(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014597
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】半導体集積回路、半導体装置及び温度特性調整方法
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
G05F1/56 320C
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118629
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤野 隆良
【テーマコード(参考)】
5H430
【Fターム(参考)】
5H430BB01
5H430BB05
5H430BB09
5H430BB11
5H430EE04
5H430EE15
5H430FF02
5H430FF13
5H430HH03
5H430JJ07
5H430LA07
(57)【要約】
【課題】過電流保護を行うとともに温度特性の調整を行うことが可能な半導体集積回路及び半導体装置を提供する。
【解決手段】第1電圧の供給を受けて動作し、基準電圧に基づいて制御電圧を出力するオペアンプと、第1電極が第1電圧の供給ラインである第1電圧ラインに接続され、制御電圧に基づいて第1電流を送出する第1の出力トランジスタと、前記オペアンプに接続され、温度係数調整用の抵抗部を備えた過電流保護回路と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電圧の供給を受けて動作し、基準電圧に基づいて制御電圧を出力するオペアンプと、
第1電極が前記第1電圧の供給ラインである第1電圧ラインに接続され、前記制御電圧に基づいて第1電流を送出する第1の出力トランジスタと、
前記オペアンプに接続され、温度係数調整用の抵抗部を備えた過電流保護回路と、
を備えたことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項2】
前記過電流保護回路は、
前記制御電圧に基づいて第2電流を送出する電流送出トランジスタと、
カレントミラーを構成するトランジスタ対であって、前記電流送出トランジスタの第2電極と前記第1電圧とは異なる第2電圧の供給ラインである第2電圧ラインとの間に接続され、前記第2電流の電流量に応じた電流量を有する第3電流を送出する第1トランジスタ対と、
カレントミラーを構成するトランジスタ対であって、前記第1トランジスタ対と前記第1電圧ラインとの間に接続され、前記第3電流の電流量に応じた電流量を有する第4電流を送出する第2トランジスタ対と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記電流送出トランジスタの制御電極は前記制御電圧が供給される制御電圧ラインに接続され、
前記第1トランジスタ対は、第2電極及び制御電極が前記電流送出トランジスタの前記第2電極に接続され且つ第1電極が前記第2電圧ラインに接続された第1トランジスタと、制御電極が前記第1トランジスタの前記制御電極に接続された第2トランジスタと、を有し、
前記第2トランジスタ対は、第2電極が前記制御電圧ラインに接続された第3トランジスタと、第2電極及び制御電極が前記第2トランジスタの第1電極に接続され且つ第1電極が前記第1電圧ラインに接続された第4トランジスタと、を有することを特徴とする請求項2に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記抵抗部は、一端が前記第1電圧ラインに接続され、他端が前記電流送出トランジスタの第1電極に接続された第1抵抗を有することを特徴とする請求項3に記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記第1抵抗は、負の温度特性を有し、前記第2電流の温度係数を調整するために設けられた抵抗素子であることを特徴とする請求項4に記載の半導体集積回路。
【請求項6】
前記抵抗部は、一端が前記第2電圧ラインに接続され、他端が前記第1トランジスタ対の前記第2トランジスタの第2電極に接続された第2抵抗を有することを特徴とする請求項4又は5に記載の半導体集積回路。
【請求項7】
前記第2抵抗は、負の温度特性を有し、前記第3電流の温度係数を調整するために設けられた抵抗素子であることを特徴とする請求項6に記載の半導体集積回路。
【請求項8】
前記抵抗部は、一端が前記第1電圧ラインに接続され、他端が前記第2トランジスタ対の前記第3トランジスタの第1電極に接続された第3抵抗を有することを特徴とする請求項6又7に記載の半導体集積回路。
【請求項9】
前記第3抵抗は、負の温度特性を有し、前記第4電流の温度係数を調整するために設けられた抵抗素子であることを特徴とする請求項8に記載の半導体集積回路。
【請求項10】
前記過電流保護回路は、
第1電極が前記第1電圧ラインに接続され、前記制御電圧に基づいて第2電流を第2電極から送出する電流送出トランジスタと、
カレントミラーを構成するトランジスタ対であって、前記電流送出トランジスタの前記第2電極と前記第1電圧とは異なる第2電圧の供給ラインである第2電圧ラインとの間に接続され、前記第2電流の電流量に応じた電流量を有する第3電流を送出する第1トランジスタ対と、
カレントミラーを構成するトランジスタ対であって、前記第1トランジスタ対と第3電圧の供給ラインである第3電圧ラインとの間に接続され、前記第3電流の電流量に応じた電流量を有する第4電流を送出する第2トランジスタ対と、
カレントミラーを構成するトランジスタ対であって、前記第2トランジスタ対と前記第2電圧ラインとの間に接続され、前記第4電流の電流量に応じた電流量を有する第5電流を送出する第3トランジスタ対と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項11】
前記電流送出トランジスタの制御電極は前記制御電圧が供給される制御電圧ラインに接続され、
前記第1トランジスタ対は、第2電極及び制御電極が前記電流送出トランジスタの前記第1電極に接続され且つ第1電極が前記第2電圧ラインに接続された第1トランジスタと、制御電極が前記第1トランジスタの前記制御電極に接続された第2トランジスタと、を有し、
前記第2トランジスタ対は、第2電極及び制御電極が前記第2トランジスタの第2電極に接続され且つ第1電極が前記第3電圧ラインに接続された第3トランジスタと、制御電極が前記第3トランジスタの前記制御電極に接続された第4トランジスタと、を有し、
前記第3トランジスタ対は、第2電極及び制御電極が前記第4トランジスタの第2電極に接続され且つ第1電極が前記第2電圧ラインに接続された第5トランジスタと、制御電極が前記第5トランジスタの前記制御電極に接続され且つ第2電極が前記オペアンプに接続された第6トランジスタと、を有することを特徴とする請求項10に記載の半導体集積回路。
【請求項12】
前記抵抗部は、一端が前記第2電圧ラインに接続され、他端が前記第1トランジスタ対の前記第2トランジスタの第1電極に接続された第1抵抗を有することを特徴とする請求項11に記載の半導体集積回路。
【請求項13】
前記第1抵抗は、負の温度特性を有し、前記第3電流の温度係数を調整するために設けられた抵抗素子であることを特徴とする請求項12に記載の半導体集積回路。
【請求項14】
前記抵抗部は、一端が前記第3電圧ラインに接続され、他端が前記第2トランジスタ対の前記第4トランジスタの第1電極に接続された第2抵抗を有することを特徴とする請求項12又は13に記載の半導体集積回路。
【請求項15】
前記第2抵抗は、負の温度特性を有し、前記第4電流の温度係数を調整するために設けられた抵抗素子であることを特徴とする請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記抵抗部は、一端が前記第2電圧ラインに接続され、他端が前記第3トランジスタ対の前記第6トランジスタの第1電極に接続された第3抵抗を有することを特徴とする請求項14又は15に記載の半導体集積回路。
【請求項17】
前記第3抵抗は、負の温度特性を有し、前記第5電流の温度係数を調整するために設けられた抵抗素子であることを特徴とする請求項16に記載の半導体集積回路。
【請求項18】
前記第1電圧は高電源電圧であり、
前記第2電圧は接地電圧であり、
前記第3電圧は前記第1電圧よりも低い低電源電圧であり、
前記第1の出力トランジスタ及び前記電流送出トランジスタは、前記第1電圧に応じた高耐圧のMOSトランジスタから構成され、
前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタ、前記第3トランジスタ、前記第4トランジスタ、前記第5トランジスタ及び前記第6トランジスタは、前記第3の電圧に応じた低耐圧のMOSトランジスタから構成されていることを特徴とする請求項11乃至17のうちいずれか1項に記載の半導体集積回路。
【請求項19】
前記第3トランジスタ対の前記第6トランジスタは、前記オペアンプに設けられた過電流保護端に接続されていることを特徴とする請求項11乃至18のうちいずれか1項に記載の半導体集積回路。
【請求項20】
前記半導体集積回路と、
前記第1電流を受け、当該第1電流の電流量に応じた電流量を有する出力電流を送出する第2の出力トランジスタと、
を備えたことを特徴とする請求項3乃至9、11乃至19のうちいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項21】
前記第2の出力トランジスタは、第1電極が前記第1電圧ラインに接続され、第2電極が前記第1の出力トランジスタの第2電極に接続され、第3電極が前記出力電流の出力ノードに接続された、バイポーラトランジスタであることを特徴とする請求項20に記載の半導体装置。
【請求項22】
前記出力ノードと前記第2電圧ラインとの間に設けられ、前記出力ノードの出力電圧と前記第2電圧とを分圧して帰還電圧を生成する帰還電圧生成部と、 前記出力ノードを介して接続された負荷と、
を備え、
前記オペアンプは、前記基準電圧の印加を受ける第1入力端と、前記帰還電圧の印加を受ける第2入力端と、前記制御電圧ラインを介して前記第1の出力トランジスタの制御電極に接続された出力端と、を有し、前記基準電圧と前記帰還電圧との電圧差に応じた前記制御電圧を前記第1の出力トランジスタの前記制御電極に印加することを特徴とする請求項21に記載の半導体装置。
【請求項23】
請求項1に記載の半導体集積回路における温度係数調整方法であって、
前記抵抗部の抵抗値を変化させ、前記第1電流の温度係数を調整するステップを含むことを特徴とする温度特性調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路及び半導体装置に関し、特に過電流保護回路を有する半導体集積回路及び過電流保護回路を有する半導体装置の温度特性調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リニアレギュレータ回路において、過電流からリニアレギュレータ回路に接続されている回路を保護するための過電流保護回路が設けられている(例えば、特許文献1)。過電流保護回路は、例えば、出力トランジスタに流れる電流をコピーするためのPチャネル型MOSトランジスタと、過電流保護の閾値電流を調整し出力トランジスタのゲートに帰還させるためのNチャネル型MOSトランジスタからなる第1のトランジスタ対及びPチャネル型MOSトランジスタからなる第2のトランジスタ対と、から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リニアレギュレータ回路の出力電流を大きくするため、リニアレギュレータ回路を構成するチップの外部に、オペアンプの出力を直接ゲートに受ける第1の出力トランジスタとは別に、第2の出力トランジスタとしてのバイポーラトランジスタを設けることが行われている。第2の出力トランジスタは、第1の出力トランジスタから出力された電流に応じて出力電流を出力する。
【0005】
過電流保護の閾値電流は、環境温度に伴って変化しないことが望ましい。チップ外部に設けられた第2の出力トランジスタの電流増幅率は、温度の上昇に伴いその値が上昇するという、正の温度特性を持っている。そのため、第2の出力トランジスタから出力される出力電流が一定であるときには、第1の出力トランジスタから出力される電流は、温度の上昇に伴いその値が低下するという、負の温度特性を持つことになる。そして、第1の出力トランジスタの電流をコピーする過電流保護回路のPチャネル型MOSトランジスタを流れる電流も負の温度特性となる。よって、過電流保護回路のPチャネル型MOSトランジスタを流れる電流が温度に伴って変化することになるため、出力電流の上限値である過電流保護の閾値電流も温度に伴って変化してしまう。したがって、過電流保護の閾値電流が温度に伴って変化しないよう、温度特性の調整を行う必要があるという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、温度特性の調整を行うことが可能な半導体集積回路及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る半導体集積回路は、第1電圧の供給を受けて動作し、基準電圧に基づいて制御電圧を出力するオペアンプと、第1電極が前記第1電圧の供給ラインである第1電圧ラインに接続され、前記制御電圧に基づいて第1電流を送出する第1の出力トランジスタと、前記オペアンプに接続され、温度係数調整用の抵抗部を備えた過電流保護回路と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る半導体集積回路及び半導体装置によれば、過電流保護を行うとともに温度特性の調整を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例1に係る半導体装置の構成を示す回路図である。
【
図2】実施例1の半導体装置において抵抗部の抵抗値を変化させた際の電流の温度特性の一例を示す温度特性図である。
【
図3】本発明の実施例2に係る半導体装置の構成を示す回路図である。
【
図4】実施例2の半導体装置において抵抗部の抵抗値を変化させた際の電流の温度特性の一例を示す温度特性図である。
【
図5】本発明の実施例3に係る半導体装置の構成を示す回路図である。
【
図6】実施例3の半導体装置におけるオペアンプの構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下の各実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一または等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例0011】
図1は、本発明の実施例1に係る半導体装置100の構成を示す回路図である。半導体装置100は、基準電圧生成部11と、オペアンプOP1と、第1の出力トランジスタMP1と、第2の出力トランジスタQ1と、抵抗R1及びR2と、過電流保護回路12と、から構成されている。基準電圧生成部11と、オペアンプOP1と、第1の出力トランジスタMP1と、第2の出力トランジスタQ1と、抵抗R1及びR2によって、レギュレータ回路が構成されている。半導体装置100の外部には負荷LDが接続され、半導体装置100の出力電流Ioutがノードn1を介して負荷LDに供給される。また、負荷LDは、半導体装置100内に設けられていてもよい。
【0012】
基準電圧生成部11、オペアンプOP1、第1の出力トランジスタMP1、抵抗R1、R2、及び過電流保護回路12は、同一のチップである半導体集積回路CP1に形成されている。一方、第2の出力トランジスタQ1は、半導体集積回路CP1の外部に設けられ、半導体集積回路CP1内の第1の出力トランジスタMP1及び抵抗R1に接続されている。
【0013】
基準電圧生成部11は、半導体装置100の基準電圧を生成する基準電圧源である。基準電圧生成部11は、基準電圧RVを生成し、オペアンプOP1の反転入力端に供給する。
【0014】
オペアンプOP1は、反転入力端、非反転入力端及び出力端を有し、反転入力端の入力電圧と非反転入力端の入力電圧との電圧差に応じた電圧を出力端から出力する演算増幅器である。本実施例では、オペアンプOP1の反転入力端には、基準電圧生成部11により生成された基準電圧RVが入力される。また、オペアンプOP1の非反転入力端には、抵抗R1及びR2により生成された帰還電圧FVが入力される。オペアンプOP1は、電源電圧VDDの供給を受けて動作し、基準電圧RVと帰還電圧FVとの電圧差に応じた制御電圧CVを制御電圧ラインLCに出力する。
【0015】
第1の出力トランジスタMP1は、制御電極及び2つの電極を有している。第1の出力トランジスタMP1は、例えば第1導電型であるPチャネル型MOSFETから構成されている。ここで制御電極はゲート、2つの電極はソースとドレインであって、以下、制御電極はゲート、各電極はソースまたはドレインを用いて説明する。第1の出力トランジスタMP1は、オペアンプOP1から出力された制御電圧CVの印加を受けて電流I0を送出する。第1の出力トランジスタMP1のソース及びバックゲートは、第1電圧である電源電圧VDDの供給ラインLAに接続されている。第1の出力トランジスタMP1のゲートは、制御電圧ラインLCに接続されている。第1の出力トランジスタMP1は、ゲートに印加された制御電圧CVに応じた電流I0をドレインから送出する。
【0016】
トランジスタQ1は、半導体集積回路CP1の外部に設けられ、第1の出力トランジスタMP1から出力された電流I0に基づいて出力電流Ioutを送出する第2の出力トランジスタである。トランジスタQ1は、3つの電極を有している。トランジスタQ1は、例えばNPN型のバイポーラトランジスタから構成されている。ここで3つの電極はベース、コレクタ及びエミッタであって、以下、各電極はベース、コレクタまたはエミッタを用いて説明する。トランジスタQ1のコレクタは、電源電圧VDDの供給ラインLAに接続されている。トランジスタQ1のベースは、第1の出力トランジスタMP1のドレインに接続されている。トランジスタQ1のエミッタは、出力電圧Voutの出力ノードであるノードn1に接続されている。トランジスタQ1のエミッタからは、電流I0の電流量に応じた電流量を有する出力電流Ioutが送出される。
【0017】
抵抗R1及びR2は、帰還電圧FVを生成する帰還電圧生成部を構成する抵抗素子である。抵抗R1の一端は、ノードn1に接続されている。抵抗R1の他端は、ノードn2に接続されている。抵抗R2の一端は、ノードn2に接続されている。抵抗R2の他端は、第2電圧である接地電位GNDの供給ラインLBに接続されている。抵抗R1及びR2によって、ノードn1の電圧である出力電圧Voutと接地電圧GNDとが分圧され、帰還電圧FVとしてノードn2から出力される。帰還電圧FVは、オペアンプOP1の非反転入力端に供給される。
【0018】
過電流保護回路12は、電源電圧VDDの供給ラインLAと接地電圧GNDの供給ラインLBとに接続され、第1の出力トランジスタMP1から出力された電流I0の電流量を所定の電流量以下に制限し、負荷LDに過電流が流れるのを防ぐ回路である。本実施例の過電流保護回路12は、トランジスタMP2、MP3、MP4、MN1、MN2、及び抵抗R3から構成されている。
【0019】
トランジスタMP2は、第1の出力トランジスタMP1とカレントミラーを構成し、第1の出力トランジスタMP1の出力電流である電流I0をコピーした電流、すなわち電流I0の電流量に応じた電流量を有する電流I1を送出する電流送出トランジスタである。本実施例では、トランジスタMP2は第1の出力トランジスタMP1と同じサイズを有しており、抵抗R3の抵抗値が0の時に電流I0と同じ電流量を有する電流I1を送出する。
【0020】
トランジスタMP2は、制御電極及び2つの電極を有している。トランジスタMP2は、例えばPチャネル型MOSFETから構成されている。ここで制御電極はゲート、2つの電極はソースとドレインであって、以下、制御電極はゲート、各電極はソースまたはドレインを用いて説明する。トランジスタMP2のゲートは、制御電圧CVの供給ラインである制御電圧ラインLCに接続されている。トランジスタMP2のバックゲートは、電源電圧VDDの供給ラインLAに接続されている。トランジスタMP2のドレインは、ラインL1に接続されている。かかる構成により、トランジスタMP2のドレインからラインL1に電流I1が送出される。
【0021】
トランジスタMN1及びMN2は、カレントミラーを構成する第1トランジスタ対である。トランジスタMN1及びMN2の各々は、例えばNチャネル型MOSFETから構成されている。本実施例では、トランジスタMN1及びMN2は、互いに同じサイズを有する。
【0022】
トランジスタMN1は、制御電極及び2つの電極を有している。トランジスタMN1がNチャネル型MOSFETである場合、制御電極はゲート、2つの電極はソースとドレインである。以下、制御電極はゲート、各電極はソースまたはドレインを用いて説明する。トランジスタMN1のソース及びバックゲートは、接地電圧GNDの供給ラインLBに接続されている。トランジスタMN1のゲート及びドレインは、互いに接続されるとともに、ラインL1を介してトランジスタMP2のドレインに接続されている。
【0023】
トランジスタMN2は、制御電極及び2つの電極を有している。トランジスタMN2がNチャネル型MOSFETである場合、制御電極はゲート、2つの電極はソースとドレインである。以下、制御電極はゲート、各電極はソースまたはドレインを用いて説明する。トランジスタMN2のソース及びバックゲートは、接地電圧GNDの供給ラインLBに接続されている。トランジスタMN2のドレインは、ラインL2に接続されている。トランジスタMN2のゲートは、トランジスタMN1のゲート及びドレインに接続されている。
【0024】
トランジスタMN1及びMN2によって構成されるカレントミラーにより、ラインL1の電流I1をコピーした電流、すなわち電流I1の電流量に応じた電流量を有する電流I2がラインL2に送出される。本実施例では、トランジスタMN1とMN2とが同じサイズを有するため、電流I1と同じ電流量を有する電流I2がラインL2に送出される。
【0025】
トランジスタMP3及びMP4は、カレントミラーを構成する第2トランジスタ対である。トランジスタMP3及びMP4の各々は、例えばPチャネル型MOSFETから構成されている。本実施例では、トランジスタMP3及びMP4は、互いに同じサイズを有する。
【0026】
トランジスタMP3は、制御電極及び2つの電極を有している。トランジスタMP3がPチャネル型MOSFETである場合、制御電極はゲート、一対の電極はソースとドレインである。以下、制御電極はゲート、各電極はソースまたはドレインを用いて説明する。トランジスタMP3のソース及びバックゲートは、電源電圧VDDの供給ラインLAに接続されている。トランジスタMP3のドレインは、制御電圧CVの供給ラインである制御電圧ラインLCに接続されている。トランジスタMP3のゲートは、ラインL2に接続されている。
【0027】
トランジスタMP4は、制御電極及び一対の電極を有している。トランジスタMP4がPチャネル型MOSFETである場合、制御電極はゲート、一対の電極はソースとドレインである。以下、制御電極はゲート、各電極はソースまたはドレインを用いて説明する。トランジスタMP4のソース及びバックゲートは、電源電圧VDDの供給ラインLAに接続されている。トランジスタMP4のゲート及びドレインは、トランジスタMP3のゲートに接続されるとともに、ラインL2に接続されている。
【0028】
トランジスタMP3及びMP4によって構成されるカレントミラーにより、ラインL2の電流I2をコピーした電流、すなわち電流I2の電流量に応じた電流量を有する電流I3がトランジスタMP3より送出される。本実施例では、トランジスタMP3とMP4とが同じサイズを有するため、電流I2と同じ電流量を有する電流I3が送出される。
【0029】
トランジスタMN1及びMN2により電流I1をコピーした電流I2が送出され、トランジスタMP3及びMP4により電流I2をコピーした電流I3が送出されることで、電流I3の電流量に応じて制御ラインLCの電圧が電源電圧VDD側に引き上げられる。よって、トランジスタMN1及びMN2、トランジスタMP3及びMP4により、制御電圧CVが調整され、第1の出力トランジスタから出力する電流I0の電流量が調整される。すなわち、過電流保護の閾値電流が調整される。ここで、過電流保護の閾値電流とは、出力電流Ioutの上限値のことをいう。この閾値電流を負荷LDの条件に合わせて設定することで、負荷LDに過電流が流れるのを防ぐことができる。
【0030】
抵抗R3は、一端が電源電圧VDDの供給ラインLAに接続され、他端がトランジスタMP2のソースに接続されている。抵抗R3は、負の温度特性を有し、ラインL1を流れる電流I1の温度係数を調整するために設けられた温度係数調整用の抵抗素子である。ここで温度特性とは、温度変化に伴う特性の変化をいい、温度係数とは、温度変化に対する変化量、つまり傾きのことをいう。すなわち、負の温度特性とは温度の上昇に伴いその値が低下することをいう。抵抗R3は、抵抗部の一例である。本実施例では、抵抗R3の抵抗値を変化させることにより、電流I1の温度係数を調整することができる。この温度係数の調整については後述する。
【0031】
また、抵抗R3は、過電流保護の閾値電流を調整するために設けられた電流制限用の抵抗素子でもある。本実施例では、抵抗R3の抵抗値を変化させることにより、電流I1の電流量を調整することができるため、これにより制御電圧CVを調整することができる。したがって、抵抗R3の抵抗値を変化させることにより、過電流保護の閾値電流を調整することができる。
【0032】
まず、
図1に示す本実施例の半導体装置100において過電流保護回路12の動作について説明する。第1の出力トランジスタMP1が制御電圧CVの印加を受けて電流I0を送出し、トランジスタMP2によって、電流I0をコピーした電流I1がラインL1に送出される。そして、トランジスタMN1及びMN2によってラインL1の電流I1をコピーした電流I2がラインL2に送出され、トランジスタMP3及びMP4によってラインL2の電流I2をコピーした電流I3がトランジスタMP3より送出される。そして、電流I3の電流量に応じて制御ラインLCの電圧が電源電圧VDD側に引き上げられることにより、第1の出力トランジスタの電流I0の電流量が制限され、それに伴い出力電流Ioutの電流量が制限される。これにより、負荷LDに過電流が流れることが防止される。
【0033】
次に、温度係数の調整について説明する。まず、
図1に示す本実施例の半導体装置100において、半導体集積回路CP1の外部に設けられた第2の出力トランジスタであるトランジスタQ1の電流増幅率hfeは、正の温度特性を有する。そのため、第2の出力トランジスタQ1から出力される出力電流Ioutが一定であるときは、第1の出力トランジスタMP1から出力される電流I0は負の温度特性を持つことになる。そして、トランジスタMP2のドレインから流れる電流I1は、第1の出力トランジスタMP1から出力される電流I0をコピーした電流であるので、電流I1も負の温度特性となる。
【0034】
図2は、抵抗R3の抵抗値を変化させた際にトランジスタMP2のドレインに流れる電流I1の温度特性の一例を示す温度特性図である。
図2において、一例として抵抗R3の抵抗値が0の場合を直線、抵抗R3の抵抗値がr1の場合を点線、抵抗R3の抵抗値がr2の場合を一点鎖線でそれぞれ示す。ここで抵抗値は、0<r1<r2の関係の抵抗値である。
【0035】
図2より、抵抗R3の抵抗値を0、r1、r2に変化させたときの電流I1の温度係数が分かる。上記の通り、電流I1の温度係数とは、温度変化に対する電流I1の電流値の変化量、つまり傾きのことを指す。それぞれの抵抗値における電流I1の温度係数を比較すると、抵抗R3の抵抗値が0の場合の温度係数より抵抗値r1の場合の温度係数の方が大きい。さらに、抵抗R3の抵抗値がr1の場合の温度係数より抵抗値がr2の場合の温度係数の方が大きい。温度特性は、温度変化に伴う特性の変化であり、より小さいものであることが好ましいため、抵抗R3は電流I1の温度係数の絶対値が小さくなるような抵抗値とすることが好ましい。したがって、電流I1の温度特性が例えば
図2のような温度特性を示すのであれば、電流I1の温度係数の絶対値が小さくなるように、抵抗値の最も大きいr2を抵抗R3の抵抗値として選択することが好ましい。
【0036】
このように、抵抗R3の抵抗値を大きくすることにより、電流I1の温度係数を、正の温度特性側に調整することができる。正の温度特性側とは、電流I1の温度特性が正の温度特性に変化した場合に限らず、
図2に示すように電流I1の温度係数が大きくなり、温度係数が正の温度特性に近づいた場合も含む。なお、抵抗R3の抵抗値の調整は、例えば半導体装置100の製造時に行われる。
【0037】
以上のように、本実施例の半導体装置100は、温度特性調整用抵抗である抵抗R3を有する。トランジスタMP2の出力電流である電流I1は、負の温度係数を有するが、抵抗R3の抵抗値を調整することにより、トランジスタMP2の出力電流である電流I1の温度係数を正の温度特性側に調整することができる。
【0038】
したがって、本実施例の半導体集積回路CP1及び半導体装置100によれば、過電流保護回路によって過電流保護を行うとともに、温度特性の調整を行うことが可能となる。
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例2の半導体装置は、実施例1に抵抗R4を追加した構成であり、過電流保護回路の構成において実施例1の半導体装置と異なる。
基準電圧生成部11、オペアンプOP1、第1の出力トランジスタMP1、抵抗R1、R2、及び過電流保護回路22は、同一のチップである半導体集積回路CP2に形成されている。一方。第2の出力トランジスタQ1は、半導体集積回路CP2の外部に設けられ、半導体集積回路CP2内の第1の出力トランジスタMP1及び抵抗R1に接続されている。
抵抗R4は、一端が接地電圧GNDの供給ラインLBに接続され、他端がトランジスタMN2のソースに接続されている。抵抗R4は、負の温度特性を有し、ラインL2を流れる電流I2の温度係数を調整するために設けられた温度係数調整用の抵抗素子である。抵抗R4は、抵抗部の一例である。本実施例では、抵抗R4の抵抗値を変化させることにより、電流I2の温度係数を調整することができる。この温度係数の調整については後述する。
また、抵抗R4は、過電流保護12の閾値電流を調整するために設けられた電流制限用の抵抗素子でもある。本実施例では、抵抗R4の抵抗値を変化させることにより、電流I2の電流量を調整することができるため、これにより制御電圧CVを調整することができる。したがって、抵抗R4の抵抗値を変化させることにより、過電流保護の閾値電流を調整することができる。
また、半導体装置200では、実施例1の半導体装置100と同様、抵抗R3の抵抗値を調整することにより、トランジスタMP2に流れる電流I1の温度係数を正の温度特性側に調整することができる。すなわち、本実施例の半導体装置200によれば、抵抗R3を用いた調整及び抵抗R4を用いた調整という二段階の調整によって、トランジスタMP2に流れる電流I及びトランジスタMN2を流れる電流I2の温度係数を正の温度特性側に調整することができる。
例えば、仮に温度係数調整用抵抗として抵抗R3のみが設けられ、抵抗R3の抵抗値のみを変化させて調整を行う場合、トランジスタQ1の電流増幅率hfeの温度係数が大きいと、抵抗R3の抵抗値を大きくする必要がある。このため、数式1において、抵抗R3の抵抗値の増大に伴い、トランジスタMP2の閾値電圧VthMP2も大きくなる。特に基板電位が0Vのときのトランジスタの閾値電圧である閾値電圧Vth0が小さい時、トランジスタMP2の閾値電圧VthMP2は抵抗R3の抵抗値の影響を受けやすく、第1の出力トランジスタMP1の閾値電圧VthMP1との閾値電圧のずれが大きくなる可能性がある。このように閾値電圧のずれが大きくなると、電流コピーの誤差が大きくなる。このため、製造ばらつきによって電流コピーの誤差にばらつきが生じてしまい、過電流保護の閾値電流の調整が難しくなる場合があった。
しかし、本実施例の半導体装置200によれば、二段階で過電流保護回路を流れる電流の温度係数の調整を行うことにより、抵抗R3及び抵抗R4の抵抗値を大きくすることなく温度係数の調整ができるため、電流をコピーするためのトランジスタであるトランジスタMP2及びMN2の閾値電圧をコピー元である第1の出力トランジスタMP1の閾値電圧に近づけることができる。このため、製造ばらつきが生じた場合でも、過電流保護の閾値電流の調整が容易になる。
本実施例では、過電流保護回路22の抵抗部として抵抗R3及びR4を設けた場合について説明したが、これに限定されない。例えば、図示しない新たな抵抗として、電源電圧VDDの供給ラインLAとトランジスタMP3のソースとの間に接続された抵抗R5をさらに追加し、三段階で過電流保護回路を流れる電流の温度係数の調整を行っても良い。三段階で過電流保護回路を流れる電流の温度係数を調整することにより、さらに抵抗値を大きくすることなく温度係数の調整ができ、過電流保護の閾値電流の調整が容易になる。