(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136874
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230922BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20230922BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20230922BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H01L29/78 652M
H01L29/78 653C
H01L29/78 655A
H01L29/78 655G
H01L29/78 652K
H01L29/78 652B
H01L29/86 301F
H01L29/91 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042802
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】糸数 裕子
(72)【発明者】
【氏名】末代 知子
(72)【発明者】
【氏名】岩鍜治 陽子
(72)【発明者】
【氏名】河村 圭子
(72)【発明者】
【氏名】布施 香織
(57)【要約】
【課題】スイッチング損失が小さく、破壊耐量が大きい半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2、第3半導体層と、を含む半導体部と、第1電極と、第2電極と、前記半導体部中に設けられた複数の第3電極と、を備える。前記半導体部は、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、前記第1半導体層は、前記第1電極と前記第2電極との間に延在する。前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間、前記第3半導体層は、前記第2半導体層と前記第2電極との間に設けられる。隣り合う2つの前記第3電極の間において、前記第2電極は、前記第2半導体層中に延在するコンタクト部を有する。前記第3半導体層は、相互に離間し、それぞれ、前記コンタクト部と、前記2つの第3電極のいずれか一方との間に設けられ、前記2つの第3電極の前記一方に向き合う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第2導電形の複数の第3半導体層とを含む半導体部と、
前記半導体部の前記第1半導体層に電気的に接続された第1電極と、
前記半導体部の前記第2半導体層および前記第3半導体層に電気的に接続された第2電極と、
前記半導体部中に設けられ、前記半導体部から第1絶縁膜により電気的に絶縁された複数の第3電極と、
を備え、
前記半導体部は、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、
前記第1半導体層は、前記第1電極と前記第2電極との間に延在し、
前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に設けられ、
前記複数の第3半導体層は、前記第2半導体層と前記第2電極との間において、それぞれ、前記第2半導体層上に部分的に設けられ、前記第2半導体層の第2導電形不純物の濃度よりも高濃度の第2導電形不純物を含み、
前記複数の第3電極は、それぞれ、前記半導体部の前記第2電極側の表面から前記第1半導体層中に延在する第1トレンチの内部に設けられ、
前記複数の第3電極のうちの隣り合う2つの第3電極の間において、
前記第2半導体層は、前記2つの第3電極のそれぞれに前記第1絶縁膜を介して向き合い、
前記第2電極は、前記半導体部の前記表面から前記第2半導体層中に延在する第2トレンチの内部に延びるコンタクト部を有し、
前記複数の第3半導体層は、相互に離間し、それぞれ、前記第2電極のコンタクト部と、前記2つの第3電極のいずれか一方と、の間に設けられ、前記第1絶縁膜を介して、前記2つの第3電極の前記一方に向き合い、
前記第2半導体層は、前記第2電極の前記コンタクト部と前記2つの第3電極の他方との間に延在する第1部分を有し、
前記複数の第3半導体層は、それぞれ、前記第2半導体層の前記第1部分と、前記第2電極の前記コンタクト部を介して向き合うように配置される、半導体装置。
【請求項2】
前記第2半導体層は、前記複数の第3半導体層の間に延在する第2部分を含む、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の第3電極は、それぞれ、前記半導体部の前記表面に沿った第1方向に延在し、
前記第2半導体層の前記第2部分は、前記複数の第3半導体層のうちの前記第1方向において隣り合う2つの第3半導体層に接し、
前記第2半導体層の前記第2部分の前記第1方向の幅は、前記複数の第3半導体層の前記第1方向の幅よりも広い、請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2電極の前記コンタクト部は、前記第1方向に延在し、
前記複数の第3半導体層は、前記コンタクト部に接する、請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2電極は、前記第1方向に並ぶ複数の前記コンタクト部を有し、
前記複数の第3半導体層は、前記複数のコンタクト部にそれぞれ接する、請求項3記載の半導体装置。
【請求項6】
前記複数の第3半導体層は、前記2つの第3電極の前記一方と、前記第2電極の前記コンタクト部と、の間に配置される、請求項1乃至5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記複数の第3電極は、前記2つの第3電極の前記一方に隣り合う別の第3電極をさらに含み、
前記半導体部は、前記2つの第3電極の前記一方と、前記別の第3電極との間に設けられる別の第3半導体層をさらに含み、
前記複数の第3半導体層のうちの前記2つの第3電極の前記一方と前記第2電極の前記コンタクト部との間に配置される第3半導体層は、前記2つの第3電極の前記一方を介して、前記別の第3半導体層に向き合う、請求項1乃至6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記複数の第3電極は、前記2つの第3電極の前記一方に隣り合う別の第3電極をさらに含み、
前記半導体部は、前記2つの第3電極の前記一方と、前記別の第3電極との間に設けられる前記第2半導体層の別の第1部分をさらに含み、
前記複数の第3半導体層のうちの前記2つの第3電極の前記一方と前記第2電極の前記コンタクト部との間に配置される第3半導体層は、前記2つの第3電極の前記一方を介して、前記第2半導体層の前記別の第1部分に向き合う、請求項2記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータなどの電力変換装置に用いられる半導体装置には、スイッチング損失が小さく、破壊耐量が大きいことが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、スイッチング損失が小さく、破壊耐量が大きい半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第2導電形の複数の第3半導体層とを含む半導体部と、前記半導体部の前記第1半導体層に電気的に接続された第1電極と、前記半導体部の前記第2半導体層および前記第3半導体層に電気的に接続された第2電極と、前記半導体部中に設けられ、前記半導体部から第1絶縁膜により電気的に絶縁された複数の第3電極と、を備える。前記半導体部は、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、前記第1半導体層は、前記第1電極と前記第2電極との間に延在する。前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に設けられる。前記複数の第3半導体層は、前記第2半導体層と前記第2電極との間において、それぞれ、前記第2半導体層上に部分的に設けられ、前記第2半導体層の第2導電形不純物の濃度よりも高濃度の第2導電形不純物を含む。前記複数の第3電極は、それぞれ、前記半導体部の前記第2電極側の表面から前記第1半導体層中に延在する第1トレンチの内部に設けられる。前記複数の第3電極のうちの隣り合う2つの第3電極の間において、前記第2半導体層は、前記2つの第3電極のそれぞれに前記第1絶縁膜を介して向き合い、前記第2電極は、前記半導体部の前記表面から前記第2半導体層中に延在する第2トレンチの内部に延びるコンタクト部を有する。前記複数の第3半導体層は、相互に離間し、それぞれ、前記第2電極のコンタクト部と、前記2つの第3電極のいずれか一方との間に設けられ、前記第1絶縁膜を介して、前記2つの第3電極の前記一方に向き合う。前記第2半導体層は、前記第2電極の前記コンタクト部と前記2つの第3電極の他方との間に延在する第1部分を有し、前記複数の第3半導体層は、それぞれ、前記第2半導体層の前記第1部分と、前記第2電極の前記コンタクト部を介して向き合うように配置される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【
図2】実施形態に係る半導体装置を示す模式平面図である。
【
図3】実施形態に係る半導体装置を示す別の模式平面図である。
【
図4】実施形態の第1変形例に係る半導体装置を示す模式平面図である。
【
図5】実施形態の第2変形例に係る半導体装置を示す模式平面図である。
【
図6】実施形態の第3変形例に係る半導体装置を示す模式平面図である。
【
図7】実施形態の第4変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【
図8】実施形態の第5変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には、同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0008】
さらに、各図中に示すX軸、Y軸およびZ軸を用いて各部分の配置および構成を説明する。X軸、Y軸、Z軸は、相互に直交し、それぞれX方向、Y方向、Z方向を表す。また、Z方向を上方、その反対方向を下方として説明する場合がある。
【0009】
図1は、実施形態に係る半導体装置1を示す模式断面図である。半導体装置1は、ダイオードである。半導体装置1は、例えば、電力変換装置において、FWD(Free Wheeling Diode)として機能する。また、半導体装置1は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)と集積化されても良い。
【0010】
図1に示すように、半導体装置1は、半導体部10と、第1電極20と、第2電極30と、を備える。半導体部10は、第1電極20と第2電極30との間に位置する。第1電極20は、カソード電極である。第2電極30は、アノード電極である。
半導体部10は、例えば、シリコンである。第1電極20は、半導体部10の裏面10B上に設けられる。第2電極30は、半導体部10の表面10F上に設けられる。
【0011】
半導体部10は、第1導電形の第1半導体層11と、第2導電形の第2半導体層13と、第2導電形の第3半導体層15と、第4半導体層17と、を含む。以下、第1導電形をn形、第2導電形をp形として説明する。
【0012】
第1半導体層11は、例えば、n形低濃度層である。第1半導体層11は、低濃度のn形不純物を含む。第1半導体層11は、第1電極20と第2電極30との間に延在する。
【0013】
第2半導体層13は、例えば、p形アノード層である。第2半導体層13は、第1半導体層11と第2電極30との間に設けられる。第2電極30は、第2半導体層13に接する。第2電極30は、第2半導体層13に、例えば、ショットキ接続される。
【0014】
第3半導体層15は、例えば、p形高濃度層である。第3半導体層15は、第2半導体層13の第2導電形不純物の濃度よりも高濃度の第2導電形不純物を含む。第3半導体層15は、第2半導体層13と第2電極30との間に部分的に設けられる。第3半導体層15は、第2半導体層13上に設けられ、第2電極30に接し、第2電極30に電気的に接続される。第2電極30は、第3半導体層15に、例えば、オーミック接続される。
【0015】
第4半導体層17は、例えば、n形カソード層である。第4半導体層17は、第1半導体層11と第1電極20との間に設けられる。第4半導体層17は、第1半導体層11の第1導電形不純物の濃度よりも高濃度の第1導電形不純物を含む。第1電極20は、第4半導体層17に接し、第4半導体層17に電気的に接続される。第1電極20は、第4半導体層17に、例えば、オーミック接続される。
【0016】
図1に示すように、半導体装置1は、複数の第3電極40をさらに備える。第3電極40は、例えば、第1電極20と第2電極30との間において、半導体部10中に設けられる。半導体部10の表面10F側には、複数のトレンチTRが設けられる。複数の第3電極40は、複数のトレンチTR内にそれぞれ設けられる。第3電極40は、第1絶縁膜43により半導体部10から電気的に絶縁される。
【0017】
第3電極40は、半導体部10の表面10Fに沿った方向、例えば、X方向に並ぶ。第2半導体層13は、隣り合う2つの第3電極40の間に設けられる。第2半導体層13は、第1絶縁膜43を介して、2つの第3電極40のそれぞれに向き合う。
この例では、第3電極40は、第1電極20と第2電極30との間に設けられ、第2絶縁膜45により、第2電極30から電気的に絶縁される。第3電極40は、第2電極30から電気的に絶縁されることにより、制御電極(ゲート電極)として機能するように構成できる。
【0018】
第2電極30は、トレンチコンタクト30Cを有する。トレンチコンタクト30Cは、半導体部10の表面10Fから第2半導体層13中に延在するコンタクトトレンチCT内に延びる。第3半導体層15は、隣り合う2つの第3電極40の一方とトレンチコンタクト30Cとの間に設けられる。コンタクトトレンチCTは、Z方向の深さが第3半導体層15のZ方向の厚さよりも深くなるように設けられる。
【0019】
第3半導体層15は、第1絶縁膜を介して第3電極40に向き合い、トレンチコンタクト30Cに接するように設けられる。第3半導体層15は、トレンチコンタクト30Cに接すると共に、例えば、半導体部10の表面10Fにおいて、第2電極30に接する。なお、実施形態はこの例に限定される訳ではなく、第3半導体層15は、トレンチコンタクト30Cから離間するように設けられてもよい。
【0020】
図2は、実施形態に係る半導体装置1を示す模式平面図である。
図2は、
図1中に示すA-A線に沿った断面図である。なお、
図1は、
図2中に示すB-B線に沿った断面図である。
【0021】
図2に示すように、第3電極40は、例えば、Y方向に延在する。トレンチコンタクト30Cは、例えば、隣り合う2つの第3電極40の間において、Y方向に延在する。
【0022】
第3半導体層15は、隣り合う2つの第3電極40のうちの一方の第3電極40aとトレンチコンタクト30Cとの間において、Y方向に離間して配置される。第2半導体層13は、隣り合う2つの第3電極40のうちの他方の第3電極40bとトレンチコンタクト30Cとの間に位置する第1部分13aを有する。第3半導体層15は、トレンチコンタクト30Cを介して、第2半導体層13の第1部分13aに向き合うように設けられる。
【0023】
Y方向において隣り合う2つの第3半導体層15の間には、第2半導体層13の第2部分13bが位置する。第2半導体層13の第2部分13bは、隣り合う2つの第3半導体層15のそれぞれに接する。第3半導体層15のY方向の幅Wbは、例えば、第3半導体層15間に位置する第2半導体層13の第2部分13bのY方向の幅Waよりも狭い。
【0024】
この例では、X方向において最近接して配置される2つの第3半導体層15は、第3電極40および第1絶縁膜43を介して向き合う。すなわち、第3電極40の両側に向き合うように配置される2つの第3半導体層15は、その間に第2半導体層13の一部を介在させない。
【0025】
図3(a)~(c)は、実施形態に係る半導体装置1を示す別の模式平面図である。
図3(a)および(b)は、比較例に係る半導体装置2a、2bを表す模式平面図である。
図3(c)は、半導体装置1を示す模式平面図である。
【0026】
図3(a)に示す半導体装置2aでは、第3半導体層15は、隣り合う第3電極40の両方に、第1絶縁膜43を介して向き合うように設けられる。また、第3半導体層15は、Y方向において相互に離間して設けられる。隣り合う第3半導体層15の間には、第2半導体層13の一部が設けられる。
【0027】
第2電極30は、第2半導体層13に、例えば、ショットキ接続され、第2半導体層15に、例えば、オーミック接続される。このため、第1電極20と第2電極30と(
図1参照)の間に順方向電圧が印加された時、第3半導体層15を介して介して第2電極30から第2半導体層13に注入される正孔の方が、第2電極30から第2半導体層13に直接注入される正孔よりも多くなる。したがって、第2半導体層13および第3半導体層15のそれぞれの第2電極30に接する面積の比により、第2半導体層13に注入される正孔の量を制御することができる。
【0028】
例えば、ターンオフ過程におけるスイッチング損失を低減するためには、ターンオン時における第2半導体層13から第1半導体層11への正孔注入を抑制することが好ましい。一方、第1半導体層11への正孔注入を過度に抑制すると、オン抵抗が大きくなる。このため、第2電極30に対する第3半導体層15のコンタクト面積と第2半導体層13のコンタクト面積との比を好適に制御することが求められる。
【0029】
半導体装置2aでは、例えば、第2半導体層13の第2電極30に接する部分のY方向の幅Waと第3半導体層15のY方向の幅Wbの比を制御することにより、第2半導体層13中の正孔濃度を制御することができる。言い換えれば、Y方向において隣り合う第3半導体層15の間隔La(=Wa)を制御することにより第2半導体層13中の正孔濃度を制御することができる。しかしながら、第2半導体層13への正孔注入を低減するために、第2半導体層13間のY方向の間隔La1を広くし過ぎると、第3半導体層15を配置した部分に順方向電流が集中し、過電流に対する破壊耐量が低下する。
【0030】
図3(b)に示す半導体装置2bでは、第3半導体層15は、隣り合う第3電極40の一方に、第1絶縁膜43を介して向き合うように設けられる。第3半導体層15のX方向の幅は、例えば、
図3(a)示す例の2分の1である。したがって、第2半導体層13および第3半導体層15のコンタクト面積の比を変えないで、Y方向において隣り合う第3半導体層15間の間隔La2を、
図3(a)の間隔La1の2分の1にすることができる。これにより、順方向の電流集中を緩和し、破壊耐量を向上させることが可能となる。
【0031】
しかしながら、第3半導体層15をイオン注入により形成する場合、イオン注入された第2導電形不純物を熱処理により活性化させる。このため、
図3(b)中に破線で示すように、第2導電形不純物が熱拡散し、第3半導体層15の面積が広くなることは避けられない。このため、第2半導体層13および第3半導体層15のコンタクト面積の比が変化し、第2半導体層13への正孔注入が増加する。予め、第2導電形不純物の拡散を考慮した上で、イオン注入のマスクサイズを決めることも可能であるが、製造過程のばらつきにより、第2半導体層13への正孔注入量が製造条件に依存して変化することを避けられない。また、イオン注入に用いられる注入マスクの微細化には限界があり、熱拡散を考慮したマスクパターンを形成することが難しいケースもある。
【0032】
図3(c)に示すように、半導体装置1では、隣り合う第3電極40の間に、コンタクトトレンチCTを形成する。これにより、第3半導体層15のX方向の拡散領域を除去することができる。また、コンタクトトレンチCTをイオン注入後に形成し、その後、熱処理することにより、第2導電形不純物のX方向における拡散領域を防ぐこともできる。このように、半導体装置1では、第2導電形不純物の熱拡散による第3半導体層15の面積の拡大を抑制し、第2半導体層13への正孔注入の増加を避けることができる。
なお、
図3(c)では、第3半導体層15がコンタクトトレンチCTに接するように記載しているが、この例に限定される訳ではない。例えば、製造条件もしくはマスクパターンの精度に起因して、第3半導体層15がコンタクトトレンチCTから離間するように形成される場合もある。
【0033】
図4(a)および(b)は、実施形態の第1変形例に係る半導体装置3a、3bを示す別の模式平面図である。
図4(a)および(b)は、
図1中に示すA-A線に沿った断面図である。
【0034】
図4(a)に示す半導体装置3aでは、隣り合う第3電極40間において、一方の第3電極40とトレンチコンタクト30Cとの間に、第3半導体層15を配置し、他方の第3電極40とトレンチコンタクト30Cとの間には、第3半導体層15は設けられない。
【0035】
図4(b)に示す半導体装置3bでは、X方向において隣り合う第3半導体層15が第3電極40を介して相互に向き合わない点で、
図2に示す第3半導体層15の配置と異なる。すなわち、X方向において最近接する2つの第3半導体層15の間に、第2半導体層13の一部および第3電極40が位置する。言い換えれば、X方向において、第3半導体層15は、第3電極40を介して、第2半導体層13の一部と相互に向き合うように配置される。
【0036】
図5(a)および(b)は、実施形態の第2変形例に係る半導体装置4a、4bを示す模式平面図である。
図5(a)および(b)は、
図1中に示すA-A線に沿った断面図である。
【0037】
図5(a)に示す半導体装置4aでは、隣り合う第3電極40の間に、複数のトレンチコンタクト30Cが設けられる。複数のトレンチコンタクト30Cは、Y方向に並び、相互に離間して配置される。第3半導体層15は、複数のトレンチコンタクト30Cのそれぞれと第3電極40との間に設けられる。第3半導体層15は、X方向において、トレンチコンタクト30Cを介して、第2半導体層13に向き合うように設けられる。
【0038】
図5(b)に示す半導体装置4bでは、第3半導体層15は、隣り合う第3電極40の一方の第3電極40と、複数のトレンチコンタクト30Cのそれぞれと、の間に設けられる。他方の第3電極40と複数のトレンチコンタクト30Cのそれぞれとの間には、第3半導体層15は設けられない。
【0039】
図6(a)および(b)は、実施形態の第3変形例に係る半導体装置5a、5bを示す模式平面図である。
図6(a)および(b)は、
図1中に示すA-A線に沿った断面図である。
【0040】
図6(a)に示す半導体装置5aでも、複数のトレンチコンタクト30Cが、Y方向に並び、相互に離間して設けられる。また、X方向において隣り合う第3半導体層15が第3電極40を介して相互に向き合わない点で、
図5(a)に示す第3半導体層15の配置と異なる。すなわち、X方向において最近接する2つの第3半導体層15の間に、第2半導体層13の一部および第3電極40が位置する。
【0041】
図6(b)に示す半導体装置5bでは、複数のトレンチコンタクト30Cは、第3半導体層15に接しないトレンチコンタクト30Cを含む。すなわち、X方向において、第3電極40とトレンチコンタクト30Cとの間に、第3半導体層15が設けられない領域を有する。
【0042】
以上、隣り合う2つの第3電極40の間における複数の第3半導体層15とトレンチコンタクト30Cの配置例を示したが、実施形態は、これらに限定される訳ではない。例えば、それぞれの配置の特徴を組合わせた別の配置を適用しても良い。また、いずれの例でも、第2半導体層13および第3半導体層15の第2電極30に対するコンタクト面積の比を一定に保持しながら、Y方向において隣り合う第3半導体層15の間の間隔Laを狭くすることが可能となる。これにより、順方向電流の集中を抑制し、破壊耐量を向上させることができる。
【0043】
図7(a)および(b)は、実施形態の第4変形例に係る半導体装置6a、6bを示す模式断面図である。
図7(a)および(b)は、
図2中に示すB-B線に沿った断面図である。
【0044】
図7(a)に示す半導体装置6aでは、層間絶縁膜45は、第2半導体層13と第2電極30との間、および第3半導体層15と第2電極30との間に延在する。第2半導体層13および第3半導体層15は、第2電極30のトレンチコンタクト30Cに接するコンタクト面を介して、第2電極30に電気的に接続される。
【0045】
図7(b)に示す半導体装置6bでは、第2電極30は、トレンチコンタクト30Cと、平面コンタクト30Dと、を有する。トレンチコンタクト30Cは、半導体部10中に延在し、第2半導体層13および第3半導体層15に接するように設けられる。平面コンタクト30Dは、トレンチコンタクト30C上に設けられる。
【0046】
平面コンタクト30Dは、層間絶縁膜45に設けられたコンタクトホールを充填するように設けられる。平面コンタクト30DのX方向の幅は、トレンチコンタクト30CのX方向の幅よりも広く設けられる。これにより、平面コンタクト30Dは、第2半導体層13および第3半導体層15のそれぞれの上面に接する部分を含む。
【0047】
第2半導体層13および第3半導体層15は、第2電極30のトレンチコンタクト30Cおよび平面コンタクト30Dに接するそれぞれのコンタクト面積が所定の面積比となるように設けられる。これらの例でも、Y方向において隣り合う第3半導体層15間の間隔Laを狭くすることにより、順方向電流の集中を抑制することができる。
【0048】
図8(a)および(b)は、実施形態の第5変形例に係る半導体装置7a、7bを示す模式断面図である。
図8(a)および(b)は、
図2中に示すB-B線に沿った断面図である。
【0049】
図8(a)に示すように、半導体装置7aの第3電極40は、第2電極30に接続され、第2電極30と同電位となるように設けられる。第2電極30は、半導体部10の表面10Fおよびトレンチコンタクト30Cを介して、第2半導体層13および第3半導体層15に電気的に接続される。
【0050】
図8(b)に示す半導体装置7bでは、第3電極40に代えて、絶縁体47がトレンチTRの内部に設けられる。絶縁体47は、例えば、第2電極30に接し、第1半導体層11中に延在するように設けられる。絶縁体47は、例えば、酸化シリコンである。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1、2a、2b、3a、3b、4a、4b、5a、5b、6a、6b、7a、7b…半導体装置、 10…半導体部、 10B…裏面、 10F…表面、 11…第1半導体層、 13…第2半導体層、 13a…第1部分、 13b…第2部分、 15…第3半導体層、 17…第4半導体層、 20…第1電極、 30…第2電極、 30C…トレンチコンタクト、 30D…平面コンタクト、 40、40a、40b…第3電極、 43…第1絶縁膜、 45…層間絶縁膜、 47…絶縁体、 CT…コンタクトトレンチ、 TR…トレンチ