(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139981
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/12 20060101AFI20230927BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
H01L29/78 652T
H01L29/78 652C
H01L29/78 652D
H01L29/78 652F
H01L29/78 652H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045801
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】朝羽 俊介
(72)【発明者】
【氏名】河野 洋志
(57)【要約】
【課題】アバランシェ耐量が向上する半導体装置を提供する。
【解決手段】第1の面と第2の面とを有する炭化珪素層と、第1の領域と、第1の領域と第1の面との間に位置する第2の領域及ぶ第3の領域を含み、第2の領域の第1導電形不純物濃度は第1の領域と等しいか高く、第3の領域の第1導電形不純物濃度は第2の領域より高い、第1導電形の第1の炭化珪素領域と、第1の炭化珪素領域と第1の面との間に位置し、第2の領域と接する第4の領域と、第3の領域と接し第4の領域よりも第2導電形不純物濃度の高い第5の領域を含む、第2導電形の第2の炭化珪素領域と、第2の炭化珪素領域と第1の面との間の第1導電形の第3の炭化珪素領域と、第2の炭化珪素領域と対向した第1のゲート電極と、第1のゲート絶縁層と、第2の炭化珪素領域及び第3の炭化珪素領域に接する第1の部分を含む第1の電極と、第2の電極と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、前記第1の面に対向する第2の面と、を有する炭化珪素層と、
前記炭化珪素層の中に設けられた第1導電形の第1の炭化珪素領域であって、第1の領域と第2の領域と第3の領域を含み、前記第2の領域は前記第1の領域と前記第1の面との間に位置し、前記第3の領域は前記第1の領域と前記第1の面との間に位置し、前記第2の領域の第1導電形不純物濃度は前記第1の領域の第1導電形不純物濃度と等しいか高く、前記第3の領域の第1導電形不純物濃度は前記第2の領域より高い、第1の炭化珪素領域と、
前記炭化珪素層の中に設けられ前記第1の炭化珪素領域と前記第1の面との間に位置する第2導電形の第2の炭化珪素領域であって、第4の領域と第5の領域を含み、前記第4の領域は前記第2の領域と接し、前記第5の領域は前記第3の領域と接し、前記第5の領域の第2導電形不純物濃度は前記第4の領域の第2導電形不純物濃度より高い、第2の炭化珪素領域と、
前記炭化珪素層の中に設けられ、前記第2の炭化珪素領域と前記第1の面との間に位置する第1導電形の第3の炭化珪素領域と、
前記炭化珪素層に対し前記第1の面の側に設けられ、前記第1の面に平行な第1の方向に延び、前記第1の面において前記第2の炭化珪素領域と対向した第1のゲート電極と、
前記炭化珪素層に対し前記第1の面の側に設けられ、前記第1の方向に延び、前記第1のゲート電極に対し前記第1の面に平行で前記第1の方向に垂直な第2の方向に設けられ、前記第1の面において前記第2の炭化珪素領域と対向した第2のゲート電極と、
前記第2の炭化珪素領域と前記第1のゲート電極との間に設けられた第1のゲート絶縁層と、
前記第2の炭化珪素領域と前記第2のゲート電極との間に設けられた第2のゲート絶縁層と、
前記炭化珪素層に対し前記第1の面の側に設けられた第1の電極であって、前記第1のゲート電極と前記第2のゲート電極との間に設けられ前記第2の炭化珪素領域及び前記第3の炭化珪素領域に接する第1の部分を、含む第1の電極と、
前記炭化珪素層に対し前記第2の面の側に設けられた第2の電極と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記第1の炭化珪素領域は、第6の領域と第7の領域を更に含み、前記第6の領域は前記第1の領域と前記第1の面との間に位置し、前記第7の領域は前記第1の領域と前記第1の面との間に位置し、前記第6の領域の第1導電形不純物濃度は前記第1の領域の第1導電形不純物濃度と等しいか高く、前記第7の領域の第1導電形不純物濃度は前記第2の領域より高く、前記第6の領域は前記第3の領域と前記第7の領域との間に位置し、
前記第2の炭化珪素領域は、第8の領域と第9の領域を更に含み、前記第8の領域は前記第6の領域と接し、前記第9の領域は前記第7の領域と接し、前記第9の領域の第2導電形不純物濃度は、前記第8の領域の第2導電形不純物濃度より高く、前記第8の領域は、前記第5の領域と前記第9の領域との間に位置する請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2の領域の第1導電形不純物濃度は前記第1の領域の第1導電形不純物濃度より高い、請求項1又は請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第5の領域の第2導電形不純物濃度は前記第4の領域の第2導電形不純物濃度の1.5倍以上10倍以下である請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第5の領域は前記第1の部分に対し、前記第1の面から前記第2の面に向かう方向に位置する請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第5の領域は前記第1の部分に対し、前記第1の面から前記第2の面に向かう第3の方向に位置し、
前記第9の領域は前記第1の部分に対し、前記第3の方向に位置する請求項2記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2の炭化珪素領域は、第10の領域を更に含み、前記第10の領域は前記第5の領域と前記第1の部分との間に位置し、前記第10の領域の第2導電形不純物濃度は、前記第5の領域の第2導電形不純物濃度より高い、請求項1ないし請求項6いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1の炭化珪素領域は、前記第1の面に接する第11の領域を更に含み、
前記第1の電極は、前記第11の領域に接する第2の部分を更に含む、請求項1ないし請求項7いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2の部分は前記第1のゲート電極と前記第2のゲート電極との間に設けられ、前記第2の部分は前記第1の部分の前記第1の方向に位置する請求項8記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の半導体デバイス用の材料として炭化珪素が期待されている。炭化珪素はシリコンと比較して、バンドギャップが約3倍、破壊電界強度が約10倍、熱伝導率が約3倍と優れた物性を有する。この特性を活用すれば、例えば、高耐圧、低損失かつ高温動作可能なMetal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor(MOSFET)を実現することができる。
【0003】
炭化珪素を用いたMOSFETでは、アバランシェ耐量の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、アバランシェ耐量が向上する半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の半導体装置は、第1の面と、前記第1の面に対向する第2の面と、を有する炭化珪素層と、前記炭化珪素層の中に設けられた第1導電形の第1の炭化珪素領域であって、第1の領域と第2の領域と第3の領域を含み、前記第2の領域は前記第1の領域と前記第1の面との間に位置し、前記第3の領域は前記第1の領域と前記第1の面との間に位置し、前記第2の領域の第1導電形不純物濃度は前記第1の領域の第1導電形不純物濃度と等しいか高く、前記第3の領域の第1導電形不純物濃度は前記第2の領域より高い、第1の炭化珪素領域と、前記炭化珪素層の中に設けられ前記第1の炭化珪素領域と前記第1の面との間に位置する第2導電形の第2の炭化珪素領域であって、第4の領域と第5の領域を含み、前記第4の領域は前記第2の領域と接し、前記第5の領域は前記第3の領域と接し、前記第5の領域の第2導電形不純物濃度は前記第4の領域の第2導電形不純物濃度より高い、第2の炭化珪素領域と、前記炭化珪素層の中に設けられ、前記第2の炭化珪素領域と前記第1の面との間に位置する第1導電形の第3の炭化珪素領域と、前記炭化珪素層に対し前記第1の面の側に設けられ、前記第1の面に平行な第1の方向に延び、前記第1の面において前記第2の炭化珪素領域と対向した第1のゲート電極と、前記炭化珪素層に対し前記第1の面の側に設けられ、前記第1の方向に延び、前記第1のゲート電極に対し前記第1の面に平行で前記第1の方向に垂直な第2の方向に設けられ、前記第1の面において前記第2の炭化珪素領域と対向した第2のゲート電極と、前記第2の炭化珪素領域と前記第1のゲート電極との間に設けられた第1のゲート絶縁層と、前記第2の炭化珪素領域と前記第2のゲート電極との間に設けられた第2のゲート絶縁層と、前記炭化珪素層に対し前記第1の面の側に設けられた第1の電極であって、前記第1のゲート電極と前記第2のゲート電極との間に設けられ前記第2の炭化珪素領域及び前記第3の炭化珪素領域に接する第1の部分を、含む第1の電極と、前記炭化珪素層に対し前記第2の面の側に設けられた第2の電極と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】第1の実施形態の変形例の半導体装置の模式断面図。
【
図10】第2の実施形態の半導体装置の等価回路図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材等には同一の符号を付し、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する場合がある。
【0009】
また、以下の説明において、n++、n+、n、n-及び、p++、p+、p、p-の表記がある場合、それらの表記は、各導電形における不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわち、n++はn+よりもn形不純物濃度が相対的に高く、n+はnよりもn形不純物濃度が相対的に高く、n-はnよりもn形不純物濃度が相対的に低いことを示す。また、p++はp+よりもp形不純物濃度が相対的に高く、p+はpよりもp形不純物濃度が相対的に高く、p-はpよりもp形不純物濃度が相対的に低いことを示す。なお、n+形、n-形を単にn形、p+形、p-形を単にp形と記載する場合もある。
【0010】
不純物濃度は、例えば、Secondary Ion Mass Spectrometry(SIMS)により測定することが可能である。また、不純物濃度の相対的な高低は、例えば、Scanning Capacitance Microscopy(SCM)で求められるキャリア濃度の高低から判断することも可能である。また、不純物領域の幅や深さ等の距離は、例えば、SIMSで求めることが可能である。また。不純物領域の幅や深さ等の距離は、例えば、SCMの画像やScanning Electron Microscope(SEM)の画像から求めることが可能である。また、絶縁層の厚さ等は、例えば、SIMS、SEM、又はTransmission Electron Microscope(TEM)の画像上で計測することが可能である。
【0011】
なお、本明細書中でp形の炭化珪素領域の「p形不純物濃度」とは、当該領域のp形不純物濃度から当該領域のn形不純物濃度を引いた正味(net)のp形不純物濃度を意味する。また、n形の炭化珪素領域の「n形不純物濃度」とは、当該領域のn形不純物濃度から当該領域のp形不純物濃度を引いた正味(net)のn形不純物濃度を意味する。
【0012】
また、明細書中に別段の記述がない限り特定の領域の不純物濃度は、当該領域の中央部の不純物濃度で代表させるものとする。
【0013】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の半導体装置は、第1の面と、第1の面に対向する第2の面と、を有する炭化珪素層と、炭化珪素層の中に設けられた第1導電形の第1の炭化珪素領域であって、第1の領域と第2の領域と第3の領域を含み、第2の領域は第1の領域と第1の面との間に位置し、第3の領域は第1の領域と第1の面との間に位置し、第2の領域の第1導電形不純物濃度は第1の領域の第1導電形不純物濃度と等しいか高く、第3の領域の第1導電形不純物濃度は第2の領域より高い、第1の炭化珪素領域と、炭化珪素層の中に設けられ第1の炭化珪素領域と第1の面との間に位置する第2導電形の第2の炭化珪素領域であって、第4の領域と第5の領域を含み、第4の領域は第2の領域と接し、第5の領域は第3の領域と接し、第5の領域の第2導電形不純物濃度は第4の領域の第2導電形不純物濃度より高い、第2の炭化珪素領域と、炭化珪素層の中に設けられ、第2の炭化珪素領域と第1の面との間に位置する第1導電形の第3の炭化珪素領域と、炭化珪素層に対し第1の面の側に設けられ、第1の面に平行な第1の方向に延び、第1の面において第2の炭化珪素領域と対向した第1のゲート電極と、炭化珪素層に対し第1の面の側に設けられ、第1の方向に延び、第1のゲート電極に対し第1の面に平行で第1の方向に垂直な第2の方向に設けられ、第1の面において第2の炭化珪素領域と対向した第2のゲート電極と、第2の炭化珪素領域と第1のゲート電極との間に設けられた第1のゲート絶縁層と、第2の炭化珪素領域と第2のゲート電極との間に設けられた第2のゲート絶縁層と、炭化珪素層に対し第1の面の側に設けられた第1の電極であって、第1のゲート電極と第2のゲート電極との間に設けられ第2の炭化珪素領域及び第3の炭化珪素領域に接する第1の部分を、含む第1の電極と、炭化珪素層に対し第2の面の側に設けられた第2の電極と、を備える。
【0014】
第1の実施形態の半導体装置は、炭化珪素を用いたプレーナゲート形の縦形MOSFET100である。第1の実施形態のMOSFET100は、例えば、ボディ領域とソース領域をイオン注入で形成する、Double Implantation MOSFET(DIMOSFET)である。
【0015】
以下、第1導電形がn形、第2導電形がp形である場合を例に説明する。MOSFET100は、電子をキャリアとする縦型のnチャネル形のMOSFETである。
【0016】
図1は、第1の実施形態の半導体装置の模式断面図である。
図2及び
図3は、第1の実施形態の半導体装置の模式上面図である。
図2は、炭化珪素層の上面の、ゲート電極と不純物領域のパターンを示す模式図である。
図3は、炭化珪素層の上面の、
図2からゲート電極を除いた、不純物領域のパターンを示す模式図である。
図1は、
図2及び
図3のAA’断面図である。
【0017】
MOSFET100は、炭化珪素層10、ソース電極12(第1の電極)、ドレイン電極14(第2の電極)、第1のゲート絶縁層16a、第2のゲート絶縁層16b、第3のゲート絶縁層16c、第1のゲート電極18a、第2のゲート電極18b、第3のゲート電極18c、層間絶縁層20を備える。ソース電極12は、コンタクト電極部分12x(第1の部分)を含む。
【0018】
炭化珪素層10の中には、n+形のドレイン領域22、n形のドリフト領域24(第1の炭化珪素領域)、p形のボディ領域26(第2の炭化珪素領域)、n++形のソース領域30(第3の炭化珪素領域)が設けられる。
【0019】
n形のドリフト領域24は、n-形の下部領域24x(第1の領域)、n型の第1の低濃度n領域24y1(第2の領域)、n型の第2の低濃度n領域24y2(第6の領域)、n型の第3の低濃度n領域24y3、n+型の第1の高濃度n領域24z1(第3の領域)、n+型の第2の高濃度n領域24z2(第7の領域)を含む。
【0020】
p形のボディ領域26は、p型の第1の低濃度p領域26x1(第4の領域)、p型の第2の低濃度p領域26x2(第8の領域)、p型の第3の低濃度p領域26x3、p+型の第1の高濃度p領域26y1(第5の領域)、p+型の第2の高濃度p領域26y2(第9の領域)、p++型のコンタクト領域26z(第10の領域)を含む。
【0021】
炭化珪素層10は、ソース電極12とドレイン電極14との間に設けられる。炭化珪素層10は、単結晶のSiCである。炭化珪素層10は、例えば、4H-SiCである。
【0022】
炭化珪素層10は、第1の面(
図1中“F1”)と第2の面(
図1中“F2”)とを備える。以下、第1の面F1を表面、第2の面F2を裏面と称する場合がある。第1の面F1は、炭化珪素層10のソース電極12側に位置する。また、第2の面F2は、炭化珪素層10のドレイン電極14側に位置する。第1の面F1と第2の面F2は対向する。なお、以下、「深さ」とは、第1の面を基準として第2の面に向かう方向の深さを意味する。
【0023】
第1の方向及び第2の方向は、第1の面F1に平行である。第2の方向は、第1の方向に垂直である。第1の面F1から第2の面F2に向かう方向は第3の方向である。第3の方向は、第1の方向及び第2の方向に垂直である。
【0024】
第1の面F1は、例えば、(0001)面に対し0度以上8度以下傾斜した面である。また、第2の面F2は、例えば、(000-1)面に対し0度以上8度以下傾斜した面である。(0001)面はシリコン面と称される。(000-1)面はカーボン面と称される。
【0025】
n+形のドレイン領域22は、炭化珪素層10の裏面側に設けられる。ドレイン領域22は、例えば、窒素(N)をn形不純物として含む。ドレイン領域22のn形不純物濃度は、例えば、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下である。
【0026】
n形のドリフト領域24は、ドレイン領域22と第1の面F1との間に設けられる。n形のドリフト領域24は、ソース電極12とドレイン電極14との間に設けられる。
【0027】
n形のドリフト領域24は、ドレイン領域22上に設けられる。ドリフト領域24は、例えば、窒素(N)をn形不純物として含む。ドリフト領域24のn形不純物濃度は、ドレイン領域22のn形不純物濃度よりも低い。ドリフト領域24の厚さは、例えば、3μm以上150μm以下である。
【0028】
ドリフト領域24は、n-形の下部領域24x(第1の領域)、n型の第1の低濃度n領域24y1(第2の領域)、n型の第2の低濃度n領域24y2(第6の領域)、n型の第3の低濃度n領域24y3、n+型の第1の高濃度n領域24z1(第3の領域)、n+型の第2の高濃度n領域24z2(第7の領域)を含む。
【0029】
n-形の下部領域24xは、ドリフト領域24の第2の面F2の側に設けられる。下部領域24xは、ドレイン領域22に接する。
【0030】
下部領域24xは、例えば、窒素(N)をn形不純物として含む。下部領域24xのn形不純物濃度は、例えば、4×1014cm-3以上1×1017cm-3以下である。
【0031】
n型の第1の低濃度n領域24y1、n型の第2の低濃度n領域24y2、n型の第3の低濃度n領域24y3は、下部領域24xと第1の面F1との間に位置する。第1の低濃度n領域24y1、第2の低濃度n領域24y2、第3の低濃度n領域24y3は、下部領域24xとボディ領域26との間に位置する。第1の低濃度n領域24y1、第2の低濃度n領域24y2、第3の低濃度n領域24y3は、ボディ領域26に接する。第1の低濃度n領域24y1、第2の低濃度n領域24y2、第3の低濃度n領域24y3は、第1の方向に延びる。
【0032】
第1の低濃度n領域24y1、第2の低濃度n領域24y2、第3の低濃度n領域24y3は、例えば、窒素(N)をn形不純物として含む。第1の低濃度n領域24y1、第2の低濃度n領域24y2、第3の低濃度n領域24y3のn型不純物濃度は、下部領域24xのn型不純物濃度と等しいか高い。第1の低濃度n領域24y1、第2の低濃度n領域24y2、第3の低濃度n領域24y3のn型不純物濃度は、例えば、4×1014cm-3以上2×1017cm-3以下である。
【0033】
n+型の第1の高濃度n領域24z1、n+型の第2の高濃度n領域24z2は、下部領域24xと第1の面F1との間に位置する。第1の高濃度n領域24z1、第2の高濃度n領域24z2は、下部領域24xとボディ領域26との間に位置する。第1の高濃度n領域24z1、第2の高濃度n領域24z2は、ボディ領域26に接する。第1の高濃度n領域24z1、第2の高濃度n領域24z2は、例えば、第1の方向に延びる。
【0034】
第1の高濃度n領域24z1は、第1の低濃度n領域24y1と第2の低濃度n領域24y2との間に位置する。第2の高濃度n領域24z2は、第2の低濃度n領域24y2と第3の低濃度n領域24y3との間に位置する。
【0035】
第1の高濃度n領域24z1、第2の高濃度n領域24z2は、例えば、窒素(N)をn形不純物として含む。第1の高濃度n領域24z1、第2の高濃度n領域24z2のn型不純物濃度は、第1の低濃度n領域24y1、第2の低濃度n領域24y2、第3の低濃度n領域24y3のn型不純物濃度より高い。
【0036】
第1の高濃度n領域24z1、第2の高濃度n領域24z2のn型不純物濃度は、例えば、第1の低濃度n領域24y1、第2の低濃度n領域24y2、第3の低濃度n領域24y3のn型不純物濃度の1.5倍以上10倍以下である。第1の高濃度n領域24z1、第2の高濃度n領域24z2のn型不純物濃度は、例えば、1×1015cm-3以上2×1017cm-3以下である。
【0037】
p形のボディ領域26は、ドリフト領域24と第1の面F1との間に設けられる。ボディ領域26は、第1の方向に延びる。ボディ領域26は、MOSFET100のチャネル領域として機能する。
【0038】
ボディ領域26の一部は第1の面F1に接する。ボディ領域26の一部は第1のゲート電極18a、第2のゲート電極18b、第3のゲート電極18cに対向する。ボディ領域26の一部は、MOSFET100のチャネル領域となる。
【0039】
ボディ領域26は、例えば、アルミニウム(Al)をp形不純物として含む。ボディ領域26の深さは、例えば、500nm以上900nm以下である。ボディ領域26は、ソース電極12に電気的に接続される。ボディ領域26は、ソース電極12の電位に固定される。
【0040】
ボディ領域26は、p型の第1の低濃度p領域26x1(第4の領域)、p型の第2の低濃度p領域26x2(第8の領域)、p型の第3の低濃度p領域26x3、p+型の第1の高濃度p領域26y1(第5の領域)、p+型の第2の高濃度p領域26y2(第9の領域)、p++型のコンタクト領域26z(第10の領域)を含む。
【0041】
第1の低濃度p領域26x1は、第1の低濃度n領域24y1に接する。第1の低濃度p領域26x1は、第1の低濃度n領域24y1の第3の方向に位置する。
【0042】
第2の低濃度p領域26x2は、第2の低濃度n領域24y2に接する。第2の低濃度p領域26x2は、第2の低濃度n領域24y2の第3の方向に位置する。
【0043】
第3の低濃度p領域26x3は、第3の低濃度n領域24y3に接する。第3の低濃度p領域26x3は、第3の低濃度n領域24y3の第3の方向に位置する。
【0044】
第1の低濃度p領域26x1、第2の低濃度p領域26x2、p型の第3の低濃度p領域26x3は、例えば、アルミニウム(Al)をp形不純物として含む。第1の低濃度p領域26x1、第2の低濃度p領域26x2、p型の第3の低濃度p領域26x3のp形不純物濃度は、例えば、5×1016cm-3以上5×1019cm-3以下である。
【0045】
第1の高濃度p領域26y1は、第1の高濃度n領域24z1に接する。第1の高濃度p領域26y1は、第1の高濃度n領域24z1の第3の方向に位置する。第1の高濃度p領域26y1は、第1の低濃度p領域26x1と、第2の低濃度p領域26x2との間に位置する。
【0046】
第1の高濃度p領域26y1は、例えば、コンタクト電極部分12xの第3の方向に位置する。第1の高濃度p領域26y1は、例えば、コンタクト電極部分12xの直下に位置する。
【0047】
第1の高濃度p領域26y1は、例えば、コンタクト領域26zの第3の方向に位置する。第1の高濃度p領域26y1は、例えば、コンタクト領域26zの直下に位置する。第1の高濃度p領域26y1は、例えば、コンタクト領域26zに接する。
【0048】
第2の高濃度p領域26y2は、第2の高濃度n領域24z2に接する。第2の高濃度p領域26y2は、第2の高濃度n領域24z2の第3の方向に位置する。第2の高濃度p領域26y2は、第2の低濃度p領域26x2と、第3の低濃度p領域26x3との間に位置する。
【0049】
第2の高濃度p領域26y2は、例えば、コンタクト電極部分12xの第3の方向に位置する。第2の高濃度p領域26y2は、例えば、コンタクト電極部分12xの直下に位置する。
【0050】
第2の高濃度p領域26y2は、例えば、コンタクト領域26zの第3の方向に位置する。第2の高濃度p領域26y2は、例えば、コンタクト領域26zの直下に位置する。第2の高濃度p領域26y2は、例えば、コンタクト領域26zに接する。
【0051】
第1の高濃度p領域26y1、第2の高濃度p領域26y2は、例えば、アルミニウム(Al)をp形不純物として含む。第1の高濃度p領域26y1、第2の高濃度p領域26y2のp型不純物濃度は、第1の低濃度p領域26x1、第2の低濃度p領域26x2、p型の第3の低濃度p領域26x3のp形不純物濃度より高い。
【0052】
第1の高濃度p領域26y1、第2の高濃度p領域26y2のp型不純物濃度は、例えば、第1の低濃度p領域26x1、第2の低濃度p領域26x2、p型の第3の低濃度p領域26x3のp形不純物濃度の1.5倍以上10倍以下である。第1の高濃度p領域26y1、第2の高濃度p領域26y2のp型不純物濃度は、例えば、5×1016cm-3以上1×1020cm-3以下である。
【0053】
p++型のコンタクト領域26zは、第1の高濃度p領域26y1と第1の面F1との間に位置する。コンタクト領域26zは、第1の高濃度p領域26y1とソース電極12との間に位置する。コンタクト領域26zは、第1の高濃度p領域26y1とソース電極12のコンタクト電極部分12xとの間に位置する。コンタクト領域26zは、第1の高濃度p領域26y1の第3の方向に位置する。コンタクト領域26zは、第1の高濃度p領域26y1に接する。
【0054】
コンタクト領域26zは、第2の高濃度p領域26y2と第1の面F1との間に位置する。コンタクト領域26zは、第2の高濃度p領域26y2とソース電極12との間に位置する。コンタクト領域26zは、第2の高濃度p領域26y2とソース電極12のコンタクト電極部分12xとの間に位置する。コンタクト領域26zは、第2の高濃度p領域26y2の第3の方向に位置する。コンタクト領域26zは、第2の高濃度p領域26y2に接する。
【0055】
コンタクト領域26zは、ソース電極12に接する。コンタクト領域26zは、ソース電極12に電気的に接続される。コンタクト領域26zと、ソース電極12との間のコンタクトは、例えば、オーミックコンタクトである。コンタクト領域26zは、ソース電極12の電位に固定される。
【0056】
コンタクト領域26zは、ソース電極12のコンタクト電極部分12xに接する。コンタクト領域26zの深さは、例えば、200nm以上500nm以下である。
【0057】
コンタクト領域26zは、例えば、アルミニウム(Al)をp形不純物として含む。コンタクト領域26zのp形不純物濃度は、第1の高濃度p領域26y1、第2の高濃度p領域26y2のp型不純物濃度より高い。コンタクト領域26zのp形不純物濃度は、例えば、1×1019cm-3以上5×1021cm-3以下である。
【0058】
n+形のソース領域30は、ボディ領域26と第1の面F1との間に設けられる。ソース領域30は、例えば、第1の低濃度p領域26x1と第1の面F1との間に設けられる。ソース領域30は、例えば、第1の高濃度p領域26y1と第1の面F1との間に設けられる。
【0059】
ソース領域30は、例えば、第3の低濃度p領域26x3と第1の面F1との間に設けられる。ソース領域30は、例えば、第2の高濃度p領域26y2と第1の面F1との間に設けられる。
【0060】
ソース領域30は、例えば、リン(P)又は窒素(N)をn形不純物として含む。ソース領域30のn形不純物濃度は、ドリフト領域24のn形不純物濃度よりも高い。
【0061】
ソース領域30のn形不純物濃度は、例えば、1×1019cm-3以上5×1021cm-3以下である。ソース領域30の深さは、ボディ領域26の深さよりも浅い。ソース領域30の深さは、例えば、80nm以上200nm以下である。
【0062】
ソース領域30は、ソース電極12に接する。ソース領域30は、ソース電極12に電気的に接続される。ソース領域30とソース電極12との間のコンタクトは、例えば、オーミックコンタクトである。ソース領域30は、ソース電極12の電位に固定される。ソース領域30は、ソース電極12のコンタクト電極部分12xに接する。
【0063】
第1のゲート電極18aは、炭化珪素層10に対し第1の面F1の側に設けられる。第1のゲート電極18aは、第1の方向に延びる。第1のゲート電極18aは、第1の面F1においてボディ領域26と対向する。
【0064】
第2のゲート電極18bは、炭化珪素層10に対し第1の面F1の側に設けられる。第2のゲート電極18bは、第1の方向に延びる。第2のゲート電極18bは、第1のゲート電極18aに対し、第2の方向に設けられる。第2のゲート電極18bは、第1の面F1においてボディ領域26と対向する。
【0065】
第3のゲート電極18cは、炭化珪素層10に対し第1の面F1の側に設けられる。第3のゲート電極18cは、第1の方向に延びる。第3のゲート電極18cは、第2のゲート電極18bに対し、第2の方向に設けられる。第1のゲート電極18aと第3のゲート電極18cとの間に、第2のゲート電極18bが設けられる。第3のゲート電極18cは、第1の面F1においてボディ領域26と対向する。
【0066】
第1のゲート電極18a、第2のゲート電極18b、第3のゲート電極18cは、導電層である。第1のゲート電極18a、第2のゲート電極18b、第3のゲート電極18cは、例えば、p形不純物又はn形不純物を含む多結晶質シリコンである。
【0067】
第1のゲート絶縁層16aは、第1のゲート電極18aとボディ領域26との間に設けられる。第2のゲート絶縁層16bは、第2のゲート電極18bとボディ領域26との間に設けられる。第3のゲート絶縁層16cは、第3のゲート電極18cとボディ領域26との間に設けられる。
【0068】
第1のゲート絶縁層16a、第2のゲート絶縁層16b、第3のゲート絶縁層16cは、例えば、酸化シリコンを含む。第1のゲート絶縁層16a、第2のゲート絶縁層16b、第3のゲート絶縁層16cは、例えば、酸化シリコン層を含む。第1のゲート絶縁層16a、第2のゲート絶縁層16b、第3のゲート絶縁層16cには、例えば、高誘電率絶縁材料を適用することも可能である。また、第1のゲート絶縁層16a、第2のゲート絶縁層16b、第3のゲート絶縁層16cには、例えば、酸化シリコン層と高誘電率絶縁層との積層構造を適用することも可能である。
【0069】
第1のゲート絶縁層16a、第2のゲート絶縁層16b、第3のゲート絶縁層16cの厚さは、例えば、30nm以上100nm以下である。
【0070】
層間絶縁層20は、第1のゲート電極18a、第2のゲート電極18b、第3のゲート電極18c上に設けられる。層間絶縁層20は、第1のゲート電極18aとソース電極12との間、第2のゲート電極18bとソース電極12との間、第3のゲート電極18cとソース電極12との間に設けられる。
【0071】
層間絶縁層20は、第1のゲート電極18aとソース電極12、第2のゲート電極18bとソース電極12、第3のゲート電極18cとソース電極12、を電気的に分離する。層間絶縁層20は、例えば、酸化シリコンを含む。層間絶縁層20は、例えば、酸化シリコン層である。
【0072】
ソース電極12は、炭化珪素層10に対し第1の面F1の側に設けられる。ソース電極12は、炭化珪素層10に接する。ソース電極12は、コンタクト領域26z及びソース領域30に接する。
【0073】
ソース電極12は、コンタクト電極部分12xを含む。コンタクト電極部分12xは、第1のゲート電極18aと第2のゲート電極18bの間に設けられる。コンタクト電極部分12xは、コンタクト領域26z及びソース領域30に接する。
【0074】
ソース電極12は、金属を含む。ソース電極12は、例えば、バリアメタル膜と金属膜との積層構造を備える。
【0075】
バリアメタル膜は、例えば、チタン(Ti)、タングステン(W)、又は、タンタル(Ta)を含む。バリアメタル膜は、例えば、チタン膜、窒化チタン膜、窒化タングステン膜、又は、窒化タンタル膜である。
【0076】
金属膜は、例えば、アルミニウム(Al)を含む。金属膜は、例えば、アルミニウム膜である。
【0077】
ソース電極12のコンタクト電極部分12xは、例えば、金属シリサイド層を含む。金属シリサイド層は、例えば、コンタクト領域26zに接する。金属シリサイド層は、例えば、ソース領域30に接する。
【0078】
金属シリサイド層は、例えば、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、又はコバルト(Co)を含む。金属シリサイド層は、例えば、ニッケルシリサイド層、チタンシリサイド層、又は、コバルトシリサイド層である。
【0079】
ドレイン電極14は、炭化珪素層10に対し第2の面F2側に設けられる。ドレイン電極14は、炭化珪素層10の第2の面F2上に設けられる。ドレイン電極14は、第2の面F2に接する。
【0080】
ドレイン電極14は、例えば、金属又は金属半導体化合物を含む。ドレイン電極14は、例えば、ニッケルシリサイド層、チタン層、ニッケル層、銀層、又は金層を含む。
【0081】
ドレイン電極14は、ドレイン領域22に電気的に接続される。ドレイン電極14は、例えば、ドレイン領域22に接する。
【0082】
次に、第1の実施形態のMOSFET100の作用及び効果について説明する。
【0083】
図4は、比較例の半導体装置の模式断面図である。
図4は、第1の実施形態の
図1に対応する図である。
【0084】
比較例の半導体装置は、炭化珪素を用いたプレーナゲート形の縦形MOSFET900である。
【0085】
MOSFET900は、n形のドリフト領域24が、n+型の第1の高濃度n領域24z1、n+型の第2の高濃度n領域24z2を含まない点で、第1の実施形態のMOSFET100と異なる。また、MOSFET900は、p形のボディ領域26が、p+型の第1の高濃度p領域26y1、p+型の第2の高濃度p領域26y2を含まない点で、第1の実施形態のMOSFET100と異なる。
【0086】
MOSFETに、耐圧を超える逆バイアス電圧が印加されると、pn接合部でアバランシェ降伏が生じ、アバランシェ電流が流れる。アバランシェ電流が流れると、例えば、MOSFETの温度が上昇することにより、MOSFETが破壊に至る場合がある。アバランシェ降伏が起こった際に、MOSFETが許容できる電流又はエネルギーは、アバランシェ耐量と称される。
【0087】
MOSFET900では、例えば、セル部に設けられたp型のボディ領域26とn型のドリフト領域24との間のpn接合の耐圧が高くなりすぎることで、アバランシェ降伏が生じる逆バイアス電圧が大きくなり、アバランシェ耐量が低下するおそれがある。特に、MOSFET900のセル部を囲む終端領域(図示せず)のpn接合で、セル部より先にアバランシェ降伏が生じると、アバランシェ耐量が低下する。これは、セル部の面積より終端領域の面積が小さいため、MOSFET900が流せる電流が制限されるためである。
【0088】
第1の実施形態のMOSFET100では、n形のドリフト領域24が、n+型の第1の高濃度n領域24z1、n+型の第2の高濃度n領域24z2を含む。また、p形のボディ領域26が、p+型の第1の高濃度p領域26y1、p+型の第2の高濃度p領域26y2を含む。
【0089】
MOSFET100は、n+型の第1の高濃度n領域24z1とp+型の第1の高濃度p領域26y1で形成されるpn接合、及び、n+型の第2の高濃度n領域24z2とp+型の第2の高濃度p領域26y2で形成されるpn接合を備える。MOSFET100は、セル部に不純物濃度の高いpn接合を部分的に備えることで、セル部でアバランシェ降伏が生じやすくなる。したがって、MOSFET100のアバランシェ耐量が向上する。
【0090】
アバランシェ耐量を向上させる観点から、1つのコンタクト電極部分12xに対し、第1の高濃度n領域24z1と第1の高濃度p領域26y1で形成されるpn接合、及び、第2の高濃度n領域24z2と第2の高濃度p領域26y2で形成されるpn接合の2つのpn接合が設けられることが好ましい。2つのpn接合を設けることで、1つのコンタクト電極部分12xに流れ込むアバランシェ電流の経路が分散され、コンタクト電極部分12xの発熱が抑制される。よって、アバランシェ耐量が向上する。
【0091】
アバランシェ耐量を向上させる観点から、第1の高濃度p領域26y1は、コンタクト領域26zの第3の方向に位置することが好ましい。言い換えれば、第1の高濃度p領域26y1は、コンタクト領域26zの直下に位置することが好ましい。また、第1の高濃度p領域26y1は、コンタクト領域26zに接することが好ましい。上記構成により、アバランシェ電流の流れる経路の電気抵抗が低減する。よって、コンタクト電極部分12xの発熱が抑制され、アバランシェ耐量が向上する。
【0092】
同様に、アバランシェ耐量を向上させる観点から、第2の高濃度p領域26y2は、コンタクト領域26zの第3の方向に位置することが好ましい。言い換えれば、第2の高濃度p領域26y2は、コンタクト領域26zの直下に位置することが好ましい。また、第2の高濃度p領域26y2は、コンタクト領域26zに接することが好ましい。上記構成により、アバランシェ電流の流れる経路の電気抵抗が低減する。よって、コンタクト電極部分12xの発熱が抑制され、アバランシェ耐量が向上する。
【0093】
アバランシェ耐量を向上させる観点から、第1の高濃度p領域26y1、第2の高濃度p領域26y2のp型不純物濃度は、第1の低濃度p領域26x1、第2の低濃度p領域26x2、p型の第3の低濃度p領域26x3のp形不純物濃度の1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましい。
【0094】
(変形例)
図5は、第1の実施形態の変形例の半導体装置の模式断面図である。
図5は、第1の実施形態の
図1に対応する図である。
【0095】
変形例の半導体装置は、炭化珪素を用いたプレーナゲート形の縦形MOSFET101である。
【0096】
MOSFET101は、n形のドリフト領域24が、n型の第2の低濃度n領域24y2、n+型の第2の高濃度n領域24z2を含まない点で、第1の実施形態のMOSFET100と異なる。また、MOSFET900は、p形のボディ領域26が、p型の第2の低濃度p領域26x2、p+型の第2の高濃度p領域26y2を含まない点で、第1の実施形態のMOSFET100と異なる。
【0097】
第1の実施形態のMOSFET100と同様の作用により、MOSFET101のアバランシェ耐量が向上する。
【0098】
以上、第1の実施形態及び変形例によれば、アバランシェ耐量が向上するMOSFETが実現できる。
【0099】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の半導体装置は、第1の炭化珪素領域は、第1の面に接する第11の領域を更に含み、第1の電極は、第11の領域に接する第2の部分を更に含み、第2の部分は第1のゲート電極と第2のゲート電極との間に設けられ、第2の部分は第1の部分の第1の方向に位置する点で、第1の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0100】
第2の実施形態の半導体装置は、炭化珪素を用いたプレーナゲート形の縦形MOSFET200である。第2の実施形態のMOSFET200は、DIMOSFETである。また、第2の実施形態のMOSFET200は、内蔵ダイオードとしてSchottky Barrier Diode(SBD)を備える。
【0101】
以下、第1導電形がn形、第2導電形がp形である場合を例に説明する。MOSFET200は、電子をキャリアとする縦型のnチャネル形のMOSFETである。
【0102】
図6及び
図7は、第2の実施形態の半導体装置の模式断面図である。
図8及び
図9は、第2の実施形態の半導体装置の模式上面図である。
図8は、炭化珪素層の上面の、ゲート電極と不純物領域のパターンを示す模式図である。
図9は、炭化珪素層の上面の、
図8からゲート電極を除いた、不純物領域のパターンを示す模式図である。
図6は、
図8及び
図9のBB’断面図である。
図7は、
図8及び
図9のBB’断面図である。
【0103】
MOSFET200は、炭化珪素層10、ソース電極12(第1の電極)、ドレイン電極14(第2の電極)、第1のゲート絶縁層16a、第2のゲート絶縁層16b、第3のゲート絶縁層16c、第1のゲート電極18a、第2のゲート電極18b、第3のゲート電極18c、層間絶縁層20を備える。ソース電極12は、コンタクト電極部分12x(第1の部分)及びダイオード電極部分12y(第2の部分)を含む。
【0104】
炭化珪素層10の中には、n+形のドレイン領域22、n形のドリフト領域24(第1の炭化珪素領域)、p形のボディ領域26(第2の炭化珪素領域)、n++形のソース領域30(第3の炭化珪素領域)が設けられる。
【0105】
n形のドリフト領域24は、n-形の下部領域24x(第1の領域)、n型の第1の低濃度n領域24y1(第2の領域)、n型の第2の低濃度n領域24y2(第6の領域)、n型の第3の低濃度n領域24y3、n+型の第1の高濃度n領域24z1(第3の領域)、n+型の第2の高濃度n領域24z2(第7の領域)、JBS領域24s(第11の領域)を含む。
【0106】
p形のボディ領域26は、p型の第1の低濃度p領域26x1(第4の領域)、p型の第2の低濃度p領域26x2(第8の領域)、p型の第3の低濃度p領域26x3、p+型の第1の高濃度p領域26y1(第5の領域)、p+型の第2の高濃度p領域26y2(第9の領域)、p++型のコンタクト領域26z(第10の領域)を含む。
【0107】
ソース電極12は、コンタクト電極部分12x及びダイオード電極部分12yを含む。コンタクト電極部分12x及びダイオード電極部分12yは、第1のゲート電極18aと第2のゲート電極18bとの間に設けられる。コンタクト電極部分12x及びダイオード電極部分12yは、第2のゲート電極18bと第3のゲート電極18cとの間に設けられる。
【0108】
ダイオード電極部分12yは、コンタクト電極部分12xの第1の方向に位置する。
【0109】
n-形のドリフト領域24は、JBS領域24sを含む。JBS領域24sは、第1の面F1に接する。JBS領域24sは、ボディ領域26に囲まれる。
【0110】
JBS領域24sは、ソース電極12のダイオード電極部分12yに接する。JBS領域24sは、SBDのカソード領域として機能する。
【0111】
JBS領域24sを囲むドリフト領域24には、n+型の第1の高濃度n領域24z1、n+型の第2の高濃度n領域24z2が存在しない。また、JBS領域24sを囲むボディ領域26には、p+型の第1の高濃度p領域26y1、p+型の第2の高濃度p領域26y2が存在しない。
【0112】
次に、第2の実施形態のMOSFET200の作用及び効果について説明する。
【0113】
図10は、第2の実施形態の半導体装置の等価回路図である。MOSFET200では、ソース電極12とドレイン電極14との間に、トランジスタに並列にpnダイオードとSBDとが内蔵ダイオードとして接続される。ボディ領域26がpn接合ダイオードのアノード領域であり、ドリフト領域24がpn接合ダイオードのカソード領域である。また、ソース電極12がSBDのアノード電極であり、JBS領域24sがSBDのカソード領域となる。
【0114】
例えば、MOSFET200が、誘導性負荷に接続されたスイッチング素子として用いられる場合を考える。MOSFET200のオフ時に、誘導性負荷に起因する誘導電流により、ソース電極12にドレイン電極14に対し正となる電圧が印加される場合がある。この場合、内蔵ダイオードに順方向電流が流れる。この状態は、逆導通状態とも称される。
【0115】
仮にMOSFETがSBDを備えない場合、pn接合ダイオードに順方向電流が流れる。pn接合ダイオードはバイポーラ動作をする。バイポーラ動作するpn接合ダイオードを用いて還流電流を流すと、キャリアの再結合エネルギーにより炭化珪素層中に積層欠陥が成長する。炭化珪素層中に積層欠陥が成長すると、MOSFETのオン抵抗が増大するという問題が生ずる。MOSFETのオン抵抗の増大は、MOSFETの信頼性の低下を招く。
【0116】
MOSFET200は、SBDを備える。SBDに順方向電流が流れ始める順方向電圧(Vf)は、pn接合ダイオードの順方向電圧(Vf)よりも低い。したがって、pn接合ダイオードに先立ち、SBDに順方向電流が流れる。
【0117】
SBDの順方向電圧(Vf)は、例えば、1.0V以上2.0V未満である。pn接合ダイオードの順方向電圧(Vf)は、例えば、2.0V以上3.0V以下である。
【0118】
SBDはユニポーラ動作をする。このため、順方向電流が流れても、キャリアの再結合エネルギーにより炭化珪素層10中に積層欠陥が成長することはない。したがって、MOSFET200のオン抵抗の増大が抑制される。よって、MOSFET200の信頼性が向上する。
【0119】
また、MOSFET200は、第1の実施形態のMOSFET100と同様、n+型の第1の高濃度n領域24z1とp+型の第1の高濃度p領域26y1で形成されるpn接合、及び、n+型の第2の高濃度n領域24z2とp+型の第2の高濃度p領域26y2で形成されるpn接合を備える。したがって、MOSFET100と同様の作用により、MOSFET200のアバランシェ耐量が向上する。
【0120】
また、MOSFET200は、JBS領域24sを囲むドリフト領域24には、n+型の第1の高濃度n領域24z1、n+型の第2の高濃度n領域24z2が存在しない。また、JBS領域24sを囲むボディ領域26には、p+型の第1の高濃度p領域26y1、p+型の第2の高濃度p領域26y2が存在しない。
【0121】
したがって、JBS領域24sの近傍で、アバランシェ降伏が生じ、アバランシェ電流が流れることが抑制される。よって、発熱によるSBDのショットキー接合の特性劣化が抑制できる。
【0122】
第1及び第2の実施形態では、SiCの結晶構造として4H-SiCの場合を例に説明したが、本発明は6H-SiC、3C-SiC等、その他の結晶構造のSiCを用いたデバイスに適用することも可能である。また、炭化珪素層10の表面に(0001)面以外の面を適用することも可能である。
【0123】
第1及び第2の実施形態では、第1導電形がn形、第2導電形がp形の場合を例に説明したが、第1導電形をp形、第2導電形をn形とすることも可能である。
【0124】
第1及び第2の実施形態では、p形不純物としてアルミニウム(Al)を例示したが、ボロン(B)を用いることも可能である。また、n形不純物として窒素(N)及びリン(P)を例示したが、砒素(As)、アンチモン(Sb)等を適用することも可能である。
【0125】
また、Insulated Gate Bipolar Transistor(IGBT)に本発明を適用することも可能である。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0127】
10 炭化珪素層
12 ソース電極(第1の電極)
12x コンタクト電極部分(第1の部分)
12y ダイオード電極部分(第2の部分)
14 ドレイン電極(第2の電極)
16a 第1のゲート絶縁層
16b 第2のゲート絶縁層
16c 第3のゲート絶縁層
18a 第1のゲート電極
18b 第2のゲート電極
18c 第3のゲート電極
24 ドリフト領域(第1の炭化珪素領域)
24x 下部領域(第1の領域)
24y1 第1の低濃度n領域(第2の領域)
24y2 第2の低濃度n領域(第6の領域)
24z1 第1の高濃度n領域(第3の領域)
24z2 第2の高濃度n領域(第7の領域)
24s JBS領域(第11の領域)
26 ボディ領域(第2の炭化珪素領域)
26x1 第1の低濃度p領域(第4の領域)
26x2 第2の低濃度p領域(第8の領域)
26y1 第1の高濃度p領域(第5の領域)
26y2 第2の高濃度p領域(第9の領域)
26z コンタクト領域(第10の領域)
30 ソース領域(第3の炭化珪素領域)
100 MOSFET(半導体装置)
200 MOSFET(半導体装置)
F1 第1の面
F2 第2の面