(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140378
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ネジ締結構造およびそれを備えた装置
(51)【国際特許分類】
F16B 37/04 20060101AFI20230928BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F16B37/04 J
F16B5/02 U
F16B5/02 B
F16B37/04 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046179
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祥伍
(72)【発明者】
【氏名】井上 敬登
【テーマコード(参考)】
3J001
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GA01
3J001GB01
3J001GB03
3J001HA02
3J001HA07
3J001JA10
3J001KA14
3J001KA19
(57)【要約】
【課題】ネジとナットでネジ締結される第一部材および第二部材の少なくとも一方にナットを予め取り付けたネジ締結構造において、そのネジが挿入される側の第一部材または第二部材のネジ通し孔とそのナットとの間に位置ずれがあっても、支障なくネジ締結することができるネジ締結構造等を提供する。
【解決手段】ネジ締結構造は、ネジ通し孔が設けられた第一部材と、ネジ通し孔が設けられた第二部材と、前記第一部材または第二部材の前記通し孔から挿入するネジと、前記ネジが挿入される側と反対側にある前記第二部材または第一部材に配置されるナットと、前記反対側にある前記第二部材または第一部材の前記通し孔がある部分に設けられ、前記ナットを少なくとも一方向に沿って変位可能な状態で保持するナット保持部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジとナットでネジ締結される第一部材および第二部材の少なくとも一方に、前記ナットと、当該ナットを少なくとも一方向に沿って変位可能に保持するナット保持部とを備えるネジ締結構造。
【請求項2】
ネジ通し孔が設けられた第一部材と、
ネジ通し孔が設けられた第二部材と、
前記第一部材または第二部材の前記ネジ通し孔から挿入するネジと、
前記ネジが挿入される側と反対側にある前記第二部材または第一部材に配置されるナットと、
前記反対側にある前記第二部材または第一部材の前記ネジ通し孔がある部分に設けられ、前記ナットを少なくとも一方向に沿って変位可能な状態で保持するナット保持部と、
を備えるネジ締結構造。
【請求項3】
前記ナット保持部は、前記ナットを挟んで向き合うように配置される一対の部材であり、前記一対の少なくとも一方の部材が弾性変形し得る部材として構成されている請求項1または2に記載のネジ締結構造。
【請求項4】
前記ネジが挿入される側の前記第一部材または第二部材に、前記ネジ通し孔として一方向に長い長孔が設けられており、
前記ナット保持部は、前記ナットを、前記長孔の長手方向に沿って変位可能に保持するよう構成されている請求項1または2に記載のネジ締結構造。
【請求項5】
前記ナット保持部は、前記ナットが配置される前記第一部材または第二部材の一部分を切欠いて成形加工してなる部材として構成されている請求項1または2に記載のネジ締結構造。
【請求項6】
前記ナットは、前記ナット保持部と向き合う部分が平面部として構成されている請求項1または2に記載のネジ締結構造。
【請求項7】
前記ナットは、前記ナット保持部と向き合う部分の少なくとも1つが、当該ナット保持部を入り込ませて存在させるよう窪んだ窪み平面部として構成されている請求項6に記載のネジ締結構造。
【請求項8】
前記ナットが配置される前記第一部材または第二部材の複数の箇所に当該ナットおよび前記ナット保持部がそれぞれ配置される場合、
前記複数のナット保持部の少なくとも一部のナット保持部は、ナットの変位させる方向を他のナット保持部のナットの変位させる方向と異ならせている請求項1または2に記載のネジ締結構造。
【請求項9】
前記ナットが配置される前記第二部材または第一部材は、前記ネジ通し孔のある部分が、他の部分よりも肉厚が薄い薄肉部分として構成されている請求項1または2に記載のネジ締結構造。
【請求項10】
ネジとナットでネジ締結される第一部材および第二部材と、
前記第一部材および第二部材の少なくとも一方に前記ナットを予め取り付けて前記第一部材と前記第二部材をネジ締結する構造と、
を備え、
前記ネジ締結する構造の少なくとも一部が、請求項1から9のいずれかの項に記載のネジ締結構造で構成されている、ネジ締結構造を備えた装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ネジ締結構造およびそれを備えた装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、金属板材から成型されて雌ねじが形成された雌ねじ部材と、雌ねじに位置決めて挿通孔が形成された挿通孔部材と、その挿通孔を挿通して雌ねじに螺合することにより挿通孔部材を雌ねじ部材に固定する雄ネジ部材と、を備えた組み立て構造体が記載されている。
また、特許文献1には、その組み立て構造体について、前記雌ねじ部材は、前記雌ねじ部材を構成する金属板材の一部分を二つ折りして重ね合わせた重ね板部と、前記重ね板部の両方の金属板材を貫通するねじ下孔と、を有して、前記重ね板部の両方の金属板材を貫通して前記ねじ下孔に前記雌ねじが形成され、前記雄ねじ部材が締め付けられた状態で前記重ね板部の両方の金属板材が密着していることが記載されている。
【0003】
下記特許文献2には、ビス頭とネジ部を有するビスと、ビスにより締結される締結材と、ビスと締結材の間に挟まれて締結材に締結される被締結材と、を有し、ビスが螺合される締結材のビス穴は、バーリング加工されたビス挿入方向に突出した略円筒形状のバーリング部にて形成される締結部構造が記載されている。
また、特許文献2では、その締結部構造について、前記略円筒形状のバーリング部は、前記バーリング加工された前記締結材が周方向に折り畳まれ、且つ、円筒形状長手方向に沿って延在した波形状バーリングとされることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-9698号公報(請求項1、
図2-3)
【特許文献2】特開2014-177996号公報(請求項1、
図3-6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、ネジとナットでネジ締結される第一部材および第二部材の少なくとも一方にナットを予め取り付けたネジ締結構造において、そのネジが挿入される側の第一部材または第二部材のネジ通し孔とそのナットとの間に位置ずれがあっても、支障なくネジ締結することができるネジ締結構造およびそれを備えた装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(1)は、
ネジとナットでネジ締結される第一部材および第二部材の少なくとも一方に、前記ナットと、当該ナットを少なくとも一方向に沿って変位可能に保持するナット保持部とを備えるネジ締結構造である。
【0007】
この発明(2)は、
ネジ通し孔が設けられた第一部材と、
ネジ通し孔が設けられた第二部材と、
前記第一部材または第二部材の前記ネジ通し孔から挿入するネジと、
前記ネジが挿入される側と反対側にある前記第二部材または第一部材に配置されるナットと、
前記反対側にある前記第二部材または第一部材の前記ネジ通し孔がある部分に設けられ、前記ナットを少なくとも一方向に沿って変位可能な状態で保持するナット保持部と、
を備えるネジ締結構造である。
【0008】
この発明(3)は、上記発明(1)または(2)のネジ締結構造において、
前記ナット保持部は、前記ナットを挟んで向き合うように配置される一対の部材であり、前記一対の少なくとも一方の部材が弾性変形し得る部材として構成されているネジ締結構造である。
【0009】
この発明(4)は、上記発明(1)または(2)のネジ締結構造において、
前記ネジが挿入される側の前記第一部材または第二部材に、前記ネジ通し孔として一方向に長い長孔が設けられており、
前記ナット保持部は、前記ナットを、前記長孔の長手方向に沿って変位可能に保持するよう構成されているネジ締結構造である。
【0010】
この発明(5)は、上記発明(1)または(2)のネジ締結構造において、
前記ナット保持部は、前記ナットが配置される前記第一部材または第二部材の一部分を切欠いて成形加工してなる部材として構成されているネジ締結構造である。
【0011】
この発明(6)は、上記発明(1)または(2)のネジ締結構造において、
前記ナットは、前記ナット保持部と向き合う部分が平面部として構成されているネジ締結構造である。
【0012】
この発明(7)は、上記発明(6)のネジ締結構造において、
前記ナットは、前記ナット保持部と向き合う部分の少なくとも1つが、当該ナット保持部を入り込ませて存在させるよう窪んだ窪み平面部として構成されているネジ締結構造である。
【0013】
この発明(8)は、上記発明(1)または(2)のネジ締結構造において、
前記ナットが配置される前記第一部材または第二部材の複数の箇所に当該ナットおよび前記ナット保持部がそれぞれ配置される場合、
前記複数のナット保持部の少なくとも一部のナット保持部は、ナットの変位させる方向を他のナット保持部のナットの変位させる方向と異ならせているネジ締結構造である。
【0014】
この発明(9)は、上記発明(1)または(2)のネジ締結構造において、
前記ナットが配置される前記第二部材または第一部材は、前記ネジ通し孔のある部分が、他の部分よりも肉厚が薄い薄肉部分として構成されているネジ締結構造である。
【0015】
また、この発明(10)は、
ネジとナットでネジ締結される第一部材および第二部材と、
前記第一部材および第二部材の少なくとも一方に前記ナットを予め取り付けて前記第一部材と前記第二部材をネジ締結する構造と、
を備え、
前記ネジ締結する構造の少なくとも一部が、上記発明(1)から(9)のいずれかのネジ締結構造で構成されている、ネジ締結構造を備えた装置である。
【発明の効果】
【0016】
上記発明(1)および(2)のネジ締結構造によれば、ネジとナットでネジ締結される第一部材および第二部材の少なくとも一方にナットを予め取り付けたネジ締結構造において、そのネジが挿入される側の第一部材または第二部材のネジ通し孔とそのナットとの間に位置ずれがあっても、支障なくネジ締結することができる。
【0017】
上記発明(3)によれば、ナット保持部の一対の部材の双方が弾性変形し得る部材として構成されていない場合に比べて、ナットをナット保持部に保持させるときの取り付け作業やナット保持部から取り外すときの取り外し作業が容易にできる。
【0018】
上記発明(4)によれば、ナット保持部が、ナットをネジ通し孔である長孔の長手方向に沿って変位可能に保持するようになっていない場合に比べて、ネジを長孔の長手方向の所望の位置でナットと結合させやすくなる。
【0019】
上記発明(5)によれば、ナット保持部が、ナットが配置される第一部材または第二部材の一部分を切欠いて成形加工してなる部材として構成されていない場合に比べて、ナット保持部を、第一部材または第二部材に固定するための手段を必要とせずに設けることができる。
【0020】
上記発明(6)によれば、ナットのナット保持部と向き合う部分が平面部として構成されていない場合に比べて、ナットをナット保持部において変位可能な方向に円滑に変位させることができる。
【0021】
上記発明(7)によれば、ナットのナット保持部と向き合う部分の少なくとも1つが窪み平面部として構成されていない場合に比べて、ナットをナット保持部から脱落させることなく変位可能に保持することができる。
【0022】
上記発明(8)によれば、複数のナット保持部の少なくとも一部のナット保持部が、ナットの変位させる方向を他のナット保持部のナットの変位させる方向と異ならせていない場合に比べて、ネジが挿入される側の第一部材または第二部材のネジ通し孔とナットとの間に位置ずれが複数の方向に対して存在する場合でも、支障なくネジ締結をすることができる。
【0023】
上記発明(9)によれば、薄肉部分にバーリング加工してネジ切りができない場合であっても、ネジ締結を行うことが可能になる。
【0024】
上記発明(10)のネジ締結構造を備えた装置によれば、ネジとナットでネジ締結される第一部材および第二部材の少なくとも一方にナットを予め取り付けたネジ締結構造において、そのネジが挿入される側の第一部材または第二部材のネジ通し孔とそのナットとの間に位置ずれがあっても、支障なくネジ締結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施の形態1に係るネジ締結構造の図面であり、(A)はそのネジ締結構造の正面図、(B)は(A)のB-B線に沿う一部断面図である。
【
図3】
図1のネジ締結構造におけるナット、ナット保持部等を示す斜視図である。
【
図4】ナット保持部から取り外したナットとナット保持部等を示す斜視図である。
【
図5】(A)はナットとナット保持部の一部断面で示す説明図、(B)は
図3のV-V線に沿う概略断面図である。
【
図6】ネジ締結構造の締結工程の一部断面図である。
【
図7】実施の形態2に係るネジ締結構造の図面であり、(A)はそのネジ締結構造の正面図、(B)は(A)のB-B線に沿う一部断面図である。
【
図8】
図7のネジ締結構造におけるナット、ナット保持部等を示す斜視図である。
【
図9】ナット保持部から取り外したナットとナット保持部等を示す斜視図である。
【
図10】(A)はナットとナット保持部の一部断面で示す説明図、(B)は
図3のV-V線に沿う概略断面図である。
【
図11】実施の形態3に係るネジ締結構造を備えた装置の概要図である。
【
図12】(A)はネジ締結構造の変形例1の要部平面図、(B)はネジ締結構造の変形例2の要部平面図である。
【
図13】(A)はネジ締結構造の変形例3の要部平面図、(B)は(A)のB-B線に沿う概略断面図である。
【
図14】ネジ締結構造の変形例4の要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0027】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るネジ締結構造1Aを示す正面図および一部断面図である。
図2は、ネジ締結構造1Aの一部断面で示す分解図である。
【0028】
ネジ締結構造1Aは、
図1、
図2等に示されるように、第一部材2と第二部材3が、ネジ4とナット5Aでネジ締結される構造である。
また、このネジ締結構造1Aは、第一部材2と、第二部材3と、ネジ4と、ナット5Aと、ナット保持部6Aとを備えている。
【0029】
第一部材2は、ネジ締結構造1Aでネジ締結されるときの一方の部材である。
実施の形態1における第一部材2は、
図2に示されるように、ネジ4を通すネジ通し孔25が設けられた板状の部材である。また、実施の形態1では、第一部材2を、ナット5Aを予め取り付ける側の部材として使用している。
【0030】
第一部材2は、具体的には、
図1や
図2に示されるように、板状の本体21と、本体21の一部に所要の範囲で窪んだ形状で形成された窪み部分(換言すれば隆起した形状で形成された隆起部分)22とを有した形状からなる部材である。
この窪み部分22は、その窪んで凸になる側の面部分22dに、第二部材3をネジ締結により取り付けるよう構成されている。また、この窪み部分22は、その所要の位置に上記ネジ通し孔25が設けられている。
【0031】
さらに、第一部材2は、金属製の板部材(板金)で構成されており、例えば支持フレームとして使用される。また、第一部材2では、その窪み部分22が、本体21(他の部分の一例)よりも肉厚が薄い薄肉部分として構成されている。この薄肉部分の肉厚は、例えば、バーリング加工したときに、そのバーリング加工した部分にネジ切りを正常に行うことが困難になる程度に薄い厚さからなる部分である。薄肉部分の肉厚は、金属の種類、薄肉部分の面積等によっても異なるが、例えば、0.4mm以下の厚さである。
【0032】
第二部材3は、ネジ締結構造1Aでネジ締結されるときの他方の部材である。
実施の形態1における第二部材3は、
図2に示されるように、ネジ4を通すネジ通し孔35,36が設けられた部材である。また、実施の形態1では、第二部材3を、ネジ締結をする際にナット5Aに向けてネジ4を挿入する側の部材として使用している。
【0033】
また、第二部材3は、金属製の部材で構成されている。より具体的には、第二部材3は、
図1や
図2に示されるように、内部に空間部32を有する構造の本体31からなる部材である。また、第二部材3は、空間部32を含めて、図示しない必要な部品等が配置されている。
第二部材3におけるネジ通し孔35,36は、ネジ4を第二部材3の空間部32の中を通過させるよう設けられている。
さらに、第二部材3は、第一部材2の窪み部分22にネジ締結する際、その窪み部分22における所要の取付け位置に位置決めされた状態に保たれたうえでネジ締結が行われるようになっている。
【0034】
ネジ4は、ナット5Aのネジ孔(雌ネジ)52にネジ止めすることが可能なネジ部品であればよく、ネジと称されるものに限らずビス、ボルト等と称されるものも含まれる。
実施の形態1におけるネジ4は、
図2に示されるように、ネジ山(雄ネジ)42が所要の範囲で形成された円柱状の本体部41と、本体部41の端部に設けられた頭部43とで構成されるネジ部品である。
【0035】
ナット5Aは、ネジ4がネジ止めされるネジ孔52を有するナットである。
実施の形態1におけるナット5Aは、
図3や
図6に示されるように、第一部材2のネジ締結する部分(ネジ通し孔25がある部分)に予め配置されて取り付けられるよう使用される。
また、ナット5Aは、後述する窪み平面部56を設ける前の段階では、平面形状が角部を丸めたほぼ正方形であって所要の厚さdからなる本体51を有している。
【0036】
ナット保持部6Aは、ナット5Aが配置される第一部材2において、そのナット5Aを少なくとも一方向に沿って変位可能な状態で保持する部分である。
【0037】
実施の形態1におけるナット保持部6Aは、
図1や
図3に示されるように、ナット5Aを、矢印X1,X2で示す一方向(X方向)に沿って往復移動して変位するように保持する保持部として構成されている。
【0038】
また、このナット保持部6Aは、
図1(A)、
図3から
図5等に示されるように、第一部材2の窪み部分22の窪んだ側の底面になる面部分22bにおいて、ナット5Aを挟んで向き合うよう配置される一対の部材61,62で構成されている。
一対の部材61,62はいずれも、
図4、
図5等に示されるように、窪み部分22の面部分22bにおいてほぼ垂直に立ち上がる立上げ面部63と、その立上げ面部63の頂部において互いに向き合う側にかつ下方に(ネジ通し孔25に)むくよう斜めに折り曲げられた曲げ面部64とを有する形状の部材として形成されている。
【0039】
また、実施の形態1におけるナット保持部6Aは、その一対の部材61,62の双方が弾性変形し得る部材として構成されている。
ここで、弾性変形し得るとは、ナット5Aをナット保持部6Aに保持させるよう取り付ける際、ナット5Aが接触したときに部材61,62がナット5Aの進路を妨げない方向に弾性を利用して変形できることをいう。
【0040】
一対の部材61,62は、
図5(B)に示されるように、立上げ面部63が互いに離れる方向n1に反り返るように一時的に弾性変形するか、あるいは、曲げ面部64が立上げ面部63に近づく方向k1に移動するよう一時的に弾性変形するか、あるいは、立上げ面部63および曲げ面部64の双方が上記したようにそれぞれ一時的に弾性変形するようになっている。
この場合、立上げ面部63は弾性変形した後に復元力により矢印n2で示す方向に移動して復元し、また曲げ面部64は弾性変形した後に復元力により矢印k2で示す方向に移動して復元することになる。
【0041】
さらに、ナット保持部6Aは、
図4に示されるように、ナット5Aが配置される第一部材2における窪み部分22の一部分(ナット5Aを配置する部位)を切欠いて成形加工してなる部材61,62として構成されている。
【0042】
実施の形態1では、ナット保持部6Aの部材61,62を例えば以下のように作製する。
【0043】
はじめに、
図4に示されるように、窪み部分22の一部分を矢印Xで示す方向と直交する方向に沿って平行する2本の切込みを入れて当該直交する方向の中央部で切断して2つの切断片を得る。続いて、その2つの切断片を、窪み部分22の面部分22bに垂直な方向でかつ窪む方向とは反対側の方向に折り曲げた後、その自由端を互いに向き合う側に所要の角度で下方にむけて折り曲げる。
【0044】
これにより、窪み部分22には、
図4の下部に示されるように、立上げ面部63および曲げ面部64からなる部材61,62が作製される。このようにナット保持部6Aの部材61,62を作製すれば、ナット保持部6Aが第一部材2の一部分を切欠いて成形加工してなる部材として構成されていない場合に比べると、ナット保持部6Aを、第一部材2に固定するための手段を必要とせずに第一部材2に設けることが可能になる。
また、この部材61,62を作製する際に窪み部分22に切り欠かれた部分は、矢印Xで示す方向と直交する方向に長いほぼ長方形からなる孔となり、これがネジ通し孔25として使用される。この場合、ネジ通し孔25は、
図4に示されるように、上記2本の切込みの間隔に該当する幅W1からなる長方形になる。
【0045】
また、部材61,62における立上げ面部63は、
図4または
図5に示されるように、ネジ通し孔25の幅W1よりも狭い幅W2(<W1)で立ち上がり、また互いが所要の間隔S1をあけて向き合うよう形成される。また、部材61,62における曲げ面部64は、その曲げ先端64aが、窪み部分22の面部分22bからの所要の高さ(隙間)hになるよう形成される。このときの曲げ先端64aの高さhは、ナット5Aの厚さdよりも少し大きい値になる(h>d)。
ネジ通し孔25の幅W1、部材61,62における立上げ面部63の幅W2、部材61,62における曲げ面部64の曲げ先端64aの高さh等の寸法については、ナット5A等の寸法との間の関係で調整および選定される。
【0046】
また、ナット5Aは、
図3から
図5等に示されるように、ナット保持部6Aに変位可能に保持されるため、ナット保持部6Aの部材61,62と向き合う部分が、その部材61,62における立上げ面部63を入り込ませて存在させるよう窪んだ窪み平面部56A,56Bとして構成されている。
【0047】
実施の形態1における窪み平面部56A,56Bは、
図4、
図5等に示されるように、平面形状がほぼ正方形であって所要の厚さdからなる本体51における4つの側面部のうちの2つの側面部を、ネジ孔52にむけて所要の窪み幅L1および窪み量で直方体状に切削した凹部として設けられている。また、窪み平面部56A,56Bは、ナット保持部6Aの部材61,62と向き合う平面の底面部57と、互いに向き合って底面部57までに至る一対の壁面からなる対向面部58a,58bとを有する形状で形成されている。
【0048】
窪み平面部56A,56Bは、
図5に示されるように、ナット5Aをナット保持部6Aの部材61,62の間に配置させる必要があるため、その互いの間隔Lsが、ナット保持部6Aの部材61,62の間隔S1よりも少し狭い寸法になっている(Ls<S1)。
【0049】
また、窪み平面部56A,56Bは、その窪み幅(対向面部58a,58bの間隔)L1が、ナット保持部6Aの部材61,62の幅W2よりも大きい寸法になっている(L1>W2)。
窪み平面部56A,56Bの窪み幅L1は、ナット5Aを矢印X1,X2の方向に変位させるに要する距離に応じて、対向面部58a,58bが部材61,62との間に所要の隙間E1,E2が得られるように、部材61,62の幅W2よりも所要の量だけ大きい寸法に設定される。
【0050】
この他、実施の形態1におけるナット5Aは、
図4や
図5に示されるように、本体51における4つの側面部のうち残り2つの側面部にも、窪み平面部56A,56Bと同様の構成からなる余剰の窪み平面部56C,56Dを設けている。
これにより、ナット5Aは、窪み平面部56C,56Dをナット保持部6Aの部材61,62と向き合うような状態に配置して取り付けることもできる。このため、このナット5Aは、余剰の窪み平面部56C,56Dが設けられていない場合に比べると、ナット5Aのナット保持部6Aへの取り付け作業がしやすくなる。
【0051】
また、ネジ締結構造1Aに使用される第一部材2におけるネジ通し孔25は、
図4に示されるようにほぼ長方形の非ネジ孔(ネジ山が形成されていない貫通孔)として形成されている。このネジ通し孔25は、そのほぼ長方形の各辺の寸法が、ネジ4の本体部41の外径(ネジ山42の外径)Daよりも大きい寸法になっている。
また、ネジ締結構造1Aに使用される第二部材3におけるネジ通し孔35,36は、例えば丸孔で形成されている。また、ネジ通し孔35,36は、
図2に示されるように、その各直径D1,D2がネジ4の本体部41の外径(ネジ山42の外径)Daよりも大きい寸法からなる(D1,D2>Da)、非ネジ孔として形成されている。
ナット5Aのネジ孔52は、その直径(内径)がネジ4の本体部41の外径Daとネジ山どうしが適合する寸法に形成されている。
【0052】
(ナットのナット保持部への取り付け)
そして、ネジ締結構造1Aにおいては、ナット5Aが、
図3等に例示されるように、ナット保持部6Aに保持されるように取り付けられる。
【0053】
このときの取り付けは、
図4に例示されるように、例えばナット5Aをナット保持部6Aの部材61,62の上方から押し込むことにより行われる。
この際、ナット5Aは、部材61,62の曲げ面部64に触れて押し込まれる。これにより、ナット保持部6Aでは、部材61,62が一時的に弾性変形させられて曲げ面部64どうしの間隔S2が広げられる。
【0054】
この結果、ナット5Aは、
図3や
図5に示されるように、部材61,62の曲げ面部64どうしの間を通過した後、その曲げ面部63どうしの間に挟まれた状態になる。このときの部材61,62は、その立上げ面部63がナット5Aの窪み平面部56A,56B内に入り込んで窪み平面部56A,56Bの底面部57に向き合った状態になり、またその曲げ面部64がナット5Aにおける窪み平面部56A,56Bの間の部分(表面)に接近して向き合った状態になる。
このようにネジ締結構造1Aでは、部材61,62が弾性変形しない場合に比べると、ナット5Aをナット保持部6Aに保持させるときの取り付け作業が容易に行われる。
【0055】
また、このネジ締結構造1Aでは、ナット5Aが第一部材2の窪み部分22においてナット保持部6Aにより矢印X1,X2に変位可能に保持される。
詳しくは、ネジ締結構造1Aにおけるナット5Aは、その窪み平面部56A,56Bの窪み幅L1の部材61,62の立上げ面部63の幅W2との差分(E1+E2)だけ矢印X1,X2に変位できるようになる。また、このときのナット5Aは、窪み平面部56A,56Bにおける対向面部58a,58bが部材61,62の立上げ面部63に接触することで、その変位移動が停止されるようになっている。
矢印Xで示す方向は、この実施の形態1では例えば上下の方向を想定しているが、これ以外の方向(水平の方向、斜めの方向など)であってもよい。
【0056】
(ネジ締結構造によるネジ締結)
そして、ネジ締結構造1Aによるネジ締結は、次のようにして行われる。
【0057】
すなわち、ネジ締結構造1Aでは、まず第一部材2の窪み部分22の面部分22dに、第二部材3を押し当てた状態に保持する。
この際、第二部材3は、第一部材2の窪み部分22の面部分22dに押し当てる際、その面部分22dに予め設定されている締結位置に、凹凸の嵌め合い構造等の位置決め手段により位置決めされた状態になる。
【0058】
続いて、ネジ締結構造1Aでは、
図6に示されるように、ネジ4を第二部材3のネジ通し孔35,36に挿入して貫通させた後に、第一部材2にあるネジ通し孔25を通過させてナット5Aのネジ孔52にむけて差し入れる。
この際、第一部材2と第二部材3との間では、ネジ通し孔35,36やそのネジ通し孔35,36を通したネジ4の本体部41の先端部の位置(差し入れるときの移動線J1)と、ナット5Aのネジ孔52の位置(ネジ孔の中心線J2)との間に公差等による位置ずれが存在すること(厳密には矢印Xで示す方向における位置ずれがある場合)がある。この場合であっても、ネジ締結構造1Aでは、ナット5Aをナット保持部6Aにおいて矢印X1、X2で示すいずれかの方向に変位させてネジ孔52の位置を微調整することができる。
【0059】
この結果、ネジ締結構造1Aでは、矢印X1、X2で示すいずれかの方向に変位させたナット5Aのネジ孔52に、ネジ4が正常に嵌め入れてネジ止めされる。また、ネジ締結構造1Aでは、ネジ4をナット5Aのネジ孔52に正式に締結することで、第二部材3が第一部材2にネジ締結される。
【0060】
したがって、ネジ締結構造1Aによれば、第一部材2にナット5Aを予め取り付けたネジ締結構造においてナット5Aをナット保持部6Aで変位可能に保持しているので、そのネジ4が挿入される側の第二部材3のネジ通し孔35,36とそのナット5A(のネジ孔52)との間に位置ずれがあっても、ナット5Aを必要な量だけ変位させて位置ずれを解消させることができる。この結果、ネジ締結構造1Aにおいては、支障なくネジ4をナット5Aのネジ孔52にネジ止めして、第一部材2と第二部材3をネジ締結することができる。
【0061】
また、ネジ締結構造1Aでは、ナット5Aを第一部材2の薄肉部分である窪み部分22に設ける必要がある。このような状況にある場合、ナット5Aに代えて、薄肉部分である窪み部分22にバーリング加工をしてネジ切り(雌ネジの形成)をしたネジ孔にネジ4のネジ止めをする構成を採用しようとしても、ネジ切りができないことがある。
このため、ネジ締結構造1Aでは、このように薄肉部分にバーリング加工してネジ切りができない場合であっても、ネジ締結を行うことが可能になる。
【0062】
ちなみに、ネジ締結構造1Aは、ナット5Aを第一部材2の窪み部分22に溶接して固定することなく、ナット5Aをナット保持部6Aにより変位可能に保持するように取り付けている。
このため、ネジ締結構造1Aでは、ナット5Aを変位させてネジ孔52の位置を微調整することができる。
また、ナット5Aを溶接して固定する場合には、ナットの溶接位置を決める治具が必要になり、その治具を用意することや溶接を行うことに要する費用も比較的多く必要になる。この点、ネジ締結構造1Aでは、ナット5Aを溶接して固定する場合のようなナットの溶接位置を決める治具が不要となり、また溶接自体も不要となり、その結果として、その治具や溶接のための費用も不要にすることができる。
【0063】
実施の形態2.
図7は、この発明の実施の形態2に係るネジ締結構造1Bを示す平面図および一部断面図である。
ネジ締結構造1Bは、ナット5Aおよびナット保持部6Aに代えてナット5Bおよびナット保持部6Bを適用した点で異なるが、それ以外については実施の形態1に係るネジ締結構造1Aと同じ構成からなるものである。
このため、ネジ締結構造1Bは、
図7等に示されるように、第一部材2と、第二部材3と、ネジ4と、ナット5Bと、ナット保持部6Bとを備えている。
【0064】
実施の形態2におけるナット5Bは、実施の形態1におけるナット5Aの窪み平面部56B,56C,56Dを設けず、
図9等に示されるように、本体51の元の3つの側面部を平面部53B,53C,53Dとして構成している点で異なるが、それ以外については実施の形態1におけるナット5Aと同じ構成からなるものである。
また、ナット5Bは、
図9等に示されるように、本体51の元の側面部の1つに実施の形態1における窪み平面部56Aを同様に設けている。
【0065】
実施の形態2におけるナット保持部6Bは、
図7、
図8等に示されるように、ナット5Bを、矢印X1,X2で示す一方向(X方向)に沿って往復移動して変位するように保持する保持部として構成されている。
また、ナット保持部6Bは、
図8,
図9等に示されるように、第一部材2の窪み部分22の窪んだ側の底面になる面部分22bにおいて、ナット5Bを挟んで向き合うよう配置される一対の部材61,66で構成されている。
【0066】
一対の部材61,66のうち部材61は、
図8,
図9等に示されるように、実施の形態1における部材61と同様に、ナット5Bの窪み平面部56Aの底面部57と向き合うようになっており、立上げ面部63と曲げ面部64とを有する形状からなる部材として形成されている。
また、部材61は、弾性変形し得る部材として構成されている。
この部材61は、その対向面部58a,58bによってナット5Bの矢印X方向に対する変位移動できる範囲を規制する。
【0067】
一方の部材66は、窪み部分22の面部分22bから隆起する隆起部67と、隆起部67の頂部から部材61の側に突出する突出部68とを有する形状からなる部材として形成されている。隆起部67は、ナット5Bの平面部53Bと向き合う端部67aを有している。端部67aは、窪み部分22の面部分22bから次第に接近するように傾斜して立ち上がる傾斜部として形成されている。
また、部材66は、弾性変形しない部材として構成されている。
この部材66は、例えば、部材61を製作する際に窪み部分22の一部分を切り込んで得る予定の2つの切断片の一方になる部分を、切込みを入れずに残して型押しや深絞り加工等により所要の形状に隆起させることで製作される。
【0068】
さらに、部材66は、
図10に示されるように、隆起部67の端部67aのうち窪み部分22の面部分22bに最も近い部分どうしの間隔W3が、ネジ通し孔25の幅W1より少し大きい(広い)寸法になるよう形成されている。
隆起部67の端部67aは、一方の部材61の立上げ面部63との間隔S3が、ナット5Bにおける窪み平面部56Aの底面部57と平面部53Bとの間隔Lrよりも少し大きい寸法になるよう形成されている。
【0069】
また、部材66は、
図10に示されるように、突出部68が、窪み部分22の面部分22bから所要の高さ(隙間)hを有する部分になるよう形成されている。この高さhは、一方の部材61における曲げ面部64の曲げ先端64aの高さhと同じである。
突出部68は、その突出先端の一方の部材61の曲げ面部64との間隔S3が、ナット5Bにおける窪み平面部56Aの底面部57と平面部53Bとの間隔Lrよりも狭い寸法になるよう形成されている。
【0070】
(ナットのナット保持部への取り付け)
そして、ネジ締結構造1Bにおいては、ナット5Bが、
図7等に例示されるように、ナット保持部6Bに保持されるように取り付けられる。
【0071】
このときの取り付けは、
図9に例示されるように、例えばナット5Bをナット保持部6Bの部材61,66の上方から押し込むことにより行われる。
この際、ナット5Bは、部材61の曲げ面部64と部材66の突出部68に触れて押し込まれる。これにより、ナット保持部6Bでは、部材61が一時的に弾性変形させられて部材66との間隔S3が一時的に広げられる。
【0072】
この結果、ナット5Bは、部材61の曲げ面部64と部材66の突出部68との間を通過した後、
図8に示されるように、部材61の立上げ面部63と部材66の隆起部67の端部67aとの間に挟まれた状態になる。
このときの部材61は、その立上げ面部63が、ナット5Bの窪み平面部56A内に入り込んで窪み平面部56Aの底面部57に向き合った状態になる。また、このときの部材66は、その隆起部67の端部67aが、ナット5Bにおける平面部53Bと向き合った状態になる。さらに、このときの部材61の曲げ面部64と部材66の突出部68とが、ナット5Bの表面に接近して向き合った状態になる。
このようにネジ締結構造1Bでは、部材61が弾性変形しない場合に比べると、ナット5Bをナット保持部6Bに保持させるときの取り付け作業が容易に行われる。
【0073】
また、このネジ締結構造1Bでは、ナット5Bが第一部材2の窪み部分22においてナット保持部6Bにより矢印X1,X2に変位可能に保持される。
詳しくは、ネジ締結構造1Bにおけるナット5Bは、その窪み平面部56Aの窪み幅L1の部材61の立上げ面部63の幅W2との差分(E1+E2)だけ矢印X1,X2に変位できるようになる。また、このときのナット5Bは、窪み平面部56Aの対向面部58a,58bが部材61の立上げ面部63に接触することで、その変位移動が停止されるようになっている。
【0074】
<ネジ締結構造によるネジ締結>
そして、ネジ締結構造1Bによるネジ締結は、次のようにして行われる。
【0075】
すなわち、ネジ締結構造1Bでは、実施の形態1に係るネジ締結構造1Aの場合と同様に、まず第一部材2の窪み部分22の面部分22dに、第二部材3を押し当てた状態に保持する。
続いて、ネジ締結構造1Bでは、ネジ4を第二部材3のネジ通し孔35,36に挿入して貫通させた後に、第一部材2にあるネジ通し孔25を通過させてナット5Bのネジ孔52にむけて差し入れる。
この際、ネジ締結構造1Bでも、ナット5Bをナット保持部6Bにおいて矢印X1、X2で示すいずれかの方向に変位させてネジ孔52の位置を微調整することができる。
【0076】
これにより、ネジ締結構造1Bにおいても、矢印X1、X2で示すいずれかの方向に変位させたナット5Bのネジ孔52に、ネジ4が正常に嵌め入れてネジ止めされる。また、ネジ締結構造1Bにおいても、ネジ4をナット5Bのネジ孔52に正式に締結することで、第二部材3が第一部材2にネジ締結される。
【0077】
したがって、ネジ締結構造1Bによれば、第一部材2にナット5Bを予め取り付けたネジ締結構造においてナット5Bをナット保持部6Bで変位可能に保持しているので、そのネジ4が挿入される側の第二部材3のネジ通し孔35,36とそのナット5B(のネジ孔52)との間に位置ずれがあっても、ナット5Bを必要な量だけ変位させて位置ずれを解消させることができる。この結果、ネジ締結構造1Bにおいても、支障なくネジ4をナット5Bのネジ孔52にネジ止めして、第一部材2と第二部材3をネジ締結することができる。
【0078】
実施の形態3.
図11は、この発明の実施の形態3に係るネジ締結構造1を備えた装置7の概要図である。
【0079】
ネジ締結構造1を備えた装置7は、筐体70を有し、その筐体70に稼働部8の一例としての画像形成部81,記録媒体79の媒体供給部86,および媒体搬送部88が配置されているとともに、稼働部8の動作等について制御する制御部75が配置されている。
このため、実施の形態3に係る装置7は、外部から入力される画像情報に基づく画像を記録媒体79に形成する画像形成装置として構成されている。
【0080】
画像形成部81は、記録媒体79に実際に画像を形成する部分である。この画像形成部81は、電子写真方式、インク吐出方式、静電記録方式、感熱記録方式等の所要の画像形成方式に応じた機器やその関連機器等で構成されている。
【0081】
媒体供給部86は、画像形成部81で使用する記録媒体79を収容して供給する部分である。この媒体供給部86は、複数の記録媒体79を収容する収容体、その収容体に収容されている記録媒体79を媒体搬送部88に送り出す送出装置等で構成されている。記録媒体79は、画像形成部81による画像の形成が可能であって、媒体搬送部88により搬送することが可能な媒体であればよい。
【0082】
媒体搬送部88は、媒体供給部86から送り出される記録媒体79を画像形成部81に供給するよう搬送するとともに、画像形成部81で画像が形成された記録媒体79を筐体70に設けられた媒体排出部72に排出するよう搬送する部分である。この媒体搬送部88は、記録媒体79を搬送する複数の搬送ロール、記録媒体79を搬送案内する案内部材等で構成されている。
【0083】
制御部75は、制御動作に必要な機器(検出に必要な機器を含む)で構成されている。実施の形態3における制御部75は、例えば第一部材2の一例としての支持フレーム20と、支持フレーム20にネジ締結される第二部材3の一例としての電子部品筐体30等を備えている。
また、支持フレーム20と電子部品筐体30は、その一部または全部が、支持フレーム20にナット5を予め取り付けてネジ4とナット5によりネジ締結する構造、すなわちネジ締結構造1を適用している。
【0084】
そして、この画像形成装置からなる装置7においては、上記制御部75におけるネジ締結構造1の一部または全部が、実施の形態1に係るネジ締結構造1A(
図1等を参照)または実施の形態2に係るネジ締結構造1B(
図7等を参照)により構成されている。
【0085】
このネジ締結構造1Aまたはネジ締結構造1Bを採用していることにより、制御部75における支持フレーム20および電子部品筐体30は次のような構成を備えている。
すなわち、支持フレーム20には、ネジ4を通す図示しないネジ通し孔が設けられており、またナット5(5A,5B)がナット保持部6(6A,6B)により矢印X方向に沿って変位可能に保持されて取り付けられている。また、電子部品筐体30には、ネジ4を通す図示しないネジ通し孔が設けられている。
これにより、制御部75では、ネジ締結構造1Aまたはネジ締結構造1Bにより、支持フレーム20に電子部品筐体30がネジ締結されている。
【0086】
また、画像形成装置からなる装置7では、支持フレーム20に電子部品筐体30をネジ締結する際、支持フレーム20と電子部品筐体30との間で、ネジ通し孔やそのネジ通し孔を通したネジ4の先端部の位置と、ナット5のネジ孔の位置との間に公差等による位置ずれが存在すること(厳密には矢印Xで示す方向における位置ずれがある場合)がある。この場合であっても、ネジ締結構造1A,1Bを備えているので、ナット5をナット保持部6において矢印X1、X2で示すいずれかの方向に変位させてナット5のネジ孔の位置を微調整することができる。
【0087】
この結果、ネジ締結構造1Aまたはネジ締結構造1Bを採用した制御部75では、矢印X1、X2で示すいずれかの方向に変位させたナット5のネジ孔にネジ4が正常に嵌め入れてネジ止めされる。また、この制御部75では、ネジ4をナット5のネジ孔に正式に締結することで、電子部品筐体30が支持フレーム20にネジ締結される。
【0088】
したがって、ネジ締結構造1Aまたはネジ締結構造1Bを採用した装置7によれば、そのネジ締結構造1Aまたはネジ締結構造1Bにおいてナット5をナット保持部6で変位可能に保持しているので、そのネジ4が挿入される側の電子部品筐体30のネジ通し孔とそのナット5(のネジ孔)との間に位置ずれがあっても、ナット5を必要な量だけ変位させて位置ずれを解消させることができる。この結果、装置7の制御部75においては、支障なくネジ4をナット5のネジ孔にネジ止めして、支持フレーム20と電子部品筐体30をネジ締結することができる。
【0089】
その他.
この発明は、実施の形態1から実施の形態3(それらの変形例を含む)により代表的な構成例を示したが、それらの構成に限定されるものではなく、必要に応じて構成の一部を変更してもよい。
【0090】
例えば、ネジ締結構造1は、
図12(A)に変形例1として例示するネジ締結構造1Cのように、ナット5Aをその窪み平面部56C,56Dにナット保持部6Cにおける一対の部材67,68を配置して取り付けて、ナット5Aを矢印X方向とほぼ直交する方向Y1,Y2に対して変位可能に保持するように構成してもよい。
【0091】
この場合、ナット5Aは、実施の形態1におけるナット5Aと同じ構成からなるものである。また、ナット保持部6Cにおける一対の部材67,68は、実施の形態1におけるナット保持部6Aにおける一対の部材61,62と同じ構成からなるものである。
なお、この変形例1のネジ締結構造1Cでは、ナット5およびナット保持部6として、実施の形態2におけるナット5Bおよびナット保持部6Bを適用して構成してもよい。
【0092】
また、ネジ締結構造1は、
図12(B)に変形例2として例示するネジ締結構造1Dのように、ナット保持部6Dにおける一対の部材61,62を、実施の形態1におけるナット5Aの窪み平面部56A,56B(の底面部57)から所要の間隔E3,E4だけあけた状態に配置して、ナット5Aを矢印X1,X2で示す方向と、その矢印Xとほぼ直交する方向Y1,Y2の双方に対して変位可能に保持するようにしてもよい。
【0093】
この場合、ナット保持部6Dにおける一対の部材61,62は、配置の位置が異なる以外は、実施の形態1におけるナット保持部6Aにおける一対の部材61,62と同じ構成からなるものである。また、ナット保持部6Dにおける一対の部材61,62は、ナット5Aが矢印X方向およびY方向の双方に移動したときに、その保持からナット5Aが脱落しない配置や寸法に設定される。
なお、この変形例2のネジ締結構造1Dでは、ナット5およびナット保持部6として、実施の形態2におけるナット5Bおよびナット保持部6Bを適用して構成してもよい。
【0094】
また、ネジ締結構造1は、
図13に変形例3として例示するネジ締結構造1Eのように、第二部材3にネジ通し孔37として一方向(長孔の長手方向になる方向)に長い長孔が設けられている場合であれば、ナット保持部6Aについては、ナット5Aを、ネジ通し孔37の長孔における長手方向Xjに沿って変位可能に保持するよう構成してもよい。
【0095】
この変形例3においてナット保持部6Aがナット5Aを変位させる矢印Xの方向は、ネジ通し孔37の長孔における長手方向Xjと平行する方向である。
なお、この変形例3のネジ締結構造1Eでは、ナット5およびナット保持部6として、実施の形態2におけるナット5Bおよびナット保持部6Bを適用して構成してもよい。その場合のナット保持部6Bは、ナット5Bを、第二部材3に設けられるネジ通し孔37の長孔の長手方向Xjに沿って変位可能に保持するよう構成すればよい。
【0096】
また、ネジ締結構造1は、
図14に変形例4として例示するネジ締結構造1Fのように、ナット5が配置される第一部材2の複数の箇所にナット5A,5Cおよびナット保持部6A,6Eがそれぞれ配置される場合であれば、その複数のナット保持部6A,6Eの少なくとも一部(変形例4では一方)のナット保持部6Eについて、ナット5Cの変位させる方向(矢印X3,X4で示す方向)を他のナット保持部6Aのナット5Aの変位させる方向(矢印X1,X2で示す方向)と異ならせるように構成してもよい。
【0097】
この場合、ネジ締結構造1Fにおける矢印X3,X4で示す方向は、第一部材2のナット5を配置すべき同じ平面部分において矢印X1,X2で示す方向に対して所要の角度だけ傾いた方向になっている。また、ネジ締結構造1Fにおけるナット5Cは、変位する方向に合わせて配置姿勢が異なるが、それ以外については実施の形態1におけるナット5Aと同じ構成からなるものである。また、ネジ締結構造1Fにおけるナット保持部6Eは、一対の部材61,62の配置姿勢が異なるが、それ以外については実施の形態1におけるナット保持部6Aと同じ構成からなるものである。
【0098】
また、ネジ締結構造1Fでは、ナット保持部6Aのナット5Aを変位させる方向(矢印X1,X2で示す方向)やナット保持部6Eのナット5Cの変位させる方向(矢印X3,X4で示す方向)について任意に設定することができる。しかし、その各変位させる方向については、例えば、第二部材3に長孔のネジ通し孔38A,38Bが設けられている場合であれば、そのネジ通し孔38A,38Bの長孔の各長手方向Xj,Xmと平行する方向に合わせて設定するとよい。
なお、変形例4のネジ締結構造1Fは、複数のナット5およびナット保持部6を配置する第一部材2の部分として同じ平面の部分を想定して説明したが、その配置する部分については、同じ平面でなく、互いに異なる部分であってもよい。その場合は、複数のナット5およびナット保持部6は異なる部分に適宜配分して配置される。
【0099】
この他、この発明のネジ締結構造1においては、ナット5およびナット保持部6を第二部材3の側に配置してもよい。ナット5およびナット保持部6を配置しない第一部材2または第二部材には、ネジ通し孔に代えて、ネジ4を通過させるネジ孔を設けてもよい。
また、ネジ締結構造1は、第一部材2と第二部材3の間に他の部材を介在させてネジ締結するように構成しても構わない。
さらに、第一部材2および第二部材3の形態については、各実施の形態で例示したものに限定されず、ネジ締結構造1の適用が可能であれば他の形態であってもよい。
【0100】
ナット保持部6における一対の部材61,62については、それを設ける第一部材2または第二部材3とは異なる部材で製作した後、それを第一部材2または第二部材3の配置すべき位置に固定(固着)して完成させたものであってもよい。
【0101】
ナット5の形状やナット保持部6における一対の部材61,62の形状については、前記各実施例や変形例で例示した形状に限らず、他の形状であってもよい。実施の形態1におけるナット5Aは、ナット保持部6Aが配置されない窪み平面部56C,56Dを設けずに省略しても構わない。
【0102】
ネジ締結構造1を備えた装置7は、画像形成装置に限定されず、この発明のネジ締結構造1を有効に適用できる装置であれば、いかなる種類の装置であってもよい。
【符号の説明】
【0103】
1,1A,1B…ネジ締結構造
2…第一部材
3…第二部材
4…ネジ
5A,5B,5C…ナット
6A,6B,6C,6D,6E,6F…ナット保持部
20…支持フレーム(第一部材の一例)
21…本体(他の部分の一例)
22…窪み部分(薄肉部分の一例)
25,35,36…ネジ通し孔
30…電子部品筐体(第二部材の一例)
37,38A,38B…長孔からなるネジ通し孔
53…平面部
56A,56B,56C,56D…窪み平面部
X1,X2,X3,X4,Y1,Y2…変位する方向
Xj,Xm…長孔の長手方向