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特開2023-1449電力変換装置、電力変換装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001449
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】電力変換装置、電力変換装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/49 20070101AFI20221226BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20221226BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
H02M7/49
H02M7/48 M
H02M7/12 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102175
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】上妻 央
(72)【発明者】
【氏名】古川 公久
(72)【発明者】
【氏名】馬淵 雄一
(72)【発明者】
【氏名】師岡 寿至
(72)【発明者】
【氏名】茂木 亮
(72)【発明者】
【氏名】阿部 誠
【テーマコード(参考)】
5H006
5H770
【Fターム(参考)】
5H006AA07
5H006CA02
5H006CB01
5H006CB08
5H006DB01
5H770AA05
5H770AA13
5H770BA01
5H770BA11
5H770CA02
5H770CA05
5H770DA01
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA22
5H770DA23
5H770DA30
5H770DA41
5H770LA01X
5H770LA02X
5H770LB09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高周波トランスにより1次側と2次側が絶縁された絶縁型電力変換ユニットを多直列接続して構成するマルチステージ型の電力変換装置において、リプル電圧起因で発生する電力変換ユニット間の循環電流を低減可能な低損失な電力変換装置を提供する。
【解決手段】絶縁型電力変換ユニット20-kは、高周波トランス15で絶縁された1次側電力変換器11、12と、2次側電力変換器13とを備える。1次側電力変換器は、1次側交流入力端子25、26を有する。2次側電力変換器は、2次側正極端子27と2次側負極端子28の2つの端子で構成する2次側直流出力端子を有する。複数の絶縁型電力変換ユニットのうち、少なくとも1つの絶縁型電力変換ユニットの2次側正極端子は、少なくとも2つ以上の他の絶縁型電力変換ユニットの2次側負極端子と接続され、かつ、少なくとも1つ以上のさらに別の絶縁型電力変換ユニットの2次側正極端子と接続されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波トランスにより1次側と2次側が絶縁された複数の絶縁型電力変換ユニットを多直列接続して構成するマルチステージ型の電力変換装置であって、
前記絶縁型電力変換ユニットは、前記高周波トランスで絶縁された1次側電力変換器と2次側電力変換器を備え、
前記1次側電力変換器は、1次側交流入力端子を有し、
前記2次側電力変換器は、2次側正極端子と2次側負極端子の2つの端子で構成された2次側直流出力端子を有し、
前記複数の絶縁型電力変換ユニットのうち、少なくとも1つの絶縁型電力変換ユニットの2次側正極端子は、少なくとも2つ以上の他の絶縁型電力変換ユニットの2次側負極端子と接続され、かつ、少なくとも1つ以上のさらに別の絶縁型電力変換ユニットの2次側正極端子と接続されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記1次側交流入力端子は、1次側正極端子と1次側負極端子の2つの端子で構成された単相交流入力端子であり、
前記少なくとも1つの絶縁型電力変換ユニットの1次側正極端子は、前記他の絶縁型電力変換ユニットの1次側負極端子に接続されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置であって、
前記複数の絶縁型電力変換ユニットは、少なくとも4つ以上の絶縁型電力変換ユニットで構成され、
前記2次側直流出力端子の2次側正極端子が並列接続される2つの絶縁型電力変換ユニットの1次側交流入力端子には、異なる位相の交流信号が入力されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換装置であって、
前記電力変換装置は、少なくとも2つ以上の2次側直流出力端子を備え、
前記2つ以上の2次側直流出力端子のうちの少なくとも2つの直流出力端子に対し異なる電圧の直流信号が入出力されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項3に記載の電力変換装置であって、
前記絶縁型電力変換ユニットの1次側交流入力端子と並列に、1次側正極端子と1次側負極端子の2つの端子の短絡と解放を切り替えるスイッチと、
前記2次側直流出力端子が並列接続された少なくとも2つ以上の絶縁型電力変換ユニットの2次側直流出力端子と並列に、2次側正極端子と2次側負極端子の2つの端子の短絡と解放を切り替えるスイッチと、を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項3に記載の電力変換装置であって、
前記1次側電力変換器は、1次側交直変換回路と1次側直交変換回路を備え、
前記2次側電力変換器は、2次側交直変換回路を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電力変換装置であって、
前記1次側直交変換回路を形成するパワー半導体デバイスの駆動信号の周波数が、2次側直流出力の電圧によって変わることを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項6に記載の電力変換装置であって、
前記1次側直交変換回路を形成するパワー半導体デバイスの駆動信号の位相が、2次側直流出力の電圧によって変わることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項6に記載の電力変換装置であって、
前記2次側交直変換回路は、フルブリッジコンバータで構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
高周波トランスにより1次側と2次側が絶縁された複数の絶縁型電力変換ユニットを多直列接続して構成するマルチステージ型の電力変換装置の制御方法であって、
前記複数の絶縁型電力変換ユニットのうち、いずれかの絶縁型電力変換ユニットで過電流または過電圧の異常を検出した場合、当該異常が発生した絶縁型電力変換ユニットの1次側交流入力端子と並列に配置された冗長スイッチを短絡することで、前記異常が発生した絶縁型電力変換ユニットの1次側正極端子と1次側負極端子を短絡し、
前記異常が発生した絶縁型電力変換ユニット以外の絶縁型電力変換ユニットで運転を継続することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の電力変換装置の制御方法であって、
前記複数の絶縁型電力変換ユニットのうち、いずれかの絶縁型電力変換ユニットで過電流または過電圧の異常を検出した場合、当該異常が発生した絶縁型電力変換ユニットの2次側直流出力端子と並列に配置された冗長スイッチを短絡することで、前記異常が発生した絶縁型電力変換ユニットの2次側正極端子と2次側負極端子を短絡することを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置の構成とその制御に係り、特に、複数の電力変換ユニットを多直列接続して構成するマルチステージ型の電力変換装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電力変換装置は、その主要部品であるパワー半導体モジュールの技術革新によって、より高速なスイッチング動作を実現し、このパワー半導体から発する損失を低減させている。これにより、特に冷却器を小型化することができ、その結果、電力変換装置を小型化可能である。また、パワー半導体の損失を低減することにより、電力変換装置の効率を向上することができる。
【0003】
例えば、SiCやGaN等のワイドバンドギャップデバイスは、電子飽和速度がSiに対し約2倍以上あることから、高速SW(Switching)動作によるSW損失低減、さらに高周波インバータSW動作が可能となる。
【0004】
また、産業向け電力変換器では、システムの高効率化のため、システム電圧の高耐圧化が進んでいる。システム電圧を高耐圧化とすることで、同一電力における電流・導通損失を低減でき、システムを高効率化できる。但し、パワー半導体モジュールの耐圧には制限があることから、パワー半導体デバイスを含む複数の電力変換ユニットを直列接続し、電力変換器のシステム電圧を高耐圧化する電力変換器構成が提案されている。
【0005】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には「交流を直流に変換するAC/DC変換回路を含む変換ユニットにおいて、複数の変換ユニットの交流出力と直流出力を直列接続し、高圧AC入力/高圧DC出力に対応した高圧変換器構成」が記載されている。高圧変換器部は三相UVW入力に対応するため、3組で構成され、UVWそれぞれに対応した高圧変換器のDC出力は並列接続された構成となる。
【0006】
特許文献1では、上記のような高圧変換器構成(以下、モジュラーマルチレベル変換器(MMC:Modular Multilevel Converter)とも呼ぶ)において、DC出力のリプル電圧を低減する手法として、MMCを構成する複数電力変換ユニットのキャリア信号位相を同期し、かつ各電力変換ユニットの位相がユニット毎に同位相とならないようにシフトさせる制御構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-80627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、高圧AC/DC変換器において、上記のようなMMC方式では入力端子と出力端子が絶縁されてないため、地絡時の故障拡大や、入出力間のノイズ伝搬等が課題となる。従って、より高信頼なシステムには入出力間が絶縁された高圧AC/DC変換器が必要である。
【0009】
一方、絶縁型の高圧AC/DC変換器において、多重絶縁トランスを適用した高圧電力変換器では、多重トランス構造に起因して重量や体積が大型化する課題があった。これに対し、高周波絶縁トランスを適用したマルチステージ変換器(MSC:Multi Stage Converter)は、絶縁トランスの小型化が可能となり省スペース化に有利となる。
【0010】
MSCでは、絶縁型DC/DC変換回路を含む電力変換ユニットを複数台直列接続して高圧入力/出力に対応する。MSCの小型化にはDCリンクコンデンサの小型化が必要となるが、DCリンクコンデンサの容量を削減すると、出力DCのリプル電圧が増大する課題がある。
【0011】
例えば上記特許文献1のように、複数の電力変換ユニットの絶縁型DC/DC変換回路の駆動信号を同期し、直列接続される複数ユニットの駆動信号の位相が重ならないように制御することでリプル電圧の低減が可能である。但し、絶縁型DC/DC変換回路に駆動信号周波数可変型や駆動信号位相可変型の回路方式を適用したとき、各電力変換ユニットの駆動信号は非同期となるため、この手法が適用できない。
【0012】
そこで、本発明の目的は、高周波トランスにより1次側と2次側が絶縁された絶縁型電力変換ユニットを多直列接続して構成するマルチステージ型の電力変換装置において、リプル電圧起因で発生する電力変換ユニット間の循環電流を低減可能な低損失な電力変換装置及び電力変換装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、高周波トランスにより1次側と2次側が絶縁された複数の絶縁型電力変換ユニットを多直列接続して構成するマルチステージ型の電力変換装置であって、前記絶縁型電力変換ユニットは、前記高周波トランスで絶縁された1次側電力変換器と2次側電力変換器を備え、前記1次側電力変換器は、1次側交流入力端子を有し、前記2次側電力変換器は、2次側正極端子と2次側負極端子の2つの端子で構成された2次側直流出力端子を有し、前記複数の絶縁型電力変換ユニットのうち、少なくとも1つの絶縁型電力変換ユニットの2次側正極端子は、少なくとも2つ以上の他の絶縁型電力変換ユニットの2次側負極端子と接続され、かつ、少なくとも1つ以上のさらに別の絶縁型電力変換ユニットの2次側正極端子と接続されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、高周波トランスにより1次側と2次側が絶縁された複数の絶縁型電力変換ユニットを多直列接続して構成するマルチステージ型の電力変換装置の制御方法であって、前記複数の絶縁型電力変換ユニットのうち、いずれかの絶縁型電力変換ユニットで過電流または過電圧の異常を検出した場合、当該異常が発生した絶縁型電力変換ユニットの1次側交流入力端子と並列に配置された冗長スイッチを短絡することで、前記異常が発生した絶縁型電力変換ユニットの1次側正極端子と1次側負極端子を短絡し、前記異常が発生した絶縁型電力変換ユニット以外の絶縁型電力変換ユニットで運転を継続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高周波トランスにより1次側と2次側が絶縁された絶縁型電力変換ユニットを多直列接続して構成するマルチステージ型の電力変換装置において、リプル電圧起因で発生する電力変換ユニット間の循環電流を低減可能な低損失な電力変換装置及び電力変換装置の制御方法を実現することができる。
【0016】
これにより、電力変換装置の冷却器やコンデンサを小型化することができ、電力変換装置の小型軽量化と高効率化が図れる。
【0017】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例1に係る電力変換装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図1の電力変換ユニットの等価回路図である。
図3】本発明の実施例1に係る電力変換装置のシステム構成図である。
図4】本発明の実施例1に係る電力変換装置の動作波形の一例を示す図である。
図5】本発明の実施例1に係る電力変換装置の3直3並列コンバータセルの結線図である。
図6】従来の電力変換装置のリプル電圧と循環電流の一例を示す図である。
図7】本発明の実施例1に係る電力変換装置のリプル電圧と循環電流の一例を示す図である。
図8】本発明の実施例2に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
図9】本発明の実施例3に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例0020】
図1から図7を参照して、本発明の実施例1に係る電力変換装置とその制御方法について説明する。図1は、本実施例の電力変換装置の概略構成を示すブロック図である。
【0021】
本実施例の電力変換装置1は、図1に示すように、N台のコンバータセル(電力変換ユニット)20-1~20-Nを有している。そして、各々のコンバータセル20-k(但し、kは段数番号であり、1≦k≦N)は、一対の1次側端子25,26と、一対の2次側端子27,28と、交直変換器11と、交直変換器12と、交直変換器13と、交直変換器12と交直変換器13との間に接続される高周波トランス15と、コンデンサ17(第1のコンデンサ)と、コンデンサ18(第2のコンデンサ)とを有している。
【0022】
交直変換器11は、1次側系統電圧である交流電圧を直流電圧に変換する第1の交直変換器(1次側変換器)である。交直変換器12は、交直変換器11(第1の交直変換器)により変換された直流電圧を交流電圧に変換する第2の交直変換器(1次側変換器)である。交直変換器13は、交直変換器12(第2の交直変換器)により変換された交流電圧を直流電圧に変換する第3の交直変換器(2次側変換器)である。
【0023】
交直変換器11、交直変換器12、交直変換器13には、それぞれパワー半導体デバイスが用いられる。
【0024】
コンデンサ17は、交直変換器11と交直変換器12との間に接続され、コンデンサ18は、交直変換器13と2次側端子27,28との間に接続されている。
【0025】
そして、コンバータセル20-1~20-Nの各1次側端子25,26は、順次互いに直列に接続され、これら直列回路に、1次側電源系統31が接続されている。また、コンバータセル20-1~20-Nの各2次側端子27,28は、順次互いに直列に接続され、これら直列回路に、2次側電源系統32とDC負荷系統34,36が接続されている。各コンバータセル20-1~20-Nは、1次側端子25,26と2次側端子27,28との間で双方向または一方向に電力を伝送する。
【0026】
1次側電源系統31は、誘導性のインピーダンス、またはフィルタリアクトルを内包するものとする。また、1次側電源系統31、2次側電源系統32としては、例えば商用電源系統や太陽光発電システム、モータ等、様々な発電設備や受電設備を採用することができる。
【0027】
1次側電源系統31の電圧を1次側系統電圧VS1とし、2次側電源系統32の電圧を2次側系統電圧VS2とする。1次側系統電圧VS1,2次側系統電圧VS2は、振幅及び周波数が相互に独立しており、電力変換装置1は、1次側電源系統31と2次側電源系統32との間で双方向または一方向に電力を伝送する。
【0028】
図1に示すように、1次側電源系統31の一対の端子のうち、一方を1次側基準端子33と呼び、他方を単に端子35と呼ぶ。同様に、2次側電源系統32の一対の端子のうち、一方を2次側基準端子34と呼び、他方を単に端子36と呼ぶ。1次側基準端子33は、1次側基準電位が現れる端子であり、2次側基準端子34は、2次側基準電位が現れる端子である。1次側基準電位及び2次側基準電位は、例えば接地電位である。基準電位は必ずしも接地電位でなくてもよい。
【0029】
そして、1次側基準端子33は、コンバータセル20-1の1次側端子25に接続され、端子35は、コンバータセル20-Nの2次側端子26に接続される。また、2次側基準端子34は、コンバータセル20-Nの2次側端子28に接続され、端子36は、コンバータセル20-1の2次側端子27に接続される。
【0030】
図2は、図1のコンバータセル(電力変換ユニット)20-kの等価回路図である。
【0031】
交直変換器11~13は、各々Hブリッジ状に接続された4個のスイッチング素子と、これらスイッチング素子に逆並列に接続された還流ダイオード(FWD:Free Wheeling Diode)とを有している(共に符号なし)。
【0032】
なお、本実施例において、これらスイッチング素子は、例えばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。
【0033】
コンデンサ17の両端の間に現れる電圧を1次側DCリンク電圧Vdc1(1次側直流電圧)と呼ぶ。また、1次側端子25,26の間に現れる電圧を1次側AC端子間電圧VU1kと呼ぶ。そして、交直変換器11は、1次側AC端子間電圧VU1kと、1次側DCリンク電圧Vdc1とを双方向または一方向に変換しつつ電力を伝送する。
【0034】
高周波トランス15は、1次巻線15aと、2次巻線15bとを有し、1次巻線15aと2次巻線15bとの間で、所定の周波数で電力を伝送する。交直変換器12及び13が高周波トランス15との間で入出力する電流は、高周波である。ここで、高周波とは、例えば100Hz以上の周波数であるが、1kHz以上の周波数を採用することが好ましく、10kHz以上の周波数を採用することがより好ましい。交直変換器12は、1次側DCリンク電圧Vdc1と、1次巻線15aに現れる電圧とを双方向または一方向に変換しつつ電力を伝送する。
【0035】
また、コンデンサ18の両端の間に現れる電圧を2次側DCリンク電圧Vdc2(2次側直流電圧)と呼ぶ。交直変換器13は、2次側DCリンク電圧Vdc2と、2次巻線15bに現れる電圧とを双方向または一方向に変換しつつ電力を伝送する。また、2次側端子27,28の間に現れる電圧を2次側DC端子間電圧Vu2kと呼ぶ。
【0036】
図1において、1次側系統電圧VS1の振幅値をVmaxとし、各コンバータセル20-kの1次側DCリンク電圧Vdc1が振幅値Vmaxの1/Nであると仮定すると、図2に示した1次側AC端子間電圧VU1kは、±Vmax/Nまたは0のいずれかの電圧となる。2次側も同様であるので説明を省略する。
【0037】
また、図2において、交直変換器11と、コンデンサ17と、交直変換器12を含む電力変換器部を1次側電力変換ユニット101とし、交直変換器13と、コンデンサ18で構成される電力変換器部を2次側電力変換ユニット102とする。
【0038】
図3は、図1の電力変換装置1を用いた三相交流システムのシステム構成図である。電力変換装置1は、図1及び図2に示した各コンバータセル20-1~20-Nによって構成される。
【0039】
図3において、1次側三相電源系統のU相,V相,W相の端子をU,V,Wとし、中性点をNとし、2次側DC出力端子をP、Nとする。図3に示した三相交流システムでは、中性点Nが1次側の基準端子になる。1次側の端子Uと中性点Nとの間には、コンバータセル20-1~20-Nの1次側端子25,26(図1及び図2参照)が順次直列に接続されている。また、2次側の端子Nと端子Pとの間には、2次側端子27,28が順次直列に接続されている。
【0040】
V相、W相については図示を省略するが、U相と同様に電力変換装置1が接続されている。
【0041】
図4は、1次側系統電圧VS1及び2次側系統電圧VS2の波形図の例である。図3のように各コンバータセルの入出力を直列接続し、直列接続されたコンバータセルを制御することで、AC入力、DC出力に対応している。
【0042】
図5は、三相AC入力/DC出力変換器を構成する3直3並列コンバータセルの結線図である。コンバータセルの1次側の結線については図3と同様である。
【0043】
各コンバータセルの2次側出力は、U相/V相/W相で1段ずつPN出力端子を並列接続し、三相ユニット50_1,50_2,50_3を形成し、各三相ユニット50_1,50_2,50_3は直列接続される。
【0044】
図6及び図7を用いて、本実施例による効果を以下で説明する。図6は、従来の一般的な三相AC入力/DC出力変換器におけるリプル電圧起因のコンデンサ循環電流LACを示す図である。図7は、本実施例(図5)の三相AC入力/DC出力変換器におけるリプル電圧起因のコンデンサ循環電流LACを示す図である。
【0045】
図6に示すように、従来の三相AC入力/DC出力変換器では、絶縁型の直交-交直変換回路12、15、13において、変換回路の駆動周波数や駆動信号の位相で電圧の昇圧降圧比を制御する方式を適用したとき、セル内のパワー半導体デバイスや高周波トランスの特性ばらつきに起因して、駆動周波数や位相が異なる。
【0046】
この時、2次側出力には各駆動信号周波数や位相に同期したリプル電圧が発生する。図6に示すように、2次側を直列にした場合、リプル電圧は各段で重畳され、仮にリプル電圧周波数・位相が直列接続するコンバータセル間で重なったとき、振幅が増大される。
【0047】
さらに、図6の構成のように、U相のコンバータセルを直列接続し、またV相のコンバータセルを直列接続し、直列接続されたU相セル群とV相セル群の2次側PN出力は各1点で結線される構成では、U相セル群とV相セル群のリプル電圧差が増大する条件が存在し、この時、U相セル群の2次側コンデンサとV相セル群の2次側コンデンサ間にリプル電圧差に比例した循環電流が発生し、コンデンサの発熱が増大する。
【0048】
一方、図7に示すように、本実施例(図5)の構成では、各コンバータセルの2次側出力は、U相/V相/W相で1段ずつPN出力端子を並列接続し、三相ユニット50_1,50_2,50_3を形成し、各三相ユニット50_1,50_2,50_3は直列接続される。
【0049】
この時、U相セルとV相セル間に発生する最大リプル電圧差は、従来(図6)の構成に対して1/N(Nは2次側の直列段数)となる。よって、本実施例(図5)の構成では、2次側出力が並列接続されるコンバータセル間のリプル電圧差起因の循環電流を低減でき、2次側コンデンサの不要電流及び発熱を低減することで、電力変換装置の小型軽量化と高効率化が可能となる。
【0050】
以上説明したように、本実施例の電力変換装置は、高周波トランス15により1次側と2次側が絶縁された複数の絶縁型電力変換ユニット(コンバータセル20-1~20-N)を多直列接続して構成するマルチステージ型の電力変換装置であって、絶縁型電力変換ユニット(コンバータセル20-1~20-N)は、高周波トランス15で絶縁された1次側電力変換器(1次側電力変換ユニット101)と2次側電力変換器(2次側電力変換ユニット102)を備えており、1次側電力変換器(1次側電力変換ユニット101)は、1次側交流入力端子(1次側端子25,26)を有し、2次側電力変換器(2次側電力変換ユニット102)は、2次側正極端子(2次側端子27)と2次側負極端子(2次側端子28)の2つの端子で構成された2次側直流出力端子(2次側端子27,28)を有し、複数の絶縁型電力変換ユニット(コンバータセル20-1~20-N)のうち、少なくとも1つの絶縁型電力変換ユニット(20-U2)の2次側正極端子は、少なくとも2つ以上の他の絶縁型電力変換ユニット(20-U1,20-V1)の2次側負極端子と接続され、かつ、少なくとも1つ以上のさらに別の絶縁型電力変換ユニット(20-V2)の2次側正極端子と接続されている。
【0051】
また、1次側交流入力端子(1次側端子25,26)は、1次側正極端子(1次側端子25)と1次側負極端子(1次側端子26)の2つの端子で構成された単相交流入力端子であり、少なくとも1つの絶縁型電力変換ユニット(20-U2)の1次側正極端子は、他の絶縁型電力変換ユニット(20-U1)の1次側負極端子に接続されている。
【0052】
また、複数の絶縁型電力変換ユニットは、少なくとも4つ以上の絶縁型電力変換ユニット(20-U1,20-U2,20-V1,20-V2)で構成され、2次側直流出力端子の2次側正極端子(2次側端子27)が並列接続される2つの絶縁型電力変換ユニット(20-U1,20-V1)の1次側交流入力端子(1次側端子25)には、異なる位相の交流信号(U,V)が入力される。
【0053】
また、1次側電力変換器(1次側電力変換ユニット101)は、1次側交直変換回路(1次側変換器11)と1次側直交変換回路(1次側変換器12)を備え、2次側電力変換器(2次側電力変換ユニット102)は、2次側交直変換回路(2次側変換器13)を備えている。
【0054】
また、1次側直交変換回路(1次側変換器12)を形成するパワー半導体デバイスの駆動信号の周波数または位相が、2次側直流出力の電圧によって変わる。
【0055】
また、2次側交直変換回路(2次側変換器13)は、フルブリッジコンバータで構成されている。
【0056】
本実施例の電力変換装置によれば、高周波トランスにより1次側と2次側が絶縁された絶縁型電力変換ユニットを多直列接続して構成するマルチステージ型の電力変換装置において、リプル電圧起因で発生する電力変換ユニット間の循環電流を低減可能な低損失な電力変換装置及び電力変換装置の制御方法を実現することができる。
【0057】
これにより、電力変換装置の冷却器やコンデンサを小型化することができ、電力変換装置の小型軽量化と高効率化が図れる。
【実施例0058】
図8を参照して、本発明の実施例2に係る電力変換装置について説明する。図8は、本実施例の電力変換装置の概略構成を示す図である。
【0059】
本実施例の電力変換装置では、図8に示すように、2次側DC出力をマルチポート構成としている。1次側三相電源系統のU相,V相,W相の端子をU,V,Wとし、中性点をNとし、2次側DC出力端子はPu/Nuと、Pv/Nvと、Pw/NwとP22/N22を備える。この時、複数のコンバータセルを直列接続して構成された2次側出力端子P22/N22は、他の2次側出力端子Pu/Nu、Pv/Nv、Pw/Nwよりも高い電圧を出力可能とする。
【0060】
図8に示す本実施例の三相交流システムでは、中性点Nが1次側の基準端子になる。1次側の端子Uと中性点Nとの間には、コンバータセル20-U1~20-U3の1次側端子25,26(図1及び図2参照)が順次直列に接続されている。V相、W相の1次側入力端子も同様の構成である。
【0061】
ここで、2次側出力P22/N22は、U相/V相/W相で1段ずつPN出力端子を並列接続し、三相ユニット50_2,50_3を形成し、各三相ユニット50_2,50_3は直列接続することで構成される。
【0062】
本実施例によれば、絶縁型のコンバータセルユニットを直並列した構成で、マルチポート出力を構成でき、複数の負荷やバッテリとの同時動作が可能となる。さらにコンバータセルを直列接続した高圧ポートP22/N22を設けることで、低圧負荷から高圧負荷まで同時に対応できる。また、高圧ポートP22/N22においては、U相/V相/W相で1段ずつPN出力端子を並列接続し、三相ユニット50_2,50_3を形成し、各三相ユニット50_2,50_3を直列接続する構成により、リプル電圧差起因の循環電流を低減でき、2次側コンデンサの不要電流及び発熱を低減することで、電力変換装置の小型軽量化と高効率化が可能となる。
【0063】
以上説明したように、本実施例の電力変換装置は、少なくとも2つ以上の2次側直流出力端子(P/N,P/N,P/N,P22/N22)を備えており、2つ以上の2次側直流出力端子のうちの少なくとも2つの直流出力端子(P/N,P22/N22)に対し異なる電圧の直流信号が入出力される。
【実施例0064】
図9を参照して、本発明の実施例3に係る電力変換装置について説明する。図9は、本実施例の電力変換装置の概略構成を示す図である。
【0065】
本実施例の電力変換装置では、図9に示すように、ユニット冗長を可能とし、信頼性を向上している。1次側三相電源系統のU相,V相,W相の端子をU,V,Wとし、中性点をNとし、2次側DC出力端子はP/Nを備える。
【0066】
図9に示す本実施例の三相交流システムでは、中性点Nが1次側の基準端子になる。1次側の端子Uと中性点Nとの間には、コンバータセル20-U1~20-U3の1次側端子25,26(図1及び図2参照)が順次直列に接続されている。V相、W相の1次側入力端子も同様の構成である。
【0067】
コンバータセル20-U1~20-U3の1次側端子25,26(図1及び図2参照)には、1次側端子25,26を短絡する冗長スイッチSU1,SU2,SU3を備える。コンバータセル20-V1~20-V3も同様に、冗長スイッチSV1,SV2,SV3を備える。また、コンバータセル20-W1~20-W3も同様に、冗長スイッチSW1,SW2,SW3を備える。
【0068】
各コンバータセルの2次側出力は、U相/V相/W相で1段ずつPN出力端子を並列接続し、三相ユニット50_1,50_2,50_3を形成し、各三相ユニット50_1,50_2,50_3は直列接続される。
【0069】
三相ユニット50_1,50_2,50_3の各PN出力には、PN間を短絡する冗長スイッチS21,S22,S23を備える。
【0070】
図9に示す電力変換装置において、定常運転時には各冗長スイッチはオープンの状態である。
【0071】
例えば、コンバータセル20-U1で過電流や過電圧の異常を検出し、継続動作不可との判定に至ったとき、冗長スイッチSU1,SV1,SW1,S21は短絡となり、他の冗長スイッチSU2,SU3,SV2,SV3,SW2,SW3,S22,S23はオープンのまま運転を継続する。この時、コンバータセル20-U1,20-V1,20-W1は交直変換動作を停止し、他のコンバータセル20-U2,20-V2,20-W2,20-U3,20-V3,20-W3は交直変換動作を継続するように制御される。
【0072】
本実施例によれば、絶縁型のコンバータセルユニットを直並列した構成で、ある1つのユニットが過電流や過電圧の異常を検出し、継続動作不可との判定に至ったときでも、健全な他のユニットで継続運転が可能となる。
【0073】
また、2次側出力の冗長スイッチは、各三相ユニット毎に設ける構成により、各コンバータセルの1次側/2次側の両方に冗長スイッチを設ける構成と比較して、冗長スイッチの数を削減できる。
【0074】
以上説明したように、本実施例の電力変換装置は、絶縁型電力変換ユニット(20-U1,20-U2,20-U3)の1次側交流入力端子(1次側端子25,26)と並列に、1次側正極端子(1次側端子25)と1次側負極端子(1次側端子26)の2つの端子の短絡と解放を切り替える冗長スイッチSU1~SU3と、2次側直流出力端子(2次側端子27,28)が並列接続された少なくとも2つ以上の絶縁型電力変換ユニット(20-W1,20-W2,20-W3)の2次側直流出力端子(2次側端子27,28)と並列に、2次側正極端子(2次側端子27)と2次側負極端子(2次側端子28)の2つの端子の短絡と解放を切り替える冗長スイッチS21~S23を備えている。
【0075】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…電力変換装置
11…パワー半導体デバイス(第1の交直変換器,1次側変換器)
12…パワー半導体デバイス(第2の交直変換器,1次側変換器)
13…パワー半導体デバイス(第3の交直変換器,2次側変換器)
15…高周波トランス
15a…1次巻線
15b…2次巻線
17,18,C18…コンデンサ
20,20-1~20-N…コンバータセル(電力変換ユニット)
25,26…1次側端子
27,28…2次側端子
31…1次側電源系統
32…2次側電源系統
33…1次側基準端子
34…2次側基準端子(DC負荷系統)
35…端子
36…端子(DC負荷系統)
50_1,50_2,50_3…三相ユニット
101…1次側電力変換ユニット
102…2次側電力変換ユニット
VS1…1次側系統電圧
VS2…2次側系統電圧
dc1…1次側DCリンク電圧(1次側直流電圧)
dc2…2次側DCリンク電圧(2次側直流電圧)
U1k…1次側AC端子間電圧
U2k…2次側AC端子間電圧
AC…コンデンサ循環電流
SU1~SU3,SV1~SV3,SW1~SW3,S21~S23…冗長スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9