(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134878
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20230921BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/60 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039795
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】井口 知洋
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044AA04
5F044AA05
5F044CC05
5F044EE01
5F044FF04
5F044FF05
5F044FF06
(57)【要約】
【課題】小型化が実現できる半導体装置を提供する。
【解決手段】実施形態の半導体装置は、壁面を有する枠体と、枠体に囲まれた絶縁基板であって、表面に第1の金属層と第2の金属層を有し、第2の金属層は第1の金属層と壁面との間に位置する、絶縁基板と、電極を含み、第1の金属層の上に設けられた半導体チップと、電極に接続された第1ボンド部と、第2の金属層に接続された第2ボンド部と、第1ボンド部と第2ボンド部との間の中間部とを有するボンディングワイヤと、を備え、中間部の伸長する第1の方向と壁面とがなす第1の角度よりも、第2ボンド部の伸長する第2の方向と壁面とがなす第2の角度が小さい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面を有する枠体と、
前記枠体に囲まれた絶縁基板であって、表面に第1の金属層と第2の金属層を有し、前記第2の金属層は前記第1の金属層と前記壁面との間に位置する、絶縁基板と、
電極を含み、前記第1の金属層の上に設けられた半導体チップと、
前記電極に接続された第1ボンド部と、前記第2の金属層に接続された第2ボンド部と、前記第1ボンド部と前記第2ボンド部との間の中間部とを有するボンディングワイヤと、
を備え、
前記中間部の伸長する第1の方向と前記壁面とがなす第1の角度よりも、前記第2ボンド部の伸長する第2の方向と前記壁面とがなす第2の角度が小さい、半導体装置。
【請求項2】
前記第1の角度と前記第2の角度の差は、10度以上90度以下である請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体チップはMOSFET又はIGBTであり、前記電極はゲート電極パッドである請求項1又は請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ボンディングワイヤを形成した際に、前記第1ボンド部が前記第2ボンド部よりも先に形成された請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項5】
壁面を有する枠体に囲まれた絶縁基板であって、表面に第1の金属層と第2の金属層を有し、前記第2の金属層は前記第1の金属層と前記壁面との間に位置する、絶縁基板を準備し、
電極を含む半導体チップを前記第1の金属層に載置し、
前記電極にボンディングワイヤの第1ボンド部を形成し、
第1の方向に伸長する前記ボンディングワイヤの中間部を形成し、
前記第1の方向と前記壁面とがなす第1の角度よりも、伸長する第2の方向と前記壁面とがなす第2の角度が小さい前記ボンディングワイヤの第2ボンド部を前記第2の金属層の上に形成する半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ボンディングワイヤはウェッジボンディング装置を用いて形成され、
前記中間部を形成する際に、前記ウェッジボンディング装置のボンディングヘッドを第1の方向に移動し、
前記第2ボンド部を形成した後に、前記ボンディングヘッドを第2の方向に移動する請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1の方向と前記第2の方向のなす角度は10度以上45度以下である請求項5又は請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2ボンド部を形成する前に、前記ボンディングヘッドを前記第2の金属層の表面に水平な面内で回転させる請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記半導体チップはMOSFET又はIGBTであり、前記電極はゲート電極パッドである請求項5ないし請求項8いずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体モジュールでは、例えば、金属ベースの上に、絶縁基板を間に挟んでパワー半導体チップが実装される。パワー半導体チップは、例えば、Metal Oxide Field Effect Transistor(MOSFET)、Insulated Gate Bipolar Transistor(IGBT)、又は、ダイオードである。
【0003】
パワー半導体モジュールを搭載する機器の小型化を実現するため、パワー半導体モジュールの小型化が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、小型化が実現できる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の半導体装置は、壁面を有する枠体と、前記枠体に囲まれた絶縁基板であって、表面に第1の金属層と第2の金属層を有し、前記第2の金属層は前記第1の金属層と前記壁面との間に位置する、絶縁基板と、電極を含み、前記第1の金属層の上に設けられた半導体チップと、前記電極に接続された第1ボンド部と、前記第2の金属層に接続された第2ボンド部と、前記第1ボンド部と前記第2ボンド部との間の中間部とを有するボンディングワイヤと、を備え、前記中間部の伸長する第1の方向と前記壁面とがなす第1の角度よりも、前記第2ボンド部の伸長する第2の方向と前記壁面とがなす第2の角度が小さい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】実施形態の半導体装置の製造方法で用いられるウェッジボンディング装置の模式図。
【
図6】実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式図。
【
図7】実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式図。
【
図8】実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式図。
【
図9】実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式図。
【
図10】実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式図。
【
図11】実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式図。
【
図12】実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式図。
【
図13】実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式図。
【
図14】実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式図。
【
図15】実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式図。
【
図16】実施形態の半導体装置及び半導体装置の製造方法の作用及び効果の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書中、同一又は類似する部材については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0009】
本明細書中、部品等の位置関係を示すために、図面の上方向を「上」、図面の下方向を「下」と記述する場合がある。本明細書中、「上」、「下」の概念は、必ずしも重力の向きとの関係を示す用語ではない。
【0010】
実施形態の半導体装置は、壁面を有する枠体と、枠体に囲まれた絶縁基板であって、表面に第1の金属層と第2の金属層を有し、第2の金属層は第1の金属層と壁面との間に位置する、絶縁基板と、電極を含み、第1の金属層の上に設けられた半導体チップと、電極に接続された第1ボンド部と、第2の金属層に接続された第2ボンド部と、第1ボンド部と第2ボンド部との間の中間部とを有するボンディングワイヤと、を備える。そして、中間部の伸長する第1の方向と壁面とがなす第1の角度よりも、第2ボンド部の伸長する第2の方向と壁面とがなす第2の角度が小さい。
【0011】
図1は、実施形態の半導体装置の模式上面図である。
図2は、実施形態の半導体装置の模式断面図である。
図2は、
図1のAA’断面である。
【0012】
実施形態の半導体装置は、パワー半導体モジュール100である。
図1に示すように、実施形態のパワー半導体モジュール100は、2個のMOSFETが直列に接続されている。実施形態のパワー半導体モジュールは、1モジュールでハーフブリッジ回路を構成できる、いわゆる「2in1」タイプのモジュールである。例えば、実施形態のパワー半導体モジュールを3個用いることにより3相インバータ回路を構成できる。
【0013】
実施形態のパワー半導体モジュール100は、樹脂ケース10(枠体)、蓋12、第1の主端子14、第2の主端子16、交流出力端子18、第1のゲート端子21、第2のゲート端子22、金属ベース24、絶縁基板30、第1の金属層31、第2の金属層32、第3の金属層33、第4の金属層34、第5の金属層35、裏面金属層36、第1のMOSFET38(半導体チップ)、第2のMOSFET40、第1のボンディングワイヤ41(ボンディングワイヤ)、第2のボンディングワイヤ42、第3のボンディングワイヤ43、第4のボンディングワイヤ44、第5のボンディングワイヤ45、第6のボンディングワイヤ46、封止樹脂50を備える。
【0014】
樹脂ケース10は、壁面10aを有する。第1のMOSFET38は、ゲート電極パッド38a(電極)、ソース電極38b、半導体層38c、ドレイン電極38dを含む。第1のボンディングワイヤ41は、第1ボンド部41a、第2ボンド部41b、及びループ部41cを含む。ループ部41cは、中間部の一例である。
【0015】
図1は、パワー半導体モジュール100から蓋12及び封止樹脂50を除いた状態の上面図である。
【0016】
金属ベース24は、例えば、銅である。例えば、パワー半導体モジュール100を製品に実装する際、金属ベース24の裏面には、図示しない放熱板が接続される。
【0017】
絶縁基板30は、金属ベース24の上に設けられる。絶縁基板30は、樹脂ケース10に囲まれる。絶縁基板30は、金属ベース24と第1のMOSFET38との間、及び、金属ベース24と第2のMOSFET40との間に設けられる。絶縁基板30は、金属ベース24と、第1のMOSFET38及び第2のMOSFET40を電気的に分離する機能を有する。
【0018】
絶縁基板30は、例えば、セラミックである。絶縁基板30は、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、又は、窒化シリコンである。
【0019】
絶縁基板30の表面には、第1の金属層31、第2の金属層32、第3の金属層33、第4の金属層34、及び、第5の金属層35が設けられる。第1の金属層31、第2の金属層32、第3の金属層33、第4の金属層34、及び、第5の金属層35は、例えば、銅である。
【0020】
第2の金属層32は、第1の金属層31と樹脂ケース10の壁面10aとの間に位置する。第4の金属層34は、第3の金属層33と樹脂ケース10の壁面10aとの間に位置する。
【0021】
絶縁基板30の裏面には、裏面金属層36が設けられる。裏面金属層36は、例えば、銅である。裏面金属層36は、例えば、図示しない半田層又は金属ナノ粒子層を用いて金属ベース24と接合される。
【0022】
樹脂ケース10は、金属ベース24及び絶縁基板30の周囲に設けられる。樹脂ケース10の一部は、金属ベース24の上に設けられる。樹脂ケース10は、枠体の一例である。樹脂ケース10は、第1のMOSFET38、第2のMOSFET40、及び絶縁基板30を保護する機能を有する。樹脂ケース10は、壁面10aを有する。
【0023】
樹脂ケース10の上には蓋12が設けられる。蓋12は、絶縁基板30との間に、第1のMOSFET38、及び、第2のMOSFET40を挟む。蓋12は、第1のMOSFET38、第2のMOSFET40、及び絶縁基板30を保護する機能を有する。
【0024】
第1のボンディングワイヤ41、第2のボンディングワイヤ42、第3のボンディングワイヤ43、第4のボンディングワイヤ44、第5のボンディングワイヤ45、第6のボンディングワイヤ46は、パワー半導体モジュール100の部材の間を電気的に接続する。第1のボンディングワイヤ41、第2のボンディングワイヤ42、第3のボンディングワイヤ43、第4のボンディングワイヤ44、第5のボンディングワイヤ45、第6のボンディングワイヤ46の材質は、例えば、アルミニウム、銅、又は金である。
【0025】
第1のMOSFET38は、絶縁基板30の上に設けられる。第1のMOSFET38は、ゲート電極パッド38a、ソース電極38b、半導体層38c、ドレイン電極38dを有する。ゲート電極パッド38aは電極の一例である。
【0026】
第1のMOSFET38は、例えば、炭化珪素を用いて形成される。半導体層38cは、例えば炭化珪素層である。
【0027】
第1のMOSFET38は、第1の金属層31の上に設けられる。ドレイン電極38dは、例えば、図示しない半田層又は金属ナノ粒子層を用いて第1の金属層31の上に固定される。ドレイン電極38dは第1の金属層31に接合される。ドレイン電極38dは、第1の金属層31に電気的に接続される。
【0028】
ソース電極38bは、第5の金属層35に電気的に接続される。ソース電極38bは、第3のボンディングワイヤ43を用いて、第5の金属層35に電気的に接続される。
【0029】
ゲート電極パッド38aは、第2の金属層32に電気的に接続される。ゲート電極パッド38aは、第1のボンディングワイヤ41を用いて、第2の金属層32に電気的に接続される。
【0030】
第2のMOSFET40は、絶縁基板30の上に設けられる。第2のMOSFET40は、第3の金属層33の上に設けられる。
【0031】
封止樹脂50は、樹脂ケース10の中に充填される。封止樹脂50は、樹脂ケース10に囲まれる。封止樹脂50は、第1のMOSFET38、第2のMOSFET40、及び、絶縁基板30を覆う。
【0032】
封止樹脂50は、第1のMOSFET38、第2のMOSFET40、及び、絶縁基板30を保護する機能を有する。また、第1のMOSFET38、第2のMOSFET40、及び、絶縁基板30を絶縁する機能を有する。
【0033】
封止樹脂50は、樹脂を含む。封止樹脂50は、例えば、シリコーンゲルである。封止樹脂50には、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等、その他の樹脂を適用することも可能である。
【0034】
第1の主端子14は、第5の金属層35に電気的に接続される。第1の主端子14には外部から、例えば、負電圧が印加される。第1の主端子14は、例えば、銅である。
【0035】
第2の主端子16は、第3の金属層33に電気的に接続される。第2の主端子16には外部から、例えば、正電圧が印加される。第2の主端子16は、例えば、銅である。
【0036】
交流出力端子18は、第1の金属層31に電気的に接続される。交流出力端子18の一端は、例えば、第1の金属層31に固定される。交流出力端子18は、ハーフブリッジ回路の出力電流を出力する。
【0037】
第1のゲート端子21は、第1のMOSFET38のゲート電極パッド38aに電気的に接続される。第1のゲート端子21は、第1のMOSFET38を制御するゲート電圧信号を、ゲート電極パッド38aに印加する機能を有する。
【0038】
第2のゲート端子22は、第2のMOSFET40のゲート電極パッドに電気的に接続される。第2のゲート端子22は、第2のMOSFET40を制御するゲート電圧信号を、ゲート電極パッドに印加する機能を有する。
【0039】
図3は、実施形態の半導体装置の拡大模式上面図である。
図3は、
図1において破線で囲まれた領域Xの拡大図である。
図3は、蓋12及び封止樹脂50を除いた状態の上面図である。
【0040】
図4は、実施形態の半導体装置の拡大模式断面図である。
図4は、
図3のボンディングワイヤに沿った領域を含む断面図である。
【0041】
第1のボンディングワイヤ41は、第1ボンド部41a、第2ボンド部41b、及びループ部41cを有する。
【0042】
第1ボンド部41aは、第1のMOSFET38のゲート電極パッド38aに接続される。第2ボンド部41bは、第2の金属層32に接続される。ループ部41cは、第1ボンド部41aと第2ボンド部41bとの間に位置する。
【0043】
第1のボンディングワイヤ41を形成する際、第1ボンド部41aは、第2ボンド部41bよりも先に形成される。
【0044】
ループ部41cは、第1の方向に伸長する。第1の方向と樹脂ケース10の壁面10aがなす角度は第1の角度(
図3のθ1)である。第1の角度θ1は、例えば、60度以上90度以下である
【0045】
第2ボンド部41bは、第2の方向に伸長する。第2の方向は、第1の方向と異なる。第2の方向と樹脂ケース10の壁面10aがなす角度は第2の角度(
図3のθ2)である。第2の角度は、例えば、0度以上80度以下である。
【0046】
第2の角度θ2は、第1の角度θ1より小さい。第1の角度θ1と第2の角度θ2の差は、例えば、10度以上90度以下である。第1の角度θ1と第2の角度θ2の差は、例えば、20度以上45度以下であることが好ましい。
【0047】
次に、実施形態の半導体装置の製造方法の一例について説明する。以下、特に、ボンディングワイヤの形成について説明する。
【0048】
実施形態の半導体装置の製造方法は、壁面を有する枠体に囲まれた絶縁基板であって、表面に第1の金属層と第2の金属層を有し、第2の金属層は第1の金属層と壁面との間に位置する、絶縁基板を準備し、電極を含む半導体チップを第1の金属層に載置し、電極にボンディングワイヤの第1ボンド部を形成し、第1の方向に伸長するボンディングワイヤの中間部を形成し、第1の方向と壁面とがなす第1の角度よりも、伸長する第2の方向と壁面とがなす第2の角度が小さいボンディングワイヤの第2ボンド部を第2の金属層の上に形成する。
【0049】
図5は、実施形態の半導体装置の製造方法で用いられるウェッジボンディング装置の模式図である。
図5は、ウェッジボンディング装置のボンディングヘッドの先端部の拡大図である。
【0050】
実施形態のウェッジボンディング装置のボンディングヘッド60は、ウェッジツール61、カッターブレード62、及びワイヤガイド63を含む。
【0051】
ボンディングヘッド60は、上下左右に移動することが可能である。また、ボンディングヘッド60は、水平面内で回転することが可能である。
【0052】
ウェッジツール61は、先端にワイヤ70を保持する図示しない溝を有する。ワイヤ70をウェッジツール61で被接続部に押し付けた状態で超音波振動を与えることで、ワイヤ70と被接続部を接合する。
【0053】
カッターブレード62は、ワイヤ70を切断する機能を有する。カッターブレード62は、ウェッジツール61及びワイヤガイド63に対して、独立して上下方向に移動することが可能である。
【0054】
ワイヤガイド63は、ワイヤ70をウェッジツール61に送り出す機能を有する。
【0055】
【0056】
最初に、壁面10aを有する樹脂ケース10に囲まれた絶縁基板30を準備する(
図6)。樹脂ケース10は、枠体の一例である。
【0057】
絶縁基板30の表面には、第1の金属層31と第2の金属層32が設けられる。第2の金属層32は第1の金属層31と壁面10aとの間に位置する。
【0058】
次に、第1のMOSFET38を、第1の金属層31の上に載置する(
図7)。第1のMOSFET38は、半導体チップの一例である。
【0059】
第1のMOSFET38は、第1の金属層31に接合される。第1のMOSFET38は、ゲート電極パッド38a、ソース電極38b、半導体層38c、ドレイン電極38dを含む。ゲート電極パッド38aは電極の一例である。
【0060】
次に、ウェッジボンディング装置を用いて、第1のボンディングワイヤ41を形成する。
【0061】
最初に、ウェッジツール61により、ワイヤ70をゲート電極パッド38aの表面に押し付け、第1ボンド部41aを形成する(
図8)。
【0062】
次に、ボンディングヘッド60を横方向に移動させ、ループ部41cを形成する(
図9)。ループ部41cは、中間部の一例である。ボンディングヘッド60は、
図3に示した第1の方向に移動する。ループ部41cは、
図3に示した第1の方向に延びる。
【0063】
次に、ボンディングヘッド60が第2ボンド部41bを形成する予定領域まで来た時点で、ボンディングヘッド60を第2の金属層32の表面に水平な面内で回転させる(
図10)。回転角度は、例えば、10度以上90度以下である。回転角度は、例えば、20度以上45度以下であることが好ましい。
【0064】
次に、ウェッジツール61により、ワイヤ70を第2の金属層32の表面に押し付け、第2ボンド部41bを形成する(
図11)。ボンディングヘッド60が回転したことにより、第2ボンド部41bは、
図3に示す第2の方向に伸長する。
【0065】
次に、カッターブレード62を用いて、ワイヤ70をハーフカットする(
図12)。
【0066】
次に、カッターブレード62をワイヤ70から離間させる(
図13)。
【0067】
次に、ワイヤガイド63からワイヤ70を送り出しながら、ボンディングヘッド60を横方向に移動させる(
図14)。ボンディングヘッド60を壁面10aの方向に移動する。ボンディングヘッド60は、
図3に示す第2の方向に移動する。ワイヤガイド63から送り出されたワイヤ70は、次のワイヤボンディングを形成する際に第1ボンド部となる。
【0068】
次に、ワイヤ70をワイヤガイド63でクランプした状態で、ボンディングヘッド60を斜め上方向に移動させ、ワイヤ70を引っ張ることで完全に切断する(
図15)。ワイヤ70を切断する際、ボンディングヘッド60は、壁面10aの方向に移動する。この時、ボンディングヘッド60は、
図3に示す第2の方向に移動する。
【0069】
以上の方法により、第1のボンディングワイヤ41が形成される。
【0070】
次に、実施形態の半導体装置及び半導体装置の製造方法の作用及び効果について説明する。
【0071】
図16(a)、
図16(b)は、実施形態の半導体装置及び半導体装置の製造方法の作用及び効果の説明図である。
図16(a)は、比較例の半導体装置の拡大模式上面図である。
図16(b)は、実施形態の半導体装置の拡大模式上面図である。
図16(a)及び
図16(b)は、
図3に対応する図である。
【0072】
比較例の半導体装置のボンディングワイヤ49は、第1ボンド部49a、第2ボンド部49b、及びループ部49cを有する。比較例のボンディングワイヤ49は、第2ボンド部49bがループ部49cと同様、第1の方向に伸長する点で、実施形態の第1のボンディングワイヤ41と異なる。
【0073】
比較例のボンディングワイヤ49において、第2ボンド部49bの端部から壁面10aまでの第1の方向の距離dxは、実施形態の第1のボンディングワイヤ41の第2ボンド部49bの端部から壁面10aまでの第2の方向の距離dyよりも小さい。
【0074】
図17は、比較例の半導体装置の課題の説明図である。
図17は、比較例の半導体装置のボンディングワイヤ49の形成方法を示す図である。
【0075】
図17は、実施形態の半導体装置の製造方法の
図15に対応する図である。ワイヤ70を切断する際、ボンディングヘッド60を壁面10aに向かって第1の方向に移動する。この時、第2ボンド部49bの端部から壁面10aまでの第1の方向の距離dxが小さいと、ボンディングヘッド60が壁面10aに衝突する。したがって、ワイヤボンディングの形成を継続することが困難となる。
【0076】
実施形態では、第2ボンド部41bは、第1の方向と異なる第2の方向に伸長する。第2の方向と樹脂ケース10の壁面10aがなす第2の角度θ2は、第1の方向と樹脂ケース10の壁面10aがなす第1の角度θ1より小さい。
【0077】
したがって、
図16(a)、
図16(b)に示すように、実施形態のワイヤ70を切断する際の第2ボンド部41bの端部から壁面10aまでの第2の方向の距離dyは、比較例の第2ボンド部49bの端部から壁面10aまでの第1の方向の距離dxより大きい。よって、実施形態では、ボンディングヘッド60が壁面10aに衝突することが抑制される。
【0078】
実施形態では、ボンディングヘッド60が壁面10aに衝突することが抑制されるで、第1のボンディングワイヤ41の第2ボンド部41bから壁面10aまでの第1の方向の距離を、比較例よりも小さくすることができる。したがって、パワー半導体モジュール100の小型化が実現できる。
【0079】
第2ボンド部41bから壁面10aまでの第1の方向の距離を小さくして、パワー半導体モジュール100の小型化を実現する観点から、第1の角度θ1と第2の角度θ2の差は、10度以上であることが好ましく、20度以上であることがより好ましく、30度以上であることが更に好ましい。
【0080】
第1のボンディングワイヤ41の第1ボンド部41aが接続される電極は、実施形態のように、MOSFET又はIGBTのゲート電極パッド38aであることが好ましい。ゲート電極パッド38aには、ソース電極38bやドレイン電極38dと比較して、大電流が流れない。したがって、第2ボンド部41bが接続される金属層のサイズが小さくなる。例えば、金属層の壁面10aに垂直な方向の幅が小さくなる。したがって、第1のボンディングワイヤ41の第2ボンド部41bから壁面10aまでの距離が短くなりやすく、実施形態の半導体装置及び半導体装置の製造方法が効果的に機能する。
【0081】
実施形態では、半導体チップとしてMOSFET又はIGBTを用いる場合を例に説明したが、半導体チップはこれらに限定されるものではない。例えば、SBD(Schottky Barrier Diode)、PINダイオードなど、その他のトランジスタやダイオードを適用することも可能である。また、トランジスタとダイオードの組み合わせを適用することも可能である。
【0082】
実施形態では、「2in1」タイプのモジュールを例に説明したが、例えば、「4in1」タイプ、又は、「6in1」タイプのモジュールであっても構わない。
【0083】
実施形態では、半導体チップの数が2個の場合を例に説明したが、半導体チップは、1個であっても、3個以上であっても構わない。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
10 樹脂ケース(枠体)
10a 壁面
30 絶縁基板
31 第1の金属層
32 第2の金属層
38 第1のMOSFET(半導体チップ)
38a ゲート電極パッド(電極)
41 第1のボンディングワイヤ(ボンディングワイヤ)
41a 第1ボンド部
41b 第2ボンド部
41c ループ部(中間部)
60 ボンディングヘッド
θ1 第1の角度
θ2 第2の角度