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特開2023-135176溶接方法、ノズルカバー、溶接ノズル、カバー付き溶接ノズル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135176
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】溶接方法、ノズルカバー、溶接ノズル、カバー付き溶接ノズル
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/32 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
B23K9/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040247
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000247971
【氏名又は名称】株式会社マルナカ
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】中島 一夫
(57)【要約】
【課題】 アーク溶接で発生するスパッタの飛散を抑制できる溶接方法と、ノズルカバーと、溶接ノズルと、カバー付き溶接ノズルを提供する。
【解決手段】 溶接ノズルの外周に装着される装着部に、ミスト通路と、ミスト通路に連通するミスト噴出口があり、外部のミスト供給装置から前記ミスト通路にミストを送ると、当該ミストがミスト噴出口から前記溶接ノズルによる溶接箇所の外側に噴出されるようにした。装着部にミスト通路の他に、エア通路とエア通路に連通するエア噴出口をも設け、外部のエア供給装置からエア通路にエアを送るとエア噴出口からエアも噴出されるようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ノズルによる溶接時に、溶接箇所の外側にミストとエアの双方又はいずれか一方を噴出して、溶接時に生ずるスパッタの拡散の抑制、又はスパッタの拡散の抑制とスパッタの冷却の双方を行う、
ことを特徴とする溶接方法。
【請求項2】
溶接ノズルの外周に取り付けることができる装着部があり、
装着部に、ミスト通路と、ミスト通路に連通するミスト噴出口があり、
外部のミスト供給装置から前記ミスト通路にミストを送ると、当該ミストがミスト噴出口から前記溶接ノズルによる溶接箇所の外側に噴出されるようにした、
ことを特徴とするノズルカバー。
【請求項3】
溶接ノズルの外周に取り付けることができる装着部があり、
装着部に、ミスト通路と、当該ミスト通路に連通するミスト噴出口と、エア通路と、当該エア通路に連通するエア噴出口があり、
外部のミスト供給装置から前記ミスト通路にミストを送ると、当該ミストがミスト噴出口から前記溶接ノズルによる溶接箇所の外側に噴出され、外部のエア供給装置から前記エア通路にエアを送ると、当該エアがエア噴出口から前記溶接ノズルによる溶接箇所の外側に噴出されるようにした、
ことを特徴とするノズルカバー。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載のノズルカバーにおいて、
前記ノズルカバーが、外側に裾拡がりの拡散部を備え、
前記拡散部は、溶接ノズルに取り付けられたノズルカバーのミスト噴出口から噴出されるミストと、ノズルカバーのエア噴出口から噴出されるエアの双方又はいずれか一方を、溶接ノズルの外側に拡散可能である、
ことを特徴とするノズルカバー。
【請求項5】
シールド用のガス出口を備えた溶接ノズルであり、
前記溶接ノズルの先端側外周面に、当該外周面の外側に突出するリング状の鍔と凹溝の双方又はいずれか一方があり、
前記鍔と凹溝の双方又はいずれか一方は、溶接ノズルに取り付けられたノズルカバーのミスト噴出口から噴出されるミストと、ノズルカバーのエア噴出口から噴出されるエアの双方又はいずれか一方が、溶接ノズルのガス出口へ回り込むのを防止可能である、
ことを特徴とする溶接ノズル。
【請求項6】
溶接ノズルの外周にノズルカバーが取り付けられたノズルカバー付き溶接ノズルであり、
前記ノズルカバーが請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のノズルカバーであり、
前記ノズルカバーが溶接ノズルの上部外周に取り付けられて、当該溶接ノズルの先端が
ノズルカバーよりも先方に突出している、
ことを特徴とするカバー付き溶接ノズル。
【請求項7】
請求項6記載のカバー付き溶接ノズルにおいて、
溶接ノズルの先端側に設けられた鍔又は凹溝が、ノズルカバーの先端部よりも先方に突出している、
ことを特徴とするカバー付き溶接ノズル。
【請求項8】
溶接ノズルの外周にノズルカバーが取り付けられたノズルカバー付き溶接ノズルであり、
前記ノズルカバーが請求項4記載のノズルカバーであり、
前記ノズルカバーが溶接ノズルの上部外周に取り付けられて、当該溶接ノズルの先端が
ノズルカバーの拡散部よりも先方に突出している、
ことを特徴とするカバー付き溶接ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶接ノズルを用いた溶接方法と、溶接ノズルの外周に被せることのできるノズルカバーと、溶接ノズルと、溶接ノズルの外周にノズルカバーが装着されたカバー付き溶接ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
アーク溶接はさまざまな産業分野で幅広く利用されている。アーク溶接は溶接棒(又はワイヤ)が溶ける消耗電極式(溶極式)と、溶けない非消耗電極式(非溶極式)の二種類の方式に大別できる。また、アーク溶接には作業者が溶加材(溶接棒)を交換する手溶接と、溶接棒が自動的に供給される自動溶接がある。いずれの方式であっても、アーク溶接ではシールドガスによって溶接箇所を囲って大気から保護している。本発明の溶接方法、ノズルカバー、溶接ノズル、カバー付き溶接ノズルは前記いずれの方式のアーク溶接にも適用できるものである。
【0003】
アーク溶接する場合、スパッタが発生して作業現場の周囲に飛散する。飛散したスパッタが溶接するワークの他の箇所にあるネジや孔等に付着したり、ワークの近くにある他のネジや金属部品等に付着したりすると、ネジや金属部品が使用できなくなることがある。この問題を解決すべく、スパッタの付着防止装置が開発されている。主な例として特許文献1、2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-83282号公報
【特許文献2】特開平6-122089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、アーク溶接時に発生するスパッタの飛散をミスト単独で又はミストとエアの双方によって抑制できる溶接方法と、ノズルカバーと、溶接ノズルと、カバー付き溶接ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[溶接方法]
本発明の溶接方法は、溶接ノズルの上方からミスト、又は、ミストとエアの双方を噴出して、溶接時に生ずるスパッタの拡散の抑制、又はスパッタの拡散の抑制とスパッタの冷却の双方を行うようにした溶接方法である。
【0007】
[ノズルカバー1]
本発明のノズルカバーの一つは、溶接ノズルの外周に装着することができる装着部があり、装着部にミスト通路があり、ミスト通路にミスト噴出口があり、外部のミスト供給装置からミスト通路に送られたミストをミスト噴出口から、前記溶接ノズルによる溶接箇所の外側に噴出できるようにしたものである。
【0008】
[ノズルカバー2]
本発明のノズルカバーの他の一つは、ノズルカバーに装着部があり、装着部にミスト通路とエア通路の双方があり、ミスト通路にミスト噴出口があり、エア通路にエア噴出口があり、外部のミスト供給装置からミスト通路に送られたミストをミスト噴出口から、外部のエア供給装置からエア通路に送られたエアをエア噴出口から、溶接ノズルによる溶接箇所の外側に噴出できるようにしたものである。
【0009】
[溶接ノズル]
本発明の溶接ノズルは、汎用の溶接ノズルであってもよいが、溶接ノズルの先端側外周にリング状の鍔と凹溝の双方又はいずれか一方を設けて、ミスト噴出口から噴出されるミストが、又は、当該ミストとエア噴出口から噴出されるエアとの双方が、前記溶接ノズルによる溶接箇所の外側に拡散されるようにしたものである。
【0010】
[カバー付き溶接ノズル]
本発明のカバー付き溶接ノズルは、溶接ノズルの外周に前記ノズルカバーを脱着可能に取り付けたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の溶接方法は、ミストによりスパッタの飛散抑制、スパッタの冷却を行うことができるので、溶接箇所の付近のネジや金属部品等へのスパッタの付着を予防することができる。また、ミストとエアの双方によっても、ネジや金属部品等へのスパッタの付着を予防することもできる。
【0012】
本発明のノズルカバーは、ミスト噴出口から噴出されるミストにより、アーク溶接時に生ずるスパッタの飛散を抑制することができ、スパッタが溶接箇所の付近にあるネジや金属部品等に付着しにくくなる。エア噴出口からエアをも噴出した場合は、エアによってもスパッタの飛散を抑制することができる。
【0013】
本発明の溶接ノズルに鍔と凹溝の双方又はいずれか一方を設けた場合は、ミスト噴出口から噴出されるミストが、鍔と凹溝の双方又はいずれか一方により誘導されて、溶接ノズルのガス出口に回り込みにくくなり、ガス出口から噴出されるシールドガスの噴出に悪影響が及びにくくなる。
【0014】
本発明のカバー付き溶接ノズルは、溶接ノズルに前記ノズルカバーが装着されているので、前記ノズルカバーと溶接ノズルの双方の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のカバー付き溶接ノズルであって、(a)はミスト噴出口を備えた場合の断面図、(b)はミスト噴射範囲の説明図。
図2】本発明のカバー付き溶接ノズルであって、(a)はミスト噴出口とエア噴出口の双方を備えた場合の断面図、(b)はミスト噴射範囲の説明図。
図3図1(a)のカバー付き溶接ノズルであって、(a)は溶接ノズルに鍔を設けた場合の断面図、(b)はミスト噴射範囲の説明図。
図4図2(a)のカバー付き溶接ノズルであって、(a)は溶接ノズルに鍔を設けた場合の断面図、(b)はミスト噴射範囲の説明図。
図5図1(a)のカバー付き溶接ノズルのノズル先端に凹溝を設けた状態の断面図。
図6図2(a)のカバー付き溶接ノズルのノズル先端に凹溝を設けた状態の断面図。
図7図1(a)のカバー付き溶接ノズルのノズル先端に凹溝と鍔を設けた状態の断面図。
図8図2(a)のカバー付き溶接ノズルのノズル先端に凹溝と鍔を設けた状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
図1(a)は本発明のカバー付き溶接ノズルの実施形態1であり、溶接ノズル1の外周にノズルカバー2を取り付けてある。
【0017】
[溶接ノズル]
図1(a)の溶接ノズル1は汎用品であり、先細りの外筒3の上部に連結孔4があり、外筒3の内側に溶接チップ5があり、外筒3の内周面と溶接チップ5の外周面との間にシールドガスが流れるガス通路6があり、ガス通路6の下端がガス出口7となっている。連結孔4の内周面にはトーチ本体(図示せず)を脱着可能なネジ4aが切られている。溶接チップ5の中心部には溶接ワイヤー8を通すことができる。
【0018】
[ノズルカバー]
図1(a)のノズルカバー2は円形の装着部10があり、装着部10の内側に内カバー11が外れないように圧入されている。
【0019】
装着部10にはリング状のミスト通路12があり、ミスト通路12の周方向数箇所(図1(b)では90度間隔で4箇所)にミスト導入路13が縦向きに開口されており、ミスト導入路13の下端がミスト噴出口14となっている。ミスト通路12は外側のミスト供給装置(図示せず)と連結されており、ミスト供給装置から供給されるミストが、ミスト通路12-ミスト導入路13を通してミスト噴出口14から噴射されるようにしてある。
【0020】
内カバー11は円筒状であり、先端側に、外側に裾広がりの拡散部15がある。拡散部15の拡がり角度αは衝突したミストが外側に拡散し易い角度に設計してある。拡散部15は溶接ノズル1の全周又はほぼ全周に設けるのが望ましい。内カバー11は拡散部15が装着部10の下方まで突出させて装着部10内に圧入してある。
【0021】
[ミスト供給装置]
溶接ノズル1の連結孔4に連結されるミスト供給装置には汎用のミスト発生装置を使用することができる。ミスト発生装置には数μmから数十μm程度の微細ミストを発生可能なものまで各種あるが、本発明ではいずれのミスト発生装置であっても使用可能である。
【0022】
[ノズルカバーの取り付け]
ノズルカバー2は、装着部10を溶接ノズル1の上部外周に被せて、固定具16により溶接ノズル1に固定することができる。固定具16をネジとし、そのネジを装着部10の外からねじ込んで、ネジ先端を内カバー11に圧接させて、内カバー11を溶接ノズル1の外周面に押し付けると、内カバー11と装着部10が溶接ノズル1に固定される。ネジを緩めるとネジ先端が内カバー11から離れ、溶接ノズル1の外周面への内カバー11の押圧が解放されて、内カバー11と装着部10を溶接ノズル1から外すことができる。固定具16はノズルカバー2を溶接ノズル1に固定できるものであれば、他の構造、例えば、内径を拡張・縮小可能なバンド、その他の器具であってもよい。
【0023】
[カバー付き溶接ノズル]
図1(a)のカバー付き溶接ノズルは、汎用の溶接ノズル1の上部外周に、前記したノズルカバー2を被せて取り付けてある。図1(a)では溶接ノズル1の先端側を内カバー11の拡散部15の先まで突出させてある。この取り付け構造とすることにより、溶接トーチを少し斜めに傾けて溶接作業をしても拡散部15が溶接部材に当接しないようにしてある。
【0024】
図1(a)のカバー付き溶接ノズルの動作]
図1(a)のカバー付き溶接ノズルを使用してアーク溶接するときは、溶接ノズル1の外部から、溶接ノズル1のガス通路6にシールドガス(例えば、CO)を供給して、そのガスをガス出口7から噴出させる。このとき、ミスト供給装置(図示せず)から、ノズルカバー2のミスト通路12にミストを供給すると、ミストがミスト導入路13を通ってミスト噴出口14から噴出される。
【0025】
ミスト噴出口14から噴射されたミストは図1(a)のように下方拡がりに拡散される。4箇所のミスト噴出口14から噴出されたミストの噴射範囲は図1(b)のように溶接ノズル1の外周の略全周に拡がる。拡がったミストは溶接ノズル1のガス出口7から噴出されるシールドガスには影響せず、アーク溶接により発生するスパッタの飛散を抑制することができる。このため、スパッタが遠方まで飛散しにくくなり、溶接箇所の近くにあるネジや金属部品等に落下するスパッタが減少し、ネジや金属部品の不良化を防止することができる。また、飛散するスパッタが噴出されるミストにより冷やされるので、スパッタがネジや金属部品等に落下してもそれらに付着しにくくなり、付着しても剥離し易くもなる。
【0026】
(実施形態2)
図2(a)は本発明のカバー付き溶接ノズルの実施形態2であり、図1(a)の場合と同様に溶接ノズル1の上部外周にノズルカバー2を取り付けてある。図2(a)のノズルカバー2は、図1(a)のノズルカバー2と同様に、リング状の内カバー11をリング状の装着部10から抜け落ちないように装着部10の内側に圧入してある。装着部10には図1(a)の場合と同様にリング状のミスト通路12を設け、ミスト通路12の周方向数箇所(図2(b)では90度間隔で4箇所)にミスト導入路13を縦向きに開口し、ミスト導入路13の先のミスト噴出口14からミストを噴出できるようにしてある。
【0027】
図2(a)では、装着部10に円筒状のエアカバー17があり、エアカバー17の外側にエア供給口18があり、エア供給口18にエア供給装置を連結できるようにしてある。また、内カバー11とエアカバー17の間にエア通路19を設けて、エア供給装置からエア供給口18に供給されたエアが、エア通路19のエア噴出口20から噴出されるようにしてある。エア供給装置には加圧エアを供給可能な汎用のエア供給装置を使用することができる。
【0028】
図2(a)のカバー付き溶接ノズルの動作]
図2(a)のカバー付き溶接ノズルを使用してアーク溶接するときは、図1(a)の場合と同様に行う。このとき、ミスト噴出口14から噴射されたミストは図2(a)のように下方拡がりに拡散される。4箇所のミスト噴出口14から噴出されたミストの噴射範囲は図2(b)のように溶接ノズル1の外周の略全周に拡がる。拡がったミストは溶接ノズル1のガス出口7から噴出されるシールドガスには影響せず、アーク溶接により発生するスパッタの飛散を抑制することができる。このとき、エア噴出口20から噴出されるエアはノズルカバー2の拡散部15により外側に拡散されて、溶接ノズル1のガス出口7へのエアの回り込みが抑制され、ガス出口7から噴出されるシールドガスに影響しにくくなり、アーク溶接に支障がない。
【0029】
(実施形態3)
図3(a)は本発明のカバー付き溶接ノズルの実施形態3である。図3(a)の溶接ノズル1は、基本的構成において図1(a)のカバー付き溶接ノズルと同様であり、溶接ノズル1の上部外周にノズルカバー2を取り付けて、ノズルカバー2からミストを噴出できるようにしてある。
【0030】
[図3(a)の溶接ノズル]
図3(a)の溶接ノズル1は基本的構成において図1(a)の溶接ノズルと同様であるが、溶接ノズル1の外筒3の先端側に鍔21を設けたことにおいて異なる。図3(a)では溶接ノズル1の軸方向先端側に間隔をあけて三個の鍔21を設けてある。鍔21はミスト噴出口14から噴出されるミストが溶接ノズル1のガス出口7側に回り込むのを防止することができる。図3(a)の三個の鍔21の大きさ(突出寸法)、間隔等は前記回り込み防止ができるように設計してある。大きさは全て同じではなく、上段のものを下段のものよりも大きくするとか、その逆とする等してもよい。図3(a)の三個の鍔21はリング状(環状)であるが螺旋状であってもよい。
【0031】
鍔21はリングを溶接ノズル1の先端部に溶接するなどして取り付けることができるが、汎用のCリング(図視せず)を溶接ノズル1の先端側に設けた凹溝に嵌めるなどして取り付けることもできる。鍔21の数は一個だけ又は二個以上の任意数とすることもできる。二個以上の場合は溶接ノズル1の軸方向に間隔をあけて取り付ける。
【0032】
図3(a)のカバー付き溶接ノズルの動作]
図3(a)のカバー付き溶接ノズルを使用してアーク溶接するときも、図1(a)の場合と同様に行う。このとき、ミスト噴出口14から噴出されるミストが鍔21により外側に拡散されるため、溶接ノズル1のガス出口7へのミストの回り込みが抑制され、ガス出口7から噴出されるシールドガスに影響しにくくなり、アーク溶接に支障がない。図3(b)のミストの噴射範囲は図1(b)、図2(b)の場合と同様である。
【0033】
(実施形態4)
図4(a)は本発明のカバー付き溶接ノズルの実施形態4であり、ノズルカバー2にミスト噴出口14とエア噴出口20の双方を設けて、ミスト噴出口14からミストが、エア噴出口20からエアが噴出されるようにしたことにおいて図2(a)の場合と同じである。
【0034】
図4(a)の溶接ノズル]
図4(a)の溶接ノズル1は、基本的構成において図2(a)の溶接ノズル1と同様であるが、溶接ノズル1の先端側に鍔21を設けてあることにおいて図2(a)と異なる。図4(a)では図3(a)の溶接ノズル1と同様に、溶接ノズル1の軸方向先端側に間隔をあけて三個の鍔21を設けてある。鍔21の構成、個数、間隔等は図3(a)の場合と同様である。
【0035】
図4(a)のカバー付き溶接ノズルの動作]
図4(a)のカバー付き溶接ノズルを使用してアーク溶接するときは、図2(a)の場合と同様に行う。このとき、ミスト噴出口14から噴出されるミストが鍔21により外側に拡散されて溶接ノズル1のガス出口7へのミストの回り込みが抑制される。また、エア噴出口20から噴出されるエアも鍔21により外側に拡散されて溶接ノズル1のガス出口7へのエアの回り込みが抑制されて、ガス出口7から噴出されるシールドガスに影響しにくくなり、アーク溶接に支障がない。図4(b)のミストの噴射範囲も図1(b)、図2(b)の場合と同様である。
【0036】
(実施形態5)
図5は本発明のカバー付き溶接ノズルの実施形態5であり、溶接ノズル1の上部外周にノズルカバー2を取り付けてある。このカバー付き溶接ノズルは基本的構成において図1(a)の場合と同じであるが、溶接ノズル1の先端側に凹溝22を設けたことにおいて異なる。
【0037】
図5の溶接ノズル1は軸方向先端側に間隔をあけて三個の凹溝22を設けてある。この凹溝22はノズルカバー2のミスト噴出口14から噴出されるミストを誘導して、溶接ノズル1のガス出口7へのミストの回り込みを防止するための回り込み防止用である。図5の三個の凹溝22はリング状(環状)であるが、前記回り込みを防止できれば螺旋状であってもよい。凹溝22の数は任意数とすることができる。
【0038】
図5のカバー付き溶接ノズルの動作]
図5のカバー付き溶接ノズルを使用してアーク溶接するときは、図1(a)~図4(a)の場合と同様に行う。このときも、ミスト噴出口14からミストが噴出されるため図1(a)~図4(a)の場合と同様にミストによるスパッタの飛散抑制効果がある。また、凹溝22により溶接ノズル1のガス出口7へのミストの回り込み防止効果もある。
【0039】
(実施形態6)
図6は本発明のカバー付き溶接ノズルの実施形態6であり、溶接ノズル1の上部外周にノズルカバー2を取り付けてある。このカバー付き溶接ノズルは、基本的構成において図2(a)の場合と同じであるが、溶接ノズル1の先端側に凹溝22を設けたことにおいて異なる。
【0040】
図6の三個の凹溝22は図5の凹溝22と同じ構成である。この凹溝22により、ノズルカバー2のミスト噴出口14から噴出されるミストを誘導して、溶接ノズル1のガス出口7へのミストの回り込みを防止することができる。また、ノズルカバー2のエア噴出口20から噴出されるエアを誘導して、溶接ノズル1のガス出口7へのエアの回り込みを防止することもできる。図6の三個の凹溝22もミスト及びエアの前記回り込みを防止できれば螺旋状であってもよい。凹溝22の数は任意数とすることができる。
【0041】
図6のカバー付き溶接ノズルの動作]
図6のカバー付き溶接ノズルを使用してアーク溶接するときは、図1(a)~図5の場合と同様に行う。このときも、ミスト噴出口14からミストが噴出されるため図1(a)~図4(a)の場合と同様の効果がある。また、エア噴出口20から噴出されたエアがノズルカバー2の拡散部15により外側に拡散され、更には、凹溝22により溶接ノズル1のガス出口7側への回り込みが抑制されるため、ガス出口7から噴出されるシールドガスには影響しにくくなり、アーク溶接に支障がない。
【0042】
(実施形態7)
図7は本発明のカバー付き溶接ノズルの実施形態7であり、溶接ノズル1の上部外周にノズルカバー2を取り付けてある。このカバー付き溶接ノズルは基本的構成において図5の構成と同様であり、異なるのは、溶接ノズル1の軸方向先端側に間隔をあけて二個の凹溝22と一個の取り付け溝23を設け、取り付け溝23に鍔21を取り付けたことである。凹溝22及び鍔21はミスト噴出口14から噴出されるミストを誘導して、溶接ノズル1のガス出口7へのミストの回り込みを防止するための回り込み防止用である。
【0043】
凹溝22の数、鍔21の数は任意数とすることができる。取り付け溝23はその下の二個の凹溝22よりも狭くするとCリングを取り付け易くなる。
【0044】
図7のカバー付き溶接ノズルの動作]
図7のカバー付き溶接ノズルを使用してアーク溶接するときは、図1(a)~図6の場合と同様に行う。このとき、ミスト噴出口14からミストが噴出されるため図1(a)~図6の場合と同様の効果がある。また、噴出されたミストが鍔21と凹溝22の双方により誘導されて、溶接ノズル1のガス出口7側への回り込みが抑制されるため、ガス出口7から噴出されるシールドガスに影響しにくくなり、アーク溶接に支障がない。
【0045】
(実施形態8)
図8は本発明のカバー付き溶接ノズルの実施形態8であり、溶接ノズル1の上部外周にノズルカバー2を取り付けてある。このカバー付き溶接ノズルは基本的構成において図6の構成と同様であり、異なるのは、溶接ノズル1の軸方向先端側に間隔をあけて二個の凹溝22と一個の取り付け溝23を設け、取り付け溝23に鍔21を取り付けたことである。凹溝22及び鍔21はミスト噴出口14から噴出されるミストを誘導して、溶接ノズル1のガス出口7へのミストの回り込みを防止するための回り込み防止用であり、ノズルカバー2のエア噴出口20から噴出されるエアが、溶接ノズル1のガス出口7側に回り込むのを防止するための回り込み防止用でもある。
【0046】
凹溝22の数、鍔21の数は任意数とすることができる。取り付け溝23はその下の二個の凹溝22よりも狭くするとCリングを取り付け易くなる。
【0047】
図8のカバー付き溶接ノズルの動作]
図8のカバー付き溶接ノズルを使用してアーク溶接するときは、図1(a)~図7の場合と同様に行う。このとき、ミスト噴出口14からミストが噴出されるため図1(a)~図7の場合と同様の効果がある。また、エア噴出口20から噴出されたエアがノズルカバー2の拡散部15により外側に拡散され、更には、鍔21と凹溝22の双方により溶接ノズル1のガス出口7側へのミストとエアの回り込みが抑制されるため、ガス出口7から噴出されるシールドガスに影響しにくくなり、アーク溶接に支障がない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
前記実施形態1~8は、本発明の一例である。本発明は、本発明の課題を解決可能な範囲で、ミストやエアの噴射量、噴射圧、噴射速度、噴射範囲、ミストの粒子の大きさ等は設計変更可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 溶接ノズル
2 ノズルカバー
3 外筒
4 連結孔
4a ネジ
5 溶接チップ
6 ガス通路
7 ガス出口
8 溶接ワイヤー
10 装着部
11 内カバー
12 ミスト通路
13 ミスト導入路
14 ミスト噴出口
15 拡散部
16 固定具
17 エアカバー
18 エア供給口
19 エア通路
20 エア噴出口
21 鍔
22 凹溝
23 取り付け溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8