(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137063
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】集積回路
(51)【国際特許分類】
H03M 1/08 20060101AFI20230922BHJP
H03M 1/12 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H03M1/08 A
H03M1/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043064
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下條 義満
【テーマコード(参考)】
5J022
【Fターム(参考)】
5J022AA01
5J022BA02
5J022CA10
5J022CE01
(57)【要約】
【課題】 AD変換効率の精度が高い集積回路1を提供する。
【解決手段】実施形態の集積回路1は、第1のAD変換回路10Aと第2のAD変換回路10Bとを含む複数のAD変換回路10と、前記第2のAD変換回路10Bのサンプリング処理S2によって発生するノイズの影響を、前記第1のAD変換回路10Aが受けないように、前記第2のAD変換回路10Bのサンプリング処理S3は、開始タイミングを通常の開始タイミングよりも遅くするが、サンプリング時間を短くすることによって、前記第2のAD変換回路10Bのサンプリング処理S3の終了タイミングは、通常のサンプリング処理を行った場合の終了タイミングと同じになるように制御する制御回路と、を具備する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のAD変換回路と第2のAD変換回路とを含む複数のAD変換回路と、
前記第2のAD変換回路のサンプリング処理によって発生するノイズの影響を、前記第1のAD変換回路が受けないように、前記第2のAD変換回路のサンプリング処理は、開始タイミングを通常の開始タイミングよりも、サンプリング処理開始待機時間、遅くするが、サンプリング時間を短くすることによって、前記第2のAD変換回路のサンプリング処理の終了タイミングは、通常のサンプリング処理を行った場合の終了タイミングと同じに制御する制御回路と、を具備することを特徴とする集積回路。
【請求項2】
前記制御回路は、前記第1のAD変換回路のサンプリング処理の終了期間および変換処理の終了期間と、前記第2のAD変換回路のサンプリング処理の開始期間とが、重畳しないように制御することを特徴とする請求項1に記載の集積回路。
【請求項3】
第1のAD変換回路と第2のAD変換回路とを含む複数のAD変換回路と、
前記第2のAD変換回路の変換処理によって発生するノイズの影響を前記第1のAD変換回路が受けないように、前記第2のAD変換回路の変換処理の開始タイミングを、通常タイミングよりも変換処理開始待機時間、遅くする制御する制御回路と、を具備することを特徴とする集積回路。
【請求項4】
前記制御回路は、前記第1のAD変換回路のサンプリング処理終了期間および変換処理の終了期間と、前記第2のAD変換回路の変換処理の開始期間とが、重畳しないように制御することを特徴とする請求項3に記載の集積回路。
【請求項5】
第1のAD変換回路と第2のAD変換回路とを含む複数のAD変換回路と、
前記第2のAD変換回路のサンプリング処理によって発生するノイズの影響を、前記第1のAD変換回路が受けないように、前記第2のAD変換回路のサンプリング処理は、開始タイミングを通常の開始タイミングよりもサンプリング処理開始待機時間、遅くするが、サンプリング時間を短くすることによって、前記第2のAD変換回路のサンプリング処理の終了タイミングは、通常のサンプリング処理を行った場合の終了タイミングと同じに制御するとともに、
前記第2のAD変換回路の変換処理によって発生するノイズの影響を前記第1のAD変換回路が受けないように、前記第2のAD変換回路の変換処理の開始タイミングを、通常タイミングよりも変換処理開始待機時間、遅くする制御する制御回路と、を具備することを特徴とする集積回路。
【請求項6】
前記制御回路は、前記第1のAD変換回路のサンプリング処理の終了期間および変換処理開始期間が、前記第2のAD変換回路のサンプリング処理の開始期間および変換処理の開始期間と、重畳しないように制御することを特徴とする請求項5に記載の集積回路。
【請求項7】
前記サンプリング処理開始待機時間、前記変換処理開始待機時間、前記サンプリング処理の開始期間、前記サンプリング処理の終了期間、前記変換処理の開始期間、および、前記変換処理の終了期間は、AD変換精度の仕様に応じて設定されることを特徴とする請求項2、請求項4、または、請求項5のいずれか1項に記載の集積回路。
【請求項8】
前記制御回路は、前記複数のAD変換回路のうち、精度低下を許容する複数のAD変換回路と精度低下を許容しない複数の重要なAD変換回路とを指定して、前記重要なAD変換回路の精度を優先的に確保することを特徴とする請求項7に記載の集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数のAD変換回路を有する集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
AD変換回路の処理は、サンプリング処理と変換処理の2つに処理に分けることができる。サンプリング処理では、変換トリガを受信すると、入力されたアナログ信号の内部のキャパシタへの充電が開始され、所定のサンプリング時間が経過すると、アナログ信号がキャパシタにホールドされる。変換処理では、ホールドされた入力信号が、逐次比較等の方法により、デジタル値に変換される。
【0003】
AD変換回路は、サンプリング処理の始めの期間(以降、サンプリング処理の開始期間)、および、変換処理の始めの期間(以降、変換処理の開始期間)、に大きなノイズを発生する場合がある。また、AD変換回路は、サンプリング処理の終わりの期間(以降、サンプリング処理の終了期間)、および、デジタル信号への変換処理の終わりの期間(以降、変換処理の終了期間)に、最もノイズの影響を受けやすい。
【0004】
複数のAD変換回路を有する集積回路では、例えば、第1のAD変換回路のサンプリング処理の終了期間に、第2のAD変換回路がサンプリングを開始すると、第2のAD変換回路が発生するノイズの影響をうけて、第1のAD変換回路のAD変換の精度が低下することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、AD変換の精度が高い集積回路を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】AD変換回路のノイズを発生する期間およびノイズの影響を受けやすい期間を示す図である。
【
図3】従来の集積回路の複数のAD変換回路の動作を説明する図である。
【
図4】第1実施形態の集積回路の複数のAD変換回路の動作を説明する図である。
【
図5】AD変換回路のキャパシタの充電量の変化を示す図である。
【
図6】第1実施形態の集積回路のAD変換回路の動作を説明する図である。
【
図7】第2実施形態の集積回路のAD変換回路の動作を説明する図である。
【
図8】AD変換回路のキャパシタの充電量の変化を示す図である。
【
図9】第2実施形態の集積回路のAD変換回路の動作を説明する図である。
【
図10】第3実施形態の集積回路の複数のAD変換回路の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態の集積回路は、第1のAD変換回路と第2のAD変換回路とを含む複数のAD変換回路と、前記第2のAD変換回路のサンプリング処理によって発生するノイズの影響を、前記第1のAD変換回路が受けないように、前記第2のAD変換回路のサンプリング処理は、開始タイミングを通常の開始タイミングよりも遅くするが、サンプリング時間を短くすることによって、前記第2のAD変換回路のサンプリング処理の終了タイミングは、通常のサンプリング処理を行った場合の終了タイミングと同じに制御する制御回路と、を具備する。
【0009】
<第1実施形態>
以下、図面を参照して第1実施形態の集積回路1について詳細に説明する。
【0010】
実施形態に基づく図面は、模式的であり、各処理の相対的な時間表示などは、現実のものとは異なる。
【0011】
図1に示すように実施形態の集積回路1は、第1のAD変換回路10Aと第2のAD変換回路10Bを含む複数のAD変換回路(変換チャンネル)10A~10Dと、CPU30と、制御部(コントローラ)20と、を有する。集積回路1は、例えば、マイクロコンピュータである。制御回路である制御部20は、AD変換回路10A-10Dの動作を制御する。以下、複数のAD変換回路10A~10Dのそれぞれを、AD変換回路10という。AD変換回路10の数は、例えば2以上64以下である。
【0012】
図2に示すように、AD変換回路10は、変換トリガを受信すると、アナログ信号のサンプリング処理S(アナログ処理)、すなわち、キャパシタへの充電を開始する。すでに説明したように、サンプリング処理Sの開始期間である第1の期間N1に、アナログ信号の入力線をキャパシタに接続するときのスイッチの開動作によって大きなノイズが発生することがある。ノイズは、徐々に減少し第1の期間N1が経過すると無視できるレベルまで減少する。第1の期間N1は、例えば、サンプリング処理Sの時間の10%以上30%以下の期間である。
【0013】
一方、サンプリング処理Sの終了期間である、キャパシタに電荷が蓄積された第2の期間W1に、ノイズの影響を受けると、キャパシタに蓄積された電荷量が入力されているアナログ信号を正確に反映できないため、最終的に変換精度が大きく劣化するおそれがある。第2の期間W1は、例えば、サンプリング処理Sの時間の10%以上30%以下の期間である。
【0014】
すなわち、AD変換回路10は、サンプリング処理Sの開始期間の第1の期間N1はノイズを発生しやすく、サンプリング処理Sの終了期間の第2の期間W1はノイズの影響を受けやすい。
【0015】
また、AD変換回路10は、変換処理C(デジタル処理)の開始期間である第3の期間N2に、逐次変換処理の上位ビットを決定する動作によって大きなノイズが発生することがある。ノイズは徐々に減少し第3の期間N2が経過すると無視出来るレベルまで減少する。第3の期間N2は、例えば、変換処理Cの時間の10%以上30%以下の期間である。
【0016】
一方、AD変換回路10は、変換処理Cの終了期間である第4の期間W2に、ノイズの影響を受けると、逐次変換処理において下位ビットを正確に決定できないため、最終的に変換精度が大きく劣化するおそれがある。第4の期間W2は、例えば、変換処理Cの時間の10%以上30%以下の期間である。
【0017】
すなわち、AD変換回路10は、変換処理Cの開始期間の第3の期間N2はノイズを発生しやすく、変換処理Cの終了期間の第4の期間W2はノイズの影響を受けやすい。
【0018】
ただし、以下に説明する本実施形態の集積回路1では、サンプリング処理Sによって発生するノイズの影響が顕著で、変換処理Cによって発生するノイズの影響は無視できる。
【0019】
図3(A)に示すように、第1のAD変換回路10Aのサンプリング処理S1の終了期間W1に、第2のAD変換回路10Bがサンプリング処理S2を開始すると、第1のAD変換回路10Aは、第2のAD変換回路10Bが開始期間N1に発生したノイズの影響を受けて変換精度が劣化することがある。
【0020】
これに対して、
図3(B)に示す従来の集積回路101では、制御部20は、変換精度の劣化を防止するために、第2のAD変換回路10Bのサンプリング処理S2の開始を、サンプリング開始待機時間TWS(以下、「S待機時間TWS」という。)、遅らせる。S待機時間TWSは、第2のAD変換回路10Bの開始が第1のAD変換回路10Aの第2の期間W1の終了よりも後になる時間以上である。
【0021】
しかし、上記の従来の制御方法(B)では、第2のAD変換回路10Bはサンプリング処理S2の開始を遅らせるために、サンプリング処理S2の終了、すなわち、入力信号をホールドするタイミングが通常のタイミングよりも遅れてしまう。
【0022】
例えば、時間的に変化するアナログ信号を一定周期で継続的にデジタル化する集積回路では、入力信号をホールドするタイミングの時間的な変動も精度低下の大きな原因となる。
【0023】
これに対して、
図4に示す、本実施形態の集積回路1では、制御部20は、第1のAD変換回路10Aのサンプリング終了期間W1に、(A)第2のAD変換回路10Bのサンプリング開始期間N1が重なる場合に、(B)第2のAD変換回路10Bのサンプリング処理S3の開始を、S待機期間TWS、遅らせるだけでなく、サンプリング処理S3の時間を、S待機期間TWS、短くし、入力信号をホールドするタイミングを通常のタイミングと同じになるように制御する。
【0024】
図5に示すように、キャパシタの充電量は、サンプリング初期は急激に上昇するが、サンプリング終了期間の変化は小さい。このため、サンプリング時間を短くしてもAD変換精度は大きくは低下しない。
【0025】
なお、サンプリング時間を過度に短くするとAD変換の精度が低下する。そのため、サンプリング処理時間の最小値(S待機期間TWSの最大値)は、AD変換の精度要求を満たす範囲で決定される。
【0026】
以上の説明のように、本実施形態の集積回路1では、制御部20は、第2のAD変換回路10Bのサンプリング処理S2によって発生するノイズの影響を、第1のAD変換回路10Aが受けないように、第2のAD変換回路10Aのサンプリング処理S2は、開始タイミングを通常の開始タイミングよりも、S待機時間TWS、遅くする、しかし、制御部20は、サンプリング時間を短くすることによって、第2のAD変換回路10Bのサンプリング処理の終了タイミングは、通常のサンプリング処理を行った場合の終了タイミングと同じになるように制御する。
【0027】
図6に示すように、制御部20は、あるAD変換回路10がサンプリング処理を開始すると、他のAD変換回路がサンプリング処理において発生するノイズの影響を受けないように、サンプリング処理開始禁止期間(以下「S禁止期間」という。)TSW1、TSW2を設定する。AD変換回路10以外の全てのAD変換回路は、変換トリガを受信しても、S禁止期間TSW1、TSW2にはサンプリング処理を開始しないで、S待機時間TWS待機する。
【0028】
S禁止期間TSW1は、サンプリング処理Sの終了期間の第2の期間W1に対応している。S禁止期間TSW2は、変換処理Cの終了期間の第4の期間W2に対応している。
【0029】
S禁止期間TSW1は、サンプリング処理終了時(データホールド時)を終時間とし、例えば、第1の期間N1と第2の期間時間W1との合計時間によって決定される。
【0030】
S禁止期間TSW2は、変換処理終了時を終時間とし、例えば、第3の期間N2と第4の期間時間W2との合計時間である。S禁止期間TSW1、TSW2の長さは、第3の期間N2と第4の期間時間W2との合計時間を基準に、集積回路の使用環境に応じて変更できるように、制御レジスタに設定されている。
【0031】
集積回路1は、サンプリング処理Sによって発生するノイズの影響をうけないため、高い変換精度を実現できる。集積回路1は、特に、時間的に変化するアナログ信号を一定周期で継続的にデジタル化する場合であっても、高い変換精度を実現できる。
【0032】
<第2実施形態>
第2実施形態の集積回路1Aは、集積回路1と類似し同じ効果を有するため、同じ機能の構成要素には同じ符号を付し、説明は省略する。集積回路1Aでは、変換処理Cによって発生するノイズの影響が顕著で、サンプリング処理Sによって発生するノイズの影響は無視できる。
【0033】
図7に示すように、集積回路1Aでは、制御部20は、AD変換回路10の変換処理Cによって発生するノイズの影響を他のAD変換回路が受けないように、AD変換回路10の変換処理Cの開始タイミングを、通常タイミングよりも、変換処置開始待機時間TWC(以下、「C待機時間TWC」という。)遅くなるように制御する。変換処理を介したAD変換回路10以外の全てのAD変換回路は、データホールドが完了しても、C禁止期間TSW1、TSW2には変換処理を開始しないで、C待機時間TWC待機する。
【0034】
図8に示すように、AD変換回路10のキャパシタの充電量は、ホールド後は、リークなどの原因によって徐々に減少するため、AD変換精度が劣化する。C待機時間TWCは、AD変換精度の要求を満たす範囲で決定される。
【0035】
図9に示すように、制御部20は、あるAD変換回路10が、他のAD変換回路が変換処理において発生するノイズの影響を受けないように、変換処理開始禁止期間(以下、「C禁止期間」という。)TCW1、TCW2を設定する。
【0036】
C禁止期間TCW1は、サンプリング処理Sの終了期間の第2の期間W1に対応している。C禁止期間TCW2は、変換処理Cの終了期間の第4の期間W2に対応している。
【0037】
C禁止期間TCW1は、サンプリング処理終了時(データホールド時)を終時間とし、例えば、第3の期間W1と変換処理時間との合計時間である。C禁止期間TCW2は、返還処理終了時を終時間とし、例えば、変換処理時間である。
【0038】
C禁止期間TCW1、TCW2の長さは、上記時間を基準に集積回路の使用環境に応じて制御レジスタに設定されている値を変更できる。
【0039】
集積回路1は、変換処理によって発生するノイズの影響を受けないため、高い変換精度を実現できる。
【0040】
<第3実施形態>
第3実施形態の集積回路1Bは、集積回路1、1Aと類似し同じ効果を有するため、同じ機能の構成要素には同じ符号を付し、説明は省略する。集積回路1Bでは、制御部20は、変換処理によって発生するノイズの影響、および、サンプリング処理によって発生するノイズの影響を考慮した制御を行う。
【0041】
図10に示すように、集積回路1Bでは、第1のAD変換回路10Aのサンプリング処理S1の開始の変換トリガが発生すると、第1のAD変換回路10Aがサンプリング処理S1を開始できるかどうかを制御部20は判定する。具体的には、サンプリング処理S1の開始期間N1が、他のAD変換回路(第2のAD変換回路10B)のS禁止期間TSW1およびTSW2と重なっていないかを、制御部20は判定する。
【0042】
図10に示す例では、第1のAD変換回路10Aのサンプリング処理S1の開始期間N1は、S禁止期間TSW1およびTSW2と重なっていないため、第1のAD変換回路10Aは、S待機時間なしでサンプリング処理を開始する。
【0043】
次に、第2のAD変換回路10Bの変換トリガが発生する。制御部20は、第2のAD変換回路10Bがサンプリング処理S3を開始できるか判定する。具体的には、第2のAD変換回路10Bのサンプリング処理S3の開始期間(N1)が、他のAD変換回路(第1のAD変換回路10A)のS禁止期間TSW1およびTSW2とタイミングが重なっていないかを制御部20は判定する。
【0044】
図10では、第2のAD変換回路10Bのサンプリング処理S3の開始期間N1が、第1のAD変換回路10BのS禁止期間TSW1と重なっている。このため、制御部20は、第2のAD変換回路10Bのサンプリング処理S3の開始を第1のAD変換回路10AのS禁止期間TSW1の後まで、S待機時間TWS保留する。このように、制御部20は、第2のAD変換回路10Bの開始期間N1が、他のAD変換回路のTSW1、TSW2と重なっていない状態まで遅延させ、第2のAD変換回路10Bのサンプリング処理を開始する。
【0045】
さらに、制御部20は、サンプリング処理S3の終了タイミング(入力信号のホールドタイミング)は、変化しないように、第2のAD変換回路10Bのサンプリング処理S3の時間を短く制御する。
【0046】
第1のAD変換回路10Aのサンプリング処理S1終了後、第1のAD変換回路10Aが、変換処理C1を開始できるかどうかを、制御部20は判定する。具体的には、第1のAD変換回路10AのC開始期間N2が他のチャネル(第2のAD変換回路10B)のC禁止期間TCW1およびTCW2と重なっていないかを制御部20は判定する。
図10では第1のAD変換回路10AのC開始期間N2は、第2のAD変換回路10BのC禁止期間TCW1と重なっている。このため、制御部20は、第1のAD変換回路10Aの変換処理の開始を、C禁止期間TCW1の終了後、かつ、C禁止期間TCW2の開始前まで、C待機時間TWC遅延するように制御する。このように、第1のAD変換回路10Aは、他のAD変換回路のC禁止期間TCW1、TCW2とも重なっていない時間まで遅延してから、変換処理を開始する。
【0047】
第2のAD変換回路10BのサンプリングS3処理終了後、第2のAD変換回路10Bが、変換処理C2を開始できるかどうかを、制御部20は判定する。具体的には、第2のAD変換回路10Bの変換処理開始期間N2が他のAD変換回路(第1のAD変換回路10A)のC禁止期間TCW1およびTCW2と重なっていないかを制御部20は確認する。
図10では、両者は、重なっていないため、第2のAD変換回路10Bは即座に変換処理C2を開始する。
【0048】
以上のように、本実施形態の集積回路1Bは、変換トリガの入力から入力信号をホールドする(サンプリング処理完了)までの時間を変化させることなく、AD変換回路のノイズを発生しやすい期間が、他のAD変換回路のノイズの影響を受けやすい期間と重畳することを回避することができる。このため、集積回路1Bは、変換結果の精度劣化を防ぐことができる。集積回路1Bは、特に、時間的に変化するアナログ信号を一定周期で継続的にデジタル化する場合であっても、高い変換精度を実現できる。
【0049】
具体的には、それぞれのAD変換回路10は、S禁止期間TSW1、TSW2、および、C禁止期間TCW1、TCW2のデータ信号として出力する。制御部20の統合ブロックは、複数のAD変換回路10のS禁止期間TSW1、TSW2、および、C禁止期間TCW1、TCW2についてそれぞれ論理和を算出し、統合されたS禁止期間、および統合されたC禁止期間の信号を作成して、それぞれのAD変換回路10に制御信号として送信する。
【0050】
なお、例えば、それぞれのAD変換回路10がS禁止期間TSW1、TSW2の論理和、および、C禁止期間TCW1、TCW2の論理和を算出から制御部20に出力し、制御部20の統合ブロックにて複数のAD変換回路10のS禁止期間、C禁止期間の統合を行ってもよい。または、それぞれのAD変換回路10が、サンプリング処理の開始タイミングおよび変換処理の開始タイミングを出力し、制御部20が、統合ブロックの内部でS禁止期間、C禁止期間間を示す信号を生成し、統合してもよい。
【0051】
同時に動作するAD変換回路10の数が多い場合、S待機時間、C待機時間を調整しても、第1の期間N1、第3の期間N2と、第2の期間W1、第4の期間W2との重畳を回避できない場合も考えられる。
【0052】
かかる場合には、例えば、制御レジスタに設定されている、S禁止期間、C禁止期間を通常の処理よりも短く変更する。または、第1の期間N1、第2の期間W1、第3の期間N2、第4の期間W2の長さを、通常の処理よりも短く変更してもよい。
【0053】
例えば、制御部20は、サンプリング処理の開始期間(第1の期間N1)を、通常のサンプリング処理の時間の10%未満の期間に設定してもよい。また、第1の期間N1、第2の期間W1、第3の期間N2、第4の期間W2の長さは、AD変換精度の仕様に応じて設定されてもよい。例えば、第1の期間N1等を長くすると変換精度は向上し、短くすると変換精度は低下する。
【0054】
また、制御部20は、精度低下を許容するAD変換回路と精度低下を許容しない重要なAD変換回路とを指定して、重要なAD変換回路の精度を優先的に確保してもよい。例えば、精度低下を許容するAD変換回路は、S禁止期間、C禁止期間の出力をゼロにすれば、重要なAD変換回路の精度の維持が容易に実現可能である。
【0055】
なお、複数のAD変換回路10および制御部20は、それぞれが独立した専用回路でもよいし、プロセッサがメモリに記憶されたプログラム及び各種情報を読み込み、実行することによって実現されていてもよい。
【0056】
発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1、1A、1B… 集積回路
10… AD変換回路
20… 制御部
30… CPU