(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133213
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング方法、磁気共鳴イメージング装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
A61B5/055 376
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034352
(22)【出願日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】17/690,834
(32)【優先日】2022-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】サミア デーヴ シャルマ
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB07
4C096AB11
4C096AD06
4C096AD12
4C096AD24
4C096BA15
4C096DA11
4C096DA30
4C096DC21
(57)【要約】
【課題】アーチファクトの低減を基にしたMRIにおいて改善されたノイズ低減を実現すること。
【解決手段】実施形態に係る磁気共鳴イメージング方法は、アーチファクトの低減を基にした磁気共鳴イメージングを実行する磁気共鳴イメージング方法であって、スキャン領域のスライス方向に沿って複数のスライスを収集するステップと、収集された複数のスライスにおける信号分散の空間的範囲を推定するステップと、推定された信号分散の空間的範囲に基づいて、前記収集された複数のスライスの信号を結合することによって、アーチファクトが補正された前記スキャン領域の再構成画像を生成するステップとを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーチファクトの低減を基にした磁気共鳴イメージングを実行する磁気共鳴イメージング方法であって、
スキャン領域のスライス方向に沿って複数のスライスを収集するステップと、
収集された複数のスライスにおける信号分散の空間的範囲を推定するステップと、
推定された信号分散の空間的範囲に基づいて、前記収集された複数のスライスの信号を結合することによって、アーチファクトが補正された前記スキャン領域の再構成画像を生成するステップと
を含む、磁気共鳴イメージング方法。
【請求項2】
前記収集された複数のスライスそれぞれを2次元スライスから3次元空間ボリュームスライスに空間的にエンコードすることで、一連の3次元空間ボリュームスライスを生成するステップをさらに含む、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項3】
前記再構成画像を生成するステップは、二乗和平方根又は複素数値和を計算することによって、前記収集された複数のスライスの信号を結合することを含む、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項4】
前記信号分散の空間的範囲を推定するステップは、双極子応答関数を用いて、前記信号分散の空間的範囲を推定することを含む、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項5】
前記収集された複数のスライスから、最高の信号強度を有するスライスを特定するステップと、
前記最高の信号強度を有するスライスに近傍する少なくとも1つの近傍スライスを特定するステップと
をさらに含み、
前記再構成画像を生成するステップは、前記最高の信号強度を有するスライスの信号と、前記少なくとも1つの近傍スライスの信号とを結合することを含む、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの近傍スライスを特定するステップは、双極子応答関数を用いて、前記最高の信号強度を有するスライスに近傍する少なくとも1つの近傍スライスを特定することを含む、
請求項5に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項7】
前記アーチファクトは、メタルアーチファクトである、
請求項1~6のいずれか1つに記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項8】
アーチファクトの低減を基にした磁気共鳴イメージングを実行する磁気共鳴イメージング装置であって、
スキャン領域のスライス方向に沿って複数のスライスを収集し、
収集された複数のスライスにおける信号分散の空間的範囲を推定し、
推定された信号分散の空間的範囲に基づいて、前記収集された複数のスライスの信号を結合することによって、アーチファクトが補正された前記スキャン領域の再構成画像を生成する
処理装置を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
アーチファクトの低減を基にした磁気共鳴イメージングを実行するプログラムであって、
スキャン領域のスライス方向に沿って複数のスライスを収集する手順と、
収集された複数のスライスにおける信号分散の空間的範囲を推定する手順と、
推定された信号分散の空間的範囲に基づいて、前記収集された複数のスライスの信号を結合することによって、アーチファクトが補正された前記スキャン領域の再構成画像を生成する手順と
をコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、磁気共鳴イメージング方法、磁気共鳴イメージング装置及びプログラムに関する。
【0002】
具体的には、本開示は、メタルアーチファクトの低減を基にした磁気共鳴イメージングにおいて改善されたノイズ低減を実現するための方法、装置及び非一時的コンピュータ可読記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、医用イメージング装置は、患者の体内の臓器及び組織の画像を生成する。例えば、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)は、電波、磁場及び傾斜磁場を使用して、内部臓器及び組織の画像を生成する。これらの画像が生成されると、医師は、当該画像を患者のけが又は病気を診断するために使用することができる。
【0004】
ここで、患者の体内に存在する金属インプラント又は金属の物体は、MRIスキャン中にいくつかの課題を生じさせる。1つの大きな課題は、MRIスキャンによって収集されるデータからメタルアーチファクトを補正、又は、少なくとも低減することである。MRIスキャンによって収集されるデータからメタルアーチファクトを低減するために利用されるメタルアーチファクト補正方法は、金属インプラントの強い磁化率によって発生する信号の歪みを解消するために、異なる軸のデータを収集する必要がある。このようなメタルアーチファクト補正方法は、異なる軸に沿った複数の領域を考慮して、信号の歪みを解消する。しかしながら、そのような領域の多くは、ノイズだけを含んでいることが多い。したがって、既知のメタルアーチファクト補正方法は、メタルアーチファクトを低減又は補正するための効果的な手法を提供するものではない。
【0005】
図1は、金属インプラントの強い磁化率によって生じ得る信号の歪みにより良好に対処するために、MRIのプロセスの一部として、異なる軸に沿ってデータが収集されることを示している。メタルアーチファクト補正方法の一例であるSEMAC(Slice Encoding for Metal Artifact Correction)法では、データ収集のプロセスにおいて、2次元(2D)スライスが励起され、その後、当該2Dスライスが3次元(3D)ボリュームにエンコードされる。SEMAC法におけるデータ収集の結果は、(x,y,z,スライス)次元の4次元(4D)ボリューム100である。
図1は、Z軸104及びスライス軸102を示している。なお、
図1にはx次元及びy次元は図示されていないが、当業者には、4Dボリュームの軸系ではx軸及びy軸が
図1に入ることが理解される。加えて、簡略化のために、コイルの次元が省略されている。
【0006】
さらに、SEMAC法では、データ結合によって、再構成の処理が実行される。具体的には、SEMAC法では、データ結合のプロセスの一部として、(x,y)の位置ごとに、(z,スライス)次元における線106に沿って全てのデータが結合される。このSEMAC法におけるデータ結合は、(z,スライス)次元における線106に沿って二乗和平方根(Root-Sum-of-Squares:RSS)を計算することによって、簡単に行われる。このような簡単なRSSによるデータ結合は、線106上の多くのスライスが大抵はノイズを含んでいることから、ノイズを生じさせる。したがって、主な技術的課題は、ノイズを最小化しながらも信号を維持するように、画像データを結合する方法を開発することである。
【0007】
なお、上述した「背景技術」の説明は、本開示の背景の概要を示すためのものである。当該背景技術の部分に記載されている範囲内において、発明者の研究は、出願時に先行技術として認められない下記説明の態様と同様に、明示的にも暗示的にも、本発明に対する先行技術として認められるものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Koch KM,Lorbiecki JE,Hinks RS,King KF,”A multispectral three-dimensional acquisition technique for imaging near metal implants”,Magnetic Resonance in Medicine,An Official Journal of the International Society for Magnetic Resonance in Medicine,2009 Feb,61(2),381-90
【非特許文献2】Lu W,Pauly KB,Gold GE,Pauly JM,Hargreaves BA,”SEMAC: slice encoding for metal artifact correction in MRI”,Magnetic Resonance in Medicine,An Official Journal of the International Society for Magnetic Resonance in Medicine”2009 Jul,62(1),66-76
【非特許文献3】Lu W,Pauly KB,Gold GE,Pauly JM,Hargreaves BA,”Slice encoding for metal artifact correction with noise reduction”,Magnetic resonance in medicine,2011 May,65(5),1352-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、アーチファクトの低減を基にしたMRIにおいて改善されたノイズ低減を実現することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態に係るMRI方法は、アーチファクトの低減を基にしたMRIを実行するMRI方法であって、スキャン領域のスライス方向に沿って複数のスライスを収集するステップと、収集された複数のスライスにおける信号分散の空間的範囲を推定するステップと、推定された信号分散の空間的範囲に基づいて、前記収集された複数のスライスの信号を結合することによって、アーチファクトが補正された前記スキャン領域の再構成画像を生成するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
添付図面とともに以下の詳細な説明を検討し、当該説明を参照して本開示をより良く理解するにつれて、本開示の完全な理解及び本開示に付随する多くの利点を容易に把握することができるであろう。
【0012】
【
図1】
図1は、メタルアーチファクトを補正するために、既知のSEMAC法のプロセスの一部として、複数のスライスに沿ってデータを収集及び結合することを示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の例示的な実施形態により、メタルアーチファクトを補正するために、中心スライスを囲む予め定義されたスライスの近傍に沿ってデータを収集及び結合することを示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の例示的な実施形態による、既知の媒体を有する参照領域に対するボクセル値の位置決めを示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の例示的な実施形態による、ノイズを有する別の参照領域に対するボクセル値の位置決めを示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の例示的な実施形態による、メタルアーチファクトの低減を基にしたMRIにおいて改善されたノイズ低減を実現するための方法のフロー図である。
【
図6A】
図6Aは、
図1のノイズ低減の方法を適用した後(右)、及び、既知のノイズ低減のメタルアーチファクト補正方法を適用した後(左)のスキャン画像を参照画像(中央)と比較して示す図である。
【
図7A】
図7Aは、
図5のノイズ低減の方法を適用した後(右)、及び、既知のノイズ低減のメタルアーチファクト補正方法を適用した後(左)の身体部分のスキャン画像を参照画像(中央)と比較して示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の記載に従って処理される医用画像データを取得するように構成された医用イメージング装置の図である。
【
図9】
図9は、MRI装置の様々な構成要素の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、メタルアーチファクトに起因するノイズの低減を基にした画質改善のための装置、方法及び非一時的コンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0014】
実施形態によれば、本開示は、磁気共鳴イメージング(MRI)データにおけるアーチファクト(例えば、メタルアーチファクト)を補正する方法であって、方法は、身体部分に関連するスキャン領域のスライス方向に沿って複数のスライスを取得することと、スライス方向に沿って取得された複数のスライスの信号分散の空間的範囲を推定することと、信号分散の推定された空間的範囲に基づいて、スライス方向に沿って取得された複数のスライスの信号を結合して、スキャン領域の再構成された画像を生成することと、を含むが、これに限定されない、方法に関する。
【0015】
実施形態によれば、本開示は、磁気共鳴イメージング(MRI)データにおけるアーチファクト(例えば、メタルアーチファクト)を補正する装置であって、装置は、身体部分に関連するスキャン領域のスライス方向に沿って複数のスライスを取得し、スライス方向に沿って取得された複数のスライスの信号分散の空間的範囲を推定し、信号分散の推定された空間的範囲に基づいて、スライス方向に沿って取得された複数のスライスの信号を結合して、スキャン領域の再構成された画像を生成する、ように構成された処理回路、を含むが、これに限定されない、装置に関する。
【0016】
実施形態によれば、本開示は、コンピュータによって実行されると、磁気共鳴イメージング(MRI)データにおけるアーチファクト(例えば、メタルアーチファクト)を補正する方法をコンピュータに実行させる、コンピュータ可読命令を格納する非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、方法は、身体部分に関連するスキャン領域のスライス方向に沿って複数のスライスを取得することと、スライス方向に沿って取得された複数のスライスの信号分散の空間的範囲を推定することと、信号分散の推定された空間的範囲に基づいて、スライス方向に沿って取得された複数のスライスの信号を結合して、スキャン領域の再構成された画像を生成することと、を含むが、これに限定されない、非一時的コンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0017】
なお、上記段落は、総論を示すものであり、添付の特許請求の範囲を限定することを意図したものではない。記載されている実施形態は、以下の詳細な説明を添付の図面とともに参照することによって、さらなる利点とともに最も良く理解されるであろう。
【0018】
また、以下で用いられている「1つの」の用語は、1つ又は1つ以上として定義される。また、以下で用いられている「複数の」の用語は、2つ又は2つ以上として定義される。また、以下で用いられている「他の」の用語は、少なくとも2つ目以上として定義される。また、以下で用いられている「含む」及び/又は「有する」の用語は、構成すること(つまり、オープンランゲージ)として定義される。また、本文書を通して、「一実施形態」、「特定の実施態様」、「実施形態」、「実装」、「例」又は同様の用語を用いた記載は、本実施形態に関連して記載されている特定の特性、構造又は特徴が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、このような語彙表現又は本明細書を通して各所に記載されている語彙表現は、必ずしも全てが同一の実施形態に関するとは限らない。さらに、当該特定の特性、構造又は特徴は、1つ以上の実施形態において、限定されることなく任意の適切な方法で組み合わされてもよい。
【0019】
ここで、
図2を参照すると、
図2は、メタルアーチファクトの低減を基にしたMRIにおいて改善されたノイズ低減を実現するための方法を示している。この方法では、
図1と同様に、データ収集のプロセスにおいて、2次元(2D)スライスが励起され、その後、当該2Dスライスが3次元(3D)ボリュームにエンコードされる。データ収集の結果は、(x,y,z,スライス)次元の4次元(4D)ボリューム100である。
図2は、Z軸204及びスライス軸202を示している。
図2に示すように、この方法では、収集されたスライスが解析されることによって、あるエリアの(z軸方向における)特定の部分を共有する全てのスライスではなく、局所的な数のスライスに補正を集中させる。具体的には、この方法では、データ結合のプロセスの一部として、最初に、中心スライス212が特定される。例えば、中心スライス212は、最高の信号強度を有するスライスであってもよい(即ち、当該中心スライス212は、患者の体内における金属インプラントがありそうな位置を示す)。次に、双極子応答関数(dipole response function)の半値全幅(Full Width at Half Maximum:FWHM)を利用することによって、近傍サイズ208が決定される(後に
図4を参照して説明する)。近傍サイズ208が決定されると、当該近傍サイズ208に含まれるスライスが特定される。この例では、近傍スライス206が特定される。したがって、(x,y)の位置ごとに、(z,スライス)次元における線210に沿った全てのデータが結合される。このデータ結合は、(z,スライス)次元における線210に沿ってRSSを計算することによって、簡単に行われる。図示されているように、最高の信号強度を有する中心スライス212及びその近傍スライス206のみが、データが結合される部分として考慮される。このように、中心スライス212及び近傍スライス206のみを考慮することによって、スライス軸202に沿った、患者の体内における金属インプラントの位置を提供しない他のスライスは利用されないようになる。これにより、メタルアーチファクトの低減を行うためのより良好な推定結果が得られる。
【0020】
この近傍結合の技術は、金属誘起磁化率の影響を受けるボクセルの信号分散が限定的であることに基づいている。この技術の利点は、当該信号分散が(ランダムに分布するのではなく、)密接にクラスタ化されることである(後に
図3及び
図4を参照して説明する)。これは、双極子応答関数が有する局所的な性質の結果である。双極子応答関数は、高磁化率源(例えば、金属)がB
0磁場にどのような影響を与えるかを数学的に表す。高磁化率物体は、信号分散を引き起こすが、その分散は、(z,スライス)次元における線に沿って局所的である。また、双極子応答関数に関する情報を使用して、考慮されるべきスライスの範囲が決定されてもよい。例えば、双極子応答関数のFWHMが計算され、データ収集のスライス厚を使用して、当該FWHM内にあるスライスの点がデータ結合のために保持されてもよい。
【0021】
具体的には、
図3は、水/組織を含む参照領域のボクセル値に基づいて既知の媒体における参照領域の信号分散を説明するために、制御された環境下で生成されたMRIスキャン参照画像302を示している。当該既知の媒体は、水又は患者の臓器の組織であり得る。例として、当該参照領域は水の媒体304中の点308であり、当該点308の信号分散がグラフ表示310によって表されている。グラフ表示310は、x軸及びy軸にわたる点308の信号分散を表している。ここで、x軸は、スライス軸のパラメータを表し、y軸は、信号強度のパラメータを表している。結果的に、グラフ表示310は、水という既知の媒体では、信号分散がほとんどクラスタ化され、局所化されていることを示している。
【0022】
また、
図4は、金属の媒体を含む別の参照領域のボクセル値に基づいて既知の媒体における参照領域の信号分散を説明するために、制御された環境下で生成されたMRIスキャン参照画像402を示している。当該既知の媒体は、患者の体内における金属インプラントであり得る。例として、当該参照領域は金属インプラント404中の点408であり、当該点408の信号分散がグラフ表現410によって表されている。結果的に、グラフ表現410は、双極子応答関数が、高磁化率媒体領域(例えば、金属インプラント領域)がB
0磁場にどのような影響を与えるかを数学的に表すことを示している。このように、金属インプラント領域(高磁化率物体とも称される)は、信号分散を引き起こすが、その分散は、(z,スライス)次元における線に沿って局所的である。このグラフ表現410の信号分散は、ランダムに分布しているわけではない。信号分散のクラスタ化は、既知の双極子応答関数を用いたMR物理特性と一致している。また、双極子応答関数に関する情報を使用して、考慮されるべきスライスの範囲が決定されてもよい。例えば、双極子応答関数のFWHMが計算され、データ収集のスライス厚を使用して、当該FWHM内にあるスライスの点がデータ結合のために保持されてもよい(後に
図5を参照して詳細に説明する)。
図2に戻り、FWHM及びデータ収集のスライス厚を利用して、近傍サイズ208が計算される。
【0023】
ここで、
図5を参照すると、
図5は、メタルアーチファクトの低減を基にしたMRIにおいて改善されたノイズ低減を実現するための方法のフロー図である。
図5のフロー図は、方法500を示している。
【0024】
まず、ステップ502において、
図2を参照して図示及び上述したように、スキャン領域のスライス方向(スライス軸202)に沿って複数のスライスが収集される。
【0025】
次に、ステップ504において、データ結合のプロセスの一部として、収集された複数のスライスにおける信号分散の空間的範囲が推定される。具体的には、データ結合のプロセスの一部として、最初に、中心スライス212が特定される。例えば、中心スライス212は、最高の信号強度を有するスライスであってもよい。即ち、中心スライス212は、患者の体内における金属インプラントの位置を示す。次に、(例えば、双極子応答関数のFWHMを利用することによって、)近傍サイズ208(信号分散の空間的範囲とも称される)が推定される。近傍サイズに含まれるスライスの数は、1つであってもよいし、スライスの全数より少ない数であってもよい。3mmのスライス厚を使用する臨床スキャンのための好ましい実施形態では、中心スライスの両隣それぞれの方向に2つのスライスを含む近傍サイズが利用される。
【0026】
次に、ステップ506において、推定された空間的範囲に基づいて、スライス方向に沿って収集された複数のスライスの信号が結合されることによって、メタルアーチファクトが補正されたスキャン領域の再構成画像が生成される。具体的には、近傍サイズ208を決定すると、近傍サイズ208に含まれるスライスが特定される。この例では、近傍スライス206が特定される。したがって、各(x,y)位置について、(z,スライス)次元における線210に沿った全てのデータが結合される。このデータ結合は、(z,スライス)次元における線210に沿って二乗和平方根(RSS)を計算することによって、簡単に行うことができる。または、このデータ結合は、(z,スライス)次元における線210に沿って複素数値和を計算することによって行われてもよい。したがって、この技術では、最高の信号強度を有する中心スライス212及びその近傍スライス206のみが、データ結合のプロセスの一部として考慮される。このように、中心スライス212及び近傍スライス206のみを考慮することによって、スライス軸202に沿った、患者の体内における金属インプラントの位置を提供しない他のスライスは利用されないようになる。これにより、メタルアーチファクトの低減を行うためのより良好な推定結果が得られる。
【0027】
ここで、
図1及び
図2を参照しつつ、
図6Aについて説明する。具体的には、
図6Aは、(1)スキャン画像に対して線106に沿って
図1のノイズ低減の方法を適用して生成された画像602、及び、(2)当該スキャン画像に対して線210に沿って
図2のノイズ低減の方法を適用して生成された画像604を示している。また、画像606は、画像602と画像604との違いを説明する目的で、理想的な状態(ノイズの無い状態)で生成された参照画像である。
【0028】
画像602は、
図1のメタルアーチファクト補正方法を適用して生成された画像である。また、領域610は、金属インプラントを示しており、領域608は、スキャン画像の水/組織領域を示している。画像602は、さらに、四角で囲まれた関心領域612を示しており、当該関心領域は、
図6Bに詳細に示されている。
【0029】
画像604は、
図2のメタルアーチファクト補正方法を適用して生成された画像である。また、領域614は、金属インプラントを示しており、領域616は、スキャン画像の水/組織領域を示している。画像604は、さらに、四角で囲まれた関心領域618を示しており、当該関心領域は、
図6Bに詳細に示されている。
【0030】
画像606は、前述したように、参照画像である。また、領域620は、金属インプラントを示しており、領域622は、スキャン画像の水/組織領域を示している。画像606は、さらに、四角で囲まれた関心領域624を示しており、当該関心領域は、
図6Bに詳細に示されている。
【0031】
ここで、
図6Bは、
図6Aの関心領域612、618及び624の拡大画像を示している。
図6Bから分かるように、関心領域612と関心領域618とを比較すると、関心領域618は、ノイズが大幅に少ない。また、関心領域618と参照画像の関心領域624とを比較すると、関心領域618と参照画像の関心領域624との間のノイズの違いが小さいことが分かる。したがって、
図6Bは、
図2のメタルアーチファクト補正方法を適用して生成された画像である画像604が、明らかなノイズ低減を提供するものであり、その結果として、メタルアーチファクトを低減するためのより効率的な方法を提供するものであることを示している。
【0032】
図6Cは、
図6Aの画像602、604及び606上の1つの位置で生成された信号を示している。
図6Cは、画像602、604及び606を通る線626を示している。また、グラフ
図628は、画像602、604及び606上の線626の位置に対応して生成された信号を示している。例として、画像602上の線626の位置に対応する信号630が生成され、画像604上の線626の位置に対応する信号632が生成され、画像606上の線626の位置に対応する信号634が生成されている。楕円636及び638は、ノイズ低減の方法による結果の違いが大きい位置を強調しており、
図2の方法は、目標であるノイズの無い信号に近い結果を提供している。ここで、楕円636は、
図2の方法が、
図1の既知の方法と同様に高信号を維持することを示している。また、楕円638は、
図2の方法が、低信号を有する領域(即ち、ノイズのある領域内)において、目標であるノイズの無い信号に近い結果を提供することを示している。概して、
図2の方法は、高信号の領域で信号を維持しつつ、低信号(即ち、ノイズ)の領域でノイズを低減することを意図している。
【0033】
ここで、
図1及び
図2を参照しつつ、
図7Aについて説明する。具体的には、
図7Aは、(1)スキャン画像の関心領域708を通る線に沿って
図1のノイズ低減の方法を適用して生成された画像702、及び、(2)当該スキャン画像の対応する関心領域712を通る線に沿って
図2のノイズ低減の方法を適用して生成された画像704を示している。また、画像706は、画像702と画像704との違いを説明する目的で、理想的な状態(ノイズの無い状態)で生成された参照画像である。
【0034】
画像702は、
図1のメタルアーチファクト補正方法を適用して生成された画像である。また、関心領域708は、スキャン画像における第1の金属インプラント関心領域を示しており、関心領域710は、第2の金属インプラント関心領域を示している。例として、金属インプラントは、金属ねじであるが、他の金属インプラントも含まれ得る。関心領域708及び710は、それぞれ
図7B及び
図7Cに詳細に示されている。
【0035】
画像704は、
図2のメタルアーチファクト補正方法を適用して生成された画像である。また、関心領域712は、スキャン画像における第1の金属インプラント関心領域を示しており、関心領域714は、第2の金属インプラント関心領域を示している。関心領域712及び714は、それぞれ
図7B及び
図7Cに詳細に示されている。画像706は、前述したように、参照画像である。また、関心領域716は、スキャン画像における第1の金属インプラント関心領域を示しており、関心領域718は、第2の金属インプラント関心領域を示している。
【0036】
ここで、
図7Bは、
図7Aの関心領域708、716及び712の拡大画像を示している。
図7Bから分かるように、関心領域708と関心領域712と比較すると、関心領域712は、ノイズが明らかに少ない。また、関心領域712と参照画像の関心領域716とを比較すると、関心領域712と参照画像の関心領域716との間のノイズの違いが明らかに小さいことが分かる。一方、
図7Cは、
図7Aの関心領域710、714及び718の拡大画像を示している。
図7Cから分かるように、関心領域714と関心領域710と比較すると、関心領域714は、ノイズが明らかに少ない。また、関心領域714と参照画像の関心領域718と比較すると、関心領域714と参照画像の関心領域718との間のノイズの違いが明らかに小さいことが分かる。したがって、
図7B及び
図7Cは、
図2のメタルアーチファクト補正方法を適用して生成された画像である画像704が、明らかなノイズ低減を提供するものであり、その結果として、メタルアーチファクトを低減するためのより効率的な方法を提供するものであることを示している。
【0037】
図7Dは、
図7Aの画像702、704及び706上の1つの位置で生成された信号を示している。
図7Dは、画像702、704及び706を通る線720を示している。また、グラフ
図722は、画像702、704及び706上の線720の位置に対応して生成された信号を示している。例として、画像702上の線720の位置に対応する信号724が生成され、画像704上の線720の位置に対応する信号726が生成され、画像706上の線720の位置に対応する信号728が生成されている。楕円730及び732は、ノイズ低減の方法による結果の違いが大きい位置を強調しており、
図2の方法は、目標であるノイズの無い信号に近い結果を提供している。ここで、楕円730は、
図2の方法が、
図1の既知の方法と同様に高信号を維持することを示している。また、楕円732は、
図2の方法が、低信号を有する領域(即ち、ノイズのある領域)において、目標であるノイズの無い信号に近い結果を提供することを示している。
【0038】
図8は、本開示の方法500を実施可能な医用イメージング装置860の例示的な実施形態を示している。医用イメージング装置860は、少なくとも1つのスキャン装置862、それぞれが特別に構成されたコンピュータ装置(例えば、特別に構成されたデスクトップコンピュータ、特別に構成されたラップトップコンピュータ、特別に構成されたサーバ)である1つ以上の画像生成装置864と、表示装置866と、を含む。
【0039】
スキャン装置862は、被検体(例えば、患者)の領域(例えば、エリア、ボリューム、スライス)をスキャンすることによってスキャンデータを収集するように構成されている。スキャンの手段は、例えば、MRI、コンピュータ断層撮影(Computed Tomography:CT)、ポジトロン放射断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)、X線透過撮影及び超音波検査等である。
【0040】
1つ以上の画像生成装置864は、スキャン装置862からスキャンデータを取得し、当該スキャンデータに基づいて被検体の部位の画像を生成する。1つ以上の画像生成装置864は、画像を生成するために、例えば、中間画像生成中又は最終画像再構成中にスキャンデータに対して再構成処理を実行してもよい。再構成処理の例としては、圧縮センシング(Compressed Sensing:CS)、GRAPPA(GeneRalized Autocalibrating Partially Parallel Acquisitions)、CG-SENSE(Conjugate Gradient-SENSitivity Encoding)、SENSE(SENSitivity Encoding)、ARC(Autocalibrating Reconstruction for Cartesian imaging)、SPIRIT(Iterative Self-consistent Parallel Imaging Reconstruction)及びLORAKS(LOw-RAnk modeling of local K-Space neighborhoods)等が挙げられる。
【0041】
一実施形態では、1つ以上の画像生成装置864は、画像を生成した後に、当該画像を表示装置866に送信し、表示装置866は、当該画像を表示する。
【0042】
別の実施形態では、上記に加えて、1つ以上の画像生成装置864は、同じスキャンデータから複数の画像を生成してもよい。1つ以上の画像生成装置864は、同じスキャンデータから異なる再構成プロセスを用いて2つの画像を生成してもよく、一方の画像の解像度が、他方の画像の解像度より低くてもよい。また、1つ以上の画像生成装置864は、1つの画像を生成してもよい。
【0043】
ここで、
図9を参照すると、
図9は、MRI装置970の非限定的な実施例を示している。
図9に示すMRI装置970は、架台971(概略断面図で示す)、及び、インターフェースを介して相互に接続された様々な関連するMRIシステム構成要素972を含む。通常、少なくとも架台971は、シールドルーム内に配置される。
図9に示すMRI装置970の幾何学的構造は、静磁場B
0磁石973、Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイルセット974、及び、全身用RFコイル(Whole-Body RF Coil:WBC)975を含む実質的に同軸の円筒状構造を含む。この円筒状構造に含まれる要素の水平軸に沿って、患者寝台978によって支持された患者977の頭部を実質的に取り囲むように、イメージングボリューム976が示されている。
【0044】
イメージングボリューム976において、患者の頭部(本明細書では、例えば、「スキャン被検体」又は「被検体」と称される)により近接するように、1つ以上の小型のアレイRFコイル979が接続される。当業者には理解されるように、WBC(全身用RFコイル)と比べて相対的に小さい、特定の身体部分(例えば、腕、肩、肘、手首、膝、脚、胸、脊椎等)に対してカスタマイズされた表面コイル等のRFコイル及び/又はアレイが用いられる。ここでは、このような小型のRFコイルをアレイコイル(Array Coil:AC)又はフェーズドアレイコイル(Phased-Array Coil:PAC)と呼ぶ。これらは、イメージングボリューム976にRF信号を送信するように構成された少なくとも1つのコイルと、イメージングボリューム976内の患者の頭部等の被検体からRF信号を受信するように構成された複数の受信コイルとを含む。
【0045】
MRI装置970は、ディスプレイ980、キーボード981及びプリンタ982に接続された入出力ポートを有するMRIシステムコントローラ983を含む。当業者には理解されるように、ディスプレイ980は、制御入力も提供するようなタッチスクリーン型であってもよい。また、マウス又は他の入出力デバイスが用いられてもよい。
【0046】
MRIシステムコントローラ983は、MRIシーケンスコントローラ984とインターフェースを介して接続されており、Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイルドライバ985に加えて、RF送信機986、及び、(同一のRFコイルが送信及び受信の両方に使用される場合は)送信/受信スイッチ987を順次に制御する。MRIシーケンスコントローラ984は、パラレルイメージングを含むMRI(核磁気共鳴イメージング、即ち、NMRイメージングとしても知られている)の技法を実行するための適切なプログラムコード構造988を含む。MRIシーケンスコントローラ984は、パラレルイメージングを伴うMRI用、又は、パラレルイメージングを伴わないMRI用に構成される。さらに、MRIシーケンスコントローラ984は、1つ以上の準備スキャン(プレスキャン)シーケンス、及び、メインスキャン磁気共鳴(Magnetic Resonance:MR)画像(診断画像と称される)を収集するためのスキャンシーケンスを実行させる。プレスキャンによって得られるMRデータは、例えば、全身RFコイル975及び/又はアレイRFコイル979の感度マップ(コイル感度マップ又は空間感度マップと称されることもある)を計測するため、及び、パラレルイメージング用の展開マップを計測するために用いられる。
【0047】
MRIシステム構成要素972は、ディスプレイ980に送信される処理済みの画像データを生成するようにMRIデータプロセッサ990に入力を提供するRF受信機989を含む。また、MRIデータプロセッサ990は、以前に生成されたMRデータやMR画像、マップ(例えば、コイル感度マップ、パラレルイメージング用の展開マップ、歪みマップ等)、システム構成パラメータ等が格納されたメモリ991、及び、MRI画像再構成プログラムコード構造992及び993にアクセスするように構成されている。
【0048】
一実施形態では、MRIデータプロセッサ990は、処理回路によって実現される。処理回路は、例えば、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit :ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複雑プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等のデバイス、並びに、本開示に記載された機能を実行するように構成された他の回路構成要素を含む。
【0049】
MRIデータプロセッサ990は、本明細書に記載の方法500等、MRI画像再構成プログラムコード構造992及び993に含まれている1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを実行する。別の方法として、当該命令は、ハードディスク又はリムーバブルメディアドライブ等の別のコンピュータ可読媒体から読み取られてもよい。MRI画像再構成プログラムコード構造992及び993に含まれる命令のシーケンスを実行するために、マルチプロセッシング構成における1つ以上のプロセッサが用いられてもよい。別の実施形態では、ソフトウェアの命令の代わりに、又は、ソフトウェアの命令と組み合わせて、ハードワイヤード回路が用いられてもよい。このように、本開示の実施形態は、ハードウェア回路及びソフトウェアの何らかの特定の組み合わせに限定されるものではない。
【0050】
さらに、本明細書で使用されている「コンピュータ可読媒体」の用語は、実行用のMRIデータプロセッサ990に命令を供給する任意の非一時的な媒体を意味する。コンピュータ可読媒体は、不揮発性の媒体や揮発性の媒体を含む多くの形態のものであり得るが、これらに限定されるものではない。不揮発性の媒体としては、例えば、光学ディスク、磁気ディスク及び光磁気ディスク、又は、リムーバブルメディアのドライブが挙げられる。また、揮発性の媒体には、ダイナミックメモリが含まれる。
【0051】
また、
図9には、上述したMRI画像再構成プログラムコード構造993が記憶された記憶装置(メモリ)が一般化されて示されている。ここで、MRI画像再構成プログラムコード構造993は、MRI装置970に含まれる種々のデータ処理コンポーネントによって呼び出し可能な非一時的コンピュータ可読記憶媒体に記憶されている。当業者であれば理解されるように、MRI画像再構成プログラムコード構造993の記憶装置は、分割されて、少なくとも部分的に、MRIシステム構成要素972の中で、通常の動作中に最も即時にMRI画像再構成プログラムコード構造993を必要とする異なる処理コンピュータに直接接続される(即ち、共有的に記憶されて、MRIシステムコントローラ983に直接接続されるのではない)ように構成されていてもよい。
【0052】
さらに、
図9に示されるMRI装置970は、以下に記載される例示的な実施形態を実行するために利用される。上述したMRIシステム構成要素972は、異なる論理集合の「ボックス」に分割されていてもよく、典型的には、多数のデジタルシグナルプロセッサ(Digital Signal Processor:DSP)、マイクロプロセッサ及び特殊目的処理回路(例えば、高速A/D(Analog to Digital)変換、高速フーリエ変換、アレイ処理等用の処理回路)を含む。これらの各処理回路は、典型的には、物理的なデータ処理回路がクロックサイクル(又は、所定数のクロックサイクル)ごとに1つの物理的状態から他の物理的状態へ進行する、クロック制御された「ステートマシン」である。
【0053】
さらに、動作の過程において、処理回路(例えば、CPU、レジスタ、バッファ、演算ユニット等)の物理的状態が1つのクロックサイクルから他のクロックサイクルへ漸進的に変化するだけでなく、データ記憶媒体(例えば、磁気記憶媒体内のビット記憶部)の関連する物理的状態も、そのようなシステムの動作中に1つの状態から他の状態へ変化する。例えば、画像再構成処理、及び/又は、時には画像再構成マップ(例えば、コイル感度マップ、展開マップ、ゴーストマップ、歪みマップ等)の生成処理の最後に、物理的な記憶媒体に含まれる、コンピュータ可読かつアクセス可能なデータ値記憶部のアレイが、何らかの先行の状態(例えば、全ての均一な「0」の値又は全て「1」の値)から新しい状態へ変化する。ここで、当該アレイの物理的部分の物理的状態は、最小値と最大値との間で変化することで、実世界の物理的イベント及び物理的状態(例えば、イメージングボリューム空間にわたる患者の内部の物理的構造)を表現する。当業者であれば理解されるように、コンピュータ制御プログラムコードの特定の構造がMRI装置970の1つ又は複数のCPUによって命令レジスタに順次ロードされて実行された際にMRI装置970内で動作可能な状態の特定のシーケンスを発生させてその状態を変化させるように、データ値が記憶された当該アレイは、物理的構造を表現し、また、物理的構造を構成する。
【0054】
自明なように、上述した内容を踏まえて、多くの変更及び変形が可能である。したがって、本願が開示する技術は、添付の特許請求の範囲内で、本明細書で具体的に記載されている方法とは別の方法で実施されてもよいことが理解される。
【0055】
また、本開示の実施形態は、以下の付記に記載されるようであってもよい。
【0056】
(付記1)磁気共鳴イメージング(MRI)データにおけるアーチファクトを補正する方法であって、方法は、身体部分に関連するスキャン領域のスライス方向に沿って複数のスライスを収集することと、スライス方向に沿って収集された複数のスライスの信号分散の空間的範囲を推定することと、信号分散の推定された空間的範囲に基づいて、スライス方向に沿って収集された複数のスライスの信号を結合して、スキャン領域の再構成された画像を生成することと、を含む、方法。
【0057】
(付記2)収集された複数のスライスのそれぞれを、2次元スライスから3次元(3D)空間ボリュームスライスに空間的にエンコードして、一連の3D空間ボリュームスライスを生成すること、をさらに含むが、これに限定されない、(付記1)に記載の方法。
【0058】
(付記3)取得された複数のスライスの信号を結合することが、二乗和計算及び複素数値和の少なくとも1つを使用して、収集された複数のスライスの信号を結合することを含むが、これに限定されない、(付記1)及び(付記2)のいずれか1つに記載の方法。
【0059】
(付記4)スライス方向に沿って収集された複数のスライスの信号分散の空間的範囲を推定することが、3D空間双極子応答関数を使用してスライス方向に沿って収集された複数のスライスの信号分散の空間的範囲を推定することを含むが、これに限定されない、(付記1)~(付記3)のいずれか1つに記載の方法。
【0060】
(付記5)スライス方向に沿って収集された複数のスライスから、最高の画素強度を有するスライスを特定することと、3D空間双極子応答関数に基づいて、最高の画素強度を有するスライスに近傍する少なくとも1つの近傍スライスを特定することと、をさらに含み、信号分散の推定された空間的範囲に基づいて、スライス方向に沿って収集された複数のスライスの信号を結合することが、(a)最高の画素強度を有するスライスの信号と(b)少なくとも1つの近傍スライスの信号を結合することを含むが、これに限定されない、(付記1)~(付記4)のいずれか1つに記載の方法。
【0061】
(付記6)最高の画素強度を有するスライスに近傍する少なくとも1つの近傍スライスを特定することが、3D空間双極子応答関数に基づいて、最高の画素強度を有するスライスに近傍する少なくとも1つの近傍スライスを特定することを含むが、これに限定されない、(付記5)に記載の方法。
【0062】
加えて、本発明は、アーチファクトがメタルアーチファクトである、(付記1)~(付記6)のいずれかに記載の方法も含む。
【0063】
(付記7)磁気共鳴イメージング(MRI)データにおけるアーチファクトを補正する装置であって、装置は、身体部分に関連するスキャン領域のスライス方向に沿って複数のスライスを収集し、スライス方向に沿って収集された複数のスライスの信号分散の空間的範囲を推定し、信号分散の推定された空間的範囲に基づいて、スライス方向に沿って収集された複数のスライスの信号を結合して、スキャン領域の再構成された画像を生成する、ように構成された処理回路、を含むが、これに限定されない、装置。
【0064】
(付記8)処理回路が、収集された複数のスライスのそれぞれを、2次元スライスから3次元(3D)空間ボリュームスライスに空間的にエンコードして、一連の3D空間ボリュームスライスを生成するように構成された処理回路、をさらに含むが、これに限定されない、(付記7)に記載の装置。
【0065】
(付記9)収集された複数のスライスの信号を結合するように構成された処理回路が、二乗和計算及び複素数値和の少なくとも1つを使用して、収集された複数のスライスの信号を結合するように構成された処理回路を含むが、これに限定されない、(付記7)及び(付記8)のいずれか1つに記載の装置。
【0066】
(付記10)スライス方向に沿って収集された複数のスライスの信号分散の空間的範囲を推定するように構成された処理回路が、3D空間双極子応答関数を使用してスライス方向に沿って収集された複数のスライスの信号分散の空間的範囲を推定するように構成された処理回路を含むが、これに限定されない、(付記7)~(付記9)のいずれか1つに記載の装置。
【0067】
(付記11)スライス方向に沿って収集された複数のスライスから、最高の画素強度を有するスライスを特定するように構成された処理回路と、3D空間双極子応答関数に基づいて、最高の画素強度を有するスライスに近傍する少なくとも1つの近傍スライスを特定するように構成された処理回路と、をさらに含み、信号分散の推定された空間的範囲に基づいて、スライス方向に沿って収集された複数のスライスの信号を結合するように構成された処理回路が、(a)最高の画素強度を有するスライスの信号と(b)少なくとも1つの近傍スライスの信号を結合するように構成された処理回路を含むが、これに限定されない、(付記7)~(付記10)のいずれか1つに記載の装置。
【0068】
(付記12)最高の画素強度を有するスライスに近傍する少なくとも1つの近傍スライスを特定するように構成された処理回路が、3D空間双極子応答関数に基づいて、最高の画素強度を有するスライスに近傍する少なくとも1つの近傍スライスを特定するように構成された処理回路を含む、(付記11)に記載の装置。
【0069】
加えて、本発明は、アーチファクトがメタルアーチファクトである、(付記7)~(付記12)のいずれかに記載の装置も含む。
【0070】
(付記13)コンピュータによって実行されると、磁気共鳴イメージング(MRI)データにおけるアーチファクトを補正する方法をコンピュータに実行させる、コンピュータ可読命令を格納する非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、方法は、(付記1)から(付記6)のいずれか1つに記載の方法を含むが、これに限定されない、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【0071】
加えて、本発明は、アーチファクトがメタルアーチファクトである、(付記13)に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体も含む。
【0072】
したがって、前述の議論は、本発明の単なる例示的な実施形態を開示し、記載するにすぎない。当業者には理解されるように、本発明は、その精神又は本質的特徴から逸脱することなしに、他の特定の形態で具体化されてもよい。したがって、本発明の開示は、本発明の範囲並びに他の特許請求の範囲を限定するものではなく、例示することを意図している。本明細書での教示の容易に認識可能な変形を含む本開示は、発明の主題が公共の用に供されないように、前述の特許請求の範囲の用語の範囲を、部分的に定義する。
【0073】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、アーチファクトの低減を基にしたMRIにおいて改善されたノイズ低減を実現することができる。
【0074】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0075】
970 MRI装置
990 MRIデータプロセッサ