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特開2023-132895光リピータシステム、光リピータ装置、マスタユニット、および同期制御方法
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  • 特開-光リピータシステム、光リピータ装置、マスタユニット、および同期制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132895
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】光リピータシステム、光リピータ装置、マスタユニット、および同期制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 56/00 20090101AFI20230914BHJP
   H04W 72/0457 20230101ALI20230914BHJP
   H04W 72/12 20230101ALI20230914BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20230914BHJP
   H04L 7/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
H04W56/00 110
H04W72/04 111
H04W72/12
H04L27/26 100
H04L7/00 410
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038471
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】土橋 恭介
(72)【発明者】
【氏名】福井 弘晃
【テーマコード(参考)】
5K047
5K067
【Fターム(参考)】
5K047AA05
5K047BB02
5K047HH17
5K067DD57
5K067EE10
(57)【要約】
【課題】異なる光リピータ装置が関わるキャリアアグリゲーションを可能とし、可用性をさらに高めること。
【解決手段】実施形態によれば、マスタユニットの各々は、予め自らに割り当てられた重みを記憶する記憶部と、タイミング検出部、情報共有部、決定部、および、同期制御部とを備える。タイミング検出部は、配下の基地局のキャリア帯域ごとのUL/DL切替タイミングを検出する。情報共有部は、他のマスタユニットと通信して、重みと、検出したUL/DL切替タイミングのうち最も遅いUL/DL切替タイミングとを少なくとも含む情報を他のマスタユニットと共有する。決定部は、共有した情報に基づいて自らのUL/DL切替タイミングを自立的に決定する。同期制御部は、決定されたUL/DL切替タイミングに自らのUL/DL切替タイミングを設定する。
【選択図】 図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアアグリゲーションの対象となるキャリア帯域を割り当てられた基地局と、前記キャリア帯域のアップリンク/ダウンリンク(UL/DL)信号を送受可能なアンテナを備えるリモートユニットとに接続可能な複数のマスタユニットを具備する光リピータシステムであって、
前記マスタユニットの各々は、
予め自らに割り当てられた重みを記憶する記憶部と、
配下の基地局のキャリア帯域ごとのUL/DL切替タイミングを検出するタイミング検出部と、
他のマスタユニットと通信して、前記重みと、前記検出したUL/DL切替タイミングのうち最も遅いUL/DL切替タイミングとを少なくとも含む情報を前記他のマスタユニットと共有する情報共有部と、
前記共有した情報に基づいて自らのUL/DL切替タイミングを自立的に決定する決定部と、
前記決定されたUL/DL切替タイミングに自らのUL/DL切替タイミングを設定する同期制御部とを備える、光リピータシステム。
【請求項2】
前記決定部は、
前記共有されたUL/DL切替タイミングが規定の範囲内に収まるマスタユニットを要素とする集合ごとに、要素のマスタユニットに割り当てられた重みの和を計算し、
前記重みの和に基づいて、自らのUL/DL切替タイミングを決定する、請求項1に記載の光リピータシステム。
【請求項3】
前記決定部は、
前記重みの和が同じで互いに素である集合のうち、重みが最大のマスタユニットが属する集合に属さないマスタユニットのダウンリンク信号の停波を決定し、
前記同期制御部は、自らのダウンリンク信号の停波が決定された場合に、当該キャリア帯域のダウンリンク信号を停波する、請求項2に記載の光リピータシステム。
【請求項4】
前記マスタユニットに割り当てられる重みは、当該マスタユニットにおけるリモートユニットの接続台数である、請求項1に記載の光リピータシステム。
【請求項5】
前記マスタユニットに割り当てられる重みは、当該マスタユニットに接続された基地局に割り当てられたキャリア帯域に対応する、請求項1に記載の光リピータシステム。
【請求項6】
前記マスタユニットは、
配下のリモートユニットごとの伝送遅延時間を検出する遅延検出部をさらに具備し、
前記情報共有部は、さらに、前記伝送遅延時間を前記他のマスタユニットと共有し、
前記同期制御部は、前記共有した伝送遅延時間に基づいて前記配下のリモートユニットのUL/DL切替タイミングを設定する、請求項1乃至5の何れか1項に記載の光リピータシステム。
【請求項7】
キャリアアグリゲーションの対象となるキャリア帯域を割り当てられた基地局に接続可能な基地局接続部と、
前記キャリア帯域のアップリンク/ダウンリンク(UL/DL)信号を送受可能なアンテナを備えるリモートユニットと、
予め自らに割り当てられた重みを記憶する記憶部と、
配下の基地局のキャリア帯域ごとのUL/DL切替タイミングを検出するタイミング検出部と、
他のマスタユニットと通信して、前記重みと、前記検出したUL/DL切替タイミングのうち最も遅いUL/DL切替タイミングとを少なくとも含む情報を前記他のマスタユニットと共有する情報共有部と、
前記共有した情報に基づいて自らのUL/DL切替タイミングを自立的に決定する決定部と、
前記決定されたUL/DL切替タイミングに自らのUL/DL切替タイミングを設定する同期制御部とを備える、光リピータ装置。
【請求項8】
キャリアアグリゲーションの対象となるキャリア帯域を割り当てられた基地局に接続可能な基地局接続部と、
前記キャリア帯域のアップリンク/ダウンリンク(UL/DL)信号を送受可能なアンテナを備えるリモートユニットに接続可能な子局接続部と、
予め自らに割り当てられた重みを記憶する記憶部と、
配下の基地局のキャリア帯域ごとのUL/DL切替タイミングを検出するタイミング検出部と、
他のマスタユニットと通信して、前記重みと、前記検出したUL/DL切替タイミングのうち最も遅いUL/DL切替タイミングとを少なくとも含む情報を前記他のマスタユニットと共有する情報共有部と、
前記共有した情報に基づいて自らのUL/DL切替タイミングを自立的に決定する決定部と、
前記決定されたUL/DL切替タイミングに自らのUL/DL切替タイミングを設定する同期制御部とを備える、マスタユニット。
【請求項9】
キャリアアグリゲーションの対象となるキャリア帯域を割り当てられた基地局と、前記キャリア帯域のアップリンク/ダウンリンク(UL/DL)信号を送受可能なアンテナを備えるリモートユニットとに接続可能な複数のマスタユニットを具備する光リピータシステムの同期制御方法であって、
前記マスタユニットが、配下の基地局のキャリア帯域ごとのUL/DL切替タイミングを検出する工程部と、
前記マスタユニットが、他のマスタユニットと通信して、予め自らに割り当てられた重みと、前記検出したUL/DL切替タイミングのうち最も遅いUL/DL切替タイミングとを少なくとも含む情報を前記他のマスタユニットと共有する工程と、
前記マスタユニットが、前記共有した情報に基づいて自らのUL/DL切替タイミングを自立的に決定する工程と、
前記マスタユニットが、前記決定されたUL/DL切替タイミングに自らのUL/DL切替タイミングを設定する工程とを備える、同期制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、光リピータシステム、光リピータ装置、マスタユニット、および同期制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5G(第五世代移動通信システム)の通信エリアは、次第に広がってきている。エリアの拡大に、光リピータ装置が一役買っている。DAS(Distributed Antenna System)とも称して知られるこの装置は、基地局に接続されたマスタユニット(親局)と、光ファイバを介してマスタユニットに接続されるリモートユニット(子局)とを備える。
【0003】
5Gの導入にあたり、インフラシェアリングが適用される。インフラシェアリングは、主にコストメリットのため、通信インフラを複数の事業者で共同で利用するという考え方である。DASにおいても、一つのマスタユニットにそれぞれオーナーの異なる複数の基地局を収容することが検討されている。この技術をローカル5Gに適用すれば、通信事業者と免許人とで同じマスタユニットを共用することが可能になる。この種のマスタユニットを、事業者共用装置とも称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6602813号公報
【特許文献2】特許第6577512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基地局と移動端末との間のエア区間の通信方式は、現在ではFDD(Frequency Division Duplex)、またはTDD(Time Division Duplex)が主流である。ダウンリンク(DL)とアップリンク(UL)とで異なる方式が用いられる場合もある。複数のキャリア周波数をひとまとめに集めて通信速度を高める技術は、キャリアアグリゲーション(Career Aggregation:CA)と称される。
【0006】
ところで、3GPP(登録商標)の規定では、5G TDD方式においてCAを実施するには、UL/DLの切替タイミングの差を周波数帯間で3μ秒以下とすることが求められる。しかしこの規定は基地局の無線信号の出力点について言及するのみで、光リピータ装置の子局から送受される無線信号を想定していない。このため子局の無線信号の出力点についても、周波数帯間でのUL/DLの切り替えのタイミングを規定の範囲内に合わせこむ技術が求められる。
【0007】
例えば、一つの親局に属する複数の子局間で、周波数キャリア間でのUL/DLの切り替えのタイミング(以下、UL/DL切替タイミングと短縮する)を規定内とする技術の提案がある。また、異なる親局に属する子局どうしでも、周波数帯間でのUL/DL切替タイミングを3μ秒以内に抑えられる技術も検討されている。これをさらに発展させ、異なる光リピータ装置の子局どうしでキャリアアグリゲーションを実行することができれば、5Gシステムを利用するユーザの利便性が飛躍的に高まることが期待される。
【0008】
そこで、目的は、異なる光リピータ装置が関わるキャリアアグリゲーションを実行できるようにし、これにより可用性をさらに高めることのできる光リピータシステム、光リピータ装置、マスタユニット、および同期制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、光リピータシステムは、複数のマスタユニットを具備する。マスタユニットは、キャリアアグリゲーションの対象となるキャリア帯域を割り当てられた基地局と、キャリア帯域のアップリンク/ダウンリンク(UL/DL)信号を送受可能なアンテナを備えるリモートユニットとに接続可能である。マスタユニットの各々は、予め自らに割り当てられた重みを記憶する記憶部と、タイミング検出部、情報共有部、決定部、および、同期制御部とを備える。タイミング検出部は、配下の基地局のキャリア帯域ごとのUL/DL切替タイミングを検出する。情報共有部は、他のマスタユニットと通信して、重みと、検出したUL/DL切替タイミングのうち最も遅いUL/DL切替タイミングとを少なくとも含む情報を他のマスタユニットと共有する。決定部は、共有した情報に基づいて自らのUL/DL切替タイミングを自立的に決定する。同期制御部は、決定されたUL/DL切替タイミングに自らのUL/DL切替タイミングを設定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係わる光リピータ装置の一例を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態に係わる光リピータシステムの一例を示すブロック図である。
図3図3は、光リピータシステムにおける未同期の状態の一例を示す図である。
図4図4は、光リピータシステムにおいて同期がとれた状態の一例を示す図である。
図5図5は、CA候補装置群の設定について説明するための図である。
図6図6は、ケース0におけるタイミングチャートの一例を示す図である。
図7図7は、ケース1におけるタイミングチャートの一例を示す図である。
図8図8は、図7に示される状態を示す表である。
図9図9は、ケース2におけるタイミングチャートの一例を示す図である。
図10図10は、図9に示される状態を示す表である。
図11図11は、親局100および子局200の一例を示す機能ブロック図である。
図12図12は、プロセッサ140およびメモリ150の一例を示す機能ブロック図である。
図13図13は、実施形態に係わる親局100の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図14図14は、図13のステップ5における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図15図15は、管理テーブル150dに登録される情報の一例を示す図である。
図16図16は、管理テーブル150dの他の例を示す図である。
図17図17は、管理テーブル150dの他の例を示す図である。
図18図18は、管理テーブル150dの他の例を示す図である。
図19図19は、管理テーブル150dの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態に係わる光リピータ装置の一例を示すブロック図である。光リピータ装置は、光リピータ装置は、親局(MU:Master Unit)100と、光ファイバを介してそれぞれ親局100に接続される、複数の子局(RU:Remote Unit)200(#1~#n)とを備える。この形態のシステムは、分散アンテナシステム(DAS:Distributed Antenna System)とも称される。親局100と子局200との間に中継局400が設けられる場合もある。
【0012】
1以上の基地局BSが、同軸ケーブル等を介して親局100に収容される。同軸ケーブルによる接続では、基地局BSごとに、例えば、100MHzバンド×4(4×4MIMO)で、4系統の無線信号を伝送することが可能である。
【0013】
基地局BSは、それぞれキャリア帯域を割り当てられる。実施形態では、複数のキャリア帯域をひとまとめにして帯域を増大させる、キャリアアグリゲーションについて説明する。つまり各キャリア帯域は、キャリアアグリゲーションの対象である。ただし、子局200から展開されるエア区間においては、各キャリア帯域のUL/DL切替タイミングの同期が3μs以内に収まっている必要がある。
【0014】
基地局BSは、UL信号、DL信号を、親局100を経由して子局200との間で互いに授受する。図示しないモバイル端末(UE:User Equipment)が、子局200の展開する無線ゾーン内で、無線チャネルを介していずれかの子局(#1~#n)に接続される。
子局200は、基地局BSに割り当てられたキャリア帯域のアップリンク/ダウンリンク(UL/DL)信号を送受可能なアンテナを備える。
【0015】
図2は、実施形態に係わる光リピータシステムの一例を示すブロック図である。光リピータシステムは、複数の光リピータ装置を備える。それぞれの光リピータ装置の親局100は、複数の子局200を収容する。例えば、親局#1にl台、親局#2にm台、親局#Nにn台の子局が接続される。この光リピータシステムにおいて、各光リピータ装置の親局100は、相互に通信可能に接続される。図2において、親局#1、#2、…、#Nが有線回線2を介して互いに接続される。親局#1、#2、…、#Nは、有線回線2を介して各種の情報を相互に授受することが可能である。
【0016】
図3は、光リピータシステムにおける未同期の状態の一例を示す図である。図3において、横軸は時間の経過を表す。親局#1に収容される基地局BS(周波数帯A,B,C)のUL/DL切替タイミングは、それぞれの事業者が同じか、異なるかによらず、それぞれ許容差±1.5μs(マイクロ秒)の範囲でずれている。同様に、親局#nに収容された基地局BS(周波数帯a,b,c)のUL/DL切替タイミング異なるかによらず、それぞれ許容差±1.5μs(マイクロ秒)の範囲でずれている。このずれは、主に同軸ケーブルの長さが異なることにより生じるもので、±1.5μsの範囲内であれば許容される。
【0017】
また、親局どうしの間でも、UL/DL切替タイミングはいくらかの差分をもってずれていることが多い。さらに、光ファイバの長さが異なることにより、子局ごとのタイミングのずれも発生する。DASの運用の際には、子局から放射される電波のUL/DL切替タイミングを3GPP(登録商標)規定の3μs内に留める必要がある。
【0018】
そこで、各親局はタイミング検出部を備え、自配下の基地局BSのUL/DL切替タイミングを個別に検出し、そのタイミング情報を相互に授受しあい、共有する。そのうえで各親局は、最も遅いタイミングに自らのUL/DL切替タイミングを同期させる。また、各親局は自配下の子局200の遅延量を個別に検出し、そのタイミング情報を相互に授受しあい、共有する。そのうえで各親局は、最も遅いタイミングに、自配下の子局200のUL/DL切替タイミングを同期させる。
【0019】
図4は、光リピータシステムにおいて同期がとれた状態の一例を示す図である。親局相互で配下の基地局のUL/DL切替タイミング、および子局の遅延量を通知し合い、それぞれ最も遅いタイミングにタイミングを補正することで、図4に示されるような、最終的な子局200の出口で同期がとれた状態を作り出すことができる。
ところで、複数の光リピータ装置間のUL/DL切替タイミングを同期させるには、単純には多数決方式がとられる。多数決方式には、CA候補装置群というコンセプトが関係する。CA候補装置群は、キャリアアグリゲーション(CA)を実行する候補となる複数の親局からなる群である。別の観点では、CA候補装置群は、UL/DL切替タイミングが3μs以内に収まっている親局からなる群である。また別の観点では、CA候補装置群は、3GPP規格のCA要求仕様を満たすためのUL/DL切替タイミングが、有効補正範囲内に収まる親局の集合である。つまり、CAは、CA候補装置群に含まれる親局のうちいずれか、あるいは全ての親局どうしで実行することができる。
【0020】
図5は、CA候補装置群の設定について説明するための図である。図5において、親局[#1]において検出された自局のUL/DL切替タイミングを基準として、他の親局[#2]~[#N]のUL/DL切替タイミングを比較する。ここでは、立ち上がりエッジ(resetタイミング)を基準とする。
図5のケースでは、親局[#1]から見て親局[#2]、[#N]のUL/DL切替タイミングがOK領域(±1.5μsの範囲)に収まっているが、親局[#3]のUL/DL切替タイミングはその外のNG領域にある。このケースでは、親局[#1]から見たCA候補装置群は([#1],[#2],[#N])となる。親局ごとにタイミング検出の基準が異なることから、CA候補装置群は一般に、それぞれの親局にとって異なる。
【0021】
実施形態において、CAは、補正有効範囲である3GPP規定の3μs以内の領域(”OK1”と”OK2”)に収まる親局の数が過半数かつ最多であるCA候補装置群に含まれる親局間で実行されるとする(多数決の原則)。ここで、子局から放射されるキャリアにおけるUL/DL切替タイミングは、CA候補装置群に含まれる親局の中で最も遅いタイミングに合わせるとする。一方、親局の数が過半数とならないCA候補装置群に属する親局は、停波することとする。
【0022】
次に、CAの実行に係わる具体例について説明する。以下の説明では親局の台数NをN=4として[#1]~[#4]の4つの親局が関係することを想定し、それぞれUL/DL切替タイミングが異なる3つのケースを採り上げる。
【0023】
<ケース0>
図6は、ケース0におけるタイミングチャートの一例を示す図である。図6においては、全ての親局[#1]~[#4]のUL/DL切替タイミングが、全ての親局の補正有効範囲(OK1またはOK2)に収まっている。親局[#4]のUL/DL切替タイミングが最も遅いので、他の親局[#1]~親局[#3]は、自らのUL/DL切替タイミングをこれに整合させる。そして、配下の子局の遅延時間を、共有した遅延時間のうち最も遅い遅延時間に設定する。
ケース0は、多数決方式で問題の無い場合である。しかし、多数決方式では解決できないケースもある。次に、ケース1、ケース2として、多数決方式では解決できないケースを説明する。
【0024】
<ケース1>
ケース1は、UL/DL切替タイミングが不整合であるにもかかわらず子局から電波が送信されてしまうケースである。
図7は、ケース1におけるタイミングチャートの一例を示す図である。図7において、親局[#1]、および親局[#3]にとっては、全ての装置のUL/DL切替タイミングが補正有効範囲(OK1、OK2)に収まっている。これに対し、親局[#2]にとっては、親局[#4]のUL/DL切替タイミングがNG領域にあり、親局[#4]にとっては、親局[#2]のUL/DL切替タイミングがNG領域にある。この状態を表に表すと図8のようになる。
【0025】
図8は、図7に示される状態を示す表である。図8によれば、それぞれの親局にとって、自らが属するCA候補装置群における装置の数はいずれも過半数を占めるので、多数決方式によれば停波すべき装置(親局)はない。しかし、CA候補装置群の中で最も遅いUL/DL切替タイミングに合わせるというルールの下では、親局[#1]、親局[#3]、および親局[#4]のUL/DL切替タイミングが(親局[#4]のそれに)一致するのに対し、親局[#2]のUL/DL切替タイミングは親局[#2]のUL/DL切替タイミングに一致することとなる。結果として親局[#1]、親局[#3]、および親局[#4]と、親局[#2]とでUL/DL切替タイミングが不整合になり、このまま電波が送信されると干渉するおそれがある。
【0026】
<ケース2>
ケース2は、全ての親局が停波してしまうケースである。
図9は、ケース2におけるタイミングチャートの一例を示す図である。図9において、親局[#1]にとっては、親局[#4]のUL/DL切替タイミングだけが補正有効範囲(OK1、OK2)に収まっている。また、親局[#4]にとっては、親局[#1]のUL/DL切替タイミングだけが補正有効範囲(OK1、OK2)に収まっている。一方、親局[#2]にとっては、親局[#3]のUL/DL切替タイミングだけが補正有効範囲(OK1、OK2)に収まっていて、親局[#3]にとっては、親局[#2]のUL/DL切替タイミングだけが補正有効範囲(OK1、OK2)に収まっている。この状態を表に表すと図10のようになる。
【0027】
図10は、図9に示される状態を示す表である。図10によれば、全ての親局にとって、自らが属するCA候補装置群における装置の数が、過半数にならない。よって多数決方式のもとでは全ての親局が停波してしまう。例えば、親局#3のUL/DL切替タイミングに他が合わせるという余地があるにもかかわらず、である。
【0028】
以上のように、多数決方式だけでは解決することのできないケースがある。次に、このような不具合を解決し得る技術について説明する。
(構成)
図11は、親局100および子局200の一例を示す機能ブロック図である。
【0029】
図11において、親局100は、信号処理部110-1~110-Z、タイミング比較部120、多重分離部130、プロセッサ140、メモリ150、基地局接続部160、親局接続部170、および、子局接続部180を備える。すなわち親局100は、プロセッサおよびメモリを備える、コンピュータである。
【0030】
基地局接続部160は、複数の基地局BSを収容するためのインタフェースであり、図11においては、同軸ケーブル等を介して基地局BS-A、BS-B、~BS-Zに接続されることが可能である。
親局接続部170は、他の親局100と通信するためのインタフェースであり、LAN(Local Area Network)、あるいはシリアルケーブルなどで他の親局100に接続されることが可能である。
子局接続部180は、配下の複数の子局200に、光ファイバを介して接続される。すなわち子局200は、光ファイバを介して親局100に収容される。
【0031】
信号処理部110-1~110-Zは、それぞれ対応する基地局BS-A、BS-B、…、BS-Zに対応付けられ、基地局接続部160を介して基地局BS-A、BS-B、…、BS-ZとUL/DL信号を授受する。すなわち、モバイル端末UEとの間で送受信される無線信号は、基地局BS-A、BS-B、…、BS-Zごとに、信号処理部110-1~110-Zを経由してUL/DLの双方向に授受される。
【0032】
タイミング比較部120は、信号処理部110-1~110-Zのそれぞれにおいて検出された、キャリア帯域ごとのUL/DL切替タイミングを比較し、遅延調整量を生成する。比較の結果と遅延調整量は、信号処理部110-1~110-Zおよびプロセッサ140に渡される。
【0033】
多重分離部130は、各信号処理部110-1~110-ZからのDL信号を光信号に変換したのち波長多重し、子局接続部180から光ファイバを介してそれぞれの子局200に伝送する。
【0034】
また多重分離部130は、光ファイバを介して各子局200~200から光信号を受信し、波長単位でキャリア帯域ごとに分離したのち電気信号に変換して、デジタル信号を抽出する。このデジタル信号は、キャリア帯域に対応する信号処理部110-1~110-Zに送られる。
【0035】
プロセッサ140は、キャリア帯域ごとのUL/DL切替タイミングの比較結果と、信号処理部110-1~110-Zでそれぞれ検出された、子局200ごとの伝送遅延時間を取得する。
メモリ150は、各種のプログラムや設定データ等と、それぞれの親局100に予め割り当てられた重みを記憶する。
【0036】
信号処理部110-1~110-Zは、それぞれ、送受切替スイッチ(SW)111、検波器112、A/D変換器(ADC)113、タイミング検出部114、タイミング調整部115、D/A変換器(DAC)116、および、遅延検出部117を備える。
【0037】
送受切替スイッチ111は、タイミング検出部114から与えられるUL/DL切替タイミングに同期して、対向する基地局BSとの間でのアップリンク/ダウンリンク切替タイミングを切り替える。これによりTDD(Time Division Duplex)による通信が実現される。
【0038】
対向する基地局BSからのキャリア帯域信号は、A/D変換器113と検波器112に送られる。A/D変換器113は、このデジタルに変換し、デジタル信号をタイミング調整部115に出力する。検波器112は、キャリア帯域信号を検波し、検波波形をタイミング検出部114に送る。
【0039】
タイミング検出部114は、検波波形に基づいて、基地局BSのキャリア帯域ごとのUL/DL切替タイミングを検出する。またタイミング検出部114は、検出したUL/DL切替タイミングに基づくタイミング信号(パルス信号)を生成し、このタイミング信号を送受切替スイッチ111、タイミング調整部115、およびタイミング比較部120に出力する。
【0040】
タイミング調整部115は、遅延調整量に応じた遅延をA/D変換器(ADC)113の出力に与えて遅延させ、切替タイミングを調整する。これにより、親局100どうしを同期させるための第1の補正処理(図4の(1))が実現される。
【0041】
多重分離部130からのデジタル信号は、D/A変換器(DAC)116と遅延検出部117に入力される。D/A変換器116は、デジタル信号をアナログ信号に変換し、キャリア帯域にまでアップコンバートしてアップリンク信号を再生する。このアップリンク信号は、送受切替スイッチ111および同軸ケーブルを介して基地局BSに伝送される。
【0042】
遅延検出部117は、多重分離部130からのデジタル信号をモニタし、例えば子局200と制御信号を授受して、親局100と子局200との間の伝送遅延量を検出する。検出された伝送遅延量は、プロセッサ140に渡される。
【0043】
一方、子局200は、アンテナ270、多重分離部210、コントローラ220、遅延調整部230、D/A変換器(DAC)240、送受切替スイッチ(SW)250、および、A/D変換器(ADC)260を備える。
【0044】
多重分離部210は、親局100からの光信号を各波長に分離し、光信号を電気信号に変換して、デジタルのダウンリンク信号を抽出する。コントローラ220は、ダウンリンク信号から当該子局200宛ての信号を検出するとともに、この信号に含まれる親局100のプロセッサ140から送られた遅延調整量を検出し、遅延調整部230に出力する。
【0045】
遅延調整部230は、コントローラ220からの遅延調整量に基づいて、ダウンリンク信号の送信タイミングを遅延させる。これにより、親局100および子局200を含めた同期を実現するための第2の補正処理(図4の(2))が実現される。遅延制御されたダウンリンク信号は、D/A変換器240に出力される。D/A変換器240は、ダウンリンク信号をアナログ信号に変換し、割り当てチャネルの帯域にアップコンバートする。この無線帯域のダウンリンク信号は、送受切替スイッチ250およびアンテナ270を介してエア区間に放射され、モバイル端末UEで受信される。
【0046】
モバイル端末UEからのアップリンク信号は、子局200のアンテナ270から送受切替スイッチ250を介してA/D変換器260に送られる。A/D変換器260は、モバイル端末UEから受信したアップリンク信号をベースバンドにダウンコンバートしたのちデジタルに変換し、デジタル信号を多重分離部210に出力する。多重分離部210は、デジタル信号を光信号に変換したのち多重化し、光ファイバを介して親局100に伝送する。
【0047】
図12は、プロセッサ140およびメモリ150の一例を示す機能ブロック図である。プロセッサ140は、実施形態に係わる処理機能として、情報共有部140a、決定部140b、および、同期制御部140cを備える。
【0048】
情報共有部140aは、自局に予め割り当てられた重みと、タイミング検出部114で検出したUL/DL切替タイミングのうち最も遅いUL/DL切替タイミングとを、他の親局100と通信して共有する。親局100どうしは少なくともこれらの情報を共有するが、さらに多様な情報を共有することももちろん可能である。
【0049】
決定部140bは、上記共有した重みとUL/DL切替タイミングとに基づいて、自らのUL/DL切替タイミングを自立的に決定し、遅延調整量を算出する。
【0050】
同期制御部140cは、決定部140bにより決定されたUL/DL切替タイミングに自らのUL/DL切替タイミングを設定すべく、タイミング調整部115に遅延調整量をセットする。
【0051】
メモリ150は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、タイミング情報150a、子局遅延情報150b、重み150c、管理テーブル150d、およびプログラム150eを記憶する。
タイミング情報150aは、タイミング検出部114で検出したUL/DL切替タイミングと、他の親局100と共有したUL/DL切替タイミングなどを含む。
子局遅延情報150bは、遅延検出部117で検出した子局200の遅延量と、他の親局100と共有した子局200の遅延量などを含む。
【0052】
重み150cは、自局の配下とする子局200の接続台数や、自配下の基地局BSに割り当てられたキャリア帯域に対応付けて、予め設定され、記憶される。
管理テーブル150dは、他の親局100と共有した情報、および自局で検出したUL/DL切替タイミング、遅延量などに基づいて、各親局100において生成され、記憶される。
プログラム150eは、プロセッサ140を情報共有部140a、決定部140b、および、同期制御部140cとして機能させるための命令を含む。
【0053】
(作用)
次に、上記構成における作用を説明する。
図13は、実施形態に係わる親局100の処理手順の一例を示すフローチャートである。図1において、親局100は、基地局BSから到達したキャリア帯域のUL/DL切替タイミングを検出し、そのうち、最も遅いUL/DL切替タイミングを抽出してメモリ150に記憶する(ステップS1)。
次に親局100は、配下の子局200ごとの伝送遅延時間を検出し、そのうち最も長い時間を、子局遅延情報としてメモリ150に記憶する(ステップS2)。例えば自局~子機間の伝送路長が最も長い子機までの遅延時間が、子局遅延情報として生成される。
次に親局100は、他の親局100と通信し、UL/DL切替タイミング(タイミング情報150a)、子局遅延情報150b、および、自局の重み150cを他の(n-1台の親局100と共有する(ステップS3)。
【0054】
次に親局100は、共有した情報に基づいて管理テーブル150dを生成する(ステップS4)。管理テーブル150dは、各親局100のUL/DL切替タイミング、補正有効範囲内の親局の集合(CA候補装置群)の装置ID、および、CA候補装置群ごとの重みの和を含む。
【0055】
次に親局100は、他の親局100における有効範囲内のCA候補装置群が一致するように、管理テーブル150dを修正する(ステップS5)。ステップS5における処理については後ほど詳しく説明する。
管理テーブル150dの修正が完了すると、親局100は、修正された管理テーブル150dに従って自らを停波するか、または、自局のUL/DL切替タイミングを調整して、自局の属するCA候補装置群の中で最も遅いUL/DL切替タイミングに整合させる(ステップS6)。つまり、管理テーブル150dの修正の結果、自らの重みが0になった親局100は、キャリア帯域のダウンリンク信号を停波する。重みが0でない親局100は、共有したタイミングのうち最も遅いタイミングに自局のUL/DL切替タイミングを再設定する。
そして、親局100は、自局の属するCA候補装置群の中で最も遅い子局遅延時間に整合させるべく、配下の子局の遅延量を調整する(ステップS7)。
【0056】
図14は、図11のステップ5における処理手順の一例を示すフローチャートである。ステップ5は、親局100間での情報共有により最初に生成された管理テーブルを、ループ処理により修正するステップである。図15の管理テーブルも併せて説明する。
【0057】
図15は、管理テーブル150dに登録される情報の一例を示す図である。図15は、<ケース0>の状態(図6)において、ステップS4(図13)で生成される管理テーブル150dを示す。ここでも[#1]~[#4]の4つの親局が関係することを想定するが、親局[#1]の重みが4、親局[#2]の重みが3、親局[#3]の重みが2、親局[#4]の重みが1であることを新たに想定する。
【0058】
図14において、最初に親局100は、複数のCA候補装置群の重みの和が一致しているか否かを判定する(ステップS51)。図15のように、一致しているならば(図15の重みの和はすべて10)、親局100は、同じ要素を持たないCA候補装置群があるか否かを判定する(ステップS52)。つまり親局100は、互いに素の装置群の有無を判定する。「互いに素の装置群」とは、「同じ要素を持たないCA候補装置群」であり、つまり「共通の要素を持たないCA候補装置群」とも理解され得る。ステップS52で(No)、つまりCA候補装置群の要素の親局が全て同じであれば処理を抜け、処理手順は図13のステップS6に移行する。
【0059】
一方、ステップS51でNoであれば、親局100は、重みの和が最低である親局の重みを0にセットし(ステップS53)、そのうえで重みの和を再度計算することにより、管理テーブル150dを更新する(ステップS54)。ステップS53およびステップS54の手順は、ステップS51において、装置群の重みの和が同じになるまで繰り返しループされる。
【0060】
また、ステップS52でYesであれば、つまり重みの和が等しいが互いの要素が相異なるCA候補装置群があれば、親局100は、重みが最大の親局が属する装置群ではないほうの装置群に属する親局(つまり、重みが最大の親局が属する装置群に属さない親局)の重みを0にセットする(ステップS55)。そのうえで、親局100は、重みの和を再度計算することにより、管理テーブル150dを更新する(ステップS54)。
【0061】
図15に示されるように、ケース0では、ステップS5を経ても管理テーブル150dは変更されない。この管理テーブル150dに基づいて、それぞれの親局100は、CA候補装置群の中でUL/DL切替タイミングが最も遅い装置(親局[#4])に、自局のUL/DL切替タイミングを整合させる。
【0062】
次に、<ケース1>、<ケース2>のそれぞれについて上記の処理手順を説明する。
<ケース1について>
図16は、<ケース1>の状態(図7)において、ステップS4(図13)で生成される管理テーブル150dを示す。このケースでは、親局[#4]の属するCA候補装置群の重みの和が7となり、最も低いことが分かる。よって親局[#4]の重みを0(ゼロ)として管理テーブル150dは更新され、図17に示すようになる。図17においては、親局[#1]、親局[#2]、親局[#3]のCA候補装置群の重みが9になり、図14の処理手順はここでループから抜ける。図17においては、重みの和が0でないCA候補装置群の要素は一致しているので、この状態が最終的な管理テーブル150dとなる。
【0063】
そして、この管理テーブル150dに従い、親局[#1]~親局[#3]は、親局[#3]のUL/DL切替タイミングに整合され、親局[#4]は停波となる。最後に、親局[#1]~親局[#3]は、配下の子局の遅延量を調整する。
【0064】
図8においては、親局[#1]と親局[#3]が親局[#4]のタイミングになり、親局[#2]が親局[#3]のタイミングになってしまい、不整合が生じていた。このため、このままではキャリアアグリゲーションを実施することができない。これに対し、図13図14の処理手順を実行することで、図17に示すように、停波でない親局100のタイミングを全て整合させることができる。つまり<ケース1>における不具合を解消し、キャリアアグリゲーションを問題なく実施することが可能になる。
【0065】
<ケース2について>
図18は、<ケース1>の状態(図7)において、ステップS4(図13)で生成される管理テーブル150dを示す。このケースでは、親局[#1]~親局[#4]がそれぞれ属するCA候補装置群の重みの和は全て5となる。ただし、相異なるCA候補装置群が存在している。つまり、重みの和が同じで互いに素である、親局の集合がある。
【0066】
そこで、ステップS55(図14)において、異なるCA候補装置群のうち、最も重みが大きい親局[#1]が属するCA候補装置群(#1、#4)に属さない親局[#2]、[#3]の重みを0とし、管理テーブル150dが更新される。そうすると管理テーブル150dは図19に示すように更新され、最終的な状態に至る。
【0067】
そして、この管理テーブル150dに従い、親局[#2]、[#3]が停波され、親局[#1]、[#4]は、親局[#4]のUL/DL切替タイミングに整合される。最後に、親局[#1]、[#4]は、配下の子局の遅延量を調整する。
【0068】
図10においては、全ての親局[#1]~親局[#4]が盲目的に停波してしまっていた。これに対し、図13図14の処理手順を実行することで、図19に示すように、本来必要のない停波を防止することができ、また、停波でない親局100のタイミングを全て整合させることができる。つまり<ケース2>における不具合を解消し、キャリアアグリゲーションを問題なく実施することが可能になる。
【0069】
以上述べたように、実施形態によれば、基地局ごとに予め重みを設定するとともに、有効補正範囲内の親局の集合であるCA候補装置群というコンセプトを導入する。さらに、キャリア帯域における基地局側のタイミングと、子局側における遅延量をそれぞれの親局100で検出し、親局100間で相互に通信して情報を共有する。そして、CA候補装置群ごとに、要素の親局の重みの和を計算し、重みに対応する優先度に基づいて、同期すべきUL/DL切替タイミングと、自局の停波の可否を親局が自立的に決定するようにした。
【0070】
既存の技術では、基地局に光リピータを接続した場合、キャリア間でのUL/DL切替タイミング差を3GPP規定内に収めることができず、結果としてCAの効果が得られない可能性があった。また、CAを実行するにあたり、キャリア間での不整合が生じる懸念を払しょくしきれず、運用面での課題があった。
【0071】
これに対し、実施形態によれば、キャリア帯域間でのUL/DL切替タイミングの不整合を確実に防止することができ、また、停波に至るキャリア帯域や親局100の数を最小限にすることができる。従って実施形態によれば、複数の光リピータ装置間でCAを可能にした運用が可能になる。すなわち、実施形態によれば、異なる光リピータ装置が関わるキャリアアグリゲーションを実行できるようになり、よって可用性をさらに高めることのできる光リピータシステム、光リピータ装置、マスタユニット、および同期制御方法を提供することができる。
【0072】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではない。例えば親局への重み付けの基準は、収容子局台数やキャリア帯域だけに限らず、例えばUEの属する通信事業者の運用ポリシーなどに従って自由に設定することができる。例えば、アップリンクにおける帯域を重視する事業者にあっては、アップリンクでのキャリアアグリゲーションの機会を最大限に確保できるように、組合せ最適化などの手法により重みを設定すればよい。
【0073】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
2…有線回線、100…親局、110-1~110-Z…信号処理部、111…送受切替スイッチ、112…検波器、113…A/D変換器、114…タイミング検出部、115…タイミング調整部、116…D/A変換器、117…遅延検出部、120…タイミング比較部、130…多重分離部、140…プロセッサ、140a…情報共有部、140b…決定部、140c…同期制御部、150…メモリ、150a…タイミング情報、150b…子局遅延情報、150c…重み、150d…管理テーブル、150e…プログラム、160…基地局接続部、170…親局接続部、180…子局接続部、200~200…子局、210…多重分離部、220…コントローラ、230…遅延調整部、240…D/A変換器、250…送受切替スイッチ、260…A/D変換器、270…アンテナ、400…中継局、BS…基地局。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図19