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特開2023-142265画像形成装置及びプロセスカートリッジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142265
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】画像形成装置及びプロセスカートリッジ
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20230928BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20230928BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G03G9/097 372
G03G9/08
G03G21/00 318
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049078
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木越 陽一
(72)【発明者】
【氏名】是永 次郎
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 陽平
(72)【発明者】
【氏名】蜂屋 祥子
(72)【発明者】
【氏名】金子 諒太
【テーマコード(参考)】
2H134
2H500
【Fターム(参考)】
2H134GA01
2H134GB02
2H134HD17
2H134KB13
2H500AA10
2H500CA36
2H500CA40
2H500EA42D
2H500FA10
(57)【要約】
【課題】表面の凹凸が大きな記録媒体への転写性の悪化を抑制する画像形成装置を提供すること。
【解決手段】電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した電子写真感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、電子写真感光体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、電子写真感光体の表面に接触し、電子写真感光体の表面を清掃するクリーニングブレードを有する清掃手段と、を備え、静電荷像現像用トナーが脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を有するか、及び/又は、電子写真感光体上に脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を塗布する塗布手段を備える画像形成装置。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光層を有する電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により前記電子写真感光体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成された前記トナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記電子写真感光体の表面に接触し、前記電子写真感光体の表面を清掃するクリーニングブレードを有する清掃手段と、
を備え、以下の条件(1)及び条件(2)の少なくとも一方を満たす、画像形成装置。
条件(1):前記静電荷像現像用トナーが脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を有する。
条件(2):前記電子写真感光体上に脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を塗布する塗布手段を備える。
【請求項2】
前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、及び硫黄系酸化防止剤からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤と、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びヒンダードアミン系酸化防止剤からなる群より選択される1種以上と、を含む、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記酸化防止剤が、前記フェノール系酸化防止剤と、前記硫黄系酸化防止剤と、を含む、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記固体潤滑剤における前記酸化防止剤の含有量が、前記固体潤滑剤の全質量に対して、1質量%以上50質量%以下である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記酸化防止剤がフェノール系酸化防止剤を含み、
前記フェノール系酸化防止剤の含有量が、前記酸化防止剤の全質量に対して、5質量%以上100質量%以下である、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記電子写真感光体の表面に接触し、前記電子写真感光体の表面を清掃するクリーニングブレードを有する清掃手段と、
を備え、以下の条件(1)及び条件(2)の少なくとも一方を満たし、画像形成装置に着脱する、プロセスカートリッジ。
条件(1):前記静電荷像現像用トナーが脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を有する。
条件(2):前記電子写真感光体上に脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を塗布する塗布手段を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、像担持体と、像担持体に形成された静電潜像を現像する現像装置を備える画像形成装置において、前記像担持体の表面層に潤滑剤の微粒子が分散されているとともに、前記現像装置で使用する現像剤中に潤滑剤が添加されている画像形成装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、感光体上に静電潜像を形成し、トナーを用いてその静電潜像を顕像化した後、トナー像を媒体に転写、定着して可視像を得る電子写真式画像形成方法であって、前記感光体上の転写残トナーを前記感光体上から取り除くクリーニング工程を有しており、前記クリーニング工程においては、感光体上の転写残トナーを除去する方式が板状の弾性体であるクリーニングブレードを用いたブレードクリーニング方式であり、該クリーニングブレードの10℃~30℃における損失正接tanδが0.2以下であり、かつ感光体上に液体潤滑剤を塗布することを特徴とする画像形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-062678号公報
【特許文献2】特開2008-070499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子写真感光体、帯電手段、静電荷像形成手段、収容した静電荷像現像用トナーを用いて静電荷像を現像する現像手段、転写手段、及びクリーニングブレードを有する清掃手段を備える画像形成装置において、静電荷像現像用トナーが脂肪酸金属塩のみを含む固体潤滑剤を有するか、又は、電子写真感光体上に脂肪酸金属塩のみを含む固体潤滑剤を塗布する塗布手段を備える場合に比べて、表面の凹凸が大きな記録媒体への転写性の悪化を抑制する画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
【0007】
<1>
感光層を有する電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により前記電子写真感光体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成された前記トナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記電子写真感光体の表面に接触し、前記電子写真感光体の表面を清掃するクリーニングブレードを有する清掃手段と、
を備え、以下の条件(1)及び条件(2)の少なくとも一方を満たす、画像形成装置。
条件(1):前記静電荷像現像用トナーが脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を有する。
条件(2):前記電子写真感光体上に脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を塗布する塗布手段を備える。
【0008】
<2>
前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、及び硫黄系酸化防止剤からなる群より選択される1種以上を含む、<1>に記載の画像形成装置。
<3>
前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤と、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びヒンダードアミン系酸化防止剤からなる群より選択される1種以上と、を含む、<1>に記載の画像形成装置。
<4>
前記酸化防止剤が、前記フェノール系酸化防止剤と、前記硫黄系酸化防止剤と、を含む、<3>に記載の画像形成装置。
<5>
前記固体潤滑剤における前記酸化防止剤の含有量が、前記固体潤滑剤の全質量に対して、1質量%以上50質量%以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の画像形成装置。
<6>
前記酸化防止剤がフェノール系酸化防止剤を含み、
前記フェノール系酸化防止剤の含有量が、前記酸化防止剤の全質量に対して、5質量%以上100質量%以下である、<5>に記載の画像形成装置。
【0009】
<7>
静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記電子写真感光体の表面に接触し、前記電子写真感光体の表面を清掃するクリーニングブレードを有する清掃手段と、
を備え、以下の条件(1)及び条件(2)の少なくとも一方を満たし、画像形成装置に着脱する、プロセスカートリッジ。
条件(1):前記静電荷像現像用トナーが脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を有する。
条件(2):前記電子写真感光体上に脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を塗布する塗布手段を備える。
【発明の効果】
【0010】
<1>、又は<6>に係る発明によれば、電子写真感光体、帯電手段、静電荷像形成手段、収容した静電荷像現像用トナーを用いて静電荷像を現像する現像手段、転写手段、及びクリーニングブレードを有する清掃手段を備え、静電荷像現像用トナーが脂肪酸金属塩のみを含む固体潤滑剤を有するか、又は、電子写真感光体上に脂肪酸金属塩のみを含む固体潤滑剤を塗布する塗布手段を備える場合に比べて、表面の凹凸が大きな記録媒体への転写性の悪化を抑制する画像形成装置が提供される。
<2>又は<3>に係る発明によれば、固体潤滑剤における酸化防止剤としてヒンダードアミン系酸化防止剤のみを用いた場合に比べて、表面の凹凸が大きな記録媒体への転写性の悪化を抑制する画像形成装置が提供される。
<4>に係る発明によれば、固体潤滑剤における酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤又はヒンダードアミン系酸化防止剤とを併用した場合に比べて、表面の凹凸が大きな記録媒体への転写性の悪化を抑制する画像形成装置が提供される。
<5>に係る発明によれば、酸化防止剤の含有量が、脂肪酸金属塩の質量に対して、5質量%未満又は50質量%超である場合に比べて、表面の凹凸が大きな記録媒体への転写性の悪化を抑制する画像形成装置が提供される。
<7>に係る発明によれば、電子写真感光体、収容した静電荷像現像用トナーを用いて静電荷像を現像する現像手段、及びクリーニングブレードを有する清掃手段を備え、静電荷像現像用トナーが脂肪酸金属塩のみを含む固体潤滑剤を有するか、又は、電子写真感光体上に脂肪酸金属塩のみを含む固体潤滑剤を塗布する塗布手段を備える場合に比べて、表面の凹凸が大きな記録媒体への転写性の悪化を抑制するプロセスカートリッジが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図2】本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0013】
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0014】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0015】
<画像形成装置>
本実施形態に係る画像形成装置は、感光層を有する電子写真感光体と、前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により前記電子写真感光体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、前記電子写真感光体の表面に形成された前記トナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、前記電子写真感光体の表面に接触し、前記電子写真感光体の表面を清掃するクリーニングブレードを有する清掃手段と、を備え、以下の条件(1)及び条件(2)の少なくとも一方を満たす、画像形成装置である。
条件(1):前記静電荷像現像用トナーが脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を有する。
条件(2):前記電子写真感光体上に脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を塗布する塗布手段を備える。
【0016】
本実施形態に係る画像形成装置において、電子写真感光体を、単に「感光体」ともいい、静電荷像現像用トナーを、単に「トナー」ともいい、静電荷像現像剤を、単に「現像剤」ともいう。
【0017】
クリーニングブレードによる感光体の表面の清掃を安定に行うために、感光体上に固体潤滑剤が供給されることがある。感光体上に固体潤滑剤を供給する方法としては、例えば、脂肪酸金属塩をトナーに用いる方法、又は、感光体上に脂肪酸金属塩を塗布する方法が知られている。しかしながら、感光体上に供給された脂肪酸金属塩が、放電等により脂肪酸部分が切断されると、脂肪酸部分が切断された脂肪酸金属塩の残部に起因して、エンボス加工が施されたエンボス紙等の表面に凹凸が大きな記録媒体への画像の転写性(以下、エンボス紙への転写性ともいう)を低下させてしまうことがある。
【0018】
上述のように、エンボス紙への転写性には、脂肪酸金属塩の劣化が影響している。脂肪酸金属塩の劣化は、転写時の放電等によりラジカルが発生し、その影響を受けて、大気中の酸素により脂肪酸の長鎖のC-C結合が開裂し、切断されてしまうことによるものと推測される。
本実施形態に係る画像形成装置では、上述のように、脂肪酸金属塩と共に酸化防止剤を含む固体潤滑剤を用いる。酸化防止剤は、ラジカルを失活させる機能、酸素によるC-C結合の開裂を抑制する機能等を有することから、固体潤滑剤中に併存する脂肪酸金属塩の劣化を効果的に抑制し得るものと推測される。
よって、本実施形態に係る画像形成装置によれば、表面の凹凸が大きな記録媒体への転写性の悪化を抑制しうるものと推認される。
【0019】
本実施形態に係る画像形成装置の構成を詳しく説明する。
【0020】
本実施形態に係る画像形成装置は、感光層を有する電子写真感光体と、前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により前記電子写真感光体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、前記電子写真感光体の表面に形成された前記トナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、前記電子写真感光体の表面に接触し、前記電子写真感光体の表面を清掃するクリーニングブレードを有する清掃手段と、を備える。
そして、前記静電荷像現像用トナーが脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を有する(条件(1))、及び、前記電子写真感光体上に脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を塗布する塗布手段を備える(条件(2))、の少なくとも一方を満たす。
【0021】
つまり、本実施形態に係る画像形成装置は、静電荷像現像用トナーが脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を有すること、及び、電子写真感光体上に脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を塗布する塗布手段を備えること、の少なくとも一方にて、電子写真感光体上に脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を供給しうる。言い換えれば、現像手段に収容される静電荷像現像剤が、脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を有する静電荷像現像用トナーを含む場合、かかる現像手段が、電子写真感光体上に脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を供給する手段も兼ねる。静電荷像現像用トナーが脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を有する場合、現像手段により、静電荷像現像用トナーが電子写真感光体の表面に付与されることで、電子写真感光体上に脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤が供給される。
【0022】
本実施形態に係る画像形成装置は、感光体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;感光体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前に感光体の表面に除電光を照射して除電する除電装置を備える装置等の周知の画像形成装置に適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写装置は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、電子写真感光体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写装置(一次転写手段の一例)と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写装置(二次転写手段の一例)と、を有する構成が適用される。
【0023】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体、現像手段、及び清掃手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。
【0024】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0025】
以下、図1を用いて、既述の条件(2)を満たす本実施形態に係る画像形成装置について説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0026】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の画像形成面側には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段の一例)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーの供給がなされる。
【0027】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0028】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、感光体1Yの表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置(潤滑剤塗布手段の一例)6Y、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去するクリーニングブレード7Y-1を有する感光体クリーニング装置(清掃手段の一例)7Yが順に配置されている。
【0029】
また、一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0030】
ここで、潤滑剤塗布装置6Y及び感光体クリーニング装置7Yについて詳細に説明する。
潤滑剤塗布装置6Yは、固体潤滑剤を感光体1Yの表面に塗布しうる構成であれば、特に制限はない。潤滑剤塗布手段6Yとしては、例えば、固体潤滑剤と、かかる固体潤滑剤及び感光体1Yの表面(周面)に接触し感光体1Yに固体潤滑剤を付与する回転ブラシと、を備えている例が挙げられる。感光体1Yの回転に伴って前記回転ブラシが回転し、前記回転ブラシを介して固体潤滑剤が感光体1Yの表面に塗布される。
【0031】
潤滑剤塗布装置6Yによる固体潤滑剤の供給量は、例えば、感光体1Yの1000回転当たりの量として、5mg以上20mg以下が望ましく、8mg以上15mgがより望ましい。
【0032】
感光体クリーニング装置7Yは、感光体1Yの表面(周面)に圧接し、感光体1Yの表面から転写後の残留トナーを含む残留物を擦り取る(掻き取る)クリーニングブレード7Y-1を備えている。
クリーニングブレード7Y-1は、板状(ブレード状)の部材であり、例えば、弾性材料で構成される。その弾性材料としては、例えば、熱硬化型ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム等が挙げられる。
クリーニングブレード7Y-1は、例えば、感光体1Yの近位の側にある端を感光体1Yの回転方向とは反対に向けた状態で配置される。
クリーニングブレード7Y-1の接触圧(感光体1Yの半径方向にかかる圧力)は、例えば、9.8mN/mm以上49mN/mm以下(1.0gf/mm以上5.0gf/mm以下)に設定される。
【0033】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が-600V乃至-800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば、20℃における体積抵抗率:1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層が形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0034】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として可視像(現像像)化される。
【0035】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0036】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写位置へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用され、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μAに制御されている。
【0037】
トナー画像を中間転写ベルト20の表面に転写した後の感光体1Yは回転を続け、感光体1Yの回転に伴って、潤滑剤塗布装置6Yが備える回転ブラシが回転し、該回転ブラシを介して潤滑剤が感光体1Yの表面に塗布(供給)される。
【0038】
潤滑剤が塗布された感光体1Yは更に回転を続け、回転する感光体1Yと、感光体クリーニング装置7Yが備えるクリーニングブレード7Y-1と、が接触することにより、感光体1Yの表面から転写後の残留トナーを含む残留物が擦り取られ除去される。また、感光体1Yから除去されたトナーはトナー回収機構(図示せず)により回収される。
【0039】
また、第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー画像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0040】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と同極性の(-)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。なお、この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0041】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0042】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙の他、エンボス紙なども挙げられる。記録媒体は記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
【0043】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0044】
図1に示す画像記録装置においては、既述の条件(2)を満たすために、潤滑剤塗布装置6Y、6M、6C、6Kのうち少なくとも一部に、脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を適用すればよい。エンボス紙への転写性の悪化をさらに抑制する観点からは、潤滑剤塗布装置6Y、6M、6C、6Kの全てに、脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を適用し、感光体1Y、1M、1C、1Kの全ての表面に、脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を塗布することが好ましい。
なお、現像装置4Y、4M、4C、4Kに収容される静電荷像現像剤のそれぞれは、脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を有する静電荷像現像用トナーを含む必要はないが、かかる静電荷像現像用トナーを含んでいてもよい。現像装置4Y、4M、4C、4Kに収容される静電荷像現像剤のうち一部又は全部が、脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を有する静電荷像現像用トナーを含む場合、既述の条件(2)と共に、条件(1)を満たすこととなる。
【0045】
図1に示される画像形成装置は、潤滑剤塗布装置とクリーニング装置とが別個に設けられた構成であったが、実施形態はこの構成に限定されるものではない。
例えば、クリーニング装置の内部に潤滑剤塗布装置が組み込まれた構成であってもよい。なお、この構成の場合、電子写真感光体の表面における固体潤滑剤の分散性を高める点から、潤滑剤塗布装置はクリーニングブレードよりも電子写真感光体の回転方向の上流側に設けられていることが好ましい。
【0046】
図1に示される画像形成装置は、既述の条件(2)を満たす画像形成装置であることから、潤滑剤塗布装置(潤滑剤塗布手段の一例)を備えた構成であったが、既述の条件(1)を満たす画像形成装置の場合は、潤滑剤塗布装置(潤滑剤塗布手段の一例)を備える必要はない。既述の条件(1)を満たす画像形成装置としては、例えば、図1に示す画像形成装置から潤滑剤塗布装置(潤滑剤塗布手段の一例)を除いた以外は、同様の構成を有する画像形成装置が挙げられる。この場合、現像装置4Y、4M、4C、4Kに収容される静電荷像現像剤の一部又は全部が、脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を有する静電荷像現像用トナーを含む。つまり、脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を有する静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤を収容する、現像装置4Y、4M、4C、4Kの一部又は全部は、電子写真感光体上に脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を供給する手段を兼ねることとなる。
【0047】
なお、図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【0048】
<プロセスカートリッジ/トナーカートリッジ>
続いて、本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、前記電子写真感光体の表面に接触し、前記電子写真感光体の表面を清掃するクリーニングブレードを有する清掃手段と、を備え、以下の条件(1)及び条件(2)の少なくとも一方を満たし、画像形成装置に着脱する、プロセスカートリッジである。
条件(1):前記静電荷像現像用トナーが脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を有する。
条件(2):前記電子写真感光体上に脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を塗布する塗布手段を備える。
【0049】
なお、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、その他、必要に応じて、例えば、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0050】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0051】
以下、図2を用いて、既述の条件(2)を満たす本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、感光体クリーニング装置113(清掃手段の一例)、及び潤滑剤塗布装置(潤滑剤塗布手段の一例)114を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
【0052】
ここで、潤滑剤塗布装置(潤滑剤塗布手段の一例)113は、脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を感光体107の表面に塗布しうる構成であれば、特に制限はない。潤滑剤塗布装置113は、図2に示すように、脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤113Sと、固体潤滑剤113S及び感光体107の表面(周面)に接触し感光体107に潤滑剤を付与する回転ブラシ113Bと、を備えている。
また、感光体クリーニング装置114は、感光体107の表面(周面)に接触して残留トナーを擦り取る(掻き取る)クリーニングブレード114-1を備えている。
【0053】
また、現像装置111に収容される静電荷像現像剤は、脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を有する静電荷像現像用トナーを含む必要はないが、かかる静電荷像現像用トナーを含んでいてもよい。現像装置111に収容されるに収容される静電荷像現像剤が、脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む固体潤滑剤を有する静電荷像現像用トナーを含む場合、既述の条件(2)と共に、条件(1)を満たすこととなる。
【0054】
図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【0055】
[固体潤滑剤]
本実施形態における固体潤滑剤について説明する。
本実施形態において、固体潤滑剤は、脂肪酸金属塩と酸化防止剤とを含む。
【0056】
(脂肪酸金属塩)
脂肪酸金属塩における脂肪酸は、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。脂肪酸金属塩における脂肪酸としては、炭素数10以上25以下(好ましくは、12以上22以下)の脂肪酸が挙げられる。なお、前記脂肪酸の炭素数は、カルボキシ基の炭素を含む。
脂肪酸金属塩における金属としては、2価の金属がよい。脂肪酸金属塩における金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、バリウム、亜鉛が挙げられ、これらの中でも、亜鉛が好ましい。
【0057】
脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸の金属塩、パルミチン酸の金属塩、ラウリン酸の金属塩、オレイン酸の金属塩、リノール酸の金属塩、リシノール酸の金属塩などが挙げられる。これらの中でも、脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸の金属塩及びラウリン酸の金属塩から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ステアリン酸亜鉛及びラウリン酸亜鉛から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、ステアリン酸亜鉛を含むことがさらに好ましい。
【0058】
固体潤滑剤に含まれる脂肪酸金属塩は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
(酸化防止剤)
固体潤滑剤に含まれる酸化防止剤は、酸化防止能を有し、且つ、脂肪酸金属塩と共に固体潤滑剤を構成し得るものであれば、特に制限はない。なお、固体潤滑剤を構成する観点から、酸化防止剤は25℃において粉体(つまり、固体)であることが好ましい。
酸化防止剤は、脂肪酸金属塩の劣化防止能、固体潤滑剤への適用性、及び入手容易性の観点から、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びヒンダードアミン系酸化防止剤からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましく、中でも、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びヒンダードアミン系酸化防止剤からなる群より選択される1種以上を含むことがより好ましい。
【0060】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,4-ジ-メチル-6-t-ブチルフェノール、ブチルヒドロキシフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ビスフェノールA、DL-α-トコフェロール、スチレン化フェノール、スチレン化クレゾール、3,5-ジ-t-ブチルヒドロキシベンズアルデヒド、2,6-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシメチルフェノール、2,6-ジ-s-ブチルフェノール、2,4-ジ-t-ブチルフェノール、3,5-ジ-t-ブチルフェノール、o-n-ブトキシフェノール、o-t-ブチルフェノール、m-t-ブチルフェノール、p-t-ブチルフェノール、o-イソブトキシフェノール、o-n-プロポキシフェノール、o-クレゾール、4,6-ジ-t-ブチル-3-メチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、2,3,5,6-テトラメチルフェノール、3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオニック酸ステアリルエステル、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレン、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルフォスフェートル、o-n-プロポキシフェノール、o-クレゾール、4,6-ジ-t-ブチル-3-メチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、2,3,5,6-テトラメチルフェノール、3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオニック酸ステアリルエステル、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレン、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルフォスフェート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシルベンジルベンゼン、n-オクタデシル-3-(3’,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-t-ブチル-6(3’-t-ブチル-5’-メチル-2-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、ハイドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、テトラメチルハイドロキノン等が挙げられる。
中でも、フェノール系酸化防止剤としては、エンボス紙への転写性の悪化を抑制する観点から、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が好ましい。
【0061】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリメチルホスファイト、トルエチルホスファイト、トリ-n-ブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリストリデシルホスファイト、トリセチルホスファイト、ジラウリルハイドロジエンホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス〔3-メチル-6-t-(ブチル)フェニル-ジ-トリデシル〕ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジトリデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビスノニルフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、ジフェニルオクチルホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ジ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等の亜リン酸エステル化合物が挙げられる。
中でも、リン系酸化防止剤としては、エンボス紙への転写性の悪化を抑制する観点から、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等が好ましい。
【0062】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、3,3’-チオジプロピオン酸-ジ-n-ドデシル、3,3’-チオジプロピオン酸-ジ-ミリスチル、3,3’-チオジプロピオン酸-ジ-n-オクタデシル、2-メルカプトベンゾイミダゾール、ペンタエルスルトール-テトラキス-(β-ラウリル、ウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル-3,3’-チオジプロピオネート、3,3’-チオジプロピオン酸ジメチル、チオグリコール酸オクタデシル、フェノチアジン、β,β’-チオジプロピオン酸、チオグリコール酸-n-ブチル、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸-2-エチルヘキシル、チオグリコール酸イソオクチル、チオグリコール酸-n-オクチル、ジ-t-ドデシル-ジサルファイド、n-ブチルサルファイド、ジ-n-アミルジサルファイド、n-ドデシルサルファイド、n-オクタデシルサルファイド、p-チオクレゾール等が挙げられる。
中でも、リン系酸化防止剤としては、エンボス紙への転写性の悪化を抑制する観点から、3,3’-チオジプロピオン酸-ジ-n-ドデシル等が好ましい。
【0063】
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、1-{2-〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル}-4-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピリジン、8-ベンジル-7,7,9,9-テトラメチル-3-オクチル-1,3,8-トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン-2,4-ジオン、ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール、テトラキス(2,2,6,6-テト-テトラメチル-4-ピペリジル/デシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート等のヒンダードアミン構造を有する化合物が挙げられる。
また、ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、市販品を用いてもよい。ヒンダードアミン系酸化防止剤の市販品としては、(株)ADEKA製の、アデカスタブ LAシリーズが挙げられる。
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、分子量が1500以上の高分子量の化合物であってもよい。具体的には、(株)ADEKA製の、アデカスタブ LAシリーズにおけるアデカスタブ LA-63P、アデカスタブ LA-68等が挙げられる。
中でも、ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、エンボス紙への転写性の悪化を抑制する観点から、アデカスタブ LA-63P、アデカスタブ LA-68等が好ましい。
【0064】
固体潤滑剤に含まれる酸化防止剤は、エンボス紙への転写性の悪化をさらに抑制する観点から、フェノール系酸化防止剤と、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びヒンダードアミン系酸化防止剤からなる群より選択される1種以上と、を含むことが好ましい。
中でも、エンボス紙への転写性の悪化をさらに抑制する観点から、固体潤滑剤に含まれる酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤と、硫黄系酸化防止剤と、を含むことが好ましい。
すなわち、固体潤滑剤は、酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤と、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びヒンダードアミン系酸化防止剤からなる群より選択される1種以上と、を含むことが好ましく、フェノール系酸化防止剤と、硫黄系酸化防止剤と、を含むことがより好ましい。
酸化防止剤は、複数種を組み合わせることで、脂肪酸金属塩の劣化をより効果的に抑制し易い。本実施形態においては、上記のように、フェノール系酸化防止剤を1種目の酸化防止剤として用い、そこに、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びヒンダードアミン系酸化防止剤からなる群より選択される1種以上を併用することで、ラジカルを失活させる機能、酸素によるC-C結合の開裂を抑制する機能が効果的に発現し、固体潤滑剤中に併存する脂肪酸金属塩の劣化を効果的に抑制し得るものと推測される。
【0065】
固体潤滑剤に含まれる酸化防止剤に含有量は、エンボス紙への転写性の悪化を抑制する観点から、固体潤滑剤の全質量に対して、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上40質量%以下であることが更に好ましい。
【0066】
また、酸化防止剤がフェノール系酸化防止剤を含む場合、フェノール系酸化防止剤の含有量は、エンボス紙への転写性の悪化をさらに抑制する観点から、酸化防止剤の全質量に対して、1質量%以上100質量%以下であることが好ましく、10質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましい。
つまり、酸化防止剤がフェノール系酸化防止剤を含む場合、酸化防止剤の全質量に対して、フェノール系酸化防止剤を1質量%以上含むことが好ましく、10質量%以上含むことがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。酸化防止剤の全てがフェノール系酸化防止剤であってもよい。
【0067】
また、酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤と、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びヒンダードアミン系酸化防止剤からなる群より選択される1種以上と、を含む場合、フェノール系酸化防止剤の含有量は、酸化防止剤の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。
また、この場合、フェノール系酸化防止剤の含有量は、酸化防止剤の全質量に対して、90質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
【0068】
固体潤滑剤は、トナーに適用する場合、又は、潤滑剤塗布手段(例えば、潤滑剤塗布装置64)に適用する場合に応じて、その形状、大きさ等を適宜決定すればよい。
例えば、固体潤滑剤をトナーに適用する場合には、固体潤滑剤は外添剤であることが好ましい。外添剤としての固体潤滑剤は、脂肪酸金属塩粒子と酸化防止剤粒子とを、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディゲミキサー等の公知の混合機によって、トナー粒子と混合すればよい。このように外添剤としての固体潤滑剤は、脂肪酸金属塩粒子と酸化防止剤粒子との混合物を指す。
また、固体潤滑剤を潤滑剤塗布手段(例えば、潤滑剤塗布装置64)に適用する場合には、脂肪酸金属塩粒子と酸化防止剤粒子とを含む固体潤滑剤を圧縮成形したのちに加熱処理することで、固体潤滑剤の成形体(例えば、棒状成形体)を作製すればよい。なお、固体潤滑剤の成形体は保持部材に固定することで、潤滑剤塗布手段に設置される。
【0069】
-脂肪酸金属塩粒子-
脂肪酸金属塩粒子は、0.3μm以上8μm以下が好ましく、0.5μm以上5.0μm以下がより好ましい。
【0070】
脂肪酸金属塩粒子の体積平均粒子径は、次の方法により測定された値である。まず、測定対象となるトナーを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察する。そして、画像解析によって、測定対象となる潤滑剤粒子100個それぞれの円相当径を求め、その体積基準の分布における小径側から個数累積50%(50個目)の円相当径を体積平均粒子径とする。測定対象となる潤滑剤粒子100個の円相当径を求める画像解析は、解析装置(ERA-8900:エリオニクス(株)製)を用いて、倍率10,000倍の二次元画像を撮影し、画像解析ソフトWinROOF(三谷商事(株))を用いて、0.010000μm/pixel条件で投影面積を求め、式:円相当径=2√(投影面積/π)で円相当径を求める。
【0071】
脂肪酸金属塩粒子の含有量(外添量)は、トナー粒子100質量部に対して、0.02質量部以上5質量部以下が好ましく、0.05質量部以上3.0質量部以下がより好ましく、0.08質量部以上1.0質量部以下がさらに好ましい。
【0072】
[静電荷像現像剤]
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、トナーを少なくとも含む。
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、トナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤であってもよい。
【0073】
〔トナー〕
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を含む。本実施形態に係るトナーは、トナー粒子の他、必要に応じて、脂肪酸金属塩粒子、酸化防止剤粒子、それら以外の外添剤(以下、他の外添剤ともいう)等をさらに含んで構成される。
【0074】
<トナー粒子>
トナー粒子は、例えば、結着樹脂と、必要に応じて、着色剤と、離型剤と、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0075】
-結着樹脂-
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
(1)スチレンアクリル樹脂
結着樹脂としては、スチレンアクリル樹脂が好適である。
スチレンアクリル樹脂は、スチレン系単量体(スチレン骨格を有する単量体)と(メタ)アクリル系単量体((メタ)アクリロイル基を有する単量体、好ましくは(メタ)アクリオイルオキシ基を有する単量体)とを少なくとも共重合した共重合体である。スチレンアクリル樹脂は、例えば、スチレン類の単量体と前述の(メタ)アクリル酸エステル類の単量体との共重合体を含む。なお、スチレンアクリル樹脂におけるアクリル樹脂部分は、アクリル系単量体及びメタクリル系単量体のいずれか、又は、それを重合してなる部分構造である。また、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」のいずれをも含む表現である。
【0077】
スチレン系単量体としては、例えば、具体的には、スチレン、アルキル置換スチレン(例えば、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン等)、ハロゲン置換スチレン(例えば、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン等)、ビニルナフタレン等が挙げられる。スチレン系単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中で、スチレン系単量体としては、反応し易さ、反応の制御の容易さ、さらに入手性の点で、スチレンが好ましい。
【0078】
(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘプチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル等)、(メタ)アクリル酸アリールエステル(例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ジフェニルエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルフェニル、(メタ)アクリル酸ターフェニル等)、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸β-カルボキシエチル、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。(メタ)アクリル酸系単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、(メタ)アクリル系単量体のうち、これらの(メタ)アクリルエステルの中でも、トナーの定着性を高める観点から、炭素数2以上14以下(好ましくは炭素数2以上10以下、より好ましくは3以上8以下)のアルキル基を持つ(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。中でも、(メタ)アクリル酸n-ブチルが好ましく、アクリル酸n-ブチルが特に好ましい。
【0079】
スチレン系単量体と(メタ)アクリル系単量体との共重合比(質量基準、スチレン系単量体/(メタ)アクリル系単量体)は、特に制限はないが、90/10乃至60/40であることが好ましい。
【0080】
スチレンアクリル樹脂は、架橋構造を有していることが好ましい。架橋構造を有するスチレンアクリル樹脂は、例えば、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と架橋性単量体とを少なくとも共重合したものが好ましく挙げられる。
【0081】
架橋性単量体としては、例えば、2官能以上の架橋剤が挙げられる。
2官能の架橋剤としては、例えば,ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジ(メタ)アクリレート化合物(例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、デカンジオールジアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等)、ポリエステル型ジ(メタ)アクリレート、メタクリル酸2-([1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル等が挙げられる。
3官能以上の架橋剤としては、トリ(メタ)アクリレート化合物(例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等)、テトラ(メタ)アクリレート化合物(例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート等)、2,2-ビス(4-メタクリロキシ、ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルクロレンデート等が挙げられる。
中でも、架橋性単量体としては、トナーの定着性を高める観点から、2官能以上の(メタ)アクリレート化合物が好ましく、2官能(メタ)アクリレート化合物がより好ましく、炭素数6~20のアルキレン基を有する2官能(メタ)アクリレート化合物がさらに好ましく、炭素数6~20の直鎖アルキレン基を有する2官能(メタ)アクリレート化合物が特に好ましい。
【0082】
全単量体に対する架橋性単量体の共重合比(質量基準、架橋性単量体/全単量体)は、特に制限はないが、2/1,000乃至20/1,000であることが好ましい。
【0083】
スチレンアクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、トナーの定着性を高める観点から、40℃以上75℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0084】
スチレンアクリル樹脂の重量平均分子量は、トナーの保管安定性の観点から、5,000以上200,000以下が好ましく、10,000以上100,000以下がより好ましく、20,000以上80,000以下が特に好ましい。
【0085】
スチレンアクリル樹脂の作製方法は、特に制限はなく、種々の重合方法(例えば、溶液重合、沈殿重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等)が適用される。また、重合反応は、公知の操作(例えば、回分式、半連続式、連続式等)が適用される。
【0086】
(2)ポリエステル樹脂
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好適である。
ポリエステル樹脂としては、例えば、公知の非晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂と共に、結晶性ポリエステル樹脂を併用してもよい。但し、結晶性ポリエステル樹脂は、全結着樹脂に対して、含有量が2質量%以上40質量%以下(好ましくは2質量%以上20質量%以下)の範囲で用いることがよい。
【0087】
なお、樹脂の「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを指し、具体的には、昇温速度10(℃/min)で測定した際の吸熱ピークの半値幅が10℃以内であることを指す。
一方、樹脂の「非晶性」とは、半値幅が10℃を超えること、階段状の吸熱量変化を示すこと、又は明確な吸熱ピークが認められないことを指す。
【0088】
・非晶性ポリエステル樹脂
非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。なお、非晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0089】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0090】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0092】
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下がより好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM-M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0093】
非晶性ポリエステル樹脂は、周知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
なお、原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0094】
・結晶性ポリエステル樹脂
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合体が挙げられる。なお、結晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
ここで、結晶性ポリエステル樹脂は、結晶構造を容易に形成するため、芳香族を有する重合性単量体よりも直鎖状脂肪族を有する重合性単量体を用いた重縮合体が好ましい。
【0095】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸等の二塩基酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価のカルボン酸としては、例えば、芳香族カルボン酸(例えば1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸としては、これらジカルボン酸と共に、スルホン酸基を持つジカルボン酸、エチレン性二重結合を持つジカルボン酸を併用してもよい。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0096】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えば主鎖部分の炭素数が7以上20以下である直鎖型脂肪族ジオール)が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジオールとしては、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールが好ましい。
多価アルコールは、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のアルコールを併用してもよい。3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0097】
ここで、多価アルコールは、脂肪族ジオールの含有量を80モル%以上とすることがよく、好ましくは90モル%以上である。
【0098】
結晶性ポリエステル樹脂の融解温度は、50℃以上100℃以下が好ましく、55℃以上90℃以下がより好ましく、60℃以上85℃以下がさらに好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0099】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、6,000以上35,000以下が好ましい。
【0100】
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、非晶性ポリエステルと同様に、周知の製造方法により得られる。
【0101】
結着樹脂の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下がさらに好ましい。
【0102】
-着色剤-
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0103】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0104】
着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0105】
-離型剤-
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0106】
-離型剤-
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0107】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0108】
離型剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0109】
-その他の添加剤-
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0110】
-トナー粒子の特性等-
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0111】
トナー粒子の体積平均粒子径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0112】
なお、トナー粒子の各種平均粒子径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒子径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒子径を体積粒子径D16v、数粒子径D16p、累積50%となる粒子径を体積平均粒子径D50v、累積数平均粒子径D50p、累積84%となる粒子径を体積粒子径D84v、数粒子径D84pと定義する。
これらを用いて、体積粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2、数粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)1/2として算出される。
【0113】
トナー粒子の平均円形度としては、0.94以上1.00以下が好ましく、0.95以上0.98以下がより好ましい。
【0114】
トナー粒子の平均円形度は、(円相当周囲長)/(周囲長)[(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)]により求められる。具体的には、次の方法で測定される値である。
まず、測定対象となるトナー粒子を吸引採取し、扁平な流れを形成させ、瞬時にストロボ発光させることにより静止画像として粒子像を取り込み、その粒子像を画像解析するフロー式粒子像解析装置(シスメックス社製のFPIA-3000)によって求める。そして、平均円形度を求める際のサンプリング数は3500個とする。
なお、トナーが外添剤を有する場合、界面活性剤を含む水中に、測定対象となるトナー(現像剤)を分散させた後、超音波処理をおこなって外添剤を除去したトナー粒子を得る。
【0115】
<外添剤>
本実施形態に係るトナーは、既述のように、他の外添剤を含むことが好ましい。
他の外添剤としては、例えば、無機酸化物粒子が挙げられる。無機酸化物粒子としては、SiO、TiO、Al、CuO、ZnO、SnO、CeO、Fe、MgO、BaO、CaO、KO、NaO、ZrO、CaO・SiO、KO・(TiO)n、Al・2SiO、CaCO、MgCO、BaSO、MgSO等の粒子が挙げられる。上記の中でも、無機酸化物粒子としては、TiO粒子(チタニア粒子)、又はSiO粒子(シリカ粒子)が好ましい。
【0116】
無機酸化物粒子の個数平均粒子径は、トナーの流動性を高める観点から、5nm以上50nm以下であることが好ましく、10nm以上40nm以下であることがより好ましい。
【0117】
無機酸化物粒子の個数平均粒子径は、以下のようにして求める。
(1)トナーをメタノールに分散させ、室温(23℃)にて撹拌後、超音波バスにて処理し、トナーから外添剤を分離する。続いて、遠心分離により、トナー粒子を沈降させ、外添剤が分散した分散液を回収する。その後、メタノールを留去し、外添剤を取り出す。
(2)体積平均粒子径100μmの樹脂粒子(ポリエステル、重量平均分子量Mw=50000)に、前記外添剤を分散させる。
(3)前記外添剤が分散された樹脂粒子を、エネルギー分散型X線分析装置(EDX装置)(堀場製作所製、EMAX Evolution X-Max80mm)を取り付けた走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジーズ製、S-4800)を用いて観察し、倍率4万倍で画像を撮影する。この際、EDX分析によって、各無機酸化物粒子に含まれる原子(Si、Ti等)の存在に基づき、一視野内から無機酸化物粒子の一次粒子を300個以上特定する。SEMは、加速電圧15kV、エミッション電流20μA、WD15mmで観察し、EDX分析は、同条件で検出時間60分とする。
(4)得られた画像を、画像解析装置(LUZEXIII、(株)ニレコ製)に取り込み、画像解析により、各粒子の面積を求める。
(5)この測定された面積値から、各無機酸化物粒子の粒子径を円相当径として求める。
(6)円相当径が80nm未満の粒子を100個選別する。前記選別された粒子について、円相当径の累積分布を小径側から描き、累積50%となる粒子径を、無機酸化物粒子の個数平均粒子径とする。
【0118】
外添剤としての無機酸化物粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機酸化物粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に限定されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機酸化物粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0119】
外添剤としては、無機酸化物粒子の他、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えばフッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0120】
無機酸化物粒子等の他の外添剤の外添量としては、例えば、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0121】
<トナーの製造方法>
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤(具体的には、脂肪酸金属塩粒子、酸化防止剤粒子、無機酸化物粒子等)を外添することで得られる。
【0122】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。トナー粒子の製法は、これらの製法に特に限定はなく、周知の製法が採用される。
【0123】
そして、本実施形態におけるトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えば、Vブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。さらに、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0124】
〔キャリア〕
キャリアは、特に限定されず、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に被覆樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;等が挙げられる。
なお、磁性粉分散型キャリアおよび樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、これに被覆樹脂により被覆したキャリアであってもよい。
【0125】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられる。
【0126】
被覆樹脂、及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。なお、被覆樹脂、及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等、その他添加剤を含ませてもよい。
導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0127】
芯材の表面に被覆樹脂を被覆するには、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法、芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0128】
二成分現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【実施例0129】
以下、本開示の実施例について説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0130】
(酸化防止剤粒子の準備)
以下の構造の、フェノール系酸化防止剤A1、フェノール系酸化防止剤A2、リン系酸化防止剤B、硫黄系酸化防止剤C、及びヒンダードアミン系酸化防止剤Dの各種粒子を準備した。
【0131】
【化1】
【0132】
(固体潤滑剤(a)の作製)
ステアリン酸亜鉛粒子9質量部と酸化防止剤A1粒子0.5質量部と酸化防止剤C粒子0.5質量部の混合物を、圧縮成形装置((株)SHIMADZU製、品名:手動油圧ポンプ)の金型に入れ、温度23℃、湿度55%RHの環境下において、圧縮成形し、圧縮成形体である固体潤滑剤(a)を得た。
得られた固体潤滑剤(a)の大きさは10mm×10mm×340mmであった。
【0133】
<トナーの作製>
-ポリエステル系樹脂粒子分散液の準備-
(非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A)の調製)
・テレフタル酸:70部
・フマル酸:30部
・エチレングリコール:45部
・1,5-ペンタンジオール:46部
撹拌装置、窒素導入管、温度センサ、及び精留塔を備えたフラスコに、上記の材料を仕込み窒素ガス気流下、1時間を要して温度を220℃まで上げ、上記材料の合計100部に対してチタンテトラエトキシド1部を投入した。生成する水を留去しながら0.5時間を要して240℃まで温度を上げ、該温度で1時間脱水縮合反応を継続した後、反応物を冷却した。こうして、重量平均分子量9500、ガラス転移温度62℃のポリエステル樹脂を合成した。
【0134】
温度調節手段及び窒素置換手段を備えた容器に、酢酸エチル40部及び2-ブタノール25部を投入し、混合溶剤とした後、ポリエステル樹脂100部を徐々に投入し溶解させ、ここに、10%アンモニア水溶液(樹脂の酸価に対してモル比で3倍量相当量)を入れて30分間撹拌した。次いで、容器内を乾燥窒素で置換し、温度を40℃に保持して、混合液を撹拌しながらイオン交換水400部を2部/分の速度で滴下し、乳化を行った。滴下終了後、乳化液を25℃に戻し、体積平均粒径200nmの樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液を得た。該樹脂粒子分散液にイオン交換水を加え、固形分量を20%に調整して、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A)とした。
【0135】
(結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(C)の調製)
・1,10-デカンジカルボン酸:98部
・イソフタル酸ジメチル-5-スルホン酸ナトリウム:24部
・1,9-ノナンジオール:100部
・ジブチル錫オキサイド(触媒):0.3部
加熱乾燥した三口フラスコに、上記の成分を入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械撹拌にて180℃で5時間撹拌及び還流を行った。その後、減圧下にて230℃まで徐々に昇温を行い2時間撹拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂を得た。分子量測定(ポリスチレン換算)で、結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は9700であり、融解温度は78℃であった。
【0136】
得られた結晶性ポリエステル樹脂を90部、アニオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬)を1.8部、イオン交換水を210部用い、100℃に加熱して、IKA製ウルトラタラックスT50にて分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理を1時間行い、体積平均粒径が200nmであり、固形分量が20%である結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(C)とした。
【0137】
(離型剤粒子分散液の調製)
・パラフィンワックス(日本精蝋(株)製HNP-9) :100部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製ネオゲンRK) :1部
・イオン交換水 :350部
上記材料を混合して100℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社製)で分散処理し、体積平均粒径200nmの離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液(固形分量20%)を得た。
【0138】
(着色剤粒子分散液の調製)
・マゼンタ顔料(ピグメントレッド122、DIC(株)製): 50部
・アニオン系界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬(株)製): 5部
・イオン交換水: 192.9部
上記成分を混合し、アルティマイザ((株)スギノマシン製)により240MPaで10分処理し、着色剤粒子分散液(固形分量:20%)を調製した。
【0139】
(トナー粒子(T1)の調製)
・イオン交換水:200部
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A):150部
・結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(C):10部
・着色剤粒子分散液:15部
・離型剤粒子分散液:10部
・アニオン性界面活性剤(TaycaPower):2.8部
上記材料を丸型ステンレス製フラスコに入れ、0.1Nの硝酸を添加してpHを3.5に調整した後、ポリ塩化アルミニウム(PAC、王子製紙(株)製:30%粉末品)2.0部をイオン交換水30部に溶解させたPAC水溶液を添加した。ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて30℃において分散した後、加熱用オイルバス中で45℃まで加熱し体積平均粒径が4.8μmとなるまで保持した。その後、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A)60部を追加し30分保持した。その後、体積平均粒径が5.2μmとなったところで、さらに非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A)60部を追加し30分保持した。続いて、10%のNTA(ニトリロ三酢酸)金属塩水溶液(キレスト70:キレスト(株)製)を20部加えた後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、アニオン性界面活性剤(TaycaPower):1.0部投入して撹拌を継続しながら85℃まで加熱し、5時間保持した。その後、20℃/分の速度で20℃まで冷却後濾過し、イオン交換水で充分に洗浄し、乾燥させることにより、体積平均粒径6.0μmのトナー粒子(T1)を得た。
【0140】
(トナー(T1)の調製)
トナー粒子(T1)100部と、ステアリン酸亜鉛粒子(ZnSt)0.2部と、酸化防止剤A1粒子0.022部と、を混合し、サンプルミルを用いて回転速度13000rpmで30秒間混合した。目開き45μmの振動篩で篩分して、トナー(T1)を得た。
【0141】
(トナー(T2)~(T13)、(TC1)の調製)
酸化防止剤粒子の種類及び量を、表1に示すように変えた以外は、トナー(T1)と同様にして、各トナーを得た。
なお、表1中の「含有量」は、酸化防止剤の全質量に対するフェノール系酸化防止剤の含有量の割合(質量%)を示している。
【0142】
(現像剤(T1)~(T13)、(TC1)の調製)
各トナー10部と下記の樹脂被覆キャリア100部とをV型ブレンダーに入れ20分間撹拌し、次いで、目開き212μmの振動篩で篩分して現像剤を得た。
・Mn-Mg-Sr系フェライト粒子(平均粒径40μm):100部
・トルエン : 14部
・ポリメタクリル酸メチル : 2部
・カーボンブラック(VXC72:キャボット製) :0.12部
フェライト粒子を除く上記材料とガラスビーズ(直径1mm、トルエンと同量)とを混合し、関西ペイント(株製サンドミルを用いて回転速度1200rpmで30分間撹拌し、分散液を得た。この分散液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーに入れ、撹拌しながら減圧し乾燥させることにより、樹脂被覆キャリアを得た。
【0143】
[実施例1~14及び比較例1]
表1に従って、下記に示す画像形成装置を用意した。
【0144】
[評価]
各例で得られた現像剤を、図1に示すような構成の画像形成装置である、富士フイルムビジネスイノベーション(株)製 Versant 2100Press改造機(潤滑剤塗布装置の着脱が可能となるように改造したもの)の現像器に充填(収容)し、以下のように評価を行った。結果を表1に示す。
なお、実施例1~13の場合、ステアリン酸亜鉛粒子と酸化防止剤粒子との固体潤滑剤を外添剤として用いたトナーを含む現像剤(T1)~(T13)を現像器に充填した。
なお、実施例14の場合(潤滑剤付与装置を備える場合)、酸化防止剤粒子を外添剤に含まないトナーを含む現像剤(TC1)を現像器に充填し、また、固形潤滑剤としては上述した成形体である固体潤滑剤(a)を潤滑剤塗布装置に設置した。
【0145】
(エンボス紙への転写性)
上記の画像形成装置において、A4サイズのエンボス紙(特種東海製紙(株)製、レザック66)に、温度30℃、湿度80%RHの高温高湿環境下で、マゼンタ色の50%ハーフトーン画像を10000枚出力した後、マゼンタ色の、20%、30%、50%、70%、90%までの5段階で画像濃度を変えた画像を出力し、得られた5枚の画像のうち最も画像中の抜けが見られる1枚を選択し、その画像の抜けの数を確認した。画像中の抜けに基づき、エンボス紙への転写性を以下の基準で評価した。
-評価基準-
G1:画像中に抜けなし
G2:画像中に抜けあり、抜けの数が画像中に1個又は2個である。
G3:画像中に抜けあり、抜けの数が画像中に3個以上5個である。
G4:画像中に抜けあり、抜けの数が画像中に6個以上9個である。
G5:画像中に抜けあり、抜けの数が画像中に10個以上である。
【0146】
【表1】
【0147】
表1に示すように、実施例の画像形成装置は、比較例の画像形成装置に比べて、エンボス紙への転写性にも優れることが分かった。
【符号の説明】
【0148】
1Y、1M、1C、1K 感光体(像保持体の一例)
2Y、2M、2C、2K 帯電ロール(帯電手段の一例)
3 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
4Y、4M、4C、4K 現像装置(現像手段の一例)
5Y、5M、5C、5K 一次転写ロール(一次転写手段の一例)
6Y、6M、6C、6K 潤滑剤塗布装置(潤滑剤塗布手段の一例)
7Y、7M、7C、7K 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト(中間転写体の一例)
22 駆動ロール
24 支持ロール
26 二次転写ロール(二次転写手段の一例)
30 中間転写体クリーニング装置
107 感光体(像保持体の一例)
108 帯電ロール(帯電手段の一例)
109 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
111 現像装置(現像手段の一例)
112 転写装置(転写手段の一例)
113 潤滑剤塗布装置(潤滑剤塗布手段の一例)
114 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
115 定着装置(定着手段の一例)
116 取り付けレール
117 筐体
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ
300 記録紙(記録媒体の一例)
P 記録紙(記録媒体の一例)

図1
図2