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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145017
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/18 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
B60R21/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052281
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】折▲高▼ 早苗
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA07
3D054AA25
3D054DD13
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】エアバッグを迅速に膨張させることができて、膨張したエアバッグにより、乗員を安定して保護可能なエアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】内部に膨張用ガスを流入させて膨張するエアバッグ25と、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、を備える。エアバッグが、車両のシートに着座している乗員を保護可能に膨張するバッグ本体26と、インフレーターと接続されてインフレーターから吐出される膨張用ガスをバッグ本体内に流入させる導管部35と、を備える。バッグ本体と導管部とが、連通孔40により、相互に連通されている。導管部が、連通孔を経て、バッグ本体の内部に、軸直交方向に略沿わせるようにして、膨張用ガスを流出させる構成とされる。連通孔が、導管部の軸方向に沿って複数個並設されるとともに、開口面積を異ならせて構成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に膨張用ガスを流入させて膨張するエアバッグと、該エアバッグに前記膨張用ガスを供給するインフレーターと、を備える構成とされて、
前記エアバッグが、車両のシートに着座している乗員を保護可能に膨張するバッグ本体と、前記インフレーターと接続されて前記インフレーターから吐出される前記膨張用ガスを前記バッグ本体内に流入させる導管部と、を備え、
前記バッグ本体と前記導管部とが、連通孔により、相互に連通される構成のエアバッグ装置であって、
前記導管部が、前記連通孔を経て、前記バッグ本体の内部に、軸直交方向に略沿わせるようにして、前記膨張用ガスを流出させる構成とされて、
前記連通孔が、前記導管部の軸方向に沿って複数個並設されるとともに、開口面積を異ならせて構成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記導管部が、前記バッグ本体に重なって配置される前記連通孔の配設領域に、前記インフレーターに接続される側より幅広として、内部に流入した前記膨張用ガスを一旦貯留させるガス貯留部を、有する構成とされて、
前記連通孔が、前記導管部の軸方向に沿って2個並設されるとともに、前記ガス貯留部の端末側に配置される端末側連通孔を、元部側に配置される元部側連通孔よりも開口面積を大きく設定されるように、構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記バッグ本体が、折り畳まれた状態で、前記乗員の腰の周囲に巻き掛けられる保持ベルト部によって保持されて、前記膨張用ガスを内部に流入させて前上方に突出するように膨張し、膨張完了時に、前記シートに着座している前記乗員の前方を覆うような構成とされ、
前記インフレーターが、前記シート側に取り付けられ、
前記導管部が、前記保持ベルト部に略沿うように前記バッグ本体から延びて、前記インフレーターに接続される構成とされていることを特徴とする請求項1または2に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するエアバッグと、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、を備えて、エアバッグにおけるバッグ本体内に、インフレーターと接続される導管部を経て、内部に膨張用ガスを流入させる構成のエアバッグ装置に、関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような構成のエアバッグ装置としては、エアバッグにおいて、バッグ本体が、シートに着座した乗員の前方を覆うように膨張可能な構成とされ、導管部が、このバッグ本体から延びて、シート側に取り付けられるインフレーターに接続される構成ものがあった(例えば、特許文献1参照)。バッグ本体と導管部とは、導管部の軸方向に沿って並設される2つの連通孔によって、相互に連通される構成であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-66425公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来のエアバッグ装置では、バッグ本体の内部には、略同形に開口した2つの連通孔を経て、それぞれ、導管部の軸直交方向に略沿うように、膨張用ガスを流入させる構成であるが、この2つの連通孔は、導管部の軸方向に沿って並設される構成であり、すなわち、インフレーターからの距離を異ならせて配置される構成である。そのため、インフレーター側に配置される連通孔と、インフレーターから離隔した側に配置される連通孔と、では、バッグ本体側への膨張用ガスの流出量が異なってしまい、この膨張用ガスの流出量の差によって、バッグ本体の展開にブレが生じる場合があり、バッグ本体を、展開時のブレの発生を抑制して、迅速に膨張させる点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、エアバッグを迅速に膨張させることができて、膨張したエアバッグにより、乗員を安定して保護可能なエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアバッグ装置は、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するエアバッグと、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、を備える構成とされて、
エアバッグが、車両のシートに着座している乗員を保護可能に膨張するバッグ本体と、インフレーターと接続されてインフレーターから吐出される膨張用ガスをバッグ本体内に流入させる導管部と、を備え、
バッグ本体と導管部とが、連通孔により、相互に連通される構成のエアバッグ装置であって、
導管部が、連通孔を経て、バッグ本体の内部に、軸直交方向に略沿わせるようにして、膨張用ガスを流出させる構成とされて、
連通孔が、導管部の軸方向に沿って複数個並設されるとともに、開口面積を異ならせて構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のエアバッグ装置では、エアバッグにおいて、バッグ本体と導管部とを連通させる連通孔が、導管部の軸方向に沿って複数個並設される構成であるものの、開口面積を異ならせて構成されている。そのため、連通孔ごとのバッグ本体側への膨張用ガスの流出量を、開口面積を異ならせることにより、調整することができて、バッグ本体側への膨張用ガスの流出量を、各連通孔において、略同一に設定することも可能となる。その結果、バッグ本体を、展開時のブレの発生を抑制して、迅速に膨張させることが可能となる。
【0008】
したがって、本発明のエアバッグ装置では、エアバッグを迅速に膨張させることができて、膨張したエアバッグにより、乗員を安定して保護することができる。
【0009】
また、本発明のエアバッグ装置において、導管部を、バッグ本体に重なって配置される連通孔の配設領域に、インフレーターに接続される側より幅広として、内部に流入した膨張用ガスを一旦貯留させるガス貯留部を有する構成として、
連通孔を、導管部の軸方向に沿って2個並設させるとともに、ガス貯留部の端末側に配置される端末側連通孔を、元部側に配置される元部側連通孔よりも開口面積を大きく設定されるように、構成することが、好ましい。
【0010】
エアバッグ装置を上記構成とすれば、インフレーターから吐出される膨張用ガスは、導管部に形成されるガス貯留部内に一旦貯留された状態で、2つの連通孔を経て、バッグ本体内に流出されることとなり、2つの連通孔において、ガス貯留部の端末側、すなわち、インフレーターから離隔した側に配置される端末側連通孔が、元部側、すなわち、インフレーター側に配置される元部側連通孔よりも、開口面積を大きく設定されている。そのため、インフレーター側に配置されて膨張用ガスを流出させやすい元部側連通孔からの膨張用ガスの流出量を抑制して、インフレーターから離れた側に配置されて相対的に膨張用ガスを流出させ難い端末側連通孔を、開口面積を大きく設定することにより、元部側連通孔と略同等の膨張用ガスの流出量を確保できることから、ガス貯留部内に一旦貯留された膨張用ガスを、端末側連通孔と元部側連通孔とから、略均等に、バッグ本体内に流出させることができる。
【0011】
具体的には、エアバッグ装置として、バッグ本体を、折り畳まれた状態で、乗員の腰の周囲に巻き掛けられる保持ベルト部によって保持されて、膨張用ガスを内部に流入させて前上方に突出するように膨張し、膨張完了時に、シートに着座している乗員の前方を覆うような構成とし、
インフレーターを、シート側に取り付け、
導管部を、保持ベルト部に略沿うようにバッグ本体から延びて、インフレーターに接続させる構成のものを、例示することができる。
【0012】
このような構成のエアバッグ装置では、バッグ本体を、折り畳まれて、乗員の腰の周囲に巻き掛けられる保持ベルト部によって保持された状態から、前上方に突出するように膨張させる構成であるが、シート側に取り付けられるインフレーターから延びる導管部と、バッグ本体と、を連通させる複数の連通孔が、開口面積を異ならせて構成されていることから、バッグ本体を、展開時の左右へのブレを抑制して、乗員の前方を覆うように、迅速に膨張を完了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態であるエアバッグ装置を搭載させたシートの斜視図である。
図2図1のシートの側面図である。
図3図1のシートの正面図であり、シートベルトが装着された状態を示す。
図4】実施形態のエアバッグ装置において使用されるエアバッグを、単体で膨張させた状態を示す概略斜視図である。
図5図4のエアバッグの前後方向に沿った概略縦断面図である。
図6図4のエアバッグにおいて、連通孔の部位付近を示す左右方向に沿った概略縦断面図である。
図7図4のエアバッグを構成する基布を示す平面図である。
図8図4のエアバッグを折り畳む折畳工程を説明する概略図である。
図9図4のエアバッグを折り畳む折畳工程を説明する概略図であり、図8の後の工程を示す。
図10】実施形態のエアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの正面図である。
図11】実施形態のエアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態のエアバッグ装置Sは、図1~3に示すように、車両のシート1に搭載されている。エアバッグ装置Sは、エアバッグ25を保持する保持ベルト部を構成するシートベルト7と、エアバッグ25と、エアバッグ25に膨張用ガスを供給するインフレーター17と、を備えている。シート1は、背もたれ部2と座部3とを備えている。
【0015】
シートベルト7は、実施形態の場合、シート1に搭載されるもので、シート1に着座した乗員MPを保護するためのベルト本体8と、ベルト本体8に取り付けられるタングプレート12と、タングプレート12を連結させるためのバックル13と、を備える構成とされている。ベルト本体8は、背もたれ部2内に配置される図示しないリトラクタの巻取軸に一端を係止され、他端側を、シート1における座部3の後端左方に配置されるアンカ部材14(図1,2参照)に係止されている。詳細には、ベルト本体8は、背もたれ部2の上端左縁側から外部に露出されるように配置されるもので、実施形態の場合、乗員MPの非着座状態においては、図1,2に示すように、エアバッグ25を保持させている保持ベルト部としてのラップベルト10を、背もたれ部2の前面に露出させるように、構成されている。詳細には、ラップベルト10は、乗員MPの非着座状態において、図1に示すように、背もたれ部2の左縁2a側において、上下方向に略沿うようにして、背もたれ部2の前面に露出されている。ベルト本体8は、ラップベルト10と、背もたれ部2内に収納されるショルダーベルト9と、を有し、乗員着座時においてタングプレート12をバックル13に連結させた状態で、アンカ部材14とバックル13との間において左右方向に略沿うように配置されるラップベルト10によって乗員MPの下半身MD(腰部MW)を拘束し、背もたれ部2の上端左縁側から延びつつバックル13にかけて斜めに配置されるショルダーベルト9によって乗員MPの上半身MU(肩MSから胸部MBにかけて)を拘束する構成とされている(図3参照)。そして、実施形態の場合、乗員着座時に、シート1に着座した乗員MPの腰部MWの前方に配置されるラップベルト10と、後述するカバー47と、が、折り畳まれたエアバッグ25を収納させて保持する保持ベルト部を、構成している。シートベルト7において、背もたれ部2内に配置されている図示しないリトラクタは、プリテンショナー機構を有している。
【0016】
インフレーター17は、シート1側に取り付けられるもので、実施形態の場合、シート1の背面側において、座部3の下方となる位置に、取り付けられている。インフレーター17は、図2に示すように、座部3の下方において軸方向を左右方向に略沿わせて配置される略円柱状のインフレーター本体18(詳細な図示省略)と、インフレーター本体18から延びてエアバッグ25に膨張用ガスを供給する金属製のパイプ部19と、を備えている。パイプ部19は、インフレーター本体18から延びて、先端を、シート1の左方において、座部3と背もたれ部2との境界部位付近に位置させるように、配設されるもので、この先端を、クランプ20を利用して、エアバッグ25における後述する導管部35と接続させる構成とされている(図1,2,11参照)。
【0017】
エアバッグ25は、シートベルト7のラップベルト10を保持ベルト部として、ラップベルト10に保持されつつ、長尺状に折り畳まれて、周囲をカバー47に覆われるもので、具体的には、シートベルト7の装着時におけるラップベルト10の上面側に重ねられるようにして、周囲をカバー47に覆われて、ラップベルト10の領域に配置されている(図3参照)。換言すれば、エアバッグ25は、ラップベルト10とカバー47との間の隙間に、折り畳まれて収納される構成である。また、図1に示すような非装着状態においては、エアバッグ25は、背もたれ部2の前面に露出しているラップベルト10の背面側(背もたれ部2側)に、配置されている。カバー47は、可撓性を有したシート体から構成されて、エアバッグ25の展開膨張時に所定箇所を破断されて、エアバッグ25における後述するバッグ本体26を突出可能に、構成されている。
【0018】
エアバッグ25は、可撓性を有したシート体から形成されるもので、図4~6に示すように、乗員MPを保護可能に膨張するバッグ本体26と、インフレーター17と接続されてインフレーター17から吐出される膨張用ガスをバッグ本体26内に流入させる導管部35と、バッグ本体26をラップベルト10に保持させるための取付部45と、を備えている。
【0019】
バッグ本体26は、可撓性を有したシート体からなる袋状として、膨張完了時の外形形状を、軸方向を左右方向に略沿わせた略三角柱状として構成されるもので、左右の側方から見た状態での膨張完了形状を、前側に斜辺を有するような略直角三角形状とし、前後方向側から見た状態での膨張完了形状を、上下に幅広とした略長方形状とするように、構成されている(図10,11参照)。バッグ本体26は、図4~6に示すように、膨張完了時に乗員MP側(後側)に配置される後壁部29と、後壁部29と前後方向側で対向して配置される前壁部28と、膨張完了時の下端側に配置される下壁部30と、膨張完了時に左右方向側で対向して配置される左壁部31,右壁部32と、を有している。このバッグ本体26は、膨張完了時に、後壁部29によって乗員MPの上半身MUを受け止め可能に構成されており、また、この後壁部29による上半身MUの受止時に、下壁部30を、乗員MPの大腿部MTと当接させて、大腿部MTに支持させることにより、乗員MPを受け止める構成とされている(図11参照)。バッグ本体26は、導管部35を介して、インフレーター17からの膨張用ガスを内部に流入させる構成であり、バッグ本体26と導管部35とは、図5,6に示すように、連通孔40により、相互に連通されている。具体的には、導管部35は、バッグ本体26における後端付近の下面側から左方に延びるように配設されるもので、連通孔40は、バッグ本体26の下壁部30における後端30a側の領域に、配設されている。バッグ本体26は、連通孔40の周縁の部位(バッグ本体26と導管部35とに形成される開口30b,30c,36a,36bの周縁の部位、図6,7参照)で、相互に縫着されることにより、導管部35と連結されている。
【0020】
導管部35は、可撓性を有したシート体からなる袋状として、バッグ本体26から左方に延びるように構成されるもので、先端側を、インフレーター17のパイプ部19と接続可能に開口させた略筒形状とされている。この導管部35は、エアバッグ25の膨張完了時に、ラップベルト10に略沿うように左右方向に略沿って配置されるもので、膨張完了時のバッグ本体26の下面側に配置される元部側領域35aを、インフレーター17に接続される側の部位であるバッグ本体26から左方に延びる先端側領域35b(接続筒部37)よりも幅広として、構成されている。導管部35において、膨張完了時のバッグ本体26の下面側に配置される元部側領域35a(バッグ本体26に重なって配置される連通孔40の配設領域)は、内部に流入した膨張用ガスGを一旦貯留させるガス貯留部36を構成している。このガス貯留部36(元部側領域35a)は、幅寸法を、先端側領域35b(接続筒部37)の2倍程度に、設定されている(図7参照)。また、ガス貯留部36は、左右方向側の幅寸法を、バッグ本体26における後下面側の部位(連通孔40の配置領域)の左右方向側の幅寸法と略同一として、構成されている(図6参照)。導管部35は、接続筒部37(先端側領域35b)の先端37aを、上述したごとく、クランプ20を用いて、インフレーター17のパイプ部19に接続される(図11参照)。
【0021】
バッグ本体26と導管部35とを連通させる連通孔40は、ガス貯留部36の領域内に形成されている。連通孔40は、実施形態の場合、バッグ本体26の左右の中心を挟むようにして、略左右対称となる位置の2箇所に(すなわち、導管部35の軸方向に略沿って2個)並設されるもので、開口面積を異ならせて、構成されている。実施形態の場合、連通孔40は、ともに、開口形状を円形として構成されるもので、右側(ガス貯留部36の端末側、すなわち、インフレーター17から離隔した側)に配置される端末側連通孔40Aの内径寸法D1を、左側(ガス貯留部36の元部側、すなわち、インフレーター17に近接した側)に配置される元部側連通孔40Bの内径寸法D2よりも大きく設定して、開口面積を異ならせている。具体的には、元部側連通孔40Bは、内径寸法D2を、端末側連通孔40Aの内径寸法D1の2/3程度に、設定されている(図7参照)。
【0022】
バッグ本体26をラップベルト10に取り付ける取付部45は、図5,6に示すように、導管部35におけるガス貯留部36の下面側に縫着されている。取付部45は、ラップベルト10を挿通可能に、両端側を開口させた略筒状とされている。そして、この取付部45にラップベルト10を挿通させることにより、エアバッグ25は、ラップベルト10に連結されて、ラップベルト10に保持される構成である。
【0023】
実施形態のエアバッグ25は、図7に示すような基材の周縁相互を結合させて、袋状に形成されている。具体的には、エアバッグ25は、図4~7に示すように、バッグ本体26を構成する乗員側パネル50及び前側パネル55と、導管部35を構成する2枚の導管部用パネル57,58と、取付部45を構成する取付部用パネル59と、から、構成されている。これらの乗員側パネル50,前側パネル55,導管部用パネル57,58,取付部用パネル59は、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。
【0024】
乗員側パネル50は、膨張完了時に乗員MP側に配置されて、主に後壁部29を構成する後壁構成部51と、主に下壁部30を構成する下壁構成部52と、を有しており、この後壁構成部51と下壁構成部52とを、膨張完了時の後下端側で連結させたような外形形状とされている。後壁構成部51は、後壁部29と、左壁部31,右壁部32における後側の領域と、を構成し、下壁構成部52は、下壁部30と、左壁部31,右壁部32における下側の領域と、を構成している。後壁構成部51と下壁構成部52とは、それぞれ、外形形状を略同一とした略六角形状とされている。前側パネル55は、膨張完了時のバッグ本体26における前壁部28を主に構成するもので、詳細には、前壁部28と、左壁部31,右壁部32における前側の領域と、を構成している。前側パネル55は、外形形状を略六角形状とされるもので、具体的には、外形形状を、下左縁51a,後左縁52a相互、下右縁51b,後右縁52b相互を結合させた状態で、残りの外縁51c,52cを離隔させるように平らに展開した状態の後壁構成部51及び下壁構成部52と、略一致させた略六角形状とされている。乗員側パネル50,前側パネル55は、左右対称形とされている。そして、バッグ本体26は、下左縁51a,後左縁52a相互、下右縁51b,後右縁52b相互を結合させた状態の乗員側パネル50(後壁構成部51,下壁構成部52)の外縁51c,52cを、前側パネル55の外周縁55aに結合させることにより、袋状とされている。
【0025】
2枚の導管部用パネル57,58は、外形形状を同一とされるもので、導管部35における上側の領域と下側の領域とを、それぞれ構成している。取付部用パネル59は、外形形状を略長方形板状として、二つ折りされて短手方向側の縁部相互を結合させることにより、取付部45を形成することとなる。
【0026】
実施形態のエアバッグ25は、図8,9に示すように折り畳まれて、シート1に搭載されている。具体的には、図8のA,Bに示すように、前側パネル55を平らに展開するように、前側パネル55と乗員側パネル50とを重ねた状態のバッグ本体26を、乗員側パネル50における後壁構成部51を下壁構成部52側に重ね、前側パネル55を内側で相互に重ねるように、略二つ折りし、この二つ折りバッグ70における左縁70a側と右縁70b側とを、それぞれ、後壁構成部51側に折り返して、図9のAに示すように、左右縮小折りバッグ71を形成する。その後、左右縮小折りバッグ71を、図9のA,Bに示すように、下縁71a側から後壁構成部51側に向かって巻くようにロール折りして、ロール折り部位72を形成し、その後、ロール折り部位72の下側に配置される導管部35の元部側領域35a(ガス貯留部36)を、幅方向の端縁側を、それぞれ、ロール折り部位72の前方若しくは後方から上方側にかけて重ねるようにして、ロール折り部位72と元部側領域35aとの周囲に、折畳形状を維持してエアバッグの展開膨張時に破断可能なテープ材75を巻き付ければ(図9のB参照)、エアバッグ25を折り畳むことができる。
【0027】
実施形態のエアバッグ装置Sでは、車両に搭載されたシート1に、シートベルト7を装着しつつ乗員MPが着座した状態で、インフレーター17が作動すれば、インフレーター17から吐出される膨張用ガスが、導管部35を経てバッグ本体26内に流入することとなり、エアバッグ25におけるバッグ本体26が、テープ材75とカバー47とを破断させるようにして、保持ベルト部としてのラップベルト10から前上方に突出しつつ、図3の二点鎖線及び図10,11に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0028】
そして、実施形態のエアバッグ装置Sでは、エアバッグ25において、バッグ本体26と導管部35とを連通させる連通孔40(40A,40B)が、導管部35の軸方向に沿って複数個並設される構成であるものの、開口面積を異ならせて構成されている。そのため、連通孔40(40A,40B)ごとのバッグ本体26側への膨張用ガスGの流出量を、開口面積を異ならせることにより、調整することができて、バッグ本体26側への膨張用ガスの流出量を、各連通孔40(40A,40B)において、略同一に設定することも可能となる。その結果、バッグ本体26を、展開時のブレの発生を抑制して、迅速に膨張させることが可能となる。
【0029】
したがって、実施形態のエアバッグ装置Sでは、エアバッグ25を迅速に膨張させることができて、膨張したエアバッグ25により、乗員を安定して保護することができる。
【0030】
具体的には、実施形態のエアバッグ装置Sのエアバッグ25では、導管部35が、バッグ本体26に重なって配置される領域に、インフレーター17に接続される側の部位である接続筒部37よりも幅広として、内部に流入した膨張用ガスGを一旦貯留させるガス貯留部36を、有する構成とされている。そして、連通孔40(40A,40B)は、ガス貯留部36の領域内に、導管部35の軸方向に沿って2個並設されるとともに、ガス貯留部36の端末側(インフレーター17から離隔した側)に配置される端末側連通孔40Aを、元部側(先端側領域35b側、すなわち、インフレーター17側)に配置される元部側連通孔40Bよりも開口面積を大きく設定されるように、構成されている。実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター17から吐出される膨張用ガスGは、導管部35に形成されるガス貯留部36内に一旦貯留された状態で、2つの連通孔40A,40Bを経て、バッグ本体26内に流出されることとなるが、2つの連通孔40A,40Bにおいて、ガス貯留部36の端末側、すなわち、インフレーター17から離隔した側に配置される端末側連通孔40Aが、元部側、すなわち、インフレーター17側に配置される元部側連通孔40Bよりも、開口面積を大きく設定されている。そのため、インフレーター17側に配置されて膨張用ガスGを流出させやすい元部側連通孔40Bからの膨張用ガスの流出量を抑制して、インフレーター17から離れた側に配置されて相対的に膨張用ガスを流出させ難い端末側連通孔40Aを、開口面積を大きく設定することにより、元部側連通孔40Bと略同等の膨張用ガスの流出量を確保できることから、ガス貯留部36内に一旦貯留された膨張用ガスGを、端末側連通孔40Aと元部側連通孔40Bとから、略均等に、バッグ本体26内に流出させることができる。
【0031】
実施形態のエアバッグ装置Sでは、バッグ本体26を、折り畳まれて、乗員MPの腰部MWの周囲に巻き掛けられる保持ベルト部としてのラップベルト10によって保持された状態から、前上方に突出するように膨張させる構成であるが、シート1側に取り付けられるインフレーター17から延びる導管部35と、バッグ本体26と、を連通させる2つの連通孔40A,40Bが、開口面積を異ならせて構成されていることから、バッグ本体26を、展開時の左右へのブレを抑制して、乗員MPの前方を覆うように、迅速に膨張を完了させることができる。その結果、膨張を完了させたバッグ本体26により、乗員MPを安定して保護することができる。
【0032】
詳細に説明すれば、実施形態のエアバッグ装置Sでは、エアバッグ25は、バッグ本体26をロール折りして形成されるロール折り部位72の下面側に、導管部35におけるガス貯留部36を重ねるようにして、ラップベルト10に保持される構成であり、ガス貯留部36は、ロール折り部位72に合わせて、幅寸法を若干狭められるように前縁側と後縁側とを折られた状態で、周囲をテープ材75にくるまれている(図3,9のB参照)。そして、インフレーター17から吐出された膨張用ガスGが、導管部35における先端側領域35bを経て、ガス貯留部36(元部側領域35a)に到達すると、膨張用ガスGは、一旦ガス貯留部36内に貯留されつつ、端末側連通孔40Aと元部側連通孔40Bとから、バッグ本体26内に流出されて、バッグ本体26が、ロール折りを解消しつつ、前上方に向かって突出するように膨張することとなるが、このとき、ガス貯留部36は、インフレーター17側となる左側から、折られた状態を解消しつつ、内部に膨張用ガスGを流入させて膨張することから、インフレーター17側に配置される元部側連通孔40Bから膨張用ガスを流出させやすい。しかしながら、この元部側連通孔40Bは、相対的に開口面積を小さく設定されていることから、膨張用ガスの流入初期に、瞬時に、膨張用ガスを流出させ難く、一旦、ガス貯留部36に、ある程度、膨張用ガスGを貯留させることができる。そして、インフレーター17から離隔した側に配置されていても相対的に開口面積を大きく設定されている端末側連通孔40Aと、元部側連通孔40Bと、から、略均等に、膨張用ガスGを、バッグ本体26内に流出させることができ、バッグ本体26を、左右方向側へのブレを抑制して、前上方に突出させることができる。
【0033】
実施形態のエアバッグ装置Sでは、エアバッグ25を保持させる保持ベルト部として、シートベルト7のラップベルト10を利用しているが、エアバッグを保持させる保持ベルト部は、ラップベルトに限定されるものではなく、例えば、シートベルトとは別体のベルトを、シートに着座した乗員の腰部に巻き掛けるように配置させ、このベルトに、エアバッグを保持させる構成としてもよい。また、実施形態のエアバッグ装置Sでは、シートベルト7のラップベルト10にエアバッグ25を保持させる構成であるものの、インフレーター17が、シートベルト7のプリテンショナー機構の作動よりも遅れて作動することから、シートベルト7により乗員MPのシート1に対する着座状態を安定して維持させた状態で、エアバッグ25を膨張させることができ、エアバッグ25とシートベルト7とにより、乗員MPを安定して保護することができる。
【0034】
また、実施形態のエアバッグ装置Sでは、シートベルト7とインフレーター17とが、シート1に搭載される構成とされている。そのため、シート1を前後で大きくスライドさせたり回転させたりして、車両に対して移動させた状態で使用する場合にも、シート1に着座した乗員MPを、エアバッグ25によって的確に保護することができる。
【0035】
なお、実施形態のエアバッグ25では、導管部35がガス貯留部36を有する構成とされているが、導管部として、ガス貯留部を備えず、インフレーターと接続される先端側から、バッグ本体の下面側に配置される元部側まで、幅寸法を全長にわたって一定としたものを、使用する構成としてもよい。また、実施形態のエアバッグ25では、2個並設される連通孔40A,40Bが、インフレーターから離隔した側の開口面積を大きくするように、設定されているが、連通孔の開口面積の差異は、実施形態に限定されるものではなく、バッグ本体への膨張用ガスの流出量等に応じて、適宜変更可能であり、例えば、幅寸法を全長にわたって一定として構成される導管部を用いる場合に、インフレーター側の連通孔の開口面積を、インフレーターから離れた側の連通孔の開口面積よりも大きく設定するように、構成してもよい。また、連通孔の配置数も、実施形態に限定されるものではなく、3個以上配設させる構成としてもよい。
【0036】
また、実施形態では、エアバッグ装置Sとして、エアバッグ25を、乗員MPの腰部MWに巻き掛けられた保持ベルト部(ラップベルト10)に保持させて、バッグ本体26を、前上方に突出するように膨張させる構成のものを、例に採り説明しているが、本発明を適用可能なエアバッグ装置は、実施形態に限定されるものではない。インフレーターから吐出される膨張用ガスを、導管部を経てバッグ本体の内部に流入させて膨張させる構成のエアバッグを備えるものであればよく、例えば、膝保護用のエアバッグ装置等にも、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1…シート、7…シートベルト、10…ラップベルト(保持ベルト部)、17…インフレーター、25…エアバッグ、26…バッグ本体、35…導管部、35a…元部側領域、35b…先端側領域、36…ガス貯留部、37…接続筒部、40…連通孔(40A…端末側連通孔、40B…元部側連通孔)、MP…乗員、S…エアバッグ装置。
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