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特開2023-133942疑似乱数発生器、アナログデジタル変換器及び電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133942
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】疑似乱数発生器、アナログデジタル変換器及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 7/58 20060101AFI20230920BHJP
   G09C 1/00 20060101ALI20230920BHJP
   H03K 3/84 20060101ALI20230920BHJP
   H03M 1/08 20060101ALI20230920BHJP
   H03M 1/12 20060101ALN20230920BHJP
【FI】
G06F7/58 640
G09C1/00 650B
H03K3/84 A
H03M1/08 A
H03M1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039213
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 勇作
【テーマコード(参考)】
5J022
5J300
【Fターム(参考)】
5J022AA01
5J022BA02
5J022CD07
5J022CE09
5J022CF08
5J022CF10
5J300UA07
5J300UA18
5J300UA20
5J300UA28
5J300WA08
5J300WB01
(57)【要約】
【課題】簡易な回路構成、かつ、少ない追加消費電力で、疑似乱数の長周期化を図ることができる疑似乱数発生器、アナログデジタル変換器及び電子機器を提供すること。
【解決手段】メインクロックCLK1で動作する第1の線形帰還シフトレジスタを用いたメイン乱数発生部10と、メインクロックCLK1の周期よりも長い周期のサブクロックCLK2で動作する1以上の第2の線形帰還シフトレジスタを用いたサブ乱数発生部20と、第1の線形帰還シフトレジスタを構成する各レジスタの一部の出力ビットを、第2の線形帰還シフトレジスタを構成する各レジスタの出力ビットの一部である置換ビットに置き換えるビット選択切替回路30と、を備え、メイン乱数発生部10の出力ビットを疑似乱数として出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインクロックで動作する第1の線形帰還シフトレジスタを用いたメイン乱数発生部と、
前記メインクロックの周期よりも長い周期のサブクロックで動作する1以上の第2の線形帰還シフトレジスタを用いたサブ乱数発生部と、
前記第1の線形帰還シフトレジスタを構成する各レジスタの一部の出力ビットを、前記第2の線形帰還シフトレジスタを構成する各レジスタの出力ビットの一部である置換ビットに置き換えるビット選択切替回路と、
を備え、前記メイン乱数発生部の出力ビットを疑似乱数として出力する疑似乱数発生器。
【請求項2】
前記第1の線形帰還シフトレジスタにおける帰還信号のタップ位置は、原始多項式に対応し、前記第1の線形帰還シフトレジスタは、M系列の疑似乱数系列を生成する、
請求項1に記載の疑似乱数発生器。
【請求項3】
前記第1の線形帰還シフトレジスタにおける帰還信号のタップ位置は、レジスタ数を次数とする原始多項式に対応し、前記第1の線形帰還シフトレジスタは、M系列の疑似乱数系列を生成し、
前記第2の線形帰還シフトレジスタにおける帰還信号のタップ位置は、レジスタ数を次数とする原始多項式に対応し、前記第2の線形帰還シフトレジスタは、M系列の疑似乱数系列を生成する、
請求項1に記載の疑似乱数発生器。
【請求項4】
前記第1の線形帰還シフトレジスタ及び1以上の第2の線形帰還シフトレジスタのレジスタ数は、異なり、2以上の第2の線形帰還シフトレジスタのレジスタ数は異なるものを含む、
請求項1~3のいずれか一つに記載の疑似乱数発生器。
【請求項5】
2以上の第2の線形帰還シフトレジスタのサブクロックは異なるものを含む、
請求項1~3のいずれか一つに記載の疑似乱数発生器。
【請求項6】
前記ビット選択切替回路は、
前記第1の線形帰還シフトレジスタにおいて、置換対象の出力ビットが保持される前段レジスタと前記置換ビットが出力される次段レジスタとの間に配置され、前記置換ビットを選択して前記前段レジスタからの出力ビットを前記置換ビットに置換して前記次段レジスタに出力するビット選択器と、
前記置換ビットの出力タップ位置と前記ビット選択器との間を接続する接続線と、
前記メインクロックと前記サブクロックとを用いて前記前段レジスタからの出力ビットを前記置換ビットに切り替えるビット選択信号を生成して前記ビット選択器に出力するビット選択制御部と、
を備える請求項1~3のいずれか一つに記載の疑似乱数発生器。
【請求項7】
前記ビット選択制御部は、前記ビット選択信号を一定周期又は変則周期で生成する、
請求項6に記載の疑似乱数発生器。
【請求項8】
メインクロックで動作する線形帰還シフトレジスタを用いたメイン乱数発生部と、
前記メインクロックの周期よりも長い周期のサブクロックで動作して疑似乱数を出力する1以上のサブ乱数発生部と、
前記線形帰還シフトレジスタを構成する各レジスタの一部の出力ビットを、前記サブ乱数発生部の出力ビットの一部である置換ビットに置き換えるビット選択切替回路と、
を備え、前記メイン乱数発生部の出力ビットを疑似乱数として出力する疑似乱数発生器。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一つに記載の疑似乱数発生器が出力する疑似乱数を用いてディザー信号を生成する、
アナログデジタル変換器。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一つに記載の疑似乱数発生器を備え、前記疑似乱数発生器が出力する疑似乱数を用いた回路を有する、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易な回路構成、かつ、少ない追加消費電力で、疑似乱数の長周期化を図ることができる疑似乱数発生器、アナログデジタル変換器及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、疑似乱数を発生するアルゴリズムとして線形帰還シフトレジスタを用いた手法がある。この手法は計算量が少なく、デジタル回路で容易に実装できるという特徴を持つ。線形帰還シフトレジスタは、自身を構成するビットの一部の排他的論理和を入力とするシフトレジスタである。線形帰還シフトレジスタの出力はクロックに同期して、一定周期の間、0と1の値をランダムに出力することが知られている。また、線形帰還シフトレジスタは、排他的論理和の入力に使用するレジスタの選択により、設定可能な最長の周期となる乱数の数列であるM系列の疑似乱数を発生させることができる。
【0003】
この疑似乱数の使用例としては、例えばアナログデジタル変換時に発生する量子化誤差を軽減するためのディザリングが挙げられる。これは、入力信号に意図的にランダムな雑音を重畳させる方法である。この雑音の発生源として、疑似乱数を使用したノイズ発生器が用いられる。
【0004】
なお、特許文献1には、独立した2つの数列の排他的論理和を取ることで、2つの数列の最小公倍数となる周期の乱数を得ることができる乱数発生装置が開示されている。また、特許文献2には、線形帰還シフトレジスタのタップ位置、すなわち排他的論理和の入力とするレジスタの位置を任意に変更できる乱数生成回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-142682号公報
【特許文献2】特開2006-215825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、M系列の周期は(2^n)-1であるため、例えば、8ビットの線形帰還シフトレジスタの場合、出力する数列の周期の最大値は255である。これは、例えば、基準クロックの周波数が1MHzの場合、0.255msと非常に短い周期となる。乱数の周期が短い場合、用途によっては不都合が生じる。例えば、乱数出力をアナログデジタル変換時に生じる量子化誤差を軽減させるためのディザリングに使用する場合であって、乱数の周期がアナログデジタル変換のサンプリング時間に対して十分長くない場合、2つの周期処理が相互に影響した結果、変換結果にビートが生じ、変換精度が悪化するなどの問題が生じる。このため、一般的に乱数は周期が長いことが望ましい。
【0007】
線形帰還シフトレジスタを用いて発生させる乱数の周期を長くするために行われる一般的な方法は、乱数の発生元になっているシフトレジスタを構成するレジスタ数を単純に増やすことである。例えば、16ビットの線形帰還シフトレジスタであれば周期の最大値は65535となり、24ビットの線形帰還シフトレジスタであれば周期の最大値は16777215となり、レジスタ数の増加とともに乱数の周期は増えていく。
【0008】
しかしながら、単純にシフトレジスタを構成するレジスタ数を増やす方法は、消費電力の増加が大きいという問題がある。一般的にデジタル回路の消費電力は、レジスタの動作率が同じであれば、レジスタの数に比例して増える。例えば、16ビットのシフトレジスタは8ビットのシフトレジスタの2倍の消費電力となり、24ビットのシフトレジスタであれば8ビットのシフトレジスタの3倍の消費電力となる。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な回路構成、かつ、少ない追加消費電力で、疑似乱数の長周期化を図ることができる疑似乱数発生器、アナログデジタル変換器及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、メインクロックで動作する第1の線形帰還シフトレジスタを用いたメイン乱数発生部と、前記メインクロックの周期よりも長い周期のサブクロックで動作する1以上の第2の線形帰還シフトレジスタを用いたサブ乱数発生部と、前記第1の線形帰還シフトレジスタを構成する各レジスタの一部の出力ビットを、前記第2の線形帰還シフトレジスタを構成する各レジスタの出力ビットの一部である置換ビットに置き換えるビット選択切替回路と、を備え、前記メイン乱数発生部の出力ビットを疑似乱数として出力する。
【0011】
また、本発明は、上記の発明において、前記第1の線形帰還シフトレジスタにおける帰還信号のタップ位置は、原始多項式に対応し、前記第1の線形帰還シフトレジスタは、M系列の疑似乱数系列を生成する。
【0012】
また、本発明は、上記の発明において、前記第1の線形帰還シフトレジスタにおける帰還信号のタップ位置は、レジスタ数を次数とする原始多項式に対応し、前記第1の線形帰還シフトレジスタは、M系列の疑似乱数系列を生成し、前記第2の線形帰還シフトレジスタにおける帰還信号のタップ位置は、レジスタ数を次数とする原始多項式に対応し、前記第2の線形帰還シフトレジスタは、M系列の疑似乱数系列を生成する。
【0013】
また、本発明は、上記の発明において、前記第1の線形帰還シフトレジスタ及び1以上の第2の線形帰還シフトレジスタのレジスタ数は、異なり、2以上の第2の線形帰還シフトレジスタのレジスタ数は異なるものを含む。
【0014】
また、本発明は、上記の発明において、2以上の第2の線形帰還シフトレジスタのサブクロックは異なるものを含む。
【0015】
また、本発明は、上記の発明において、前記ビット選択切替回路は、前記第1の線形帰還シフトレジスタにおいて、置換対象の出力ビットが保持される前段レジスタと前記置換ビットが出力される次段レジスタとの間に配置され、前記置換ビットを選択して前記前段レジスタからの出力ビットを前記置換ビットに置換して前記次段レジスタに出力するビット選択器と、前記置換ビットの出力タップ位置と前記ビット選択器との間を接続する接続線と、前記メインクロックと前記サブクロックとを用いて前記前段レジスタからの出力ビットを前記置換ビットに切り替えるビット選択信号を生成して前記ビット選択器に出力するビット選択制御部と、を備える。
【0016】
また、本発明は、上記の発明において、前記ビット選択制御部は、前記ビット選択信号を一定周期又は変則周期で生成する。
【0017】
また、本発明は、インクロックで動作する線形帰還シフトレジスタを用いたメイン乱数発生部と、前記メインクロックの周期よりも長い周期のサブクロックで動作して疑似乱数を出力する1以上のサブ乱数発生部と、前記線形帰還シフトレジスタを構成する各レジスタの一部の出力ビットを、前記サブ乱数発生部の出力ビットの一部である置換ビットに置き換えるビット選択切替回路と、を備え、前記メイン乱数発生部の出力ビットを疑似乱数として出力する。
【0018】
また、本発明は、アナログデジタル変換器であり、上記の発明のいずれか一つに記載の疑似乱数発生器が出力する疑似乱数を用いてディザー信号を生成する。
【0019】
また、本発明は、電子機器であり、上記の発明のいずれか一つに記載の疑似乱数発生器を備え、前記疑似乱数発生器が出力する疑似乱数を用いた回路を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡易な回路構成、かつ、少ない追加消費電力で、疑似乱数の長周期化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施の形態である疑似乱数発生器の構成を示す回路図である。
図2図2は、ビット選択制御部によるビット選択信号の生成を説明するタイミングチャートである。
図3図3は、メイン乱数発生部に対応した乱数発生部の構成を示す回路図である。
図4図4は、図3に示した乱数発生部が発生する疑似乱数の周期をランダムウォークで示した図である。
図5図5は、図5は、図1に示した疑似乱数発生器が発生する疑似乱数の周期をランダムウォークで示した図である。
図6図6は、本発明の実施の形態の変形例による疑似乱数発生器の構成を示す模式図である。
図7図7は、ディザー信号生成のために図1に示した疑似乱数発生器を用いたアナログデジタル変換器及びこのアナログデジタル変換器を用いた電子機器の一例である差圧圧力伝送路の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照してこの発明を実施するための形態について説明する。
【0023】
<疑似乱数発生器の構成>
図1は、本発明の実施の形態である疑似乱数発生器1の構成を示す回路図である。図1に示すように、疑似乱数発生器1は、メイン乱数発生部10、サブ乱数発生部20及びビット選択切替回路30を有する。メイン乱数発生部10は、メインクロックCLK1で動作する第1の線形帰還シフトレジスタである。また、サブ乱数発生部20は、メインクロックCLK1の周期よりも長い周期のサブクロックCLK2で動作する第2の線形帰還シフトレジスタである。ビット選択切替回路30は、第1の線形帰還シフトレジスタを構成する各レジスタR1~R8の一部の出力ビットを、第2の線形帰還シフトレジスタを構成する各レジスタR01~R16の出力ビットの一部である置換ビットに置き換える選択切替を行う。そして、疑似乱数発生器1は、メイン乱数発生部10の出力ビットを疑似乱数出力信号S1として出力する。
【0024】
これにより、第1の線形帰還シフトレジスタの各レジスタ値の一部は、第2の線形帰還シフトレジスタの一部のレジスタ値に継続的に置き換えられる。これは、レジスタ値の置き換え時点における第1の線形帰還シフトレジスタのシード信号の一部変更であり、第1の線形帰還シフトレジスタ単体の周期の位相が逐次変更されることでもある。したがって、疑似乱数出力信号S1は、第1の線形帰還シフトレジスタ単体の疑似乱数列の周期性が乱されて長周期化された疑似乱数として出力される。
【0025】
第1の線形帰還シフトレジスタにおける帰還信号のタップ位置は、原始多項式に対応する。したがって、第1の線形帰還シフトレジスタは、M系列の疑似乱数系列を生成する。具体的に、第1の線形帰還シフトレジスタは、8ビットのシフトレジスタであり、8次の原始多項式X+X+X+X+1に対応したタップ位置P8,P6,P5,P4からそれぞれ各帰還信号をとる。各帰還信号は、排他的論理和回路11による排他的論理和をとった後、レジスタR1に戻るとともに、疑似乱数出力信号S1として出力する。この第1の線形帰還シフトレジスタは、フィナボッチ線形帰還シフトレジスタである。なお、初期のシード信号は予め設定される。したがって、この第1の線形帰還シフトレジスタは、第1の線形帰還シフトレジスタ自身では、最大周期長が255となる。
【0026】
一方、第2の線形帰還シフトレジスタにおける帰還信号のタップ位置は、原始多項式に対応する。したがって、第1の線形帰還シフトレジスタは、M系列の疑似乱数系列を生成する。具体的に、第2の線形帰還シフトレジスタは、16ビットのシフトレジスタであり、16次の原始多項式X16+X15+X13+X+1に対応したタップ位置P16,P15,P13,P04からそれぞれ各帰還信号をとる。各帰還信号は、排他的論理和回路21による排他的論理和をとった後、レジスタR01に戻る。この排他的論理和の信号はM系列の疑似乱数数列を生成する。この第1の線形帰還シフトレジスタは、フィナボッチ線形帰還シフトレジスタである。初期のシード信号は予め設定される。したがって、この第2の線形帰還シフトレジスタは、第2の線形帰還シフトレジスタ自身では、最大周期長が65535となる。なお、上記のフィナボッチ線形帰還シフトレジスタに替えてガロア線形帰還シフトレジスタとしてもよい。
【0027】
ここで、ビット選択切替回路30は、ビット選択器41,42、接続線L1,L2及びビット選択制御部43を有する。ビット選択器41は、レジスタR1とレジスタR2との間に配置される。ビット選択器41には、レジスタR1のレジスタ値が入力されるとともに、接続線L1を介してサブ乱数発生部20のレジスタR02とレジスタR03との間のタップ位置P02から置換ビットであるレジスタR02のレジスタ値が入力される。ビット選択器41は、ビット選択制御部43に接続される。ビット選択制御部43は、メインクロックCLK1とサブクロックCLK2とを用いてレジスタR1のレジスタ値をレジスタR02のレジスタ値に切り替えるセットトリガパルスとしてのビット選択信号SPを生成してビット選択器41に出力する。ビット選択器41は、ビット選択信号SPに従って、レジスタR1のレジスタ値をレジスタR02のレジスタ値に置き換えてレジスタR2に出力する。
【0028】
同様に、ビット選択器42は、レジスタR6とレジスタR7との間に配置される。ビット選択器42には、レジスタR6のレジスタ値が入力されるとともに、接続線L2を介してサブ乱数発生部20のレジスタR15とレジスタR16との間のタップ位置P15から置換ビットであるレジスタR15のレジスタ値が入力される。ビット選択器42は、ビット選択制御部43に接続される。ビット選択制御部43は、ビット選択信号SPを生成してビット選択器42に出力する。ビット選択器42は、ビット選択信号SPに従って、レジスタR6のレジスタ値をレジスタR15のレジスタ値に置き換えてレジスタR7に出力する。
【0029】
図2は、ビット選択制御部43によるビット選択信号SPの生成を説明するタイミングチャートである。ビット選択制御部43には、メインクロックCLK1とサブクロックCLK2とが入力される。上記のように、サブクロックCLK2の周期は、メインクロックCLK1の周期よりも長い(図2(a),(b)参照)。具体的に、サブクロックCLK2の周期は、メインクロックCLK1の周期の16倍としている。
【0030】
ビット選択制御部43は、サブクロックCLK2の立上りを時点t1で検出すると、時点t1直後の時点t2におけるメインクロックCLK1の立上りを検出する。そして、ビット選択制御部43は、時点t2に立上り、メインクロックCLK1と同じパルス幅をもつビット選択信号SPを生成する(図2(c)参照)。そして、このビット選択信号SPは、ビット選択器41,42に送られる。
【0031】
なお、図2では、メインクロックCLK1とサブクロックCLK2とが非同期の場合について説明したが、これに限らず、メインクロックCLK1とサブクロックCLK2とが同期していてもよい。この場合、例えば、サブクロックCLK2は、メインクロックCLK1を分周して生成する。
【0032】
本実施の形態では、サブクロックCLK2は、メインクロックCLK1の周期の16倍、周波数では(1/16)倍に設定している。また、サブ乱数発生部20のシフトレジスタ数は、メイン乱数発生部10のシフトレジスタ数の2倍の16ビットとしている。したがって、サブ乱数発生部20の消費電力は、メイン乱数発生部10の(1/8)となる。これにより、疑似乱数発生器1は、従来のメイン乱数発生部10のみによる疑似乱数発生器の(1/8)の消費電力の追加のみで済む。つまり、(1/8)の消費電力の増加で、従来のメイン乱数発生部10のみによる疑似乱数発生器の周期よりも長周期化した疑似乱数を簡易な構成で得ることができる。
【0033】
<従来例の周期と本実施の形態の周期との比較>
図3は、メイン乱数発生部10に対応した乱数発生部10aの構成を示す回路図である。また、図4は、図3に示した乱数発生部10aが発生する疑似乱数の周期をランダムウォークで示した図である。さらに、図5は、図1に示した疑似乱数発生器1が発生する疑似乱数の周期をランダムウォークで示した図である。
【0034】
図3に示した従来の乱数発生部10aは、メイン乱数発生部10のビット選択器41,42を除いたものであり、第1の線形帰還シフトレジスタのみによって乱数を発生する。すなわち、従来の乱数発生部10aは、8ビットのM系列を構成する線形帰還シフトレジスタである。
【0035】
図4は、図3に示した従来の乱数発生部10aが発生する疑似乱数をランダムウォークで示している。従来の乱数発生部10aは、メイン乱数発生部10のメインクロックCLK1と同じクロックで動作させている。ここで、ランダムウォークは、ビット出力が1ならば+1、0ならば-1を連続的に加算したものである。
【0036】
図4に示すように、従来の乱数発生部10aは、周期が255クロック(ビット)のM系列であり、メインクロックCLK1が8MHzの時、周期は約0.03msとなる。
【0037】
これに対し、本実施の形態の疑似乱数発生器1は、周期が約32000000クロック(ビット)であり、メインクロックCLK1が8MHzの時、周期は約4sとなる。したがって、疑似乱数発生器1は、メイン乱数発生部10に対応する従来の乱数発生部10aの周期を10万倍以上に長周期化することができる。
【0038】
しかも、本実施の形態では、従来の乱数発生部10aの周期よりはるかに長い長周期化を、追加の消費電力が少なく、かつ、簡易な構成で実現することができる。
【0039】
なお、上記のメイン乱数発生部10及びサブ乱数発生部20は、M系列の線形帰還シフトレジスタをそれぞれ用いていたが、これに限らず、M系列の線形帰還シフトレジスタでなくてもよい。すなわち、帰還多項式が原始多項式でない線形帰還シフトレジスタであってもよい。
【0040】
<変形例>
図6は、本発明の実施の形態の変形例による疑似乱数発生器1aの構成を示す模式図である。図6に示すように、本変形例では、サブ乱数発生部20に対応した複数のサブ乱数発生部20a,20bを設け、サブ乱数発生部20a,20bの各線形帰還シフトレジスタの出力ビットの一部により、メイン乱数発生部10の第1の線形帰還シフトレジスタの一部の出力ビットをそれぞれ置き換えるようにしている。この場合も、ビット選択制御部43によってビット置き換えのタイミングが制御される。
【0041】
なお、サブクロックCLK2,CLK3は、メインクロックCLK1よりも周期が長いが、異なっていてもよい。この場合、サブ乱数発生部20aによるビット置き換え対象のビット選択器に対しては、サブクロックCLK2を用いてビット選択信号SP2の立上りを機に生成して出力する。また、サブ乱数発生部20bによるビット置き換え対象のビット選択器に対しては、サブクロックCLK3を用いてビット選択信号SP3の立上りを機に生成して出力する。
【0042】
また、サブ乱数発生部20a,20bのシフトレジスタのレジスタ数は、メイン乱数発生部10のシフトレジスタのレジスタ数よりも少なくてもよい。図6では、サブ乱数発生部20aのシフトレジスタのレジスタ数を、メイン乱数発生部10のシフトレジスタのレジスタ数よりも多くし、サブ乱数発生部20bのシフトレジスタのレジスタ数を、メイン乱数発生部10のシフトレジスタのレジスタ数よりも少なくしている。すなわち、サブ乱数発生部20,20a,20bのシフトレジスタのレジスタ数は、メイン乱数発生部10のシフトレジスタのレジスタ数と同数であってもよいし、異なっていてもよい。
【0043】
なお、上記の実施の形態及び変形例では、接続線L1,L2がサブ乱数発生部20,20a,20b側のタップ位置と、メイン乱数発生部10のビット選択器とが一対一で対応していたが、これに限らず、接続線L1,L2を分岐して、サブ乱数発生部20,20a,20b側の1つのタップ位置から複数のビット選択器に接続するようにしてもよい。さらに、サブ乱数発生部側のタップ位置やビット選択器の位置あるいは個数は任意に設定すればよい。
【0044】
また、サブ乱数発生部20,20a,20bは、線形帰還シフトレジスタでなくてもよく、メインクロックCLK1の周期よりも長い周期のサブクロックCLK2,CLK3で動作して疑似乱数を出力するものであればよい。この場合、サブ乱数発生部20,20a,20bが生成する疑似乱数は、例えば、予めメモリに格納された数列を用いてもよい。
【0045】
なお、ビット選択制御部43は、ビット選択信号SP、SP2,SP3を一定周期又は変則パターンなどによる変則周期で生成するようにしてもよい。変則周期でビット選択信号SP、SP2,SP3を生成する場合、サブ乱数発生部20,20a,20bの周期に変則周期が加えられることになり、さらに疑似乱数の周期を長くすることができる。
【0046】
さらに、ビット選択制御部43は、1ビットのみを変換させるビット選択信号SPをビット選択器41,42に送っていたが、ビット選択信号SPを連続して2ビット以上置換ビットに置き換える信号としてもよい。また、ビット選択信号SPを変則パターンのパルス群としてもよい。
【0047】
<応用例>
図7は、ディザー信号生成のために図1に示した疑似乱数発生器1を用いたアナログデジタル変換器110及びこのアナログデジタル変換器110を用いた電子機器の一例である差圧圧力伝送路100の構成を示すブロック図である。図7に示すように、差圧圧力伝送路100は、センサー部101、アナログデジタル変換器110、デジタル信号処理回路105及び通信部106を有する。
【0048】
センサー部101は、流体が流れる配管の互いに異なる位置に接続された導圧管と、導圧管内の圧力と導圧管内の圧力との差圧及び静圧を検出する、なお、温度センサーを含めてもよい。
【0049】
アナログデジタル変換器110は、ディザー信号生成器102、加算器103及びアナログデジタル変換回路104を有する。ディザー信号生成器102は、疑似乱数発生器1が生成した長周期の疑似乱数を用いてアナログのディザー信号を加算器103に出力する。加算器103は、センサー部101から出力されたアナログセンサー信号にディザー信号を加算する。
【0050】
アナログデジタル変換回路104は、ディザー信号が重畳したアナログ入力信号をデジタル信号に変換する。アナログ入力信号はディザー信号が重畳されているため、量子化誤差を軽減させることができる。特に、ディザー信号は、疑似乱数の周期がアナログデジタル変換のサンプリング時間に対して十分長いため、変換精度を悪化させる問題が生じない。
【0051】
デジタル信号処理回路105は、入力されたデジタル信号をもとに、センサー部101が検出した圧力値を演算する。そして、通信部106は、圧力値を逐次外部に送信する。この際、圧力値等の情報を暗号化してもよい。
【0052】
なお、差圧圧力伝送路100は、疑似乱数発生器1を用いた電子機器の一例である。また、電子機器は、疑似乱数発生器1が発生する疑似乱数をディザー信号生成に用いることに限らず、他の回路やユニットに疑似乱数を用いるものであればよい。
【0053】
また、近年のIoTデバイスは、アナログセンサーを用いることが多く、アナログデジタル変換器が多用される。このIoTデバイスを含む電子機器にも疑似乱数発生器1を適用することができる。
【0054】
なお、上述した実施の形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置及び構成要素の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【符号の説明】
【0055】
1,1a 疑似乱数発生器
10 メイン乱数発生部
10a 乱数発生部
11,21 排他的論理和回路
20,20a,20b サブ乱数発生部
30 ビット選択切替回路
41,42 ビット選択器
43 ビット選択制御部
100 差圧圧力伝送路
101 センサー部
102 ディザー信号生成器
103 加算器
104 アナログデジタル変換回路
105 デジタル信号処理回路
106 通信部
110 アナログデジタル変換器
CLK1 メインクロック
CLK2,CLK3 サブクロック
L1,L2 接続線
P4,P5,P6,P8,P02,P04,P13,P15,P16 タップ位置
R1,R2,R6,R7,R01,R02,R03,R15 レジスタ
S1 疑似乱数出力信号
SP,SP2,SP3 ビット選択信号
t1,t2 時点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7