IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ホンダアクセスの特許一覧

<>
  • 特開-監視通知システム 図1
  • 特開-監視通知システム 図2
  • 特開-監視通知システム 図3
  • 特開-監視通知システム 図4
  • 特開-監視通知システム 図5
  • 特開-監視通知システム 図6
  • 特開-監視通知システム 図7
  • 特開-監視通知システム 図8
  • 特開-監視通知システム 図9
  • 特開-監視通知システム 図10
  • 特開-監視通知システム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148600
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】監視通知システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/10 20060101AFI20231005BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20231005BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20231005BHJP
   G01S 11/06 20060101ALI20231005BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20231005BHJP
   H04M 1/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G08B25/10 A
G08B25/04 K
G08B21/02
G01S11/06
G08B21/00 U
H04M1/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056726
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390005430
【氏名又は名称】株式会社ホンダアクセス
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】今泉 功司
(72)【発明者】
【氏名】齊木 亮
(72)【発明者】
【氏名】関 邦彦
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
5K127
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086AA52
5C086BA30
5C086CA06
5C086CA30
5C086DA40
5C086FA02
5C086FA06
5C086FA17
5C086FA18
5C086FA20
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA09
5C087AA10
5C087AA25
5C087AA32
5C087AA37
5C087AA44
5C087AA51
5C087DD03
5C087DD49
5C087EE14
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087FF16
5C087GG08
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG84
5K127BA03
5K127BB22
5K127BB33
5K127DA15
5K127GA14
5K127GD03
(57)【要約】
【課題】種々の置き去り状況に適用することができる監視通知システムの提供。
【解決手段】監視通知システム1は、親機10と、親機10によって監視される子機20と、親機10から置き去り通知を受信する複数の携帯端末30A,30Bとを備え、親機10は、親機10から子機20までの第1距離、および、親機10から各携帯端末30A,30Bまでの各第2距離を認識する距離認識部101と、制御部102とを備える。制御部102は、置き去り通知の通知順位を設定し、子機20が近接領域にあり、複数の携帯端末30A,30Bが近接距離の外側にある場合に、通知順位が第一位の携帯端末30Aへ警告通知を送信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視装置と、前記監視装置によって監視される被監視装置と、前記監視装置から警告通知を受信する複数の通知受信装置とを備え、
前記監視装置は、
前記監視装置から前記被監視装置までの第1距離、および、前記監視装置から各前記通知受信装置までの各第2距離を認識する距離認識部と、
前記警告通知の通知順位を設定する順位設定部と、
前記第1距離が第1所定値以下で、かつ、複数の前記第2距離の全てが前記第1所定値を超えた場合に、前記通知順位が第一位の前記通知受信装置へ前記警告通知を送信する通知部と、を備える監視通知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の監視通知システムにおいて、
前記監視装置と前記被監視装置および複数の前記通知受信装置とは近距離無線通信により通信を行い、
前記距離認識部は、前記近距離無線通信の通信強度に基づいて前記第1距離および前記第2距離を認識し、
前記順位設定部は、複数の前記第2距離が、前記第1所定値以上であって前記近距離無線通信の通信可能範囲よりも小さな第2所定値を超えた順番に基づいて、前記通知順位を設定し、
前記通知部は、前記警告通知を前記近距離無線通信により前記通知受信装置へ送信する、監視通知システム。
【請求項3】
請求項1に記載の監視通知システムにおいて、
前記監視装置と前記被監視装置および複数の前記通知受信装置とは近距離無線通信により通信を行い、
前記距離認識部は、前記近距離無線通信の通信強度に基づいて前記第1距離および前記第2距離を認識し、
前記順位設定部は、複数の前記第2距離が、前記第1所定値以上であって前記近距離無線通信の通信可能範囲よりも小さな第2所定値を超えた順番に基づいて、前記通知順位を設定し、
前記通知部は、前記警告通知を無線通信網により前記通知受信装置へ送信する、監視通知システム。
【請求項4】
請求項1に記載の監視通知システムにおいて、
前記監視装置および複数の前記通知受信装置は、自身の位置を検出する位置検出装置をそれぞれ備え、
前記監視装置と前記被監視装置および複数の前記通知受信装置とは近距離無線通信により通信を行い、
前記距離認識部は、前記近距離無線通信の通信強度に基づいて前記第1距離および前記第2距離を認識し、
前記順位設定部は、前記警告通知の送信時において前記位置検出装置により検出される位置に基づいて、前記通知順位を設定し、
前記通知部は、前記警告通知を無線通信網により前記通知受信装置へ送信する、監視通知システム。
【請求項5】
請求項1に記載の監視通知システムにおいて、
前記通知部は、前記第一位の前記通知受信装置への前記警告通知の送信後に、前記第1距離が第1所定値以下で、かつ、複数の前記第2距離の全てが前記第1所定値を超えた状態が継続されている場合に、前記通知順位が第二位の前記通知受信装置へ前記警告通知を送信する、監視通知システム。
【請求項6】
請求項1に記載の監視通知システムにおいて、
前記通知部は、前記第一位の前記通知受信装置への前記警告通知の送信後に、前記第1距離が第1所定値以下で、かつ、複数の前記第2距離の全てが前記第1所定値を超えた状態が継続されている場合に、前記警告通知を繰り返し送信する、監視通知システム。
【請求項7】
請求項1に記載の監視通知システムにおいて、
前記被監視装置は温度センサをさらに備え、
前記通知部は、前記温度センサの検出値が所定温度以上となった場合に、前記複数の通知受信装置の少なくとも一つへ温度警告通知を通知する、監視通知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視通知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、置き去りを防止する装置として、車両内における生体の置き去りに対して警報を行う車両制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、車内に設けられた生体センサによる車内人体の検知結果と、ドア開閉情報等とに基づいて、車両に設けられた車両警報制御装置がスマートフォンや携帯機に対して警報情報を送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-149360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車両制御装置は、その車両制御装置を備える車両での置き去りに限定され、複数台の車両に兼用して用いることができないという点や、車両以外に適用できない点に課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による監視通知システムは、監視装置と、前記監視装置によって監視される被監視装置と、前記監視装置から警告通知を受信する複数の通知受信装置とを備え、前記監視装置は、前記監視装置から前記被監視装置までの第1距離、および、前記監視装置から各前記通知受信装置までの各第2距離を認識する距離認識部と、前記警告通知の通知順位を設定する順位設定部と、前記第1距離が第1所定値以下で、かつ、複数の前記第2距離の全てが前記第1所定値を超えた場合に、前記通知順位が第一位の前記通知受信装置へ前記警告通知を送信する通知部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車両に限らず種々の置き去り状況に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本実施の形態の監視通知システムの全体構成を示す図である。
図2図2は、本実施の形態の監視通知システムの一適用例を示す図である。
図3図3は、距離認識方法の一例を説明するための模式図である。
図4図4は、置き去り判定方法の一例を示す図である。
図5図5は、親機の動作の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、図5に続く動作を示すフローチャートである。
図7図7は、図5のステップS122の警告通知処理の詳細を示すフローチャートである。
図8図8は、サーバの動作の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、通知順位第一位の携帯端末の動作を示すフローチャートである。
図10図10は、通知順位第二位の携帯端末の動作を示すフローチャートである。
図11図11は、変形例3における監視通知システムの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。また、以下の説明では、同一または類似の要素および処理には同一の符号を付し、重複説明を省略する場合がある。なお、以下に記載する内容はあくまでも本発明の実施の形態の一例を示すものであって、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、他の種々の形態でも実施をすることが可能である。
【0009】
図1は、監視通知システム1の全体構成を示す図である。監視通知システム1は、携帯型の監視親機10(以下では親機10と呼ぶことにする)と、監視対象子機20(以下では子機20と呼ぶことにする)と、携帯型の通知用受信機30A,30Bとを備える。通知用受信機30A,30Bは、専用の通知用受信機で構成しても良いし、監視通知アプリがインストールされた汎用の携帯端末を用いても良い。以下では、通知用受信機30A,30Bとして携帯端末30A,30Bを用いる場合を例に説明する。親機10、子機20、携帯端末30A,30Bは、それぞれバッテリを内蔵している。
【0010】
親機10は、距離認識部101、制御部102、通信部103,104を備えている。通信部103は、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信等により近距離無線通信を行う。以下では、近距離無線通信にBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信を用いる場合を例に説明する。通信部104は、LPWA(Low Power Wide Area)等の低消費電力の遠距離無線通信を行い、通信業者のネットワークを介してインターネットに接続することができる。親機10は不図示のCPUおよびメモリ等を有し、CPUは距離認識部101および制御部102として機能する。
【0011】
子機20は、周囲温度を検出する温度センサ201と、近距離無線通信を行う通信部202とを備えている。通信部202は、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信によりBLEビーコンを送信する。
【0012】
通知用受信機として機能する携帯端末30A,30Bには、スマートフォンやタブレットPC等の携帯型の情報端末機器が用いられる。各携帯端末30A,30Bには監視通知アプリがインストールされており、CPU301が監視通知アプリを実行することで、汎用機器である携帯端末30A,30Bを監視通知システムの通知用受信機として機能させることが可能となる。各携帯端末30A,30Bは、BLE通信等により近距離無線通信を行う通信部302と、4Gや5G等により通信業者のネットワークを介してまたはその他の無線通信網を介してインターネットに接続可能な通信部303とを備える。
【0013】
なお、図1に示す構成では、2台の携帯端末30A,30Bが設けられているが、通知用受信機としての携帯端末は1台でも良いし3台以上でも良い。監視通知アプリがインストールされた携帯端末30A,30Bは、監視通知アプリ上で通知登録をオン設定すると通知用受信機として使用可能になる。通知登録をオフ設定すると通知は受信できなくなる。通知用受信機として登録設定された携帯端末30A,30Bの登録情報は、サーバ40に記録される。
【0014】
インターネット上には、監視通知サービスを提供するサーバ40が設けられている。サーバ40はCPU、メモリ等で交際されるコンピュータであり、データやファイルの保存、プログラムの処理等が行われる。親機10は、通信部104の遠距離無線通信によりインターネット上のサーバ40にアクセスする。携帯端末30A,30Bは、4G,5G等を用いた通信による無線通信網を介してインターネット上のサーバ40にアクセスする。サーバ40は、監視通知に関する情報の保存、携帯端末30A,30Bへの監視通知に関する情報の提供を行う。このように、親機10と携帯端末30A,30Bとは無線通信網によって接続される。
【0015】
親機10、子機20、携帯端末30A,30B間におけるBLE通信について説明する。子機20は「Broadcaster」として機能し、通信部202は相手を特定せず不特定多数に対してBLEビーコンをアドバタイズとして発信する。BLEビーコンは、子機ID、送信側電波強度、電池残量情報、温度センサ201による温度情報を含む。
【0016】
携帯端末30A,30Bは、子機20に対しては「Observer」として機能し、親機10に対しては「Peripheral」として機能する。携帯端末30A,30Bは、子機20からのアドバタイズをスキャンしてBLEビーコンを受信するとともに、親機10に対して接続要求のアドバタイズを送信する。
【0017】
親機10は、子機20に対しては「Observer」として機能し、携帯端末30A,30Bに対しては「Central」として機能する。親機10は、子機20からのアドバタイズをスキャンしてBLEビーコンを受信するとともに、複数の携帯端末30A,30Bからのアドバタイズをスキャンする。親機10は、「Peripheral」である携帯端末30A,30Bからのアドバタイズが受信可能になると、それぞれの携帯端末30A,30Bと1対1の通信接続を行う。携帯端末30A,30Bとの1対1通信においては、端末ID、送信側電波強度、電池残量情報が携帯端末30A,30Bから親機10へ送信される。なお、BLE通信に関して、親機10と携帯端末30A,30Bとの間で予めペアリングを行っておく。親機10とペアリング済みの携帯端末30A,30Bとの距離がBLE通信が可能な距離となった場合には、自動的に接続が確立されBluetooth(登録商標)双方向通信が行われる。
【0018】
図2,3は、本実施の形態の監視通知システム1の要点を説明する図である。図2は、本実施の形態の監視通知システム1を、家族で車両50を利用する場面に適用した場合を示す。図2に示す例では、幼児60を連れた保護者61,62が車両に乗車して移動する場合を想定している。そして、監視通知システム1は、幼児60だけを車両50に残して保護者61,62が車両50を離れるのを防止するために設けられている。幼児60が車両50に取り残される状況は種々あり、例えば、保護者61,62が考え事をしていて幼児60を連れてきていることをうっかり忘れてしまったり、幼児60が寝ているからとか短時間の用事だからとの理由で車両50を離れていたが、予想に反して用事が長引いたり、といったような状況が考えられる。本実施の形態の監視通知システム1は、そのような長時間の置き去りの発生を未然に防止したり、また、発生した場合において速やかに置き去り状態の解消を図るために使用することができる。
【0019】
親機10は、置き去りの基準位置として車両50内に予め配置され、電源がオンされて待機状態になっている。監視対象である子機20は、例えば、クリップ等で幼児60の衣服にしっかりと固定される。子機20は常時オンになっており、上述したようにBLEビーコンを常時発信している。保護者61は携帯端末30Aを携帯しており、保護者62は携帯端末30Bを携帯している。
【0020】
親機10の距離認識部101(図1)では、子機20および携帯端末30A,30Bのそれぞれから受信した送信側電波強度と、通信部103で受信した子機20および携帯端末30A,30Bからの各BLE信号の受信側電波強度とに基づいて、子機20および携帯端末30A,30Bとの距離を推定する。図3は、距離認識方法の一例を説明するための模式図であり、親機10、子機20、携帯端末30A,30Bとの位置関係を示す平面図である。実際には、3次元的な位置関係を考える必要があるが、ここでは説明を簡単にするために平面的な位置関係を用いて説明する。
【0021】
親機10と子機20および携帯端末30A,30Bとの距離が遠くになるに伴って、親機10が受信するBLE信号の電波強度が弱くなる。本実施の形態の説明では、図3に示すように、電波強度に応じて4つの範囲R1,R2,R3,R4を設定する。障害物等の無い理想的な環境においては、範囲R1~R4の境界は、ほぼ、親機10を中心とする円となる。各範囲R1,R2,R3に位置する場合の電波強度は順に強、中、弱となり、子機20および携帯端末30A,30Bの位置が範囲R4になると受信不可となる。親機10の距離認識部101は、受信されたBLE信号の電波強度に基づいて、子機20および携帯端末30A,30Bが範囲R1~R4のどこに属するかを判断する。
【0022】
親機10は、距離認識部101で認識される子機20および携帯端末30A,30Bの距離情報(範囲)に基づいて、幼児60のみが車両50内に残っている状態か否かを判定する。そして、幼児60のみが車両50内に残っている状態であると判定された場合には、携帯端末30A,30Bに警告通知を送信する処理を行って、携帯端末30A,30Bを所持する保護者61,62に車両50に戻るように促す。
【0023】
図4は、子機20と一台の携帯端末とに関して、それらの範囲R1~R4における位置関係と、それらの車両内外の判定の一例を示したものである。ここで、一台の携帯端末を携帯端末30Aであると仮定した場合、子機20および携帯端末30Aが共に範囲R3またはR4にある場合には、子機20および携帯端末30Aは共に車両50の外側にあると判定する。また、子機20が範囲R1またはR2にあり、携帯端末30Aが範囲R1またはR2にある場合には、子機20および携帯端末30Aの両方が車両50内または車両50近辺にあると判定する。一方、子機20が範囲R1またはR2にあり、携帯端末30Aが範囲R3またはR4にある場合には、子機20が車内に置き去りにされたまま携帯端末30Aが車両50から離れていると判定する。なお、以下では、範囲R1と範囲R2とを合わせた領域を近接領域と呼び、範囲R3と範囲R4とを合わせた領域を遠方領域と呼ぶことにする。
【0024】
なお、図3に示す例のように複数の携帯端末30A,30Bを監視通知システムの通知用受信機として用いる場合には、携帯端末30A,30Bの全てが遠方領域(範囲R3またはR4)にあり、かつ、子機20が近接領域(範囲R1またはR2)にある場合に、子機20が車両50内に置き去りにされたと判定する。
【0025】
(通知動作の概略)
通知動作の詳細を説明する前に、通知動作の概略を時系列的に簡単に記載する。
・子機20および携帯端末30A,30Bが乗車する。
・子機20のみを残して携帯端末30A,30Bが降車して車両から離れる(置き去り発生)。
・携帯端末30A,30Bが降車して車両から離れる際に通知順位を設定する。ここでは、携帯端末30A,携帯端末30Bの順に通知順位が設定されたと仮定して説明する。
・置き去り発生からの経過時間をtとする。
[t=0~t1]
・t=0に、携帯端末30Aに対して置き去りを通知する。
・携帯端末30Aに対して、置き去り通知をΔt間隔で繰り返し行う。
・子機20の温度センサ201の検出温度が設定温度T1以上となった場合には、携帯端末30Aに対して温度警告を通知する。なお、t=0以前(置き去り発生以前)においても温度警告を通知するようにしても良い。
・携帯端末30A,30Bの少なくとも一方が車両に戻った場合には、携帯端末30Aに対して置き去り解消を通知する。
[t=t1]
・携帯端末30Bに対してサポート依頼を通知する。
[t=t1~]
・携帯端末30A,30Bに対して、置き去り通知をΔt間隔で繰り返し行う。
・子機20の温度が設定温度T1以上となった場合には、携帯端末30A,30Bに対して温度警告を通知する。
・携帯端末30A,30Bの少なくとも一方が車両50に戻った場合には、携帯端末30A,30Bに対して置き去り解消を通知する。
【0026】
(監視・通知動作の詳細説明)
図5~10は、監視・通知動作の詳細を示すフローチャートである。図5~7は、親機10の制御部102で実行される処理の一例を示すフローチャートである。図8は、サーバ40で実行される処理の一例を示すフローチャートである。図9,10は、携帯端末30A,30Bで実行される監視通知アプリの処理の一例を示すフローチャートである。
【0027】
[親機10の動作説明]
まず、親機10に関する図5~7について説明する。親機10は車両50内に配置され、電源をオンすると図5~7の監視通知プログラムが起動し、アドバタイズのスキャンを開始し、その後、図5のステップS100においてスタンバイ状態となる。なお、図5~7の監視通知プログラムは、親機10の電源オフにより終了する。
【0028】
子機20を装着した幼児60、携帯端末30A,30Bを所持した保護者61,62が車両50に近づいて図3に示した範囲R3に進入すると、親機10は、子機20および携帯端末30A,30BのBLE信号が受信可能となる。親機10は、携帯端末30A,30Bとの接続を確立して双方向通信を行い、各携帯端末30A,30Bの端末ID、送信側電波強度、電池残量を所定時間間隔で取得する。また、子機20のBLEビーコンに含まれる情報(子機ID、送信側電波強度、電池残量情報、温度情報)についても、所定時間間隔で取得する。そして、親機10の距離認識部101は、受信側電波強度と子機20および携帯端末30A,30Bから取得した送信側電波強度情報とに基づいて、子機20および携帯端末30A,30Bまでの距離演算を行う。
【0029】
図5のステップS102では、制御部102は、距離認識部101で認識される距離情報に基づいて、子機20が図3の近接領域(R1+R2)に入ったか否かを判定する。子機20が近接領域に進入すると、ステップS102からステップS104へ進む。ステップS104では、制御部102は、距離認識部101で認識される距離情報に基づいて、携帯端末30A,30Bの両方が近接領域に入ったか否かを判定し、携帯端末30A,30Bの両方が近接領域に入った場合にはステップS106へ進む。ステップS106では、制御部102は、通信部104により親機10をサーバ40に接続する。ステップS108では、制御部102は、親機10の親機ID、電池残量、位置情報および子機20から受信した温度情報を稼働ログとしてサーバ40に送信する。サーバ40は親機10から受信した稼働ログを記録する。ステップS110では、制御部102は、子機20および携帯端末30A,30Bが近接領域に入ったという判定結果に基づいて、監視開始の要求をサーバ40に送信する。その後、図6のステップS112へ進む。親機10から監視要求を受信したサーバ40は、図8の監視処理をスタートする。
【0030】
図6のステップS112では、子機20および携帯端末30A,30Bが近接領域(範囲R1またはR2)に入ったか否かを判定する。子機20および携帯端末30A,30Bが近接領域にある場合、すなわち、子機20および携帯端末30A,30Bが車内または車両近辺にあると判定される場合には、ステップS112の処理が繰り返される。一方、ステップS112において子機20および携帯端末30A,30Bが近接領域にいないと判定された場合(N)には、ステップS112からステップS114へ進む。ここで、子機20および携帯端末30A,30Bが近接領域にいない場合とは、子機20および携帯端末30A,30Bが遠方領域(R3+R4)にある場合や、子機20および携帯端末30A,30Bのいずれか一方が近接領域にある場合や、子機20および携帯端末30A,30Bのいずれか一方が遠方領域にある場合である。
【0031】
ステップS114では、子機20および携帯端末30A,30Bが遠方領域にあるか否かを判定する。ステップS112→ステップS114と進む場合は、上述したように、子機20および携帯端末30A,30Bが遠方領域にある場合、子機20および携帯端末30A,30Bの内のいずれか一つが近接領域にある場合、子機20および携帯端末30A,30Bの内のいずれか一つが遠方領域にある場合、のいずれかである。よって、子機20および携帯端末30A,30Bが遠方領域にある場合(Y)にはステップS114からステップS124へ進み、子機20および携帯端末30A,30Bの内のいずれか一つが近接領域にある場合、または、子機20および携帯端末30A,30Bの内のいずれか一つが遠方領域にある場合には、ステップS114からステップS116へ進む。
【0032】
まず、ステップS114からステップS124へ進んだ場合について説明する。まず、図5のステップS102,S104の処理により子機20および携帯端末30A,30Bが車両内に入ったと判定される。その後、図6のステップS112,S114の処理により子機20および携帯端末30A,30Bが車両50外へ出たことが判定される。すなわち、子機20を身に着けた幼児60が車両50内に置き去りにされることなく、携帯端末30A,30Bを所持する保護者61,62と一緒に降車したと判定される。そのため、ステップS124において、親機10は、置き去りの監視を終了する信号をサーバ40へ送信する。その後、ステップS124から図5のステップS100へ進んで、制御部102は、親機10をスタンバイ状態にする。
【0033】
一方、ステップS114からステップS116へ進んだ場合には、ステップS116において携帯端末30A,30Bが遠方領域(範囲R3またはR4)にあるか否かが判定される。上述したように、ステップS114→ステップS116と進む場合は、子機20および携帯端末30A,30Bの内のいずれか一つが近接領域にある場合、または、子機20および携帯端末30A,30Bの内のいずれか一つが遠方領域にある場合である。よって、ステップS116において携帯端末30A,30Bが遠方領域にある場合とは、子機20が近接領域にあり、かつ、携帯端末30A,30Bが遠方領域にある場合が相当する。すなわち、子機20だけが車両50内に置き去りにされた場合に、ステップS116で肯定判定(Y)され、ステップS118へ進む。一方、ステップS116で否定判定(N)されるとステップS112へ戻る。
【0034】
ステップS112~S116の処理結果をまとめると、子機20および携帯端末30A,30Bの全てが車両50内から車両50外(遠方領域)に出たと判定された場合には、ステップS124に進んで監視終了の信号が親機10からサーバ40へ送信される。一方、子機20だけが車両50内に置き去りにされた場合には、ステップS116からステップS118へ進んで置き去り状態であると判定される。
【0035】
図6のステップS120では、制御部102は、通知順位付け処理を行う。ここで、通知順位とは、置き去り通知をサーバ40から携帯端末30A,30Bに通知する際の通知順位である。通知順位付けとしては、例えば、子機20が車両50内に置き去り状態となった際の、携帯端末30A,30Bが車両50から遠ざかった順に基づいて順位付けをする。その場合、携帯端末30A,30Bが近接領域(R1+R2)から出た順番でも良いし、範囲R3から範囲R4へ出た順番でも良いし、また、範囲R3内に別途設定された境界(図3の破線で示す境界L)の外側に出た順番であっても良い。順位付け方法としては、近接領域から出た順の場合には、最後に近接領域から出た携帯端末の順位を第一位とし、その前に近接領域から出た携帯端末の順位を第二位とし、さらにその前に近接領域から出た携帯端末の順位を第三位のように設定する。以下では、携帯端末30Aが最後に出た端末であると仮定し、携帯端末30Aの通知順位を第一位、携帯端末30Bの通知順位を第二位として説明する。
【0036】
次いで、ステップS122では、図7に示す警告通知に関する一連の処理が実行される。ステップS122の警告通知処理は、子機20が置き去り状態になると開始され、子機20の置き去り状態が解消されると終了してステップS112へ戻る。
【0037】
(警告通知処理)
図7は、ステップS122における警告通知処理の一例を示すフローチャートである。ステップS200では、制御部102は、図6のステップS118で置き去りと判定してからの経過時間の計時を開始すると共に、子機20から取得した温度情報の監視を開始する。ステップS202では、制御部102は、子機20の置き去り通知を要求する信号をサーバ40へ送信する。ステップS204では、ステップS200で計時開始してからの経過時間が、予め設定された設定時間t1以上となったか否かを判定する。ステップS204において経過時間≧t1と判定されると(Y)ステップS206へ進み、サポート通知を要求する信号をサーバ40に送信する。ステップS204において経過時間<t1と判定された場合には(N)、ステップS206をスキップしてステップS208へ進む。
【0038】
ステップS208では、制御部102は、子機20から取得した温度情報が予め設定された設定温度T1以上となったか否かを判定する。ステップS208において温度情報≧T1と判定されると(Y)ステップS210へ進み、温度警告の通知を要求する信号をサーバ40に送信する。ステップS208において温度情報<T1と判定された場合には(N)、ステップS210をスキップしてステップS212へ進む。
【0039】
ステップS212では、制御部102は、携帯端末30A,30Bの少なくとも一方が近接領域にあるか否か、すなわち、保護者が車両50に戻って幼児60の置き去り状態が解消されたか否かを判定する。ステップS212において携帯端末30A,30Bの少なくとも一方が近接領域にあると判定されると(Y)、ステップS214へ進み、置き去り状態解消の通知を要求する信号をサーバ40へ送信し、一連の動作を終了する。一方、携帯端末30A,30Bの両方とも近接領域にはなく、ステップS212で否定判定(N)されると、ステップS204へ戻って通知動作を継続する。
【0040】
[サーバ40の動作説明]
図8を参照してサーバ40の動作を説明する。図2に示したように、親機10から携帯端末30A,30Bへの通知はサーバ40を介して行われる。すなわち、上述した図7のステップS202,S206,S210,S214において通知要求がサーバ40に送信されると、サーバ40は、それらの要求に応じた通知を携帯端末30A,30Bに対して行う。
【0041】
図8のステップS300では、サーバ40は、置き去り通知の要求を受信したか否かを判定する。親機10が図7のステップS202において通知要求をサーバ40に送信すると、それを受信したサーバ40は、ステップS300からステップS302に進む。ステップS302では、サーバ40は、携帯端末に対して置き去り通知を送信する。なお、置き去り通知の対象となる携帯端末は、後述するステップS306のサポート依頼通知の後か前かによって異なる。サポート依頼通知前の通知対象は通知順位第一位の携帯端末30Aであり、サポート依頼通知後の通知対象は携帯端末30A,30Bになる。よって、ステップS300からステップS302に進んだ場合には、携帯端末30Aへ置き去り通知を送信する。
【0042】
ステップS304では、サーバ40は、親機10から置き去り解消の通知要求を受信したか否かを判定する。親機10が、図7のステップS214において解消通知要求をサーバ40に送信すると、サーバ40はステップS304からステップ316へ進む。一方、解消通知要求を受信するまではステップS304からステップS306へ進む。
【0043】
まず、解消通知要求を受信せず、ステップS306へ進んだ場合について説明する。ステップS306では、サーバ40は、サポート依頼の通知要求を親機10から受信したか否かを判定する。親機10が、図7のステップS206においてサポート依頼通知要求をサーバ40に送信すると、サーバ40はステップS306からステップS308へ進み、通知順位第二位の携帯端末30Bへサポート依頼通知を送信する。サポート依頼通知は、置き去り通知と親機10の位置情報を含む。一方、サポート依頼通知を受信するまでは、ステップS306からステップS310へ進む。
【0044】
ステップS310では、サーバ40は、親機10から温度警告通知の要求を受信したか否かを判定する。親機10が、図7のステップS210において温度警告通知要求をサーバ40に送信すると、サーバ40はステップS310からステップS312へ進み、サポート依頼通知前の場合には携帯端末30Aへ温度警告通知を送信し、サポート依頼通知後の場合には携帯端末30A,30Bへ温度警告通知を送信する。一方、温度警告通知要求を受信しない場合には、ステップS310からステップS314へ進む。ステップS314では、サーバ40は、前回に置き去り通知をしてから通知サイクル時間Δtが経過したか否かを判定し、経過していない場合にはステップS304へ戻り、経過した場合にはステップS302へ戻る。
【0045】
次いで、親機10から解消通知要求を受信して、ステップS304からステップS316へ進んだ場合について説明する。ステップS316では、サーバ40は、サポート依頼通知前の場合には携帯端末30Aへ置き去り解消通知を送信し、サポート依頼通知後の場合には携帯端末30A,30Bへ置き去り解消通知を送信する。ステップS318では、サーバ40は、親機10から監視終了信号を受信したか否かを判定する。親機10が図6のステップS124において監視終了信号をサーバ40へ送信すると、ステップS318において肯定判定(Y)され、図8に示す一連の処理を終了する。
【0046】
[携帯端末30A,30Bの動作説明]
図9は通知順位第一位の携帯端末30Aの動作を示すフローチャートであり、図10は通知順位第二位の携帯端末30Bの動作を示すフローチャートである。先ず、図9について説明する。ステップS400では、携帯端末30Aは、置き去り通知を受信したか否かを判定する。図8のステップS302においてサーバ40から携帯端末30Aへ置き去り通知が送信されると、ステップS400において置き去り通知を受信したと判定され、ステップS402へ進む。
【0047】
ステップS402では、携帯端末30Aは、携帯端末30Aの表示モニタに置き去り通知表示を行い、スピーカから警告音を発生する。なお、音声発生に代えてまたは加えて、振動による警告報知しても良い。このような警告を携帯端末30Aで行うことにより、子機20を身に着けた幼児60が車両50内に一人で置き去りにされていることを、携帯端末30Aの所持者である保護者61に確実に気づかせることができる。
【0048】
ステップS404では、携帯端末30Aは、所持者が置き去り通知に対する確認操作をしたか否かを判定する。例えば、携帯端末30Aの表示モニタに表示された確認ボタンを所持者(保護者61)が操作すると、ステップS404からステップS406へ進んで携帯端末30Aは警告音を停止し、ステップS400へ戻る。なお、表示モニタに表示された置き去り通知表示は、確認ボタンが操作されても継続される。
【0049】
次に、携帯端末30Bに関する図10について説明する。ステップS500では、携帯端末30Bは、サポート依頼通知をサーバ40から受信したか否かを判定する。図8のステップS308においてサーバ40から携帯端末30Bへサポート依頼通知が送信されると、ステップS500においてサポート依頼通知を受信したと判定され、ステップS502へ進む。
【0050】
ステップS502では、携帯端末30Bは、携帯端末30Bの表示モニタに置き去りが発生したことおよびサポートを依頼する通知を表示し、スピーカから警告音を発生する。なお、音声発生に代えてまたは加えて、振動による警告報知しても良い。ステップS504では、携帯端末30Bは、所持者(保護者62)がサポート依頼通知に対する確認操作をしたか否かを判定する。携帯端末30Bに対して確認操作が行われると、ステップS504からステップS506へ進んで携帯端末30Bは警告音を停止し、ステップS500へ戻る。なお、確認ボタンが操作されても、表示モニタに表示されたサポート依頼通知の表示は継続される。
【0051】
なお、サポート依頼通知は、通知順位第一位の携帯端末30Aに警告通知をしてから設定時間t1が経過した時点においても置き去り状態が解消しない場合に、携帯端末30A以外の通知登録済みの携帯端末に送信される通知である。すなわち、携帯端末30A以外の通知登録済みの携帯端末に対して、置き去り解消のサポート動作を要請する通知である。このサポート依頼通知を受信した携帯端末30Bの所持者(保護者62)は、例えば、携帯端末30Bから携帯端末30Aに電話連絡したり自らが車両50に急行したりして、置き去り解消に関するサポートする。このように、サポート依頼通知を携帯端末30Bに送信することで、置き去り状態の速やかな解消が図られる。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態では、子機20に近接して配置される親機10に対して、携帯端末30A,30Bが遠くに離れてしまった場合には、携帯端末30A,30Bに対して警告する通知が送信されるので、子機の置き去り解消を速やかに行うことが可能となる。また、本実施の形態の監視通知システム1では、携帯型の親機10を車両50に限らず容易に移動することができるので、親機10を他の車両に乗せ換えることで、他の車両に監視通知システムを容易に適用することができる。
【0053】
(変形例1)
上述した説明では、携帯端末30A,30Bを所持する保護者61,62が車両50に乗車する設定であったが、例えば、通知登録された携帯端末が3台で、3台目が遠く離れて暮らす親族により所持されているような設定であっても良い。3台目の携帯端末は車両50への乗車には関与していないが、通知登録されているのでサポート依頼通知がサーバ40から送信されることになる。3台目の携帯端末の動作については、図10に示した通知順位第二位の携帯端末30Bの場合と同様である。
【0054】
(変形例2)
上述した実施の形態では、携帯端末30A,30Bが遠方領域に出た後に、遠距離無線通信を利用してサーバ40を介して置き去り通知を行った。変形例2では、親機10と携帯端末30Aとの間でBLE通信が可能な状態においては、サーバ40を介さずに、BLE通信により親機10から携帯端末30Aに直接通知するようにした。なお、携帯端末30Aが親機10から遠ざかって携帯端末30Aと親機10とのBLE通信が不可能になった場合には、上記実施の形態の場合と同様に、親機10はサーバ40を介して携帯端末30Aに通知を送信する。
【0055】
上述した実施の形態では、図4に示すように、携帯端末30A,30Bが近接領域(R1+R2)から出た場合に置き去り状態と判定したが、変形例2でも同様とする。また、携帯端末30A,30Bの通知順位付けに関しては、実施の形態の場合と同様に、近接領域(R1+R2)から出た順、または、図3の範囲R3内に設定された境界Lの外側に出た順に基づいて順位付けを行う。いずれの場合も、境界の外に出た直後はBLE通信が可能である。親機10は、通知順位第一位の携帯端末30Aが境界の外側に出たタイミングで、すなわち、子機20が置き去り状態になったタイミングで、BLE通信により携帯端末30Aへ置き去り通知を送信する。
【0056】
変形例2の構成においては、インターネットを利用した通信が不可能な環境であっても、子機20が置き去り状態となった初期段階において、携帯端末30Aへ置き去り通知を行うことが可能である。
【0057】
(変形例3)
上述した実施の形態では、携帯端末30A,30Bの通知順位付けに関しては、置き去り状態が発生した際の、携帯端末30A,30Bが近接領域(R1+R2)から出た順、または、図3の境界Lの外側に出た順に基づいて順位付けを行うようにしている。しかし、図8で説明したように、置き去り通知は、置き去り状態になった時点だけでなく、その後、時間間隔Δtで繰り返し通知される。そのため、置き去り発生直後は携帯端末30Aが親機10に最も近いが、その後の通知タイミングにおいては必ずしも携帯端末30Aが最も近いとは限らない。そこで、変形例3では、置き去り通知を出すタイミングにおいて、携帯端末30A,30Bと親機10との距離が短い順に通知順位を設定するようにした。
【0058】
図11は、変形例3における監視通知システム1の全体構成を示す図である。親機10および携帯端末30A,30Bは、自身の位置を検出する位置検出部105,304を備えている。位置検出部105,304としては、例えば、GPS(Global Positioning System)測位によって親機10および携帯端末30A,30Bの現在位置を検出するGPS受信機が用いられる。また、位置検出部105,304は、複数の通信基地局との距離から位置を推定する構成であっても良い。携帯端末30A,30Bは自身の位置情報を、通信部303により親機10に常に送信する。
【0059】
親機10は、携帯端末30A,30Bから受信したそれらの位置情報と自身の位置情報とに基づいて、親機10と携帯端末30A,30Bとの距離をそれぞれ推定する。親機10は、置き去り通知要求をサーバ40に送信する際に、その時の親機10と携帯端末30Aとの距離と、親機10と携帯端末30Bとの距離とを比較し、距離の短い方の携帯端末を通知順位第一位の携帯端末とする。そして、親機10は、通知順位情報を付加した置き去り通知要求をサーバ40に送信する。サーバ40は、受信した置き去り通知要求に付加された通知順位情報に基づいて、通知順位第一位の携帯端末に対して置き去り通知を送信する。
【0060】
このように、変形例3では、置き去り通知が送信されるタイミングにおいて最も親機10に近い携帯端末に、置き去り通知が送信されるので、置き去り解消をより早く行わせることが可能となる。なお、上述した説明では、図2に示す例のように、幼児60の子機20を装着して幼児の置き去りに適用した。しかし、このような幼児の置き去りに限らず、例えば、貴重品を車両内に置いたまま車両を離れた場合に警告通知するような、人の置き去り以外にも利用することもできる。
【0061】
-その他の適用例-
上述した図2の適用例以外の適用例について簡単に例示する。監視通知システム1では、親機10、子機20,通知受信機としての携帯端末30A,30Bとでシステムが構成され、これら3種類の機器の組み合わせ方で、車両に限らず種々の利用方法が考えられる。
例えば、図2に示す例では子機は一つであったが、子機20を複数備える例が後述する適用例1である。
また、監視通知システム1では、親機10は置き去り位置を設定する機器としても機能し、携帯端末30A,30Bが子機20に近接する親機10から離れてしまうのを監視している。この状況を携帯端末30A,30Bの側から見た場合、子機20が携帯端末30A,30Bから離れてしまうのを監視していることになる。そのような視点での利用方法が後述する適用例2,3である。
【0062】
(適用例1)
幼稚園の送迎バスに適用し、バス内に園児が置き去りにされることを防止する。この場合、送迎バスを利用する園児の全員が子機20を身に着けている。送迎バスの運転手および送迎バスに同乗する幼稚園職員は携帯端末を所持している。親機10はバス内に配置される。例えば、送迎バスが幼稚園に到着すると、最初に園児が降車し、職員がバス内を確認し、最後に運転手が送迎バスから離れるのが一般的である。この場合、単数複数に限らずバス内に園児の置き去りがあった場合には、最後に送迎バスを離れた運転手の携帯端末に通知が送信されることになる。そのため、園児の置き去り発生を防止することができる。
【0063】
(適用例2)
適用例2は、監視通知システムを自転車ツーリングに適用した場合である。大人と子供とが一緒に自転車ツーリングをした時、子供が大人から大きく遅れてしまうことが起きやすい。自転車は一列で走行しているので、前方を走る大人は後方に子供が遅れ始めても気づきにくい。そこで、親機10と子機20を子供が所持し、大人が携帯端末30Aを所持する。親機10と子機20を所持する子供が、携帯端末30Aを所持する大人から大きく遅れた場合には、上述した置き去り状態と同様の状態になるため、大人が所持する携帯端末30Aに警告通知が送信されることになる。携帯型の親機10としているため、このような変則的な使い方も可能となる。
【0064】
適用例2では、子供が二人いる場合には、親機10および子機20が二組存在することになる。この場合、一組目の親機10および子機20と携帯端末30Aが一つの監視通知システムを構成し、二組目の親機10および子機20と携帯端末30Aが他の監視通知システムを構成することになる。
【0065】
(適用例3)
適用例3は、老人施設に適用した場合であり、老人が夜中に居室から出て徘徊するのを施設職員に通知するようにしたものである。老人の居室に出入口付近に親機10と子機20を配置し、携帯端末30Aは施設職員が所持し、携帯端末30Bを監視対象の老人が所持する。この場合、老人が所持するの携帯端末30Bは通知登録をオフにしておく。施設職員が就寝の見回り時に居室出入口に接近すると監視が開始される。施設職員が立ち去った後に携帯端末30Bを所持する老人が居室を出て離れると、施設職員が所持する携帯端末30Aに警告通知が送信されることになる。この場合、携帯端末30Bの代わりにより小型の専用通知受信機を用いるようにすれば、老人の衣服に直接装着することが可能となる。
【0066】
以上説明した本発明の実施の形態および変形例によれば、以下の作用効果を奏する。
【0067】
(C1)図1~3等に示すように、監視通知システム1は、親機10と、親機10によって監視される子機20と、親機10から警告通知(置き去り通知)を受信する複数の通知受信機としての携帯端末30A,30Bとを備え、親機10は、親機10から子機20までの第1距離、および、親機10から各携帯端末30A,30Bまでの各第2距離を認識する距離認識部101と、警告通知の通知順位を設定する順位設定部としての制御部102と、第1距離が第1所定値(近接領域(R1+R2)の境界値)以下で、かつ、複数の第2距離の全てが第1所定値を超えた場合に、すなわち、携帯端末30A,30Bが近接領域(R1+R2)より遠ざかった場合に、通知順位が第一位の携帯端末30Aへ警告通知を送信する通知部としての制御部102と、を備える。
【0068】
携帯端末30A,30Bが、子機20が置き去り状態となる近接領域(R1+R2)より遠ざかった場合に、通知順位第一位の携帯端末30Aに警告通知を送信するようにしたので、携帯端末30Aを所持する保護者61に置き去りが速やかに報知され、置き去り状態が放置されるのを防止することができる。
【0069】
(C2)上記(C1)において、図1~3等に示すように、親機10と子機20および携帯端末30A,30Bとは近距離無線通信(例えば、BLE通信)により通信を行い、距離認識部101は、近距離無線通信の通信強度に基づいて親機10と子機20との距離である第1距離および親機10と携帯端末30A,30Bとの距離である第2距離を認識し、制御部102は、複数の第2距離が、第1所定値以上であって近距離無線通信の通信可能範囲よりも小さな第2所定値(図3の親機10から境界Lまでの距離)を超えた順番に基づいて、通知順位を設定し、警告通知を近距離無線通信により通知順位第一位の携帯端末30Aへ送信する。その結果、近距離無線通信のみにより、置き去りの判定、通知順位の設定および警告通知の送信を行うことができ、置き去り解消をより早期に行うことができる。また、遠距離無線通信による無線通信網が利用できない環境であっても、監視通知動作を行うことができる。
【0070】
(C3)上記(C1)において、図1~3等に示すように、親機10と子機20および携帯端末30A,30Bとは近距離無線通信(例えば、BLE通信)により通信を行い、距離認識部101は、近距離無線通信の通信強度に基づいて親機10と子機20との距離である第1距離および親機10と携帯端末30A,30Bとの距離である第2距離を認識し、制御部102は、複数の第2距離が、第1所定値以上であって近距離無線通信の通信可能範囲よりも小さな第2所定値(図3の親機10から境界Lまでの距離)を超えた順番に基づいて、通知順位を設定し、警告通知を無線通信網により通知順位第一位の携帯端末30Aへ送信する。その結果、携帯端末30A,30Bが近距離無線通信による通信が不可な距離に遠ざかった場合でも、無線通信網により警告通知を送信することができる。
【0071】
(C4)上記(C1)において、図11等に示すように、親機10および携帯端末30A,30Bは、自身の位置を検出する位置検出部105,304をそれぞれ備え、親機10と子機20および携帯端末30A,30Bとは近距離無線通信(例えば、BLE通信)により通信を行い、距離認識部101は、近距離無線通信の通信強度に基づいて親機10と子機20との距離である第1距離および親機10と携帯端末30A,30Bとの距離である第2距離を認識し、制御部102は、警告通知の送信時において位置検出部105,304により検出される位置に基づいて通知順位を設定し、警告通知を無線通信網により携帯端末30A,30Bへ送信する。警告通知(置き去り通知)を繰り返す場合においても、その警告通知時において親機10に最も近い携帯端末に警告通知を送信することで、より早期に置き去りを解消することができる。
【0072】
(C5)上記(C1)において、図1,5~8等に示すように、制御部102は、通知順位第一位の携帯端末30Aへの警告通知の送信後に、第1距離が第1所定値以下で、かつ、複数の第2距離の全てが第1所定値を超えた状態が継続されている場合に、すなわち、置き去り状態が継続されている場合に、通知順位が第二位の携帯端末30Bへ警告通知を送信する。その結果、携帯端末30Bへ警告通知(サポート依頼通知)を送信することで、携帯端末30Aを所持する保護者61の置き去り解消動作の遅れを、携帯端末30Bの所持者によりサポートすることができ、置き去り状態の長期化を防止し、より確実に置き去り解消を図ることができる。
【0073】
(C6)上記(C1)において、図1,5~8等に示すように、制御部102は、通知順位第一位の携帯端末30Aへの警告通知の送信後に、第1距離が第1所定値以下で、かつ、複数の第2距離の全てが第1所定値を超えた状態が継続されている場合に、すなわち、置き去り状態が継続されている場合に、警告通知を繰り返し送信する。警告通知を繰り返し送信することで、携帯端末30Aの所持者に、置き去り状態であることを確実に認識させることができる。
【0074】
(C7)上記(C1)において、図1,5~8等に示すように、子機20は温度センサ201をさらに備え、制御部102は、温度センサ201の検出値が所定温度以上となった場合に、複数の携帯端末30A,30Bの少なくとも一つへ温度警告通知を通知する。そのため、子機20の温度環境を、携帯端末30A,30Bにより監視することができる。例えば、図2に示す例であれば、携帯端末30Aへ温度警告通知を通知するとした場合には、携帯端末30Aを所持する保護者61は、子機20の周囲温度が所定温度以上であることを認識できる。
【0075】
以上説明した各種の実施の形態や変形例はあくまでも一例であり、発明の特徴を損なわない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1…監視通知システム、10…監視親機(親機)、20…監視対象子機(子機)、30A,30B…携帯端末(通知用受信機)、40…サーバ、101…距離認識部、102…制御部、103,104,202,302,303…通信部、105,304…位置検出部、201…温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11