(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015107
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】フィルタを備える静脈血バイパスを用いるガス状微小塞栓を減少させるためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20230124BHJP
A61M 1/18 20060101ALI20230124BHJP
A61M 1/22 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
A61M1/36 111
A61M1/18 525
A61M1/22 525
A61M1/36 185
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022169180
(22)【出願日】2022-10-21
(62)【分割の表示】P 2019506403の分割
【原出願日】2017-07-31
(31)【優先権主張番号】62/369,262
(32)【優先日】2016-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519037773
【氏名又は名称】キース・ギプソン
【氏名又は名称原語表記】Keith GIPSON
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】キース・ギプソン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】静脈血バイパスおよび静脈血バイパス内のフィルタを伴う人工肺を使用することによる、心肺バイパス(CPB)中のガス状微小塞栓(GME)を含む気泡を減少させるシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】ガス状微小塞栓を減少させるためのシステムは、流体源10と、フローダイバータ30と、流入流コントローラ20と、バイパスラインと、バイパス流コントローラ60と、前記バイパスラインと流体接続され、規定された孔径、好ましくは15~50μm、より大きい直径を有するガス状微小塞栓を除去するフィルタ50と、人工肺40と、流出流コントローラと、前記人工肺および前記バイパスラインに流体接続された出口80と、前記流入流コントローラ、前記バイパス流コントローラ、前記流出流コントローラ、またはこれらの少なくとも1つまたは複数を含む組み合わせを制御するように構成されたコントローラ90とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状微小塞栓を減少させるためのシステムであって、
流体源と、
前記流体源に流体接続され、前記流体源からの流体の一部を除去するように構成されたフローダイバータと、
前記流体源に流体接続され、前記流体源から前記フローダイバータへの流体の流量を制御するように構成された流入流コントローラと、
前記フローダイバータに流体接続されたバイパスラインと、
前記バイパスラインに流体接続され、前記バイパスラインからの流体の流量を制御するように構成されたバイパス流コントローラと、
前記バイパスラインと流体接続され、規定された孔径、好ましくは15~50μm、より大きい直径を有するガス状微小塞栓を除去するフィルタと、
前記流体源に流体接続され、前記流体源からの流体を酸素化するように構成された人工肺と、
前記人工肺に流体接続され、前記人工肺からの流体の流量を制御するように構成された流出流コントローラと、
前記人工肺および前記バイパスラインに流体接続された出口と、
前記流入流コントローラ、前記バイパス流コントローラ、前記流出流コントローラ、またはこれらの少なくとも1つまたは複数を含む組み合わせを制御するように構成されたコントローラと
を備えたシステム。
【請求項2】
前記人工肺が低大気圧を有するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記人工肺に流体接続され、低大気圧を提供するように構成された真空調整器をさらに備える、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記人工肺が大気圧を有するように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
流量、流体組成、血中酸素飽和度、酸素張力、炭素張力率、窒素張力、ヘマトクリット、またはこれらの1つまたは複数を含む組み合わせのうちの1つまたは複数を測定するように構成されたセンサをさらに含み、前記センサは前記流体源、前記バイパスライン、前記出口、またはこれらの1つまたは複数を含む組み合わせに流体接続されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラが、プロセッサと、前記プロセッサによって実行されるソフトウェア命令とを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記人工肺が、膜型人工肺、拡散膜型人工肺、または中空糸微多孔膜型人工肺である、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記人工肺が、密閉されたハウジングを有する微多孔膜型人工肺である、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記流体が、血液、または代用血液、人工血液、血漿,アルブミン,血小板,血漿濃縮物などの血液製剤、食塩水,乳酸リンゲル液,ノルモゾル,プラズマライトなどの晶質液、ヘタスターチ、あるいはこれらの少なくとも1つを含む組み合わせである、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記流体源が、1つまたは複数の流体を組み合わせるように構成されたブレンダである、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
血液が前記システム内を流れる、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記出口における前記酸素濃度が75~800mmHg、好ましくは100~700mmHg、好ましくは100~650mmHg、好ましくは150~250mmHgである、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記人工肺を通る非ガス交換シャントチャネルをさらに備える、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記非ガス交換シャントチャネルは、前記人工肺内のフィルタ付きシャント流チャネルであり、前記フィルタ付きシャント流チャネルを通る流量は任意に調整可能である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記人工肺は、スイープガス入口およびスイープガス出口を介してスイープガスリザーバまたはスイープガス供給源に流体接続され、前記人工肺は、ファイバ束内のスイープガス微小管を含み、前記非ガス交換シャントチャネルは、スイープガスを前記人工肺のファイバ束内のスイープガス微小管の一部に選択的に流す手段を含み、非ガス交換シャント(non-gas-exchange shunting)が前記人工肺内で起こる、請求項1~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記人工肺は、スイープガス入口およびスイープガス出口を介してスイープガスリザーバまたは供給源に流体接続され、スイープガスを前記人工肺のファイバ束内のスイープガス微小管の一部に選択的に流す手段は、可変流れフラップまたは閉塞装置を含み、前記可変流れフラップまたは閉塞装置は、スイープガス入口付近、スイープガス出口付近、またはその両方、あるいは前記流体源からの流体の流路に沿った任意の場所で前記ファイバ束の一部を通るガスの流れを防ぐ、請求項1~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記人工肺は、スイープガス入口およびスイープガス出口を介してスイープガスリザーバまたは供給源に流体接続され、スイープガスを前記人工肺のファイバ束内のスイープガス微小管の一部に選択的に流す手段は、ファイバ束内のスイープガス微小管の一部を通る流れを防ぐために、スイープガス入口マニホールドまたは密封または非密封スイープガス出口マニホールド、またはその両方に恒久的または可逆的に注入される、水、食塩水、晶質液、コロイド、血液製剤、オイル、ゲル、ポリマー、フォーム、またはワックスなどの流体または他の適切な物質を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記人工肺のハウジングが、スイープガス入口マニホールドまたはスイープガス出口マニホールド、あるいはその両方の下垂部分または非下垂部分にある追加のポートを含み、物質の注入および除去を可能にして、ファイバ束内のスイープガス流を調整することを可能にする、請求項1~17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記人工肺のハウジングがスイープガス入口マニホールドまたはスイープガス出口マニホールド、あるいはその両方における陽圧リリーフ弁を含み、スイープガス流をファイバ束の一部に制限することから生じる陽圧を軽減する請求項1~18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記人工肺は2つ以上の隔室を含み、
各隔室内のスイープガスの流れは独立して調整可能である、請求項1~19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記人工肺は2つ以上の隔室を含み、
各隔室内の血液の流れは独立して調整可能である、請求項1~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記システムは2つ以上の人工肺を含み、
各人工肺は、スイープガス入口およびスイープガス出口を介してスイープガスリザーバに流体接続し、
各人工肺は前記流体源からの流体を受け取り、各人工肺への前記スイープガスの流れは独立して調整可能である、請求項1~21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記システムは2つ以上の人工肺を含み、
各人工肺は、血液入口および血液出口を介して血液リザーバまたは供給源に流体接続し、
各人工肺は前記流体源からの流体を受け取り、各人工肺への血液の流れは独立して調整可能である、請求項1~22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
出口における窒素分圧が、空気を組み込んだ標準的な酸素化戦略と比較して減少または最小化されている、請求項1~23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
ガス状微小塞栓を減少させるための方法であって、
流体を酸素化するように構成された人工肺であって、静脈入口と、動脈出口と、前記静脈入口および前記動脈出口に流体接続された静脈バイパスラインとを有し、前記静脈バイパスラインは規定された孔径、好ましくは15~50μm、より大きい直径を有するガス状微小塞栓を除去するように構成されたフィルタを含み、前記静脈バイパスラインは前記静脈入口からの流体の一部を除去するように構成されている人工肺を提供することと、
流体を前記人工肺に導入することと、
前記人工肺を通過する流体を酸素化することと、
前記静脈バイパスラインおよび前記動脈出口からの流体を混合して、複合流体を形成することと
を備え、前記複合流体中の前記酸素濃度が100~700mmHg、好ましくは150~250mmHgである方法。
【請求項26】
前記人工肺内のフィルタ付きシャント流チャネルである非ガス交換シャントチャネルを通る前記流れの一部を分流すること(shunting)を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記フィルタ付きシャント流チャネルを通る流量は、任意に調整可能である、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記人工肺を通過する流体流れを制限することをさらに含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2016年8月1日に出願された米国仮特許出願第62/369,262号に基づく優先権を主張し、その内容はその全体が参照により本明細書に含まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、心肺バイパスのためのシステムおよび方法に関し、より詳細には、静脈バイパスおよびフィルタを用いる人工肺(oxygenator)を使用してガス状微小塞栓(GME)を減少させるためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
心臓手術中など人工的な手段によって心臓および肺の機能を置き換える必要がある。また、より重篤な肺不全、心不全、または腎不全中におけるように、より慢性的な病状においても、移植用の臓器が利用可能になるまで、様々な人工的な手段によって生命の維持を支援することができる。多くの臨床状況では、人工臓器が組み込まれている体外回路が必要とされている。
【0004】
気泡は血液中に容易に形成され、体外循環中に生物の循環内に押し出される。気泡は、キャビテーション、温度勾配、および被験体(subject)自身の血液と入ってくる血液との間での溶存ガスの量の差、ならびに外科的操作または液体の非経口的投与中の介護人による気泡の血液中への不注意な物理的導入を含む多くの原因から形成される。心臓手術の場合、体外回路は、例えば酸素化(酸素付加)および二酸化炭素の除去用に使用されるガス交換装置、例えば人工肺を含む。人工肺内の血液とガスとの間の密接な接触は、循環血液中への気泡の不注意な侵入の重大な危険性をもたらす。
【0005】
現在、心臓手術中の気泡形成を回避するために、気泡型人工肺の代わりに膜型人工肺が使用され、高い温度勾配が回避され、術野における吸引の使用を制御する。人工心肺(Heart-lung machines)は、人工心肺を制御する人に小さな気泡の出現を警告し、より大きな気泡が現れた場合には主要ポンプを直ちに停止する気泡センサを含む。典型的には、気泡センサは、約0.3ミリメートル(mm)以上の直径を有する気泡を識別することができ、3~5mmの直径を有する気泡が認識された場合には主要ポンプを停止する。
【0006】
心臓手術は、しばしば、医療費を増加させるとともに、機能的能力および生活の質を低下させる、術後の神経認知障害を併発する。この重大な公衆衛生問題への多元的な原因として、ガス状微小塞栓(GME)が含まれることが考えられる。膜酸素化および動脈フィルタの使用にもかかわらず、心肺バイパス(CPB)の間、動脈循環は直径10~40マイクロメートル(μm)の何千ものGMEを受容する。血管閉塞性GMEは、脳および他の末端器官(末端臓器 end organs)において組織虚血を引き起こし、内皮を露出させ、血管拡張、透過性の増大、血小板および凝固カスケードの活性化、ならびに炎症の補体および細胞メディエータの漸増をもたらす。
【0007】
現在の灌流法は、空気による希釈によって人工肺スイープガス中の酸素分圧を低下させることによって、CPB中の軽度に高酸素の血液ガスを目指しているが、それは、血液中に窒素を溶解させるという不必要な副作用を生じさせる。このように溶存ガスで飽和した血液は、GMEのように気泡の形で存在するガスを溶かすことがほとんどできない。
【0008】
それにもかかわらず、気泡の発生、例えば心臓手術中の気泡の形成を防止または低減する必要性が残っている。血液気泡では、液気界面に、約40~100オングストローム(Å)(4~10ナノメートル)のリポタンパク質の層があるが、これは、異物、例えばガスとの直接接触により変性する。次に、ハーゲマン因子が活性化され、凝固を開始すると共に、それに付随して、手術創からの出血を防ぐために使用される凝固を促進する因子の不都合な消費を開始する。
【0009】
したがって、体外循環中の気泡の数およびサイズを減少させるとともに、血中の気泡形成を抑制することができるシステムおよび方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本明細書において、心肺バイパス(CPB)中のガス状微小塞栓(GME)を含む気泡を減少させるシステムおよび方法が開示される。このアプローチは、GMEの数およびサイズを減らし、これは、CPBにおける神経認知障害や他の手術を含む術後合併症を減らすのに役立つ。本システムおよび方法は、in vitroおよびin vivoの両方のアプローチに使用することができる。本システムおよび方法は、低圧および常圧条件下で使用することができる。
【0011】
ガス状微小塞栓を減少させるためのシステムであって、流体源と、流体源に流体接続されたフローダイバータであって、流体源から流体の一部を除去するように構成されたフローダイバータと、流体源に流体接続された流入流コントローラであって、流体源からフローダイバータへの流体の流量を制御するように構成された流入流コントローラと、フローダイバータに流体接続されたバイパスラインと、バイパスラインに流体接続されたバイパス流コントローラであって、バイパスラインからの流体の流量を制御するように構成されたバイパス流コントローラと、バイパスラインと流体接続されたフィルタであって、規定された孔径、好ましくは15~50μm、より大きい直径を有するガス状微小塞栓を除去するフィルタと、流体源に流体接続された人工肺であって、流体源からの流体を酸素化するように構成された人工肺と、人工肺に流体接続された流出流コントローラであって、人工肺からの流体の流量を制御するように構成された流出流コントローラと、人工肺およびバイパスラインに流体接続された出口と、コントローラであって、流入流コントローラ、バイパス流コントローラ、流出流コントローラ、または前述の少なくとも1つまたは複数を含む組み合わせを制御するように構成されたコントローラとを備えたシステム。
【0012】
ガス状微小塞栓を減少させるための方法であって、流体を酸素化するように構成された人工肺を提供し、人工肺は静脈入口、動脈出口、静脈入口および動脈出口に流体接続された静脈バイパスラインを有し、静脈バイパスラインは規定された孔径、好ましくは15~50μm、より大きい直径を有するガス状微小塞栓を除去するように構成されたフィルタを含み、静脈バイパスラインは静脈入口から流体の一部を除去するように構成されていることと、流体を人工肺に導入することと、人工肺を通過する流体を酸素化することと、静脈バイパスラインおよび動脈出口からの流体を混合して、複合流体を形成することとを含み、複合流体中の溶存酸素の分圧が100~700水銀柱ミリメートル(mmHg)、好ましくは150~250mmHgである方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書に組み込まれ、その一部を形成する添付の図面は、本開示の幾つかの態様を具体化し、その説明と共に、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0014】
【
図1】フィルタを備える静脈バイパスを使用するCPBシステムの一実施形態の概略図である。
【0015】
【0016】
【
図3】本明細書で提供されているデータを得るために使用された人工心肺回路を示す。
【0017】
【
図4】広範囲の総流量にわたってシャント肢を通って移動する総流量の割合を示す実験データを示す。
【0018】
【
図5】3つの異なる条件下での溶存CO
2またはO
2の分圧を示す実験データを示す。
【0019】
【
図6】CPBシステム内の2つの位置におけるGMEの減少を示す実験データを示す。
【0020】
【
図7】CPBバイパス回路内の3つの位置における動脈フィルタの存在下でのシャント肢を通るGME送達の減少を示す実験データを示す。
【0021】
【
図8】シャント率の関数としての分圧の合計を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の開示は、CPBシステムにおけるGMEを低減するための方法およびシステムを提供する特定の例示的な実施形態を詳述する。本明細書で使用される機構および方法の概要が提供される。
【0023】
一実施形態において、本発明者は、シャント肢に動脈フィルタを使用することによって、人工肺の周囲のGMEのシャントの実用上の問題を予想外に解決した。
【0024】
本開示は、静脈血バイパスおよび静脈血バイパス内のフィルタを伴う人工肺を使用することによる、CPB中のGMEの減少、ならびに静脈動脈ECMOおよび静脈静脈ECMOを含む体外膜酸素化(ECMO)を含む他の処置に関する。記載されているシステムおよび方法はまた、透析、連続的静静脈血液濾過(CVVH)、および心室補助装置(VAD)を含む体外循環システムにも使用することができる。静脈血バイパスは、静脈システムまたは他の非酸素化血液源から血液の一部を取り、人工肺をバイパスし、バイパスした静脈血を人工肺から来る血液に導入する。酸素化血液と非酸素化血液との混合は、人工肺から来る血液中の酸素濃度を減少させ、血液からの微小気泡の除去を促進する。このアプローチは、純粋な酸素、窒素を含まないスイープガスを使用する人工肺の動作を可能にし、それによって患者に損傷を与え得る高酸素血症および微小気泡の溶解および除去を妨げ得る溶存窒素の両方を回避する。
【0025】
本出願人は本明細書に提示されるいかなる理論にも拘束されないが、本明細書に記載されるGMEを減少させる機構は、患者に戻る動脈血中の溶存ガスの分圧の合計を減少させ、それにより、気泡からのガスを血液相中へ再吸収させることを可能にすることを含む。
【0026】
一実施形態では、患者に移動する混合動脈血中のガスプロファイルは、190~290mmHgの溶存ガスの分圧の合計に対して、約150~250mmHgの溶存酸素(約100mmHgが健常人の正常値である)+約40mmHgの溶存CO2であり、約760mmHgの大気圧と比較して低圧である。
【0027】
一実施形態では、大小を問わず、すべてのガス塞栓がフィルタ付き回路内で除去される。一実施形態では、フィルタの規定された孔径、例えば15~50μmの間、よりも大きい直径、例えば15μmよりも大きい、20μmよりも大きい、28μmよりも大きい、32μmよりも大きい、37μmよりも大きい、または40μmよりも大きい直径を有する塞栓が除去され、規定された孔径よりも小さい直径を有する粒子が通過する。一実施形態では、50μmよりも大きい、好ましくは40μmよりも大きい、好ましくは28μmよりも大きい直径を有する塞栓がフィルタ付き回路から除去される。このサイズ範囲の塞栓は、毛細血管を塞ぐのに十分大きいが、動脈フィルタを通過するのに十分小さいと考えられる。
【0028】
本明細書で使用されるように、「流体」および「血液」は、他に注記がない限り、互換的に使用される。本システムおよび方法は、血液、または代用血液、人工血液、血漿,アルブミン,血小板,血漿濃縮物(plasma concentrates)などの血液製剤、食塩水,乳酸リンゲル液,ノルモゾル(normosol),プラズマライト(plasmalyte)などの晶質液(crystalloids)、ヘタスターチ(hetastarch)、あるいはこれらの少なくとも1つを含む組み合わせなどの他の流体に使用できることを理解されたい。
【0029】
流体源は、動物、例えばヒト、または他の哺乳動物などの被験体由来であり得る。流体源は、被験体の静脈系もしくは動脈系、心腔もしくは体腔に挿入されたカニューレを使用する被験体由来、流体リザーバ由来、または被験体外部の供給源由来であり得る。被験体は、治療または評価を受けている患者であり得る。
【0030】
フィルタは流れに対する抵抗として作用するので、バイパスライン内の流れを調整または制御するために使用することができる。
【0031】
フローダイバータは、血液の一部を分流する(divert)ために使用され、T字チューブ、またはポンプ、または人工肺を通る別個の非ガス交換シャントチャネルなどの、流体源から流体の一部を除去するために使用される任意の適切な装置であり得る。
【0032】
人工肺を通る別個の非ガス交換シャントチャネルの使用は、1)人工肺内のフィルタ付きまたはフィルタのないシャントチャネルであって、それを通る流れは調整可能またはユーザ決定可能であり得るシャントチャネル、あるいは、2)人工肺用ファイバ束内のスイープガス微小管のごく一部だけに選択的にスイープガスを流し、それによって例えば人工肺のフィルタの役割を損なうことなく人工肺内で非ガス交換シャント(shunting)を生じさせる手段を使用することができる。2a)このアプローチは、ゴム、ゲル、ポリマー、フォーム、ワックス、プラスチック、金属、または他の適切な材料あるいは可逆的閉塞装置からなる可変フラップまたは装置を使用でき、スイープガス入口付近またはスイープガス入口マニホールド内、スイープガス出口付近またはスイープガス出口マニホールド内、あるいはその両方、またはスイープガス流路に沿った任意の場所のファイバ束の一部を通るガスの流れを防ぐことができる。装置内に使用される閉塞装置は2つ以上あってもよく、ユーザまたはコントローラはそれらを所望の組み合わせで係合させて所望の量の非ガス交換シャント(shunting)を作ってもよい。閉塞はまた、スイープガス入口マニホールド、またはスイープガス出口マニホールド、またはその両方に注入された流体または他の適切な物質、例えば水、油、ポリマー、フォーム、またはワックスを使用して行われてもよい。2b)このアプローチはまた、スイープガス入口マニホールドまたは密封または非密封スイープガス出口マニホールド、またはその両方に恒久的または可逆的に注入される、水、食塩水、晶質液、コロイド、血液製剤、オイル、ゲル、ポリマー、フォーム、またはワックスなどの流体または他の適切な物質を使用して、ファイバ束のスイープガス微小管の一部を通る流れを防ぐことができる。スイープガス入口マニホールドまたはスイープガス出口マニホールド、あるいはその両方の下垂部分(dependent portions)または非下垂部分(non-dependent portions)にある追加のポートは、ファイバ束内のスイープガス流を調整するための物質の注入および除去を可能にするために必要とされ得る。スイープガス入口マニホールドまたはスイープガス出口マニホールド、あるいはその両方における陽圧リリーフ弁は、スイープガス流をファイバ束の一部に制限することから生じる陽圧を軽減するために必要とされ得る。2c)人工肺を通る(貫通する)非ガス交換シャントチャネルはまた、人工肺を隔室(compartments)に分割することによって、または複数の人工肺を使用することによって実行でき、この場合、各隔室または人工肺は血流を受け取るが、ユーザがスイープガスを流入させるか否か、また幾つかの隔室または人工肺に流すスイープガスの量を決定することができ、望ましいレベルの非ガス交換シャントを得ることができる。
【0033】
3)複数の隔室を使用する人工肺の場合、または複数の人工肺の使用中に、血液およびスイープガス流を、ユーザ定義の酸素化目標を達成するのに必要な最低限の数の隔室または人工肺に方向付けることによって、非ガス交換シャントがない場合に、血液中の溶存ガスおよびGME除去に対する同じ望ましい効果が達成され得る。流体源から来てフローダイバータへと入る流体の量および流れ特性、例えば、流速、流量(flow volume)、その他の特性は、ニードル弁、質量流量コントローラ、ポンプまたは部分閉塞クランプなどの流入コントローラ(inflow controller)によって制御することができる。本明細書でさらに説明するように、流入コントローラは、独立して制御することができる、または本システムの他の構成部分を制御するように構成されたコントローラによって制御することができる。
【0034】
バイパスラインは、医療用チューブ、または過度の実験なしに当業者に知られている他の材料などの任意の適切な材料とすることができる。バイパスラインの直径、長さ、および組成は、過度の実験をすることなく当業者によって容易に決定される。
【0035】
例えば出口における流体の所望の特性を達成するために、バイパスライン内の流体の流れをさらに制御することができる。センサを本システム内の任意の望ましいまたは有用な位置に使用して、例えば、GMEまたは他の粒子の実際のまたはおおよその数およびサイズ、抗凝固剤、麻酔、または他の薬剤の濃度、酸素、窒素、二酸化炭素などの気体の濃度、血中ヘモグロビンの酸素飽和度、または流量を決定することができる。流量センサおよび酸素飽和度センサはチューブの外側に取り付けられており、標準的なものである。より詳細な血液ガス分析および抗凝固剤分析のために、血液サンプルは頻繁に、場合によっては継続的に除去される。バイパスライン内の流体の組成または他の特性は、流体源内の流体の組成または他の特性から変更することができる。例えば、抗凝固剤または他の薬剤などの薬剤、あるいは、酸素、窒素、二酸化炭素、または空気などのガスを加えたり除去したりして、所望のレベルのガスおよび他の成分を得ることができる。
【0036】
実施形態では、センサは、フィルタの前のバイパスライン内の位置、フィルタの後のバイパスライン内の位置、または前述の1つまたは複数を含む組み合わせに導入され、バイパスライン内の流体における所望のレベルの酸素および他の物質を得る。
【0037】
バイパスラインにフィルタが挿入されている。フィルタは、当分野で知られているように、規定された孔径よりも大きい直径、例えば15μmよりも大きい、20μmよりも大きい、28μmよりも大きい、32μmよりも大きい、37μmよりも大きい、または例えば40μmよりも大きい直径を有する気泡(GME)、脂質、その他のデブリを除去し、、規定された孔径未満の直径を有する粒子を通過させるように設計された、いわゆる「動脈フィルタ」であり得る。
【0038】
フィルタ孔径は、気泡を除去するのに十分に小さくなければならないが、当業者に知られている妥当な圧力での所望の血流を妨げるほど、または細胞要素の損傷または濾過を引き起こすほど小さくてはならない。フィルタはまた、血液濃縮器、気泡トラップ、または人工肺であり得、それらのいずれも真空下で動作され得る。フィルタは、ポリエステルなどの任意の適切な材料から作製することができる。
【0039】
人工肺は、膜型人工肺、拡散膜型人工肺、または中空糸微多孔膜型人工肺などの複数の装置のうちのいずれであってもよい。一実施形態では、人工肺は、密閉されたハウジングを有する、または好ましくは密閉されたハウジングを有さない微多孔膜型人工肺である。一実施形態では、人工肺は、密閉されたハウジングを有さない微多孔膜型人工肺である。流体と人工肺との間の接続、流体とバイパスラインとの間の接続、および他の接続は、過度の実験なしに当業者に知られているものである。人工肺の動作(操作)は、過度の実験なしに当業者に知られている。
【0040】
本システム内の任意の点における流体の流量(flow rate)および体積(volume)、ならびに他の所望の特性は、流量コントローラ(flow controller)または他の適切な装置によって制御することができる。流量コントローラは、ニードル弁、質量流量コントローラ、ポンプ、クランプ、または部分閉塞クランプであり得る。
【0041】
出口は人工肺およびバイパスラインに流体接続されている。出口は、バイパスラインと人工肺からの流体が合流する点であり得る。センサを使用して、出口における流体の所望の特性、例えば、抗凝固剤または他の薬剤の濃度、酸素、窒素、二酸化炭素、空気などのガスの濃度、または血中酸素飽和度を測定することができる。
【0042】
流体が人工肺を通過して静脈バイパスからの流体と混合された後、流体は、例えば、保存されるか、または被験体または患者に再注入されることができる。
【0043】
本システムのパラメータは、流入流コントローラ、バイパス流コントローラ、流出流コントローラ、またはこれらの少なくとも1つまたは複数を含む組み合わせを制御するように構成されたコントローラによって制御することができる。本システムの各パラメータは、手動弁の使用などによって、独立して制御することもできる。
【0044】
一実施形態では、患者からCPBシステムに入る血液の総体積の0~50パーセントが静脈バイパスに向けられる。一実施形態では、患者からCPBシステムに入る血液の総体積の0~40パーセントが静脈バイパスに向けられる。一実施形態では、患者からCPBシステムに入る血液の総体積の0~30パーセントが静脈バイパスに向けられる。一実施形態では、患者からCPBシステムに入る血液の総体積の0~20パーセントが静脈バイパスに向けられる。一実施形態では、患者からCPBシステムに入る血液の総体積の0~10パーセントが静脈バイパスに向けられる。一実施形態では、患者からCPBシステムに入る血液の総体積の0~5パーセントが静脈バイパスに向けられる。静脈バイパスに入る血液は、様々な薬剤やガスで濾過、冷却、温め、強化、またはその他の方法で処理することができる。一実施形態では、出口における酸素分圧は50~800mmHgである。一実施形態では、出口における酸素分圧は100~700mmHgである。一実施形態では、出口における酸素分圧は75~650mmHgである。一実施形態では、出口における窒素分圧はゼロである。一実施形態では、出口における窒素分圧は最小にされる。一実施形態では、出口における窒素分圧は、最大約600mmHgまでの非ゼロレベルである。
【0045】
出口(人工肺からの血液とシャントからの血液との間の混合箇所)における血液または流体の所望のパラメータ/組成は、患者のための外科チームおよび灌流技師(perfusionist)の目標に依存する。多くの場合、灌流技師は、150~250mmHgの酸素張力つまり酸素分圧(oxygen tension)、40mmHgのCO2張力つまりCO2分圧、および患者の予測される正常心拍出量に合理的に近い、患者の血管系に適切な血圧を生み出す全体の流量を目標とする。一般的なシナリオでは、灌流技師は、シャント肢を通る1.5L/分の流れおよび人工肺を通る3.5L/分の流れからなる5L/分の総流量を流し得る。灌流技師は、シャント率を上げ下げしてpO2を調整し、スイープガス流量を上げ下げしてpCO2を調整し、あるいは流量を上げ下げして血圧を調整することができる。
【0046】
一実施形態では、フィルタは、ガス状微小塞栓を除去するように作用すると共に、例えば患者に戻る血液の酸素レベルを制御するために使用することができる静脈血バイパス用の流量制限器としても作用する。この方法は、通常の大気圧状態と低圧状態の両方で使用できる。一実施形態では、人工肺は低大気圧を有するように構成され、0.4~1絶対気圧の圧力を有することができる。記載されたシャントは、低大気圧で人工肺を作動させることと共に使用することができる。一実施形態では、本システムは、人工肺に流体接続され、低大気圧を提供するように構成された真空調整器を含む。一実施形態では、人工肺は大気圧を有するように構成される。
【0047】
本システムは、流量、流体組成、酸素飽和度、二酸化炭素含有量、窒素含有量、温度、ヘマトクリット、またはこれらの1つまたは複数を含む組み合わせのうちの1つまたは複数を測定するように構成された1つまたは複数のセンサを含むことができ、該センサは流体源、バイパスライン、出口、またはこれらの1つまたは複数を含む組み合わせに流体接続されている。これらのセンサは、当業者に知られている複数の一般的なセンサのうちのいずれでもよい。
【0048】
一実施形態では、コントローラは、プロセッサと、プロセッサによって実行されるソフトウェア命令とを含む。
【0049】
流体源は、1つまたは複数の流体を組み合わせるように構成されたブレンダつまり混合器とすることができる。
【0050】
本システムは、血液、または代用血液、人工血液、血漿,アルブミン,血小板,血漿濃縮物などの血液製剤、食塩水,乳酸リンゲル液,ノルモゾル,プラズマライトなどの晶質液、ヘタスターチ、または他の流体、あるいはこれらの1つまたは複数を含む組み合わせなどの多数の異なる流体に使用できる。
【0051】
また、ガス状微小塞栓を減少させるための方法が提供される。この方法は、流体を酸素化するように構成された人工肺を提供することを含む。前記人工肺は静脈入口と、動脈出口と、前記静脈入口および前記動脈出口に流体接続された静脈バイパスラインとを有し、該静脈バイパスラインは規定された孔径、典型的には例えば15~50μm、または28~40μm、より大きい直径のガス状微小塞栓を除去するように構成されたフィルタを含み、該静脈バイパスラインは静脈入口から流体の一部を除去するように構成されている。この方法は、また、流体を前記人工肺に導入することと、典型的には純酸素スイープガスを使用して前記人工肺を通過する流体を酸素化することと、前記静脈バイパスラインおよび前記動脈出口からの流体を混合して、複合流体を形成することとを含む。この場合、前記複合流体中の酸素濃度は、75~800mmHg、好ましくは100~700mmHg、好ましくは100~650mmHg、好ましくは150~250mmHgである。前記人工肺は、酸素を流体に導入し、流体から二酸化炭素を除去することができる任意の適切な装置とすることができる。本方法は、流体に薬剤またはガスを導入することをさらに含み得る。本方法は、スイープガス出口における血液およびガスを含む任意の点で、酸素、窒素、二酸化炭素、麻酔薬、薬剤、酸素飽和度、または他の物質の濃度を測定することをさらに含み得る。前記測定は、インライン二波長酸素濃度計の使用、または分析のために流体の一部を除去するサンプリング技術の使用など、任意の適切な測定装置またはサンプリング技術を使用して行うことができる。本方法は、任意の点(箇所)で流体の温度を監視または制御することをさらに含み得る。
【0052】
本システムおよび本方法はまた、シャント肢の代わりに、またはシャント肢に加えて、人工肺を通る非ガス交換シャントチャネルを含むことができる。一実施形態では、人工肺を通る非ガス交換シャントチャネルまたはシャント肢のうちの一方が使用される。一実施形態では、人工肺を通る非ガス交換シャントチャネルが使用される。前記非ガス交換シャントチャネルは、人工肺内のフィルタ付きシャント流チャネルとすることができ、このフィルタ付きシャント流チャネルを通る流量は任意に調整可能である。一実施形態では、人工肺は、スイープガス入口およびスイープガス出口を介してスイープガスリザーバまたはスイープガス供給源に流体接続することができる。この場合、人工肺は、ファイバ束のスイープガス微小管を含み、非ガス交換シャントチャネルは、スイープガスを人工肺のファイバ束内のスイープガス微小管の一部に選択的に流す手段を含む。この場合、非ガス交換シャント(non-gas-exchange shunting)は人工肺内で起こる。一実施形態では、人工肺は、スイープガス入口およびスイープガス出口を介してスイープガスリザーバに流体接続され、スイープガスを人工肺ファイバ束内のスイープガス微小管の一部に選択的に流す手段は、可変流れフラップまたは閉塞装置を含み、可変流れフラップまたは閉塞装置は、スイープガス入口付近、スイープガス出口付近、またはその両方、あるいは流体源からの流体の流路に沿った任意の場所でファイバ束の一部を通るガスの流れを防ぐ。一実施形態では、人工肺は2つ以上の隔室を含み、各隔室内のスイープガスの流れは独立して調整可能である。システムが2つ以上の人工肺を含む実施形態では、各人工肺は、スイープガス入口およびスイープガス出口を介してスイープガスリザーバに流体接続することができ、各人工肺は流体源からの流体を受け取ることができ、各人工肺へのスイープガスの流れは独立して調整可能である。人工肺が2つ以上の隔室を含む実施形態では、各隔室への血流は独立して調整可能であり、溶存酸素の目標レベルを達成するために必要なだけの酸素化能力を使用するために、幾つかの隔室については血流を抑制することができる。複数の人工肺が使用される実施形態では、各人工肺への血流は独立して調整可能であり、その結果、溶存酸素の目標レベルを達成するために必要なだけの酸素化能力を使用するために、幾つかの人工肺への血流を抑制することができる。一実施形態では、出口における窒素分圧は、空気を組み込んだ標準的な酸素化戦略と比較して減少または最小化される。
【0053】
本システムおよび本方法は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2015/047927号明細書に記載されているシステムを含む、任意のCPBシステムまたは回路と共に使用することができる。
【0054】
実施例
以下の実施例は非限定的である。ここで図面を参照するが、本開示を通して、同じ参照番号は同じ要素を指すのに使用されている。
【0055】
図1は、フィルタを備える静脈バイパスを使用してGMEを減少させるシステムの例示的な実施形態の概略図を示す。流体源10からの流体(気体、液体、溶存ガス、またはこれらの1つまたは複数を含む組み合わせであり得る)は、任意の流入流コントローラ20に入る。この任意の流入流コントローラ20は、流体源10からフローダイバータ30へと入る流体の流量、体積、その他の特性を制御する。任意の流入流コントローラ20は、CPB回路内のポンプとすることができる。バイパス流コントローラおよび流出流コントローラ、つまり、要素60および70、もまた任意である。任意のコントローラ90は、流入流コントローラ20、バイパス流コントローラ60および/または流出流コントローラ70を制御することができる。フローダイバータ30は、流体流を2つ以上の経路に分流させるためのT字管、弁、または他の適切な装置などの、複数の適切な実施形態のいずれであってもよい。フローダイバータ30からの流体は、人工肺40およびバイパスライン100に入る。人工肺40およびバイパスライン100に入る流体源10からの流体の割合は、酸素、または出口80内の他の物質などの所望の物質の量、出口80における所望の流体体積、または他の要因を含む幾つかの要因(ファクタ)に応じて変わり得る。人工肺40は、酸素を流体に加えると共に二酸化炭素を除去するのに有用な複数の装置またはシステムのいずれでもよい。バイパスライン100はフィルタ50を含む。フィルタ50は、GMEの数およびサイズを減らすためにCPBにおいて典型的に使用される、いわゆる「動脈フィルタ」とすることができる。フィルタ50は、本明細書の他の箇所に記載されているように、所望の孔径を有するフィルタ媒体を使用して、フィルタ媒体の孔径より大きい粒子を除去するスクリーンフィルタとすることができる。フィルタ50はデプスフィルタとすることができ、フィルタは、より大きい粒子が表面層に捕捉される厚さを有する一方、より小さい粒子は後続の層によって捕捉される。選択されたサイズを有する粒子の数を除去または減少させるために、所望の孔サイズまたはフィルタの厚さを変えることができる。一例として、GMEを除去するが白血球または他の所望の血液成分を濾過しない(除去しない)、または必要なまたは所望の流量が達成できないよう流量を制限することがない、フィルタ媒体が50μm、40μm、25μm、15μm、または他のサイズの孔径を有するスクリーンフィルタを使用することができる。一実施形態では、フィルタは適切な流量に対応する。フィルタ50からの流体の体積、流量、または他のパラメータは、バイパス流コントローラ60によって制御することができる。人工肺40からの体積、流量、または他のパラメータは、流出流コントローラ70によって制御することができる。バイパスライン100および人工肺40からの流体は出口80で合流する。
【0056】
酸素、窒素、二酸化炭素、麻酔剤、薬剤、または他の物質の濃度などの流体のパラメータは、本明細書に記載するように、任意の時点で測定および調整することができる。
【0057】
図2は、使用可能な例示的人工肺を示す。
図2では、人工肺は、ハウジング、血液入口および血液出口、スイープガス入口およびスイープガス出口、ならびにスイープガス入口マニホールドおよびスイープガス出口マニホールド(通気開口部を含む)を備えている。人工肺はファイバ束を有する。熱交換用の水コネクタも示されている。人工肺は、ポリプロピレンなどの任意の適切な膜を使用することができる。ガスベントを使用して人工肺の圧力を制御することができる。
【0058】
図3は、本明細書で提供されているデータのために使用された人工心肺回路を示す。
図3に、塞栓検出分類(EDAC)および静脈空気引き込み(entrainment)部位(500mL/分)を有するCPBバイパス回路を示す。
【0059】
図4は、シャント肢(例えば、
図3の「シャント肢装置」)へのフィルタ(Terumo AF125x)の追加がシャント率を安全なレベルに効果的に制限すること、およびこのレベルが広範囲のCPB流量にわたって安定であることを示す実験データを示す。
【0060】
図5は、人工心肺内のフィルタ付きシャントが、動脈血中の溶存酸素O
2を、CPBの間に灌流技師が目標とする安全で軽度に高酸素のレベルまで低下させることを示す実験データを提供している。スイープガスには窒素が含まれていなかったので、実証されたレベルの溶存O
2とCO
2は血液中の唯一の溶存ガスを表している。
図5は、3つの条件、すなわち患者シミュレータからの静脈血中のpCO
2およびpO
2の測定(条件1)と、所定の位置のフィルタ付きシャントを有する人工心肺からの動脈血中のpCO
2およびpO
2の測定(条件2)と、シャントなしの人工心肺からの動脈血中のpCO
2とpO
2の測定(条件3)とに関するデータを提供する。
図5において、Y軸は、溶存CO
2またはO
2の分圧(単位mmHg)である。
図5において、X軸は上記の条件である。
【0061】
図6は、コントロールつまり対照群(シャントなし)と比較して、フィルタ付きシャントを使用した場合の、動脈ラインフィルタの前(「動脈ラインフィルタ前」というタイトルのついた上のグラフ)および後(「動脈ラインフィルタ後」というタイトルのついた下のグラフ)のGMEの減少を示す実験データを提供している。動脈ラインフィルタの後のGMEの減少は、問題の人工肺/フィルタ付きシャントの下流で、かつ患者へ向かう途中で測定される。
図6では、コントロール=シャントなし、フィルタ付き=フィルタ付きシャント、y軸は1分あたりの塞栓、x軸は塞栓直径(μm)である。
【0062】
図7は、CPBバイパス回路内の3つの位置、すなわちポンプ後、人工肺後、およびシャント肢端部(
図3では「シャント肢後」と呼ばれる)におけるGMEを示す実験データを提供する。
図7では、コントロール=フィルタなしシャント、フィルタ付き=フィルタ付きシャント、y軸は1分あたりの塞栓を表し、x軸は塞栓の直径を表す。
【0063】
図8は、シャント率の関数としての分圧の合計の数学モデルを示す。
【0064】
シャント肢へのフィルタの追加は、シャント肢を通るGMEのシャントを減少させる。これは、提供されるGME減少戦略にとって有用である。
【0065】
実施形態
本方法および本システムは、非限定的である以下の実施形態によってさらに説明される。
【0066】
実施形態1:ガス状微小塞栓を減少させるためのシステムであって、流体源と、流体源に流体接続され、流体源からの流体の一部を除去するように構成されたフローダイバータと、流体源に流体接続され、流体源からフローダイバータへの流体の流量を制御するように構成された流入流コントローラと、フローダイバータに流体接続されたバイパスラインと、バイパスラインに流体接続され、バイパスラインからの流体の流量を制御するように構成されたバイパス流コントローラと、バイパスラインと流体接続され、規定された孔径、好ましくは15~50μm、より大きい直径を有するガス状微小塞栓を除去するフィルタと、流体源に流体接続され、流体源からの流体を酸素化するように構成された人工肺と、人工肺に流体接続され、人工肺からの流体の流量を制御するように構成された流出流コントローラと、人工肺およびバイパスラインに流体接続された出口と、流入流コントローラ、バイパス流コントローラ、流出流コントローラ、またはこれらの少なくとも1つまたは複数を含む組み合わせを制御するように構成されたコントローラとを備えたシステム。
【0067】
実施形態2:人工肺が低大気圧を有するように構成される、実施形態1のシステム。
【0068】
実施形態3:人工肺に流体接続され、低大気圧を提供するように構成された真空調整器をさらに備える、実施形態1または2のいずれかのシステム。
【0069】
実施形態4:人工肺が大気圧を有するように構成される、実施形態1~3のいずれかのシステム。
【0070】
実施形態5:流量、流体組成、血中酸素飽和度、酸素張力(oxygen tension)、炭素張力率(carbon tension fraction)、窒素張力(nitrogen tension)、ヘマトクリット、またはこれらの1つまたは複数を含む組み合わせのうちの1つまたは複数を測定するように構成されたセンサをさらに含み、センサは流体源、バイパスライン、出口、またはこれらの1つまたは複数を含む組み合わせに流体接続されている、実施形態1~4のいずれかのシステム。
【0071】
実施形態6:コントローラが、プロセッサと、プロセッサによって実行されるソフトウェア命令とを含む、実施形態1~5のいずれかのシステム。
【0072】
実施形態7:人工肺が、膜型人工肺、拡散膜型人工肺、または中空糸微多孔膜型人工肺である、実施形態1~6のいずれかのシステム。
【0073】
実施形態8:人工肺が、密閉されたハウジングを有する微多孔膜型人工肺である、実施形態7のシステム。
【0074】
実施形態9:流体が、血液、または代用血液、人工血液、血漿,アルブミン,血小板,血漿濃縮物などの血液製剤、食塩水,乳酸リンゲル液,ノルモゾル,プラズマライトなどの晶質液、ヘタスターチ、あるいはこれらの少なくとも1つを含む組み合わせであるである、実施形態1~8のいずれかのシステム。
【0075】
実施形態10:流体源が、1つまたは複数の流体を組み合わせるように構成されたブレンダ(混合器)である、実施形態1~9のいずれかのシステム。
【0076】
実施形態11:血液がシステム内を流れる、実施形態1~10のいずれかのシステム。
【0077】
実施形態12:出口における酸素濃度が75~800mmHg、好ましくは100~700mmHg、好ましくは100~650mmHg、好ましくは150~250mmHgである、実施形態1~11のいずれかのシステム。
【0078】
実施形態13:出口における窒素分圧が、空気を組み込んだ標準的な酸素化戦略と比較して減少または最小化されている、実施形態1~12のいずれかのシステム。
【0079】
実施形態14:ガス状微小塞栓を減少させるための方法であって、流体を酸素化するように構成された人工肺を提供し、人工肺は静脈入口、動脈出口、静脈入口および動脈出口に流体接続された静脈バイパスラインを有し、静脈バイパスラインは規定された孔径、好ましくは15~50μm、より大きい直径を有するガス状微小塞栓を除去するように構成されたフィルタを含み、静脈バイパスラインは静脈入口から流体の一部を除去するように構成されていることと、流体を人工肺に導入することと、人工肺を通過する流体を酸素化することと、静脈バイパスラインおよび動脈出口からの流体を混合して、複合流体を形成することとを含み、複合流体中の酸素濃度が100~700mmHg、好ましくは150~250mmHgである方法。
【0080】
実施形態15:人工肺内のフィルタ付きシャント流チャネルである非ガス交換シャントチャネルを通る流れの一部を分流することを含む、実施形態14の方法。
【0081】
実施形態16:フィルタ付きシャント流チャネルを通る流量は任意に調整可能である、実施形態14または15の方法。
【0082】
実施形態17:人工肺を通過する流体流れを制限することをさらに含む、実施形態14~16のいずれかの方法。
【0083】
実施形態18:人工肺を通る非ガス交換シャントチャネルをさらに含む、実施形態1~13のいずれかのシステム。
【0084】
実施形態19:非ガス交換シャントチャネルは、人工肺内のフィルタ付きシャント流チャネルであり、フィルタ付きシャント流チャネルを通る流量は任意に調整可能である、実施形態1~13または18のいずれかのシステム。
【0085】
実施形態20:人工肺は、スイープガス入口およびスイープガス出口を介してスイープガスリザーバまたは供給源に流体接続され、人工肺は、ファイバ束のスイープガス微小管を含み、非ガス交換シャントチャネルは、スイープガスを人工肺ファイバ束内のスイープガス微小管の一部に選択的に流す手段を含み、非ガス交換シャントは人工肺内で発生する、実施形態1~13または18~19のいずれかのシステム。
【0086】
実施形態21:人工肺は、スイープガス入口およびスイープガス出口を介してスイープガスリザーバに流体接続され、スイープガスを人工肺ファイバ束内のスイープガス微小管の一部に選択的に流す手段は、可変流れフラップまたは閉塞装置を含み、可変流れフラップまたは閉塞装置は、スイープガス入口付近、スイープガス出口付近、またはその両方、あるいは流体源からの流体の流路に沿った任意の場所でファイバ束の一部を通るガスの流れを防ぐ、実施形態1~13または18~20のいずれかのシステム。
【0087】
実施形態22:人工肺は、スイープガス入口およびスイープガス出口を介してスイープガスリザーバに流体接続され、スイープガスを人工肺ファイバ束内のスイープガス微小管の一部に選択的に流す手段は、ファイバ束のスイープガス微小管の一部を通る流れを防ぐために、スイープガス入口マニホールドまたは密封または非密封スイープガス出口マニホールド、またはその両方に恒久的または可逆的に注入される、水、食塩水、晶質液、コロイド、血液製剤、オイル、ゲル、ポリマー、フォーム、またはワックスなどの流体または他の適切な物質を含む、実施形態1~13または18~21のいずれかのシステム。
【0088】
実施形態22:人工肺ハウジングが、スイープガス入口マニホールドまたはスイープガス出口マニホールド、あるいはその両方の下垂部分または非下垂部分にある追加のポートを含み、物質の注入および除去を可能にして、ファイバ束内のスイープガス流を調整することを可能にする、実施形態1~13または18~21のいずれかのシステム。
【0089】
実施形態23:人工肺ハウジングがスイープガス入口マニホールドまたはスイープガス出口マニホールド、あるいはその両方における陽圧リリーフ弁を含み、スイープガス流をファイバ束の一部に制限することから生じる陽圧を軽減する実施形態1~13または18~22のいずれかのシステム。
【0090】
実施形態24:人工肺は2つ以上の隔室を含み、各隔室内のスイープガスの流れは独立して調整可能である、実施形態1~13または18~23のいずれかのシステム。
【0091】
実施形態25:人工肺は2つ以上の隔室を含み、各隔室内の血液の流れは独立して調整可能である、実施形態1~13または18~24のいずれかのシステム。
【0092】
実施形態26:システムは2つ以上の人工肺を含み、各人工肺は、スイープガス入口およびスイープガス出口を介してスイープガスリザーバに流体接続し、各人工肺は流体源から流体を受け取り、各人工肺へのスイープガスの流れは独立して調整可能である、実施形態1~13または18~25のいずれかのシステム。
【0093】
実施形態27:システムは2つ以上の人工肺を含み、各人工肺は、血液入口および血液出口を介して血液リザーバまたは血液供給源に流体接続し、各人工肺は流体源からの流体を受け取り、各人工肺への血液の流れは独立して調整可能である、実施形態1~13または18~26のいずれかのシステム。
【0094】
実施形態28:出口における窒素分圧が、空気を組み込んだ標準的な酸素化戦略と比較して減少または最小化されている、実施形態1~13または18~27のいずれかのシステム。
【0095】
また、ガス状微小塞栓を減少させるためのシステムが開示されている。このシステムは、流体源と、前記流体源に流体接続され、前記流体源から流体の一部を除去するように構成されたフローダイバータと、前記流体源に流体接続され、前記流体源から前記フローダイバータへの流体の流量を制御するように構成された流入流コントローラと、前記フローダイバータに流体接続されたバイパスラインと、前記バイパスラインに流体接続され、該バイパスラインからの流体の流量を制御するように構成されたバイパス流コントローラと、前記バイパスラインと流体接続され、規定された孔径、好ましくは15~50μm、より大きい直径を有するガス状微小塞栓を除去するフィルタと、前記流体源に流体接続され、前記流体源からの流体を酸素化するように構成された人工肺と、前記人工肺に流体接続され、該人工肺からの流体の流量を制御するように構成された流出流コントローラと、前記人工肺および前記バイパスラインに流体接続された出口と、前記流入流コントローラ、前記バイパス流コントローラ、前記流出流コントローラ、またはこれらの少なくとも1つまたは複数を含む組み合わせを制御するように構成されたコントローラとを備えている。
【0096】
また、ガス状微小塞栓を減少させるための方法であって、流体を酸素化するように構成された人工肺を提供し、人工肺は静脈入口、動脈出口、静脈入口および動脈出口に流体接続された静脈バイパスラインを有し、静脈バイパスラインは、規定された孔径、好ましくは15~50μm、より大きい直径を有するガス状微小塞栓を除去するように構成されたフィルタを含み、静脈バイパスラインは静脈入口から流体の一部を除去するように構成されていることと、流体を人工肺に導入することと、人工肺を通過する流体を酸素化することと、静脈バイパスラインおよび動脈出口からの流体を混合して、複合流体を形成することとを含み、複合流体中の酸素濃度が100~700mmHg、好ましくは150~250mmHgである方法が開示される。
【0097】
前述の実施形態のいずれにおいても、人工肺は、低大気圧を有するように構成され、および/または人工肺に流体接続され、低大気圧を提供するように構成された真空調整器をさらに含み、および/または人工肺は、大気圧を有するように構成され、および/または流量、流体組成、血中酸素飽和度、酸素張力、炭素張力率、窒素張力、ヘマトクリット、またはこれらの1つまたは複数を含む組み合わせのうちの1つまたは複数を測定するように構成されたセンサをさらに含み、センサは流体源、バイパスライン、出口、またはこれらの1つまたは複数を含む組み合わせに流体接続されており、および/またはコントローラは、プロセッサと、プロセッサによって実行されるソフトウェア命令とを含み、および/または人工肺が、膜型人工肺、拡散膜型人工肺、または中空糸微多孔膜型人工肺であり、および/または人工肺が、密閉されたハウジングを有する微多孔膜型人工肺であり、および/または流体が、血液、または代用血液、人工血液、血漿,アルブミン,血小板,血漿濃縮物などの血液製剤、食塩水,乳酸リンゲル液,ノルモゾル,プラズマライトなどの晶質液、ヘタスターチ、あるいはこれらの少なくとも1つを含む組み合わせであり、および/または流体源が、1つまたは複数の流体を組み合わせるように構成されたブレンダであり、および/または血液がシステム内を流れ、および/または出口における酸素濃度が75~800mmHg、好ましくは100~700mmHg、好ましくは100~650mmHg、好ましくは150~250mmHgであり、および/または人工肺を通る非ガス交換シャントチャネルをさらに含み、および/または非ガス交換シャントチャネルは、人工肺内のフィルタ付きシャント流チャネルであり、フィルタ付きシャント流チャネルを通る流量は任意に調整可能であり、および/または人工肺は、スイープガス入口およびスイープガス出口を介してスイープガスリザーバまたは供給源に流体接続しており、人工肺は、ファイバ束のスイープガス微小管を含み、非ガス交換シャントチャネルは、スイープガスを人工肺ファイバ束内のスイープガス微小管の一部に選択的に流す手段を含み、非ガス交換シャントは人工肺内で発生し、および/または人工肺は、スイープガス入口およびスイープガス出口を介してスイープガスリザーバに流体接続され、スイープガスを人工肺ファイバ束内のスイープガス微小管の一部に選択的に流す手段は、可変流れフラップまたは閉塞装置を含み、可変流れフラップまたは閉塞装置は、スイープガス入口付近、スイープガス出口付近、またはその両方、あるいは流体源からの流体の流路に沿った任意の場所でファイバ束の一部を通るガスの流れを防ぎ、および/または人工肺は、スイープガス入口およびスイープガス出口を介してスイープガスリザーバに流体接続され、スイープガスを人工肺ファイバ束内のスイープガス微小管の一部に選択的に流す手段は、ファイバ束のスイープガス微小管の一部を通る流れを防ぐために、スイープガス入口マニホールドまたは密封または非密封スイープガス出口マニホールド、またはその両方に恒久的または可逆的に注入される、水、食塩水、クリスタロイド、コロイド、血液製剤、オイル、ゲル、ポリマー、フォーム、またはワックスなどの流体または他の適切な物質を含み、および/または人工肺ハウジングが、スイープガス入口マニホールドまたはスイープガス出口マニホールド、あるいはその両方の下垂部分または非下垂部分にある追加のポートを含み、物質の注入および除去を可能にして、ファイバ束内のスイープガス流を調整することを可能にし、および/または人工肺ハウジングがスイープガス入口マニホールドまたはスイープガス出口マニホールド、あるいはその両方における陽圧リリーフ弁を含み、スイープガス流をファイバ束の一部に制限することから生じる陽圧を軽減し、および/または人工肺は2つ以上の隔室を含み、各隔室内のスイープガスの流れは独立して調整可能であり、および/または人工肺は2つ以上の隔室を含み、各隔室内の血液の流れは独立して調整可能であり、および/またはシステムは2つ以上の人工肺を含み、各人工肺は、スイープガス入口およびスイープガス出口を介してスイープガスリザーバに流体接続し、各人工肺は流体源から流体を受け取り、各人工肺へのスイープガスの流れは独立して調整可能であり、および/またはシステムは2つ以上の人工肺を含み、各人工肺は、血液入口および血液出口を介して血液リザーバまたは供給源に流体接続し、各人工肺は流体源から流体を受け取り、各人工肺への血液の流れは独立して調整可能であり、および/または出口における窒素分圧が、空気を組み込んだ標準的な酸素化戦略と比較して減少または最小化されており、および/または人工肺内のフィルタ付きシャント流チャネルである非ガス交換シャントチャネルを通る流れの一部を分流することをさらに含み、および/またはフィルタ付きシャント流チャネルを通る流量は任意に調整可能であり、および/または人工肺を通過する流体流れを制限する。
【0098】
本明細書で引用した刊行物、特許出願、および特許を含むすべての参考文献は、あたかも各参考文献が個別におよび具体的に参照により組み込まれることが示され、その全体が本明細書に記載されるのと同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0099】
本発明を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)用語「1つの(a)」および「1つの(an)」および「その(the)」および類似の指示対象の使用は、以下の場合を除き、本明細書に示されるか、または文脈により明らかに否定されない限り、単数形および複数形の両方を網羅すると解釈される。用語「備える、含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含む、含有する(containing)」は、特に断りのない限り、非制限用語として解釈されるべきである(すなわち、「含むが、これらに限定されるものではない」を意味する)。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中に別段の指定がない限り、単にその範囲内に含まれる各個別の値を個々に指す簡単な方法として機能することを意図している。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中で他に指示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書で提供されるありとあらゆる例、または例示的な言語(例えば、「などの」)の使用は、単に本発明をよりよく明らかにするためのものであり、特に請求の範囲がない限り本発明の範囲を制限するものではない。本明細書中のいかなる言語も、特許請求されていない要素を本発明の実施に必須であると示すと解釈されるべきではない。
【0100】
本発明を実施するために本発明者らに知られている最良の形態を含めて、本発明の例示的実施形態を本明細書に記載する。これらの実施形態の変形は、前述の説明を読めば当業者には明らかになる。本発明者らは、当業者がそのような変形を適切に使用することを期待し、そして本発明者らは本明細書に具体的に記載されたものとは別の方法で本発明を実施することを意図する。したがって、本発明は、適用法によって許容されるように、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙されている主題のすべての変形形態および均等物を含む。さらに、そのすべての可能な変形形態における上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書中に別段の指示がない限りまたは文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状微小塞栓を減少させるためのシステムであって、
流体源と、
バイパスラインと、
前記流体源からの流体を酸素化するように構成された人工肺と、
前記流体源に流体接続されたフローダイバータであって、前記流体源から流体の一部を除去するように構成され、該フローダイバータからの流体は、前記人工肺および前記バイパスラインに入るようにした、フローダイバータと、
前記人工肺を通る非ガス交換シャントチャネルと、
前記バイパスラインと流体連通するフィルタであって、該フィルタの孔径より大きい直径を有するガス状微小塞栓を除去するように構成されたフィルタと、
前記人工肺および前記バイパスラインに流体接続された出口と、を備えたシステム。
【請求項2】
前記人工肺は、低大気圧を有するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記人工肺に流体接続され、前記低大気圧を提供するように構成された真空調整器をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記人工肺は、大気圧を有するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記人工肺は、膜型人工肺である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記人工肺は、拡散膜型人工肺である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記人工肺は、中空糸微多孔膜型人工肺である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記人工肺は、密閉されたハウジングを有する微多孔膜型人工肺である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記非ガス交換シャントチャネルは、前記人工肺内のフィルタ付きシャント流チャネルである、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記フィルタ付きシャント流チャネルを通る流量が調整可能である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記人工肺は、スイープガス入口およびスイープガス出口を介してスイープガスリザーバまたは供給源に流体接続されており、
前記人工肺は、ファイバ束内にスイープガス微小管を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記人工肺は、スイープガス入口およびスイープガス出口を介してスイープガスリザーバまたは供給源に流体接続されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記人工肺は、人工肺ハウジングを備え、
該人工肺ハウジングは、スイープガス入口マニホールドまたはスイープガス出口マニホールド、あるいはその両方の一部にポートを含み、物質の注入および除去を可能にして、ファイバ束内のスイープガス流を調整することを可能にする、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記人工肺ハウジングは、スイープガス入口マニホールドまたはスイープガス出口マニホールド、あるいはその両方において陽圧リリーフ弁を含み、陽圧を軽減する、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記人工肺は、2つ以上の隔室を備え、各隔室内のスイープガスの流れは独立して調整可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記人工肺は、2つ以上の隔室を備え、各隔室内の流体の流れは独立して調整可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
ガス状微小塞栓を減少させる方法であって、
人工肺内の流体を酸素化するステップであって、前記人工肺は、静脈入口と、動脈出口と、該静脈入口および該動脈出口に流体接続された静脈バイパスラインとを備え、前記静脈バイパスラインは、フィルタを備え、該フィルタの規定された孔径より大きい直径を有するガス状微小塞栓を除去するように構成され、前記静脈バイパスラインは、前記静脈入口から流体の一部を除去するように構成される、ステップと、
前記人工肺内のフィルタ付きシャント流チャネルである非ガス交換シャントチャネルを通して流体を分流するステップと、を含む方法。
【請求項18】
前記静脈バイパスラインおよび前記動脈出口からの流体を混合して、複合流体を形成するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記フィルタ付きシャント流チャネルを通る流量が調整可能である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記人工肺を通過する流体流れを制限するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【外国語明細書】