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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152246
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/08 20060101AFI20231005BHJP
   B23B 19/02 20060101ALI20231005BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B23Q11/08 Z
B23B19/02 Z
B23Q11/08 A
B23Q11/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090617
(22)【出願日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2022055570
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591014835
【氏名又は名称】高松機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】橋場 勝英
【テーマコード(参考)】
3C011
3C045
【Fターム(参考)】
3C011BB11
3C011DD02
3C011DD03
3C045FD01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ワーク、加工工具などの取替えなどを容易に行うことができるとともに、主軸ユニットの交換も容易に行うことができる工作機械を提供すること。
【解決手段】旋盤本体4と、主軸ユニット6と、工具取付手段8と、加工域42の上方空間を覆うための第1開閉カバー構造44と、旋盤本体4の前上部空間を覆うための第2開閉カバー構造62を備えたNC旋盤。第2開閉カバー構造62は、本体カバー72の前面開口84を覆うための前面カバー部材88と、本体カバー72の上面開口86を覆うための上面カバー部材90とを備え、前面カバー部材88及び上面カバー部材90は、本体カバー72の前面開口84を主として開放する第1開状態を通って更に上面開口86をも開放する第2開状態まで移動可能に構成され、このことに関連して、第1開状態を超える移動を拘束するストッパー部材102が取外し可能に設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械本体と、ワークを保持するチャック手段を所定方向に回動自在に支持するための主軸ユニットと、前記ワークに加工を施す加工工具を取り付けるための工具取付手段と、前記ワークを加工する加工域の上方空間を開閉自在に覆うための第1開閉カバー構造と、前記工作機械本体の前面上部から上面前部にわたる前上部空間を開閉自在に覆うための第2開閉カバー構造とを備え、
前記第2開閉カバー構造は、前記工作機械本体の本体カバーの前面開口を覆うための前面カバー部材と、前記工作機械本体の前記本体カバーの上面開口を覆うための上面カバー部材と、前記前面カバー部材を開閉案内させる案内レール機構とを備え、前記上面カバー部材の後端部は前記工作機械本体に旋回自在に取り付けられ、前記上面カバー部材と前記前面カバー部材とは相互に旋回自在に連結され、前記前面カバーの先端部は前記案内レール機構に移動自在に受け入れられ、前記前面カバー部材及び前記上面カバー部材は、前記工作機械本体の前記前面開口及び前記上面開口を覆う閉状態から前記前面開口を主として開放する第1開状態を通ってその前記前面開口及び前記上面開口を開放する第2開状態まで前記案内レール機構に沿って移動可能に構成されており、
前記案内レール機構に関連して、更に、前記前面カバー部材及び前記上面カバー部材の前記第1開状態を超える移動を拘束する第1ストッパー手段が設けられていることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記案内レール機構は、前記工作機械本体の前記本体カバーの前記前面開口及び前記上面開口の両側部に沿って延びる一対の案内レールを備え、前記前面カバー部材の前記先端部の両側部が前記一対の案内レールに移動自在に受け入れられ、前記第1ストッパー手段は、前記一対の案内レールの少なくともいずれか一方の第1所定部位に取外し可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記一対の案内レールの少なくともいずれか一方の第2所定部位には、前記前面カバー部材及び前記上面カバー部材の前記第2開状態を超える移動を拘束する第2ストッパー手段が設けられているとともに、前記前面カバー部材及び前記上面カバー部材を前記第2所定部位に保持するための保持部材が前記案内レール機構に取外し可能に取り付けられることを特徴とする請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記主軸ユニットは、前記工作機械本体の後部に前後方向に移動自在に支持され、前記工具取付手段は、前記主軸ユニットに対向して前記工作機械本体の前部に横方向に移動自在に支持された工具用スライド機構に取り付けられ、前記主軸ユニットと前記工具取付手段との間に前記加工域が存在しており、前記工作機械本体から前記主軸ユニットを取り外すときには、前記前面カバー部材及び前記上面カバー部材が前記第2開状態に保持され、且つ前記主軸ユニットが前記前後方向の前端位置に位置付けられることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項5】
前記工具用スライド機構に関連して、前記工具用スライド機構と前記工作機械本体との間に、前記工具用スライド機構の一部の上面側及び前面側を覆うための第1保護カバー部材及び前記第1保護カバー部材の上面側を覆うための第2保護カバー部材が設けられているとともに、更に前記第2保護カバー部材の上面に向けて液体を噴出する液体噴出手段が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記第1開閉カバー構造は、前記工具取付手段の上方を覆う蓋部材と、前記加工域の上方を覆うシャッター部材とを備え、前記蓋部材が前記工作機械本体に取外し可能に取り付けられ、前記シャッター部材が前記工作機械本体に開閉自在に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工工具を用いてワークを切削加工などの加工を行う工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを切削加工する工作機械として、工作機械本体の前面上部から上面前部にわたって延びる上部空間を開閉自在に覆う開閉カバー体を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この工作機械では、工作機械本体の本体カバーに開口が設けられ、この開口の両側部にガイドレールが設けられている。開閉カバー体は、相互に旋回自在に連結された上側カバー及び前側カバーを備え、前側カバーの先端部に開閉用の取っ手が設けられている。また、上側カバー体の後端部は、工作機械本体に旋回自在に装着され、前側カバーの先端部が一対のガイドレールに移動自在に受け入れられている。
【0003】
この工作機械では、取っ手を持って開方向に持ち上げると、上側カバー及び前側カバーが折り畳まれて本体カバーの上方に突出し、このように折り畳まれることによって、本体カバーの開口が開放されて開状態となる。また、取っ手をもって閉方向に下げると、上側カバー及び前側カバーが本体カバーの上面及び前面にわたって拡げられ、このように拡げることによって、本体カバーの開口が閉じられて閉状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-206064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この工作機械では、開閉カバー体(上側カバー及び前側カバー)を開状態にした状態では、本体カバーの開口が開放され、工作機械本体の前面上部から上面前部にわたる上部空間が開放され、従って、この開放された上部空間を利用してワーク、加工工具などの取替え、主軸ユニット、工具取付手段などの保守、点検などを容易に行うことができる。
【0006】
一方、このような工作機械では、長期間にわたって使用すると、摩耗劣化などにより高精度な加工が難しくなり、このようなことから、長期間にわたって使用する場合は、主軸ユニット全体を新しいものに交換することがある。主軸ユニットは大きくて重く、構内のクレーンなどを用いて工作機械本体から吊り上げて取り替えるようになる。
【0007】
しかし、従来の工作機械では、本体カバーに大きな開口が存在せず、例えば引用文献1のような工作機械であっても、開閉カバー体を開状態に保持した状態において充分に大きな開口が存在せず、主軸ユニットを開放された開口を通して取り出すことができなかった。そのため、主軸ユニットを交換するときには、本体カバーの一部を取り外して大きな開口をつくり、この大きな開口を通して古い主軸ユニットの取外し、また新しい主軸ユニットの取り付けを行っており、主軸ユニットの交換作業が煩雑で、交換作業に時間を要していた。
【0008】
本発明の目的は、ワーク、加工工具などの取替えなどを容易に行うことができるとともに、主軸ユニットの交換も容易に行うことができる工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載の工作機械は、工作機械本体と、ワークを保持するチャック手段を所定方向に回動自在に支持するための主軸ユニットと、前記ワークに加工を施す加工工具を取り付けるための工具取付手段と、前記ワークを加工する加工域の上方空間を開閉自在に覆うための第1開閉カバー構造と、前記工作機械本体の前面上部から上面前部にわたる前上部空間を開閉自在に覆うための第2開閉カバー構造とを備え、
前記第2開閉カバー構造は、前記工作機械本体の本体カバーの前面開口を覆うための前面カバー部材と、前記工作機械本体の前記本体カバーの上面開口を覆うための上面カバー部材と、前記前面カバー部材を開閉案内させる案内レール機構とを備え、前記上面カバー部材の後端部は前記工作機械本体に旋回自在に取り付けられ、前記上面カバー部材と前記前面カバー部材とは相互に旋回自在に連結され、前記前面カバーの先端部は前記案内レール機構に移動自在に受け入れられ、前記前面カバー部材及び前記上面カバー部材は、前記工作機械本体の前記前面開口及び前記上面開口を覆う閉状態から前記前面開口を主として開放する第1開状態を通ってその前記前面開口及び前記上面開口を開放する第2開状態まで前記案内レール機構に沿って移動可能に構成されており、
前記案内レール機構に関連して、更に、前記前面カバー部材及び前記上面カバー部材の前記第1開状態を超える移動を拘束する第1ストッパー手段が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2に記載の工作機械では、前記案内レール機構は、前記工作機械本体の前記本体カバーの前記前面開口及び前記上面開口の両側部に沿って延びる一対の案内レールを備え、前記前面カバー部材の前記先端部の両側部が前記一対の案内レールに移動自在に受け入れられ、前記第1ストッパー手段は、前記一対の案内レールの少なくとも一方の第1所定部位に取外し可能に設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3に記載の工作機械では、前記一対の案内レールの少なくともいずれか一方の第2所定部位には、前記前面カバー部材及び前記上面カバー部材の前記第2開状態を超える移動を拘束する第2ストッパー手段が設けられているとともに、前記前面カバー部材及び前記上面カバー部材を前記第2開状態に保持するための保持部材が前記案内レール機構に取外し可能に取り付けられることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項4に記載の工作機械では、前記主軸ユニットは、前記工作機械本体の後部に前後方向に移動自在に支持され、前記工具取付手段は、前記主軸ユニットに対向して前記工作機械本体の前部に横方向に移動自在に支持された工具用スライド機構に取り付けられ、前記主軸ユニットと前記工具取付手段との間に前記加工域が存在しており、前記工作機械本体から前記主軸ユニットを取り外すときには、前記前面カバー部材及び前記上面カバー部材が前記第2開状態に保持され、且つ前記主軸ユニットが前記前後方向の前端位置に位置付けられることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項5に記載の工作機械では、前記工具用スライド機構に関連して、前記工具用スライド機構と前記工作機械本体との間に、前記工具用スライド機構の一部の上面側及び前面側を覆うための第1保護カバー部材及び前記第1保護カバー部材の上面側を覆うための第2保護カバー部材が設けられているとともに、更に前記第2保護カバー部材の上面に向けて液体を噴出する液体噴出手段が設けられていることを特徴とする。
【0014】
更に、本発明の請求項6に記載の工作機械では、前記第1開閉カバー構造は、前記工具取付手段の上方を覆う蓋部材と、前記加工域の上方を覆うシャッター部材とを備え、前記蓋部材が前記工作機械本体に取外し可能に取り付けられ、前記シャッター部材が前記工作機械本体に開閉自在に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に記載の工作機械によれば、工作機械本体の前面上部から上面前部にわたる前上部空間を開閉自在に覆うための第2開閉カバー構造を備え、この第2開閉カバー構造は、前面カバー部材、上面カバー部材及びこの前面カバー部材を開閉案内させる案内レール機構を備え、前面カバー部材及び上面カバー部材は、閉状態から第1開状態を通って第2開状態まで案内レール機構に沿って移動可能であるので、第1開状態に保持することによって、工作機械本体の前面上部が主として開放され、この開放された開口を通してワーク及び加工工具の交換や工具取付手段などの保守、点検などを容易に行うことができ、また第2開状態に保持することによって、工作機械本体の前面上部及び上面前部が大きく開放され、この開放された開口を通して主軸ユニットやワーク搬送装置などの保守、点検を容易に行うことができ、更に主軸ユニットの交換も容易に行うことができる。
【0016】
また、案内レール機構に関連して第1ストッパー手段が設けられているので、第2開閉カバー構造の通常の開閉操作においては、前面カバー部材及び上面カバー部材が第1開状態になると、第1ストッパー手段がこの第1開状態を超える移動を拘束し、これによって、第1開状態を超えて開放されることがなく、この第2開閉カバー構造の使い勝手をよくすることができる。
【0017】
また、本発明の請求項2に記載の工作機械によれば、案内レール機構は、本体カバーの前面開口及び上面開口の両側部に沿って延びる一対の案内レールを備え、前面カバー部材の先端部の両側部が一対の案内レールに移動自在に受け入れられるので、前面カバー部材の先端部を一対の案内レールに沿って移動させることにより、前面カバー部材及び上面カバー部材を折り畳みながら開放移動させることができる。また、一対の案内レールの少なくとも一方の第1所定部位に取外し可能に第1ストッパー手段が設けられているので、前面カバー部材及び上面カバー部材を第1開状態まで開放すると、前面カバー部材の先端部が第1ストッパー手段に当接し、この第1ストッパー手段により第1開状態を超える開移動を拘束することができる。また、この第1ストッパー手段を取り外すことにより、前面カバー部材及び上面カバー部材を第1開状態を超えて第2開状態まで開動作することが可能となる。
【0018】
また、本発明の請求項3に記載の工作機械によれば、一対の案内レールの少なくともいずれか一方の第2所定部位には第2ストッパー手段が設けられているので、この第2ストッパー手段により、前面カバー部材及び上面カバー部材の第2開状態を超える移動を拘束することができる。また、前面カバー部材及び上面カバー部材を第2開状態に保持した状態で案内レール機構に保持部材を取り付けることにより、これら前面カバー部材及び上面カバー部材を第2開状態に安全に保持することができる。
【0019】
また、本発明の請求項4に記載の工作機械によれば、主軸ユニットは工作機械本体の後部に前後方向に移動自在に支持され、工作機械本体から主軸ユニットを取り外すときには、前面カバー部材及び上面カバー部材が第2開状態に保持されて工作機械本体の前面上部及び上面前部が大きく開放されるとともに、主軸ユニットが前後方向の前端位置に位置付けられるので、この主軸ユニットを工作機械本体の開放された上部空間の下方に位置付けることができ、これによって、工作機械本体からの主軸ユニットの取外し、また新しい主軸ユニットの工作機械本体への取付けが容易となる。
【0020】
また、本発明の請求項5に記載の工作機械によれば、工具用スライド機構と工作機械本体との間に、工具用スライド機構の一部の上面側及び前面側を覆うための第1保護カバー部材が設けられ、また第1保護カバー部材の上面側を覆うための第2保護カバー部材が設けられているので、第1及び第2保護カバー部材により工具用スライド機構を保護することができる。更に、液体噴出手段が設けられているので、この液体噴出手段から噴出される液体により第2保護カバー部材の上面に飛散した切粉など除去することができ、加工域の周囲、特に第2保護カバー部材の上面をきれいな状態に保つことができる。
【0021】
更に、本発明の請求項6に記載の工作機械によれば、第1開閉カバー構造は、工具取付手段の上方を覆う蓋部材と、加工域の上方を覆うシャッター部材とを備えているので、蓋部材を取り外すことによって、工具取付手段の保守、点検を容易に行うことができ、またこの蓋部材を取り外し且つシャッター部材を開状態にすることによって、加工域の上方が大きく開放され、主軸ユニットの保守、点検やその交換を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に従う工作機械の一例としてのNC旋盤の一実施形態を示す正面図。
図2図1のNC旋盤において、第2開閉カバー構造を閉状態に保持した状態で示す断面図。
図3図1のNC旋盤において、第2開閉カバー構造を第1開状態に保持した状態で示す断面図。
図4図1のNC旋盤において、第2開閉カバー構造を第2開状態に保持した状態で示す断面図。
図5図5(a)は、図1のNC旋盤において一対のX軸スライドを両側に移動させた状態を示す正面図、図5(b)は、一対のX軸スライドを中央側に移動させた状態を示す正面図。
図6図5(a)におけるVI-VI線による断面図。
図7図7(a)は、第1及び第2保護カバー部材の一部を延びた状態で示す正面図、図7(b)は、それらの一部を縮んだ状態で示す正面図。
図8図1のNC旋盤において、第1開閉カバー構造を開状態に、第2開閉カバー構造を第2開状態に保持した状態で示す断面図。
図9図1のNC旋盤において、図8に示す状態から更に主軸ユニットを前後方向前方に移動させて前端位置に位置付けた状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う工作機械の一例としてのNC旋盤の一実施形態について説明する。図1及び図2において、工作機械の一例としてのNC旋盤2は、工場の床面などに設置される旋盤本体4(工作機械本体を構成する)を備え、この旋盤本体4(工作機械本体)の後部に主軸ユニット6が配設され、その前部に工具取付手段8が設けられている。
【0024】
この実施形態では、図1から理解されるように、旋盤本体4(工作機械本体)の横方向(所謂X軸方向であって、図1において左右方向、図2において紙面に対して垂直な方向)に間隔をおいて一対の主軸ユニット6(6a,6b)が配設され、一対の主軸ユニット6(6a,6b)は、旋盤本体4の前後方向(所謂Z軸方向であって、図1において紙面に対して垂直な方向、図2において左右方向)に往復移動自在に取り付けられている。また、一対の主軸ユニット6(6a,6b)に対向して一対の工具取付手段8(8a,8b)が設けられ、一対の工具取付手段8(8a,8b)は、旋盤本体4の横方向(X軸方向)に往復移動自在に取り付けられている。
【0025】
一対の主軸ユニット6(6a,6b)及び一対の工具取付手段8(8a,8b)は、実質上同一の構造であり、以下、それらの一方の主軸ユニット6a(6b)及び工具取付手段8a(8b)について説明する。図示の形態では、主軸ユニット6a(6b)は、第1スライド機構10を介して旋盤本体4(工作機械本体)の後部に往復動自在に支持されている。第1スライド機構10(主軸用スライド機構を構成する)は、旋盤本体4に取り付けられてZ軸方向に延びるZ軸リニアガイド12と、このZ軸リニアガイド12に移動自在に支持されたZ軸スライド14とを有し、このZ軸スライド14に主軸ユニット6a(6b)が取外し可能に取り付けられている。
【0026】
この第1スライド機構10は、更に、Z軸スライド14をZ軸方向に移動させるためのZ軸駆動手段16を備え、このZ軸駆動手段16は、旋盤本体4に回転自在に支持されたZ軸ボールねじ軸18と、このZ軸ボールねじ軸18に螺合されたZ軸ナット20とを有し、Z軸ナット20がZ軸スライド14に取り付けられる。Z軸駆動手段16はZ軸駆動モータ22を含み、このZ軸駆動モータ22がZ軸ボールねじ軸18に駆動連結されている。
【0027】
このように構成されているので、Z軸駆動モータ22が所定方向(又は所定方向と反対方向)に駆動されると、このZ軸駆動モータ22によってZ軸ボールねじ軸18が所定方向(又は所定方向と反対方向)に回動され、これによってZ軸スライド14、即ち主軸ユニット6a(6b)がZ軸方向(前後方向)に工具取付手段8a(8b)に近接する方向(又は離隔する方向)に移動される。
【0028】
この主軸ユニット6(6a,6b)には、図示していないが、主軸が回転自在に支持され、この主軸に主軸チャック手段が取り付けられ、加工すべきワークはこの主軸チャック手段に着脱自在に保持される。主軸ユニット6(6a,6b)は主軸駆動モータ(図示せず)を有し、この主軸駆動モータによって主軸(これと一体的に主軸チャック手段及びこれに保持されたワーク)が所定方向に回動される。
【0029】
図示の工具取付手段8a(8b)は、第2スライド機構24(工具用スライド機構を構成する)を介して旋盤本体4(工作機械本体)の前部に往復動自在に支持されている。図6をも参照して、第2スライド機構24は、旋盤本体4に取り付けられてX軸方向に延びるX軸リニアガイド26と、このX軸リニアガイド26に移動自在に支持されたX軸スライド28とを有し、このX軸スライド28に工具取付手段8a(8b)が取り付けられている。
【0030】
この第2スライド機構24は、更に、X軸スライド28をX軸方向に移動させるためのX軸駆動手段30を備え、このX軸駆動手段30は、旋盤本体4に回転自在に支持されたX軸ボールねじ軸32と、このX軸ボールねじ軸32に螺合されたX軸ナット34(図1参照)とを有し、X軸ナット34がX軸スライド28に取り付けられる。X軸駆動手段30はX軸駆動モータ36を含み、このX軸駆動モータ36がX軸ボールねじ軸32に駆動連結されている。
【0031】
このように構成されているので、X軸駆動モータ36が所定方向(又は所定方向と反対方向)に駆動されると、このX軸駆動モータ36によってX軸ボールねじ軸32が所定方向(又は所定方向と反対方向)に回動され、これによってX軸スライド28、即ち工具保持手段8a(8b)がX軸方向(横方向)内側(又は外側)に移動される。
【0032】
このX軸スライド28には工具取付手段8a(8b)の工具取付部材40が取り付けられ、かかる工具取付部材40にワークを加工する際に用いる加工工具、例えば切削工具(図示せず)などが取り付けられる。
【0033】
このNC旋盤2においては、主軸ユニット6(6a,6b)と工具取付手段8(8a,8b)との間に、ワーク(図示せず)を加工する加工域42が設けられ、この実施形態では、一対の主軸ユニット6(6a,6b)及び一対の工具取付手段8(8a,8b)に共通の加工域42が設けられている。
【0034】
この加工域42の上方には、加工液、切粉などの飛散を防止するための第1開閉カバー構造44が設けられている。この第1開閉カバー構造44は、工具取付手段8(8a,8b)の上方を覆う蓋部材46と、加工域42の上方を覆うシャッター部材48とを備え、蓋部材46が旋盤本体4に取外し可能に取り付けられ(図8及び図9参照)、シャッター部材48は旋盤本体4に開閉自在に取り付けられる。この形態では、旋盤本体4に駆動シリンダ機構50が取り付けられ、この駆動シリンダ機構50の出力部52にシャッター部材48が取り付けられている。
【0035】
このように構成されているので、旋盤本体4に蓋部材46を取り付けた状態では、この蓋部材46は工具取付手段8(8a,8b)の上方を覆い(図2図4参照)、この取付状態において、更に駆動シリンダ機構50を伸張させると、シャッター部材48が蓋部材46に近接する方向(即ち、前方)に向けて移動して加工域42の上方を覆う閉状態になる(図2図4参照)。このような閉状態では、図2図4に示すように、加工域42の上方全域が蓋部材46及びシャッター部材48によって覆われ、加工域42からの加工液、切粉などの外部への飛散が抑えられる。
【0036】
この閉状態において、駆動シリンダ機構50を収縮させると、シャッター部材48が蓋部材46から離隔し、加工域42の上方が開放され(図8参照)、この開放された開口を通してワークの後述する搬入などが許容される。尚、このシャッター部材48の開状態において、更に、蓋部材46を取り外すと、図9に示すように、加工域42の上方が大きく開放され、主軸ユニット6(6a,6b)及び工具取付手段8(8a,8b)の保守、点検作業、また主軸ユニット6(6a,6b)の交換作業を容易に行うことができる。
【0037】
この第1開閉カバー構造44の外側に第2開閉カバー構造62が設けられ、この第1カバー構造44と第2カバー構造62との間に、旋盤本体4の前面上部から上面前部にわたって延びる前上部空間64が設けられ、この前上部空間64は、ワークを後述する如く搬送する搬送空間として用いられる。
【0038】
この実施形態では、図1及び図2に示すように、旋盤本体4の外面は本体カバー72により覆われ、この本体カバー72は、旋盤本体4の前面を覆う前面カバー74、その上面を覆う上面カバー76、その背面を覆う背面カバー78、その左側面を覆う左側面カバー80及びその右側面を覆う右側面カバー82を備えている。前面カバー74は、一対の工具取付手段8(8a,8b)及びこれに関連する構成要素(第2スライド機構24a,24bなど)の前面側に配置され、旋盤本体4の前面部に着脱自在に取り付けられる。
【0039】
このように構成されているので、前面カバー74を取り付けることによって、旋盤本体4の前面下部がこの前面カバー74により覆われる。また、この前面カバー74を取り外すことによって、旋盤本体4の前面下部が開放され、一対の工具取付手段8(8a,8b)及びこれに関連する構成要素(第2スライド機構24a,24bなど)の保守、点検などを容易に行うことができる。
【0040】
旋盤本体4(本体カバー72)の前面上部には前面開口84(図3及び図4参照)が設けられ、またその上面前部には上面開口86(図3及び図4参照)が設けられ、この前面開口84及び上面開口86が連続した作業用開口を構成している。第2開閉カバー構造62は、この作業用開口(本体カバー72の前面開口84及び上面開口86)を開閉するために設けられ、その前面開口84を覆うための前面カバー部材88と、その上面開口86を覆うための上面カバー部材90と、この前面カバ-部材88を開閉案内させる案内レール機構92(図8及び図9参照)を備えている。
【0041】
上面カバー部材90の後端部(図2において左端部)は、複数の蝶番94を介して旋盤本体4の上面開口86の開口部に旋回自在に取り付けられ、この上面カバー部材90の前端部と前面カバー部材88の後端部とが複数の蝶番96を介して相互に旋回自在に取り付けられている。また、前面カバー部材88の先端部の両側部にはコロ98(図3及び図4において一方のみ示す)が回転自在に装着され、このコロ98が案内レール機構92に移動自在に受け入れられている。
【0042】
また、前面カバー部材88の前面下端部には、開閉用の把持取っ手91が設けられており、この把持取っ手91を把持して持ち上げることにより第2開閉カバー構造62を開状態(図3に示す第1開状態、図4に示す第2開状態)にすることができ、またこの把持取っ手91を把持して持ち下げることにより第2開閉カバー構造62を閉状態(図2に示す状態)にすることができる。
【0043】
案内レール機構92は、本体カバー72の前面開口84及び上面開口86の両側部に沿って設けられた一対の案内レール100(図3及び図4において一方のみ示す)を備え、一対の案内レール100は、この前面開口84の下端部から上面開口86の後端部まで延びており、一対の案内レール100の案内凹部に前面カバー部材88のコロ98が回転自在に受け入れられている。
【0044】
このように構成されているので、把持取っ手91を把持して持ち上げることにより、前面カバー部材88に設けられた一対のコロ98は、旋盤本体4側の一対の案内レール100に沿って上方に移動した後に更に後方に移動し、このようにコロ100が移動することによって、前面カバー部材88及び上面カバー部材90は、蝶番96により上方に突出するように二つに折り畳まれ、このようにして本体カバー72の前面開口84及び上面開口86が開放され、第2開閉カバー構造62は開状態になる。
【0045】
また、把持取っ手91を持って下げることにより、前面カバー部材88の一対のコロ98は、かかる一対の案内レール100に沿って前方に移動した後に下方に移動し、このようにコロ98が移動することによって、前面カバー部材88及び上面カバー部材90は、本体カバー72の前面開口84及び上面開口86を閉塞し、第2開閉カバー構造62は閉状態になる。
【0046】
この案内レール機構92に関連して、前面カバー部材88の一対のコロ98の移動を制限する第1ストッパー手段102が設けられる。この実施形態では、第1ストッパー手段102は、一対の案内レール100の案内凹部の第1所定部位、即ち図3に示す第1開状態に対応する位置に取外し可能に取り付けられる。この第1ストッパー手段102は、例えばブロック状部材から構成され、このブロック状部材が取付ねじなどにより取外し可能に装着される。このように第1ストッパー手段102を設けることにより、前面カバー部材88を開方向に第1開状態(図3に示す開状態)まで移動させると、前面カバー部材88のコロ98がこの第1ストッパー手段102(ブロック状部材)に当接してその移動が阻止され、これによって、前面カバー部材88及び上面カバー部材90の第1開状態を超える移動が拘束される。
【0047】
この第1開状態においては、図3に示すように、本体カバー72の主として前面開口84が開放され、この前面開口84を通して後述する各種作業を行うことができる。尚、この第1ストッパー手段102は、一対の案内レール100の双方に設けるようにしてもよいが、それらのいずれか一方のみに設けるようにしてもよい。
【0048】
このNC旋盤2において、本体カバー72の上面開口86をも開放したいときには、この第1ストッパー手段102を取り外すようにすればよく、このようにすると、前面カバー部材88の一対のコロ98の後方への更なる移動が許容される。第1ストッパー手段102を外して前面カバー部材88を更に後方に移動させると、図4に示すように、本体カバー72の前面開口84からその上面開口86にわたって開放され、本体カバー72の作業用開口を大きく開放する第2開状態となり、大きく開放された前面開口84及び上面開口86を通して後述する各種作業を行うことができる。
【0049】
前面カバー部材88及び上面カバー部材90は、開方向移動と閉方向移動とのバランスが取れてこの第2開状態に保持されるように構成されており、それ故に、把持取っ手91から手を離してもこの第2開状態に保たれ、自重などにより閉方向に移動することはない。
【0050】
この第2開状態に対応して、前面カバー部材88の一対のコロ98の移動を制限する第2ストッパー手段(図示せず)が設けられる。第2ストッパー手段は、一対の案内レール100の案内凹部の第2所定部位(上記第1所定部位よりも後方の部位)、即ち図4に示す第2開状態に対応する位置に設けられ、例えば案内レールの一部を折曲した折曲部などから構成される。
【0051】
このように第2ストッパー手段(図示せず)を設けることにより、前面カバー部材88を開方向に第2開状態(図4に示す開状態)まで移動させると、前面カバー部材88のコロ98がこの第2ストッパー手段(折曲部)に当接してその移動が阻止され、これによって、前面カバー部材88及び上面カバー部材90の第2開状態を超える移動が拘束される。尚、この第2ストッパー手段も、上述した第1ストッパー手段102と同様に、一対の案内レール100の双方に設けるようにしてもよいが、それらのいずれか一方のみに設けるようにしてもよい。
【0052】
前面カバー部材88及び上面カバー部材90を第2開状態に保持するために、例えばブロック状部材から構成される保持部材(図示せず)を設けるようにしてもよい。この保持部材は、案内レール100の案内凹部内に位置する案内コロ98(即ち、第2開状態のときに位置する案内コロ98)の手前側に、例えば取付ねじ(図示せず)などにより取り外し可能に取り付けられ、このように保持部材を取り付けることにより、案内コロ98は、第2ストッパー手段(折曲部)と保持部材との間に位置してその移動が拘束され、これによって、前面カバー部材88及び上面カバー部材90を第2開状態に安全に保持することができ、各種作業中などにおいて前面カバー部材及び上面カバー部材90が閉方向に移動するのを確実に防止することができる。
【0053】
この形態では、旋盤本体4の上端部と上面カバー部材90の内面との間にガススプリングシリンダ104が介在されている。このガススプリングシリンダ104は、第2開閉カバー構造62(前面カバー部材88及び上面カバー部材90)の開閉操作を補助するために設けられ、開操作するときには前面カバー部材88を開方向に持ち上げる際の持上げ力が小さくなるように作用し、閉操作するときには前面カバー部材88が重力により急に下がらないように作用する。
【0054】
このガススプリングシリンダ104は、安全上の観点から、次のように構成するのが好ましい。即ち、第2開閉カバー構造62(前面カバー部材88及び上面カバー部材90)が第2開状態になったとき、このガススプリングシリンダ104が最も伸張した状態となるように取り付けるのが好ましく、このように構成することにより、第2開閉カバー構造62を第2開状態に保持した状態でガススプリングシリンダ104を取り外すと、取り外した際にガススプリングシリンダ104が急に伸張することがなく、このガススプリングシリンダ104を安全に取り外すことができる。
【0055】
この実施形態のNC旋盤2においては、図1及び図2に示すように、旋盤本体4にワークを搬送するワーク搬送装置112が付設されている。ワーク搬送装置112は、加工すべきワークを供給するワーク供給機構114と、加工済みワークを排出するワーク排出機構116と、ワークを旋盤本体4の加工域42に搬送するワーク搬送機構118とを備え、ワーク供給機構114が旋盤本体の片側(図1において右側)に配置され、ワーク排出機構116が旋盤本体4の他側(図1において左側)に配置されている。
【0056】
ワーク搬送機構118は、ワーク供給機構114とワーク排出機構116との間を旋盤本体4の前上部空間64を通して伸びる支持フレーム120を有し、この支持フレーム120の両端部が支持脚122により支持されている。ワーク搬送機構118は、更に、ワークを搬送するためのローダ124を備え、このローダ124はリニアガイド125を介して支持フレーム120に移動自在に装着されている。ローダ124は、ワークを保持するためのローダチャック126を備えている。
【0057】
このように構成されているので、ワーク搬送機構118のローダ124のローダチャック126は、ワーク供給機構114において加工すべきワークを保持して旋盤本体4の加工域42に搬送し、主軸ユニット6(6a,6b)の主軸チャック手段との間で受渡しする。また、このローダ124のローダチャック126は、主軸ユニット6(6a,6b)に保持されて加工されたワークを受け取り、受け取ったワークをワーク排出機構116に搬送して排出する。ローダ124はこのように搬送移動するので、ワークを供給するときには旋盤本体4の前上部空間64の外側に移動してワーク供給機構114の上方に位置付けられ(図1参照)、またワークを排出するときには旋盤本体4の前上部空間64の外側に移動してワーク排出機構116の上方に位置付けられる。
【0058】
このNC旋盤2においては、図5図7に示すように、工具取付手段8(8a,8b)の第2スライド機構24(工具用スライド機構)を覆うようにカバーユニット142(142a,142b,142C)が設けられている。この実施形態では、カバーユニット142aは、旋盤本体4の右端部と一方の第2スライド機構24aのXスライド28との間に配設され、カバーユニット142bは、旋盤本体4の左端部と他方の第2スライド機構24bのXスライド28との間に配設され、カバーユニット142cは、一方の第2スライド機構24aのXスライド28と他方の第2スライド機構24bのXスライド28との間に配設されている。
【0059】
カバーユニット142(142a,142b,142c)は実質上同一の構成であり、第2スライド機構24(24a,24b)の一部の上面側及び前面側(旋盤本体4の前面側)を覆うための第1保護カバー部材144と、この第1保護カバー部材144の上面側を覆うための第2保護カバー部材146とを備えている。この実施形態では、図7(a)及び(b)に示すように、第1保護カバー部材144が蛇腹部材148から構成され、この蛇腹部材148は、内側に折り畳まれることにより収縮し、両側に開くことにより伸張する。また、第2保護カバー部材146が複数のプレート状部材150から構成され、これらプレート状部材150が蛇腹部材148の上面部に取り付けられている。複数のプレート状部材150は、相互に重なることにより収縮し、引き出されることにより伸張する。
【0060】
第1及び第2保護カバー部材144,146の両側端部には取付ブラケット152(図7において一対の取付ブラケットの一つのみを示す)が取り付けられ、この取付ブラケット152を介して取り付けられる。例えば、右側のカバーユニット142aにおいては、一方の取付ブラケット152が旋盤本体4の右端部に取り付けられ、他方の取付ブラケット152が第2スライド機構24aのXスライド28に取り付けられ、また左側のカバーユニット142bにおいては、一方の取付ブラケット152が旋盤本体4の左端部に取り付けられ、他方の取付ブラケット152が第2スライド機構24bのXスライド28に取り付けられ、更に中央のカバーユニット142cにおいては、一方の取付ブラケット152が第2スライド機構24aのXスライド28に取り付けられ、他方の取付ブラケット152が第2スライド機構24bのXスライド28に取り付けられる。
【0061】
このように構成されているので、第2スライド機構24a(又は24b)のXスライド28が図5(a)に矢印で示すように外側に移動すると、外側のカバーユニット142a(又は142c)の第1及び第2保護カバー部材144,146が収縮する一方、中央のカバーユニット142cの第1及び第2保護カバー部材144,146は伸張する。また、この第2スライド機構24a(又は24b)のXスライド28が図5(b)に矢印で示すように内側に移動すると、外側のカバーユニット142a(又は142c)の第1及び第2保護カバー部材144,146が伸張する一方、中央のカバーユニット142cの第1及び第2保護カバー部材144,146は収縮する。
【0062】
このカバーユニット142(142a,142b,142c)に関連して、更に、次のように構成されている。図6を参照して、第2保護カバー部材146(複数のプレート状部材150)は、内側の加工域42に向けて下方に傾斜して延びており、その傾斜上端部には上方に突出する上突出部146aが設けられ、それらの傾斜下端部には下方に垂下する下垂下部146bが設けられている。
【0063】
このカバーユニット142(142A,142B,142C)の第2保護カバー部材146に関連して、液体(例えば、旋盤2の加工に用いる加工液)を噴出する液体噴出手段154が設けられる。液体噴出手段154は噴出ノズル156を備え、この噴出ノズル156が第2保護カバー部材146(複数のプレート状部材150)の傾斜上端部の上方に設けられ、この噴出ノズル156から液体(例えば、加工液)が下方に噴出される。
【0064】
液体噴出手段154(噴出ノズル156)からこのように液体が噴出されるので、加工の際にカバーユニット142(142a,142b,142c)の上面(即ち、第2保護カバー部材146の上面)に飛散した切粉などは、その上面に沿って液体とともに流下して加工域42の下方に流れて回収され、このように液体を噴出させてカバーユニット142(142a,142b,142c)の上面をきれいな状態に保つことができる。
【0065】
この第2保護カバー部材146に関連して、更に次の通り構成されている。工具取付手段8(8a,8b)の後側(換言すると、旋盤本体4の前面側)には上傾斜カバー162が設けられ、この上傾斜カバー162は、旋盤本体4側の内カバー164と工具取付手段8(8a,8b)の工具取付部材40との間に配設されている。この上傾斜カバー162は、工具取付部材40側に向けて下方に傾斜して延びており、このように構成されているので、この上傾斜カバー部材162に飛散した切粉などは、その上面に沿って下方に落下する。
【0066】
また、内カバー164の下端部は、第2保護カバー部材146(複数のプレート状部材150)の上突出部146aの内側に位置して重なっており、それ故に、飛散した切粉や噴出ノズル156からの液体(加工液)などが作業者側(図6において右側)に流れるのを防止することができる。
【0067】
このNC旋盤2において、第2開閉カバー構造62の開閉使用は、例えば、次のようにして行われる。NC旋盤2を用いた加工においては、案内レール機構92の案内レール100にストッパー部材102が取り付けられ、第2開閉カバー構造62(前面カバー部材88及び後面カバー部材90)は、図2に示す閉状態と図3に示す第1開状態との間で開閉操作される。
【0068】
この場合、第2開閉カバー構造62を第1開状態にすると、図3から理解される如く、本体カバー72の前面開口84が開放され、この前面開口84を通して例えば次の作業を容易に行うことができる(これらの作業のときには、ワーク搬送装置112のローダ124は、旋盤本体4の前上部空間64の外に位置付けられる)。
【0069】
例えば、第1開閉カバー構造44のシャッター部材48を開状態にすることによって加工域42の上方が開放され、この開放された空間を通して、主軸ユニット6(6a,6b)の主軸チャック手段(図示せず)へのワークの取付け、取外し、またこの主軸チャック手段の保守、点検などを行うことができる。この保守、点検などのとき、主軸ユニット6(6a,6b)を第1スライド機構10の前端位置(図7に示す位置)まで移動させるのが好ましく、このように移動させることによって、主軸ユニット6(6a,6b)の主軸チャック手段側が加工域42に大きく突出し、保守、点検などを一層容易に行うことができる。
【0070】
また、例えば、第1開閉カバー構造44の蓋部材46を取り外すことによって、図8及び図9に示すように、工具保持手段8(8a,8b)の上方が開放され、この開放された空間を利用して工具保持手段8(8a,8b)の保守、点検などを容易に行うことができる。尚、このとき、シャッター部材48を開状態にすることによって、工具保持手段8(8a,8b)の上方により広い空間が生じ、その作業性を向上させることができる。
【0071】
このNC旋盤2において、本体カバー72の上面開口86を含めて前上空間64を大きく開放したいときには、案内レール機構92に取り付けられた第1ストッパー手段102を取外し、取り外した状態において、第2開閉カバー構造62(前面カバー部材88及び後面カバー部材90)が図2に示す閉状態と図4に示す第2開状態との間で開閉操作される。
【0072】
この場合、第2開閉カバー構造62を第2開状態にすると、図4から理解される如く、本体カバー72の前面開口84から上面開口86にわたって大きく開放され、この前面開口84及び上面開口86を通して例えば次の作業を行うことができる。この第2の開放状態において、ワーク搬送装置112のローダ124を旋盤本体4の前上部空間64に位置付けることによって、このローダ124が本体カバー72の前面開口84及び上面開口86を通して外部に露呈し、これによって、この前面開口84及び上面開口86を通してローダ124のメンテナンスなどを容易に行うことができる。
【0073】
また、この第2の開状態において、第1開閉カバー構造44の蓋部材46を取り外すとともに、シャッター部材48を開状態にすることによって(このとき、ワーク搬送装置112のローダ124は、旋盤本体4の前上部空間64の外に位置付けられる)、図8に示すように、加工域42及び工具保持手段8(8a,8b)の上方が大きく開放され、この開放された空間を利用して主軸ユニット6(6a,6b)及び工具保持手段(8a,8b)の保守、点検などを一層容易に行うことができる。
【0074】
更に、第2開閉カバー構造62を第2開状態に保持し、且つ第1開閉カバー構造44を開状態に保持した状態(蓋部材46を取外し、シャッター部材48を開状態にした状態)において、主軸ユニット6(6a,6b)を第1スライド機構10の前端位置(図9に示す位置)まで移動させるのが好ましく、このように移動させることによって、主軸ユニット6(6a,6b)の保守、点検などが一層容易となる。
【0075】
加えて、この状態においては、第1スライド機構10からの主軸ユニット6(6a,6b)の取外しが容易となり、また取り外した後も、加工域42の上方空間であって、本体カバー72の前面開口84から上面開口86にわたっての前上部空間64は大きく開放されているので、取り外した主軸ユニット6(6a,6b)の旋盤本体4外への搬出も蓋部材46の取外しを除き、大きな部品の取外しを必要とせずに構内クレーン(図示せず)を用いて比較的容易に行うことができ、従来のものに比して主軸ユニット6(6a,6b)の交換作業を容易に行うことができる。
【0076】
以上、本発明に従う工作機械の一例としてのNC旋盤に適用して説明したが、本発明はこのようなNC旋盤に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。
【0077】
例えば、上述した実施形態では、一対の主軸ユニット及び一対の工具取付手段を備えた工作機械に適用して説明したが、このような構成に限定されず、一つの主軸ユニット及びこれに対応する一つの工具取付手段を備えた工作機械にも同様に適用することができる。
【0078】
また、例えば、上述した実施形態では、旋盤本体にワーク搬送装置を組み合わせたものに適用して説明したが、このような形態に限定されず、ワーク搬送装置と組み合わせない旋盤本体単独のものにも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
2 NC旋盤(工作機械)
4 旋盤本体(工作機械本体)
6,6a,6b 主軸ユニット
8,8a,8b 工具取付手段
10 第1スライド機構
24 第2スライド機構
42 加工域
44 第1開閉カバー構造
46 蓋部材
48 シャッター部材
62 第2開閉カバー構造
64 前上部空間
72 本体カバー
84 前面開口
86 上面開口
112 ワーク搬送装置
114 ワーク供給機構
116 ワーク排出機構
118 ワーク搬送機構
124 ローダ
142,142a,142b,142c カバーユニット
144 第1保護カバー部材
146 第2保護カバー部材
154 液体噴出手段





図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9