(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141484
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ドアのインナパネルとドアウェザストリップとの係合構造
(51)【国際特許分類】
B60J 10/30 20160101AFI20230928BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20230928BHJP
B60J 10/36 20160101ALI20230928BHJP
B60J 10/86 20160101ALI20230928BHJP
B60J 10/24 20160101ALI20230928BHJP
【FI】
B60J10/30
B60J5/00 501A
B60J10/36
B60J10/86
B60J10/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047828
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】植原 悠斗
(72)【発明者】
【氏名】西川 洋明
(72)【発明者】
【氏名】安達 健太郎
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA38
3D201BA01
3D201CA23
3D201DA03
3D201DA16
3D201DA23
3D201FA01
3D201FA04
(57)【要約】
【課題】クリップを必要とすることなく、且つコストアップを抑制したドアのインナパネルとドアウェザストリップの係合構造を提供する。
【課題を解決するための手段】車両のドアのインナパネル10とドアウェザストリップ30との係合構造であって、インナパネル10の外周縁には、ドアウェザストリップ30を取付けるための取付部20が突出して形成され、ドアウェザストリップ30は、中空シール部31と取付基部32を備え、取付基部32には、インナパネル10の取付部20と係合する係合部33が形成され、係合部33の枠34は、インナパネル10の外周縁側の枠15より小さく、ドアウェザストリップ30が引き伸ばされた状態で取付部20に係合部33が係合する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアのインナパネルとドアウェザストリップとの係合構造であって、
前記インナパネルの外周縁には、前記ドアウェザストリップを取付けるための取付部が突出して形成され、若しくは突出して取付けられ、
前記ドアウェザストリップは、中空シール部と取付基部を備え、該取付基部には、前記インナパネルの前記取付部と係合する係合部が形成され、
前記係合部の枠は、前記インナパネルの前記外周縁側の枠より小さく、前記ドアウェザストリップが引き伸ばされた状態で、前記取付部に前記係合部が係合することを特徴とするドアのインナパネルとドアウェザストリップとの係合構造。
【請求項2】
前記取付部は、前記ドアウェザストリップのコーナー部と係合する部位に配設される請求項1に記載のドアのインナパネルとドアウェザストリップとの係合構造。
【請求項3】
前記取付部は、断面が略長方形の取付部側柱部として前記インナパネルに形成され、若しくは断面が略長方形の取付部側柱部を有する部材として前記インナパネルに取付けられ、前記係合部は、前記取付部側柱部と係合する溝部であり、
前記インナパネルの断面において、傾斜を有する部分、前記ドアウェザストリップが湾曲して取付けられる部分、及び前記ドアウェザストリップの枠の形状において逆Rとなる部分に対する前記取付部側柱部には、前記取付部柱部の先端部分若しくは先端部分の近傍に、車外側に突出した鍵状の返し部が形成され、前記ドアウェザストリップの前記係合部の前記溝部には、前記返し部と係合する凹部が形成されている請求項1又は請求項2に記載のドアのインナパネルとドアウェザストリップとの係合構造。
【請求項4】
前記取付部は、断面がL字形状を有して前記インナパネルの前記外周縁に形成され、若しくは断面が前記L字形状を有して前記インナパネルの前記外周縁に取付けられ、
前記L字形状の一方の先端部分、若しくは該先端部分の近傍には、鍵状の第1返し部が形成され、
前記インナパネルの断面において傾斜を有する部分、前記ドアウェザストリップが湾曲して取付けられる部分、及び前記ドアウェザストリップの枠の形状において逆Rとなる部分に対する前記取付部には、前記第1返し部と共に、前記L字形状の他方の先端部若しくは該他方の先端部の近傍に、鍵状の第2返し部が形成され、
前記係合部は、断面において、前記ドアウェザストリップの前記取付基部において、両側に突き出た突出部を有し、
前記突出部は、前記インナパネルの断面において傾斜を有する部分、前記ドアウェザストリップが湾曲して取付けられる部分、及び前記ドアウェザストリップの枠形状において逆Rとなる部分においては、前記L字形状の内面、前記第1返し部の内面及び前記第2返し部の内面と係合し、
前記インナパネルの断面において傾斜を有する部分、前記ドアウェザストリップが湾曲して取付けられる部分、及び前記ドアウェザストリップの枠形状において逆R部分以外においては、前記L字形状の内面と前記第1返し部の内面に係合する請求項1又は請求項2に記載のドアのインナパネルとドアウェザストリップとの係合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等車両のドア、特にドアのインナパネルと、インナパネルの外周縁に装着されるドアウェザストリップとの係合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、車両のドア、特にドアのインナパネル100の外周縁には、外周縁に沿ってドアウェザストリップ300が装着されており、インナパネル100と車体のドアの開口縁の間をシールすることにより防水対策及び遮音対策が講じられている。ドアウェザストリップ300は、取付基部320と、ドアを閉じた時にドアの開口縁に圧接する中空状の中空シール部310を備えている。
【0003】
このドアウェザストリップ300の取付け方法として、特許文献1には、以下の技術が記載されている。
図4に示すように、ドアウェザストリップ300の取付基部320には所定の間隔でクリップ孔321が形成されている。一方、ドアのインナパネル100の外周縁には所定の間隔で孔部140が形成されている。ドアウェザストリップ300のクリップ孔321にクリップ500を嵌め込み、各クリップ500をインナパネル100の各孔部140に係止することによりドアウェザストリップ300がインナパネル100に取付けられる。
【0004】
また、特許文献2には、以下のドアウェザストリップ300の取付け方法に関する技術記載されている。
図5に示すように、ドアウェザストリップ300の構成は、上記の特許文献1と同じである。一方、ドアのアウタパネルに対して車内側に配置されるインナパネル100全体を樹脂で形成するとともに、インナパネル100の周縁部には、ドアウェザストリップ300を取付けるための突起部150が形成されている。突起部150は、円筒状の胴体部160と胴体部160の先端部分に形成された円錐状の係止部170から構成されている。
【0005】
そして、インナパネル100に形成された突起部150に、ドアウェザストリップ300の取付基部320に形成された突起部挿入孔322(特許文献1におけるクリップ孔321と同じ)を嵌め込むことにより、ドアウェザストリップ300がインナパネル100に取付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-286237号公報
【特許文献2】特開2006-44529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1のように複数個のクリップ500を使用すると、クリップ500をドアウェザストリップ300のクリップ孔321に嵌め込む工程、その後にクリップ500をインナパネル100の孔部140に嵌め込む工程が必要であり、作業に時間がかかる問題があった。
【0008】
また、販売店やエンドユーザーにおいて、修理等交換のためにドアウェザストリップ300を取外す場合にインナパネル100の孔部140からクリップ500を引き抜くには、クリップ500を壊さなければならず、ドアウェザストリップ300の交換のたびに新しいクリップ500と交換する必要があった。
【0009】
一方、特許文献2では、上記のクリップ500に係る問題には対応できるが、インナパネル100全体を樹脂により形成する必要があるため、大きなコストアップが避けられない。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、クリップを必要とすることなく、且つコストアップを抑制したドアのインナパネルとドアウェザストリップの係合構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1の本発明は、車両のドアのインナパネルとドアウェザストリップとの係合構造であって、インナパネルの外周縁には、ドアウェザストリップを取付けるための取付部が突出して形成され、若しくは突出して取付けられ、ドアウェザストリップは、中空シール部と取付基部を備え、取付基部には、インナパネルの取付部と係合する係合部が形成され、係合部の枠は、インナパネルの外周縁側の枠より小さく、ドアウェザストリップが引き伸ばされた状態で、取付部に前記係合部が係合することを特徴とするドアのインナパネルとドアウェザストリップとの係合構造である。
【0012】
請求項1の本発明では、ドアのインナパネルの外周縁には、ドアウェザストリップを取付けるための取付部が突出して形成され、若しくは突出して取付けられ、ドアウェザストリップの取付基部には、インナパネルの取付部と係合する係合部が形成され、係合部の枠は、インナパネルの外周縁側の枠より小さく、ドアウェザストリップが引き伸ばされた状態で、取付部に係合部が係合するので、ドアウェザストリップの係合部をインナパネルの取付部と係合させつつ、引き伸ばすことによりドアのインナパネルの外周縁にドアウェザストリップを取付けることができ、取付けの作業性がよい。また、ドアウェザストリップをインナパネルに取付けた後には、ドアウェザストリップには収縮力が加わっているので、インナパネルの取付部に強固に固定される。したがって、通常の使用状態において、ドアウェザストリップがインナパネルから外れることはなく、さらにドアウェザストリップの防水対策及び遮音対策の効果も従前と同様に奏する。
【0013】
また、販売店やエンドユーザーにおいて、修理等交換のためにドアウェザストリップを取外す場合には、ドアウェザストリップを引き伸ばすことにより、ドアウェザストリップの係合部をインナパネルの取付部から取外すことができるので、取外し作業を容易に行うことができる。
【0014】
さらに、インナパネルの取付部は、インナパネルの外周縁を加工して、若しくはインナパネルの外周縁に取付けることにより形成することができるので、コストアップを抑制することができる。
【0015】
請求項2の本発明は、請求項1の発明において、取付部は、ドアウェザストリップのコーナー部と係合する部位に配設されるドアのインナパネルとドアウェザストリップとの係合構造である。
【0016】
請求項2の本発明では、取付部は、ドアウェザストリップのコーナー部と係合する部位に配設されるので、コーナー部において、インナパネルから突出する取付部とドアウェザストリップの係合部が係合することにより、ドアウェザストリップがインナパネルから外れることを防止することができる。なお、コーナー部とは、ドアウェザストリップの枠の形状において、前後または上下の直線部に対して角度を有して弧形状になだらかに繋がる部分であり、前後または上下の直線部のなす角度が140°以下である部分をいう。角度が140°を越える場合は、ドアウェドアウェザストリップに収縮力が作用している場合であってもドアウェザストリップがインナパネルの枠から外れる可能性は低い。ただし、140°を越える部分に取付部を形成してもよく、若しくは取付部を取付けてもよい。その結果、ドアウェザストリップのインナパネルへの取付けやインナパネルからの取外しを容易におこなうことができる。また、さらにコストアップを抑制することができる。
【0017】
請求項3の本発明は、請求項1又は請求項2において、取付部は、断面が略長方形の取付部側柱部としてインナパネルに形成され、若しくは断面が略長方形の取付部側柱部を有する部材としてインナパネルに取付けられ、係合部は、取付部側柱部と係合する溝部であり、インナパネルの断面において、傾斜を有する部分、ドアウェザストリップが湾曲して取付けられる部分、及びドアウェザストリップの枠の形状において逆Rとなる部分に対する取付部側柱部には、取付部柱部の先端部分若しくは先端部分の近傍に、車外側に突出した鍵状の返し部が形成され、ドアウェザストリップの係合部の溝部には、返し部と係合する凹部が形成されているドアのインナパネルとドアウェザストリップとの係合構造である。
【0018】
請求項3の本発明では、取付部は、断面が略長方形の取付部側柱部としてインナパネルに形成され、若しくは断面が略長方形の取付部側柱部を有する部材としてインナパネルに取付けられ、ドアウェザストリップの係合部は、取付部側柱部と係合する溝部であるので、ドアウェザストリップの溝部を取付部側柱部に差し込む、または、取付部側柱部から引き抜くことができ、ドアウェザストリップの取付け及び取外しを容易に行うことができる。
【0019】
ところで、ドアのインナパネルの断面形状において、傾斜する部分、例えば、窓ガラスによる窓開口が形成される窓枠が下方に傾斜する部分や、車外側に凸状に膨らむ部分、例えば、ドア本体(窓枠の下方の窓ガラス昇降装置やスピーカが組み込まれる部分)の中央付近が車外側に膨らむ部分、ヒンジ部などの存在によりドアウェザストリップが湾曲して取付けられる部分、そして、ドアウェザストリップの枠形状において逆Rとなってインナパネルに取付けられる部分を有する場合がある。ここで、逆Rとは、周状の枠形状を有するドアウェザストリップにおいて、取付部の前後若しくは上下の略直線部のなす角度が、枠の内側において180°を越える形状をいう。また、湾曲には蛇行を含む。
【0020】
ドアウェザストリップは引き伸ばされた状態で、インナパネルの取付部に係合部が係合するので、上記の通りドアウェドアウェザストリップには収縮力が加わっている。インナパネルの断面において形状に傾斜する部分、ドアウェザストリップが湾曲して取付けられる部分、ドアウェザストリップの枠形状においてドアウェザストリップの形状が逆Rとなってインナパネルに取付けられる部分を有する場合には、収縮力によって、前後若しくは上下の取付部間において直線的に変形しようとしてドアウェザストリップの係合部に車内側に力が作用する、所謂ショートカット化が発生する。その結果、インナパネルの傾斜する部分、ドアウェザストリップが湾曲して取付けられる部分及びドアウェザストリップの形状が逆Rとなる部分において、取付部が断面略長方形の取付部側柱部の場合に、ドアウェザストリップの溝部がインナパネルの取付部の取付部側柱部から外れる可能性がある。
【0021】
請求項3の本発明では、取付部には、インナパネルの断面において傾斜を有する部分、ドアウェザストリップが湾曲して取付けられる部分、及びドアウェザストリップの枠形状において逆Rとなる部分に対する取付部側柱部には、先端部若しくは先端部の近傍に、車外側に突出した鍵状の返し部が形成され、ドアウェザストリップの係合部の溝部には、返し部と係合する凹部が形成されているので、収縮力によって、前後若しくは上下の取付部間において直線的に変形しようとしてドアウェザストリップの係合部に車内側に力が作用した場合であっても、取付部の返し部とドアウェザストリップの凹部によってドアウェザストリップの係合部がインナパネルの取付部から外れることを防止することができる。
【0022】
請求項4の本発明は、請求項1又は請求項2の発明において、取付部は、断面がL字形状を有してインナパネルの外周縁に形成され、若しくは断面がL字形状を有してインナパネルの外周縁に取付けられ、L字形状の一方の先端部分、若しくは先端部分の近傍には、鍵状の第1返し部が形成され、インナパネルの断面において傾斜を有する部分、ドアウェザストリップが湾曲して取付けられる部分、及びドアウェザストリップの枠の形状において逆Rとなる部分に対する取付部には、第1返し部と共に、L字形状の他方の先端部若しくは他方の先端部の近傍に、鍵状の第2返し部が形成され、係合部は、断面において、ドアウェザストリップの取付基部において、両側に突き出た突出部を有し、突出部は、インナパネルの断面において傾斜を有する部分、ドアウェザストリップが湾曲して取付けられる部分、及びドアウェザストリップの枠形状において逆Rとなる部分においては、L字形状の内面であり、第1返し部の内面及び第2返し部の内面と係合し、インナパネルの断面において傾斜を有する部分、ドアウェザストリップが湾曲して取付けられる部分、及びドアウェザストリップの枠形状において逆R部分以外においては、L字部の内面と第1返し部の内面に係合するドアのインナパネルとドアウェザストリップとの係合構造である。
【0023】
請求項4の本発明では、ドアウェザストリップの係合部は、断面において、ドアウェザストリップの取付基部において、両側に突き出た突出部を有し、一方、インナパネルの取付部は、断面がL字形状を有してインナパネルの外周縁に形成され、若しくは断面がL字形状を有してインナパネルの外周縁に取付けられ、L字形状の一方の先端部、若しくは先端部の近傍には、鍵状の第1返し部が形成されているので、突出部と第1返し部が係合し、ドアウェザストリップの取付け及び取外しを容易に行うことができる。
【0024】
また、インナパネルの断面において傾斜を有する部分、ドアウェザストリップが湾曲して取付けられる部分、及びドアウェザストリップの枠形状において逆Rとなる部分に対する取付部には、第1返し部と共に、L字形状の他方の先端部若しくは他方の先端部の近傍に、鍵状の第2返し部が形成されているので、ドアウェザストリップの突出部が第1返し部と同時に第2返し部にも係合し、収縮力によって、前後若しくは上下の取付部間において直線的に変形しようとしてドアウェザストリップの係合部に車内側に力が作用した場合であっても、ドアウェザストリップの係合部がインナパネルの取付部から外れることを防止することができる。
【発明の効果】
【0025】
車両のドアのインナパネルとドアウェザストリップとの係合構造であって、ドアのインナパネルの外周縁には、ドアウェザストリップを取付けるための取付部が突出して形成され、若しくは突出して取付けられ、ドアウェザストリップの取付基部には、インナパネルの取付部と係合する係合部が形成され、係合部の枠は、インナパネルの外周縁側の枠より小さく、ドアウェザストリップが引き伸ばされた状態で、取付部に係合部が係合するので、ドアウェドアウェザストリップの係合部をインナパネルの取付部と係合させつつ、引き伸ばすことによりドアのインナパネルの外周縁にドアウェザストリップを取付けることができ、取付けの作業性がよい。また、ドアウェドアウェザストリップをインナパネルに取付けた後には、ドアウェドアウェザストリップには収縮力が加わっているので、インナパネルの取付部に強固に固定される。したがって、通常の使用状態において、ドアウェザストリップがインナパネルから外れることはなく、さらにドアウェザストリップの防水対策及び遮音対策の効果も従前と同様に奏する。
【0026】
また、販売店やエンドユーザーにおいて、修理等交換のためにドアウェザストリップを取外す場合には、ドアウェザストリップを引き伸ばすことにより、ドアウェザストリップの係合部をインナパネルの取付部から取外すことができるので、取外し作業を容易に行うことができる。
【0027】
さらに、インナパネルの取付部は、インナパネルの外周縁を加工して、若しくはインナパネルの外周縁に取付けることにより形成することができるので、コストアップを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】ドアウェザストリップが装着された自動車のインナパネルの正面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態における、(a)は
図1のX-X断面図であり、(b)は
図1のY-Y断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態における、(a)は
図1のX-X断面図であり、(b)は
図1のY-Y断面図である。
【
図4】従来のドアウェザストリップの取付け状態を示す断面図である(特許文献1)。
【
図5】従来のドアウェザストリップの取付け状態を示す断面図である(特許文献2)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、ドアウェザストリップ30が装着された自動車のフロントドア右側のインナパネル10を車内側から見た正面図である。インナパネル10は、ドアの構成要素の一部であり、図示しない金属製のアウタパネルよりも車内側(
図1における紙面表側)に配設される。インナパネル10は、プレス加工により車内側突出部11がアウタパネル接合部12より車内側に突出し、車内側突出部11とアウタパネル接合部12との間には、段差部13が形成されている。なお、特許請求の範囲の請求項1の「インナパネルの外周縁側の枠」とは、インナパネル10の段差部13が形成する枠15をいう。また、インナパネル10には複数の孔部が形成され、オーディオ装置のスピーカや窓ガラス昇降装置などの各種の付属部品が、アウタパネルとの間に取付けられる。
【0030】
ドアウェザストリップ30は、
図2または
図3に示すように、中空シール部31と取付基部32から構成され、インナパネル10の枠15に相対するようにループ状(周形状)に形成される(
図1)。ドアウェザストリップ30は、インナパネル10の段差部13、場所によっては、段差部13とアウタパネル接合部12に跨って装着される。ドアウェザストリップ30の取付基部32には後述するインナパネル10の取付部20と係合する係合部33が形成されている。なお、特許請求の範囲の請求項1の「係合部の枠」とは、インナパネル10に装着される前のドアウェザストリップ30の係合部33において、インナパネル10の外周縁側の枠15と当接する部分が形成する枠34のことをいう。ドアウェザストリップ30は、樹脂又はゴムを押出成形法によって成形した後に所定の長さに切断される。そして、例えば、
図1における屈曲度合いの大きな箇所では型成形方法により両側の押出成形部が接続される。なお、押出成形部同士が接続される場合もある。
【0031】
本発明において、ドアウェザストリップ30は、引き伸ばされた状態でインナパネル10に取付けられる。ドアウェザストリップ30の係合部33の枠34のサイズは、インナパネル10の段差部13が形成する枠15(インナパネル10の外周縁側の枠)のサイズより小さいが、その程度は、ドアウェザストリップ30の枠34をインナパネル10の枠15と比較して、1%乃至3%小さく形成することが望ましい。1%未満の場合は、引き伸ばされる程度が小さいので、ドアウェザストリップ30の係合部33が後述するインナパネル10の取付部20から外れる可能性がある。また、3%を越える場合は、引き伸ばされる程度が大きくなり、ドアウェザストリップ30の係合部33をインナパネル10の取付部20に取付け、若しくは取外し難くなる。
【0032】
本発明の第1の実施形態について、
図1と
図2に基づいて説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態に使用されるドアウェザストリップ30をインナパネル10に取付けた、(a)は
図1のX-X断面図であり、(b)は
図1のY-Y断面図である。また、本第1の実施形態は、インナパネル10に取付部20を別部材として取付ける形態である。なお、
図1は、自動車のフロントドア右側のインナパネル10の正面図であるが、本発明は、フロントドア右側のみならず、フロントドア左側及び両リヤドアにも適用することができる。
【0033】
インナパネル10のAからHの部分には、ドアウェザストリップ30の係合部33と係合する取付部20が8箇所配設されている。なお、取付部20は8箇所には限定されず、その配設場所もAからHの部分には限定されない。ただし、コーナー部に該当するA、C、E、及びGには必ず配設する。
【0034】
ここで、Cはインナパネル10の断面形状において窓枠部分が傾斜しており、CはB-D間において、Bより車外側に位置している。また、Dはインナパネル10の断面形状において車外側に凸状に膨みがある部位であり、C-E間においてDは車外側に位置している。また、Hはドアウェザストリップ30の形状が逆Rになる、すなわち、
図1の二点鎖線の枠Zで示した拡大図において、上下のドアウェザストリップ30の略直線部のなす角度γが、枠の内側において180°を越える場合である。
【0035】
取付部20は、ドアウェザストリップ30の係合部33と係合する断面が長方形の取付部側柱部21と、断面が略二等辺三角形状のクリップ部22と、取付部側柱部21とクリップ部22の間に中間部23を有している。取付部側柱部21は中間部23より幅広である。また、取付部側柱部21は各部位におけるインナパネル10の前後若しくは上下方向に延びる部材であり、インナパネル10には取付部20のクリップ部22を挿入するための孔部14が形成されている。取付部20がインナパネル10に差し込まれて取付けられると、クリップ部22はインナパネル10を貫通し、中間部23がインナパネル10の孔部14に位置する。A、B、E、F及びGは、
図2(a)に示す断面が長方形の取付部側柱部21であり、C、D及びHでは、
図2(b)に示す断面が長方形の取付部側柱部21の先端部分に車外側に突き出た鍵状の返し部24が形成されている。取付部20は、熱可塑性エラストマー(TPE)を使用した。
【0036】
ドアウェザストリップ30の中空シール部31は、ドア閉時に車体のドア開口縁と弾接し、防水対策及び遮音対策の効果を奏する。取付基部32には、インナパネル10の取付部20の取付部側柱部21と係合する係合部33が溝部35として形成されている。また、係合部33の断面形状は、インナパネル10の取付部20のC、D及びHに対応する部位については、溝部35の先端部分にインナパネル10の取付部20の鍵状の返し部24に対応する凹部36が形成されている。ドアウェザストリップ30の材料には、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)を使用した。
【0037】
ドアウェザストリップ30は、引き伸ばされた状態でインナパネル10に取付けられるので、ドアウェザストリップ30には、収縮力が働き、例えば、Cにおいては、BとDとの間でドアウェザストリップ30には、上下方向と共に車内側方向に収縮する力が加わる。つまり、Cは、BとDより車外側にあるので、ドアウェザストリップ30の車内側方向の収縮力は、BとDの間を直線にしようと作用し、所謂ショートカット化してCから外れようとする力となる。その結果、ドアウェザストリップ30の係合部33が、インナパネル10の取付部20から外れる可能性がある。そのため、C、D及びHにおいては、取付部側柱部21の先端部に車外側に突き出た鍵状の返し部24を形成し、ドアウェザストリップ30の係合部33に返し部24に対応する凹部36を形成することにより、返し部24と凹部36が係合し、ドアウェザストリップ30の係合部33がインナパネル10の取付部20から外れることを防止することができる。これは、D及びHにおいても同様である。
【0038】
なお、インナパネル10の断面形状において傾斜を有する部分やドアウェザストリップ30が湾曲して取付けられる部分であっても、その傾斜や湾曲の程度が小さい場合や、ドアウェザストリップ30の形状は逆Rとなるが、角度γが180°に極めて近い場合であり、ショートカット化によるドアウェザストリップ30の係合部33がインナパネル10の取付部20から外れる可能性が低い場合は、C、D及びHにおいても取付部20及びドアウェザストリップ30の係合部33の断面形状は、
図2(a)としてもよい。
【0039】
また、HとGの間において、上下の直線部に対して角度を有して弧形状になだらかに繋がる部分があるが、本実施形態では、その部分にはインナパネル10に取付部20は取付けられていない。これは、上下の直線部のなす角度が約150°であり、「コーナー部」に該当しないからである。ただし、インナパネル10の枠15とドアウェザストリップ30の係合部33との係合をより確実にするために、この部分に
図2(a)または
図2(b)の取付部20を取付けてもよい。
【0040】
ドアウェザストリップ30の係合部33のインナパネル10の取付部20への取付けは、C、D及びHの取付部20では、係合部33の溝部35を少し大きく広げて、取付部20の返し部24及び取付部側柱部21を挿入する。一方、他の部分では取付部側柱部21をドアウェザストリップ30の係合部33の溝部35に挿入する。
【0041】
ドアウェザストリップ30のインナパネル10への装着は、例えば、E、F及びGの位置でドアウェザストリップ30の係合部33をインナパネル10の取付部20に挿入し、インナパネル10の前後及び上方向にドアウェザストリップ30を少し引っ張りながらD、Hの順に係合部33を取付部20に係合させ、さらに、C、Bの順に係合部33を取付部20に係合させ、最後にAに係合させることにより取付け中に係合部33が取付部20から外れることを防止しつつ取付け作業を効率よく行うことができる。また、ドアウェザストリップ30をインナパネル10から取外す場合は、その逆に行うことにより、容易に取外すことができる。なお、係合部33と取付部20の係合の順番は、上記の順には限定されない。したがって、取付け中に係合部33が取付部20から外れることを防止しつつ取付け、取外しの作業を効率よく行うことができ、且つ装着後の使用においてもドアウェザストリップ30のインナパネル10から外れることを防止することができる。
【0042】
なお、ドアウェザストリップ30の係合部33については、インナパネル10の取付部20の取付部側柱部21、返し部24に対応した形状について説明したが、全周にわたって溝部35及び凹部36を形成した形状としてもよい。
【0043】
次に、本発明の第2の実施形態について、
図3に基づいて説明する。本第2の実施形態では、インナパネル10の段差部13の全周に取付部20を別部材として全周に渡って取付け、ドアウェザストリップ30の取付基部32の係合部33と取付部20を係合する形態である。
図3の(a)は
図1のX-X断面図であり、(b)は
図1のY-Y断面図である。取付部20は熱可塑性エラストマー(TPE)を使用した。
【0044】
図1のC、D及びHに該当する部分の断面は、
図3(b)であり、C、D及びHを除く部分の断面は
図3(a)である。
【0045】
なお、本第2の実施形態では、L字形状の取付部20の第1辺部25側をインナパネル10の段差部13に、L字形状の取付部20の第2辺部26側をインナパネル10のアウタパネル接合部12側に当接するように取付ける。
図3(a)に示すように、
図1のC、D及びH以外の取付部20は、断面がL字形状を有するL字形状を有しており、L字形状の第1辺部25の先端部分には、L字形状の内側方向に第1辺部25からから略90°(第2辺部26と略平行)方向に鍵状の第1返し部27が形成されている。したがって、本第2の実施形態における特許請求の範囲の請求項1の「インナパネルの外周縁側の枠」は、L字形状の第1辺部25が全周において形成する枠になる。
【0046】
一方、
図1のC、D及びHの取付部20では、
図3(b)に示すように、第1辺部25の先端部に形成された鍵状の第1返し部27と共に、第2辺部26の先端部に、L字形状の内側方向に第2辺部26から略90°(第1辺部25と略平行)方向に鍵状の第2返し部28が形成されている。
【0047】
ドアウェザストリップ30の取付基部32には、中空シール部31の下部分から両側に突き出た第1突出部37と第2突出部38が形成されている。第1突出部37と第2突出部38の先端部は、略90°に尖った形状になっている。
【0048】
図1のC、D及びHを除くA、B、E、F及びGの部分では、ドアウェザストリップ30の取付基部32をインナパネル10の取付部20に係合させると、取付部20のL字形状の第1辺部25及び第1辺部25の先端部分に形成された鍵状の第1返し部27の内面と、ドアウェザストリップ30の取付基部32の第1突出部37が当接し、取付部20のL字形状の第2辺部26とドアウェザストリップ30の取付基部32の第2突出部38が当接する。したがって、ドアウェザストリップ30における枠34は、第1突出部37の取付部20の第1辺部25側の面となる。
【0049】
一方、
図1のC、D及びHの部分では、取付部20のL字形状の第1辺部25及び第1辺部25の先端部に形成された鍵状の第1返し部27の内面と、ドアウェザストリップ30の取付基部32の第1突出部37が当接する共に、取付部20のL字形状の第2辺部26及び第2辺部26の先端部分に形成された鍵状の第2返し部28の内面と、ドアウェザストリップ30の取付基部32の第2突出部38が当接する。この取付部20のL字形状の第2返し部28の内面と、ドアウェザストリップ30の取付基部32の第2突出部38の当接により、ショートカット化によるドアウェザストリップ30の取付基部32が取付部20から外れることを防止することができる。
【0050】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0051】
例えば、本実施形態では、ドアウェザストリップ30を構成する材料として動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)を使用したが、TPVの他に、ゴム材料としてのEPDMや他の熱可塑性エラストマー、軟質合成樹脂等で形成してもよい。熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)が耐候性、リサイクル、コスト等の観点から望ましい。
【0052】
例えば、本第2の実施形態では、取付部20は熱可塑性エラストマー(TPE)を使用したが、他の樹脂でもよく、ゴム材料でもよい。
【0053】
例えば、上記の第1及び第2の実施形態では、取付部20を共に別部材として、インナパネル10に取付けて形成したが、インナパネル10を加工して形成してもよい。第2の実施形態では、インナパネル10の段差部13に第1返し部27を形成し、インナパネル10のアウタパネル接合部12に第2返し部28をすることにより、上記の効果を奏することができる。なお、第2の実施形態において、インナパネル10を加工して取付部20を形成する場合は、インナパネル10の外周縁側の枠15は、インナパネル10の段差部13になる。
【0054】
例えば、第2の実施形態では、取付部20を別部材として、インナパネル10の全周に取付けて形成したが、インナパネル10を部分的に加工し、L字形状を有する取付部20のL字形状の第1辺部25がインナパネル10の段差部13が形成する枠15と一致するように実施例1のAからHの位置に嵌め込んでもよい。この場合、C、D、及びHでは
図3(b)の取付部20とし、その他の部位A、B、E、F及びGでは
図3(a)の取付部20とすることができる。
【符号の説明】
【0055】
10 インナパネル
13 段差部
15 枠
20 取付部
21 取付部側柱部
24 返し部
27 第1返し部
28 第2返し部
30 ドアウェザストリップ
31 中空シール部
32 取付基部
33 係合部
34 枠
35 溝部
36 凹部
37 第1突出部
38 第2突出部