する)又は置換基を有するナフチル基である。ナフチル基は、-C10で示される。ナフチル基は、1-ナフチル基でも良いし、2-ナフチル基でも良い。置換基の種類及び数は、置換基を有してもよいアリル基の場合と同様である。
【0045】
置換基を有してもよいフタルイミド基は、置換基を有さないフタルイミド基(単にフタルイミド基と称する)又は置換基を有するフタルイミド基である。フタルイミド基は、-N(C=O)で示される。置換基の種類及び数は、置換基を有してもよいアリル基の場合と同様である。
【0046】
式(1)中のZ-Rは、1つでも良いし、2つ以上でも良く、2つ以上の場合は同一でも異なっていても良い。例えば、Lにおける直鎖アルキレン基がエチレン基であれば、エチレン基における水素原子のうち任意の1~4個が、Z-Rで置換されていて良く、Z-Rは、複数の場合は同一でも異なっていても良い。
【0047】
式(1)中のLは、さらに、Z-R以外の他の置換基を有していても良いし、有していなくても良い。Z-R以外の他の置換基は、存在する場合は、1つのLに対し1つでも良いし、2つ以上でも良く、2つ以上の場合は同一でも異なっていても良い。Z-R以外の他の置換基としては、特に限定されないが、例えば、後述するLの置換基と同様でも良い。また、Z-R以外の他の置換基は、例えば、任意の芳香族基(アリール基、ヘテロアリール基等)を含んでいても良い。
【0048】
式(1)中の-L-O-及びZ-Arで示される構造単位(副構造単位aと称する場合がある。)の具体例を示すと以下の式(1-1)~(1-15)、(2)、(2-1)~(2-3)のとおりであるが、これらに限定されるわけではない。
【0049】
【化4】
【0050】
【化5】
【0051】
【化6】
【0052】
【化7】
【0053】
式(1)中、Lは、直鎖アルキレン基を表す。前記直鎖アルキレンとしては、特に限定はなく、例えば、例えば、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、n-プロピレン基[-(CH-]、n-ブチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]、ヘキサメチレン基[-(CH-]、ヘプタメチレン基[-(CH-]、オクタメチレン基[-(CH-]、ノナメチレン基[-(CH-]、デカメチレン基[-(CH10-]等が挙げられる。これらのうち、Lは、炭素数1~4の直鎖アルキレンが好ましく、炭素数2~3の直鎖アルキレンがより好ましく、炭素数2の直鎖アルキレンがさらに好ましい。
【0054】
は、置換基を有していても良いし、有していなくても良い。置換基は、存在する場合は、1つのLに対し1つでも良いし、2つ以上でも良いが、1つであることが好ましい。置換基が2つ以上の場合は同一でも異なっていても良い。Lにおける置換基としては、特に限定されないが、アルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基、ハロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アルコキシアルキル基、アルケニルオキシアルキル基、アルキニルオキシアルキル基、ハロアルコキシアルキル基、アルコキシ-ポリ(アルキルオキシ)アルキル基、アシルオキシアルキル基、ハロゲン、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、及び、(メタ)アクリロイルオキシアルコキシアルキル基からなる群から選択される少なくとも一つが好ましい。尚、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタアクリル酸の少なくとも一方を表す。(メタ)アクリル酸から誘導される構造(例えば(メタ)アクリロイル基等)においても同じである。尚、これらの置換基の具体例は、特許第5789335号公報、特許第6461169号公報に記載のとおりである。
【0055】
における置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アルコキシメチル基、アルケニルオキシメチル基、ハロアルコキシメチル基、アルコキシ-ポリ(アルキルオキシ)メチル基、アシルオキシメチル基、ハロゲン、(メタ)アクリロイルオキシメチル基、及び、(メタ)アクリロイルオキシアルコキシメチル基からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0056】
式(1)中の-L-O-で示される構造単位(副構造単位bと称する場合がある。)の具体例を示すと以下の式(3-1)、(3-2)のとおりであるが、これらに限定されるわけではない。尚、式(3-1)及び(3-2)中、m、m’及びlは、それぞれ1以上の整数である。
【0057】
【化8】
【0058】
式(1)で示される構造単位を有するポリアルキレンオキサイドにおける前記構造単位は、例えば、下記構造単位(A1)~(A30)のものが挙げられる。ただし、下記構造単位(A1)~(A30)における各モノマー構造単位の配列順序は、特に限定されず、交互、ランダム又はブロックのいずれであっても良い。
【0059】
(A1)エチレンオキサイド及びスチレンオキサイドの共重合体
(A2)プロピレンオキサイド及びスチレンオキサイドの共重合体
(A3)エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びスチレンオキサイドの共重合体
(A4)エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド及びスチレンオキサイドの共重合体
(A5)エチレンオキサイド、アルキル炭素数1~18のアルキルグリシジルエーテル及びスチレンオキサイドの共重合体
(A6)エチレンオキサイド、アリルグリシジルエーテル及びスチレンオキサイドの共重合体
(A7)エチレンオキサイド及びフェニルグリシジルエーテルの共重合体
(A8)プロピレンオキサイド及びフェニルグリシジルエーテルの共重合体
(A9)エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びフェニルグリシジルエーテルの共重合体
(A10)エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド及びフェニルグリシジルエーテルの共重合体
(A11)エチレンオキサイド、アルキル炭素数1~18のアルキルグリシジルエーテル及びフェニルグリシジルエーテルの共重合体
(A12)エチレンオキサイド、アリルグリシジルエーテル及びフェニルグリシジルエーテルの共重合体
(A13)エチレンオキサイド及びナフチルグリシジルエーテルの共重合体
(A14)プロピレンオキサイド及びナフチルグリシジルエーテルの共重合体
(A15)エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びナフチルグリシジルエーテルの共重合体
(A16)エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド及びナフチルグリシジルエーテルの共重合体
(A17)エチレンオキサイド、アルキル炭素数1~18のアルキルグリシジルエーテル及びナフチルグリシジルエーテルの共重合体
(A18)エチレンオキサイド、アリルグリシジルエーテル及びナフチルグリシジルエーテルの共重合体
(A19)エチレンオキサイド及びN-グリシジルフタルイミドの共重合体
(A20)プロピレンオキサイド及びN-グリシジルフタルイミドの共重合体
(A21)エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びN-グリシジルフタルイミドの共重合体
(A22)エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド及びN-グリシジルフタルイミドの共重合体
(A23)エチレンオキサイド、アルキル炭素数1~18のアルキルグリシジルエーテル及びN-グリシジルフタルイミドの共重合体
(A24)エチレンオキサイド、アリルグリシジルエーテル及びN-グリシジルフタルイミドの共重合体
(A25)エチレンオキサイド、スチレンオキサイド及びN-グリシジルフタルイミドの共重合体
(A26)エチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル及びN-グリシジルフタルイミドの共重合体
(A27)エチレンオキサイド、ナフチルグリシジルエーテル及びN-グリシジルフタルイミドの共重合体
(A28)エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びアリルグリシジルエーテルの共重合体
(A29)エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びアクリロイルグリシジルエーテルの共重合体
(A30)エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びメタクリロイルグリシジルエーテルの共重合体
【0060】
副構造単位a及びbの配列順序は、特に制限されず、式(1)の構造単位を有するポリアルキレンオキサイドが、交互共重合体であっても良いし、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であっても良い。ポリアルキレンオキサイドは、酸化チタンの沈降抑制の観点から、ランダム共重合体であることが好ましい。また、副構造単位a及びbは、それぞれ1種類であっても良いし、2種類以上でも良い。
【0061】
式(1)の構造単位を有するポリアルキレンオキサイドの副構造単位a及びbの共重合比(副構造単位a:副構造単位b)は、特に制限されないが、酸化チタンの沈降抑制の観点から、例えば副構造単位a:副構造単位b=0.01:99.99~50:50、好ましくは0.1:99.9~30:70、より好ましくは0.5:99.5~20:90、さらに好ましくは1:99~10:90である。ただし、これらの数値は例示であり、用途等に応じて適宜変更することができる。
【0062】
式(1)の構造単位を有するポリアルキレンオキサイドの重量平均分子量は、特に制限されない。酸化チタンの沈降抑制の観点から、下限は、例えば1,000以上、好ましくは4,000以上、より好ましくは5,000以上、さらに好ましくは10,000以上、特に好ましくは20,000以上、最も好ましくは30,000以上である。また、粘度を小さくして、取り扱い性を容易にする観点から、上限は、例えば10,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは200,000以下である。
【0063】
式(1)の構造単位を有するポリアルキレンオキサイドは、例えば特許第5789335号公報、特許第6461169号公報に記載の方法に準拠して製造することが可能であるが、市販のものを使用することも可能である。市販品としては、例えば、明成化学工業株式会社製の、アルコックス(登録商標)CP-Aシリーズ、CP-Bシリーズ等が挙げられる。
【0064】
式(1)の構造単位を有するポリアルキレンオキサイドの含有量は、酸化チタン100重量部に対して、固形分基準で0.1~25重量部である。より良好な低粘度化の観点、より良好なケーキ回復性の観点からは、0.8~20重量部が好ましく、0.8~12.5重量部がより好ましく、0.8~7重量部がさらに好ましい。
【0065】
前記水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水や超純水等が挙げられる。水は滅菌処理されたものを用いても良い。また、水以外に有機溶媒を併用してもよい。水と併用可能な有機溶媒としては、例えば、後述するインク組成物において適用可能な水溶性有機溶媒が挙げられる。
【0066】
水の含有量は、特に限定はないが、インク組成設計の自由度の観点から、水系分散体中30~79重量%が好ましい。有機溶媒を含む場合は、合計でこの範囲であるのが好ましい。
【0067】
水系分散体には、前述の各成分以外に、必要に応じて他の成分を添加することができる。このような他の成分としては、例えば、後述するインク組成物において添加可能な添加剤等が挙げられる。
【0068】
水系分散体は、前述の所定の成分を含むことで、インク組成物の粘度を低く維持することができると同時に、酸化チタンの沈降を良好に抑制することができ、かつ、沈降が生じても再分散を容易に行うことが可能となっている。このような特性は、例えば、後述する実施例の欄に記載の方法により確認することができる。即ち、水系分散体中の酸化チタンの濃度を11重量%とした場合の水系分散体について、(i)その粘度が、20.00mPa・s以下の場合に、インク組成物に適用した場合のインクジェット印刷機での吐出性が確保可能である、(ii)後述する特定の方法で測定し、算出される再分散性(ケーキ回復性)の指標が所定の値(83%)以上の場合に、沈降した酸化チタンの再分散性が良好である、との2つの基準を同時に満足することにより確認することができる。尚、酸化チタンの濃度11重量%は、一般的なインクジェットインクの代表値であり、水系分散体を用いてインク組成物を調製した際の酸化チタンの濃度を採用したものである。水系分散体のままでは酸化チタン等の濃度が高いために粘度が高く、酸化チタンの沈降性及び再分散性を適切に評価することが困難であった。そこで、インク組成物と同程度の濃度として評価することで、水系分散体の評価を適切に行うことができる評価系を採用した。
【0069】
水系分散体の製法は特に限定はなく、例えば、(i)酸化チタン、分散剤、特定のポリアルキレンオキサイド、溶媒、必要に応じて用いる他の成分を混合し、分散機により分散処理する方法、(ii)酸化チタン、分散剤、溶媒を混合し、分散機により分散処理した後、特定のポリアルキレンオキサイド、必要に応じて用いる他の成分を混合し、撹拌機により撹拌処理する方法等が挙げられる。(ii)の場合、溶媒は分散処理の際に全量添加してもよいし、分散処理と撹拌処理とのそれぞれの処理において分けて添加するようにしてもよい。また、溶媒として水以外に水溶性有機溶媒を用いる場合は、添加する溶媒の種類をそれぞれの処理において変化させてもよい。必要に応じて用いる他の成分も、種類、添加量を考慮して、分散処理と撹拌処理とのそれぞれに分けて添加してもよい。分散機は特に限定はなく、例えば、ニーダー等の混練機、ボールミルやサンドミル等のメディア式分散機、超音波分散機、高圧乳化機等が挙げられる。撹拌機は特に限定はなく、公知のものを用いることができる。
【0070】
本発明の実施形態に係る記録用インクジェットインク組成物は、前述の水系分散体を含む。或いは、前述の水系分散体に含まれる各成分を含む、即ち、酸化チタン、分散剤、前述の特定の含有量の範囲の前記式(1)で示される構造単位を有するポリアルキレンオキサイド、水及び水溶性有機溶媒を含む。
【0071】
このように、記録用インクジェットインク組成物にも、前述の水系分散体と同様に、分散剤と所定量の特定のポリアルキレンオキサイドを含有することで、酸化チタンの沈降が抑制され、沈降したとしても再分散が容易であり、また、粘度を低く維持可能なため、インクジェット印刷機での吐出性が良好である。
【0072】
インク組成物に含まれる、酸化チタン、分散剤、前述の特定の含有量の範囲の前記式(1)で示される構造単位を有するポリアルキレンオキサイド及び水は、前述のものを適用可能である。
【0073】
インク組成物に含まれる水溶性有機溶媒は、水と相溶可能な水溶性有機溶媒で、インクジェットインク用として一般的に用いられるものであれば特に限定されない。このような水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの1価アルコール類;ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類;トリエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルトリグリコール)などの多価アルコールエーテル類;アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン類又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等のピロリドン類などが挙げられる。水溶性有機溶媒は、1種用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0074】
水溶性有機溶媒の含有量は、用途等に応じて適宜選択することができるが、インク組成物の総重量に対して、1~40重量%であるのが好ましい。
【0075】
記録用インクジェットインク組成物は、必要に応じて、以下の添加剤を含むことができる。このような添加剤としては、例えば、界面活性剤、pH調整剤、湿潤乾燥防止剤、防腐剤、殺菌剤、防錆剤、保湿剤、有色顔料、有色染料、酸化防止剤、凝集防止剤、表面調整剤(レベリング剤)、消泡剤等が挙げられる。
【0076】
界面活性剤としては、特に限定はなく、インク組成物に一般的に使用されている界面活性剤を使用することができる。界面活性剤は、基材への濡れ性を高めてインク組成物の浸透性を向上させることができる。このような界面活性剤としては、イオン性の観点では、アニオン系、カチオン系、両性、ノニオン系の何れでも良い。また、インクジェット印刷機の吐出応答性をも向上させるなどの観点では、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が好ましい。
【0077】
アニオン系界面活性剤としては、アルキルスルホカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N-アシルアミノ酸及びその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
【0078】
カチオン界面活性剤としては2-ビニルピリジン誘導体、ポリ4-ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
【0079】
両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、その他イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0080】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレングリコール(アルコール)系;等が挙げられる。
【0081】
シリコーン系界面活性剤としては、未変性ポリオルガノシロキサン、エーテル変性ポリオルガノシロキサン、エステル変性ポリオルガノシロキサン、エポキシ変性ポリオルガノシロキサン、アミン変性ポリオルガノシロキサン、カルボキシル変性ポリオルガノシロキサン、フッ素変性ポリオルガノシロキサン、アルキルオキシ変性ポリオルガノシロキサン、メルカプト変性ポリオルガノシロキサン、(メタ)アクリル変性ポリオルガノシロキサン、フェノール変性ポリオルガノシロキサン、フェニル変性ポリオルガノシロキサン、カルビノール変性ポリオルガノシロキサン、アラルキル変性ポリオルガノシロキサンなどが挙げられる。
【0082】
これらのシリコーン系界面活性剤は、合成してもよいし市販品を購入してもよい。市販品としては、例えば、BYK-306、307、333、337、341、345、346、347、348、349、378(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF-351A、352A、353、354L、355A、615A、945、640、642、643、6011、6012、6015、6017、6020、X-22-4515(以上、信越化学株式会社製)等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0083】
フッ素化合物系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を有するものが挙げられる。このような界面活性剤は、例えば、DIC社製のメガファック144D、旭硝子社製のサーフロンS-141、145、サーフロンS-131、132、211等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0084】
以上のような界面活性剤は、1種含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0085】
界面活性剤の含有量は、用途等に応じて適宜選択することができるが、インク組成物中で、着色基材への濡れ性とインク混和性の観点から、インク組成物の総重量に対して、0.1~5重量%であるのが好ましい。
【0086】
pH調整剤としては、特に限定はなく、インク組成物のpHを6~11の範囲に調整できる化合物であれば、特に制限は無い。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の3級アミン類;アンモニア水;塩酸等の無機酸;酢酸、ギ酸等の有機酸等が挙げられる。
【0087】
インク組成物中の酸化チタンの含有量は、インク組成物の総重量に対して、1重量%以上20重量%未満が好ましく、5重量%以上15重量%以下がより好ましい。分散剤及び所定のポリアルキレンオキサイドの含有量は、水系分散体で述べたのと同様に酸化チタンの含有量に基づき決定することができる。インク組成物中の水の含有量は、インク組成物の用途等に応じて適宜決定することができるが、インク組成物の総重量に対して24~97重量%が好ましい。尚、前述の水系分散体を用いてインク組成物を調製する場合は、インク組成物総重量に対する酸化チタンの含有量が1重量%以上20重量%未満となるように、水系分散体が含まれることが好ましい。
【0088】
インク組成物の製法は特に限定はなく、例えば、(i)前述の水系分散体を調製した後、他の成分を添加して、撹拌機に投入し、撹拌する、(ii)酸化チタン、分散剤、水を混合し、分散機により分散処理した後、特定のポリアルキレンオキサイド、水溶性有機溶媒及び必要に応じて用いる任意成分を混合し、撹拌機により撹拌処理する方法等が挙げられる。(ii)の場合、水は分散処理の際に全量添加してもよいし、分散処理と撹拌処理とのそれぞれの処理において、種類及び/又は添加量が異なるように分けて添加してもよい。また、任意成分は、分散処理と撹拌処理とのそれぞれの処理において、種類及び/又は添加量が異なるように分けて添加してもよい。
【0089】
インク組成物は、以上のように、粘度が低く維持されており、酸化チタンの沈降が抑制され、沈降した場合でも再分散が容易なため、インクジェット印刷機の吐出性も良好である。したがって、前述のようなインク組成物は、例えば、インクジェット印刷機、特に、再分散装置を備えたインクジェット印刷機に用いられるインク組成物として好適である。
【実施例0090】
以下、本発明の実施形態を実施例に基づきより詳細に説明する。
【0091】
(製造例1)
定法に従い、モノマー組成比、シクロヘキシルメタクリレート/ブチルアクリレート/アクリル酸=83.2/0.1/16.7(質量比)、酸価123mgKOH/g、重量平均分子量18500の共重合体を作製した。この樹脂に、水酸化ナトリウムとイオン交換水を加えて溶解し、樹脂型分散剤として分散剤A(固形分21.2%)を得た。
【0092】
(製造例2)
定法に従い、モノマー組成比、ベンジルアクリレート/アクリル酸/メタクリル酸=81.7/8.3/10.0(質量比)であり、酸価129mgKOH/g、重量平均分子量9800の共重合体を作製した。この樹脂に、水酸化ナトリウムとイオン交換水を加えて溶解し、樹脂型分散剤として分散剤B(固形分25.2%)を得た。
【0093】
(実施例1)
酸化チタン(石原産業株式会社製、タイペークCR-50)50.0重量部、分散剤(BASF社製、ジョンクリルHPD-96J、固形分34重量%)7.35重量部、水(イオン交換水)42.65重量部、φ0.5mmジルコニアビーズ400重量部をサンドミルに仕込み、1500rpmで2時間分散処理を行った。その後、ジルコニアビーズを除去し、酸化チタン濃度が50重量%の酸化チタン分散液1を得た。得られた酸化チタン分散液1に、ポリアルキレンオキサイド(明成化学工業株式会社、アルコックス(登録商標)CP-A1H、固形分100重量%)を0.05重量部添加し、酸化チタンの濃度が40重量%となるように溶媒としてイオン交換水を添加し、撹拌して、酸化チタン水系分散体を得た。
【0094】
(実施例2~16)
表1に示す配合に従う以外は実施例1と同様にして、酸化チタン分散液1を得て、酸化チタン水系分散体を得た。
【0095】
(比較例1)
実施例1と同様にして、酸化チタン分散液1を得た。ポリアルキレンオキサイドを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、酸化チタン分散液2を得た。
【0096】
(比較例2~10)
表2に示す配合に従う以外は実施例1と同様にして、酸化チタン分散液1を得て、酸化チタン分散液3を得た。
【0097】
(比較例11)
酸化チタン(石原産業株式会社製、タイペークCR-50)50.0重量部、ポリアルキレンオキサイド(明成化学工業株式会社、アルコックス(登録商標)CP-A1H、固形分100重量%)2.5重量部、水(イオン交換水)47.5重量部、φ0.5mmジルコニアビーズ400重量部をサンドミルに仕込み、1500rpmで2時間分散処理を行った。その後、実施例1と同様にしてジルコニアビーズの除去を試みたが、非常に高粘度となっていたため、ジルコニアビーズの分離が不可能であり、酸化チタン分散液は得られなかった。
【0098】
(比較例12~14)
表2に示す配合に従う以外は比較例11と同様に分散処理を行ったが、比較例11同様に、酸化チタン分散液を得ることはできなかった。
【0099】
(比較例15~23)
表2に示す配合に従う以外は比較例1と同様にして、酸化チタン分散液1を得て、酸化チタン分散液2を得た。
【0100】
表1、2に示す、実施例1~16、比較例1~23で用いた各成分は以下のとおりである。
【0101】
(1)酸化チタン
・CR-50:石原産業株式会社製、タイペークCR-50
アルミナによって表面処理された酸化チタン、平均一次粒子径:250nm
・CR-93:石原産業株式会社製、タイペークCR-93
アルミナおよびシリカによって表面処理された酸化チタン、平均一次粒子径:280nm
・CR-50-2:石原産業株式会社製、タイペークCR-50-2
アルミナおよびポリオールによって表面処理された酸化チタン、平均一次粒子径:250nm
・CR-57:石原産業株式会社製、タイペークCR-57
アルミナ、ジルコニアおよびポリオールによって表面処理された酸化チタン、平均一次粒子径:250nm
【0102】
(2)分散剤
<樹脂型>
・HPD-96J:BASF社製、ジョンクリルHPD-96J
スチレン・アクリル酸系樹脂水溶液、アンモニア中和物、固形分:34重量%、重量平均分子量:17000、ガラス転移温度(Tg):102℃、酸価:240mgKOH/g
・分散剤A:製造例1
・分散剤B:製造例2
・BYK-190:ビックケミー社製、DISPERBYK-190
ブロック共重合物、アミン価:0mgKOH/g、酸価:10mgKOH/g、固形分:40重量%
・ポイズ530:花王株式会社製、ポイズ530
ポリアクリル酸ナトリウム水溶液、重量平均分子量:38000、酸価:780mgKOH/g、中和度100%、固形分:40重量%
・BYK-185:ビックケミー社製、DISPERBYK-185
ブロック共重合物、アミン価:17mgKOH/g、酸価:0mgKOH/g、固形分:52重量%
<界面活性剤型>
・デモールN:花王株式会社製、デモールN
β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩、固形分:97重量%
【0103】
(3)ポリアルキレンオキサイド
・CP-A1H:明成化学工業株式会社製、アルコックス(登録商標)CP-A1H
エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド・アリルグリシジルエーテルのランダム共重合体、重量平均分子量:100,000
・CP-B2:明成化学工業株式会社製、アルコックス(登録商標)CP-B2
エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド・フェニルグリシジルエーテルのランダム共重合体、重量平均分子量:100,000
・EP1010N:明成化学工業株式会社製、アルコックス(登録商標)EP1010N
エチレンオキサイド・プロピレンオキサイドのランダム共重合体、重量平均分子量:100,000
・L-6:明成化学工業株式会社製、アルコックス(登録商標)L-6
ポリエチレンオキサイド、重量平均分子量:60,000
・L-8:明成化学工業株式会社製、アルコックス(登録商標)L-8
ポリエチレンオキサイド、重量平均分子量:80,000
・L-11:明成化学工業株式会社製、アルコックス(登録商標)L-11
ポリエチレンオキサイド、重量平均分子量:110,000
【0104】
(評価1)
<粘度>
実施例及び比較例で得られた酸化チタン水系分散体、酸化チタン分散液2、3を用い、酸化チタン濃度が11重量%となるようにイオン交換水で希釈し、希釈した各液について、E型粘度計(東機産業社製、TV-22型粘度計)で粘度を測定した。粘度が20.00mPa・s以下の場合に、実使用上問題ない傾向にあると判断され、粘度が低いほど良好であると判断される。
【0105】
<ケーキ回復性>
実施例及び比較例で得られた酸化チタン水系分散体、酸化チタン分散液2、3を用い、酸化チタン濃度が11重量%となるようにイオン交換水で希釈し、希釈した各液(以下、サンプルと称する。)について、下記手順に従って、ケーキ回復性試験を行った。
1)10.5cm遠心管を含む全体の重量が55gになるようにサンプルを遠心管に添加した。
2)高速冷却遠心機H-201FR(コクサン株式会社製)を用いて、1000rpm、30minの条件で遠心処理を行った。
3)遠心管を、手動で1回/1sのスピードで10回、180度(長軸方向の上下を)ひっくり返す、再分散処理を行った。
4)遠心管の上部から、沈降物を含まない再分散液を採取した。
5)遠心前のサンプルと手順4)の再分散液について、以下のようにして固形分測定した。
遠心前のサンプルと再分散液を重量既知のアルミカップに採取し、重量1を測定した。採取した液の入ったアルミカップを、130℃のエアバスにて90分間加熱した後、室温で30分間放冷し、重量2を測定した。重量1及び重量2からアルミカップの重量を引いた値をそれぞれ加熱前の重量及び加熱後の重量とし、下記式で表される、加熱前後の重量の比率を固形分とした。
(固形分)=(加熱後の重量/加熱前の重量)×100
6)(再分散液の固形分)/(遠心前サンプルの固形分)×100を算出し、ケーキ回復性の指標とした。この算出値が83%以上である場合に、実使用上問題ない傾向にあると判断され、100%に近いほどケーキ回復性が良好であると判断される。
【0106】
実施例及び比較例の配合、評価結果を表1、2に示す。尚、比較例11~14は分散液を得られなかったため、粘度及びケーキ回復性は測定できなかった。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
表1、2に示すように、酸化チタンの濃度を11重量%に希釈した際に、実施例の酸化チタン水系分散体では、粘度が14.90mPa・s以下と粘度が低く維持されており、かつ、ケーキ回復性の指標が83%以上でケーキ回復性が良好であるのに対して、比較例の酸化チタン分散液2、3では、粘度が高いかケーキ回復性の指標が低いことが分かる。したがって、所定の酸化チタン水系分散体は、インク組成物にした場合の吐出性、ケーキ回復性が良好であることが期待でき、インクジェット印刷に好適であることが期待できる。
【0110】
(実施例17)
実施例1と同様にして酸化チタン分散液1を得た。得られた酸化チタン分散液1を22重量部、ポリアルキレンオキサイド(明成化学工業株式会社、アルコックス(登録商標)CP-A1H、固形分100重量%)を0.33重量部(酸化チタン100重量部に対して3重量部)、シリコーン系界面活性剤(ビックケミー・ジャパン社製、BYK-348、ポリエーテル変性シロキサン、固形分100重量%)を0.30重量部、水溶性有機溶媒として、1,2-ヘキサンジオールを5.00重量部、プロピレングリコールを10.00重量部、グリセリンを2.00重量部、ブチルトリグリコールを2.00重量部、水としてイオン交換水を58.37重量部の割合で配合し、撹拌して、インク組成物を得た。
【0111】
(評価2)
<粘度>
インク組成物を希釈せずに用いた以外は、「評価1」における「粘度」の評価と同様にして、実施例17で得られたインク組成物の粘度を測定した。その結果、粘度は4.1mPa・sであった。
【0112】
<表面張力>
表面張力計(協和界面科学社製、自動表面張力計DY-300)を用いWilhelmy法にて、実施例17のインク組成物の表面張力を測定した。その結果、表面張力は、25.6mN/mであり、一般に実使用上問題ないといえる25.00~35.00mN/mの範囲内であることを確認した。
【0113】
<インクジェット印刷>
解像度600dpiのインクジェットプリンタを用いて、黒色の綿布(クラボウ製、H.444)に対してベタ印刷を行った。その結果、カスレやヨレを生じることなくインクジェット印刷が可能であることを確認した。
【0114】
このように、実施例17のインク組成物は分散剤と特定の含有量の範囲の特定のポリアルキレンオキサイドとを含むことで、インク組成物の粘度を低く維持することが可能で、インクジェット印刷機での印刷が可能であることが分かる。また、実施例1~16の水系分散体と同様に、実施例17のインク組成物もケーキ回復性を有することが期待できる。