(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147917
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】制振ダンパー用シリコーン組成物、制振ダンパー用粘性流体、および制振ダンパー
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20231005BHJP
F16F 15/023 20060101ALI20231005BHJP
F16F 9/30 20060101ALI20231005BHJP
C08K 3/11 20180101ALI20231005BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20231005BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08L83/07
F16F15/023 A
F16F9/30
C08K3/11
C08L83/05
E04H9/02 351
E04H9/02 321B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055697
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】飯沼 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】村谷 圭市
(72)【発明者】
【氏名】深川 繁
(72)【発明者】
【氏名】仲市 真吾
(72)【発明者】
【氏名】竹ノ内 浩祐
(72)【発明者】
【氏名】安達 大悟
(72)【発明者】
【氏名】山本 将大
(72)【発明者】
【氏名】早崎 康行
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
3J069
4J002
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC19
2E139BA14
2E139BD22
3J048AA06
3J048AC05
3J048BE04
3J048EA38
3J069AA40
4J002CP043
4J002CP141
4J002CP142
4J002DD076
4J002DG026
4J002EC036
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4J002EV026
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4J002EV326
4J002EW016
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4J002EZ026
4J002FD142
4J002FD143
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】温度変化による粘度変化が少なく、高温環境下であっても少量で高減衰を発現することができ、さらに耐荷重性、密着性に優れ、施工性にも優れる、制振ダンパー用シリコーン組成物、制振ダンパー用粘性流体、および制振ダンパーを提供する。
【解決手段】下記(A)および(B)を主成分とし下記(C)~(E)を含有する、制振ダンパー用シリコーン組成物によって、課題を解決する。
(A)直鎖型両末端ビニル基変性シリコーン。
(B)分岐型シリコーン。
(C)白金触媒。
(D)遅延剤。
(E)鎖延長剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)および(B)を主成分とし下記(C)~(E)を含有する、制振ダンパー用シリコーン組成物。
(A)直鎖型両末端ビニル基変性シリコーン。
(B)分岐型シリコーン。
(C)白金触媒。
(D)遅延剤。
(E)鎖延長剤。
【請求項2】
前記(B)が、一分子中に3つ以上のヒドロシリル基を有する架橋剤と、直鎖型両末端ビニル基変性シリコーンとの反応物である、請求項1記載の制振ダンパー用シリコーン組成物。
【請求項3】
前記(A)の質量aと、前記(B)を構成する直鎖型両末端ビニル基変性シリコーンの質量bとの比率(a:b)が、a:b=95:5~10:90である、請求項2記載の制振ダンパー用シリコーン組成物。
【請求項4】
前記(A)の30℃での粘度が、2000~100000mPa・sである、請求項1~3のいずれか一項に記載の制振ダンパー用シリコーン組成物。
【請求項5】
前記(B)を構成する直鎖型両末端ビニル基変性シリコーンの30℃での粘度が、2000~100000mPa・sである、請求項2~4のいずれか一項に記載の制振ダンパー用シリコーン組成物。
【請求項6】
前記(C)の含有割合が、前記(A)100質量部に対し0.00003~0.003質量部である、請求項1~5のいずれか一項に記載の制振ダンパー用シリコーン組成物。
【請求項7】
前記(D)の含有割合が、前記(A)100質量部に対し0.01~1質量部である、請求項1~6のいずれか一項に記載の制振ダンパー用シリコーン組成物。
【請求項8】
前記制振ダンパー用シリコーン組成物中における、前記(A)に対する前記(E)のモル比が0.01~4である、請求項1~7のいずれか一項に記載の制振ダンパー用シリコーン組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の制振ダンパー用シリコーン組成物が重合されてなる制振ダンパー用粘性流体。
【請求項10】
30℃での粘度が6000~150000Pa・sである、請求項9記載の制振ダンパー用粘性流体。
【請求項11】
請求項9または10記載の制振ダンパー用粘性流体が充填されてなる、制振ダンパー。
【請求項12】
制震壁である、請求項11記載の制振ダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振ダンパー用シリコーン組成物、制振ダンパー用粘性流体、および制振ダンパーに関するものであり、詳しくは、土木・建築分野における制震や免震等の用途に好適な制振ダンパー用シリコーン組成物、制振ダンパー用粘性流体、および制振ダンパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
土木・建築分野における制震装置や免震装置、とりわけ、橋梁やビルといった大型建造物に使用される制震ダンパーは、地震や風等による振動、大型車の走行等による交通振動等を抑制する目的で使用される。
大地震のエネルギーを吸収するためには、高ひずみの高減衰化は必須であるが、大地震後には中小地震も多く発生しており、高層ビルで観測される長周期地震のように、前記中小地震による何回も連続した繰り返し変形に対しても、特性安定化のニーズが高くなってきている。
このような用途に用いられる制振ダンパーの機構としては、粘弾性ダンパー、粘性ダンパー、オイルダンパー、鋼材ダンパーなどが主な機構としてあげられるが、なかでも粘性ダンパーは、減衰力が大きく繰り返し性に優れており、しかも粘性項しか存在しないことから設計が簡単であり、高層ビル等の大型施設で広く導入されている。
【0003】
前記粘性ダンパーに使用される粘性体としては、例えば、ポリイソブチレン等のポリブテン系材料を用いたものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリブテン系材料は温度依存性が大きいことから、高温環境下(30℃以上)で高減衰性を得るためには、粘性ダンパーに使用するポリブテン系材料の使用量を多くする必要がある。そのため、ポリブテン系材料を粘性ダンパーの粘性体として使用する際には、ポリブテン系材料の使用量増大に合わせて、その設備を大型化する必要がある。
【0006】
また、ポリブテン系材料は温度依存性が大きいことから、制震壁等の制振ダンパーにポリブテン系材料を充填する際に、一旦、130~170℃に温めて、ポリブテン系材料の粘度を下げてからでないと充填することができない。このように、施工の際に温める手間がかかるといった問題もある。
【0007】
そこで、本発明者らは、前記粘性体の材料として、温度依存性の小さいシリコーンを用いることを検討した。
しかしながら、シリコーンの特徴である、「低強度」、「高い非粘着性」が、粘性ダンパーにシリコーンを使用するにあたり、耐荷重性に弱く、ダンパーを構成する金具への低密着による加振中の制振性能低下が強いられる、といった弱点となる。そのため、この点において、さらに検討する余地がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、温度変化による粘度変化が少なく、高温環境下であっても少量で高減衰を発現することができ、さらに耐荷重性、密着性に優れ、施工性にも優れる、制振ダンパー用シリコーン組成物、制振ダンパー用粘性流体、および制振ダンパーの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、制振ダンパーの制振機構として先述のように粘性ダンパーを採用し、その粘性材料として、温度依存性の小さいシリコーンを用いることを検討した。そして、温度変化による粘度変化が少なく、高温環境下であっても少量で高減衰を発現でき、さらに耐荷重性、密着性に優れ、施工性にも優れる粘性材料となるよう、各種実験・研究を重ねた。
その結果、前記粘性材料として、直鎖型両末端ビニル基変性シリコーン(A)と分岐型シリコーン(B)を併用した主成分と、白金触媒(C)、遅延剤(D)、および鎖延長剤(E)とを含有するシリコーン組成物を開発した。本開発のシリコーン組成物は、その重合反応(粘性流体化)が進むにつれ、
図3に示すように、前記(A)と(E)の重合反応(二次元架橋反応)により高分子量化した直鎖構造のシリコーン(図示の11)とともに、前記(B)の分岐型シリコーン(図示の12)が共存するようになる。そして、前記分岐型シリコーン12が、その分子構造により、前記直鎖構造のシリコーン11に対して絡み合いやすく、この絡み合いによりシリコーンの弱点である耐荷重性が改善され、さらに、分岐型シリコーン12の併用により密着性に寄与するポリマー末端が増え、密着性が向上するようになることを見いだした。
しかも、前記シリコーン組成物からなる粘性流体(制振ダンパー用粘性流体)は、ポリブテン系材料を使用した従来の粘性流体の2倍以上の粘度を示し、高減衰を実現するとともに、ポリブテン系材料よりも温度依存性を大幅に低減できることから、所期の目的が達成できる結果となった。
【0010】
しかるに、本発明は、以下の[1]~[12]を、その要旨とする。
[1] 下記(A)および(B)を主成分とし下記(C)~(E)を含有する、制振ダンパー用シリコーン組成物。
(A)直鎖型両末端ビニル基変性シリコーン。
(B)分岐型シリコーン。
(C)白金触媒。
(D)遅延剤。
(E)鎖延長剤。
[2] 前記(B)が、一分子中に3つ以上のヒドロシリル基を有する架橋剤と、直鎖型両末端ビニル基変性シリコーンとの反応物である、[1]に記載の制振ダンパー用シリコーン組成物。
[3] 前記(A)の質量aと、前記(B)を構成する直鎖型両末端ビニル基変性シリコーンの質量bとの比率(a:b)が、a:b=95:5~10:90である、[2]に記載の制振ダンパー用シリコーン組成物。
[4] 前記(A)の30℃での粘度が、2000~100000mPa・sである、[1]~[3]のいずれかに記載の制振ダンパー用シリコーン組成物。
[5] 前記(B)を構成する直鎖型両末端ビニル基変性シリコーンの30℃での粘度が、2000~100000mPa・sである、[2]~[4]のいずれかに記載の制振ダンパー用シリコーン組成物。
[6] 前記(C)の含有割合が、前記(A)100質量部に対し0.00003~0.003質量部である、[1]~[5]のいずれかに記載の制振ダンパー用シリコーン組成物。
[7] 前記(D)の含有割合が、前記(A)100質量部に対し0.01~1質量部である、[1]~[6]のいずれかに記載の制振ダンパー用シリコーン組成物。
[8] 前記制振ダンパー用シリコーン組成物中における、前記(A)に対する前記(E)のモル比が0.01~4である、[1]~[7]のいずれかに記載の制振ダンパー用シリコーン組成物。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の制振ダンパー用シリコーン組成物が重合されてなる制振ダンパー用粘性流体。
[10] 30℃での粘度が6000~150000Pa・sである、[9]に記載の制振ダンパー用粘性流体。
[11] [9]または[10]に記載の制振ダンパー用粘性流体が充填されてなる、制振ダンパー。
[12] 制震壁である、[11]に記載の制振ダンパー。
【発明の効果】
【0011】
以上のことから、本発明の制震ダンパー用シリコーン組成物は、温度変化による粘度変化が少なく、高温環境下であっても少量で高減衰を発現することができ、さらに耐荷重性、密着性に優れた粘性流体の材料として、優れた性能を発揮することができる。
また、本発明の制震ダンパー用シリコーン組成物は、常温でも反応するため、粘度の低い状態で制震壁等の制振ダンパーに充填し、制振ダンパー内で常温にて高分子量化させることが可能である。しかも、前記充填する際に、一旦温めて粘度を下げてから充填するといった手間が不要であることから、施工の際に有利である。
そして、本発明の制振ダンパーは、前記粘性流体が充填されてなるものであり、その充填量が少量であっても高減衰を発現できることから、従来のポリブテン系材料を使用した粘性ダンパーと比較して小型化が可能である。また、温度変化による減衰性の変動が少ない(特に、高温環境下での減衰性の低下が抑えられる)ことから、制振ダンパーとして優れた性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】前記制震壁の組立て前の状態を示す斜視図である。
【
図3】ポリマーの分散状況を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
なお、本発明において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意とともに、「好ましくはXより大きい」または「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)または「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」または「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【0014】
本発明の制振ダンパー用シリコーン組成物(以下、「本シリコーン組成物」と示す。)は、下記(A)および(B)を主成分とし下記(C)~(E)を含有するシリコーン組成物である。
(A)直鎖型両末端ビニル基変性シリコーン。
(B)分岐型シリコーン。
(C)白金触媒。
(D)遅延剤。
(E)鎖延長剤。
【0015】
ここで、前記の「(A)および(B)を主成分とし」とは、本シリコーン組成物の必須成分である前記の(A)~(E)の総質量に対し、(A)および(B)の合計質量が、90質量%を上回る割合を占めるもののことを意味し、好ましくは92~98質量%、より好ましくは94~97質量%を占めるもののことを意味する。
なお、前記(B)の分岐型シリコーンが、直鎖型両末端ビニル基変性シリコーンを用いて合成されたものである場合、その材料である直鎖型両末端ビニル基変性シリコーンは、前記(A)には含まれない。
【0016】
以下に、本シリコーン組成物の構成材料について詳しく説明する。
【0017】
《直鎖型両末端ビニル基変性シリコーン(A)》
直鎖型両末端ビニル基変性シリコーン(A)としては、直鎖の分子構造を示すシリコーンであって、その両末端にビニル基を有するものが用いられ、例えば、下記の一般式(1)で示されるビニル基変性シリコーンが用いられる。
【0018】
【0019】
前記一般式(1)において、nは、50~5000の整数であることが好ましく、より好ましくは80~4000の整数、さらに好ましくは100~3000整数である。すなわち、nの値が小さすぎると、反応が速くなりすぎ、nの値が大きすぎると、反応が遅くなりすぎるからである。
【0020】
また、前記の直鎖型両末端ビニル基変性シリコーン(A)の、30℃での粘度は、400~5000000mPa・sであることが好ましい。そして、前記粘度は、500~4000000mPa・sであることがより好ましく、1000~1000000mPa・sであることがさらに好ましい。すなわち、前記のような粘度を示すものであると、減衰特性がさらに向上するようになる。なお、前記粘度は、回転式レオメーター(TAインスツルメント社製、ARES-G2)により、測定温度30℃にて測定した値である。
【0021】
《分岐型シリコーン(B)》
分岐型シリコーン(B)としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、一分子中に3つ以上のヒドロシリル基を有する架橋剤と、直鎖型両末端ビニル基変性シリコーンとの反応物が用いられる。
ここで、前記分岐型シリコーン(B)の構成材料として用いられる直鎖型両末端ビニル基変性シリコーンとしては、前記(A)と同様のものが好ましく用いられる。そのため、下記の一般式(1)で示されるビニル基変性シリコーンが好ましく用いられる。
【0022】
【0023】
前記一般式(1)において、nは、50~5000の整数であることが好ましく、より好ましくは80~4000の整数、さらに好ましくは100~3000の整数である。すなわち、nの値が小さすぎると、反応が速くなりすぎ、nの値が大きすぎると、反応が遅くなりすぎるからである。
【0024】
また、前記分岐型シリコーン(B)の構成材料として用いられる直鎖型両末端ビニル基変性シリコーンの、30℃での粘度は、400~5000000mPa・sであることが好ましい。そして、前記粘度は、500~4000000mPa・sであることがより好ましく、1000~1000000mPa・sであることがさらに好ましい。すなわち、前記のような粘度を示すものであると、減衰特性がさらに向上するようになる。なお、前記粘度は、回転式レオメーター(TAインスツルメント社製、ARES-G2)により、測定温度30℃にて測定した値である。
【0025】
つぎに、前記分岐型シリコーン(B)の構成材料として用いられる架橋剤としては、先に述べたように、一分子中に3つ以上のヒドロシリル基を有する架橋剤が用いられる。このような架橋剤としては、例えば、その分子鎖の片末端あるいは両末端にヒドロシリル基を有するとともに、分子鎖中にヒドロシリル基を有する化合物や、分子鎖末端にヒドロシリル基を有さず、分子鎖中にのみ3つ以上のヒドロシリル基を有する化合物等が挙げられる。
ここで、分子鎖末端にヒドロシリル基を有さず、分子鎖中にのみ3つ以上のヒドロシリル基を有する化合物としては、例えば、下記の一般式(2)で示される化合物が用いられる。下記の一般式(2)において、n、mは、任意の整数である。
【0026】
【0027】
前記架橋剤のヒドロシリル基量は、0.015~0.4mmol/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.02~0.11mmol/gの範囲である。
【0028】
前記のような架橋剤として、市販のものでは、信越化学社製のKF-9901、エボニック社製のクロスリンカー100等が、好ましく用いられる。
【0029】
そして、前記分岐型シリコーン(B)の構成材料として用いられる直鎖型両末端ビニル基変性シリコーンに対する前記架橋剤のモル比が、0.01~4であることが好ましく、0.01~3であることがより好ましい。
このような割合で前記架橋剤を反応させることにより、所望の分岐型シリコーン(B)を良好に得ることができる。
【0030】
なお、前記分岐型シリコーン(B)は、通常、前記のような、一分子中に3つ以上のヒドロシリル基を有する架橋剤と、直鎖型両末端ビニル基変性シリコーンの他、白金触媒、遅延剤等とともに、5~35℃の雰囲気下で、羽根撹拌機,ニーダー,プラネタリーミキサー,混合ロール,2軸スクリュー式撹拌機等を用いて混練・撹拌することにより反応させて、得ることができる。
ここで、前記白金触媒としては、特に限定はないが、本シリコーン組成物の必須成分である白金触媒(C)と同様のものが好ましく用いられる。また、前記遅延剤としても、特に限定はないが、本シリコーン組成物の必須成分である遅延剤(D)と同様のものが好ましく用いられる。
なお、前記分岐型シリコーン(B)を得る際の、前記白金触媒の割合は、前記の直鎖型両末端ビニル基変性シリコーン100質量部に対し、0.00003~0.005質量部であることが好ましく、より好ましくは0.00009~0.003質量部の範囲である。
また、前記分岐型シリコーン(B)を得る際の、前記遅延剤の割合は、前記の直鎖型両末端ビニル基変性シリコーン100質量部に対し、0.01~1質量部であることが好ましく、より好ましくは0.05~0.5質量部の範囲である。
【0031】
このようにして得られた分岐型シリコーン(B)の、30℃での粘度は、400~5000000mPa・sであることが好ましい。そして、前記粘度は、500~4000000mPa・sであることがより好ましく、1000~1000000mPa・sであることがさらに好ましい。すなわち、前記のような粘度を示すものであると、減衰特性がさらに向上するようになる。なお、前記粘度は、回転式レオメーター(TAインスツルメント社製、ARES-G2)により、測定温度30℃にて測定した値である。
【0032】
そして、本シリコーン組成物において、直鎖型両末端ビニル基変性シリコーン(A)(分岐型シリコーン(B)を構成する直鎖型両末端ビニル基変性シリコーンを除く。以下同じ。)の質量aと、分岐型シリコーン(B)を構成する直鎖型両末端ビニル基変性シリコーンの質量bとの比率(a:b)は、好ましくは、a:b=95:5~10:90の範囲であり、より好ましくはa:b=90:10~15:85、さらに好ましくはa:b=80:20~20:80の範囲である。このような範囲となるよう、(A)と(B)を配合することが、本シリコーン組成物に要求される耐荷重性、密着性の双方において優れた結果が得られる点から、望ましい。
【0033】
《白金触媒(C)》
本シリコーン組成物に配合される前記白金触媒(C)としては、例えば、白金-オレフィン錯体、塩化白金酸、白金の単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に固体白金を担持させたもの、白金-ビニルシロキサン錯体、白金-ホスフィン錯体、白金-ホスファイト錯体等が、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
また、前記白金触媒(C)は、キシレン,トルエン等の溶媒に溶解させたものを使用してもよい。このようなものは、市販品では、Gelest社製のSIP6830等があげられる。
【0034】
そして、前記の直鎖型両末端ビニル基変性シリコーン(A)100質量部に対し、前記白金触媒(C)の含有割合は、0.00003~0.003質量部であることが好ましく、より好ましくは0.00006~0.0027質量部、さらに好ましくは0.00009~0.0024質量部の範囲である。すなわち、このような範囲内に白金触媒(C)の含有量を抑えることにより、本シリコーン組成物の重合反応((A)成分と(E)成分の重合反応)が急激に進行するのを抑制しつつ、その重合反応を充分に行うことができ、重合体の粘度のばらつきが生じるのを抑え、所望の粘度(所望の高減衰性)を得ることができるようになるからである。
なお、前記白金触媒(C)の含有割合は、前記のようなキシレン,トルエン等の溶媒を含まない、白金触媒そのものの量を規定したものである。
【0035】
《遅延剤(D)》
前記遅延剤(D)としては、例えば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0036】
前記脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、具体的には、アセチレンアルコール,1-エチニル-1-シクロヘキサノール等の、脂肪族不飽和結合を含有するアルコール類、無水マレイン酸,マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル類等があげられる。
【0037】
また、前記有機リン化合物としては、具体的には、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等があげられる。
【0038】
また、前記有機イオウ化合物としては、具体的には、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等があげられる。
【0039】
また、前記窒素含有化合物としては、具体的には、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N-ジブチルエチレンジアミン、N,N-ジブチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N',N'-テトラエチルエチレンジアミン、N,N-ジブチル-1,4-ブタンジアミン、2,2'-ビピリジン等があげられる。
【0040】
また、前記スズ系化合物としては、具体的には、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等があげられる。
【0041】
また、前記有機過酸化物としては、具体的には、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t-ブチル等があげられる。
【0042】
そして、前記の各種遅延剤のなかでも、汎用性の観点から、脂肪族不飽和結合を含有する化合物が好ましく、より好ましくは脂肪族不飽和結合を含有するアルコール類であり、特に好ましくはアセチレンアルコールである。
【0043】
そして、前記の直鎖型両末端ビニル基変性シリコーン(A)100質量部に対し、前記遅延剤(D)の含有割合は、0.01~1質量部であることが好ましく、より好ましくは0.05~0.5質量部の範囲である。すなわち、前記範囲内で遅延剤(D)を加えることにより、直鎖型両末端ビニル基変性シリコーン(A)と鎖延長剤(E)の重合反応が急激に進行するのを抑制し、重合体の粘度のばらつきが生じるのを抑え、所望の粘度(所望の高減衰性)を得ることができるようになるからである。
【0044】
《鎖延長剤(E)》
前記鎖延長剤(E)としては、例えば、下記の一般式(3)で示されるような、分子鎖の両末端にヒドロシリル基(Si-H基)を有する、低分子量の化合物があげられる。
【0045】
【0046】
前記一般式(3)において、nは、1~100の整数であることが好ましく、より好ましくは1~90の整数、さらに好ましくは1~80の整数である。すなわち、nの値が小さすぎると、反応が速くなりすぎ、nの値が大きすぎると、反応が遅くなりすぎるからである。
【0047】
そして、本シリコーン組成物中においては、前記の直鎖型両末端ビニル基変性シリコーン(A)に対する前記鎖延長剤(E)のモル比が、0.01~4であることが好ましく、0.1~2であることがより好ましい。
すなわち、前記のような割合で、前記の直鎖型両末端ビニル基変性シリコーン(A)と鎖延長剤(E)を配合することにより、所望の粘性を得ることができるようになるからである。
【0048】
《他の成分》
本シリコーン組成物には、前記(A)~(E)の各成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、フィラー、シリコーン以外の液状ポリマー、消泡剤、レオロジーコントロール剤、内添接着剤、カップリング剤等の、各種の添加剤を配合することも可能である。
【0049】
前記フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、炭素繊維、カーボンナノチューブ等があげられ、これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0050】
本シリコーン組成物に適宜に配合される前記フィラーの含有割合は、前記の直鎖型両末端ビニル基変性シリコーン(A)100質量部に対して、1~100質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは5~50質量部の範囲である。このような含有割合であると、減衰特性がさらに向上するようになる。
【0051】
前記の、シリコーン以外の液状ポリマーとしては、例えば、液状イソプレンゴム(液状IR)、液状ブタジエンゴム(液状BR)、液状スチレン-ブタジエンゴム(液状SBR)、液状スチレン-イソプレンゴム(液状SI)、液状スチレン-エチレン-プロピレンゴム(液状SEP)、液状イソプレン-ブタジエンゴム(液状IR-BR)等があげられ、これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0052】
本シリコーン組成物に適宜に配合される前記液状ポリマーの含有割合は、前記の直鎖型両末端ビニル基変性シリコーン(A)100質量部に対して、1~100質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは5~50質量部の範囲である。このような含有割合であると、減衰特性がさらに向上するようになる。
【0053】
本シリコーン組成物は、例えば、前記(A)~(E)成分、さらに必要に応じてその他の成分等を、5~35℃の雰囲気下で、羽根撹拌機,ニーダー,プラネタリーミキサー,混合ロール,2軸スクリュー式撹拌機等を用いて混練・撹拌することにより調製することができる。なお、前記(B)の分岐型シリコーンは、先に述べた手法により予め合成した後、前記(A),(C)~(E)成分等とともに加えることが望ましい。
このようにして得られた本シリコーン組成物は、常温(5~35℃)でも反応(高分子量化)が進み、粘性流体となるため、前記調製直後の粘度の低い状態で制震壁等の制振ダンパーに充填し、制振ダンパー内で常温にて高分子量化させることが可能である。しかも、前記充填を行う際に、従来のような一旦温めて粘度を下げてから充填するといった手間が不要であることから、施工の際に有利である。
また、前記のようにして調製された本シリコーン組成物は、前記調製直後から、気温によっては、12時間程度は高分子量化が進まない(粘性流体とならない)ため、この場合においては、予め調製された前記シリコーン組成物を施工現場に運んで使用するといったことも可能となる。
なお、前記シリコーン組成物は、5~35℃雰囲気下で1~24時間静置することにより、(A)成分と(E)成分の重合反応(二次元架橋反応)が完了し高分子量化がなされ、粘性流体(制振ダンパー用粘性流体。以下、「本粘性流体」と示す。)となる。
【0054】
ここで、本粘性流体は、30℃での粘度が6000~100000Pa・sであることが好ましい。そして、前記粘度は、6500~80000Pa・sであることがより好ましく、7000~60000Pa・sであることがさらに好ましい。すなわち、前記のような粘度を示すものであると、減衰特性がさらに向上するようになる。なお、前記粘度は、回転式レオメーター(TAインスツルメント社製、ARES-G2)により、測定温度30℃にて測定した値である。
【0055】
また、本粘性流体における、(A)成分と(E)成分の重合反応物の重量平均分子量(Mw)は、80000~2000000であることが好ましく、100000~1800000であることがより好ましい。すなわち、前記のような重量平均分子量を示すものであると、減衰特性がさらに向上するようになる。
また、前記重合反応物の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、本発明の効果をより効果的に発揮する観点から、1.5~40が好ましく、2~30がより好ましい。
なお、前記重量平均分子量(Mw)は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本を直列にして用いることにより測定される。また、数平均分子量(Mn)も同様の方法で測定され、前記数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)より、前記重合反応物の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が求められる。
【0056】
そして、前記のようにして調製された本粘性流体が充填されてなる制振ダンパー(以下、「本制振ダンパー」と示す。)として、例えば、
図1に示す制震壁等があげられる。
【0057】
図1は、制震壁の一例を模式的に示す斜視図である。そして、図示の制震壁1は、上階の建築構造体の骨組みに固定されて垂下し、下階の建築構造体の骨組みと切り離された1枚または復数枚の板からなる垂下壁2と、その垂下壁2と平行に下階の建築構造体の骨組みに固定されて垂下壁2を取り囲むように立ち上がり、上階の建築構造体の骨組みと切り離された複数枚の板からなる立上り壁3との隙間に、本粘性流体が充填されてなるものである。
なお、
図1に示す構造の制震壁1の場合、前記垂下壁2と立上り壁3との隙間に、本シリコーン組成物を充填した後に重合反応させることにより本粘性流体とすることが、前記制震壁1の製造工程の観点から、好ましい。
【0058】
前記制震壁1における、垂下壁2および立上り壁3を構成する材料としては、鋼板のほかに、繊維強化樹脂板を使用することができる。前記繊維強化樹脂板としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリアミド、ポリプロピレン、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂をマトリッリクス樹脂とし、これに、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、アミド繊維等が分散されてなる樹脂板が使用される。
【0059】
さらに、前記制震壁1の具体的構造として、制震壁1の水平方向および鉛直方向に沿って所定の間隔を空けて垂下壁2と立上り壁3とを貫通するボルト孔を空け(図示せず)、これらの両壁のボルト孔に両壁間の隙間を保持する隙間調整ボルトを挿通してナットで螺合し、両壁間の隙間の大きさを隙間調整ボルトのナットへの螺合長さに応じて調整することができるものであってもよい。
【0060】
また、前記制震壁1内への、本シリコーン組成物の充填は、垂下壁2を立上り壁3に建て入れる前、または建て入れた後に行うことができ、その方法には特に限定はない。建て入れ前の充填方法としては、例えば立上り壁3の上部から壁内へ長い流入管を取り付けて本シリコーン組成物を流し込み充填する方法、立上り壁3の下部に複数の注入口を設けて(図示せず)、その注入口からグラウト注入機などのポンプを利用して本シリコーン組成物を充填する方法などがある。
これらの方法により、
図2に示すように、立上り壁3内に本シリコーン組成物(シリコーン組成物4)の充填を完了した後、垂下壁2を立上り壁3内に建て入れ、前記シリコーン組成物4の重合反応が完了する(粘性流体となる)ことにより、前記制震壁1は完成される。
なお、充填の時期については、あらかじめシリコーン組成物4を充填して施工現場に搬入したり、または施工現場にてシリコーン組成物4を調製して充填したりするなど、任意の時期に行うことができる。
また、垂下壁2を立上り壁3に建て入れた後にシリコーン組成物4を充填する場合には、立上り壁3の下部に注入口を設けて注入する方法を適用することが好ましい。
【0061】
本制振ダンパーは、前記のように図示した形状のものに限定されるものではなく、本シリコーン組成物、または本粘性流体を使用したものであれば、各種の形状のものがあげられる。
そして、本制振ダンパーは、土木用,建築用の制震ダンパー、家電用や電子機器用の制振ダンパー等として、優れた機能を発揮することができる。
なかでも、橋梁やビルといった大型建造物に使用される制震ダンパーとして、とりわけ高層ビル用制震ダンパーとして、より優れた機能を発揮することができる。
【実施例0062】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、その要旨を超えない限り、これら実施例に限定されるものではない。
【0063】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。なお、下記に示す材料に示された各数値は、前記測定方法に基づき測定された値である。
【0064】
〔両末端ビニル基変性シリコーン(i)〕
下記の一般式(1)で示される、n=100~300の、両末端ビニル基変性シリコーン(Polymer VS 2000(30℃での粘度:2000mPa・s)、エボニック社製)
【0065】
【0066】
〔両末端ビニル基変性シリコーン(ii)〕
前記一般式(1)で示される、n=500~800の、両末端ビニル基変性シリコーン(Polymer VS 10000(30℃での粘度:10000mPa・s)、エボニック社製)
【0067】
〔両末端ビニル基変性シリコーン(iii)〕
前記一般式(1)で示される、n=1100~1400の、両末端ビニル基変性シリコーン(Polymer VS 65000(30℃での粘度:65000mPa・s)、エボニック社製)
【0068】
〔両末端ビニル基変性シリコーン(iv)〕
前記一般式(1)で示される、n=1350~1650の、両末端ビニル基変性シリコーン(Polymer VS 100000(30℃での粘度:100000mPa・s)、エボニック社製)
【0069】
〔白金触媒〕
SIP6830、Gelest社製
【0070】
〔遅延剤〕
アセチレンアルコール(サーフィノール61、日信化学工業社製)
【0071】
〔鎖延長剤〕
下記の一般式(3)で示される、n=1~18の、鎖延長剤(DMS-H11、エボニック社製)
【0072】
【0073】
〔架橋剤(i)〕
下記の一般式(2)で示される、ヒドロシリル基量7mmol/gの架橋剤(KF-9901、信越化学社製)
【0074】
【0075】
〔架橋剤(ii)〕
前記一般式(2)で示される、ヒドロシリル基量8mmol/gの架橋剤(クロスリンカー100,エボニック社製)
【0076】
[実施例1~11、比較例1,2]
まず、下記の表1に示す各材料を同表に示す割合で配合し、30℃の雰囲気下で、羽根撹拌機によって撹拌し、架橋反応させることにより、分岐型シリコーン(I)~(V)を得た。
なお、下記の表1に示す架橋剤の配合量は、両末端ビニル基変性シリコーンに対する架橋剤のモル比で記載した。また、下記の表1に示す白金触媒の割合は、薬剤(SIP6830)中に含まれる溶媒等を除いた白金触媒そのものの含有割合を示したものである。
また、下記の表1に示す分岐型シリコーン(I)~(V)の粘度は、前記測定方法に基づき測定された30℃雰囲気下での値である。
【0077】
【0078】
つぎに、前記各材料および前記表1に示す分岐型シリコーン(I)~(V)を、後記の表2および表3に示す割合で配合し、30℃の雰囲気下で、羽根撹拌機によって撹拌することにより、実施例および比較例のシリコーン組成物を調製した。
なお、後記の表2および表3に示す鎖延長剤(E)の配合量は、両末端ビニル基変性シリコーン(A)に対する鎖延長剤(E)のモル比で記載した。また、後記の表2および表3に示す白金触媒(C)の含有割合は、薬剤(SIP6830)中に含まれる溶媒等を除いた白金触媒そのものの含有割合を示したものである。
【0079】
そして、実施例および比較例のシリコーン組成物を用いて、下記の各特性を測定し、下記の基準に従い評価した。これらの結果を後記の表2および表3に併せて示した。
【0080】
≪粘度≫
前記調製のシリコーン組成物を、30℃で1日間重合反応させた後、回転式レオメーター(TAインスツルメント社製、ARES-G2)により、測定温度30℃にて粘度を測定した。
【0081】
≪温度依存性≫
前記調製のシリコーン組成物を、30℃で1日間重合反応させた後、回転式レオメーター(TAインスツルメント社製、ARES-G2)により、測定温度10℃にて粘度を測定した。そして、前記測定を、測定温度30℃でも行い、「測定温度10℃での粘度/測定温度30℃での粘度」を算出した。
【0082】
≪動的弾性率≫
前記調製のシリコーン組成物を、30℃で1日間重合反応させた後、回転式レオメーター(TAインスツルメント社製、ARES-G2)により、30℃で粘弾性測定を行い、その際の、動的弾性率の最大値を求めた。
【0083】
≪密着性≫
直径30mm、厚み2mmの円板状の金具と、50mm角の金具を1枚ずつ用意し、これら2枚の金具の間に挟むよう、前記調製のシリコーン組成物を、厚み1mmとなるよう充填し、30℃で1日間静置して、前記シリコーン組成物の重合反応を促した。その後、フォースゲージ(イマダ社製、普及型メカニカルフォースゲージ)により、前記2枚の金具を引き剥がす方向に引っ張った。そして、引き剥がした金具の剥離面を、下記の基準に従い、目視評価した。
〇:剥離面の50%以上で、前記シリコーン組成物の重合反応物の材料破壊が認められた。
×:界面剥離か、あるいは剥離面の50%未満での前記シリコーン組成物の重合反応物の材料破壊が認められた。
【0084】
<総合評価>
前記各測定の結果、粘度が6000~100000Pa・s、温度依存性が2以下、動的弾性率が5000Pa以上、密着性評価が「〇」、といった要件を全て満たすものを、総合評価「○」とし、これらの要件の一つでも満たさなかったものを総合評価「×」とした。
【0085】
【0086】
【0087】
前記表2および表3の結果から、実施例の試料は、いずれも、重合反応完了後の粘性流体の粘度が高い(6000~100000Pa・s)ことから減衰性が高く、さらに、前記粘性流体の温度依存性も低いことから、温度変化による粘度変化が少ないことがわかる。そして、実施例の試料は、いずれも、高い動的弾性率を示し、良好な密着性を示した。
【0088】
これに対し、比較例1の試料は、分岐型シリコーンが不含であるため、所望の動的弾性率を示さず、密着性も得られない結果となった。比較例2の試料は、分岐型シリコーンのみであり、直鎖型シリコーンを含まないが、この試料も、所望の動的弾性率を示さない結果となった。
本発明の制振ダンパー用シリコーン組成物、制振ダンパー用粘性流体は、土木用,建築用の制震ダンパー、家電用や電子機器用の制振ダンパー等に使用することにより、優れた機能を発揮することができる。なかでも、橋梁やビルといった大型建造物に使用される制震ダンパー、とりわけ高層ビル用制震ダンパーに使用することにより、より優れた機能を発揮することができる。
また、本発明の制振ダンパー用シリコーン組成物や制振ダンパー用粘性流体を用いた、建築用の制震壁等の制震装置や免震装置、家電用や電子機器用の制振材や衝撃吸収材、自動車用の制振材や衝撃吸収材等も、本発明の制振ダンパーとして利用することが可能である。