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  • 特開-レーザ加工装置 図1
  • 特開-レーザ加工装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148269
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/082 20140101AFI20231005BHJP
【FI】
B23K26/082
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056194
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成田 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】丸 直樹
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD11
4E168CB03
4E168DA23
4E168DA43
4E168EA15
4E168JB01
(57)【要約】
【課題】アンプとガルバノスキャナとの間のケーブルインダクタンス成分による電圧降下の影響を低減したレーザ加工装置を提供するレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】レーザ加工装置は、ガルバノミラー(61,71)、ガルバノミラー(61,71)を回転駆動させるガルバノアクチュエータ(62,72)、を備えたガルバノスキャナ(6,7)と、ガルバノアクチュエータ(62,72)を駆動させるための駆動電圧を出力する駆動部(16,17)と、駆動部(16,17)とガルバノアクチュエータ(62,72)とを接続するケーブル(36a,36b,37a,37b)と、を備えている。ケーブル(36a,36b,37a,37b)は、低インダクタンスケーブルである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザパルス発生部と、
前記レーザパルス発生部から出射されたレーザパルスを反射するガルバノミラー、前記ガルバノミラーを回転駆動させるガルバノアクチュエータ、を備えたガルバノスキャナと、
前記ガルバノアクチュエータを駆動させるための駆動電圧を出力する駆動部と、
前記駆動部と前記ガルバノアクチュエータとを接続するケーブルと、を備え、
前記ケーブルは、低インダクタンスケーブルである、
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記低インダクタンスケーブルは、同軸ケーブル、ツイストペア線もしくは平行平板構造の給電線である、
ことを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ発振器から発振されたレーザをガルバノスキャナによって偏向して照射位置の位置決めを行うレーザ加工装置が知られている(特許文献1参照)。上記ガルバノスキャナは、ガルバノスキャナ制御装置からの指令信号がアナログ信号(ガルバノスキャナの電流指令信号)へと変換され、この電流指令信号がアンプで増幅されて駆動電流としてガルバノスキャナのアクチュエータに印加されることによって駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4533640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のようなレーザ加工装置では、その加工速度は上昇の一途をたどっており、また、それに伴いガルバノスキャナに対する高速化の要求も高まるばかりである。ここで、ガルバノスキャナを高速化するには、その制御周期を短く(駆動周波数を大きく)する必要があるが、電流が高速に変動すると、上述したアンプとガルバノスキャナのアクチュエータとを繋ぐケーブルのインダクタンス成分の影響による電圧降下が大きくなってしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、アンプとガルバノスキャナとの間のケーブルのインダクタンス成分による電圧降下の影響を低減したレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、レーザパルス発生部と、前記レーザパルス発生部から出射されたレーザパルスを反射するガルバノミラー、前記ガルバノミラーを回転駆動させるガルバノアクチュエータ、を備えたガルバノスキャナと、前記ガルバノアクチュエータを駆動させる駆動電圧を出力する駆動部と、前記駆動部と前記ガルバノアクチュエータとを接続するケーブルと、を備え、前記ケーブルは、低インダクタンスケーブルである、ことを特徴とするレーザ加工装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、アンプとガルバノスキャナとの間のケーブルのインダクタンス成分による電圧降下の影響を低減したレーザ加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置の概略図。
図2】(a)ガルバノスキャナの駆動周波数を説明するための図、(b)モータケーブルを示す模式図、(c)モータケーブルの等価回路を示すための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置について、図面に基づいて説明をする。なお、以下の説明において、X軸方向、Y軸方向とは、加工対象を平面視で視た際の状態を基準とする。
【0010】
図1に示すように、本実施の形態に係るレーザ加工装置1は、XY軸方向に移動可能な加工テーブル2上に載置された加工対象としてのプリント基板Wに穴明け加工を行うレーザ加工装置であり、上述した加工テーブル2の他に、レーザパルス発生部3、走査部4、集光(Fθ)レンズ8、制御部10等を備えている。
【0011】
レーザパルス発生部3は、例えば、炭酸ガス(CO)レーザ発振器などのレーザ発振器を備え、レーザパルス(パルスレーザ)を出射されるように構成されている。
【0012】
また、走査部4は、レーザビームの光路上において、レーザパルス発生部3の下流側に配置されており、加工用のレーザパルスを、X軸方向に走査する第1ガルバノスキャナ61と、Y軸方向に走査する第2ガルバノスキャナ7と、を備えている。これら第1及び第2ガルバノスキャナ6,7は、それぞれ、入射してきたレーザパルスを反射するガルバノミラー61,71と、ガルバノミラー61,71の回転角度を調整するガルバノモータ62,72と、を備えている。
【0013】
加工用のレーザパルスは、上記走査部4の一対のガルバノスキャナ6,7によってプリント基板W上におけるXY軸方向の照射位置が位置決めされる。そして、これら一対のガルバノスキャナ6,7で位置決めされたレーザパルスは、fθレンズ8に入射し、プリント基板W上に集光されて穴あけなどのレーザ加工が施される。
【0014】
制御部10は、レーザ加工装置1の全体を制御する全体制御11と、デジタル信号である全体制御部11からの位置指令をアナログ信号である電流指令としてモータ駆動回路16,17に入力するガルバノ制御部12と、を備えている。ガルバノアンプとしてのモータ駆動回路(以下、ガルバノアンプとも呼ぶ)16,17は、上記電流指令に基づいて電圧を出力する。上記モータ駆動回路16,17によって増幅された電流指令がガルバノモータ62,72の駆動電流となり、ガルバノモータ62,72が駆動することによってガルバノミラー61,71の回転角度が制御される。
【0015】
また、モータ駆動回路16,17とガルバノモータ62,72とを繋ぐモータケーブル36,37には、電流検出器26,27が繋がれている。ガルバノ制御部12は、上記電流検出器26,27によってガルバノスキャナ6,7の駆動電流を検知しており、検知された駆動電流に基づいて指令値(電流指令)に対するフィードバック制御を行っている。
【0016】
ここで、近年のレーザ加工装置の高速化に伴って、上記電流指令の周期は短くなっており、図2(a)に示すように、ガルバノスキャナ6,7の駆動周波数も高くなっている。ここで、電流が高速に変動する場合、ガルバノアンプとガルバノスキャナとの間のケーブルのインダクタンス成分の影響による電圧降下が無視できなくなってくる。
【0017】
このため、本実施の形態では、ガルバノアンプ16,17とガルバノスキャナ6,7との間のモータケーブル36a,36b,37a,37bを、図2(b)に示すように、低インダクタンスケーブルによって構成している。具体的には、本実施の形態では、モータケーブル36a,36b,37a,37bは、1本の同軸ケーブルもしくは、同軸ケーブルを複数本並列接続したケーブルによって構成している。
【0018】
これにより、モータケーブル36a,36b,37a,37bの低インダクタンス化を図ることができ、モータケーブル36a,36b,37a,37bにおける電圧降下を低減することができる。また、モータケーブル36a,36b,37a,37bにおける電圧降下を低減することができると、上述したガルバノアンプ16,17のフィードバック制御において、ガルバノモータ62,72の駆動電圧の増加を抑えることができ、ガルバノスキャナ6,7の高速化に必要な出力電圧を、ガルバノアンプの出力電圧上限値を低く抑えつつ確保することができる。このため、ガルバノアンプの発熱の増加、筐体寸法の大型化、コストアップなどをできる限り行わずにガルバノスキャナ6,7の高速化を達成することができる。
【0019】
例えば、モータケーブル等は、図2(c)のような等価回路と考えることができるため、ケーブルの電圧降下ΔVは、
ΔV=R*A
R=2π*f*L
f=1/T2
となる。
なお、上記式におけるAは駆動電流、T2は電流指令の周期、Lはケーブルインダクタンスである。
【0020】
一例としてガルバノスキャナ6,7の駆動時の電流指令を30A_10kHzとした場合、同軸ケーブルでないケーブルインダクタンスが5μHのケーブルを使用するとケーブルの電圧降下は9.42Vとなる。一方で、本実施の形態のように同軸ケーブルを使用することでケーブルインダクタンスを1/10倍の0.5μHとした場合、ケーブルの電圧降下を1/10倍の0.942Vまで抑制することが可能となる。
【0021】
<まとめ>
本実施の形態に係るレーザ加工装置(1)は、
レーザパルス発生部(3)と、
前記レーザパルス発生部(3)から出射されたレーザパルスを反射するガルバノミラー(61,71)、前記ガルバノミラー(61,71)を回転駆動させるガルバノアクチュエータ(62,72)、を備えたガルバノスキャナ(6,7)と、
前記ガルバノアクチュエータ(62,72)を駆動させるための駆動電圧を出力する駆動部(16,17)と、
前記駆動部(16,17)と前記ガルバノアクチュエータ(62,72)とを接続するケーブル(36a,36b,37a,37b)と、を備え、
前記ケーブル(36a,36b,37a,37b)は、低インダクタンスケーブルである、ことを特徴とする。
【0022】
ガルバノアクチュエータ62,72に駆動電流を供給するケーブル36a,36b,37a,37bを低インダクタンスケーブルとしたことによって、ガルバノスキャナ6,7の駆動周波数が高くなったとしても、上記ケーブル36a,36b,37a,37bにおける電圧降下を低く抑えることができる。このため、駆動部16,17の出力電圧上限値を低く抑えることができ、ガルバノスキャナ6,7の応答性を高速にして加工速度の高速化をしつつも、駆動部16,17を低損失、コンパクトでかつ廉価に構成することができる。
【0023】
なお、上述した実施の形態では、ガルバノミラー61,71をガルバノモータ62,72によって回転駆動したが、例えば、ガルバノミラー61,71を回転駆動するガルバノアクチュエータとしては、例えば、ピエゾアクチュエータなどを使用しても良い。また、ガルバノアクチュエータの駆動電圧を出力する駆動部としては、ガルバノアンプ16,17を使用したが、例えば、インバータを使用しても良い。更に、上述した実施の形態では、ガルバノスキャナ6,7の駆動電流が流れるケーブル36a,36b,37a,37bとして同軸ケーブルを使用したが、例えば、ツイストペア線もしくは平行平板構造の給電線などを使用しても良い。
【符号の説明】
【0024】
1:レーザ加工装置
3:レーザパルス発生部
6,7:ガルバノスキャナ
16,17:駆動部(ガルバノアンプ)
61,71:ガルバノミラー
62,72:ガルバノアクチュエータ(ガルバノモータ)
36a,36b,37a,37b:ケーブル(モータケーブル)
図1
図2