(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001477
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】活動量算出装置および活動量算出方法
(51)【国際特許分類】
G16H 20/30 20180101AFI20221226BHJP
G16H 50/30 20180101ALI20221226BHJP
【FI】
G16H20/30
G16H50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102234
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐野 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】大平 昭義
(72)【発明者】
【氏名】田中 佐知
(72)【発明者】
【氏名】藤咲 景子
(72)【発明者】
【氏名】サルワル シャヘッド
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】
本発明は、分析対象者の実態に即した活動量の算出することを課題とする。
【解決手段】
上記の課題を解決するために、本発明では、分析対象者の活動量を算出する活動量算出装置1において、前記分析対象者の活動に対する計測結果を、センサ21から取得する情報取得部11と、前記計測結果に基づき、前記分析対象者の第一の速度情報および第二の速度情報を算出し、前記第一の速度情報および前記第二の速度情報を用いて、前記分析対象者の活動量を算出する演算部12を有し、前記演算部12は、前記第一の速度情報および前記第二の速度情報の少なくとも一方を、前記計測結果に含まれ、前記分析対象者を示す点群情報の位置情報を用いて算出する活動量算出装置1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象者の活動量を算出する活動量算出装置において、
前記分析対象者の活動に対する計測結果を取得する情報取得部と、
前記計測結果に基づき、前記分析対象者の第一の速度情報および第二の速度情報を算出し、前記第一の速度情報および前記第二の速度情報を用いて、前記分析対象者の活動量を算出する演算部を有し、
前記演算部は、前記第一の速度情報および前記第二の速度情報の少なくとも一方を、前記計測結果に含まれ、前記分析対象者を示す点群情報の位置情報を用いて算出する活動量算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の活動量算出装置において、
前記第一の速度情報は、前記分析対象者の活動の局所的な特性を示す局所速度情報であり、
前記第二の速度情報は、前記分析対象者の活動の全体的な特性を示す全体速度情報である活動量算出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の活動量算出装置において、
前記演算部は、前記局所速度情報を、前記点群情報の位置情報を用いて算出する活動量算出装置。
【請求項4】
請求項2に記載の活動量算出装置において、
前記局所速度情報は、前記点群情報に含まれる各点の速度の最大値である活動量算出装置。
【請求項5】
請求項2に記載の活動量算出装置において、
前記全体速度情報は、前記点群情報における重心位置の速度を示す速度情報として算出する活動量算出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の活動量算出装置において、
前記全体速度情報は、前記重心位置における鉛直方向に直行した平面内の速度成分を示す速度情報である活動量算出装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の活動量算出装置において、
前記演算部は、さらに前記分析対象者の体重を用いて前記活動量を特定する活動量算出装置。
【請求項8】
分析対象者の活動量を算出する活動量算出装置を用いた活動算出方法において、
情報取得部により、前記分析対象者の活動に対する計測結果を取得し、
演算部により、前記計測結果に基づき、前記分析対象者の第一の速度情報および第二の速度情報を算出し、前記第一の速度情報および前記第二の速度情報を用いて、前記分析対象者の活動量を算出し、
前記演算部は、前記第一の速度情報および前記第二の速度情報の少なくとも一方を、前記計測結果に含まれ、前記分析対象者を示す点群情報の位置情報を用いて算出する活動量算出方法。
【請求項9】
請求項8に記載の活動量算出方法において、
前記第一の速度情報は、前記分析対象者の活動の局所的な特性を示す局所速度情報であり、
前記第二の速度情報は、前記分析対象者の活動の全体的な特性を示す全体速度情報である活動量算出方法。
【請求項10】
請求項9に記載の活動量算出方法において、
前記演算部により、前記局所速度情報を、前記点群情報の位置情報を用いて算出する活動量算出方法。
【請求項11】
請求項9に記載の活動量算出方法において、
前記局所速度情報は、前記点群情報に含まれる各点の速度の最大値である活動量算出方法。
【請求項12】
請求項9に記載の活動量算出方法において、
前記全体速度情報は、前記点群情報における重心位置の速度を示す速度情報として算出する活動量算出方法。
【請求項13】
請求項12に記載の活動量算出方法において、
前記全体速度情報は、前記重心位置における鉛直方向に直行した平面内の速度成分を示す速度情報である活動量算出方法。
【請求項14】
請求項8乃至13のいずれかに記載の活動量算出方法において、
前記演算部により、さらに前記分析対象者の体重を用いて前記活動量を特定する活動量算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間などの動作主体の活動量を算出する技術に関する。その中でも特に、センサなどで測定される人間の活動、行動、動作(以下、活動)に基づいて、活動量を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信技術およびセンサ技術が発達し、日常生活において、健康管理を目的として、人間の活動状況を測定することが可能となっている。本技術分野の背景技術として、特許文献1がある。特許文献1には、「距離画像から取得される歩行者距離画像を用いて歩行者の運動強度及び活動量の少なくとも一方を推定することから、運動強度及び活動量の少なくとも一方を推定する推定装置を歩行者に装着することなく、建物内を歩行する歩行者における運動の効果を推定することができる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、距離画像から取得される歩行者距離画像を用いて、歩行者の運動強度及び活動量の少なくとも一方を推定できる。このため、特許文献1によれば、装着し忘れや電池切れの懸念があるウェアラブルデバイスを使用することなく、個人の運動量等を把握し、健康管理につなげることができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、センサの装着し忘れの課題に着目しており、運動量等を把握する精度については考慮されていない。人間の活動は複雑であり、特許文献1のような画像との単一的な測定では、実態に即した活動量の算出が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、複数の速度情報を用いて、活動主体である分析対象者の活動量を算出する。そして、複数の速度情報のうち、少なくとも1つを、分析対象者の位置情報に基づき算出する。なお、複数の速度情報として、分析対象者の活動の局所的な特性を示す局所速度情報や対象者の活動の全体的な特性を示す全体速度情報を用いることが望ましい。
【0007】
より、具体的な構成として、例えば以下に記載する特許請求の範囲に記載の構成を採用する。分析対象者の活動量を算出する活動量算出装置において、前記分析対象者の活動に対する計測結果を取得する情報取得部と、前記計測結果に基づき、前記分析対象者の第一の速度情報および第二の速度情報を算出し、前記第一の速度情報および前記第二の速度情報を用いて、前記分析対象者の活動量を算出する演算部を有し、前記演算部は、前記第一の速度情報および前記第二の速度情報の少なくとも一方を、前記計測結果に含まれ、前記分析対象者を示す点群情報の位置情報を用いて算出する活動量算出装置である。
【0008】
なお、本発明には、活動量算出装置を用いた活動量算出方法やこれを有する活動量算出システムも含まれる。さらに、活動量算出装置をコンピュータとして機能させる活動量算出プログラムも、本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分析対象者の活動に関して、より実態に即した活動量を算出でき、その精度を確保することで、より適切な健康管理が可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1における活動量算出システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施例1における活動量算出装置の処理を説明するフローチャートである。
【
図3】実施例2における活動量算出システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】実施例3における活動量算出システムの構成を示すブロック図である。
【
図5】実施例3における外部端末の表示部の第一の例である。
【
図6】実施例3における外部端末の表示部の第二の例である。
【
図7】実施例3における外部端末のフィードバックするための表示部の例である。
【
図9】実施例2、3における活動量算出システムの実装を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施例について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例もその範囲に含む。
【実施例0012】
図1は、実施例1における活動量算出システムの構成を示すブロック図である。実施例1は、他の実施例と比較して基本的な構成を有する実施例である。活動量算出システムは、活動量算出装置1およびセンサ21とで構成される。
【0013】
活動量算出装置1は、情報取得部11、演算部12および蓄積部13および表示部14で構成される。これらについては、センサ21の後に説明する。
【0014】
センサ21は、分析対象者の活動を計測し、計測結果を出力する機能を有する。センサ21は、計測の一例として、分析対象者を少なくとも2点以上の点の集合としてとらえる。つまり、センサ21は、分析対象者について、複数の点で構成される点群を測定し、各点の位置情報を含む点群情報を取得する。この代表的なものには、電波センサ22がある。電波センサ22は、本明細書中ではマイクロ波センサ、ミリ波センサ、TOFセンサなど、電波を利用し物体の存在、移動を検知するセンサの総称と定義する。電波センサ22を用いることで、非接触もしくは非装着で、分析対象者を点群として測定できる。この点群は、各点が位置情報の一種である座標情報を有しており、電波センサ22の周波数が大きくなるほど構成する点の数が増加し、空間解像度を向上できる。また、電波センサ22はプライバシーを侵害しないため、宅内、施設内など人間が生活する空間などにも設置できる。なお、各種センサの設置場所は、これらに限定されず、自宅の庭、出先などを含めてもよい。さらに、センサ21を非装着とすることで、わざわざ身に着けなくとも各種計測が可能となる。つまり、装着忘れを防止できる。さらに、非装着で計測可能なセンサとすることで、分析対象者の計測への意識を減らすことができ、より自然な活動が計測可能となる。つまり、より実態に即した活動量を算出できる。
【0015】
このほか、センサ21として、画像センサ23を利用しても良い。画像センサ23は、カメラにより分析対象者を静止画または動画として測定し記録できる。これらの画像はピクセルの集合であるため、分析対象者を映す各ピクセルは、電波センサ22の点群に相当し、同様に、点群情報に座標情報を含めることが可能である。
【0016】
また、以下の論文などに開示される技術を活用することで、画像センサ23で取得できる二次元画像に対し、見えていない部分の三次元形状を推測することが可能である。
S. M. Ali Eslami et al., “Neural scene representation and rendering”, Science 15 Jun 2018:Vol. 360, Issue 6394, pp. 1204-1210
そして、推測された三次元形状も用いて、点群の三次元分布形状を推測しても良い。
【0017】
なお、センサ21は、点群情報だけでなく、センサ21内部に実装した演算装置により演算した、点群の各点および重心点の移動速度などを出力しても良い。さらに、点群情報は、センサ21で計測された結果そのものでもよいし、センサ21ないし活動量算出装置1が計測結果を用いて作成してもよい。
【0018】
次に、活動量算出装置1について説明する。活動量算出装置1は、いわゆるコンピュータで実現され、情報取得部11、演算部12および蓄積部13および表示部14を有する。以下、これら各構成について説明する。
【0019】
まず、情報取得部11は、インターフェース機能を有し、各種情報、データの入力を受け付ける。このため、例えば、センサ21などの他装置との通信機能や利用者からの入力機能を有する。この一例として、センサ21の点群情報および分析対象者の身体情報(以下、身体情報41)を取得する。身体情報41とは、例えば、身長、体重、生年月日、BMI、体脂肪率、内臓脂肪レベル、筋肉量、体水分率、体内年齢などが含まれる。さらに、身体情報41には、活動に関する装具(例えば、高齢者装具)の有無や靴、服など活動に関する条件を示す情報を含めてもよい。
【0020】
なお、情報取得部11は、複数の構成要素として、実現してもよい。例えば、利用者が利用する入力デバイスや通信機能を有するインターフェースといった複数の構成要素で実現できる。ここで、情報取得部11がセンサ21の点群情報を取得する方法として、例えば、イーサネット、無線通信等でセンサ21と直接接続する方法がある。別の例として、センサデータをゲートウェイ経由でローカルに設置したPCに収集する場合、情報取得部11は、ローカルネットワークまたはインターネットを経由しPCにアクセスすることで、センサデータを取得する。またさらに別の例として、センサデータを直接またはゲートウェイ経由で、サーバに収集する場合、情報取得部11はインターネット経由で前記サーバにアクセスすることで、センサデータを取得する。あるいは、センサデータは外部業者のサーバに蓄積され、そのデータをcsvなどのファイル形式で受領しても良く、その場合、情報取得部11はcsvデータを読み込む機能を実装し情報を取得しても良い。
【0021】
また、情報取得部11が身体情報41を取得する方法についても、分析対象者がサービス申し込み時に記載する申請書類を参照し、利用者であるシステム管理者が入力する、システム管理者が入力した情報を蓄積部13に蓄積し参照するなど、複数の取得方法がある。
【0022】
さらに、情報取得部11は、センサ21から点群情報以外の情報を取得しても良い。例えば、点群情報を元に推測される在/不在の情報、点群の高さ方向の広がりから推測される分析対象者の姿勢およびその姿勢の急激な変化から推測される転倒に関する情報、点群の微小な変動から推測される分析対象者の呼吸数、心拍数などを取得しても良い。
【0023】
次に、演算部12は、情報取得部11で取得された情報を用いて活動量を算出する。このため、演算部12は、CPUなどのプロセッサで実現でき、蓄積部13に記憶される活動量算出プログラムに従って、後述する演算を実行する。また、演算部12は、専用ハードウエアやFPGA(Field-Programmable Gate Array)で実現してもよい。以下、演算部12の演算の一例について説明する。なお、活動量算出プログラムは、記憶媒体に格納可能であり、ネットワークを介して活動量算出装置1に配信してもよい。
【0024】
演算部12は、活動量を、複数の速度情報、より望ましくは2種類の速度情報を用いて算出する。例えば、演算部12は、以下の(数1)に示すとおり、分析対象者の2種類の速度情報と体重を用いてエネルギーの単位を持つ活動量Eを算出する。(数1)において、t1、t2、m、V1、V2はそれぞれ、活動量の算出を開始する時刻、活動量の算出を終了する時刻、分析対象者の体重、第一の速度情報、第二の速度情報を示す。
【0025】
本実施例における第一の速度情報には、対象者の活動の局所的な特性を示す速度情報を用いることが望ましい。本実施例では例えば、センサ21が分析対象者をとらえる複数の点の、各点の局所的な速度情報である局所速度情報である。活動量Eを算出する際は、それら各点における局所速度情報の最大値を代表値として用いることがより望ましい。なお、局所速度情報の具体例としては、手足、頭部など、身体の先端の速度などが該当することがある。
【0026】
なお、局所速度情報は、「分析対象者の振動度合」とも表現できる。つまり、計測された各点の中で、最も高速に移動している点の速度を用いてもよい。
【0027】
また、第二の速度情報は、分析対象者の活動の全体的な特性を示す全体速度情報を用いることが望ましい。本実施例では、全体速度情報は、例えば、センサ21が分析対象者をとらえる複数の点の、重心位置における速度の鉛直方向に直行した平面内の速度成分であり、体全体が室内を動き回る速度などを表す。なお、全体速度情報の別の表現としては、「分析対象者の移動度合」であり、鉛直方向をZ軸方向とすれば、平面(XY方向)内移動速度として記述できる。
【0028】
なお、第一の速度情報と第二の速度情報の2種類があることで、分析対象者の活動量をより多角的に捉えられるメリットがある。例えば、その場で移動せず体操している場合、局所速度情報は0より大きな値を持つが、全体移動速度情報は0である可能性がある。仮に、全体移動速度情報のみで活動量Eを評価していた場合、その場から移動しない体操は、活動量を過小評価し算出する懸念がある。同様に、手足は極端に振動させないまま室内を歩行する可能性もあり、その場合、局所速度情報のみで活動量Eを算出すると過小評価となる懸念がある。
【0029】
【0030】
ここで、活動量は人間の活動の度合(活発さ)と相関がある指標であればその定義は限定しない。例えば、点群の各点の速度の最小値、最大値、平均値、分散、標準偏差などを用いても良いし、点群の重心位置を算出し、その点について同様に最小値、最大値、平均値、分散、標準偏差などを算出し活動量として用いても良い。さらに、これらの速度と身体情報41を用いて活動量を算出しても良く、例えば、分析対象者の速度情報の任意の1種類と体重とを乗算した、運動量の単位を有する値であっても良い。
【0031】
さらに、(数1)におけるV1、V2については、活動量の算出を行う時刻t1~t2間における時間平均値をとるなど、異なる方法で算出した速度情報であっても良いし、どちらか一方で他方を代替しても良い。時間平均値をとることで、センサに短時間混入するノイズの影響を低減できる。また、センサの仕様によっては2種類の速度情報が算出不可能なことがあり、その場合に、どちらか一方で他方を代替することが有効である。(数1)は、4.184で除する前の単位は(J:ジュール)であり、除することで(cal)となる。これらいずれの単位を用いるかは、用途に応じどちらの単位でも算出可能である。
【0032】
なお、活動量を、分析対象者の部位ごとに算出してもよい。このために、演算部12は、(数2)を用いて活動量を算出する。
【0033】
【0034】
(数2)において、mX0は任意の部位の質量(重さ)を示す。VX1およびVX2のそれぞれは、該当部位における第一の速度情報および第二の速度情報を示す。各部位としては、腕、脚、胴体などを設定できる。このことで、より活動の実態に即した活動量を算出できる。なお、各部位の第一の速度情報および第二の速度情報を特定するために、演算部12は、センサ21での計測結果(例えば、画像)について機械学習を実行して、計画された点の部位を特定することが望ましい。各部位の質量mx0は、情報取得部11が身体情報41として取得するほか、人間の身体の各部位の標準的な質量バランスと全体重から推測しても良い。
【0035】
また、演算部12は、活動量以外の値を算出しても良い。例えば、演算部12は、点群情報を活用し推測した在/不在を示す値や点群の高さ方向の広がりから推測される分析対象者の姿勢を示す値を算出してもよい。さらに、演算部12は、その姿勢の急激な変化から推測される転倒に関する情報や点群の微小な変動から推測される分析対象者の呼吸数、心拍数などを算出しても良い。さらに、演算部12は、点群情報から分析対象者の体格を推測し、体格と体重を関連付ける人間の平均的なデータをもとに体重を推測しても良い。
【0036】
蓄積部13は、情報を記憶する機能を有する。このため、蓄積部13は、メモリやハードディスクドライブ等のストレージで実現できる。本実施例では、蓄積部13は、情報取得部11が取得した情報や演算部12が算出した活動量の少なくとも一つを蓄積する。また、演算部12が活動量算出プログラムに従って演算をする場合、蓄積部13はこの活動量算出プログラムを記憶する。なお、取得した情報や算出された活動量は、分析対象者ごとに蓄積される。この際、蓄積部13は、これら情報や活動量を、該当する分析対象者の年齢、性別、出身、言語、信教、趣味嗜好などの属性でタグ付けして蓄積しても良い。なお、信教、出身を属性として用いることで、礼拝など活動を伴う習慣を考慮することが可能となる。
【0037】
また、演算部12は、蓄積された情報に対して時系列解析を行っても良い。ここで時系列解析とは、各種のデータに対し、横軸に時間をとったグラフによる可視化、データの値に関する時間方向の変化率、移動平均、分散、標準偏差などの算出および誤差解析、多項式近似などの操作を行うことと定義する。これらの時系列解析は、年齢、性別、出身、信教、ライフスタイル、職業、既往歴などが同一カテゴリに属する人物の平均値との比較を含んでも良い。
【0038】
表示部14は、演算部12で演算された情報や蓄積部13の情報を表示する。表示する対象は活動量算出装置1の管理者、システムのユーザ、分析対象者などである。また、表示方法も数字、文字、表、グラフなど任意のフォーマットを採用できる。なお、表示部14は、携帯端末など独立した端末装置で実現してもよい。
【0039】
図2は、本実施例における活動量算出装置1の処理を説明するフローチャートである。活動量算出装置1は、システムの利用者であるシステム管理者やオペレータの操作を条件に、処理を開始する(ステップS1)。
【0040】
まず、情報取得部11が、センサ21の計測結果であるセンサデータおよび身体情報41を取得する(ステップS2)。なお、センサデータと身体情報41の取得は、同じタイミングでなくともよい。例えば、身体情報41は、準備作業として事前に取得され、センサデータはセンサ21での計測した際に取得される。
【0041】
次に、蓄積部13が、取得したセンサデータや身体情報41を蓄積する(ステップS3)。なお、本ステップは省略し、ステップS2で取得したセンサデータや身体情報41について、以下の処理を施してもよい。
【0042】
次に、演算部12は、センサデータや身体情報41を用いて活動量を算出する(ステップS4)。この活動量の算出は、上述したように、(数1)や(数2)を用いて行われる。
【0043】
次に、演算部12が、算出した活動量を出力する。この結果、表示部14が算出された活動量を表示することになる。また、蓄積部13が活動量を蓄積することになる。(ステップS5)。
【0044】
また、演算部12は、利用者からの時系列変化の算出指示を、情報取得部11を介して受け付ける。そして、演算部12は、時系列変化の算出に用いられる活動量を、蓄積部13から読み出す(ステップS6)。読み出される活動量は、時系列変化の算出の対象者の活動量である。この活動量は、ステップS4で算出された分析対象者の活動量に限定されず、それ以外の他者の活動量を含めることができる。これにより、分析対象者毎に活動の状況を比較することができる。
【0045】
また、読み出される活動量は、時系列変化を算出するため、ステップS4で算出された活動量である現在の活動量および過去に蓄積された過去の活動量である。
【0046】
次に、演算部12が、ステップS6で読み出された活動量活動量を用いて、時系列変化を算出する。時系列変化の算出については、上述のとおりである(ステップS7)。
【0047】
なお、ステップS7においては、演算部12は、身体情報41、特に、活動条件ごとに、その活動量を算出してもよい。また、演算部12は、活動の内容ごとに、その活動量を算出してもよい。この場合、演算部12は、活動の内容の特定を、第一の速度情報や第二の速度情報、利用者からの指定、センサデータに対する画像処理などに基づき行うことになる。この場合、蓄積部13には、時間ごとに分析対象者や他者の活動の内容や条件が蓄積されることになる。
【0048】
次に、表示部14は、ステップS4で算出された現在の活動量やステップS7で算出された活動量の時系列変化を表示する(ステップS8)。なお、表示部14は、現在の活動量と時系列変化の一方のみを表示してもよいし、他者の活動量や時系列変化を合わせ表示してもよい。これらの表示内容は、利用者から情報取得部11を介して入力される指示に応じた内容とすることが望ましい。
【0049】
ここで、本ステップでの表示内容の一例を、
図8に示す。
図8(a)は、分析対象者の活動の内容ごとに、活動量を示すグラフである。
図8(a)では、活動の内容としては、運動(体操)、運動(歩行)、掃除、食事、リラックス(読書)、リラックス(メール)、リラックス(TV)が用いられている。また、
図8(a)では、これらの活動の内容ごとに、活動条件の一種である高齢者装具有無における活動量を表示している。なお、
図8(a)では、1人の分析対象者の活動量を表示しているが、他者の活動量と比較できる形で表示してもよい。さらに、時系列変化を表示してもよい。
【0050】
また、
図8(b)は、分析対象者の第一の速度情報と第二の速度情報をそれぞれ軸にとり、高齢者装具の有無ごとにプロットしたものである。
図8(b)では、第一の速度情報として、xy平面内移動速度を、第二の速度情報として手の先端速度を用いている。ここで、
図8(b)において、原点とプロットされた点を向かい合う頂点としてもつ長方形の面積は、第一の速度情報と第二の速度情報の関係性を表示している。この関係性とは、具体的には、面積を大きくするためには、どちらか一方だけではなく、両方を大きくすることが効果的である、といったことである。この関係性を「活動量」として扱ってもよい。このように、本実施例では、活動量に限定されず、分析対象者の活動に関する何らかの指標を算出、出力すればよい。また、
図8に示す表示は、後述の実施例2や3で行ってもよい。
【0051】
さらに、ステップS8において、表示部14は、アラートを表示してもよい。この場合、ステップS7において、演算部12が、算出した時系列変化と蓄積部13に設定される閾値を比較する。そして、比較結果が所定条件を満たす場合、表示部14にアラート表示を行う。所定条件としては、活動量の低下量や低下度合いが所定以下の場合が含まれる。つまり、分析対象者の活動の変化状況に応じてアラートを出力できる。さらに、活動量が予め設定した閾値以下の場合に、アラートを出力してもよい。
【0052】
なお、活動量算出装置1はそのままステップS8で処理を終了しても良いし、処理開始(ステップS1)の直後に戻り上述の各ステップを実行しても良い。
なお、サービスおよび商品に応じ、使用するセンサの種類は変更可能である。例えば、電波センサ22、画像センサ23、人感センサ24、照度センサ25、温湿度気圧センサ26、ドアの開閉センサ27、複数の振動センサ28、感圧センサ29およびウェアラブルセンサ30などを組み合わせて使用しても良い。ここで、人感センサ24、照度センサ25、温湿度気圧センサ26はそれらの一部または全てが環境センサとして1つにまとめられていても良い。また、オンライン接続可能な体重計31、体組成計32など、他の市販の機器とのデータ連携を含んでも良い。これら体重計31、体組成計32から情報取得部11へ身体情報41が出力されることが望ましい。
また、外部サーバ51の管理者も限定されることはなく、事業者の管理するサーバであっても良いし、センサメーカの管理するサーバであっても良いし、一般にレンタル可能なサーバでも良い。ここで、本実施例では、事業者の他に、システム構築者など第三者も関与してもよい。この場合、外部サーバ51と第三者のサーバが異なる環境でそれぞれ身体情報41やセンサデータを保管し、これを活動量算出装置1に読み込ませて、利用可能としてもよい。ただし、これらのサーバは、第三者の社内環境、事業者の社内環境、クラウド環境のいずれかに構築された活動量算出装置1と通信可能である必要がある。
ここで、活動量算出装置1の情報取得部11は、外部サーバ51もしくは第三者のサーバに収集されたセンサデータを取得する。また、情報取得部11は、身体情報41も取得する。なお、身体情報41の取得方法は、センサ21から入力、サービスおよび商品の加入申込書に記載された内容の読込み、外部サーバ51における事業者ホームページのマイページへの入力などが想定できる。またさらに、別途、握力計、体組成計などの測定器具を用意し、活動量算出装置1でこの結果を取得することや第三者である他の事業者、自治体、非営利団体などと連携し、身体情報41を取得することが可能である。以上のように、身体情報41は、上述の各サーバから取得してもよいし、利用者や他のデバイス・装置から活動量算出装置1が取得することができる。情報取得部11で取得されたセンサデータおよび身体情報41は、蓄積部13に蓄積される。
また、演算部12は、情報取得部11で取得されたセンサデータおよび身体情報41から活動量を算出する。この案出は、実施例1と同様に実行する。ここで、センサ21は、電波センサ22や画像センサ23に加え、人感センサ24、照度センサ25、温湿度気圧センサ26、ドアの開閉センサ27や振動センサ28の少なくとも1種類以上のセンサを用いられる。この場合は、それらのセンサが反応した時刻の差をもとに分析対象者の移動速度を算出し、その移動速度を活動量の算出に利用しても良い。
また、蓄積部13は、情報取得部11で取得された身体情報41を蓄積する。そして、演算部12は、蓄積部13から、同一人物の過去の身体情報、活動量などの履歴データを検索する。そして、演算部12は、検索結果を用いて時系列解析を行うことができる。つまり、実施例1のステップS7を実行する。
また、演算部12は、算出した現在の活動量および時系列解析結果を出力する。この結果、蓄積部13は、演算部12の算出した活動量や時系列変化結果を、分析対象者ごとに、分析対象者の年齢、性別、出身、信教、ライフスタイル、職業、既往歴などのカテゴリごとに蓄積する。
また、表示部14は、演算部12で算出された活動量および時系列解析結果を表示する。このことで、システムの運営者や事業者の担当者に、活動量および時系列解析結果を提示することが可能になる。ここで、事業者の担当者への表示は、外部サーバ51やこれらに接続される端末に表示することが望ましい。なお、表示内容は、システムの運営者と事業者で異なっても良い。システムの運営者に対しては、例えば、現時点の分析対象者の活動量および活動量の時系列変化に加え、以下の情報を表示することが望ましい。
・センサ21の稼働状態に関する情報
・センサ21のバッテリー状況に関する情報
・演算部12の処理を介さないセンサ21の指示値
・事業者がシステムを参照した日時、回数、時間および内容に関する情報。
事業者に対しては、例えば、現時点の分析対象者の活動量および活動量の時系列変化に加え、事業者ごとに特に必要とする情報に変換して表示しても良い。具体的には、保険業者であれば、過去の他者の保険の適用履歴と活動量の時系列変化を併せて示すことが望ましく、これにより、現在の分析対象者について、保険の適用可能性を類推する材料を提供できる。これらの情報をもとに、保険業者は、分析対象者の活動量の時系列変化を、保険の適用可能性が低くなる方向に修正するための介入手段を検討することができる。この介入手段には、分析対象者の活動量を増加させるために、「毎日30分程度散歩しましょう」「町内でバザーが開催されているので参加してみませんか?」などのレコメンドを行うことが含まれる。
また、デイサービス業者であれば、デイサービスを実施した日程と活動量の時系列変化を併せて示すことで、デイサービスの内容が分析対象者の活動量におよぼす影響を検討する材料を提供しても良い。この情報をもとに、デイサービス業者は、分析対象者ごとに活動量の時系列変化を望ましい方向に修正するためのプログラムを検討することができる。
事業者は、表示内容についてシステム管理者にフィードバックを返すことができる。フィードバックの手段は、口頭での伝達、メール、システム管理者のホームページを介した投稿などである。システム管理者は、事業者からのフィードバックにもとづき、表示内容を変更しても良い。以上で、実施例2の説明を終了する。