(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146594
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】防護柵、防護柵用の横梁、防護柵用の横梁の連結構造
(51)【国際特許分類】
E01F 15/04 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
E01F15/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053847
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000192615
【氏名又は名称】日鉄神鋼建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】山田 慶太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸裕
【テーマコード(参考)】
2D101
【Fターム(参考)】
2D101DA04
2D101EA02
2D101FA11
2D101FA23
2D101FB14
(57)【要約】
【課題】想定外の衝突エネルギーが加わる場合であっても車両が工事中の車線へ突破してしまうのを防止可能な防護柵を提供する。
【解決手段】横梁3aの一端側には、その基端から先端にかけて、横梁3aよりも縮幅された基端部34と、基端部34よりも拡幅された第1雄型嵌合部41と、第1雄型嵌合部41よりも縮幅された突出部42と、突出部42よりも拡幅されていると共に上記第1雄型嵌合部41よりも縮幅された第2雄型嵌合部43とが順に設けられ、横梁3aの他端側には、その先端から基端にかけて、基端部34を案内させて挿通可能な開口部50と、開口部50よりも拡幅されて第1雄型嵌合部41を嵌合可能な第1雌型凹部51と、第1雌型凹部51よりも縮幅されて突出部42を挿通可能な挿通部52と、挿通部52よりも拡幅されていると共に第1雌型凹部51よりも縮幅されて第2雄型嵌合部43を嵌合可能な第2雌型凹部53とが順に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱に複数段の横梁が設けられる防護柵であって、
少なくとも最上段の横梁の一端側には、その基端から先端にかけて、当該横梁よりも縮幅された基端部と、上記基端部よりも拡幅された第1雄型嵌合部と、上記第1雄型嵌合部よりも縮幅された突出部と、上記突出部よりも拡幅されていると共に上記第1雄型嵌合部よりも縮幅された第2雄型嵌合部とが順に設けられ、
上記横梁の他端側には、その先端から基端にかけて、上記基端部を案内させて挿通可能な開口部と、上記開口部よりも拡幅されて上記第1雄型嵌合部を嵌合可能な第1雌型凹部と、上記第1雌型凹部よりも縮幅されて上記突出部を挿通可能な挿通部と、上記挿通部よりも拡幅されていると共に上記第1雌型凹部よりも縮幅されて上記第2雄型嵌合部を嵌合可能な第2雌型凹部とが順に設けられていること
を特徴とする防護柵。
【請求項2】
上記基端部は、断面矩形状の鋼管とされ、
上記第1雄型嵌合部、上記突出部、上記第2雄型嵌合部は、共に鋼板により構成されていること
を特徴とする請求項1記載の防護柵。
【請求項3】
上記基端部及び上記第1雄型嵌合部は、上記最上段の横梁と、より下段の1以上の横梁との間で共用可能となるように延長されてなること
を特徴とする請求項1又は2記載の防護柵。
【請求項4】
更に上記突出部及び上記第2雄型嵌合部は、上記最上段の横梁と、より下段の1以上の横梁との間で共用可能となるように延長されてなること
を特徴とする請求項3記載の防護柵。
【請求項5】
防護柵の支柱に少なくとも最上段に架設される防護柵用の横梁であって、
一端側は、その基端から先端にかけて、当該横梁よりも縮幅された基端部と、上記基端部よりも拡幅された第1雄型嵌合部と、上記第1雄型嵌合部よりも縮幅された突出部と、上記突出部よりも拡幅されていると共に上記第1雄型嵌合部よりも縮幅された第2雄型嵌合部とが順に設けられ、
他端側は、その先端から基端にかけて、上記基端部を案内させて挿通可能な開口部と、上記開口部よりも拡幅されて上記第1雄型嵌合部を嵌合可能な第1雌型凹部と、上記第1雌型凹部よりも縮幅されて上記突出部を挿通可能な挿通部と、上記挿通部よりも拡幅されていると共に上記第1雌型凹部よりも縮幅されて上記第2雄型嵌合部を嵌合可能な第2雌型凹部とが順に設けられていること
を特徴とする防護柵用の横梁。
【請求項6】
防護柵の支柱に少なくとも最上段に架設される防護柵用の横梁の連結構造であって、
第1の横梁の一端側は、その基端から先端にかけて、当該横梁よりも縮幅された基端部と、上記基端部よりも拡幅された第1雄型嵌合部と、上記第1雄型嵌合部よりも縮幅された突出部と、上記突出部よりも拡幅されていると共に上記第1雄型嵌合部よりも縮幅された第2雄型嵌合部とが順に設けられ、
上記第1の横梁に連結される第2の横梁の他端側は、その先端から基端にかけて、上記基端部を案内させて挿通される開口部と、上記開口部よりも拡幅されて上記第1雄型嵌合部が嵌合される第1雌型凹部と、上記第1雌型凹部よりも縮幅されて上記突出部が挿通される挿通部と、上記挿通部よりも拡幅されていると共に上記第1雌型凹部よりも縮幅されて上記第2雄型嵌合部が嵌合される第2雌型凹部とが順に設けられていること
を特徴とする防護柵用の横梁の連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支柱に複数段の横梁が設けられる防護柵、防護柵の支柱に少なくとも最上段に架設される防護柵用の横梁及びその連結方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、橋梁における床版の補修や取り換え等の工事を行う場合には、複数車線のうち一部の車線のみを車両の通行のために残し、他の車線について工事を行う場合が多い。かかる場合には、通行車線を走行する車両が逸脱して工事中の他の車線に進入するのを防止するために、その走行車線と工事中の車線との境界に、防護柵を仮設するのが一般的である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来の仮設用の防護柵としては、車両等の衝突を吸収し、事故の被害を可能な限り小さく抑えつつ、乗員の安全性を確保する観点から、弾性体で構成したもの等が提案されている。この防護柵の中では、ポリエチレンで構成した筐体内部にコンクリートを充填することで、剛性を高めたものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
走行車線を逸脱した車両がこのような防護柵に衝突した場合、横梁が大変形することで車両衝突に伴う衝突エネルギーを吸収し、工事中の車線へ突破してしまうのを防止し、走行車線へと誘導する。
【0006】
しかしながら、逸脱した車両が設計条件を超えるスピードや角度で防護柵に衝突した場合には、防護柵自体に想定外の衝突エネルギーが加わる結果、防護柵の横梁同士を連結するための嵌合部が外れてしまう虞がある。
【0007】
このため、このような想定外の衝突エネルギーが防護柵に加わる場合であっても、防護柵の横梁同士を連結するための嵌合部が外れることなく、車両が工事中の車線へ突破してしまうのを防止し、走行車線へと誘導する技術が従来より望まれていた。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、想定外の衝突エネルギーが防護柵に加わる場合であっても、防護柵の横梁同士を連結するための嵌合部が外れることなく、車両が工事中の車線へ突破してしまうのを防止し、走行車線へと誘導することが可能な防護柵、防護柵用の横梁、防護柵用の横梁の連結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る防護柵は、支柱に複数段の横梁が設けられる防護柵であって、少なくとも最上段の横梁の一端側には、その基端から先端にかけて、当該横梁よりも縮幅された基端部と、上記基端部よりも拡幅された第1雄型嵌合部と、上記第1雄型嵌合部よりも縮幅された突出部と、上記突出部よりも拡幅されていると共に上記第1雄型嵌合部よりも縮幅された第2雄型嵌合部とが順に設けられ、上記横梁の他端側には、その先端から基端にかけて、上記基端部を案内させて挿通可能な開口部と、上記開口部よりも拡幅されて上記第1雄型嵌合部を嵌合可能な第1雌型凹部と、上記第1雌型凹部よりも縮幅されて上記突出部を挿通可能な挿通部と、上記挿通部よりも拡幅されていると共に上記第1雌型凹部よりも縮幅されて上記第2雄型嵌合部を嵌合可能な第2雌型凹部とが順に設けられていることを特徴とする。
【0010】
第2発明に係る防護柵は、第1発明において、上記基端部は、断面矩形状の鋼管とされ、上記第1雄型嵌合部、上記突出部、上記第2雄型嵌合部は、共に鋼板により構成されていることを特徴とする。
【0011】
第3発明に係る防護柵は、第1発明又は第2発明において、上記基端部及び上記第1雄型嵌合部は、上記最上段の横梁と、より下段の1以上の横梁との間で共用可能となるように延長されてなることを特徴とする。
【0012】
第4発明に係る防護柵は、第3発明において、更に上記突出部及び上記第2雄型嵌合部は、上記最上段の横梁と、より下段の1以上の横梁との間で共用可能となるように延長されてなることを特徴とする。
【0013】
第5発明に係る防護柵用の横梁は、防護柵の支柱に少なくとも最上段に架設される防護柵用の横梁であって、一端側は、その基端から先端にかけて、当該横梁よりも縮幅された基端部と、上記基端部よりも拡幅された第1雄型嵌合部と、上記第1雄型嵌合部よりも縮幅された突出部と、上記突出部よりも拡幅されていると共に上記第1雄型嵌合部よりも縮幅された第2雄型嵌合部とが順に設けられ、他端側は、その先端から基端にかけて、上記基端部を案内させて挿通可能な開口部と、上記開口部よりも拡幅されて上記第1雄型嵌合部を嵌合可能な第1雌型凹部と、上記第1雌型凹部よりも縮幅されて上記突出部を挿通可能な挿通部と、上記挿通部よりも拡幅されていると共に上記第1雌型凹部よりも縮幅されて上記第2雄型嵌合部を嵌合可能な第2雌型凹部とが順に設けられていることを特徴とする。
【0014】
第6発明に係る防護柵用の横梁の連結構造は、防護柵の支柱に少なくとも最上段に架設される防護柵用の横梁の連結構造であって、第1の横梁の一端側は、その基端から先端にかけて、当該横梁よりも縮幅された基端部と、上記基端部よりも拡幅された第1雄型嵌合部と、上記第1雄型嵌合部よりも縮幅された突出部と、上記突出部よりも拡幅されていると共に上記第1雄型嵌合部よりも縮幅された第2雄型嵌合部とが順に設けられ、上記第1の横梁に連結される第2の横梁の他端側は、その先端から基端にかけて、上記基端部を案内させて挿通される開口部と、上記開口部よりも拡幅されて上記第1雄型嵌合部が嵌合される第1雌型凹部と、上記第1雌型凹部よりも縮幅されて上記突出部が挿通される挿通部と、上記挿通部よりも拡幅されていると共に上記第1雌型凹部よりも縮幅されて上記第2雄型嵌合部が嵌合される第2雌型凹部とが順に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上述した構成からなる本発明によれば、車両の衝突エネルギーが加わった結果、横梁に引張方向の荷重、或いは曲げ方向の荷重が加わった場合において、先ず第1雌型凹部に嵌合される第1雄型嵌合部がこれに対抗することができる。これにより、横梁同士を連結するための雄型嵌合部、雌型凹部が互いに外れることなく、車両の突破を防止し、走行車線へと誘導することができる。
【0016】
一方で、車両が設計条件を超えるスピードや角度で防護柵に衝突した場合においては、横梁に引張方向の荷重、或いは曲げ方向の更に大きな荷重が加わることになる。かかる場合には、上述した第1雄型嵌合部がこれに対抗することができるが、これに加えて、更に第2雄型嵌合部がこれに対抗することができる。これにより、車両の想定外の衝突エネルギーが加わった場合であっても、横梁同士を連結するための雄型嵌合部、雌型凹部が互いに外れることなく、車両の突破を防止し、走行車線へと誘導することができる。想定外の衝突エネルギーにより、万一第1雄型嵌合部が第1雌型凹部から逸脱してしまった場合においても、この第2雄型嵌合部が第2雌型凹部から引き抜かれてしまうのを強固に防止することで、横梁同士の連結状態を保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明を適用した防護柵の全体構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明を適用した防護柵に用いられる支柱の構成を示す図である。
【
図3】
図3(a)は、横梁のうち、最上段の横梁の平面図であり、
図3(b)は、その側面図である。
【
図4】
図4は、ビーム材の一端側に設けられた雄型嵌合部の拡大平面図である。
【
図5】
図5は、ビーム材の他端側に設けられた雌型凹部の拡大平面図である。
【
図6】
図6は、隣接する横梁同士を連結する場合において、一方の横梁の雄型嵌合部に対して、他方の横梁の雌型凹部を上から嵌め込んで挿通する例を示す図である。
【
図7】
図7は、雄型嵌合部と雌型凹部とを互いに嵌合させた状態を示す拡大平面図である。
【
図8】
図8は、基端部に対して最上段の横梁のみならず、より下段の横梁が取り付けられた例を示す図である。
【
図9】
図9は、第2雄型嵌合部及び突出部をより下段の1以上の横梁との間で共用可能となるように下方向に延長させた例を示す図である。
【
図10】
図10は、横梁に対して支柱が一体化された防護柵の状態で独立して搬送されて施工する形態について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した防護柵、防護柵用の横梁について、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0019】
本発明を適用した防護柵1は、
図1に示すように、所定間隔で立設された支柱2と、この支柱2間に複数段に亘り架設された横梁3とを備えている。
【0020】
支柱2は、
図2に示すように、断面矩形状の鋼管で構成されているが、これに限定されるものではなく、例えばH型鋼を利用するようにしてもよく、その他いかなる構成が適用されるものであってもよい。
【0021】
支柱2の下端には、金属製のアンカープレート21が溶接により固着されている。アンカープレート21には、複数箇所に亘り図示しない貫通孔が形成されており、この図示しない貫通孔にはアンカーボルト23が挿通される。
【0022】
図3(a)は、横梁3のうち、最上段の横梁3aの平面図であり、
図3(b)は、その側面図を示している。
【0023】
横梁3aは、ビーム材31aと、ビーム材31aの一端側(図中A方向端部側)に設けられた雄型嵌合部4と、ビーム材31aの他端側(図中のB方向端部側)に設けられた雌型凹部5とを有している。
【0024】
ビーム材31aは、金属製の管体で構成されており、例えば鋼管で構成されるものであってもよいし、内部が中実となった棒状体で構成されていてもよい。ビーム材31aは、上下方向に貫通した貫通孔32が1箇所又は2箇所以上に設けられている。この貫通孔32は、上述した支柱2が挿通可能なサイズで構成されており、実際に支柱2が挿通されて固定される。
【0025】
雄型嵌合部4は、大きく分類して基端側に設けられた第1雄型嵌合部41と、その第1雄型嵌合部41よりも先端側に設けられた第2雄型嵌合部43とを有している。
【0026】
雌型凹部5は、大きく分類して先端側に設けられた第1雌型凹部51と、その第1雌型凹部51よりも基端側に設けられた第2雌型凹部53とを有している。
【0027】
このような横梁3aは、互いに隣接する一の横梁3aの一端側の雄型嵌合部4と、他の横梁3aの他端側の雌型凹部5とを嵌合させることにより連結可能とされている。具体的には、雄型嵌合部4における第1雄型嵌合部41を、雌型凹部5における第1雌型凹部51と嵌合させると共に、雄型嵌合部4における第2雄型嵌合部43を、雌型凹部5における第2雌型凹部53に嵌合させる。
【0028】
図4は、ビーム材31aの一端側(
図3中A方向端部側)に設けられた雄型嵌合部4の拡大平面図である。雄型嵌合部4は、その基端から先端にかけて(
図4中C方向)、基端部34、第1雄型嵌合部41、突出部42、第2雄型嵌合部43が順に設けられている。
【0029】
基端部34は、ビーム材31aの一端側に設けられた断面矩形状の鋼管で構成されている。基端部34は、横梁3よりも幅方向のサイズが縮小された、いわゆる縮幅されたサイズで構成されている。この基端部34をビーム材31aに取り付けるにあたり、ビーム材31aの一端側を基端部34の外形寸法に合わせて予め凹状にレーザ加工を施すことで凹部35を形成しておく。そして、この凹部35に基端部34の外郭を嵌め込み、溶接により固着させることで取り付けられる。
【0030】
なお、基端部34の断面形状は、矩形状である場合に限定されるものではなく、円形を始め、他のいかなる断面形状を適用することができる。かかる場合においても同様に凹部35をその基端部34の外郭形状に沿った凹状に形成しておくことで、同様に取り付けが可能となる。
【0031】
基端部34に対しては、上述した第1雄型嵌合部41が溶接により取り付けられる。第1雄型嵌合部41は、基端部34よりも幅方向のサイズが拡大された、いわゆる拡幅されたサイズで構成されている。この第1雄型嵌合部41は、平板状の形態とされ、具体的には鋼板をそのまま適用するようにしてもよい。しかし、この第1雄型嵌合部41は、平板状の形態に限定されるものではなく、基端部34よりも拡幅されたものであれば他のいかなる形態に代替することができる。
【0032】
なお、基端部34と第1雄型嵌合部41は、
図3(b)に示すように、最上段のビーム材31aよりも下方向に向けて延長されている。これにより、この基端部34と第1雄型嵌合部41とは、それぞれより下段にある他のビーム材31と共用可能とされている。
【0033】
第1雄型嵌合部41と、第2雄型嵌合部43の間は、突出部42を介して溶接等により連結されている。この突出部42は、第1雄型嵌合部41よりも幅方向に縮幅されている。突出部42は、平板状の形態とされ、具体的には鋼板をそのまま適用するようにしてもよい。本実施の形態においては、平板状の第1雄型嵌合部41に対してちょうど略垂直に設けられた平板状の突出部42として構成した場合を例示している。但し、この突出部42は、平板状の形態として具現化される場合に限定されるものではなく、第1雄型嵌合部41よりも縮幅化されて第2雄型嵌合部43に連続するものであれば、他のいかなる形態に代替することができる。
【0034】
第2雄型嵌合部43は、突出部42よりも拡幅されていると共に第1雄型嵌合部41よりも縮幅されたサイズで構成されている。この第2雄型嵌合部43は、平板状の形態とされ、具体的には鋼板をそのまま適用するようにしてもよい。しかし、この第2雄型嵌合部43は、平板状の形態に限定されるものではなく、突出部42よりも拡幅されていると共に第1雄型嵌合部41よりも縮幅されたものであれば他のいかなる形態に代替することができる。
【0035】
図5は、ビーム材31aの他端側(
図3中B方向端部側)に設けられた雌型凹部5の拡大平面図である。雌型凹部5は、その先端から基端にかけて(
図5中D方向)、開口部50、第1雌型凹部51、挿通部52、第2雌型凹部53が順に設けられている。
【0036】
開口部50は、嵌合時において基端部34を案内させて挿通可能なサイズで構成されている。開口部50は、より具体的にはビーム材31aの端面311に設けられた鍔部312により形成される。鍔部312は、平板状の金属製の板材で構成されており、幅方向の両端から幅方向の内側に向けて延長されてなる。鍔部312は、後述する第1雌型凹部51よりも縮幅化された開口部50が形成されるように、第1雌型凹部51よりも幅方向の内側に向けて突出されるように構成される。このとき、鍔部312は、第1雌型凹部51に嵌合される第1雄型嵌合部41よりも縮幅化された開口部50が形成されるように構成される。嵌合時において、このような鍔部312を通じて基端部34を案内させることが可能となる。
【0037】
第1雌型凹部51は、開口部50よりも拡幅された凹状の形状からなる。第1雌型凹部51は、第1雄型嵌合部41を嵌合可能な形状、サイズで構成される。
図5の例の場合には、第1雄型嵌合部41が平板状で構成されている前提の下、この第1雌型凹部51も同様に、平面視で略扁平状の溝となるように形成されている。但し、この第1雄型嵌合部41が平板状以外の他の形態で構成されている場合には、第1雌型凹部51もこれに対応させた嵌合可能な形状、サイズで構成されることとなる。
【0038】
挿通部52は、第1雌型凹部51よりも縮幅された形状で構成されている。挿通部52は、突出部42を挿通可能な形状、サイズで構成されている。この挿通部52も同様に突出部42の構成が平板状以外の他の形態で構成されている場合には、これに対応させた挿通可能な形状、サイズで構成されることとなる。このとき、挿通部52は、後述する第2雌型凹部53よりも縮幅化され、かつ第2雌型凹部53に嵌合される第2雄型嵌合部43よりも縮幅化された形状、サイズで構成される。
【0039】
第2雌型凹部53は、挿通部52よりも拡幅されていると共に第1雌型凹部51よりも縮幅された凹状の形状からなる。第2雌型凹部53は、第2雄型嵌合部43を嵌合可能な形状、サイズで構成される。
図5の例の場合には、第2雄型嵌合部43が平板状で構成されている前提の下、この第2雌型凹部53も同様に、平面視で略扁平状の溝となるように形成されている。但し、この第2雄型嵌合部43が平板状以外の他の形態で構成されている場合には、第2雌型凹部53もこれに対応させた嵌合可能な形状、サイズで構成されることとなる。
【0040】
なお、上述した形態からなる第1雌型凹部51、挿通部52、第2雌型凹部53を形成する場合には、例えばレーザ加工等により所期の形状に整形する。
【0041】
なお、雌型凹部5は、
図3(b)に示すように、更にその上面、下面を補強するための金属製の補強プレート315が設けられていてもよい。
【0042】
次に、上述した形態からなる雄型嵌合部4と雌型凹部5とを互いに嵌合させることで隣接する横梁3aを連結する方法について説明をする。
【0043】
図6に示すように、隣接する横梁3a同士を連結する場合には、一方の横梁3aの雄型嵌合部4に対して、他方の横梁3aの雌型凹部5を上から嵌め込み、挿通させることで行う。
【0044】
図7は、この雄型嵌合部4と雌型凹部5とを互いに嵌合させた状態を示す拡大平面図である。
【0045】
雌型凹部5の開口部50には、雄型嵌合部4の基端部34が収容されている。また第1雌型凹部51には、第1雄型嵌合部41が嵌合されている。挿通部52には突出部42が挿通されている。更に第2雌型凹部53には、第2雄型嵌合部43が嵌合されている。
【0046】
嵌合時には、この開口部50における鍔部312を通じて基端部34が案内される結果、開口部50へ基端部34を収容することができる。
【0047】
このような連結構造において、車両の衝突エネルギーが加わった結果、横梁3に引張方向の荷重、或いは曲げ方向の荷重が加わった場合において、先ず第1雌型凹部51に嵌合される第1雄型嵌合部41がこれに対抗することができる。上述したように、鍔部312が、第1雌型凹部51、及びこれに嵌合される第1雄型嵌合部41よりも縮幅化された開口部50が形成されるように構成されている。このため、第1雄型嵌合部41は、引張荷重や曲げ荷重が負荷された場合においても、鍔部312を通じて第1雌型凹部51から引き抜かれてしまうのを防止することができる。
【0048】
これにより、車両の衝突エネルギーが加わった場合であっても、横梁3a同士を連結するための雄型嵌合部4、雌型凹部5が互いに外れることなく、車両の突破を防止し、走行車線へと誘導することができる。
【0049】
一方で、車両が設計条件を超えるスピードや角度で防護柵に衝突した場合においては、横梁3に引張方向の荷重、或いは曲げ方向の更に大きな荷重が加わることになる。かかる場合には、上述した第1雄型嵌合部41がこれに対抗することができるが、これに加えて、更に第2雄型嵌合部43がこれに対抗することができる。上述したように、挿通部52が、第2雌型凹部53、及びこれに嵌合される第2雄型嵌合部43よりも縮幅化されている。このため、第2雄型嵌合部43は、引張荷重や曲げ荷重が負荷された場合においても、挿通部52を通じて第2雌型凹部53から引き抜かれてしまうのを防止することができる。
【0050】
これにより、車両の想定外の衝突エネルギーが加わった場合であっても、横梁3a同士を連結するための雄型嵌合部4、雌型凹部5が互いに外れることなく、車両の突破を防止し、走行車線へと誘導することができる。想定外の衝突エネルギーにより、万一第1雄型嵌合部41が第1雌型凹部51から逸脱してしまった場合においても、この第2雄型嵌合部43が第2雌型凹部53から引き抜かれてしまうのを強固に防止することで、横梁3a同士の連結状態を保持することが可能となる。
【0051】
なお、本発明においては、第2雌型凹部53は、第1雌型凹部51よりも縮幅された凹状の形状からなる。このため、
図7に示すように第2雌型凹部53から側端面までの肉厚を十分に厚くすることができる結果、第2雌型凹部53から側端面に向けて破断してしまうのを防止することができる。
【0052】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。
図8は、基端部34に対して最上段の横梁3aのみならず、より下段の横梁3b、3cが取り付けられた例である。下段の横梁3b、3cの一端側は、横梁3aと同様に基端部34の外郭を嵌め込み可能な凹部35が設けられ、他端側は、雌型凹部5が設けられている。即ち、横梁3b、3cの構成は、上述した横梁3aと同一の構成要素、部材が適用されることから、同一の符号を付すことにより以下での説明は省略する。
【0053】
かかる場合において、基端部34及び第1雄型嵌合部41は、最上段の横梁3aと、より下段の1以上の横梁3b、3cとの間で共用可能となるように下方向に延長されている。基端部34にこのような横梁3a~3cが取り付けられることで同様に、横梁3aのみならず横梁3b、3cにおいても雄型嵌合部4における基端部34及び第1雄型嵌合部41の機能を担わせることができる。同様に、横梁3b、3cは、他端側において雌型凹部5が設けられていることから、同様に雄型嵌合部4と嵌合することができる。このとき、横梁3b、3cは少なくとも雌型凹部5において、開口部50及び第1雌型凹部51が設けられていればよい。横梁3b、3cにおいては、雄型嵌合部4における基端部34及び第1雄型嵌合部41の構成のみが設けられていることから、雌型凹部5に関してもこれに対応させて開口部50及び第1雌型凹部51が設けられていればよい。
【0054】
なお本発明では、最上段の横梁3aにおいて第2雄型嵌合部43及び突出部42を設けておき、また第2雌型凹部53及び挿通部52を設けておけば、想定外の衝突エネルギーが加わった場合においても十分にこれに対抗することができる。その理由として、特に想定外の衝突エネルギーが防護柵1に加わるケースはトラックやバス等の大型車が衝突する場合が多く、これに対応させて最上段の横梁3aにおいて特に強固に連結が外れてしまうのを防止する必要があるためである。
【0055】
但し、
図9に示すように、第2雄型嵌合部43及び突出部42をより下段の1以上の横梁3b、3cとの間で共用可能となるように下方向に延長させてもよい。かかる場合には、横梁3b、3cについても第2雄型嵌合部43を嵌合可能とするために、第2雌型凹部53及び挿通部52を設けることとなる。
【0056】
さらに本発明は、
図10に示すように、横梁3に対して支柱2が一体化された防護柵1の状態で独立して搬送され、施工されるものであってもよい。横梁3の貫通孔32に支柱2が挿通され、溶接等で固着されている。このとき、支柱2の下端に固着されるアンカープレート21、アンカーボルト23も同様に取り付けられたままの状態であってもよい。
【0057】
このような横梁3と支柱2が一体化された状態で路面6に設けられた孔61にアンカーボルト23を挿通させることで、防護柵1を設置することが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 防護柵
2 支柱
3 横梁
4 雄型嵌合部
5 雌型凹部
6 路面
21 アンカープレート
23 アンカーボルト
31 ビーム材
32 貫通孔
34 基端部
35 凹部
41 第1雄型嵌合部
42 突出部
43 第2雄型嵌合部
50 開口部
51 第1雌型凹部
52 挿通部
53 第2雌型凹部
61 孔