(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133870
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20230920BHJP
B66B 7/00 20060101ALN20230920BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B7/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039109
(22)【出願日】2022-03-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宮川 行宏
【テーマコード(参考)】
3F304
3F305
【Fターム(参考)】
3F304BA02
3F304BA22
3F305BA05
(57)【要約】
【課題】作業者とエレベータとが接触することを防止できるエレベータシステムを提供する。
【解決手段】群管理サーバーは、操作された待機スイッチが昇降路の乗場に設けられている場合に、昇降路のうち操作された待機スイッチが設けられた保守昇降路における予め設定された区間に移動する乗りかごを止め、且つ保守昇降路の乗りかごが空きかご状態であること又は保守昇降路の乗りかごが移行路へ移動したことを条件に予め設定された区間内の乗りかご又は昇降駆動装置を休止させ、移行路に乗場が設けられ、且つ操作された待機スイッチが移行路の乗場に設けられている場合に、移行路のうち操作された待機スイッチが設けられた保守移行路における予め設定された区間に移動する乗りかごを止め、且つ保守移行路の乗りかごが空きかご状態であること又は保守移行路の乗りかごが昇降路へ移動したことを条件に予め設定された区間内の乗りかご又は移動装置を休止させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごと、上下方向に延びる昇降路内に、前記乗りかごと結合可能で、且つ前記乗りかごを前記昇降路内で昇降させる昇降駆動装置を備える昇降駆動部と、前記昇降路と隣接し、上下方向又は水平方向に延びる移行路内に、前記乗りかごと結合可能で、且つ前記乗りかごが前記移行路内で移動するように構成される移動装置を備える移動部と、を備え、前記乗りかごは、前記昇降駆動装置と前記移動装置に結合・分離可能に構成され、且つ前記昇降路と前記移行路とを移動自在である横縦移動エレベータに適用されるエレベータシステムであって、
乗場毎に設けられ、保守作業を行う作業者によって操作される待機スイッチと、前記乗りかご、前記昇降駆動装置及び前記移動装置の運行を管理する群管理サーバーと、を備え、
前記群管理サーバーは、前記待機スイッチが操作されたことの通知を受けるように構成され、
前記通知を受けた前記群管理サーバーは、
操作された前記待機スイッチが前記昇降路の前記乗場に設けられている場合には、操作された前記待機スイッチが設けられた乗場の属する前記昇降路である保守昇降路における予め設定された区間に移動しようとする前記乗りかごを止め、且つ前記保守昇降路における前記区間内の前記乗りかごが空きかご状態であること又は前記保守昇降路における前記区間内の前記乗りかごが当該区間外へ移動したことを条件に当該区間内の前記乗りかご又は前記昇降駆動装置を休止させ、
前記移行路に前記乗場が設けられ、且つ操作された前記待機スイッチが前記移行路の前記乗場に設けられている場合には、操作された前記待機スイッチが設けられた乗場に属する前記移行路である保守移行路における予め設定された区間に移動しようとする前記乗りかごを止め、且つ前記保守移行路における前記区間内の前記乗りかごが空きかご状態であること又は前記保守移行路における前記区間内の前記乗りかごが当該区間外へ移動したことを条件に当該区間内の前記乗りかご又は前記移動装置を休止させる、エレベータシステム。
【請求項2】
前記待機スイッチは、操作されることで点検モードとなるように構成され、
前記群管理サーバーは、前記点検モードが解除されるまで、前記保守昇降路又は前記保守移行路にある前記乗りかごに対して乗場呼を割り当てない、請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記昇降路は、上下方向に連通する各乗場に対応した乗場昇降路を複数備え、
前記移行路は、上下方向又は水平方向に連通する各乗場に対応した乗場移行路を複数備え、
前記通知を受けた前記群管理サーバーは、
前記保守昇降路では、操作された前記待機スイッチが設けられている前記乗場に対応する前記乗場昇降路以外の前記乗場昇降路で前記乗りかご又は前記昇降駆動装置を休止させ、
前記保守移行路では、操作された前記待機スイッチが設けられている前記乗場に対応する前記乗場移行路以外の前記乗場移行路で前記乗りかご又は前記移動装置を休止させる、請求項1又は請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記待機スイッチは、一定時間後に操作が有効となる予約操作が可能に構成される、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
乗りかごと、上下方向に延びる昇降路内に、前記乗りかごと結合可能で、且つ前記乗りかごを前記昇降路内で昇降させる昇降駆動装置を備える昇降駆動部と、前記昇降路と隣接し、上下方向又は水平方向に延びる移行路内に、前記乗りかごと結合可能で、且つ前記乗りかごが前記移行路内で移動するように構成される移動装置を備える移動部と、を備え、前記乗りかごは、前記昇降駆動装置と前記移動装置に結合・分離可能に構成され、且つ前記昇降路と前記移行路とを移動自在である横縦移動エレベータに適用されるエレベータシステムであって、
乗場毎に設けられ、保守作業を行う作業者によって操作されることで、前記乗場に設けられる乗場ドアを開放するドアロック解除スイッチと、前記乗りかご、前記昇降駆動装置及び前記移動装置の運行を管理する群管理サーバーと、を備え、
前記群管理サーバーは、前記ドアロック解除スイッチが操作されたことの通知を受けるように構成され、
前記通知を受けた前記群管理サーバーは、
操作された前記ドアロック解除スイッチが前記昇降路の前記乗場に設けられている場合には、操作された前記ドアロック解除スイッチが設けられた乗場の属する前記昇降路である保守昇降路における予め設定された区間に移動しようとする前記乗りかごを即時停止し、且つ予め設定された区間内における前記区間内の前記乗りかご又は前記昇降駆動装置を即時停止させ、
前記移行路に前記乗場が設けられ、且つ操作された前記ドアロック解除スイッチが前記移行路の前記乗場に設けられている場合には、前記移行路のうち操作された前記ドアロック解除スイッチが設けられた乗場の属する前記移行路である保守移行路における予め設定された区間に移動する前記乗りかごを即時停止し、且つ予め設定された区間内の前記乗りかご又は前記移動装置を即時停止させる、エレベータシステム。
【請求項6】
前記移行路は、水平方向に連通する乗場移行路を複数備える横走行路を含み、
前記横走行路は、該横走行路を区切り又は前記昇降路と前記横走行路との間を区切るゲートを備え、
前記ゲートは、保守作業の際に前記作業者によって操作されるスイッチであって、前記横走行路の前記乗場に設けられる前記スイッチが操作された場合に、前記乗場移行路同士の連通部分で前記横走行路を区切り、又は前記昇降路と前記横走行路との連通部分で前記昇降路と前記横走行路とを区切るように構成され、
前記保守移行路における予め設定された区間は、前記横走行路のうち、操作された前記スイッチが設けられる前記乗場に対応する乗場移行路を含む、前記ゲートで区切られた空間である、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
乗りかごが移動可能な移動路内を点検する際に用いられるエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、縦横自在に走行できる乗りかごを備えるエレベータがある(例えば特許文献1参照)。このエレベータは、隣合う仕切りのない2つの前記移動路としての昇降路それぞれでガイドレールに沿って昇降する昇降駆動装置と、該昇降駆動装置に結合され、且つ前記昇降駆動装置の垂直面に設けた軌道部に沿って水平移動できるよう構成された乗りかごとを備える。このエレベータによれば、前記乗りかごは、前記軌道部を通じて隣接した2つの昇降路に設置された前記昇降駆動装置との間で移動することにより、隣合う2つの昇降路間を移動できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エレベータでは、故障や不具合がないか等の点検作業が保守点検を行う作業者によって定期的に行われている。この点検作業は、前記乗りかごや前記昇降駆動装置以外に、前記昇降路内についても行われる。前記昇降路について点検作業を行う場合、一般に、前記昇降路内の前記乗りかごや前記昇降駆動装置の動作を停止させる必要がある。
【0005】
しかし、特許文献1記載のエレベータでは、前記乗りかごが隣合う2つの前記昇降路間を移動するため、点検作業を行おうとする前記昇降路内の前記乗りかごや前記昇降駆動装置の動作を停止したとしても、隣接した昇降路から前記乗りかごが移動してくることで、前記乗りかごや前記昇降駆動装置が昇降路内の保守点検を行う作業者に接触するおそれがあった。
【0006】
なお、このような問題は、昇降路が隣合う場合に限られず、前記移動路として水平方向に延びる横走行路と前記昇降路とが隣接する場合や、上記特許文献1に記載される、乗りかごが構造物の垂直面に設けた水平の軌道部や水平方向に移動する移動体を介して、エレベータ設置建物等構造物から別のエレベータ設置建物等構造物に移行する場合においても生じていた。
【0007】
そこで、本発明は、作業者とエレベータとが接触することを防止できるエレベータシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、乗りかごと、上下方向に延びる昇降路内に、前記乗りかごと結合可能で、且つ前記乗りかごを前記昇降路内で昇降させる昇降駆動装置を備える昇降駆動部と、前記昇降路と隣接し、上下方向又は水平方向に延びる移行路 内に、前記乗りかごと結合可能で、且つ前記乗りかごが前記移行路内で移動するように構成される移動装置を備える移動部と、を備え、前記乗りかごは、前記昇降駆動装置と前記移動装置に結合・分離可能に構成され、且つ前記昇降路と前記移行路とを移動自在である横縦移動エレベータに適用されるエレベータシステムであって、乗場毎に設けられ、保守作業を行う作業者によって操作される待機スイッチと、前記乗りかご、前記昇降駆動装置及び前記移動装置の運行を管理する群管理サーバーと、を備え、前記群管理サーバーは、前記待機スイッチが操作されたことの通知を受けるように構成され、前記通知を受けた前記群管理サーバーは、操作された前記待機スイッチが前記昇降路の前記乗場に設けられている場合には、操作された前記待機スイッチが設けられた乗場の属する前記昇降路である保守昇降路における予め設定された区間に移動しようとする前記乗りかごを止め、且つ前記保守昇降路における前記区間内の前記乗りかごが空きかご状態であること又は前記保守昇降路における前記区間内の前記乗りかごが当該区間外へ移動したことを条件に当該区間内の前記乗りかご又は前記昇降駆動装置を休止させ、前記移行路に前記乗場が設けられ、且つ操作された前記待機スイッチが前記移行路の前記乗場に設けられている場合には、操作された前記待機スイッチが設けられた乗場に属する前記移行路である保守移行路における予め設定された区間に移動しようとする前記乗りかごを止め、且つ前記保守移行路における前記区間内の前記乗りかごが空きかご状態であること又は前記保守移行路における前記区間内の前記乗りかごが当該区間外へ移動したことを条件に当該区間内の前記乗りかご又は前記移動装置を休止させる、エレベータシステムである。
【0009】
前記構成によれば、操作された前記待機スイッチが前記昇降路の前記乗場に設けられている場合には、前記保守昇降路における予め設定された区間に移動する前記乗りかごを止め、且つ予め設定された区間内の前記乗りかご又は前記昇降駆動装置を休止させるため、例えば、予め設定された区間内の保守作業を行う作業者と、前記乗りかごや前記昇降駆動装置とが接触することが防止でき、前記移行路に前記乗場が設けられ、且つ操作された前記待機スイッチが前記移行路の前記乗場に設けられている場合には、前記保守移行路における予め設定された区間に移動する前記乗りかごを止め、且つ予め設定された区間内の前記乗りかご又は前記移動装置を休止させるため、例えば、予め設定された区間内の保守作業を行う作業者と、前記乗りかごや前記昇降駆動装置とが接触することを防止できる。
【0010】
また、本発明では、前記待機スイッチは、操作されることで点検モードとなるように構成され、前記群管理サーバーは、前記点検モードが解除されるまで、前記保守昇降路又は前記保守移行路にある前記乗りかごに対して乗場呼を割り当てなくてもよい。
【0011】
前記構成によれば、前記群管理サーバーは、前記点検モードが解除されるまで、前記保守昇降路又は前記保守移行路にある前記乗りかごに対して乗場呼を割り当てないため、例えば、前記作業者による保守作業が終了していない前記保守昇降路や前記保守移行路において、前記乗りかごが移動することを防止でき、前記乗りかごと前記作業者とが接触することを防止できる。
【0012】
また、本発明では、前記昇降路は、上下方向に連通する各乗場に対応した乗場昇降路を複数備え、前記移行路は、上下方向又は水平方向に連通する各乗場に対応した乗場移行路を複数備え、前記通知を受けた前記群管理サーバーは、前記保守昇降路では、操作された前記待機スイッチが設けられている前記乗場に対応する前記乗場昇降路以外の前記乗場昇降路で前記乗りかご又は前記昇降駆動装置を休止させ、前記保守移行路では、操作された前記待機スイッチが設けられている前記乗場に対応する前記乗場移行路以外の前記乗場移行路で前記乗りかご又は前記移動装置を休止させてもよい。
【0013】
前記構成によれば、前記待機スイッチが設けられている前記乗場に対応する前記乗場昇降路以外の前記乗場昇降路で前記乗りかご又は前記昇降駆動装置を休止させ、前記待機スイッチが設けられている前記乗場に対応する前記前記乗場移行路以外の前記乗場移行路で前記乗りかご又は前記移動装置を休止させるため、例えば、前記待機スイッチが設けられている前記乗場から前記作業者が前記保守昇降路内や前記保守移行路内に進入する際に、前記乗りかご、前記昇降駆動装置や前記移動装置が進入の妨げになることを防止できる。
【0014】
また、本発明では、前記待機スイッチは、一定時間後に操作が有効となる予約操作が可能に構成されてもよい。
【0015】
前記構成によれば、前記待機スイッチは、一定時間後に操作が有効となる予約操作が可能に構成されているため、例えば、前記群管理サーバーが通知を受けるまで間にタイムラグが生じ、前記操作が有効になった際に、前記乗りかごが空きかご状態である確率や、前記乗りかごが前記昇降路や隣接する前記移行路へ移行する確率を高めることができる。
【0016】
また、本発明は、乗りかごと、上下方向に延びる昇降路内に、前記乗りかごと結合可能で、且つ前記乗りかごを前記昇降路内で昇降させる昇降駆動装置を備える昇降駆動部と、前記昇降路と隣接し、上下方向又は水平方向に延びる移行路内に、前記乗りかごと結合可能で、且つ前記乗りかごが前記移行路内で移動するように構成される移動装置を備える移動部と、を備え、前記乗りかごは、前記昇降駆動装置と前記移動装置に結合・分離可能に構成され、且つ前記昇降路と前記移行路とを移動自在である横縦移動エレベータに適用されるエレベータシステムであって、乗場毎に設けられ、保守作業を行う作業者によって操作されることで、前記乗場に設けられる乗場ドアを開放するドアロック解除スイッチと、前記乗りかご、前記昇降駆動装置及び前記移動装置の運行を管理する群管理サーバーと、を備え、前記群管理サーバーは、前記ドアロック解除スイッチが操作されたことの通知を受けるように構成され、前記通知を受けた前記群管理サーバーは、操作された前記ドアロック解除スイッチが前記昇降路の前記乗場に設けられている場合には、操作された前記ドアロック解除スイッチが設けられた乗場の属する前記昇降路である保守昇降路における予め設定された区間に移動しようとする前記乗りかごを即時停止し、且つ予め設定された区間内における前記区間内の前記乗りかご又は前記昇降駆動装置を即時停止させ、前記移行路に前記乗場が設けられ、且つ操作された前記ドアロック解除スイッチが前記移行路の前記乗場に設けられている場合には、前記移行路のうち操作された前記ドアロック解除スイッチが設けられた乗場の属する前記移行路である保守移行路における予め設定された区間に移動する前記乗りかごを即時停止し、且つ予め設定された区間内の前記乗りかご又は前記移動装置を即時停止させる、エレベータシステムである。
【0017】
前記構成によれば、操作された前記ドアロック解除スイッチが前記昇降路の前記乗場に設けられている場合には、前記保守昇降路における予め設定された区間に移動する前記乗りかごを即時停止し、且つ前記予め設定された区間内の前記乗りかご又は前記昇降駆動装置を即時停止させ、前記移行路に前記乗場が設けられ、且つ操作された前記ドアロック解除スイッチが前記移行路の前記乗場に設けられている場合には、前記昇降路から、前記保守移行路における予め設定された区間に移動する前記乗りかごを即時停止し、且つ前記予め設定された区間内の前記乗りかご又は前記移動装置を即時停止させるため、例えば、前記乗場ドアから前記保守昇降路内や前記保守移行路内に入った作業者に、前記乗りかごや前記昇降駆動装置、前記移動装置が接触することが防止できる。
【0018】
また、本発明では、前記移行路は、水平方向に連通する乗場移行路を複数備える横走行を含み、前記横走行路は、該横走行路を区切り又は前記昇降路と前記横走行路との間を区切るゲートを備え、前記ゲートは、保守作業の際に前記作業者によって操作されるスイッチであって、前記横走行路の前記乗場に設けられる前記スイッチが操作された場合に、前記乗場移行路同士の連通部分で前記横走行路を区切り、又は前記昇降路と前記横走行路との連通部分で前記昇降路と前記横走行路とを区切るように構成され、前記保守移行路における予め設定された区間は、前記横走行路のうち、操作された前記スイッチが設けられる前記乗場に対応する乗場移行路を含む、前記ゲートで区切られた空間であってもよい。
【0019】
前記構成によれば、前記保守移行路の予め設定された区間に移動する乗りかごを止め、前記保守移行路の予め設定された区間内の前記移動装置や前記乗りかごを止めることができるため、例えば、作業者が前記保守移行路の予め設定された区間内で作業を行う場合に、前記乗りかごや前記移動装置が前記作業者に接触することを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
以上、本発明によれば、前記保守作業を行う作業者と、前記乗りかごや前記昇降駆動装置、前記移動装置とが接触することを防止できるエレベータシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るエレベータにて、乗りかごと昇降駆動装置とが一体とされた状態を示す、斜視での模式図である。
【
図2】
図2は、前記エレベータにて、単体の昇降駆動装置を示す、斜視での模式図である。
【
図3】
図3は、前記エレベータにて、単体の乗りかごを示す、斜視での模式図である。
【
図4】
図4は、前記エレベータにて、乗りかごが一方の昇降駆動装置から他方の昇降駆動装置に移動する様子を示す、斜視での模式図である。
【
図5】
図5は、前記エレベータの昇降路における昇降路駆動装置の昇降態様と乗りかごの昇降路間の移動態様を示す、正面視での模式図である。
【
図6】
図6は、前記エレベータの移動路における乗りかごの移動態様を示す、正面視での模式図である。
【
図7】
図7は、前記エレベータの乗場の周囲を示す模式図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係るエレベータシステムの構成ブロック図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係るエレベータシステムのフローチャートを示す。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係るエレベータシステムのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係るエレベータシステム6について、
図1~10を示しつつ説明する。このエレベータシステム6は、乗りかご3が隣り合う昇降路2A,2A間を移動可能な横縦移動エレベータ1に適用される。
【0023】
まず、本実施形態のエレベータシステム6の適用対象である横縦移動エレベータ1の基本構成について説明する。本実施形態の横縦移動エレベータ1は、
図5に示すように、移動路2として、建物内を複数の階床(フロア)にわたって上下方向に延びる昇降路2Aと、建物の1階部分に設けられ、昇降路2Aに隣接して水平方向に延びる横走行路2Bと、を備える。
【0024】
図5に示すように、本実施形態では、昇降路2Aが図示左右に並列して2本設けられており、これらの昇降路2A,2Aは上下方向に階床(フロア)分延びている。また、建物の各階には、人が乗降するための乗場5が設けられている。そして、昇降路2Aは、各階の乗場5に対応するように設けられた乗場昇降路20が上下方向に連通することにより構成されている。さらに、並列する昇降路2A,2A間では、後述する乗りかご3を移動可能とすべく、両昇降路2A,2Aが水平方向に連通している。即ち、昇降路2A,2Aでは、乗場昇降路20,20同士が連通している。ここで、「移行路」とは、左方の昇降路2Aを基準とした場合、右方の昇降路2Aが移行路となり、右方の昇降路2Aを基準とした場合、左方の昇降路2Aと、横走行路2Bとが移行路となる。
【0025】
図5に示すように、昇降路2A,2Aには、昇降路2A,2A間及び昇降路2Aと横走行路2Bとの間を自在に移動する乗りかご3と、乗りかご3と結合して上下方向に移動する昇降駆動装置4とが配置されている。よって、乗りかご3は、昇降駆動装置4によって昇降路2A内で昇降可能であり、昇降路2A内を昇降して建物の各階に設けられる乗場5に停止可能である。乗りかご3及び昇降駆動装置4の物理的な構成については後述する。なお、本実施形態は、昇降路2Aに複数の昇降駆動装置4が配置され、複数の乗りかご3が昇降可能である、いわゆる「マルチエレベータ」である。
【0026】
図示右方の昇降路2Aの1階部分の乗場昇降路20の右方には、横走行路2Bが設けられている。この横走行路2Bには3台の乗りかご3が配置可能で、3か所の乗場5が設けられる。このため、建物の1階部分については、乗場5が5か所設けられる。なお、横走行路2Bには、複数の乗りかご3が配置されている。また、本実施形態では、昇降路2Aに位置する2か所の乗場5では乗りかご3を直接昇降させられるが、横走行路2Bに位置する3か所の乗場5では、乗りかご3を昇降路2Aまで水平移動させた上で昇降させる必要がある。
【0027】
横走行路2Bは、各乗場5に対応するように設けられた乗場走行路23が水平方向に連通することで構成されている。また、横走行路2Bには、乗りかご3を水平方向に移動可能とする横走行装置(採番しない)が設けられている。本実施形態の横走行装置は、3つの乗場走行路23に亘って設けられることにより、横走行路2B内を移動することがないように構成されている。なお、この横走行装置は、昇降駆動装置4に設けられた後述する軌道部41と同様の部分を有する。即ち、横走行装置には、水平方向に延びる溝状の軌道部(採番しない)が設けられている。そのため、横走行装置は、乗りかご3が軌道部に沿って水平移動できるように構成されている。さらに、横走行装置は、複数(本実施形態では3つ)の乗りかご3と結合できるように構成されている。
【0028】
乗場昇降路20と乗場走行路23とは左右方向で連通している。そのため、乗りかご3は、乗場昇降路20と乗場走行路23との間を移動することが可能である。よって、
図5に示すように、図示右方の昇降路2Aの1階部分の乗場昇降路20に昇降駆動装置4が配置された状態において、該乗場昇降路20に連通する乗場走行路23に配置された乗りかご3は、昇降駆動装置4と横走行装置との間を移動できる。なお、符号を一か所にだけ付したが、
図5に示した13か所の枡全てには、乗場5、乗場昇降路20や乗場走行路23が配置される。
【0029】
図5に示すように、本実施形態では、点検等の保守作業を行う作業者Mが、乗場5から左方の昇降路2A内に入って点検する場合を説明する。そのため、左方の昇降路2Aは、作業者Mによって点検等の保守作業が行われる保守昇降路(採番しない)として構成される。よって、
図5の左方の昇降路2A(保守昇降路)を基準として、該昇降路2Aと隣接する移行路としての右方の昇降路2A内に、移動装置としての昇降駆動装置4を備える。即ち、本実施形態の横縦移動エレベータ1は、昇降路2A,2A間を自在に移動する乗りかご3と、昇降路2Aと該昇降路2A内で乗りかご3を昇降させる昇降駆動装置4とで構成される昇降駆動部(採番しない)と、移行路としての昇降路2Aと該昇降路2A内で乗りかご3を移動(昇降)させる移動装置としての昇降駆動装置4とで構成される移動部(採番しない)と、を備える。
【0030】
図7に示すように、乗場5には、後述する乗場マイコン62が設けられており、乗場ドア51の側方壁面(採番しない)に、乗場マイコン62の一部を構成する乗場操作盤621が露出している。乗場操作盤621は、各階の乗場5に設けられ、通常時に利用者が乗りかご3を呼び出す際に操作(例えばボタン操作)される。この乗場操作盤621には、昇降路2A内の保守作業を行う作業者Mによって操作される待機スイッチ6211が設けられている。そのため、乗場マイコン62は待機スイッチ6211とドアロック解除スイッチ6212を備え、この待機スイッチ6211は、保守昇降路における乗場5の乗場操作盤621に設けられている。この待機スイッチ6211については後述する。乗場ドア51には、乗場ドア51のロックを解除し、閉塞状態の乗場ドア51を開放可能とするためのドアロック解除スイッチ6212が設けられている。待機スイッチ6211やドアロック解除スイッチ6212は、保守作業時に作業者Mに操作される。なお、ドアロック解除スイッチ6212は、作業者Mが所持するドアロック解除キーで操作可能となるように構成されている。
【0031】
続いて、本実施形態に係る乗りかご3と昇降駆動装置4の物理的な構成について説明する。本実施形態に係る乗りかご3と昇降駆動装置4の物理的な構成は、本願の発明者の先願に係る特許文献1に記載された構成と共通している。
図1は、昇降駆動装置4に対して乗りかご3を結合させた状態を示している。昇降駆動装置4は、
図2に示すように、昇降路2Aの内部に設けられたガイドレール21に沿っていて、吊ロープ22により昇降可能に構成されている。ここで、従来のトラクション式エレベータにおいては、吊ロープ22に連結した乗りかご3そのものを昇降させていた。本実施形態では、従来の乗りかご3の部分を昇降駆動装置4に置き換え、さらに昇降駆動装置4の正面側垂直面に水平方向に延びる溝状の軌道部41を設けた構成とすることで、乗りかご3が軌道部41に沿って水平移動できるように構成されている。昇降駆動装置4は、乗りかご3が結合していない分離状態で、乗りかご3が無い空いた空間を、別の乗りかご3や昇降駆動装置4が垂直方向に通過することを妨げないように構成されている。つまり、一つの昇降路2Aにおいて、一の昇降駆動装置4の移動軌跡と、他の昇降駆動装置4の移動軌跡とが重ならないように構成されている。このような構成により、垂直移動及び水平移動する乗りかご3が交差可能になり、省スペースの点で有利な建物等構造物のレイアウトができる。なお、本実施形態の構成はトラクション式であるが、その他の駆動方式でも実施可能である。また、本実施形態の昇降駆動装置4では、昇降駆動装置4を駆動するための駆動モータや機械式ブレーキの動力回路に、ドアロック解除スイッチ6212の接点が挿入されていて、ドアロックを解除するようにドアロック解除スイッチ6212が操作されると、動力回路が遮断されるように構成されている。そのため、保守作業時に、作業者Mがドアロック解除スイッチ6212を操作することにより、ドアロックが解除された昇降路2Aにある全ての昇降駆動装置4は停止する。
【0032】
図3は、本実施形態の乗りかご3を正面側から示したものである。乗りかご3は、利用者が搭乗する乗りかご本体31、及び、乗りかご本体31の背面に、水平方向に延びるように突出しており、昇降駆動装置4の軌道部41や横走行装置の軌道部を走行するための軌道走行部32を備える。なお、軌道走行部32は、乗りかご本体31の側面に設けられていてもよいし、側面及び背面の両方に設けられていてもよい。
【0033】
乗りかご本体31は、開閉により内外を連通させるかごドア33を備える。本実施形態のかごドア33は、開閉単位(一枚のドア、または、開閉の際の移動方向が同じ複数枚のドアから構成される単位)が対称に一対(二つ)設けられた両開きとされている。なお、乗場ドア51も同様の形態とされている。なお、本実施形態では乗りかご3が、昇降路2A、横走行路2Bを越えて上下左右に移動するため、万が一、他の乗りかご3が衝突した場合の衝撃を緩和するため、乗りかご本体31の外部に位置する緩衝装置を設けておくこともできる。この緩衝装置は、乗りかご本体31に直接固定することもできるし、昇降駆動装置4に移動可能に設けられていて、乗りかご本体31を囲むように位置する(乗りかご本体31には直接固定しない)ようにすることもできる。また、乗りかご3の外部(軌道走行部32を含む)の保守を乗りかご3内から行うことができるように、保守用開閉口(ハッチ)を乗りかご本体31に設けてもよい。
【0034】
図4は、水平方向に並んだ2台の昇降駆動装置4,4間で、乗りかご3が軌道部41を通じて移動している途中状態を示している。乗りかご3を移動させるための駆動手段(モータ、調速手段、駆動力出力手段)は、乗りかご3が有していてもよいし、昇降駆動装置4が有していてもよい。例えば、軌道走行部32と軌道部41とに亘って、前記駆動手段としてのリニアモータが形成されたことにより、軌道走行部32と軌道部41とが相対的に水平移動する。このリニアモータ以外に、軌道走行部32または軌道部41に回転モータと、これにより駆動される車輪等の回転体を備えた構造により、軌道走行部32と軌道部41とが相対的に水平移動するものであってもよい。また、駆動手段に対する電源供給は、乗りかご3、昇降駆動装置4のいずれかの側に備えた蓄電装置から供給してもよいし、外部電源から供給してもよい。
【0035】
次に、本実施形態に係るエレベータシステム6の構成について説明する。本実施形態のエレベータシステム6は、
図8に示すように、乗りかご3、昇降駆動装置4の各々の運行を管理する群管理サーバー61と、群管理サーバー61の管理下にある乗場マイコン62、昇降駆動装置マイコン63、乗りかご制御マイコン64を備える。
【0036】
群管理サーバー61は、乗りかご3が使用状態(例えば利用者の搭乗状態)であるか、乗りかご3内の空間に少なくとも利用者が誰もいない空きかご状態であるかを認識可能である。この認識のため、各乗りかご3には、センサやカメラ等を有していて、乗りかご3内部の状況を検知できる空きかご検知手段が設けられており、この空きかご検知手段の検知結果を受けて、群管理サーバー61は前記認識を行う。空きかご検知手段は、前記の他、乗りかご3内の操作盤が所定時間操作されない状態であること(利用者が乗っていれば、通常は操作盤の操作がなされるため)をもって空きかご状態を検知することもできる。
【0037】
群管理サーバー61はまた、乗りかご3が移動路2(昇降路2A及び横走行路2B)のどの位置にあるかを認識する。また、群管理サーバー61は、乗りかご3と昇降駆動装置4との各々に関し、結合状態であるか分離状態であるか、かつ、各々が移動路2のどの位置にあるかを認識可能である。この認識のため、乗りかご3、昇降駆動装置4のうち少なくとも一方に、他方との結合状態を検知するセンサを有する結合検知手段が設けられ、また、移動路2に乗りかご3及び昇降駆動装置4の位置を検知するセンサを有する位置検知手段が設けられており、これら検知手段の検知結果を受けて、群管理サーバー61は前記認識を行う。なお、結合状態の検知や位置検知をできるのであれば、センサ以外の構成を採用してもよい。さらに、群管理サーバー61は、利用者による乗場操作盤621の操作に応じ、適切な乗りかご3に乗場呼を割り当てて、利用者のいる乗場5まで移動させる。加えて、群管理サーバー61は、昇降駆動装置4に乗場呼を割り当てる。
【0038】
群管理サーバー61は、昇降駆動装置マイコン63に対して昇降駆動装置4を止めるように通信可能で、乗りかご制御マイコン64に対して乗りかご3を止めるように通信可能に構成されている。即ち、群管理サーバー61は、乗りかご3、昇降駆動装置4を止めることができる。この群管理サーバー61は、保守昇降路のうち、予め設定された区間内への乗りかご3の移動を止め、また、群管理サーバー61は、保守昇降路のうち、予め設定された区間内の昇降駆動装置4の昇降を止めることができるように構成されている。ここで、「予め設定された区間」とは、保守昇降路のうち、作業者Mにより操作された待機スイッチ6211やドアロック解除スイッチ6212が設けられる乗場5に対応する乗場昇降路20を含む空間のことである。そのため、「予め設定された区間」として、例えば、保守昇降路全体や、一又複数の乗場昇降路20により構成される空間であって、少なくとも作業者Mにより操作された待機スイッチ6211やドアロック解除スイッチ6212が設けられる乗場5に対応する乗場昇降路20を含む空間が該当する。なお、本実施形態の「予め設定された空間」とは保守昇降路全体のことである。よって、群管理サーバー61は、右方の昇降路2Aから左方の昇降路2A(保守昇降路)への乗りかご3の移動を止め、且つ保守昇降路内の昇降駆動装置4の昇降を止める。さらに、保守昇降路内の昇降駆動装置4の昇降を止めることについては、例えば、昇降駆動装置4を最寄り階の乗場5に止めることや、昇降駆動装置4をその場で止めることが挙げられる。また、昇降駆動装置4を最寄り階の乗場5に止めることについて、本実施形態では、保守昇降路内への作業者Mの進入を妨げないようにするため、群管理サーバー61は、作業者Mによって操作された待機スイッチ6211やドアロック解除スイッチ6212が設けられている乗場5に対応する乗場昇降路20以外の乗場昇降路20で、昇降駆動装置4を止める。即ち、本実施形態の群管理サーバー61は、保守昇降路のうちの作業者Mが最初に進入すると推定される乗場昇降路20に乗りかご3や他の昇降駆動装置4が移動してくることを規制している。
【0039】
乗場マイコン62は、乗場5ごとに設けられ、人により操作される入力部である乗場操作盤621(
図8にて図示しない)を備え、操作内容を群管理サーバー61に通知する。上述した通り、乗場操作盤621には、待機スイッチ6211が設けられている。この待機スイッチ6211は、作業者Mにより保守作業開始から終了までの間、操作される。これにより、点検モードとなる。そのため、作業者Mが待機スイッチ6211を操作すると、乗場マイコン62は、操作内容を群管理サーバー61に通知する。また、乗場マイコン62は、乗場ドア51のロックを解除するドアロック解除スイッチ6212を備え、ドアロックスイッチが操作されると、乗場ドア51のドアロックが解除されたことを群管理サーバー61に通知する。
【0040】
昇降駆動装置マイコン63は、昇降駆動装置4に設けられており、昇降路2A内における昇降駆動装置4の現在位置や、乗りかご3の着脱状態を群管理サーバー61に伝達する。乗りかご制御マイコン64は、乗りかご3に設けられており、乗りかご3内に設けられている操作盤の操作内容を群管理サーバー61に伝達したり、乗りかご3内の照明、ディスプレイ装置、ファン等を制御したりする。
【0041】
続いて、
図9,10を用いて、本実施形態のエレベータシステム6による処理について説明する。はじめに、
図9を用いて、待機スイッチ6211が操作される場合について説明する。
【0042】
本実施形態では、保守昇降路(
図5に示す左方の昇降路2A)における3階の乗場5において、作業者Mが、乗場操作盤621に設けられる待機スイッチ6211を操作することにより(ステップS10:Yes)、エレベータシステム6による処理が開始される。待機スイッチ6211が操作されると、点検モードとなり、乗場マイコン62が特定の部分(
図5に示す3階部分)の待機スイッチ6211が操作されたことを群管理サーバー61に通知する。そして、群管理サーバー61は、乗りかご3を制御する乗りかご制御マイコン64に対し、保守昇降路のうち、予め設定された区間内への乗りかご3の移動を止める(ステップS11)。ここで、本実施形態の「予め設定された区間」は保守昇降路全体である。そのため、
図5に示すように、群管理サーバー61は、右方の昇降路2Aから保守昇降路への乗りかご3の移動(
図5に示す横移動)を禁止する。また、群管理サーバー61は、点検モードが解除されるまで保守昇降路の乗りかご3と昇降駆動装置4に対して乗場呼の割り当てを禁止する(ステップS11)。それから、空きかご検知手段の検知結果を受けて、群管理サーバー61は、乗りかご3が空きかご状態であるか否かを確認する(ステップS12)。そして、群管理サーバー61が乗りかご3が使用状態であると判断した場合には(ステップS12:No)、かご呼びを全て処理して、乗りかご3を空きかご状態にする(ステップS13)。また、乗りかご3が空きかご状態であると群管理サーバー61が判断した場合(ステップS12:Yes)や、かご呼びを全て処理した場合(ステップS13)には、群管理サーバー61は、予め設定された区間内の昇降駆動装置4を最寄り階の乗場5に停止させた後、昇降駆動装置4が移動しないように休止させる(ステップS14)。なお、本実施形態では、「予め設定された区間」が保守昇降路全体であるため、保守昇降路内の全ての昇降駆動装置4を最寄り階の乗場5に停止させた後、昇降駆動装置4が移動しないように休止させる。ここで、本実施形態では、最寄り階の乗場5として、作業者Mに操作された待機スイッチ6211が設けられている乗場5に対応する乗場昇降路20以外の乗場昇降路20で、昇降駆動装置4を休止させる。そのため、
図5に示すように、左方の昇降路2Aにおいて、二つの昇降駆動装置4は、3階の乗場昇降路20には停止せず、2階と4階の乗場昇降路20で休止されている。このようにして、予め設定された区間への乗りかご3の移動と、予め設定された区間内の昇降駆動装置4の移動とが規制されている。
【0043】
その後、作業者Mが乗場ドア51を開けて乗場昇降路20に入り、保守作業を行う(ステップS15)。そして、作業者Mによる保守作業が終了したら、待機スイッチ6211を操作して点検モードを解除することで、群管理サーバー61は、乗りかご3や昇降駆動装置4の休止、乗りかご3の移動の禁止、乗りかご3や昇降駆動装置4に対する乗場呼の割り当ての禁止を解消して(ステップS16:Yes)、通常モードに復帰させる。なお、点検モードの解除については作業者Mが待機スイッチ6211を切る操作により行われてもよいし、或いは、作業者Mが待機スイッチ6211を切る操作を行うことなく、群管理サーバー61が、点検モードの解除がされたと処理することにより、点検モードが解除されていてもよい。
【0044】
次に、
図10を用いて、ドアロック解除スイッチ6212が操作される場合について説明する。この場合も上記と同様で、保守昇降路(
図5に示す左方の昇降路2A)における3階の乗場5から保守昇降路の内部に進入する場合を想定して説明する。
【0045】
作業者Mがドアロック解除キーでドアロック解除スイッチ6212を操作することにより(ステップS20:Yes)、エレベータシステム6による処理が開始される。ドアロック解除スイッチ6212が操作されると、閉塞状態の乗場ドア51が開放され、ドアロックが解除された乗場5の乗場マイコン62からドアロックが解除されたことを群管理サーバー61に通知する。このとき、ドアロック解除キーでドアロック解除スイッチ6212を操作することで、昇降駆動装置4の駆動モータや機械式ブレーキの動力回路にドアロックの接点が挿入されてドアロックが解除されるため、昇降駆動装置4への動力が遮断され、ドアロックが解除された昇降路2Aにある全ての昇降駆動装置4が即座に停止する。また、通知を受けた群管理サーバー61は、昇降駆動装置マイコン63に対し、保守昇降路のうち予め設定された区間における全ての昇降駆動装置4の昇降を即時停止させるように通信する(ステップS21)。すなわち、昇降駆動装置4へ供給されていた動力の遮断と、群管理サーバー61による停止処理とが並行して行われる。なお、このとき、作業者Mにより操作されたドア解除ロックスイッチが設けられている乗場5に対応する乗場昇降路20に昇降駆動装置4が位置する場合には、前記乗場昇降路20以外の乗場昇降路20で、昇降駆動装置4を停止させるようにしてもよい。また、群管理サーバー61は、乗りかご制御マイコン64に対して、乗りかご3が右方の昇降路2Aや横走行路2Bから保守昇降路へ移動しないように通信し、保守昇降路への移動中であっても乗りかご3を即時停止させる(ステップS22)。さらに、群管理サーバー61は、保守昇降路の乗りかご3や昇降駆動装置4に対する乗場呼の割り当てを禁止する(ステップS22)。その後、作業者Mが保守昇降路内に入って、保守点検作業を行う(ステップS23)。そして、作業者Mによる保守点検作業が終了したら(ステップS24:Yes)、乗場ドア51を閉鎖することで、群管理サーバー61は、乗りかご3や昇降駆動装置4の停止を解消して、元の通常モードに復帰させる。なお、群管理サーバー61は、乗りかご3や昇降駆動装置4の停止を解消することについては、例えば、乗場ドア51の閉鎖に加えて、再度、ドアロック解除キーでドアロック解除スイッチ6212を操作することにより行われてもよい。
【0046】
以上、本実施形態のエレベータシステム6によれば、作業者Mによって待機スイッチ6211が操作されると、群管理サーバー61は、保守昇降路への乗りかご3の移動を止める。そのため、保守昇降路内に乗りかご3が移動してくることを防止でき、保守昇降路内で保守作業を行う作業者Mと乗りかご3が接触することを防止できる。
【0047】
また、本実施形態のエレベータシステム6では、点検モードが解除されるまで保守昇降路の乗りかご3や昇降駆動装置4に対する乗場呼の割り当てを禁止するため、保守昇降路内で乗りかご3や昇降駆動装置4が移動することが防止され、例えば、保守作業が終了していない保守昇降路内で乗りかご3や昇降駆動装置4が動いて、保守作業を行う作業者Mと接触することを防止できる。なお、ドアロック解除スイッチ6212が操作された場合も同様である。
【0048】
また、本実施形態のエレベータシステム6では、乗りかご3が空きかご状態であると判断した場合やかご呼びを全て処理した場合(即ち、乗りかご3が空きかご状態になった際)に、群管理サーバー61は、予め設定された区間内の昇降駆動装置4を最寄り階の乗場5に停止させた後、昇降駆動装置4が移動しないように休止させる。そのため、昇降駆動装置4と保守昇降路内で保守作業を行う作業者Mとが接触することを防止できる。さらに、本実施形態では、最寄り階の乗場5として、作業者Mに操作された待機スイッチ6211が設けられている乗場5に対応する乗場昇降路20以外の乗場昇降路20で、昇降駆動装置4を休止させる。そのため、保守昇降路のうち、作業者Mが最初に進入すると推定される乗場昇降路20における、作業者Mの進入の妨げを防止できる。
【0049】
また、本実施形態のエレベータシステム6では、作業者Mがドアロック解除キーでドアロック解除スイッチ6212を操作すると、群管理サーバー61は、保守昇降路のうち予め設定された区間における全ての昇降駆動装置4の昇降を即時停止させる。そのため、保守昇降路内を昇降中の昇降駆動装置4が保守昇降路内の作業者Mと接触することを防止できる。特に、本実施形態では、ドアロック解除スイッチ6212が操作されることにより、閉塞状態の乗場ドア51が開放するため、作業者Mが保守昇降路内にすぐに進入できる状況で、昇降駆動装置4の昇降を即時停止ことにより、作業者Mは安心して保守昇降路内に進入できる。さらに、本実施形態では、昇降駆動装置4の駆動モータや機械式ブレーキの動力回路にドアロックの接点が挿入されてドアロックが解除されることにより、昇降駆動装置4への動力が遮断され、ドアロックが解除された昇降路2Aにある全ての昇降駆動装置4が即座に停止する。そのため、昇降駆動装置4への動力が遮断されることによっても昇降駆動装置4を停止でき、昇降駆動装置4と作業者Mとが接触することを防止できる。加えて、本実施形態では、昇降駆動装置4へ供給されていた動力の遮断と、群管理サーバー61による停止処理とが並行して行われる。そのため、多面的に昇降駆動装置4の昇降を停止できるため、昇降駆動装置4と作業者Mとが接触することをより確実に防止できる。
【0050】
また、本実施形態のエレベータシステム6では、作業者Mがドアロック解除キーでドアロック解除スイッチ6212を操作すると、群管理サーバー61は、乗りかご3を制御する乗りかご制御マイコン64に対して、乗りかご3が昇降路2Aや横走行路2Bから保守昇降路のうち予め設定された区間へ移動しないように通信し、保守昇降路への移動中であっても乗りかご3を即時停止させる。そのため、保守昇降路内に移動してくる乗りかご3と保守昇降路内の作業者Mとが接触することを防止できる。
【0051】
続いて、
図6に示すように、点検等の保守作業を行う作業者Mが、乗場5から横走行路2B内に入って点検する場合を説明する。そのため、横走行路2Bは、作業者Mによって点検等の保守作業が行われる保守移行路(採番しない)として構成される。また、
図6の右方の昇降路2Aを基準として、該昇降路2Aと隣接する移行路(保守移行路)としての横走行路2Bに、移動装置としての横走行装置を備えると共に、右方の昇降路2Aと隣接する移行路としての左方の昇降路2Aに、移動装置としての昇降駆動装置4を備える。即ち、横縦移動エレベータ1は、右方の昇降路2Aと横走行路2Bを自在に移動する乗りかご3と、右方の昇降路2Aと該昇降路2A内で乗りかご3を昇降させる昇降駆動装置4とで構成される昇降駆動部(採番しない)と、移行路としての横走行路2Bと該横走行路2B内で乗りかご3を移動(横走行)させる移動装置としての横走行装置とで構成される移動部(採番しない)と、を備える。
【0052】
群管理サーバー61は、乗りかご3と横走行装置とが結合状態であるか、又は分離状態であるかを認識可能である。この認識のため、乗りかご3、横走行装置のうち少なくとも一方に、他方との結合状態を検知するセンサを有する結合検知手段が設けられ、また、横走行路2Bにおける乗りかご3の位置を検知するセンサを有する位置検知手段が設けられており、これらの検知手段の検知結果を受けて、群管理サーバー61は前記認識を行う。
【0053】
横走行装置は、3つの乗場走行路23に亘って設けられているものであり、横走行路2B内を移動することがないように構成されている。この横走行装置には、水平方向に延びる溝状の軌道部(採番しない)が設けられている。そのため、横走行装置は、乗りかご3が軌道部に沿って水平移動できるように構成されている。さらに、横走行装置は、複数(本実施形態では3つ)の乗りかご3と結合できるように構成されている。よって、群管理サーバー61は、横走行路2Bでの横走行装置の移動を止めるようには構成されていない。一方で、乗りかご3を移動させるための駆動手段(モータ、調速手段、駆動力出力手段)を横走行装置が有する場合には、群管理サーバー61は、昇降駆動装置4マイコンに対して駆動手段を止めるように通信可能である。一方で、乗りかご3を移動させるための駆動手段(モータ、調速手段、駆動力出力手段)を乗りかご3が有する場合には、群管理サーバー61は、乗りかご制御マイコン64に対して駆動手段を止めるように通信可能である。このように、群管理サーバー61は、横走行路2Bにおける乗りかご3の軌道部に沿った水平移動を停止できる。
【0054】
即ち、群管理サーバー61は、保守移行路のうち、予め設定された区間内への乗りかご3移動を止め、また、群管理サーバー61は、保守移行路のうち、予め設定された区間内の乗りかご3の移動を止めることができるように構成されている。ここで、この場合、「予め設定された区間」とは、横走行路2Bのうち、作業者Mにより操作された待機スイッチ6211やドアロック解除スイッチ6212が設けられる乗場5に対応する乗場走行路23を含む空間のことである。そのため、「予め設定された区間」として、例えば、横走行路2B全体や、一又複数の乗場走行路23により構成される空間であって、少なくとも作業者Mにより操作された待機スイッチ6211やドアロック解除スイッチ6212が設けられる乗場5に対応する乗場走行路23を含む空間が該当する。なお、本実施形態における「予め設定された区間」とは、作業者Mにより操作された待機スイッチ6211やドアロック解除スイッチ6212が設けられる乗場5に対応する乗場走行路23(
図6に示す3つの乗場走行路23のうち、真ん中の乗場走行路23)のことである。
【0055】
続いて、
図9,10を用いて、エレベータシステム6による処理について説明する。まず、
図9を用いて、待機スイッチ6211が操作される場合について説明する。
【0056】
保守移行路(
図6に示す横走行路2B)の乗場5(
図6に示す3つの乗場5のうち真ん中の乗場5)において、作業者Mが乗場操作盤621に設けられる待機スイッチ6211を操作することにより(ステップS10:Yes)、エレベータシステム6による処理が開始される。待機スイッチ6211が操作されると、点検モードとなり、乗場マイコン62は、特定の部分(
図6に示す3つの乗場5のうち真ん中の乗場5)の待機スイッチ6211が操作されたことを群管理サーバー61に通知する。この通知を受けた群管理サーバー61は、乗りかご3を制御する乗りかご制御マイコン64に対し、保守移行路のうち、予め設定された区間内への乗りかご3の移動を止める(ステップS11)。ここで、本実施形態の「予め設定された区間」は、
図6に示す3つの乗場走行路23のうち、真ん中の乗場走行路23である。そのため、右方の昇降路2Aから保守移行路のうち、真ん中の乗場走行路23への乗りかご3の移動を禁止する。なお、この場合、右方の昇降路2Aから保守移行路のうち、右側や左側の乗場走行路23への乗りかご3の移動は許容される。また、群管理サーバー61は、点検モードが解除されるまで保守移行路の乗りかご3に対して乗場呼の割り当てを禁止する(ステップS11)。そして、空きかご検知手段の検知結果を受けて、群管理サーバー61が乗りかご3が空きかご状態であるか否かを確認し(ステップS12)、乗りかご3が使用状態であると群管理サーバー61が判断した場合には(ステップS12:No)、かご呼びを全て処理して、乗りかご3を空きかご状態にする(ステップS13)。なお、この場合、乗りかご3が右方の昇降路2Aや左方の昇降路2Aに移動することも考えられる。また、乗りかご3が空きかご状態であると群管理サーバー61が判断した場合(ステップS12:Yes)や、かご呼びを全て処理した場合(ステップS13)は、予め設定された区間内の乗りかご3を休止させる(ステップS14)。ここで、本実施形態では、作業者Mに操作された待機スイッチ6211が設けられている乗場5に対応する乗場走行路23以外の乗場走行路23で、乗りかご3を休止させる。そのため、
図6に示すように、横走行路2Bにおいて、二つの乗りかご3は、真ん中の乗場走行路23には停止せず、右側と左側の乗場走行路23で休止する。このようにして、予め設定された区間への乗りかご3の移動と、予め設定された区間内の乗りかご3の移動とが規制されている。
【0057】
その後、作業者Mが乗場ドア51を開けて乗場5から乗場走行路23に入って、保守作業を行う(ステップS15)。そして、作業者Mによる保守作業が終了したら(ステップS16:Yes)、待機スイッチ6211を操作して点検モードを解消することで、群管理サーバー61は、乗りかご3の休止、乗りかご3の移動の禁止、乗りかご3に対する乗場呼の割り当ての禁止を解消して、通常モードに復帰させる。
【0058】
次に、
図10を用いて、ドアロック解除スイッチ6212が操作される場合について説明する。この場合も上記と同様で、保守移行路(
図6に示す横走行路2B)の乗場5から保守移行路の内部に進入する場合を想定して説明する。
【0059】
作業者Mがドアロック解除キーでドアロック解除スイッチ6212を操作することにより(ステップS20:Yes)、エレベータシステム6による処理が開始される。ドアロック解除スイッチ6212が操作されると、閉塞状態の乗場ドア51が開放され、ドアロックが解除された乗場5の乗場マイコン62からドアロックが解除されたことを群管理サーバー61に通知する。そして、群管理サーバー61は、昇降駆動装置4マイコンに対し、保守移動路における乗りかご3の移動を即時停止させるように通信する(ステップS21)。また、群管理サーバー61は、乗りかご3を制御する乗りかご制御マイコン64に対して、乗りかご3が右方の昇降路2Aから保守移行路へ移動しないように通信し、保守昇降路への移動中であっても乗りかご3を即時停止させる(ステップS22)。さらに、群管理サーバー61は、保守移行路の乗りかご3に対する乗場呼の割り当てを禁止する(ステップS22)。その後、作業者Mが保守移行路内に入って、保守点検作業を行う(ステップS23)。そして、作業者Mによる保守点検作業が終了したら(ステップS24:Yes)、乗場ドア51を閉鎖することで、群管理サーバー61は、乗りかご3の停止を解消して、元の通常モードに復帰させる。
【0060】
以上、エレベータシステム6によれば、作業者Mによって待機スイッチ6211が操作されると、群管理サーバー61は、保守移行路のうち、予め設定された区間への乗りかご3の移動を止める。そのため、保守移行路のうち、予め設定された区間に乗りかご3が移動してくることを防止でき、保守移行路内で保守作業を行う作業者Mと乗りかご3とが接触することを防止できる。
【0061】
また、エレベータシステム6では、群管理サーバー61は、点検モードが解除されるまで保守移行路の乗りかご3に対して乗場呼の割り当てを禁止する。そのため、保守移行路内で乗りかご3が移動することが防止され、例えば、保守作業が終了していない保守移行路内で乗りかご3が動いて、保守作業を行う作業者Mと接触することを防止できる。
【0062】
また、本実施形態のエレベータシステム6では、乗りかご3が空きかご状態であると判断した場合やかご呼びを全て処理した場合(即ち、乗りかご3が空きかご状態になった際)に、群管理サーバー61は、予め設定された区間内の乗りかご3を休止させる。そのため、乗りかご3と保守移行路内で保守作業を行う作業者Mとが接触することを防止できる。さらに、作業者Mに操作された待機スイッチ6211が設けられている乗場5に対応する乗場走行路23以外の乗場走行路23で、乗りかご3を休止させる。そのため、保守移行路のうち、作業者Mが最初に進入すると推定される乗場走行路23における、作業者Mの進入の妨げを防止できる。
【0063】
また、本実施形態のエレベータシステム6では、作業者Mがドアロック解除キーでドアロック解除スイッチ6212を操作すると、群管理サーバー61は、保守移行路のうち予め設定された区間における全ての乗りかご3を即時停止させる。そのため、保守移行路内で移動中の乗りかご3が保守移行路内の作業者Mと接触することを防止できる。特に、本実施形態では、ドアロック解除スイッチ6212が操作されることにより、閉塞状態の乗場ドア51が開放するため、作業者Mが保守移行路内にすぐに進入できる状況で、乗りかご3の移動を即時停止ことにより、作業者Mは安心して保守移行路内に進入できる。
【0064】
また、本実施形態のエレベータシステム6では、作業者Mがドアロック解除キーでドアロック解除スイッチ6212を操作すると、群管理サーバー61は、乗りかご3を制御する乗りかご制御マイコン64に対して、乗りかご3が右方の昇降路2Aから保守移行路のうち予め設定された区間へ移動しないように通信し、保守移行路への移行中であっても乗りかご3を即時停止させる。そのため、保守移行路内に移動してくる乗りかご3と保守移行路内の作業者Mとが接触することを防止できる。
【0065】
なお、本発明のエレベータシステム6は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0066】
上記実施形態では、「予め設定された区間」を保守昇降路全体である場合を説明したが、これに限らず、例えば、「予め設定された区間」が作業者Mにより操作された待機スイッチ6211やドアロック解除スイッチ6212が設けられる乗場5に対応する乗場昇降路20である場合には、右方の昇降路2Aから保守昇降路のうち、待機スイッチ6211やドアロック解除スイッチ6212が設けられる乗場5に対応する乗場昇降路20への乗りかご3の移動が禁止される。そのため、例えば、右方の昇降路2Aから保守昇降路のうち、待機スイッチ6211やドアロック解除スイッチ6212が設けられる乗場5に対応する乗場昇降路20以外の乗場昇降路20への乗りかご3の移動は許容される。
【0067】
上記実施形態では、乗りかご3が空きかご状態であると群管理サーバー61が判断した場合(ステップS12:Yes)や、かご呼びを全て処理した場合(ステップS13)に、群管理サーバー61は、乗りかご3や昇降駆動装置4が移動しないように休止させることについて説明したが、これに限らず、例えば、保守昇降路内の乗りかご3を、右方の昇降路2Aや横走行路2Bに移動させた場合に、群管理サーバー61は、昇降駆動装置4が移動しないように休止させてもよい。なお、保守移行路内の乗りかご3を、右方の昇降路2Aに移動させた場合に、移動装置を休止させてもよい。
【0068】
上記実施形態では、「予め設定された区間」が保守昇降路全体であったため、昇降駆動装置4を「予め設定された区間」内で移動させる場合について説明した。しかし、これに限らず、例えば、「予め設定された区間」が作業者Mにより操作された待機スイッチ6211やドアロック解除スイッチ6212が設けられる乗場5に対応する乗場昇降路20であった場合、「予め設定された区間」内の昇降駆動装置4を、「予め設定された区間」外に移動させてから休止させてもよい。
【0069】
なお、上記実施形態では、作業者Mのいる最寄り階の乗場5として、作業者Mに操作された待機スイッチ6211が設けられている乗場5に対応する乗場昇降路20以外の乗場昇降路20で、昇降駆動装置4を休止させる場合について説明した。しかし、これに限らず、作業者Mに操作された待機スイッチ6211が設けられている乗場5に対応する乗場昇降路20で昇降駆動装置4を休止させてもよい。この場合、作業者Mと昇降駆動装置4とが接触しないようにするため、例えば、作業者Mは、別の階から保守昇降路内に入ることが考えられる。また、上記実施形態では、作業者Mに操作された待機スイッチ6211が設けられている乗場5に対応する乗場走行路23以外の乗場走行路23で、乗りかご3を休止させる場合について説明したが、これに限らず、例えば、作業者Mに操作された待機スイッチ6211が設けられている乗場5に対応する乗場走行路23で、乗りかご3を休止させてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、作業者Mが直接、乗場操作盤621(待機スイッチ6211)の操作を行うものとしていたが、これに限らず、乗場操作盤621が、待機スイッチ6211の操作情報と同じ情報を外部から受け入れる情報入力手段を備え、作業者Mの操作端末(例えばタブレット、スマートフォン)から情報入力手段に情報を送信できるよう構成することもできる。
【0071】
また、待機スイッチ6211の操作は、即時に有効になる操作であってもよいし、一定時間後に操作が有効になる予約操作であってもよい。予約操作を行う場合、例えば、群管理サーバー61には、操作が有効になってから待機スイッチ6211が操作されたことの通知がなされる。そのため、群管理サーバー61に通知がなされ、作業者Mが保守作業を開始するまでにタイムラグを生じさせられるので、保守作業の際に空きかご状態(すぐに保守作業できる状態)となっている確率を高めることができる。即ち、作業者が保守昇降路や保守移行路内に入って保守作業を行う際には、保守作業を行う保守昇降路や保守移行路における乗りかご内に利用者が閉じ込められるといった事象が発生しないようにするべく、全てのかご呼びを処理して空きかご状態にしておく必要があり、作業者Mは空きかご状態になるまで待つ必要がある。そこで、事前に、待機スイッチ6211の予約操作を行うことで、保守作業の際に作業者Mが待たされるといった事態を防止できる。なお、この予約操作は、上述した情報入力手段によって、作業者Mが遠隔で行うようにしてもよい。また、この予約操作については、操作が有効となるまでの時間を指定できてもよい、操作が有効となる詳細な日時を指定できるものであってもよい。さらに、この予約操作に係る時間や日時の指定を変更できてもよい。これにより、例えば、作業者Mが複数の建物を巡回しながら保守作業を行っていた場合に、作業者Mが指定した時間や日時に間に合わないときであっても、予約操作に係る時間や日時の指定を変更することで、保守昇降路や保守移行路内の乗りかご3や昇降駆動装置4、移動装置が止まるということを防止できる。また、予約操作された場合のタイムラグは、スイッチ側で生じさせてもよい。
【0072】
上記実施形態では、乗りかご3や昇降駆動装置4を乗場5で休止させる場合について説明したが、これに限らず、乗りかご3と作業者Mとの接触を防止するため、例えば、全ての乗りかご3が図示左方の昇降路2Aから右方の昇降路2Aへ移動するのを待ってから、昇降路2Aにある昇降駆動装置4を乗場5で休止させるようにしてもよい。また、横走行路2Bでは、停止させる乗場5の空きがない場合には、隣接する昇降路2Aに乗りかご3を移動させるか、又は隣接する昇降路2Aがないもしくは移動させる余地がない場合にはその場で休止させてもよい。
【0073】
上記実施形態では、ドアロック解除スイッチ6212が乗場ドア51に設けられている場合について説明したが、これに限らず、ドアロック解除スイッチ6212が乗場操作盤621に設けられていてもよい。
【0074】
上記実施形態において、横走行路2Bは、横走行路2Bにおける乗場走行路23同士の連通部分や、昇降路2Aと横走行路2Bとの連通部分を区切る一又は複数のゲート(図示及び採番しない)を備えることができる。このゲートは、移動装置である横走行装置に設けられ、横走行装置における乗りかご3の移動を妨げるべく、乗りかご3の移動軌跡に直交する方向に延びるように進出する進出状態と、横走行装置における乗りかご3の移動を物理的に妨げないように、乗りかご3の移動軌跡から退避した退避状態とに切り替わる。また、このゲートの状態の切り替えについては、スライド式、揺動式、回転式等、設置する場所の状況に応じて決められる。なお、ゲートの状態の切り替えは、群管理サーバー61からの指示信号によって行われる。さらに、ゲートは、作業者Mに操作されたスイッチ(具体的には、待機スイッチ6211やドアロック解除スイッチ6212)と連動して、進出状態と退避状態とを切り替えるように構成されている。即ち、横走行路2B内の保守作業を行う場合に、スイッチを押すことでゲートが進出状態となり、保守作業の終了後にゲートが退避状態になる。ゲートを進出状態とすることで、連通部分を閉鎖でき、乗りかご3の移動を制限できる。なお、物理的な構成に限らず、ゲートをレーザーや電磁波で構成し、乗りかご3がゲートを越えたら乗りかご3の移動に関する電力を遮断して停止されてもよい。
【0075】
なお、ゲートにより横走行路2Bの乗場走行路23同士の連通部分を区切った場合、「予め設定された区間」は、操作されたスイッチが設けられる乗場5に対応する乗場走行路23を含む空間である。そのため、横走行路2Bのうち、操作されたスイッチが設けられる乗場5に対応する乗場走行路23を含み、一又は複数の乗場走行路23で構成される空間である。一方で、昇降路2Aと横走行路2Bとの連通部分を区切った場合には、「予め設定された区間」は横走行路2Bとなる。
【0076】
上記実施形態では、横走行装置自体が動かない場合について説明したが、これに限らず、例えば、横走行装置が横走行路2B内で移動するように構成されていてもよい。即ち、横走行装置が横走行路2B内を水平方向に移動することで、乗りかご3を横走行路2B内で移動させるように構成されていてもよい。
【0077】
上記実施形態では、
図5,6に示すように、横走行路2Bに乗場5が設けられている場合について説明した。しかし、これに限らず、例えば、横走行路2Bに乗場5が設けられておらず、横走行路2Bが離間した昇降路2A同士を橋渡すためのものであってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…横縦移動エレベータ、2…移動路、21…ガイドレール、22…吊ロープ、2A…昇降路、2B…横走行路、3…乗りかご、31…乗りかご本体、32…軌道走行部、33…かごドア、4…昇降駆動装置、41…軌道部、5…乗場、51…乗場ドア、6…エレベータシステム、61…群管理サーバー、62…乗場マイコン、621…乗場操作盤、6211…待機スイッチ、6212…ドアロック解除スイッチ、63…昇降駆動装置マイコン、64…乗りかご制御マイコン、M…作業者