(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151574
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】エレクトロクロミックシート、眼鏡用レンズおよび眼鏡
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1676 20190101AFI20231005BHJP
G02C 7/10 20060101ALI20231005BHJP
G02F 1/1516 20190101ALI20231005BHJP
G02F 1/1523 20190101ALI20231005BHJP
G02F 1/15 20190101ALI20231005BHJP
【FI】
G02F1/1676
G02C7/10
G02F1/1516
G02F1/1523
G02F1/15 508
G02F1/15 503
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061257
(22)【出願日】2022-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】西野 哲史
【テーマコード(参考)】
2H006
2K101
【Fターム(参考)】
2H006BE01
2K101AA22
2K101DA01
2K101DB04
2K101DB06
2K101DB33
2K101DB34
2K101DC04
2K101DC05
2K101DC06
2K101DC13
2K101DC43
2K101DC44
2K101DC45
2K101DC46
2K101DC53
2K101DC54
2K101DC55
2K101EA41
2K101EB01
2K101EB33
2K101EC02
2K101EC55
2K101EC58
2K101ED01
2K101EE02
2K101EG27
2K101EG37
2K101EG39
2K101EG52
2K101EG54
2K101EJ31
2K101EK04
(57)【要約】
【課題】エレクトロクロミック素子を備えるエレクトロクロミックシートを有するレンズを製造する際に、その製造途中において、エレクトロクロミック素子における不具合の発生の有無を容易に知ることができる構成をなしているエレクトロクロミックシート、かかるエレクトロクロミックシートを備える、信頼性に優れた眼鏡用レンズおよび眼鏡を優れた生産性をもって提供すること。
【解決手段】本発明のエレクトロクロミックシート150は、基板11、12と、これらの間に配置され、着色領域70を区画する封止部55と、着色領域70内に配置されたエレクトロクロミック素子60と、封止部55のエレクトロクロミック素子60に対する外側に形成された第1穴部53を埋める第1導電部17と、第2穴部54を埋める第2導電部18と、を有し、導電部17、18は、それぞれ、エレクトロクロミックシート150の端部において、異なる位置で露出している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板と対向して配置された第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、電圧の印加により着色を呈する着色領域を区画する封止部と、
前記着色領域内に配置されたエレクトロクロミック素子と、
前記封止部の前記エレクトロクロミック素子に対する外側に、前記第1基板側から前記第2基板側に向かって形成された第1穴部を埋めるように設けられた第1導電部と、前記第2基板側から前記第1基板側に向かって形成された第2穴部を埋めるように設けられた第2導電部と、を有するエレクトロクロミックシートであって、
前記エレクトロクロミック素子は、前記第1基板に、前記第2基板側に向かって、順次積層された、第1電極および第1エレクトロクロミック層と、
前記第2基板に、前記第1基板側に向かって、順次積層された、第2電極および第2エレクトロクロミック層と、
前記第1エレクトロクロミック層と前記第2エレクトロクロミック層との間に充填された電解質層とを備え、
前記第1エレクトロクロミック層は、酸化反応によって着色を呈する材料を主材料として含有し、
前記第2エレクトロクロミック層は、還元反応によって着色を呈する材料を主材料として含有しており、
前記第1電極は、前記第1基板と、前記封止部および前記第1導電部との間において、当該エレクトロクロミックシートの平面視で、前記着色領域から延伸して、前記第1導電部まで到達して、前記第1導電部に電気的に接続するようにパターニングして設けられ、
前記第2電極は、前記第2基板と、前記封止部および前記第2導電部との間において、当該エレクトロクロミックシートの平面視で、前記着色領域から延伸して、前記第2導電部まで到達して、前記第2導電部に電気的に接続するようにパターニングして設けられており、
前記第1導電部および前記第2導電部は、それぞれ、当該エレクトロクロミックシートの厚さ方向に沿った端部において、異なる位置で露出していることを特徴とするエレクトロクロミックシート。
【請求項2】
当該エレクトロクロミックシートの平面視で、前記第1導電部と前記エレクトロクロミック素子との間において、前記第1基板側から前記第2基板側に向かって形成された第3穴部を埋めるように設けられた第3導電部を備え、
前記第1電極は、さらに前記第3導電部に電気的に接続されている請求項1に記載のエレクトロクロミックシート。
【請求項3】
前記第1電極と、前記第1導電部および前記第3導電部との間には、これらを互いに電気的に接続する第1補助電極を備える請求項2に記載のエレクトロクロミックシート。
【請求項4】
前記第1穴部および前記第3穴部は、前記封止部を厚さ方向に貫通する貫通孔である請求項2または3に記載のエレクトロクロミックシート。
【請求項5】
当該エレクトロクロミックシートの平面視で、前記第2導電部と前記エレクトロクロミック素子との間において、前記第2基板側から前記第1基板側に向かって形成された第4穴部を埋めるように設けられた第4導電部を備え、
前記第2電極は、さらに前記第4導電部に電気的に接続されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のエレクトロクロミックシート。
【請求項6】
前記第2電極と、前記第2導電部および前記第4導電部との間には、これらを互いに電気的に接続する第2補助電極を備える請求項5に記載のエレクトロクロミックシート。
【請求項7】
前記第2穴部および前記第4穴部は、前記封止部を厚さ方向に貫通する貫通孔である請求項5または6に記載のエレクトロクロミックシート。
【請求項8】
前記第1導電部および前記第2導電部は、それぞれ独立して、その平均厚さが20μm以上100μm以下である請求項1ないし7のいずれか1項に記載のエレクトロクロミックシート。
【請求項9】
前記第1電極および前記第2電極は、それぞれ独立して、その平均厚さが50nm以上200nm以下である請求項1ないし8のいずれか1項に記載のエレクトロクロミックシート。
【請求項10】
湾曲形状とされた請求項1ないし9のいずれか1項に記載のエレクトロクロミックシートを、レンズ形状に対応して切り取られた切取物として備えることを特徴とする眼鏡用レンズ。
【請求項11】
請求項10に記載の眼鏡用レンズを備えることを特徴とする眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロクロミックシート、眼鏡用レンズおよび眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡、サングラスのようなアイウエアが備えるレンズとして、偏光性を有する偏光膜や、特定の波長領域の光を選択的に反射することで意匠性を付与することが可能なハーフミラー層を備える光学シートを、その表面に有するレンズが提案されている。
【0003】
すなわち、レンズに、目的とする光学特性を付与するために、かかる光学特性を有する光学シートを、その表面に有するものが提案されている。
【0004】
このような光学シートを表面に有するレンズは、例えば、平面視で平板状をなす光学シートを用意し、この光学シートの両面に保護フィルムを貼付した状態で、平面視で円形状等の所定の形状に、光学シートを個片化された個片化シートとして打ち抜く。その後、この個片化がなされた個片化シートに加熱下で熱曲げ加工を施すことで、熱曲げにより湾曲形状とされた、湾曲凸面と湾曲凹面とを備える湾曲シートとする。そして、この湾曲シートから、保護フィルムを剥離させた後に、湾曲形状とされた凹部を備える金型に、金型の凹部と湾曲シートの凸部とが当接するようにして、湾曲シートを吸着させた状態で、インサート射出成形法等を用いて、この湾曲シートの凹面に樹脂材料を主材料として構成される樹脂層(成形層)を形成することにより製造される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、これとは別に、電圧を印加することで、可逆的に酸化還元反応が起こり、可逆的に色が変化する現象をエレクトロクロミズムと言い、近年、このエレクトロクロミズムを示すエレクトロクロミック材料を用いたエレクトロクロミック素子が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
このエレクトロクロミック素子は、例えば、プラス電圧の印加により発色がなされ、マイナス電圧の印加により消色して透明となることから、エレクトロクロミック素子に対して、プラス電圧とマイナス電圧との印加の切り替えを行うことが可能なスイッチを設けることで、エレクトロクロミック素子における発色と消色とを、任意のタイミングで行い得るようになる。
【0007】
そこで、このエレクトロクロミック素子を、前述した光学シートに適用すること、すなわち、光学シートとして、エレクトロクロミック素子を備えるエレクトロクロミックシートを用いることで、眼鏡、サングラスのようなアイウエアを、スイッチのON/OFFの切り替えにより、このアイウエアが備えるレンズおいて、発色と消色とを、任意のタイミングで切り替えが可能なものとし得ることが考えられる。
【0008】
よって、前述した光学シートを用いたレンズの製造方法を適用して、光学シートとしてエレクトロクロミックシートを表面に有するレンズを製造する場合、そのレンズを歩留まり良く生産するには、個片化されたものとして打ち抜かれた個片化シートや、熱曲げにより湾曲形状とされた湾曲シートの状態で、このものが備えるエレクトロクロミック素子に、不具合(エラー)が生じているか否かを知ることが求められる。
【0009】
しかしながら、このエレクトロクロミックシートにおいて、現状では、レンズの製造途中で得られる、個片化シートや湾曲シートの状態で、これらが備えるエレクトロクロミック素子における不具合の発生の有無を、容易に知り得る構成とすることまで、考慮されていないのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009-294445号公報
【特許文献2】特開2016-45464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、エレクトロクロミズムを示すエレクトロクロミック材料を用いたエレクトロクロミック素子を備えるエレクトロクロミックシートを有するレンズを製造する際に、その製造途中において、エレクトロクロミック素子における不具合の発生の有無を容易に知ることができる構成をなしているエレクトロクロミックシート、かかるエレクトロクロミックシートを備える、信頼性に優れた眼鏡用レンズおよび眼鏡を優れた生産性をもって提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的は、下記(1)~(11)に記載の本発明により達成される。
(1) 第1基板と、
前記第1基板と対向して配置された第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、電圧の印加により着色を呈する着色領域を区画する封止部と、
前記着色領域内に配置されたエレクトロクロミック素子と、
前記封止部の前記エレクトロクロミック素子に対する外側に、前記第1基板側から前記第2基板側に向かって形成された第1穴部を埋めるように設けられた第1導電部と、前記第2基板側から前記第1基板側に向かって形成された第2穴部を埋めるように設けられた第2導電部と、を有するエレクトロクロミックシートであって、
前記エレクトロクロミック素子は、前記第1基板に、前記第2基板側に向かって、順次積層された、第1電極および第1エレクトロクロミック層と、
前記第2基板に、前記第1基板側に向かって、順次積層された、第2電極および第2エレクトロクロミック層と、
前記第1エレクトロクロミック層と前記第2エレクトロクロミック層との間に充填された電解質層とを備え、
前記第1エレクトロクロミック層は、酸化反応によって着色を呈する材料を主材料として含有し、
前記第2エレクトロクロミック層は、還元反応によって着色を呈する材料を主材料として含有しており、
前記第1電極は、前記第1基板と、前記封止部および前記第1導電部との間において、当該エレクトロクロミックシートの平面視で、前記着色領域から延伸して、前記第1導電部まで到達して、前記第1導電部に電気的に接続するようにパターニングして設けられ、
前記第2電極は、前記第2基板と、前記封止部および前記第2導電部との間において、当該エレクトロクロミックシートの平面視で、前記着色領域から延伸して、前記第2導電部まで到達して、前記第2導電部に電気的に接続するようにパターニングして設けられており、
前記第1導電部および前記第2導電部は、それぞれ、当該エレクトロクロミックシートの厚さ方向に沿った端部において、異なる位置で露出していることを特徴とするエレクトロクロミックシート。
【0013】
(2) 当該エレクトロクロミックシートの平面視で、前記第1導電部と前記エレクトロクロミック素子との間において、前記第1基板側から前記第2基板側に向かって形成された第3穴部を埋めるように設けられた第3導電部を備え、
前記第1電極は、さらに前記第3導電部に電気的に接続されている上記(1)に記載のエレクトロクロミックシート。
【0014】
(3) 前記第1電極と、前記第1導電部および前記第3導電部との間には、これらを互いに電気的に接続する第1補助電極を備える上記(2)に記載のエレクトロクロミックシート。
【0015】
(4) 前記第1穴部および前記第3穴部は、前記封止部を厚さ方向に貫通する貫通孔である上記(2)または(3)に記載のエレクトロクロミックシート。
【0016】
(5) 当該エレクトロクロミックシートの平面視で、前記第2導電部と前記エレクトロクロミック素子との間において、前記第2基板側から前記第1基板側に向かって形成された第4穴部を埋めるように設けられた第4導電部を備え、
前記第2電極は、さらに前記第4導電部に電気的に接続されている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のエレクトロクロミックシート。
【0017】
(6) 前記第2電極と、前記第2導電部および前記第4導電部との間には、これらを互いに電気的に接続する第2補助電極を備える上記(5)に記載のエレクトロクロミックシート。
【0018】
(7) 前記第2穴部および前記第4穴部は、前記封止部を厚さ方向に貫通する貫通孔である上記(5)または(6)に記載のエレクトロクロミックシート。
【0019】
(8) 前記第1導電部および前記第2導電部は、それぞれ独立して、その平均厚さが20μm以上100μm以下である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のエレクトロクロミックシート。
【0020】
(9) 前記第1電極および前記第2電極は、それぞれ独立して、その平均厚さが50nm以上200nm以下である上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のエレクトロクロミックシート。
【0021】
(10) 湾曲形状とされた上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のエレクトロクロミックシートを、レンズ形状に対応して切り取られた切取物として備えることを特徴とする眼鏡用レンズ。
(11) 上記(10)に記載の眼鏡用レンズを備えることを特徴とする眼鏡。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、エレクトロクロミック素子を備えるエレクトロクロミックシートにおいて、エレクトロクロミック素子が備える第1電極および第2電極に電気的に接続された第1導電部および第2導電部は、それぞれ、エレクトロクロミックシートの厚さ方向に沿った端部において、異なる位置で露出している。そのため、眼鏡用レンズの製造の途中において、第1導電部と第2導電部とを介して、第1電極と第2電極との間に電圧を印加することで、エレクトロクロミックシートの内部に備える、エレクトロクロミック素子における不具合の発生の有無を、容易に知ることができる。すなわち、エレクトロクロミック素子の検査を、眼鏡用レンズの製造の途中において、容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明のエレクトロクロミックシートを湾曲形状とした湾曲シートを有するレンズを備えるサングラスの実施形態を示す斜視図である。
【
図2】本発明のエレクトロクロミックシートを湾曲形状とした湾曲シートを有するレンズの製造方法を説明するための模式図である。
【
図3】本発明のエレクトロクロミックシートの実施形態を示す平面図である。
【
図4】
図3に示すエレクトロクロミックシートの主要部分におけるA-A線縦断面図である。
【
図5】湾曲シートを有するレンズを示す平面図である。
【
図6】
図5に示すレンズの主要部分におけるB-B線縦断面図である。
【
図7】
図3に示すエレクトロクロミックシートおよび
図5に示すレンズが備えるエレクトロクロミック素子を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のエレクトロクロミックシート、眼鏡用レンズおよび眼鏡を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
本発明のエレクトロクロミックシートは、第1基板と、前記第1基板と対向して配置された第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、電圧の印加により着色を呈する着色領域を区画する封止部と、前記着色領域内に配置されたエレクトロクロミック素子と、前記封止部の前記エレクトロクロミック素子に対する外側に、前記第1基板側から前記第2基板側に向かって形成された第1穴部を埋めるように設けられた第1導電部と、前記第2基板側から前記第1基板側に向かって形成された第2穴部を埋めるように設けられた第2導電部と、を有するものであり、前記エレクトロクロミック素子は、前記第1基板に、前記第2基板側に向かって、順次積層された、第1電極および第1エレクトロクロミック層と、前記第2基板に、前記第1基板側に向かって、順次積層された、第2電極および第2エレクトロクロミック層と、前記第1エレクトロクロミック層と前記第2エレクトロクロミック層との間に充填された電解質層とを備え、前記第1エレクトロクロミック層は、酸化反応によって着色を呈する材料を主材料として含有し、前記第2エレクトロクロミック層は、還元反応によって着色を呈する材料を主材料として含有しており、前記第1電極は、前記第1基板と、前記封止部および前記第1導電部との間において、当該エレクトロクロミックシートの平面視で、前記着色領域から延伸して、前記第1導電部まで到達して、前記第1導電部に電気的に接続するようにパターニングして設けられ、前記第2電極は、前記第2基板と、前記封止部および前記第2導電部との間において、当該エレクトロクロミックシートの平面視で、前記着色領域から延伸して、前記第2導電部まで到達して、前記第2導電部に電気的に接続するようにパターニングして設けられており、前記第1導電部および前記第2導電部は、それぞれ、当該エレクトロクロミックシートの厚さ方向に沿った端部において、異なる位置で露出している。
【0026】
このように、本発明では、エレクトロクロミック素子を備えるエレクトロクロミックシートにおいて、エレクトロクロミック素子が備える第1電極および第2電極に電気的に接続された第1導電部および第2導電部は、それぞれ、エレクトロクロミックシートの厚さ方向に沿った端部において、異なる位置で露出している。そのため、本発明のエレクトロクロミックシートを用いた、眼鏡用レンズの製造の途中において、第1導電部と第2導電部とを介して、第1電極と第2電極との間に電圧を印加することで、エレクトロクロミックシートが、その内部に備える、エレクトロクロミック素子における不具合の発生の有無を、容易に知ることができる。
【0027】
本発明のエレクトロクロミックシートを用いて眼鏡用レンズを製造する際に、加熱下における熱曲げ加工を施すことでエレクトロクロミックシートが湾曲形状とされた湾曲シートは、例えば、眼鏡の一種であるサングラスが備えるレンズ(眼鏡用レンズ)が有する湾曲状をなす光学シートとして、サングラスが備えるスイッチのON/OFFの切り替えにより、このレンズを、発色と消色とを、任意のタイミングで切り替えが可能なものとするために使用される。そこで、以下では、まず、本発明のエレクトロクロミックシートを説明するのに先立って、このサングラスについて説明する。
【0028】
<サングラス>
図1は、本発明のエレクトロクロミックシートを湾曲形状とした湾曲シートを有するレンズを備えるサングラスの実施形態を示す斜視図である。なお、
図1において、サングラスを使用者の頭部に装着した際に、レンズの使用者の目側の面を裏側の面と言い、その反対側の面を表側の面と言う。
【0029】
サングラス100は、
図1に示すように、フレーム20と、レンズ30(眼鏡用レンズ)とを備えている。
【0030】
なお、本明細書中において、「レンズ(眼鏡用レンズ)」とは、集光機能を有するものと、集光機能を有していないものとの双方を含むこととする。
【0031】
フレーム20は、使用者の頭部に装着され、レンズ30を使用者の目の前方近傍に配置させるためのものである。
【0032】
このフレーム20は、リム部21と、ブリッジ部22と、テンプル部23と、ノーズパッド部24とを有している。
【0033】
リム部21は、リング状をなし、右目および左目にそれぞれ対応して1つずつ設けられており、内側にレンズ30が装着される。これにより、使用者は、レンズ30を介して、外部の情報を視認することができる。
【0034】
このレンズ30は、本発明のエレクトロクロミックシート150を、熱曲げ加工を施すことで湾曲形状とされた湾曲シート120を備え、エレクトロクロミックシート150が有するエレクトロクロミック素子60への電圧の印加の切り替えにより、任意のタイミングにおける発色と消色とが、可逆的に行われるものである。そして、レンズ30は、リム部21の内側に装着した際に、リム部21にブリッジ部22およびテンプル部23が連結される連結部に対応する位置に、それぞれ、接続端子を備えており、この接続端子が、後述するテンプル部23が備えるスイッチ25および電池26に、配線を介して、電気的に接続されている。
【0035】
また、ブリッジ部22は、棒状をなし、使用者の頭部に装着された際に、使用者の鼻の上部の前方に位置して、一対のリム部21を連結する。
【0036】
テンプル部23は、つる状をなし、各リム部21のブリッジ部22が連結されている位置の反対側における縁部に連結されている。このテンプル部23は、使用者の頭部に装着する際に、使用者の耳に掛けられる。
【0037】
このテンプル部23は、その表面で操作可能に露出するスイッチ25と、内蔵された電池26とを有している。スイッチ25と電池26とは、配線を介して、レンズ30が備える接続端子に、電気的に接続されている。これにより、レンズ30が備える湾曲シート120が有するエレクトロクロミック素子60に対して、スイッチ25の操作によって、プラス電圧およびマイナス電圧の印加、さらには電圧の非印加の切り替えを行うことができる。
【0038】
ノーズパッド部24は、サングラス100を使用者の頭部に装着する際に、各リム部21における使用者の鼻に対応する縁部に設けられ、使用者の鼻に当接し、このとき使用者の鼻の当接部に対応した形状をなしている。これにより、装着状態を安定的に維持することができる。
【0039】
フレーム20を構成する各部の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種金属材料や、各種樹脂材料等を用いることができる。なお、フレーム20の形状は、使用者の頭部に装着し得るものであれば、図示のものに限定されない。
【0040】
レンズ30(本発明の眼鏡用レンズ)は、各リム部21に、それぞれ装着されている。このレンズ30は、光透過性を有し、全体形状が外側に向って湾曲した板状をなす部材であり、樹脂層35(成形層)と、本発明のエレクトロクロミックシート150が、加熱下における熱曲げ加工により、湾曲凸面と湾曲凹面とを備える湾曲形状とされた湾曲シート120とを有している。
【0041】
樹脂層35は、光透過性を有し、レンズの裏側に位置し、レンズ30に、集光機能を付与する際には、この樹脂層35が集光機能を有している。
【0042】
樹脂層35の構成材料としては、光透過性を有する樹脂材料であれば、特に限定されないが、例えば、各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のような各種硬化性樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられるが、中でも、後述する湾曲シート120が備える第1基板11を主材料として構成する樹脂材料と、同種もしくは同一であるのが好ましい。これにより、樹脂層35と湾曲シート120との密着性の向上を図ることができる。また、樹脂層35と湾曲シート120(第1基板11)との間における屈折率差を低く設定することができるため、樹脂層35と湾曲シート120との間において、光が乱反射されるのを的確に抑制または防止し得ることから、優れた光透過率をもって、樹脂層35と湾曲シート120との間で光を透過させることができる。なお、樹脂層35と湾曲シート120が備える第1基板11との間における屈折率差は、0.2以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましい。これにより、前記屈折率差を低く設定することで得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
【0044】
樹脂層35の厚さは、特に限定されず、例えば、0.5mm以上5.0mm以下であるのが好ましく、1.0mm以上3.0mm以下であるのがより好ましい。これにより、レンズ30における、比較的高い強度と、軽量化との両立を図ることができる。
【0045】
湾曲シート120は、樹脂層35の外側の面、すなわち、湾曲凸面上に、かかる形状に対応して湾曲形状をなして接合され、湾曲形状とされたエレクトロクロミックシート150で構成されるものである。この湾曲シート120をレンズ30が備えることにより、サングラス100に、エレクトロクロミックシート150が有するエレクトロクロミック素子60への電圧の印加の切り替えにより、任意のタイミングにおける発色と消色とが、可逆的に行われる機能が付与される。このように、湾曲シート120が、本発明のエレクトロクロミックシート150を湾曲形状としたもので構成されるが、エレクトロクロミックシート150の詳細な説明は、後に行うこととする。
【0046】
なお、前述の通り、サングラス100が備えるレンズ30は、集光機能を有するものであっても、集光機能を有していないもののいずれであってもよい。
【0047】
また、サングラス100は、前述のように、フレーム20を有するものの他、ファッション性、軽量性等の観点から、フレームのない構成をなすものであってもよい。
【0048】
さらに、本実施形態では、レンズ30を備える眼鏡を、サングラス100に適用することとしたが、これに限定されず、この眼鏡は、例えば、度付き眼鏡、伊達メガネ、風雨、塵芥、薬品等から眼を保護するゴーグル等であってもよい。
【0049】
以上のような構成をなすサングラス100(眼鏡)において、サングラス100が備えるレンズ30は、例えば、以下に示すような、レンズ30の製造方法を経ることで製造される。
【0050】
<レンズの製造方法>
図2は、本発明のエレクトロクロミックシートを湾曲形状とした湾曲シートを有するレンズの製造方法を説明するための模式図、
図3は、本発明のエレクトロクロミックシートの実施形態を示す平面図、
図4は、
図3に示すエレクトロクロミックシートの主要部分におけるA-A線縦断面図、
図5は、湾曲シートを有するレンズを示す平面図、
図6は、
図5に示すレンズの主要部分におけるB-B線縦断面図、
図7は、
図3に示すエレクトロクロミックシートおよび
図5に示すレンズが備えるエレクトロクロミック素子を示す縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、
図2、
図4、
図6、
図7の上側および
図3、
図5の紙面手前側を「上」、
図2、
図4、
図6、
図7の下側および
図3、
図5の紙面奥側を「下」と言う。また、
図6において、湾曲シート120は、実際には湾曲状をなしているが、説明の便宜上、平板状をなすものとして記載している。
【0051】
以下、本発明のエレクトロクロミックシート150曲形状とした湾曲シート120を備えるレンズ30の製造方法の各工程を詳述する。
【0052】
[1]まず、第1基板11と第2基板12と封止部55とエレクトロクロミック素子60とを有し、封止部55により区画された着色領域70に対応して設けられた複数のエレクトロクロミック素子60が第1基板11と第2基板12との間に挟持された素子封止連結シート110を用意する。この素子封止連結シート110において、複数のエレクトロクロミック素子60は、第1基板11と第2基板12との間で、封止部55を介して連結され第1基板11と第2基板12と封止部55とで封止されている。
【0053】
そして、この素子封止連結シート110の両面に、保護フィルム50(マスキングテープ)を貼付することで、素子封止連結シート110の両面に保護フィルム50が貼付された連結シート積層体210を得る(
図2(a)参照)。
【0054】
[2]次に、
図2(b)に示すように、用意した連結シート積層体210を、すなわち、素子封止連結シート110の両面に保護フィルム50を貼付した状態で、素子封止連結シート110を、各エレクトロクロミック素子60に対応して、その厚さ方向に打ち抜くことで、連結シート積層体210が平面視で円形状をなすものに個片化された、素子積層体250を得る。すなわち、両面に保護フィルム50を貼付した状態をなして、各エレクトロクロミック素子60に対応して、円形状に個片化されたエレクトロクロミックシート150を得る(
図3、
図4参照)。
【0055】
[3]次に、
図2(c)に示すように、円形状に個片化された素子積層体250に対して、加熱下で熱曲げ加工を施すことで、素子積層体250を、一方の面側が湾曲凹面とされ、他方の面側が湾曲凸面とされた湾曲形状をなす湾曲素子積層体220とする。これにより、平板状をなすエレクトロクロミックシート150を、両面に保護フィルム50が貼付された状態で、湾曲形状をなす湾曲シート120とすることができる。
【0056】
この熱曲げ加工は、通常、プレス成形または真空成形により実施される。
この際の素子積層体250(エレクトロクロミックシート150)の加熱温度(成形温度)は、後述の通り、本実施形態では、エレクトロクロミックシート150が基板11、12を備え、基板11、12の溶融または軟化温度を考慮して、好ましくは110℃以上170℃以下程度、より好ましくは130℃以上160℃以下程度に設定される。加熱温度をかかる範囲内に設定することにより、エレクトロクロミックシート150の変質・劣化を防止しつつ、エレクトロクロミックシート150を軟化または溶融状態として、エレクトロクロミックシート150を確実に熱曲げして、湾曲形状をなす湾曲シート120とすることができる。
【0057】
[4]次に、熱曲げがなされた湾曲シート120から、保護フィルム50を剥離させる。その後、
図2(d)に示すように、湾曲形状とされた湾曲凹面を備える金型40に、金型40の湾曲凹面と湾曲シート120の湾曲凸面とが当接するようにして、湾曲シート120を吸着させた状態で、例えば、インサート射出成形法等を用いて、この湾曲シート120の湾曲凹面に、樹脂材料を主材料として構成される樹脂層35(成形層)を射出成形する。すなわち、溶融状態とされた樹脂層35の構成材料を、湾曲シート120の湾曲凹面に、接触させた状態で冷却して固化させることにより、湾曲シート120の湾曲凹面に、接着剤層等を介することなく、樹脂層35を、直接、接触させた状態で成形する。これにより、熱曲げがなされた湾曲シート120と、樹脂層35とを備えるレンズ30(本発明の眼鏡用レンズ)が製造される。
【0058】
この樹脂層35を射出成形する際における、溶融状態とするための樹脂層35の構成材料の加熱温度(成形温度)は、樹脂層35の構成材料の種類に応じて適宜設定されるが、樹脂層35の構成材料が、後述する湾曲シート120が備える第1基板11の構成材料と、同種もしくは同一である場合、好ましくは180℃以上320℃以下程度、より好ましくは230℃以上300℃以下程度に設定される。加熱温度をかかる範囲内に設定することにより、湾曲シート120の湾曲凹面に、溶融状態とされた樹脂層35の構成材料を、確実に供給することができる。
【0059】
また、インサート射出成形法の中でも、射出圧縮成形法が好ましく用いられる。射出圧縮成形法は、金型40の中に樹脂層35を形成するための樹脂材料を低圧で射出した後、金型を40高圧で閉じてこの樹脂材料に圧縮力を加える方法をとるため、成形体としての樹脂層35ひいてはレンズ30に成形歪みや成形時の樹脂分子の局所的配向に起因する光学的異方性が生じにくいことから好ましく用いられる。また、樹脂材料に対して均一に加わる金型圧縮力を制御することにより、一定比容で樹脂材料を冷却することができるので、寸法精度の高い樹脂層35を得ることができる。
【0060】
そして、製造されたレンズ30を、
図5に示すように、その縁部を切削するトリミング加工を施すことで、その形状がリム部21の内側の形状に合致する切取物とされ、その後、このレンズ30(切取物)を、リム部21の内側に装着することで、サングラス100として使用される。
【0061】
以上のような工程を経る、レンズ30の製造方法において、前記工程[2]で、素子封止連結シート110を、円形状に個片化することで得られるエレクトロクロミックシート150は、前記工程[3]におけるエレクトロクロミックシート150に対する熱曲げ加工による湾曲シート120の形成や、前記工程[4]におけるエレクトロクロミックシート150が湾曲形状とされた湾曲シート120の湾曲凹面に対する樹脂層35の形成により、湾曲形状とされたり、熱履歴を経ることに起因して、エレクトロクロミックシート150が、その内部に備えるエレクトロクロミック素子60に不具合(エラー)が生じることがある。そのため、前記工程[3]の後、および前記工程[4]の後に、エレクトロクロミックシート150が備えるエレクトロクロミック素子60における不具合の有無を知ること、すなわち、エレクトロクロミック素子60の検査を容易に実施することができれば、サングラス100を歩留まりよく生産することができる。
【0062】
かかる要求に対して、本発明のエレクトロクロミックシート150は、エレクトロクロミック素子60が備える第1電極13および第2電極14に電気的に接続された第1導電部17および第2導電部18は、それぞれ、エレクトロクロミックシート150の厚さ方向に沿った端部において、異なる位置で露出している。
【0063】
したがって、前記工程[3]の後や、前記工程[4]の後に、エレクトロクロミックシート150の厚さ方向に沿った端部で露出する第1導電部17と第2導電部18とを介して、第1電極13と第2電極14との間に電圧を印加することで、エレクトロクロミックシート150が、その内部に備える、エレクトロクロミック素子60の検査を容易に実施することができる。よって、エレクトロクロミックシート150の内部に設けられたエレクトロクロミック素子60における不具合の発生の有無を、容易に知ることができる。そのため、レンズ30およびサングラス100を歩留まりよく生産すること、すなわち、信頼性に優れたレンズ30およびサングラス100を優れた生産性をもって生産することができる。以下、このエレクトロクロミックシート150について詳述する。
【0064】
<エレクトロクロミックシート>
エレクトロクロミックシート150は、本実施形態では、
図3、
図4に示すように、第1基板11と、第2基板12と、封止部55と、エレクトロクロミック素子60と、第1導電部17と、第2導電部18と、第3導電部51と、第4導電部52と、第1補助電極15と、第2補助電極16と、を備えている。
【0065】
以下、このエレクトロクロミックシート150を構成する各部材について説明する。
第1基板11は、エレクトロクロミック素子60を含む他の部材を支持するとともに、第1基板11と、第2基板12との間に、エレクトロクロミック素子60を含む他の部材を配置させる、エレクトロクロミックシート150の最外層を構成し、エレクトロクロミック素子60等を保護する保護層としての機能を有している。
【0066】
エレクトロクロミックシート150において、第1基板11と第2基板12とが、エレクトロクロミックシート150の最外層を構成することで、エレクトロクロミック素子60を含む他の部材は、エレクトロクロミックシート150の表面に露出していない。そのため、このエレクトロクロミックシート150を、湾曲形状をなすものとした湾曲シート120をレンズ30が備えるものに適用した際に、エレクトロクロミック素子60に砂ほこりや、さらには雨等が衝突したり、エレクトロクロミック素子60が他の部材等により摩耗されるのを、確実に防止することができる。したがって、この衝突や摩擦により、エレクトロクロミック素子60の特性に悪影響を及ぼすのを確実に防止することができる。
【0067】
この第1基板11は、透明性を有する樹脂材料を主材料で構成されるものであれば、特に限定されないが、熱可塑性を有する透明樹脂(ベース樹脂)を主材料として含有するものであることが好ましい。
【0068】
この透明樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアセタール系樹脂等の透明性を備える樹脂が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂であるのが好ましく、特にポリカーボネート系樹脂であるのが好ましい。ポリカーボネート系樹脂は、透明性(透光性)や剛性等の機械的強度に富み、さらに耐熱性も高いため、透明樹脂にポリカーボネート系樹脂を用いることで、第1基板11における透明性や第1基板11の耐衝撃性、耐熱性を向上させることができる。
【0069】
このポリカーボネート系樹脂としては、各種の樹脂を用いることができるが、中でも、芳香族系ポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、その主鎖に芳香族環を備えており、これにより、より優れた強度を有する第1基板11を得ることができる。
【0070】
この芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、例えば、ビスフェノールとホスゲンとの界面重縮合反応、ビスフェノールとジフェニルカーボネートとのエステル交換反応等により合成される。
【0071】
ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAや、下記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノール(変性ビスフェノール)等が挙げられる。
【0072】
【化1】
(式(1A)中、Xは、炭素数1~18のアルキル基、芳香族基または環状脂肪族基であり、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基であり、mおよびnは、それぞれ0~4の整数であり、pは、繰り返し単位の数である。)
【0073】
なお、前記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノールとしては、具体的には、例えば4,4’-(ペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ペンタン-3,3-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ブタン-2,2-ジイル)ジフェノール、1,1’-(シクロヘキサンジイル)ジフェノール、2-シクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,3-ビスシクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
特に、ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールに由来する骨格を有するビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を主成分とするのが好ましい。かかるビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を用いることにより、第1基板11は、さらに優れた強度を発揮する。
【0075】
また、第1基板11は、光透過性を有していれば、その色は、無色であっても、赤色、青色、黄色等、如何なる色であってもよい。
【0076】
これらの色の選択は、第1基板11に染料または顔料を含有させることにより可能になる。この染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、および塩基性染料等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
染料の具体例としては、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクトブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35等が挙げられる。
【0078】
第1基板11は、必要に応じて、上述した、透明樹脂、染料または顔料の他に、さらに、酸化防止剤、フィラー、可塑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0079】
また、この第1基板11は、延伸されたものであってもよいし、非延伸のものであってもよい。
【0080】
さらに、第1基板11の波長589nmでの屈折率は、1.3以上1.8以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。第1基板11の屈折率n1を上記数値範囲とすることにより、スイッチ25のON/OFFの切り替えにより、発色(着色)と消色とを、任意のタイミングで切り替えることができるエレクトロクロミック素子60としての機能を阻害するのを、的確に抑制または防止することができる。
【0081】
第1基板11は、その平均厚さが好ましくは0.1mm以上10.0mm以下、より好ましくは0.3mm以上5.0mm以下に設定される。第1基板11の平均厚さがかかる範囲内に設定されることで、エレクトロクロミックシート150の薄型化を図りつつ、エレクトロクロミックシート150に撓みが生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0082】
第2基板12は、第1基板11と対向して配置されており、エレクトロクロミック素子60を含む他の部材を支持するとともに、第1基板11と第2基板12との間に、エレクトロクロミック素子60を含む他の部材を配置させる、エレクトロクロミックシート150の最外層を構成し、エレクトロクロミック素子60を保護する保護層としての機能を有している。
【0083】
エレクトロクロミックシート150において、第1基板11と第2基板12とが、エレクトロクロミックシート150の最外層を構成することで、エレクトロクロミック素子60を含む他の部材は、エレクトロクロミックシート150の表面に露出していない。そのため、このエレクトロクロミックシート150を、湾曲形状をなすものとした湾曲シート120をレンズ30が備えるものに適用した際に、エレクトロクロミック素子60に砂ほこりや、さらには雨等が衝突したり、エレクトロクロミック素子60が他の部材等により摩耗されるのを、確実に防止することができる。したがって、この衝突や摩擦により、エレクトロクロミック素子60の特性に悪影響を及ぼすのを確実に防止することができる。
【0084】
また、第2基板12を構成する構成材料としては、第1基板11で挙げたのと同様のもので構成することができる。なお、第2基板12の構成材料と、第1基板11の構成材料とは、同一(同種)のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0085】
さらに、この第2基板12は、第1基板11と同様に、延伸されたものであってもよいし、非延伸のものであってもよい。
【0086】
また、第2基板12の波長589nmでの屈折率は、第1基板11の屈折率n1と、同じであってもよく、異なっていてもよいが、1.3以上1.8以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。第2基板12の屈折率n2を上記数値範囲とすることにより、スイッチ25のON/OFFの切り替えにより、発色と消色とを、任意のタイミングで切り替えることができるエレクトロクロミック素子60としての機能を阻害するのを、的確に抑制または防止することができる。
【0087】
また、第2基板12は、その平均厚さが、第1基板11と、同じであってもよく、異なっていてもよいが、例えば、0.1mm以上10.0mm以下であるのが好ましく、0.3mm以上5.0mm以下であるのがより好ましい。第2基板12の平均厚さがかかる範囲内に設定されることで、エレクトロクロミックシート150の薄型化を図りつつ、エレクトロクロミックシート150に撓みが生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0088】
エレクトロクロミック素子60は、スイッチ25のON/OFFの切り替えにより、発色(着色)と消色とを、任意のタイミングで切り替え得る発光素子であり、封止部55により区画された着色領域70に設けられている。
【0089】
このエレクトロクロミック素子60は、本実施形態では、第1基板11に、第2基板12側に向かって、順次積層された、第1電極13および第1エレクトロクロミック層63と、第2基板12に、第1基板11側に向かって、順次積層された、第2電極14および第2エレクトロクロミック層64と、第1エレクトロクロミック層63と第2エレクトロクロミック層64との間に充填された電解質層65とを備えている(
図7参照)。
【0090】
第1電極13および第2電極14は、それぞれ、スイッチ25の切り替えにより、エレクトロクロミック素子60にプラス電圧またはマイナス電圧を印加した際に、第1電極13と第2電極14との間に電子を供給するか、または、第1電極13と第2電極14との間から電子を受け取る電極である。
【0091】
これら第1電極13および第2電極14の構成材料としては、透明性を有する導電材料であれば、特に限定されるものではないが、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、FTO(F-doped Tin Oxide)、ATO(Antimony Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In2O3、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0092】
第1電極13および第2電極14は、その平均厚さが、エレクトロクロミック層63、64の酸化還元反応に必要な電気抵抗値が得られるように調整され、例えば、第1電極13および第2電極14の構成材料としてITOを用いた場合には、それぞれ独立して、好ましくは50nm以上200nm以下程度、より好ましくは100nm以上150nm以下程度に設定される。
【0093】
第1エレクトロクロミック層63は、酸化反応によって着色を呈する材料を主材料として含有し、これにより、着色がなされる層である。
【0094】
この第1エレクトロクロミック層63に、主材料として含まれる、酸化反応によって着色を呈する材料としては、特に限定されず、例えば、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物を重合した重合物、ビスアクリダン化合物、プルシアンブルー型錯体、および酸化ニッケルが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0095】
トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物を重合した重合物としては、例えば、特開2016-45464号公報、特開2020-138925号公報等に記載のものが挙げられる。
【0096】
また、プルシアンブルー型錯体としては、例えば、Fe(III)4[Fe(II)(CN)6]3からなる材料が挙げられる。
【0097】
これらの中でも、定電圧で動作可能であり、繰返し耐久性に優れ、高コントラストなエレクトロクロミック素子が得られる点から、特に、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物を重合した重合物が好ましく用いられる。
【0098】
なお、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物は、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物とは異なる他のラジカル重合性化合物を含み、かかる組成物を重合した重合物は、これらのラジカル重合性化合物が架橋した架橋物で構成されていてもよい。
【0099】
このような第1エレクトロクロミック層63の平均厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上30μm以下程度であるのが好ましく、0.4μm以上10μm以下程度であるのがより好ましい。
【0100】
第2エレクトロクロミック層64は、還元反応によって透明から着色を呈するエレクトロクロミック材料を主材料として含有し、これにより、着色がなされる層である。
【0101】
第2エレクトロクロミック層64は、第1エレクトロクロミック層63と同じ色調のレクトロクロミック材料を用いることが好ましい。これにより、最大発色濃度の向上が図られ、その結果、コントラストを改善することできる。
【0102】
また、これに対して、異なる色調の材料を用いた場合には、混色が可能となる。また、第1電極13と第2電極14との両極側で、酸化反応と還元反応とにより着色させることで、エレクトロクロミック素子60の駆動電圧を効果的に低減し得ることから、エレクトロクロミック素子60の繰返し耐久性の向上が図れる。
【0103】
第2エレクトロクロミック層64に、主材料として含まれる、還元反応によって着色を呈する材料としては、特に限定されず、例えば、無機エレクトロクロミック化合物、有機エレクトロクロミック化合物、導電性ポリマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0104】
無機エレクトロクロミック化合物としては、例えば、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化イリジウム、酸化チタンなどが挙げられ、中でも、酸化タングステンが好ましい。酸化タングステンは、還元電位が低いことに基づいて、発消色電位が低く、さらに、無機材料であるため耐久性に優れることから、好ましく用いられる。
【0105】
また、有機エレクトロクロミック化合物としては、例えば、アゾベンゼン系、アントラキノン系、ジアリールエテン系、ジヒドロプレン系、ジピリジン系、スチリル系、スチリルスピロピラン系、スピロオキサジン系、スピロチオピラン系、チオインジゴ系、テトラチアフルバレン系、テレフタル酸系、トリフェニルメタン系、トリフェニルアミン系、ナフトピラン系、ビオロゲン系、ピラゾリン系、フェナジン系、フェニレンジアミン系、フェノキサジン系、フェノチアジン系、フタロシアニン系、フルオラン系、フルギド系、ベンゾピラン系、メタロセン系等の低分子系有機エレクトロクロミック化合物などが挙げられ、中でも、ビオロゲン系化合物、ジピリジン系化合物が好ましい。これらの化合物は、発消色電位が低く、良好な色値を示すことから好ましく、用いられる。
【0106】
ビオロゲン系化合物としては、例えば、特許第3955641号公報、特開2007-171781号公報等に記載のものが挙げられる。また、ジピリジン系化合物としては、例えば、特開2007-171781号公報、特開2008-116718号公報等に記載のものが挙げられる。
【0107】
さらに、導電性ポリマーとしては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、またはこれらの誘導体等が挙げられる。
【0108】
このような第2エレクトロクロミック層64の平均厚さは、特に限定されないが、0.2μm以上5.0μm以下程度であるのが好ましく、1.0μm以上4.0μm以下程度であるのがより好ましい。前記平均厚さが、0.2μm未満であると、エレクトロクロミック材料の種類によっては、発色濃度が得にくくなるおそれがあり、5.0μmを超えると、製造コストが増大すると共に、エレクトロクロミック材料の種類によっては、着色によって視認性が低下するおそれがある。
【0109】
電解質層65は、第1エレクトロクロミック層63と第2エレクトロクロミック層64との間に充填され、イオン電導性を有する電解質を含有するものである。
【0110】
この電解質としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩や酸類、アルカリ類の支持塩等が挙げられ、具体的には、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3COO、KCl、NaClO3、NaCl、NaBF4、NaSCN、KBF4、Mg(ClO4)2、Mg(BF4)2等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0111】
これらの他、電解質の材料としては、イオン性液体を用いることもできる。このイオン性液体の中でも、有機のイオン性液体は、室温を含む幅広い温度領域で液体を示す分子構造を有していることから、取り扱いが容易であるため好ましく用いられる。
【0112】
有機のイオン性液体の分子構造として、カチオン成分としては、例えば、N,N-ジメチルイミダゾール塩、N,N-メチルエチルイミダゾール塩、N,N-メチルプロピルイミダゾール塩等のイミダゾール誘導体;N,N-ジメチルピリジニウム塩、N,N-メチルプロピルピリジニウム塩等のピリジニウム誘導体;トリメチルプロピルアンモニウム塩、トリメチルヘキシルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム系等が挙げられる。また、アニオン成分としては、大気中での安定性を考慮して、フッ素を含んだ化合物を用いることが好ましく、例えば、BF4
-、CF3SO3
-、PF4
-、(CF3SO2)2N-等が挙げられる。
【0113】
このような電解質の材料としては、カチオン成分とアニオン成分とを任意に組み合わせたイオン性液体であることが好ましい。
【0114】
イオン性液体は、光重合性モノマー、オリゴマー、および液晶材料のいずれかに直接溶解させてもよい。なお、これらの材料に対する溶解性が悪い場合には、少量の溶媒に溶解させた溶液を得た後に、この溶液を光重合性モノマー、オリゴマー、および液晶材料のいずれかと混合することで溶解させてもよい。
【0115】
溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ-ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2-ジメトキシエタン、1,2-エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類、またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0116】
第1エレクトロクロミック層63と第2エレクトロクロミック層64との間に、電解質層65として、充填される電解質は、低粘性の液体である場合の他、例えば、ゲル状や高分子架橋型、液晶分散型等の様々な形態をとることが可能である。そして、これらの中でも、電解質は、ゲル状、固体状に形成することが好ましい。これにより、エレクトロクロミック素子60の素子強度向上や、信頼性向上等を図ることができる。
【0117】
電解質層65を、固体状をなすものとする方法としては、例えば、電解質と溶媒とを含む液体をポリマー樹脂中に保持する方法が好ましい。これにより、電解質層65の高いイオン伝導度と固体強度との双方を得ることができる。また、ポリマー樹脂としては、例えば、光硬化性樹脂であることが好ましい。これにより、熱重合や、溶媒の気化により固体状をなす電解質層65を得る場合と比較して、低温かつ短時間で、固体状をなす電解質層65ひてはエレクトロクロミック素子60を得ることができる。
【0118】
電解質層65の平均厚さは、特に限定されないが、好ましくは20μm以上100μm以下程度、より好ましくは40μm以上80μm以下程度に設定される。
【0119】
なお、第1電極13と第2電極14との間における各層の間には、例えば、絶縁性多孔質層、保護層等の中間層が設けられていてもよい。
【0120】
エレクトロクロミック素子60を、上記のような構成のものとすることで、スイッチ25のON/OFFの切り替えにより、発色(着色)と消色とを、任意のタイミングで切り替え得るものとし得る。
【0121】
封止部55は、第1基板11と第2基板12との間に配置され、着色領域70を区画して、エレクトロクロミック素子60を、この着色領域70内に封止する機能を有している。
【0122】
この封止部55の構成材料としては、透明性を有する絶縁性材料であれば、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂材料や、シリコン酸化物(SiO2)、シリコン酸窒化物(SiON)、アルミ酸化物(Al2O3)等の無機酸化物等が挙げられる。
【0123】
封止部55は、その平均厚さが、エレクトロクロミック素子60の平均厚さに応じて調整され、例えば、好ましくは20μm以上100μm以下程度、より好ましくは40μm以上80μm以下程度に設定される。
【0124】
以上のように、エレクトロクロミックシート150は、第1基板11と第2基板12との間において、封止部55で区画された着色領域70にエレクトロクロミック素子60が配置された構成をなしている。
【0125】
そして、かかる構成をなすエレクトロクロミックシート150において、エレクトロクロミック素子60が備える第1電極13および第2電極14は、それぞれ、
図3~
図6に示すように、エレクトロクロミックシート150を用いてレンズ30を形成して、リム部21の内側に装着した際に、リム部21にブリッジ部22およびテンプル部23が連結される連結部に対応する位置において、封止部55で区画された着色領域70を越えて(延伸して)、パターニングされた配線として、引き巡らさられている。
【0126】
第1導電部17は、上記のように、配線として、着色領域70から延伸して設けられた第1電極13に、平面視で重なるように、封止部55を貫通して設けられた貫通孔である第1穴部53を埋めるように設けられている。すなわち、第1基板11と、封止部55および第1導電部17との間において、配線として着色領域70を越えて設けられた、第1電極13は、第1導電部17に到達するまで延伸されている。
【0127】
そして、この第1導電部17は、第1補助電極15を介して、第1電極13に、電気的に接続され、さらに、エレクトロクロミックシート150の厚さ方向に沿った端部において、エレクトロクロミックシート150を用いてレンズ30を形成して、リム部21の内側に装着した際に、ブリッジ部22側(
図3、
図4における右側)となる位置で露出している。
【0128】
また、第2導電部18は、配線として、着色領域70から延伸して設けられた第2電極14に、平面視で重なるように、封止部55を貫通して設けられた貫通孔である第2穴部54を埋めるように設けられている。すなわち、第2基板12と、封止部55および第2導電部18との間において、配線として着色領域70を越えて設けられた、第2電極14は、第2導電部18に到達するまで延伸されている。
【0129】
そして、この第2導電部18は、第2補助電極16を介して、第2電極14に、電気的に接続され、さらに、エレクトロクロミックシート150の厚さ方向に沿った端部において、エレクトロクロミックシート150を用いてレンズ30を形成して、リム部21の内側に装着した際に、テンプル部23側(
図3、
図4における左側)となる位置で露出している。
【0130】
このように、エレクトロクロミックシート150の厚さ方向に沿った端部において、ブリッジ部22側とテンプル部23側とのように、異なる位置で第1導電部17と第2導電部18とが露出しており、これら第1導電部17と第2導電部18とが、それぞれ、第1電極13と第2電極14とに電気的に接続されている。
【0131】
したがって、エレクトロクロミックシート150の厚さ方向に沿った端部で露出する第1導電部17と第2導電部18とを介して、第1電極13と第2電極14との間に電圧を印加し得る。すなわち、第1導電部17と第2導電部18とを、第1電極13と第2電極14との間に電圧を印加する際の端子として用いることができる。よって、前記工程[3]の後や、前記工程[4]の後に、第1導電部17と第2導電部18とを介して、第1電極13と第2電極14との間に電圧を印加することにより、エレクトロクロミックシート150が、その内部に備える、エレクトロクロミック素子60の検査を容易に実施することができる。よって、エレクトロクロミックシート150の内部に設けられたエレクトロクロミック素子60における不具合の発生の有無を、容易に知ることができる。
【0132】
これら第1導電部17および第2導電部18の構成材料としては、導電材料であれば、特に限定されるものではないが、例えば、銀ペーストのような導電性ペーストが挙げられる他、金および銅等の金属またはその合金等が挙げられる。
【0133】
また、第1導電部17および第2導電部18は、それぞれ独立して、その平均厚さが好ましくは20μm以上100μm以下程度、より好ましくは40μm以上80μm以下程度に設定される。エレクトロクロミックシート150の厚さ方向に沿った端部で露出する第1導電部17と第2導電部18との平均厚さを、かかる範囲内に設定することで、第1導電部17と第2導電部18とを、第1電極13と第2電極14との間に電圧を印加する際の端子として、容易に用いることができる。
【0134】
なお、本発明において、第1導電部17と第2導電部18とは、前述の通り、エレクトロクロミックシート150の厚さ方向に沿った端部において、異なる位置で露出しているが、これら第1導電部17および第2導電部18の前記端部における露出は、以下のようにして実現される。すなわち、前記工程[2]において、素子封止連結シート110を、各エレクトロクロミック素子60に対応して、その厚さ方向に打ち抜くことで、平面視で円形状をなすものに個片化されたエレクトロクロミックシート150を得る際に、この打ち抜きを、平面視で第1導電部17および第2導電部18を通過するように実施することで実現することができる。
【0135】
また、第1導電部17および第2導電部18を通過する、素子封止連結シート110の打ち抜きにより、第1穴部53および第2穴部54は、それぞれ、その壁部(内周面)の一部が欠損したものとなるが、本明細書中では、このような欠損が生じているものも含めて穴部と言う。
【0136】
さらに、第1穴部53および第2穴部54は、本実施形態では、ともに、封止部55を厚さ方向に貫通する貫通孔としたが、これに限定されず、第1穴部53は、第1基板11側から第2基板12側に向かって形成され、その底部に封止部55が残存するものであってもよいし、第2穴部54は、第2基板12側から第1基板11側に向かって形成され、その頂部に封止部55が残存するものであってもよい。
【0137】
第3導電部51は、配線として、着色領域70から延伸して設けられた第1電極13に、平面視で重なり、かつ、第1穴部53よりも着色領域70側(内側)の位置、すなわち、平面視で第1導電部17とエレクトロクロミック素子60との間の位置で、封止部55を貫通して設けられた貫通孔である第3穴部57を埋めるように設けられている(
図4参照)。そして、この第3導電部51は、第1補助電極15を介して、第1電極13に、電気的に接続されている。
【0138】
この第3導電部51は、エレクトロクロミックシート150(湾曲シート120)を用いて得られたレンズ30を、
図5、
図6に示すように、リム部21の内側に装着するために、リム部21の形状(レンズ形状)に対応して切り取られた切取物とすることを目的に、その縁部を切削するトリミング加工を施した際に、ブリッジ部22側(
図5、
図6における右側)となる位置で露出することとなる。
【0139】
また、第4導電部52は、配線として、着色領域70から延伸して設けられた第2電極14に、平面視で重なり、かつ、第2穴部54よりも着色領域70側(内側)の位置、すなわち、平面視で第2導電部18とエレクトロクロミック素子60との間の位置で、封止部55を貫通して設けられた貫通孔である第4穴部58を埋めるように設けられている(
図4参照)。そして、この第4導電部52は、第2補助電極16を介して、第2電極14に、電気的に接続されている。
【0140】
この第4導電部52は、エレクトロクロミックシート150(湾曲シート120)を用いて得られたレンズ30を、
図5、
図6に示すように、リム部21の内側に装着するために、リム部21の形状に対応して切り取られた切取物とすることを目的に、その縁部を切削するトリミング加工を施した際に、テンプル部23側(
図5、
図6における左側)となる位置で露出することとなる。
【0141】
このように、レンズ30を、リム部21の内側に装着するために、その縁部を切削するトリミング加工を施して切取物とした際に、エレクトロクロミックシート150(湾曲シート120)の厚さ方向に沿った端部において、ブリッジ部22側とテンプル部23側とのように、異なる位置で第3導電部51と第4導電部52とが露出しており、これら第3導電部51と第4導電部52とが、それぞれ、第1電極13と第2電極14とに電気的に接続されている。
【0142】
したがって、トリミング加工が施されたレンズ30(切取物)を、リム部21の内側に装着した際に、これら第3導電部51および第4導電部52は、それぞれ、テンプル部23が備えるスイッチ25および電池26に、配線を介して、電気的に接続される接続端子を構成する。
【0143】
これら第3導電部51および第4導電部52の構成材料としては、導電材料であればよく、例えば、第1導電部17および第2導電部18の構成材料として挙げたのと、同様のものを用いることができる。
【0144】
また、第3導電部51および第4導電部52は、それぞれ独立して、その平均厚さが好ましくは20μm以上100μm以下程度、より好ましくは40μm以上80μm以下程度に設定される。トリミング加工が施されたレンズ30において、エレクトロクロミックシート150(湾曲シート120)の厚さ方向に沿った端部で露出する第3導電部51および第4導電部52の平均厚さを、かかる範囲内に設定することで、第3導電部51および第4導電部52を、スイッチ25および電池26に、配線を介して、電気的に接続される接続端子として、容易に用いることができる。
【0145】
なお、レンズ30に対するトリミング加工により、第3穴部57および第4穴部58は、それぞれ、その壁部(内周面)の一部が欠損したものとなるが、本明細書中では、このような欠損が生じているものも含めて穴部と言う。
【0146】
さらに、第3穴部57および第4穴部58は、本実施形態では、ともに、封止部55を厚さ方向に貫通する貫通孔としたが、これに限定されず、第3穴部57は、第1基板11側から第2基板12側に向かって形成され、その底部に封止部55が残存するものであってもよいし、第4穴部58は、第2基板12側から第1基板11側に向かって形成され、その頂部に封止部55が残存するものであってもよい。
【0147】
また、第1穴部53および第3穴部57と、第2穴部54および第4穴部58とは、本実施形態では、それぞれ、異なる穴部として、すなわち別体として封止部55に設けることとしたが、これに限定されず、例えば、第1穴部53と第3穴部57とは、封止部55を介在することなく、一体的に形成された1つの穴部で構成されていてもよいし、第2穴部54および第4穴部58とは、封止部55を介在することなく、一体的に形成された1つの穴部で構成されていてもよい。
【0148】
第1補助電極15は、配線として、着色領域70から延伸して設けられた第1電極13に、第1基板11とは反対側の表面において積層して設けられ、かつ、第1穴部53に形成された第1導電部17および第3穴部57に形成された第3導電部51に、電気的に接続されている。すなわち、第1電極13と、第1導電部17および第3導電部51との間には、これらを互いに電気的に接続する第1補助電極15が形成されている。
【0149】
また、第2補助電極16は、配線として、着色領域70から延伸して設けられた第2電極14に、第2基板12とは反対側の表面において積層して設けられ、かつ、第2穴部54に形成された第2導電部18および第4穴部58に形成された第4導電部52に、電気的に接続されている。すなわち、第2電極14と、第2導電部18および第4導電部52との間には、これらを互いに電気的に接続する第2補助電極16が形成されている。
【0150】
これら第1補助電極15および第2補助電極16は、それぞれ、第1電極13および第2電極14の抵抗値よりも、その抵抗値が低く設定されている。そのため、第1電極13と第1補助電極15との積層体、および、第2電極14と第2補助電極16との積層体で、それぞれ、エレクトロクロミック素子60に電気的に接続された配線を構成することで、これら配線(積層体)に、より優れた電気導電性を付与することができる。
【0151】
これら第1補助電極15および第2補助電極16の構成材料としては、それぞれ、第1電極13および第2電極14よりも抵抗値が低いものであれば、特に限定されないが、優れた導電性を備えるものが用いられ、例えば、銀、アルミニウム、銅、クロムおよびモリブデン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0152】
また、第1補助電極15および第2補助電極16は、それぞれ独立して、その平均厚さが好ましくは1nm以上100nm以下程度、より好ましくは5nm以上50nm以下程度に設定される。これにより、第1補助電極15および第2補助電極16に、補助電極としての機能を確実に付与することができる。
【0153】
以上のような構成をなしているエレクトロクロミックシート150の総厚は、特に限定されないが、0.3mm以上10.0mm以下であるのが好ましく、0.5mm以上5.0mm以下であるのがより好ましい。これにより、エレクトロクロミックシート150に優れた強度を付与しつつ、エレクトロクロミックシート150を、湾曲形状をなす湾曲シート120に成形する際に、このエレクトロクロミックシート150に優れた熱成形性を付与することができる。
【0154】
以上、本発明のエレクトロクロミックシート、眼鏡用レンズおよび眼鏡について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0155】
例えば、エレクトロクロミックシート150が備えるエレクトロクロミック素子60を構成する各層は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、エレクトロクロミックシート150は、基板11、12とエレクトロクロミック素子60との間に、中間層等の他の層をさらに備えるものであってもよい。
【符号の説明】
【0156】
11 第1基板
12 第2基板
13 第1電極
14 第2電極
15 第1補助電極
16 第2補助電極
17 第1導電部
18 第2導電部
20 フレーム
21 リム部
22 ブリッジ部
23 テンプル部
24 ノーズパッド部
25 スイッチ
26 電池
30 レンズ
35 樹脂層
40 金型
50 保護フィルム
51 第3導電部
52 第4導電部
53 第1穴部
54 第2穴部
55 封止部
57 第3穴部
58 第4穴部
60 エレクトロクロミック素子
63 第1エレクトロクロミック層
64 第2エレクトロクロミック層
65 電解質層
70 着色領域
100 サングラス
110 素子封止連結シート
120 湾曲シート
150 エレクトロクロミックシート
210 連結シート積層体
220 湾曲素子積層体
250 素子積層体
【手続補正書】
【提出日】2022-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板と対向して配置された第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、電圧の印加により着色を呈する着色領域を区画する封止部と、
前記着色領域内に配置されたエレクトロクロミック素子と、
前記封止部の前記エレクトロクロミック素子に対する外側に、前記第1基板側から前記第2基板側に向かって形成された第1穴部を埋めるように設けられた第1導電部と、前記第2基板側から前記第1基板側に向かって形成された第2穴部を埋めるように設けられた第2導電部と、を有するエレクトロクロミックシートであって、
前記エレクトロクロミック素子は、前記第1基板に、前記第2基板側に向かって、順次積層された、第1電極および第1エレクトロクロミック層と、
前記第2基板に、前記第1基板側に向かって、順次積層された、第2電極および第2エレクトロクロミック層と、
前記第1エレクトロクロミック層と前記第2エレクトロクロミック層との間に充填された電解質層とを備え、
前記第1エレクトロクロミック層は、酸化反応によって着色を呈する材料を主材料として含有し、
前記第2エレクトロクロミック層は、還元反応によって着色を呈する材料を主材料として含有しており、
前記第1電極は、前記第1基板と、前記封止部および前記第1導電部との間において、当該エレクトロクロミックシートの平面視で、前記着色領域から延伸して、前記第1導電部まで到達して、前記第1導電部に電気的に接続するようにパターニングして設けられ、
前記第2電極は、前記第2基板と、前記封止部および前記第2導電部との間において、当該エレクトロクロミックシートの平面視で、前記着色領域から延伸して、前記第2導電部まで到達して、前記第2導電部に電気的に接続するようにパターニングして設けられており、
前記第1導電部および前記第2導電部は、それぞれ、当該エレクトロクロミックシートの厚さ方向に沿って形成された端部が、当該エレクトロクロミックシートの平面視で、異なる位置で露出していることを特徴とするエレクトロクロミックシート。
【請求項2】
当該エレクトロクロミックシートの平面視で、前記第1導電部と前記エレクトロクロミック素子との間において、前記第1基板側から前記第2基板側に向かって形成された第3穴部を埋めるように設けられた第3導電部を備え、
前記第1電極は、さらに前記第3導電部に電気的に接続されている請求項1に記載のエレクトロクロミックシート。
【請求項3】
前記第1電極と、前記第1導電部および前記第3導電部との間には、これらを互いに電気的に接続する第1補助電極を備える請求項2に記載のエレクトロクロミックシート。
【請求項4】
前記第1穴部および前記第3穴部は、前記封止部を厚さ方向に貫通する貫通孔である請求項2または3に記載のエレクトロクロミックシート。
【請求項5】
当該エレクトロクロミックシートの平面視で、前記第2導電部と前記エレクトロクロミック素子との間において、前記第2基板側から前記第1基板側に向かって形成された第4穴部を埋めるように設けられた第4導電部を備え、
前記第2電極は、さらに前記第4導電部に電気的に接続されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のエレクトロクロミックシート。
【請求項6】
前記第2電極と、前記第2導電部および前記第4導電部との間には、これらを互いに電気的に接続する第2補助電極を備える請求項5に記載のエレクトロクロミックシート。
【請求項7】
前記第2穴部および前記第4穴部は、前記封止部を厚さ方向に貫通する貫通孔である請求項5または6に記載のエレクトロクロミックシート。
【請求項8】
前記第1導電部および前記第2導電部は、それぞれ独立して、その平均厚さが20μm以上100μm以下である請求項1ないし7のいずれか1項に記載のエレクトロクロミックシート。
【請求項9】
前記第1電極および前記第2電極は、それぞれ独立して、その平均厚さが50nm以上200nm以下である請求項1ないし8のいずれか1項に記載のエレクトロクロミックシート。
【請求項10】
湾曲形状とされた請求項1ないし9のいずれか1項に記載のエレクトロクロミックシートを、レンズ形状に対応して切り取られた切取物として備えることを特徴とする眼鏡用レンズ。
【請求項11】
請求項10に記載の眼鏡用レンズを備えることを特徴とする眼鏡。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
このような目的は、下記(1)~(11)に記載の本発明により達成される。
(1) 第1基板と、
前記第1基板と対向して配置された第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、電圧の印加により着色を呈する着色領域を区画する封止部と、
前記着色領域内に配置されたエレクトロクロミック素子と、
前記封止部の前記エレクトロクロミック素子に対する外側に、前記第1基板側から前記第2基板側に向かって形成された第1穴部を埋めるように設けられた第1導電部と、前記第2基板側から前記第1基板側に向かって形成された第2穴部を埋めるように設けられた第2導電部と、を有するエレクトロクロミックシートであって、
前記エレクトロクロミック素子は、前記第1基板に、前記第2基板側に向かって、順次積層された、第1電極および第1エレクトロクロミック層と、
前記第2基板に、前記第1基板側に向かって、順次積層された、第2電極および第2エレクトロクロミック層と、
前記第1エレクトロクロミック層と前記第2エレクトロクロミック層との間に充填された電解質層とを備え、
前記第1エレクトロクロミック層は、酸化反応によって着色を呈する材料を主材料として含有し、
前記第2エレクトロクロミック層は、還元反応によって着色を呈する材料を主材料として含有しており、
前記第1電極は、前記第1基板と、前記封止部および前記第1導電部との間において、当該エレクトロクロミックシートの平面視で、前記着色領域から延伸して、前記第1導電部まで到達して、前記第1導電部に電気的に接続するようにパターニングして設けられ、
前記第2電極は、前記第2基板と、前記封止部および前記第2導電部との間において、当該エレクトロクロミックシートの平面視で、前記着色領域から延伸して、前記第2導電部まで到達して、前記第2導電部に電気的に接続するようにパターニングして設けられており、
前記第1導電部および前記第2導電部は、それぞれ、当該エレクトロクロミックシートの厚さ方向に沿って形成された端部が、当該エレクトロクロミックシートの平面視で、異なる位置で露出していることを特徴とするエレクトロクロミックシート。