(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139716
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230927BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20230927BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20230927BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20230927BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 653C
H01L29/44 Y
H01L29/78 652T
H01L29/06 301F
H01L29/06 301V
H01L29/78 658F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045399
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】白石 達也
【テーマコード(参考)】
4M104
【Fターム(参考)】
4M104AA01
4M104AA03
4M104AA04
4M104AA05
4M104BB01
4M104DD08
4M104DD15
4M104DD16
4M104DD18
4M104DD43
4M104DD63
4M104EE02
4M104EE03
4M104EE09
4M104EE12
4M104EE14
4M104EE15
4M104EE17
4M104FF10
(57)【要約】
【課題】耐圧の高い半導体装置を提供する。
【解決手段】第1電極と、第1電極の上に設けられた、第1導電型の第1半導体層と、第1半導体層の上に設けられた、第1導電型の第2半導体層と、第2半導体層の上に設けられた、第2導電型の第1半導体領域と、第1半導体領域の上から第2半導体層に到達するトレンチ内に、第2半導体層に対向して設けられ、下方よりも上方の誘電率が高い第1絶縁膜と、トレンチ内において、第1半導体領域に対向して設けられた第2電極と、トレンチ内の第1絶縁膜の上の、第2電極と第1半導体領域の間に設けられた第2絶縁膜と、第1半導体領域の上に設けられた、第1導電型の第2半導体領域と、第2電極の上に設けられた層間絶縁膜と、層間絶縁膜の上に設けられ、第2半導体領域と電気的に接続された第3電極と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられた、第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の上に設けられた、第1導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層の上に設けられた、第2導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の上から前記第2半導体層に到達するトレンチ内に、前記第2半導体層に対向して設けられ、下方よりも上方の誘電率が高い第1絶縁膜と、
前記トレンチ内において、前記第1半導体領域に対向して設けられた第2電極と、
前記トレンチ内の前記第1絶縁膜の上の、前記第2電極と前記第1半導体領域の間に設けられた第2絶縁膜と、
前記第1半導体領域の上に設けられた、第1導電型の第2半導体領域と、
前記第2電極の上に設けられた層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜の上に設けられ、前記第2半導体領域と電気的に接続された第3電極と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記第1絶縁膜は、酸化シリコン膜である第1絶縁部を含む、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1絶縁膜は、SiOF膜である第1絶縁部を含む、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1絶縁部は、前記トレンチの最下部に設けられている、
請求項2又は請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1絶縁膜は、前記第1絶縁部の上に設けられ、窒化シリコン膜である第5絶縁部を含む、
請求項2乃至請求項4いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2電極は、前記第5絶縁部と直接接している、
請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1絶縁膜は、前記第1絶縁部と前記第5絶縁部の間に設けられた、SiON膜である第2絶縁部をさらに備える、
請求項5又は請求項6記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2絶縁膜は、酸化シリコン膜である、
請求項1乃至請求項7いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項9】
前記トレンチ内の、前記第1絶縁膜と前記第2半導体層の間に設けられた、酸化シリコン膜である第3絶縁膜をさらに備える請求項1乃至請求項8いずれか一項記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの半導体装置は、電力変換等の用途に用いられる。このような半導体装置については、耐圧が高いことが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、耐圧の高い半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体装置は、第1電極と、第1電極の上に設けられた、第1導電型の第1半導体層と、第1半導体層の上に設けられた、第1導電型の第2半導体層と、第2半導体層の上に設けられた、第2導電型の第1半導体領域と、第1半導体領域の上から第2半導体層に到達するトレンチ内に、第2半導体層に対向して設けられ、下方よりも上方の誘電率が高い第1絶縁膜と、トレンチ内において、第1半導体領域に対向して設けられた第2電極と、トレンチ内の第1絶縁膜の上の、第2電極と第1半導体領域の間に設けられた第2絶縁膜と、第1半導体領域の上に設けられた、第1導電型の第2半導体領域と、第2電極の上に設けられた層間絶縁膜と、層間絶縁膜の上に設けられ、第2半導体領域と電気的に接続された第3電極と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】実施形態の半導体装置の要部の模式断面図である。
【
図3】実施形態の他の態様の半導体装置の模式断面図である。
【
図4】実施形態の他の態様の半導体装置の模式断面図である。
【
図5】実施形態の他の態様の半導体装置の模式断面図である。
【
図6】実施形態の半導体装置の製造工程を示す模式断面図である。
【
図7】実施形態の半導体装置の製造工程を示す模式断面図である。
【
図8】実施形態の半導体装置の製造工程を示す模式断面図である。
【
図9】実施形態の半導体装置の製造工程を示す模式断面図である。
【
図10】実施形態の半導体装置の製造工程を示す模式断面図である。
【
図11】比較形態となる半導体装置の要部の模式断面図である。
【
図12】実施形態の半導体装置の作用効果を説明する模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一の部材等には同一の符号を付し、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する。
【0008】
本明細書中、部品等の位置関係を示すために、図面の上方向を「上」、図面の下方向を「下」と記述する。本明細書中、「上」、「下」の概念は、必ずしも重力の向きとの関係を示す用語ではない。
【0009】
以下、第1導電型がn型、第2導電型がp型である場合を例に説明する。
【0010】
以下の説明において、n+、n、n-および、p+、p、p-の表記は、各導電型における不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわちn+はnよりもn型の不純物濃度が相対的に高く、n-はnよりもn型の不純物濃度が相対的に低いことを示す。また、p+はpよりもp型の不純物濃度が相対的に高く、p-はpよりもp型の不純物濃度が相対的に低いことを示す。なお、n+型、n-型を単にn型、p+型、p-型を単にp型と記載する場合もある。
【0011】
(実施形態)
実施形態の半導体装置は、第1電極と、第1電極の上に設けられた、第1導電型の第1半導体層と、第1半導体層の上に設けられた、第1導電型の第2半導体層と、第2半導体層の上に設けられた、第2導電型の第1半導体領域と、第1半導体領域の上から第2半導体層に到達するトレンチ内に、第2半導体層に対向して設けられ、下方よりも上方の誘電率が高い第1絶縁膜と、トレンチ内において、第1半導体領域に対向して設けられた第2電極と、トレンチ内の第1絶縁膜の上の、第2電極と第1半導体領域の間に設けられた第2絶縁膜と、第1半導体領域の上に設けられた、第1導電型の第2半導体領域と、第2電極の上に設けられた層間絶縁膜と、層間絶縁膜の上に設けられ、第2半導体領域と電気的に接続された第3電極と、を備える。
【0012】
図1は、実施形態の半導体装置100の模式断面図である。半導体装置100は、例えば、縦型のMOSFETである。
【0013】
半導体装置100は、ドレイン層10と、ドリフト層12と、ベース領域14と、ソース領域16と、コンタクト領域18と、トレンチ20と、フィールドプレート電極24と、第1絶縁膜26と、ゲート絶縁膜28と、HDP保護膜30と、ゲート電極40と、ドレイン電極60と、ソース電極66と、層間絶縁膜70と、を備える。
【0014】
なお、ドレイン層10は、第1半導体層の一例である。ドリフト層12は、第2半導体層の一例である。ベース領域14は、第1半導体領域の一例である。ソース領域16は、第2半導体領域の一例である。ゲート絶縁膜28は、第2絶縁膜の一例である。HDP保護膜30は、第3絶縁膜の一例である。ゲート電極40は、第2電極の一例である。ドレイン電極60は、第1電極の一例である。ソース電極66は、第3電極の一例である。
【0015】
ドレイン層10は、MOSFETのドレインとして機能する層である。ドレイン層10は、例えば、n+型の半導体材料を含む。
【0016】
ドレイン電極60は、ドレイン層10の下に設けられ、ドレイン層10と電気的に接続されている。
【0017】
ドリフト層12は、ドレイン層10の上に設けられている。ドリフト層12は、例えば、n-型の半導体材料を含む。
【0018】
ここで、X方向と、X方向に対して垂直に交差するY方向と、X方向及びY方向に垂直に交差するZ方向を定義する。ドレイン層10及びドリフト層12は、X方向及びY方向に平行なXY平面に平行に設けられた層である。Z方向は、ドレイン層10及びドリフト層12が積層された方向である。
図1は、YZ平面内における半導体装置100の模式断面図である。
【0019】
ベース領域14は、ドリフト層12の上に設けられている。ベース領域14は、ゲート電極40に電圧が印加された場合にチャネルを形成し、ソース領域16とドレイン層10の間にキャリアが流れることを可能とする領域である。ベース領域14は、例えば、p型の半導体材料を含む。半導体装置100は、ベース領域14a、14b及び14cを有する。
【0020】
ソース領域16は、ベース領域14の上に設けられている。ゲート電極40に適切な電圧が印加された場合に、ソース領域16とドレイン層10の間にキャリアが流れる。ソース領域16は、例えば、n+型の半導体材料を含む。半導体装置100は、ソース領域16a、16b、16c及び16dを有する。
【0021】
コンタクト領域18は、ベース領域14の上に設けられ、ベース領域14及びソース領域16と電気的に接続されている。コンタクト領域18は、ベース領域14とソース電極66の電気的接触を向上させるために設けられている。コンタクト領域18は、例えば、p+型の半導体材料を含む。
【0022】
トレンチ20は、ベース領域14の上からドリフト層12に到達するように設けられている。半導体装置100は、トレンチ20a及びトレンチ20bを有する。
【0023】
第1絶縁膜26は、トレンチ20内に、ドリフト層12に対向して設けられている。しかし、第1絶縁膜26の形態は、これに限定されるものではない。例えば、第1絶縁膜26は、例えばHDP-CVD(High Density Plasma-Chemical Vapor Deposition)法により形成される。第1絶縁膜26aは、トレンチ20a内に設けられている。第1絶縁膜26bは、トレンチ20b内に設けられている。
【0024】
ここで、第1絶縁膜26は、第1絶縁部42と、第2絶縁部44と、第3絶縁部46と、第4絶縁部48と、第5絶縁部50と、を有する。第2絶縁部44は、第1絶縁部42の上に設けられている。第3絶縁部46は、第2絶縁部44の上に設けられている。第4絶縁部48は、第3絶縁部46の上に設けられている。第5絶縁部50は、第4絶縁部48の上に設けられている。言い換えると、トレンチ20内において、下から上に向かって順に、又は下方から上方に、第1絶縁部42、第2絶縁部44、第3絶縁部46、第4絶縁部48及び第5絶縁部50が設けられている。
【0025】
そして、第1絶縁膜26の誘電率は、下方から上方に向かって高くなっていることが好ましい。言い換えると、第1絶縁膜26の誘電率は、上方から下方に向かって低くなっていることが好ましい。このために、実施形態の半導体装置100においては、第2絶縁部44の誘電率は、第1絶縁部42の誘電率より高い。第3絶縁部46の誘電率は、第2絶縁部44の誘電率より高い。第4絶縁部48の誘電率は、第3絶縁部46の誘電率より高い。第5絶縁部50の誘電率は、第4絶縁部48の誘電率より高い。
【0026】
なお、第1絶縁膜26は、第1絶縁部42と、第2絶縁部44と、第3絶縁部46と、第4絶縁部48と、第5絶縁部50と、を有していなくてもかまわない。そして、例えば、第1絶縁膜26の組成が連続的に変化することにより、第1絶縁膜26の誘電率が、下方から上方に向かって高くなっていてもかまわない。
【0027】
また、HDP(High Density Plasma)絶縁膜30が、第1絶縁膜26(第1絶縁部42、第2絶縁部44、第3絶縁部46、第4絶縁部48及び第5絶縁部50)とドリフト層12の間に設けられている。
【0028】
また、フィールドプレート電極24が、トレンチ20内の、第1絶縁膜26内に設けられている。例えば、第1絶縁膜26が、第1絶縁部42と、第2絶縁部44と、第3絶縁部46と、第4絶縁部48と、第5絶縁部50と、を有する場合、フィールドプレート電極24の下端は、第1絶縁部42内に設けられている。そして、フィールドプレート電極24の上端は、第5絶縁部50内に設けられている。
【0029】
以下、第1絶縁部42、第2絶縁部44、第3絶縁部46、第4絶縁部48、第5絶縁部50、HDP保護膜30及びフィールドプレート電極24について記載する。
【0030】
第1絶縁部42は、トレンチ20内の最下部に設けられている。第1絶縁部42は、酸化シリコン膜であることが好ましい。また、第1絶縁部42は、SiOF膜(フッ素添加シリコン酸化膜)であることが好ましい。ただし、第1絶縁部42は、酸化シリコン膜やSiOF膜に限定されるものではない。第1絶縁部42aは、トレンチ20a内に設けられている。第1絶縁部42bは、トレンチ20b内に設けられている。
【0031】
第5絶縁部50は、第1絶縁部42の上のトレンチ20内に設けられている。第5絶縁部50は、窒化シリコン膜であることが好ましい。ただし、第5絶縁部50は、窒化シリコン膜に限定されるものではない。第5絶縁部50aは、トレンチ20a内に設けられている。第5絶縁部50bは、トレンチ20b内に設けられている。
【0032】
例えば、第1絶縁部42が酸化シリコン膜やSiOF膜であり、第5絶縁部50が窒化シリコン膜である場合、第1絶縁膜26の下方の誘電率よりも、第1絶縁膜26の上方の誘電率の方が高い。
【0033】
第2絶縁部44は、第1絶縁部42と第5絶縁部50の間に設けられている。第2絶縁部44aは、トレンチ20a内に設けられている。第2絶縁部44bは、トレンチ20b内に設けられている。
【0034】
第3絶縁部46は、第2絶縁部44と第5絶縁部50の間に設けられている。第3絶縁部46aは、トレンチ20a内に設けられている。第3絶縁部46bは、トレンチ20b内に設けられている。
【0035】
第4絶縁部48は、第3絶縁部46と第5絶縁部50の間に設けられている。第4絶縁部48aは、トレンチ20a内に設けられている。第4絶縁部48bは、トレンチ20b内に設けられている。
【0036】
第2絶縁部44の誘電率は、第1絶縁部42の誘電率より高く、第5絶縁部50の誘電率より低いことが好ましい。第3絶縁部46の誘電率は、第2絶縁部44の誘電率より高く、第5絶縁部50の誘電率より低いことが好ましい。第4絶縁部48の誘電率は、第3絶縁部46の誘電率より高く、第5絶縁部50の誘電率より低いことが好ましい。
【0037】
例えば、第2絶縁部44、第3絶縁部46及び第4絶縁部48は、SiON膜であることが好ましい。そして、例えば、第3絶縁部46の窒素濃度を第2絶縁部44の窒素濃度よりも高くし、第4絶縁部48の窒素濃度を第3絶縁部46の窒素濃度よりも高くすることが好ましい。なぜなら、これにより、第2絶縁部44の誘電率を、第1絶縁部42の誘電率より高く、第5絶縁部50の誘電率より低くすることができるためである。また、第3絶縁部46の誘電率を、第2絶縁部44の誘電率より高く、第5絶縁部50の誘電率より低くすることができるためである。また、第4絶縁部48の誘電率を、第3絶縁部46の誘電率より高く、第5絶縁部50の誘電率より低くすることができるためである。
【0038】
ゲート電極40は、トレンチ20内の第5絶縁部50の上に、ベース領域14に対向して設けられている。例えば、ゲート電極40は、第5絶縁部50に接している。ただし、ゲート電極40は、第5絶縁部50に接していなくてもよい。ゲート電極40は、MOSFETのゲートとして機能する。
【0039】
ゲート絶縁膜28は、トレンチ20内の第5絶縁部50(第1絶縁膜26)の上の、ゲート電極40とベース領域14の間に設けられている。Y方向のゲート絶縁膜28の膜厚は、Y方向の第1絶縁膜26の膜厚より薄い。ゲート絶縁膜28a1及びゲート絶縁膜28a2は、トレンチ20a内に設けられている。ゲート絶縁膜28b1及びゲート絶縁膜28b2は、トレンチ20b内に設けられている。ゲート絶縁膜28は、MOSFETのゲート絶縁膜として機能する。ゲート絶縁膜28は、例えば酸化シリコンを含む。
【0040】
上記の場合、ゲート電極40は、ゲート絶縁膜28の側面及び第5絶縁部50の上面と直接接する。
【0041】
フィールドプレート電極24は、例えば、トレンチ深さ方向のドリフト層中の電界分布をフラットに近付け、耐圧を増加させるために設けられている。フィールドプレート電極24は、例えば、導電型不純物を含むポリシリコンを含む。フィールドプレート電極24aは、トレンチ20a内に設けられている。フィールドプレート電極24bは、トレンチ20b内に設けられている。
【0042】
HDP保護膜30は、トレンチ20内のゲート絶縁膜28の下の、第1絶縁膜26とドリフト層12の間に設けられている。HDP保護膜30は、第1絶縁膜26を形成する際に、ソース領域16やベース領域14が削られないように、ソース領域16やベース領域14を保護するための膜である。HDP保護膜30aは、トレンチ20aの内面を覆うように設けられている。そして、第1絶縁膜26aが、HDP保護膜30aの表面に沿って形成されている。HDP保護膜30bは、トレンチ20bの内面を覆うように設けられている。そして、第1絶縁膜26bが、HDP保護膜30bの表面に沿って形成されている。HDP保護膜30は、例えば酸化シリコンを含む。
【0043】
層間絶縁膜70は、ソース領域16、ゲート電極40及びゲート絶縁膜28の上に設けられている。層間絶縁膜70は、例えば酸化シリコンを含む。
【0044】
ソース電極66は、ソース領域16、コンタクト領域18、ゲート絶縁膜28及び層間絶縁膜70の上に設けられている。なお、ソース電極66は、層間絶縁膜70により、ゲート電極40と電気的に絶縁されている。
【0045】
ドレイン層10、ドリフト層12、ベース領域14及びソース領域16に用いられる半導体材料は、例えばシリコン(Si)である。しかし、ドレイン層10、ドリフト層12、ベース領域14及びソース領域16に用いられる半導体材料は、例えば炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)又はヒ化ガリウム(GaAs)等の他の半導体材料であってもかまわない。
【0046】
半導体材料としてSiが用いられる場合、n型不純物としては例えばヒ素(As)、リン(P)又はアンチモン(Sb)を、またp型不純物としては例えばB(ホウ素)を、それぞれ用いることができる。
【0047】
フィールドプレート電極24及びゲート電極40は、例えば導電型不純物を含むポリシリコン等の導電材料を含む。
【0048】
ドレイン電極60及びソース電極66は、例えばAl等の導電材料を含む。
【0049】
図2は、実施形態の半導体装置100の要部の模式断面図である。
図2は、半導体装置100の、フィールドプレート電極24を通過するXZ平面内における模式断面図である。なお、ドレイン層10及びドレイン電極60の図示は省略している。
【0050】
フィールドプレート電極24は、上方に延伸した部分55を有する。そして、フィールドプレート電極24は、かかる上方に延伸した部分55を用いて、ソース電極66の一部と電気的に接続されている。これにより、フィールドプレート電極24は、ソース電極66と電気的に接続されている。なお、フィールドプレート電極24とソース電極66の間の電気的接続の態様は、これに限定されるものではない。
【0051】
図3は、実施形態の他の態様の半導体装置110の要部の模式断面図である。半導体装置110には、半導体装置100と異なり、HDP保護膜30は設けられていない。HDP保護膜30は、設けられていなくてもかまわない。
【0052】
図4は、実施形態の他の態様の半導体装置120の要部の模式断面図である。半導体装置120には、半導体装置100と異なり、フィールドプレート電極24は設けられていない。フィールドプレート電極24は、第1絶縁部42、第2絶縁部44、第3絶縁部46、第4絶縁部48及び第5絶縁部50に置き換わっている。このように、フィールドプレート電極24は、設けられていなくてもかまわない。
【0053】
図5は、実施形態の他の態様の半導体装置130の要部の模式断面図である。半導体装置130には、半導体装置110と異なり、フィールドプレート電極24は設けられていない。フィールドプレート電極24は、第1絶縁部42、第2絶縁部44、第3絶縁部46、第4絶縁部48及び第5絶縁部50に置き換わっている。このように、フィールドプレート電極24は、設けられていなくてもかまわない。
【0054】
図6乃至
図10は、実施形態の半導体装置の製造工程を示す模式断面図である。
【0055】
まず、ドレイン層10の上に、ドリフト層12を形成する。例えば、ドレイン層10をSi基板である半導体基板とし、ドレイン層10の上にエピタキシャル成長によりドリフト層12を形成する。しかし、ドレイン層10及びドリフト層12の製造工程は、上記に限定されるものではない。次に、例えばフォトリソグラフィ及びRIE(Reactive Ion Etching)を用いて、ドリフト層12に到達するトレンチ20を形成する(
図6)。
【0056】
次に、ドリフト層12の上面及びトレンチ20の内壁に、図示しない熱酸化膜を形成して剥離する。次に、ドリフト層12の上面及びトレンチ20の内壁に、例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)により、酸化シリコンを含むHDP保護膜30を形成する。(
図7)。
【0057】
次に、例えばHDP-CVD(High Density Plasma-Chemical Vapor Deposition)法により、トレンチ20内に、第1絶縁部42、第2絶縁部44、第3絶縁部46、第4絶縁部48及び絶縁膜49を順に形成する。次に、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)により、絶縁膜49の上面を平坦化する(
図8)。ここで、絶縁膜49は、第5絶縁部50の一部となる絶縁膜である。トレンチ20a内には絶縁膜49aが形成される。また、トレンチ20b内には絶縁膜49bが形成される。
【0058】
ここで、第1絶縁部42が酸化シリコン膜である場合、第1絶縁部42の形成に使用する原料ガスは、例えば、SiH4ガスとN2Oガス、またはSiH4ガスとO2ガスである。また、第1絶縁部42がSiOF膜である場合、F(フッ素)を酸化シリコン膜に添加するために、例えば、NF3ガス、CF4ガス、C2F6ガス又はSiF4ガスが好ましく用いられる。
【0059】
また、第2絶縁部44、第3絶縁部46及び第4絶縁部48がSiON膜である場合、第2絶縁部44、第3絶縁部46及び第4絶縁部48の形成に使用する原料ガスは、例えば、SiH4ガスとN2OガスとNH3ガス、またはSiH4ガスとN2Oガスである。そして、絶縁膜中の窒素濃度を高くする場合には、例えば、原料ガス中のN2Oガス又はNH3ガスの濃度を高くする。
【0060】
また、第5絶縁部50がSiN膜である場合、第5絶縁部50の形成に使用する原料ガスは、例えば、SiH4ガスとNH3ガスである。
【0061】
次に、例えばフォトリソグラフィ及びドライエッチングを用いて、トレンチ20内に、第2絶縁部44、第3絶縁部46、第4絶縁部48及び絶縁膜49を貫通し、第1絶縁部42に到達する開口92を形成する(
図9)。トレンチ20a内には開口92aが形成される。また、トレンチ20b内には開口92bが形成される。
【0062】
次に、例えばCVD及びエッチバックを用いて、導電型不純物を含むポリシリコンを含む、フィールドプレート電極24を、開口92内に形成する。次に、フィールドプレート電極24の上部に、例えば絶縁膜49と同じ材料を含む絶縁膜51を形成する(
図10)。トレンチ20a内には絶縁膜51aが形成される。トレンチ20b内には絶縁膜51bが形成される。絶縁膜49及び絶縁膜51は、第5絶縁部50となる絶縁膜である。
【0063】
次に、ベース領域14、ソース領域16、ゲート絶縁膜28、ゲート電極40、層間絶縁膜70、ソース電極66及びドレイン電極60を適宜形成し、実施形態の半導体装置100を得る。
【0064】
次に、実施形態の半導体装置の作用効果を記載する。
【0065】
図11は、実施形態の比較形態となる半導体装置の要部の模式断面図である。
【0066】
トレンチ200内に、絶縁膜210が形成されている。絶縁膜210の膜厚は、トレンチ200の上方において薄く、トレンチ200の下方にいくに従って厚くなっている。かかる形状を有する絶縁膜を「傾斜フィールドプレート絶縁膜」と称する。なお、これに対して、トレンチ内の上方と下方で膜厚が特段変化しない絶縁膜を、「ストレートフィールドプレート絶縁膜」と称する。
【0067】
図12は、実施形態の半導体装置の作用効果を説明する模式図である。
図12は、傾斜フィールドプレート絶縁膜とストレートフィールドプレート絶縁膜の双方において、トレンチ深さ方向における電界を示す模式図である。なお、「トレンチ深さ方向」は、例えば
図1において、Z方向の反対方向に相当する。本発明者が鋭意調査したところによると、ストレートフィールドプレート絶縁膜の場合は、電界強度が低くなる箇所が見られる。一方、傾斜フィールドプレート絶縁膜の場合には、ストレートフィールドプレート絶縁膜の場合と比較して、トレンチ深さ方向における電界の強度に差が生じにくい。ここで、半導体装置の耐圧は、電界をトレンチ深さで積分した値で決定される。そのため、傾斜フィールドプレート絶縁膜を採用することにより、半導体装置の耐圧を高めることが出来る。また、斜フィールドプレート絶縁膜を採用することにより、ドリフト層12のn型不純物濃度を高くしても、同等の耐圧を得ることができ、かつドリフト抵抗を低減出来ると考えられる。
【0068】
しかし、傾斜フィールドプレート絶縁膜は、トレンチ深さ方向で膜厚が変化している。かかる形状を再現性高く安定して作成することは困難であると考えられる。また、かかる形状を作成するために、ドリフト層12におけるトレンチ20の占有面積を増加させ、適切な絶縁膜の膜厚の変化を確保することが考えられる。しかしこの場合には、オン抵抗が増加してしまうことが考えられる。
【0069】
そこで、実施形態の半導体装置は、ベース領域14からドリフト層12に到達するトレンチ20内に、ドリフト層12に対向して設けられ、下方よりも上方の誘電率が高い第1絶縁膜を備える。
【0070】
絶縁膜の等価酸化膜厚(Equivalent Oxide Thickness)は、(絶縁膜の膜厚)×(酸化シリコンの誘電率)/(絶縁膜の誘電率)で決定される。絶縁膜の誘電率が高くなるほど、その等価酸化膜厚(Equivalent Oxide Thickness)は薄くなる。そのため、第1絶縁膜の下方よりも第1絶縁膜の上方の誘電率を高くすることにより、等価酸化膜厚が上方においてより薄い構造を実現することが可能となる。これにより、かかる等価酸化膜厚を考慮すると、実施形態の半導体装置により、上記の傾斜フィールドプレート絶縁膜を有する半導体装置が、実現可能である。そのため、実施形態の半導体装置により、耐圧の高い半導体装置の提供が可能となる。
【0071】
半導体装置の耐圧を高くするためには、第1絶縁膜の下方と上方で、誘電率の差を出来るだけ大きくすることが好ましい。酸化シリコン膜又はSiOF膜は、誘電率が低い絶縁膜として好ましく用いられる。そして、かかる酸化シリコン膜又はSiOF膜は、例えば、第1絶縁膜26に含まれる第1絶縁部42として、トレンチ20内の最下部に設けられることが好ましい。誘電率の差を出来るだけ大きくすることが可能となるためである。
【0072】
また、窒化シリコン膜は、誘電率が高い絶縁膜として好ましく用いられる。かかる窒化シリコン膜は、例えば、第1絶縁膜26に含まれる第5絶縁部50として、第1絶縁部42の上に設けられることが好ましい。第1絶縁膜の下方と上方で、誘電率の差を出来るだけ大きくすることが可能となるためである。
【0073】
一方、ゲート絶縁膜は、酸化シリコン膜であることが好ましい。リーク電流を抑制でき、信頼性が高いためである。
【0074】
第2絶縁部44、第3絶縁部46及び第4絶縁部48は、SiON膜であることが好ましい。酸化シリコン膜又はSiOF膜と、SiN膜の間の誘電率を有する絶縁膜を、容易に形成することが出来るためである。
【0075】
実施形態の半導体装置によれば、耐圧の高い半導体装置の提供が可能になる。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態及び実施例を説明したが、これらの実施形態及び実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
10 ドレイン層(第1半導体層)
12 ドリフト層(第2半導体層)
14 ベース領域(第1半導体領域)
16 ソース領域(第2半導体領域)
18 コンタクト領域
20 トレンチ
24 フィールドプレート電極
26 第1絶縁膜
28 ゲート絶縁膜(第2絶縁膜)
30 HDP保護膜(第3絶縁膜)
40 ゲート電極(第2電極)
42 第1絶縁部
44 第2絶縁部
46 第3絶縁部
48 第4絶縁部
50 第5絶縁部
60 ドレイン電極(第1電極)
66 ソース電極(第3電極)
70 層間絶縁膜
100 半導体装置
110 半導体装置
120 半導体装置
130 半導体装置