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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132779
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】改札機および改札システム
(51)【国際特許分類】
   G07B 15/00 20110101AFI20230914BHJP
【FI】
G07B15/00 G
G07B15/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038303
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 昌人
【テーマコード(参考)】
3E127
【Fターム(参考)】
3E127AA03
3E127BA25
3E127CA02
3E127CA05
3E127CA39
3E127DA02
3E127DA04
3E127DA05
3E127DA16
3E127DA17
3E127DA20
3E127DA28
3E127DA29
3E127DA30
3E127DA33
3E127EA02
3E127FA03
3E127FA09
3E127FA42
3E127FA43
3E127FA48
3E127FA50
3E127FA53
3E127FA70
(57)【要約】
【課題】 有料列車の不正利用の防止に寄与できる改札機および改札システムを提供する。
【解決手段】 実施形態によれば、改札機は、券処理部とプロセッサとを有する。券処理部は、利用者が提示する券媒体から情報を読み取る。プロセッサは、当該駅に停車する有料列車に関する有料列車データに基づいて特定される情報が有料列車に対応する料金券の判定実施条件を満たす場合、券処理部が当該駅を乗車区間に含む乗車券の情報と有料列車に対応する料金券の情報とを読み取ったか否かにより利用者の通行を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅の改札口に設置される改札機において、
利用者が提示する券媒体から情報を読み取る券処理部と、
当該駅に停車する有料列車に関する有料列車データに基づいて特定される情報が前記有料列車に対応する料金券の判定実施条件を満たす場合、前記券処理部が当該駅を乗車区間に含む乗車券の情報と前記有料列車に対応する料金券の情報とを読み取ったか否かにより利用者の通行を制御するプロセッサと、
を有する改札機。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記有料列車データから前記有料列車の当該駅より手前の停車駅を特定し、前記券処理部により利用者が提示する券媒体から読み取った乗車券の乗車区間が当該駅より手前の前記有料列車の停車駅を含む場合に前記判定実施条件を満たすとする、
請求項1に記載の改札機。
【請求項3】
さらに、現在時刻を計時するクロックを有し、
前記プロセッサは、前記有料列車データにより前記有料列車の当該駅の到着時刻を特定し、前記クロックが計時する現在時刻と当該駅の到着時刻との時間差が所定の設定時間内である場合に前記判定実施条件を満たすとする、
請求項1又は2の何れか1項に記載の改札機。
【請求項4】
さらに、上位装置と通信する通信部を有し、
前記プロセッサは、前記通信部により通信する前記上位装置から前記有料列車データを取得する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の改札機。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記上位装置から制御指示に応じて動作モードを料金券の判定モードに設定し、前記料金券の判定モードである場合に前記判定実施条件に応じた前記料金券の判定を実行する、
請求項4に記載の改札機。
【請求項6】
駅の改札口に設置される改札機と前記改札機に接続する監視盤とを有する改札システムにおいて、
前記改札機は、
前記監視盤と通信する第1の通信部と、
利用者が提示する券媒体から情報を読み取る券処理部と、
前記監視盤から取得する当該駅に停車する有料列車に関する有料列車データによって特定される情報が前記有料列車に対応する料金券の判定実施条件を満たす場合、前記券処理部が当該駅を乗車区間に含む乗車券の情報と前記有料列車に対応する料金券の情報とを読み取ったか否かにより利用者の通行を制御する第1のプロセッサと、を有し、
前記監視盤は、
前記改札機と通信する第2の通信部と、
前記改札機が設置される駅に停車する有料列車に関する有料列車データを記憶する記憶部と、
前記第2の通信部により前記改札機へ前記有料列車データを送信する第2のプロセッサと、を有する、
改札システム。
【請求項7】
前記改札機において、
前記第1のプロセッサは、前記有料列車データから前記有料列車の当該駅より手前の停車駅を特定し、前記券処理部により利用者が提示する券媒体から読み取った乗車券の乗車区間が当該駅より手前の前記有料列車の停車駅を含む場合に前記判定実施条件を満たすとする、
請求項6に記載の改札システム。
【請求項8】
前記改札機において、
さらに、現在時刻を計時するクロックを有し、
前記第1のプロセッサは、前記有料列車データにより前記有料列車の当該駅の到着時刻を特定し、前記クロックが計時する現在時刻と当該駅の到着時刻との時間差が所定の設定時間内である場合に前記判定実施条件を満たすとする、
請求項6又は7の何れか1項に記載の改札システム。
【請求項9】
前記監視盤において、
さらに、操作盤を有し、
前記第2のプロセッサは、前記操作盤により前記改札機に対する料金券の判定モードの実行が入力された場合に前記改札機に対して料金券の判定モードを指示する、
前記改札機において、
前記第1のプロセッサは、前記監視盤から料金券の判定モードが指示された場合に動作モードを前記料金券の判定モードに設定し、前記料金券の判定モードである場合に前記判定実施条件に応じて前記料金券の判定を実行する、
請求項6乃至8の何れか1項に記載の改札システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、改札機および改札システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道の駅等に設置した改札機は、出場処理において利用者が所持する乗車券で出場の可否を判定し、出場可とした利用者が提示した乗車券を回収する。ただし、列車等の交通機関では、乗車券以外の券が必要となることもある。例えば、特急列車などの有料列車は、乗車券の他に特急券や座席指定券などの券(以下料金券)が必要となる。
【0003】
乗車券のみで乗車可能な列車と乗車券に加えて料金券が必要な列車とが混在する駅や改札口では、改札機が利用者ごとに料金券の要否を判断するのが容易でない。このため、従来の改札機は、利用者が乗車券以外の料金券を出場の可否判定に使用していないことが多い。しかしながら、有料列車の不正乗車を防止するためには、改札機が乗車券だけでなく料金券を含めた出場判定を実施することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-15487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、有料列車の不正利用の防止に寄与できる改札機および改札システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、改札機は、券処理部とプロセッサとを有する。券処理部は、利用者が提示する券媒体から情報を読み取る。プロセッサは、当該駅に停車する有料列車に関する有料列車データに基づいて特定される情報が有料列車に対応する料金券の判定実施条件を満たす場合、券処理部が当該駅を乗車区間に含む乗車券の情報と有料列車に対応する料金券の情報とを読み取ったか否かにより利用者の通行を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る改札機を含む改札システム全体の構成例を概略的に示す図である。
図2図2は、実施形態に係る改札システムにおける監視盤の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る改札機の構成例を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態に係る改札システムにおける監視盤が記憶する有料列車データの例を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る改札機が料金券の判定対象とする乗車券の区間の例を説明するための図である。
図6図6は、実施形態に係る改札機における出場処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、実施の形態に係る改札システム1の全体構成を概略的に示す図である。
改札システム1は、各駅の改札口に設置される改札機13を接続するシステムである。図1に示す構成例において、改札システム1は、サーバ11、監視盤12、および、改札機13などを有する。例えば、サーバ11は、改札口又は駅などの監視対象ごとに設置される監視盤12に接続される。各駅の監視盤12には、各駅の改札口に設置される複数の改札機13が接続される。
【0009】
サーバ11は、ネットワークを介して各監視盤12に接続される。サーバ11は、監視盤12に対して各改札機13へ提供すべき情報を供給する。本実施形態において、サーバ11は、料金券が必要となる有料列車に関する有料列車データを管理し、各駅の監視盤12に対して有料列車データを供給する。
【0010】
監視盤12は、サーバ11に接続されると共に複数の改札機13に接続される。監視盤12は、例えば、監視対象とする改札口に設置された改札機13に接続される。監視盤12は、接続される各改札機13の動作状態を監視し、各改札機13に対して遠隔で動作指示を供給する。また、監視盤12は、サーバ11から供給される情報を各改札機13へ配信する機能を有する。
【0011】
各改札機13は、各駅の改札口に設置され、改札口における改札処理(入場処理および出場処理)を実行する。サーバ11、監視盤12および改札機13は、改札口における改札処理を実現する改札システムを構成する。改札機13は、監視盤12からの情報を用いて改札処理を実行する。
【0012】
本実施形態において、改札機13は、利用者が所持する券媒体に記憶する情報によって改札処理を実行するものとする。券媒体は、列車の乗車に必要な乗車券および乗車券に加えて有料列車を利用するのに必要な料金券などである。乗車券および料金券として利用する記憶媒体は、改札機13が読み取り可能な乗車券情報又は料金券情報などの改札処理に必要な情報を記録するものであれば良い。
【0013】
例えば、乗車券および料金券として利用される記憶媒体は、磁気記録部に情報が記録される磁気式の記録媒体(磁気券)、2次元コードなどのコード化した情報を記録(印刷又は表示)する記録媒体(コード券)、非接触通信により情報の送受信を行う非接触式ICカード、非接触ICカードと同様な機能を有する携帯電話機などのモバイル端末、或は、2次元コードなどのコード化した情報を表示するモバイル端末などがある。
【0014】
以下の説明では、主として、乗車券および料金券として利用する券媒体が磁気券であることを想定して説明するものとする。磁気券としての乗車券および料金券は、駅などに設置される券売機が発券する運用が想定される。
【0015】
次に、実施形態に係る改札システム1における監視盤(上位装置)12の構成について説明する。
図2は、実施形態に係る監視盤12の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、監視盤12は、プロセッサ21、ROM22、RAM23、記憶部24、通信部25、および、操作盤26を備える。
プロセッサ21は、監視盤12における各種の動作を制御する。プロセッサ21は、プログラムを実行することにより各種の処理を実行する。プロセッサ21は、例えば、CPUである。プロセッサ21は、RAM23を用いてROM22又は記憶部24が記憶するプログラムを実行することにより各種の処理を実行する。
【0016】
ROM22は、予めプログラムおよび制御データなどが記憶されている不揮発性のメモリである。例えば、ROM22は、プログラムメモリとして機能する。RAM23は、ワーキングメモリとして機能する揮発性のメモリである。RAM23は、プロセッサ21が処理中のデータなどを一時保管するバッファメモリとして機能する。また、RAM23は、通信部25が送受信するデータを一時的に記憶する。
【0017】
記憶部24は、各種のデータを記憶する。記憶部24は、例えば、HDD(ハードディスクドライブ)あるいはSSD(ソリッドステートドライブ)などの書き換え可能な不揮発性のメモリで構成する。
【0018】
通信部25は、改札システム1を構成する各機器と通信するためのインターフェースである。図2に示す構成例において、通信部25は、各改札機13と通信するためのインターフェース(第2の通信部)、および、サーバ11と通信するための通信インターフェースを含む。
【0019】
操作盤26は、係員に情報を報知したり、係員からの動作指示を受け付けたりするための機器である。例えば、操作盤26は、タッチパネル内蔵の表示装置によって構成される。操作盤26は、各改札機13の動作状態を示す情報を表示し、係員が入力する動作指示を受け付ける。
【0020】
例えば、監視盤12において、プロセッサ21は、各改札機13の動作状態を監視し、各改札機13の動作状態を操作盤26に表示する。また、プロセッサ21は、係員による操作盤26への指示入力に応じて指定された改札機13へ動作指示を供給する。これにより、監視盤12のプロセッサ21は、各改札機13の監視および制御が可能となる。また、プロセッサ21は、各改札機13に改札処理に必要な情報を供給したり、改札機からの情報をサーバ11へ送信したりする機能を有する。本実施形態において、プロセッサ21は、記憶部24に記憶する有料列車に関する情報を示す有料列車データを各改札機13へ供給する。また、監視盤12のプロセッサ21は、サーバ11から有料列車データを取得し、取得した有料列車データを記憶部24に保存するにしても良い。
【0021】
次に、実施形態に係る改札機13の構成について説明する。
図3は、実施形態に係る改札機13の構成例を示すブロック図である。
図3に示す構成例において、改札機13は、プロセッサ31、ROM32、RAM33、記憶部34、通信部35、券処理部36、表示部37、ドア制御部38、および、クロック39などを有する。
【0022】
プロセッサ31、ROM32およびRAM33は、改札機13全体を制御する制御部として機能する。プロセッサ31は、例えば、CPUなどの演算部である。プロセッサ31は、ROM32又は記憶部34が記憶するプログラムを実行することにより種々の処理機能を実現する。
【0023】
ROM32は、不揮発性のメモリであり、プログラムメモリとして機能する。ROM32は、プロセッサ31が実行するプログラムや制御データなどを記憶する。RAM33は、一時的にデータを保持するワーキングメモリとして機能する。RAM33は、プログラムをロードしたり、プロセッサ31が処理中のデータを保持したりする。RAM33は、通信データなどを一時的に保持するバッファメモリとしても機能する。
【0024】
記憶部34は、データを記憶するメモリである。記憶部34は、HDD或はSSDなどの書き換え可能な不揮発性メモリを含む。記憶部34は、改札処理に用いる運賃情報などの情報を記憶する。また、記憶部34は、監視盤12から有料列車データを受信すると、受信した有料列車データを記憶する。また、記憶部34は、プロセッサ31が実行するプログラムを記憶しても良い。
【0025】
通信部35は、監視盤12と通信するための通信インターフェース(第1の通信部)である。通信部35は、監視盤12と有線で通信するインターフェースであっても良いし、無線で通信するインターフェースであっても良い。通信部35は、監視盤12へ動作状態を示す情報を送信したり、監視盤12からの制御指示を受信したり、監視盤12から有料列車データを取得したりする。
【0026】
券処理部36は、利用者が所持する券媒体を処理するものである。券処理部36は、券媒体から情報を読み取る媒体処理部として機能する。券処理部36は、利用者が所持する券媒体から情報を読取れるものであれば良い。例えば、券媒体が磁気券であれば、券処理部36は、利用者が投入する券媒体を受け入れて、券媒体に記録されている情報を読み取る。また、券処理部36は、出場処理において、通行(出場)を許可した利用者が投入した乗車券や料金券を回収する機能を備える。なお、券媒体がICカードやモバイル端末であれば、券処理部36は、ICカードやモバイル端末とのデータ通信を行う通信インターフェースにより構成される。
【0027】
表示部37は、改札口を通過する利用者に対する案内を表示する表示器である。表示部37は、報知器の一例である。表示部37は、例えば、改札口を通過する利用者が視認しやすいように、改札機13本体の中央付近に設置される。表示部37に表示される案内は、プロセッサ31により制御される。すなわち、プロセッサ31は、処理状況に応じて表示部37の表示制御を行う。
【0028】
ドア制御部38は、利用者の通行を制御するものである。ドア制御部38は、例えば、当該改札機13が改札口に形成する通路の通行を遮断するためのドアを制御する。ドア制御部38は、プロセッサ31からの指示に応じてドアを開閉するドア開閉機構を含む。プロセッサ31は、処理状況に応じてドアの開閉制御(通行制御)を行う。
クロック39は、現在の日時を計時する。プロセッサ31は、クロック39が計時する現在の日時を取得する。
【0029】
次に、実施形態に係る改札システム1における改札機13が実現する処理について概略的に説明する。
改札機13は、乗車券の有効性で利用者の出場の可否を制御するだけでなく、料金券の有効性に基づいて出場の可否を制御する。改札機13は、当該駅に停車する有料列車に対応する料金券の判定を実施する動作モード(料金券の判定モード)を備える。料金券の判定モードがオン(有効)である場合、改札機13は、乗車券と料金券とに基づく出場判定を実施する。
【0030】
例えば、改札機13は、監視盤12からの制御指示に応じて動作モードとして料金券の判定モードをオン又はオフに設定する。駅の係員は、改札機13の料金券の判定をオンする場合、監視盤12の操作盤26において料金券の判定モードをオンする指示を入力する。操作盤26に料金券の判定モードをオンする旨の指示が入力されると、監視盤12のプロセッサ31は、各改札機13に対して料金券の判定モードをオンする制御指示を送信する。改札機13のプロセッサ31は、監視盤12からの制御指示に応じて料金券の判定モードをオンとする。
【0031】
料金券の判定モードがオンである場合、改札機13は、監視盤12から取得する当該駅で停車する有料列車の有料列車データに基づいて有料列車に対応する料金券の有無(料金券の有効性)の判定を実行する条件(判定実施条件)を満たすか否か判断する。改札機13は、料金券の判定を実行する判定実施条件を満たすか否かを有料列車データなどに基づいて判定するように設定する。
【0032】
例えば、改札機13は、現在時刻(判定時刻)と有料列車の到着時刻とに基づいて料金券の有無の判定を実行するか否か判断する。また、改札機13は、利用者が提示する乗車券の区間と有料列車の停車駅とに基づいて有料列車に対応する料金券の有効性の判定を実行するか否かも判断する。本実施形態において、改札機13は、当該駅における有料列車の到着時刻と判定時刻との時間差が料金券の判定対象とする設定時間内であり、かつ、利用者が提示する乗車券の区間が料金券の判定対象とする区間である場合に利用者が提示する料金券に応じた通行制御を実施するものとして説明する。
【0033】
図4は、監視盤12が管理する有料列車に関する情報を示す有料列車データの構成例を示す図である。
監視盤12は、監視対象とする改札機13が設置されている駅に停車する有料列車に関する有料列車データを保持する。図4に示す例において、有料列車データは、列車基本情報、到着時刻および停車駅コードなどの情報を有する。列車基本情報は、列車名や列車番号などの情報である。列車基本情報は、有料列車を識別する情報を含む。列車基本情報は、例えば、監視盤12に有料列車を表示するために使用される。
【0034】
到着時刻は、改札機13の設置駅(判定駅)に有料列車が到着する時刻を示す情報である。到着時刻は、実際に有料列車が判定駅に到着した時刻であっても良いし、時刻表で示される有料列車の到着予定時刻であっても良い。前者の場合、監視盤12は、例えば、サーバ11を経由して列車の運行管理システムから実際に駅に有料列車が到着した時刻を到着時刻として取得し、取得した到着時刻に応じて記憶部24に記憶する有料列車データの到着時刻を更新するようにしても良い。
【0035】
停車駅情報は、有料列車の停車駅を示す情報である。停車駅情報は、改札機13が設置されている駅(判定駅)から見て有料列車の1つ手前の停車駅を示す情報を含むものとする。停車駅情報は、例えば、所定の規格に準じて駅を示す駅コードで停車駅を示す情報(停車駅コード)であっても良い。
【0036】
図5は、実施形態に係る改札機13が料金券の判定対象とする乗車券の区間の例を説明するための模式図である。
図5では、ある有料列車の停車駅(b駅、d駅)と通過駅(a駅、c駅)とに対応づけて3種類の乗車券(A,B,C)の区間を図示した例である。図5に示す例において、乗車券A、B、Cは、着駅が有料列車の停車駅であるd駅である。d駅を判定駅(出場駅)とすると、d駅に設置した改札機13は、乗車券Aを提示した利用者を料金券の判定対象外とし、乗車券BおよびCを提示した利用者を料金券の判定対象とする。
【0037】
乗車券Aは、乗車券の区間内に判定駅以外の有料列車の停車駅を含まない。乗車券Aの発駅であるc駅は、有料列車の通過駅であり、c駅からd駅まの間には有料列車の停車駅が存在しない。つまり、乗車券Aを所持する利用者は、有料列車の通過駅であるc駅で有用列車でない列車に乗車してd駅に移動したものと考えられるため、有料列車に乗車していないと考えられる。このため、d駅に設置した改札機13は、乗車券Aを提示した利用者を料金券の判定対象外とする。
【0038】
これに対して、乗車券BおよびCは、乗車券の区間に判定駅以外の有料列車の停車駅を含む。乗車券Bの発駅であるb駅は、有料列車の停車駅である。また、乗車券Cの発駅であるa駅は、有料列車の通過駅であるが、a駅からd駅まの間には有料列車の停車駅であるb駅が存在する。つまり、乗車券B又はCを所持する利用者は、有料列車の停車駅であるb駅で有料列車に乗車した可能性があると考えられる。このため、d駅に設置した改札機13は、乗車区間内に判定駅(d駅)以外の有料列車の停車駅が存在する乗車券B又はCを提示した利用者を料金券の判定対象とする。
【0039】
次に、実施形態に係る改札機13における改札処理(出場処理)について説明する。
図6は、実施形態に係る改札機13における出場処理を説明するためのフローチャートである。
図6に示す出場処理では、改札機13が料金券の判定モードであるものとする。改札機13のプロセッサ31は、駅構内からの出場方向へ通行する利用者を検知すると、当該利用者に対する出場処理を開始する。
【0040】
改札機13が形成する通路を出場方向へ通行(出場)しようとする利用者は、自身が所持する券媒体を券処理部36に提示する。ここで、有料列車に乗車した利用者は、乗車券と共に有料列車を利用するために必要であった料金券を券処理部36に提示する。乗車券と料金券とが券売機で購入した磁気券である場合、利用者は、乗車券と料金券とを券処理部36における券投入口に投入する。
【0041】
利用者に対する出場処理を開始すると、プロセッサ31は、券処理部36を用いて当該利用者が提示する券媒体に記録されている情報を読み取る。券処理部36は、利用者が複数の券媒体(例えば、乗車券と料金券)を提示した場合、提示された全ての券媒体から情報を読み取る。
【0042】
利用者が提示した券媒体から情報を読み取ると、プロセッサ31は、読み取った情報から乗車券としての情報(乗車券情報)を抽出し、その乗車券情報に基づいて乗車券の有効性を判定する判定処理(乗車券判定)を実行する(ST11)。プロセッサ31は、乗車判定として、当該駅(又は改札口)が出場駅として有効となる乗車券が利用者の提示する券媒体に存在するか否かを判定する処理を実行する。
【0043】
利用者が提示した券媒体に当該駅での出場が許可される有効な乗車券が存在しない場合(ST12、NO)、プロセッサ31は、当該利用者の通行(出場)を不可とする(ST20)。この場合、プロセッサは、有効な乗車券の提示がないため通行不可とする旨の案内を表示部37に表示して、ドア制御部38によりドアを閉鎖することにより当該利用者の出場を阻止する。
【0044】
利用者が提示した券媒体に当該駅での出場が許可される有効な乗車券が存在する場合(ST12、YES)、プロセッサ31は、有料列車を利用するための料金券の判定を実行するか否かを判断する。プロセッサ31は、監視盤12から取得する有料列車データなどに基づいて料金券の判定実施条件を満たすか否かにより料金券の判定を実行するか否かを判断する。
【0045】
すなわち、利用者が当該駅での出場が許可される乗車券が提示した場合、プロセッサ31は、当該駅に停車する有料列車の到着時刻と判定時刻(現在時刻)との差を算出する(ST13)。プロセッサ31は、監視盤12から当該駅で停車する有料列車に関する有料列車データを取得する。プロセッサ31は、有料列車データに基づいて有料列車の到着時刻を特定する。到着時刻を特定すると、プロセッサ31は、クロック39が計時する現在の時刻(判定時刻)と到着時刻との時間差を算出する。
【0046】
なお、プロセッサ31は、監視盤12から予め取得した有料列車データを記憶部24に記憶しておくようにしても良い。この場合、プロセッサ31は、記憶部24に記憶した有料列車データを参照して有料列車の到着時刻を特定すれば良い。また、プロセッサ31は、出場処理を実行するごとに監視盤12から有料列車データを取得するようにしても良い。この場合、プロセッサ31は、監視盤12に有料列車データを要求し、監視盤12から取得する有料列車データから到着時刻を特定すれば良い。また、プロセッサ31は、監視盤12に有料列車の到着時刻を要求し、監視盤12から有料列車の到着時刻を取得するようにしても良い。
【0047】
有料列車の到着時刻と判定時刻との時間差を算出すると、プロセッサ31は、算出した時間差が料金券の判定の対象となる設定時間内であるか否かを判定する(ST14)。つまり、プロセッサ31は、判定時刻と有料列車の到着時刻との時間差が設定時間内であるか否かにより当該有料列車に対する料金券の判定を実施するか否かを判定する。例えば、時間差に対する設定時間(料金券の対象とする設定時間)を20分とすれば、プロセッサ31は、有料列車が到着してから20分が経過するまでは料金券の判定を有効とする。
【0048】
なお、改札機13は、有効列車の到着時刻に応じた料金券の判定を実施する時間帯の設定を行わないようにしても良い。例えば、有料列車の到着時刻を基準した料金券の判定を有効とする時間を設定しない場合(料金券の判定を実施する時間帯を設定しない場合)、プロセッサ31は、設定時間を設定なし(又は無限時間)とすることにより、有料列車の到着時刻と判定時刻との時間差によらず、料金券の判定を実施するようにしても良い。
【0049】
到着時刻と判定時刻との時間差が設定時間内でない場合(ST14、NO)、プロセッサ31は、料金券の判定を実施する必要がないと判断し、当該利用者の通行を許可する(ST19)。利用者の通行を許可する場合、プロセッサ31は、利用者が投入した乗車券を回収し、ドア制御部38によりドアを開放する共に通行許可の案内を表示部37に表示する。
【0050】
到着時刻と判定時刻との時間差が設定時間内である場合(ST14、YES)、プロセッサ31は、当該駅(判定駅)に停車する有料列車の停車駅を特定する(ST15)。ここで、プロセッサ31は、到着時刻と判定時刻との時間差が設定時間内となる有料列車が当該駅の1つ手前で停車する停車駅を特定するものとする。プロセッサ31は、監視盤12から当該駅で停車する有料列車に関する有料列車データを取得し、取得した有料列車データに基づいて有料列車が当該駅の1つ手前で停車する停車駅を特定する。
【0051】
プロセッサ31は、当該駅に停車する有料列車が1つ手前で停車した停車駅を特定すると、乗車券の発駅(乗車券情報が示す発駅)が有料列車の1つの手前の停車駅以上に遠い駅であるか否かを判定する(ST16)。例えば、図5に示す有料列車の例であれば、プロセッサ31は、乗車券の発駅が判定駅であるd駅に対してb駅(有料列車の1つ手前の停車駅)以上に遠い駅であるか否かを判定する。
【0052】
乗車券の発駅が有料列車の1つの手前の停車駅よりも近い駅である(ST16、NO)、プロセッサ31は、料金券の判定を実施する必要がないと判断し、当該利用者の通行を許可する(ST19)。例えば、図5に示す有料列車の例であれば、プロセッサ31は、利用者が乗車券Aを提示した場合、乗車券Aの発駅が判定駅であるd駅に対してb駅(有料列車の1つ手前の停車駅)よりも手前のc駅であるため、料金券の判定を実施する必要がないと判断する。
【0053】
乗車券の発駅が有料列車の1つの手前の停車駅以上に遠い駅である(ST16、YES)、プロセッサ31は、料金券の判定を実施する(ST17)。例えば、利用者が図5に示す乗車券Bを提示した場合、プロセッサ31は、乗車券Bの発駅が判定駅であるd駅に対して有料列車の1つ手前の停車駅であるb駅であるため、料金券の判定を実施すると判断する。また、利用者が図5に示す乗車券Cを提示した場合、プロセッサ31は、乗車券Bの発駅が判定駅であるd駅に対してb駅以上に遠いa駅であるため、料金券の判定を実施すると判断する。
【0054】
料金券の判定を実施する場合、プロセッサ31は、券処理部36により利用者が提示した券媒体から読み取った情報において料金券としての情報(料金券情報)を抽出し、その料金券情報に基づいて当該駅に停車する有料列車の乗車に必要な料金券が利用者が提示した券媒体に存在するか否かを判定する処理を実行する。
【0055】
なお、利用者が乗車券と共に料金券を提示していない場合、プロセッサ31は、料金券を追加で提示する旨の案内を表示部37に表示し、利用者による料金券の提示を待つようにしても良い。例えば、プロセッサ31は、料金券の提示を案内する共に、券処理部36により利用者が提示する券媒体の読取を所定時間受け付けるようにすれば良い。この場合、プロセッサ31は、券処理部36により利用者が提示する券媒体から読み取る情報に基づいて有効な料金券が提示されたか否かを判断する。
【0056】
利用者が有効な料金券を提示できない場合(ST18、NO)、プロセッサ31は、当該利用者の通行を不可とする(ST20)。この場合、プロセッサ31は、ドア制御部38によりドアを閉鎖する共に、有効な料金券が確認できないため通行を不可とする旨の案内を表示部37に表示するようにしても良い。
【0057】
利用者が有効な料金券を提示した場合(ST18、YES)、プロセッサ31は、当該利用者の通行を許可する(ST19)。この場合、プロセッサ31は、ドア制御部38によりドアを開放する共に通行許可の案内を表示部37に表示する。ここで、利用者が磁気券としての乗車券と料金券とを投入した場合、プロセッサ31は、利用者が投入した乗車券と料金券とを券処理部36で回収するようにしても良い。
【0058】
以上のような実施形態によれば、改札機は、料金券の判定実施条件を満たす場合に乗車券だけでなく料金券の判定を実行する。これにより、改札機は、有料列車を利用したにもかかわらず、料金券を所持していない利用者との通行を不可することができる。この結果として、改札機は、乗車券だけでなく料金券についても有効性を確認することができ、不正な有料列車の利用を抑止できる。
【0059】
また、実施形態に係る改札機は、有料列車データから有料列車の停車駅を特定し、利用者が提示した乗車券の有効区間に当該駅よりも手前の有料列車の停車駅が含まれる場合に料金券の判定を実行する。これにより、改札機は、乗車券の有効区間から有料列車の可能性の有無を判断でき、有料列車を使用している可能性がない場合に料金券の判定を実施せず、有料列車を使用している可能性がある場合に料金券の判定を実施するようにでき、乗車券で乗車できる列車と有料列車とが混在する駅であっても有料列車の到着に合わせて料金券の判定を実行するようにできる。
【0060】
また、実施形態に係る改札機は、有料列車データが示す到着時刻と現在時刻との時間差が設定時間内であれば料金券の判定を実行する。これにより、改札機は、有料列車の到着がない時間帯には料金券の判定を実施しないようにでき、乗車券で乗車できる列車と有料列車とが混在する駅であっても有料列車の到着に合わせて料金券の判定を実行するようにできる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1…改札システム、11…サーバ、12…監視盤(上位装置)、13…改札機、21…プロセッサ、24…記憶部、25…通信部、26…操作盤、31…プロセッサ、34…記憶部、35…通信部、36…券処理部、37…表示部、38…ドア制御部、39…クロック。
図1
図2
図3
図4
図5
図6