(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152251
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】基地局用シェアリング設備及びその設置方法
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/12 20060101AFI20231005BHJP
H04B 1/38 20150101ALI20231005BHJP
【FI】
H01Q1/12 C
H04B1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109716
(22)【出願日】2022-07-07
(62)【分割の表示】P 2022056040の分割
【原出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】591115006
【氏名又は名称】三菱地所株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000162593
【氏名又は名称】エクシオグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】村松 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】上根 祥
【テーマコード(参考)】
5J047
5K011
【Fターム(参考)】
5J047AA08
5J047AA09
5J047BC06
5J047BC07
5J047EF01
5K011AA05
5K011AA06
5K011BA04
5K011JA01
5K011KA18
(57)【要約】
【課題】建物の屋上または基壇部への基地局設置にあたり、複数のキャリアに対応できるとともに、省スペース化、低コスト化ならびにスピードアップを図ることができる基地局用シェアリング設備を提供する。
【解決手段】基地局用シェアリング設備は、建物の屋上または基壇部に設置される架台、第1分電盤および第1光成端箱と、建物のMDF室に設置される第2光成端箱と、第2光成端箱と第1光成端箱とを接続する光ケーブルと、建物の電気室またはキュービクルに設置される第2分電盤と第1分電盤とを接続する主電源ケーブルと、を備える。架台は、複数のキャリアのアンテナを取付可能な複数のポールを有する。第1光成端箱は、複数の光接続部を有し、光ケーブルの芯を複数の光接続部に分配する。第1分電盤は、複数の電源接続部を有し、主電源ケーブルから供給される電気を複数の電源接続部に分配する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋上または基壇部に設置される架台、第1分電盤および第1光成端箱と、
前記建物のMDF室に設置される第2光成端箱と、
前記第2光成端箱と前記第1光成端箱とを接続する光ケーブルであって、複数の芯を含む光ケーブルと、
前記建物の電気室またはキュービクルに設置される第2分電盤と前記第1分電盤とを接続する主電源ケーブルと、
を備え、
前記架台は、複数のキャリアのアンテナを取り付け可能な複数のポールを有し、
前記第1光成端箱は、前記複数のキャリアの無線装置から延びる通信ケーブルが接続可能な複数の光接続部を有し、前記光ケーブルの芯を前記複数の光接続部に分配し、
前記第1分電盤は、前記複数のキャリアの無線装置から延びる電源ケーブルが接続可能な複数の電源接続部を有し、前記主電源ケーブルから供給される電気を前記複数の電源接続部に分配する、
ことを特徴とする基地局用シェアリング設備。
【請求項2】
前記光ケーブルおよび主電源ケーブルは、前記建物内を通っている
ことを特徴とする請求項1に記載の基地局用シェアリング設備。
【請求項3】
前記第1分電盤および第1光成端箱は、一体の箱で構成されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の基地局用シェアリング設備。
【請求項4】
前記架台は、前記複数のキャリアの無線装置を各キャリアのアンテナに近づくように持ち上げて支持する装置類支持部をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の基地局用シェアリング設備。
【請求項5】
前記複数のポールは、前記架台において前記建物の屋上または基壇部に並んで配置されている、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の基地局用シェアリング設備。
【請求項6】
建物の屋上または基壇部に架台、第1分電盤および第1光成端箱を設置するステップと、
前記建物のMDF室に第2光成端箱を設置するステップと、
前記第2光成端箱と前記第1光成端箱とを複数の芯を含む光ケーブルで接続するステップと、
前記建物の電気室またはキュービクルに設置される第2分電盤と前記第1分電盤とを主電源ケーブルで接続するステップと、
を含み、
前記架台は、複数のキャリアのアンテナを取り付け可能な複数のポールを有し、
前記第1光成端箱は、前記複数のキャリアの無線装置から延びる通信ケーブルが接続可能な複数の光接続部を有し、前記光ケーブルの芯を前記複数の光接続部に分配し、
前記第1分電盤は、前記複数のキャリアの無線装置から延びる電源ケーブルが接続可能な複数の電源接続部を有し、前記電源ケーブルから供給される電気を前記複数の電源接続部に分配する、
ことを特徴とする基地局用シェアリング設備の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局用シェアリング設備及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話等の移動通信分野において、第5世代移動通信システム(5G)の導入が進められている。5Gは従来規格(4G)と比較し、高速大容量・低遅延・同時多数接続を可能にする次世代移動通信システムである。5Gでは、4Gと比較すると高周波数帯を用いるため、より多くの基地局やアンテナ設備が必要となるが、設置スペースの物理上・景観上の制約から、スピーディに整備する難易度が高いといわれてきた。
【0003】
たとえば、建物の屋上への基地局設置にあたり、複数の通信事業者(キャリア)が個別に基地局設置を行う場合には、屋上の設置スペースが限られていることに加えて、事前に別キャリアが設置をしていた場合、後発キャリアは特定の場所への電波の照射が物理的に困難になることで、エンドユーザの利便性を損なうことになる。また各キャリアが単独で置局することで、コストが膨大となってしまう。さらに、基地局設備に電力を引く場合には、建物の停電を伴う大規模電力工事などが必要になるケースがあり、必要に応じて、建物ごとに定められた年間の停電のスケジュールなどを加味して工事しなければならず、調整が煩雑となり、かつエンドユーザに対しても迅速なサービスを展開できない。
【0004】
特許文献1では、複数の通信事業者のアンテナおよび無線装置を「電柱」に取り付けるための取付具が提案されている。特許文献2では、複数の通信事業者のアンテナを「看板」の内部に配置する技術が提案されている。しかし、建物の屋上や基壇部への基地局設置については何も記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-208158号公報
【特許文献2】特開2016-208507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたものである。本発明の目的は、建物の屋上または基壇部への基地局設置にあたり、複数のキャリアに対応できるとともに、省スペース化、低コスト化ならびにスピードアップを図ることができる基地局用シェアリング設備及びその設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る基地局用シェアリング設備は、
建物の屋上または基壇部に設置される架台、第1分電盤および第1光成端箱と、
前記建物のMDF室に設置される第2光成端箱と、
前記第2光成端箱と前記第1光成端箱とを接続する光ケーブルであって、複数の芯を含む光ケーブルと、
前記建物の電気室またはキュービクルに設置される第2分電盤と前記第1分電盤とを接続する主電源ケーブルと、
を備え、
前記架台は、複数のキャリアのアンテナを取り付け可能な複数のポールを有し、
前記第1光成端箱は、前記複数のキャリアの無線装置から延びる通信ケーブルが接続可
能な複数の光接続部を有し、前記光ケーブルの芯を前記複数の光接続部に分配し、
前記第1分電盤は、前記複数のキャリアの無線装置から延びる電源ケーブルが接続可能な複数の電源接続部を有し、前記主電源ケーブルから供給される電気を前記複数の電源接続部に分配する。
【0008】
このような態様によれば、建物の屋上または基壇部に設置される架台が、複数のキャリアのアンテナを取り付け可能な複数のポールを有するため、建物の屋上または基壇部への基地局設置にあたり、複数のキャリアに対応できるとともに、複数のキャリアが個別に基地局設置を行う場合と比較し、屋上または基壇部での省スペース化を図ることができる。また、複数の芯を含む光ケーブルが建物のMDF室から屋上または基壇部へと引き上げられ、第1光成端箱にて、当該光ケーブルの芯が複数のキャリアの無線装置に対して分配されるため、MDF室から屋上または基壇部までの光ケーブルの配線/配管の工事は一度でよく、各キャリアが個別に配線/配管の工事を行う必要がなくなる。これにより、低コスト化、スピードアップを図ることができる。また、光ケーブルについて配線/配管の省スペース化を図ることができる。さらに、主電源ケーブルが建物の電気室またはキュービクルから屋上または基壇部へと引き上げられ、第1分電盤にて、当該主電源ケーブルから供給される電気が複数のキャリアの無線装置に対して分配されるため、電気室またはキュービクルから屋上または基壇部までの主電源ケーブルの配線/配管の工事は一度でよく、各キャリアが個別に配線/配管の工事を行う必要がなくなる。これにより、さらなる低コスト化、スピードアップを図ることができる。また、主電源ケーブルについて配線/配管の省スペース化を図ることができる。基地局用シェアリング設備は、たとえば国内のキャリア4社のうち当初は3社からの利用の要望があったとしても、残り1社からの利用の要望が後発で来ることも踏まえて、架台の仕様(寸法や強度(耐荷重)など)、ポールの数、第1光成端箱における光接続部の数、第1分電盤における電源接続部の数、光ケーブルの芯の本数、主電源ケーブルの仕様(送電容量など)などが、事前に4社に対応するように選定されて施工されてもよいし、実際に利用の要望があった3社だけに対応するように選定されて施工されてもよい。事前に4社に対応するように選定されて施工された場合、後発で要望の出てきたキャリアに関して、既に必要な工事は完了しているため、より低コスト化とスピードアップを実現することができる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る基地局用シェアリング設備は、第1の態様に係る基地局用シェアリング設備であって、
前記光ケーブルおよび主電源ケーブルは、前記建物内を通っている。
【0010】
光ケーブルおよび主電源ケーブルが建物内を通っている場合、古い建物ほど配線/配管が容易ではないが、このような態様によれば、光ケーブルおよび主電源ケーブルの配線/配管の工事が一度でよいため、各キャリアが個別に配線/配管の工事を行う場合に比べて、大幅な低コスト化、スピードアップを図ることができる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る基地局用シェアリング設備は、第1または2の態様に係る基地局用シェアリング設備であって、
前記第1分電盤および第1光成端箱は、一体の箱で構成されている。
【0012】
このような態様によれば、第1分電盤および第1光成端箱が分かれて設置される場合に比べて、省スペース化を図ることができる。また、第1分電盤の電源接続部と第1光成端箱の光接続部とが互いに近くに配置されることになるため、各キャリアの作業員が屋上または基壇部にて設置作業を行う際に、光ケーブルの接続作業と電源ケーブルの接続作業を同時に行うことが可能となり、作業効率が向上する。
【0013】
本発明の第4の態様に係る基地局用シェアリング設備は、第1~3のいずれかの態様に
係る基地局用シェアリング設備であって、
前記架台は、前記複数のキャリアの無線装置を各キャリアのアンテナに近づくように持ち上げて支持する装置類支持部をさらに有する。
【0014】
通常、アンテナと無線装置とは同軸ケーブルで接続されるが、このような態様によれば、ポールに取付られたアンテナと無線装置との間の距離が短くなることで、同軸ケーブルの長さを短くすることができる。これにより、同軸ケーブルでの通信ロスが軽減され、より良好な通信が可能となる。
【0015】
本発明の第5の態様に係る基地局用シェアリング設備は、第1~4のいずれかの態様に係る基地局用シェアリング設備であって、
前記複数のポールは、前記架台において前記屋上または基壇部の端部に並んで配置されている。
【0016】
このような態様によれば、各ポールにキャリアごとのアンテナが取り付けられると、各キャリアのアンテナが、建物の屋上または基壇部の端部に並んで配置されることにより、いずれのアンテナも他のアンテナの陰に隠れることがなくなる。これにより、後発のキャリアであっても任意の向きに電波を照射することが可能となり、特定の場所への電波の照射が物理的に困難になるというような問題は生じなくなる。
【0017】
本発明の第6の態様に係る基地局用シェアリング設備の設置方法は、
建物の屋上または基壇部に架台、第1分電盤および第1光成端箱を設置するステップと、
前記建物のMDF室に第2光成端箱を設置するステップと、
前記第2光成端箱と前記第1光成端箱とを複数の芯を含む光ケーブルで接続するステップと、
前記建物の電気室またはキュービクルに設置される第2分電盤と前記第1分電盤とを主電源ケーブルで接続するステップと、
を含み、
前記架台は、複数のキャリアのアンテナを取り付け可能な複数のポールを有し、
前記第1光成端箱は、前記複数のキャリアの無線装置から延びる通信ケーブルが接続可能な複数の光接続部を有し、前記光ケーブルの芯を前記複数の光接続部に分配し、
前記第1分電盤は、前記複数のキャリアの無線装置から延びる電源ケーブルが接続可能な複数の電源接続部を有し、前記電源ケーブルから供給される電気を前記複数の電源接続部に分配する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、建物の屋上または基壇部への基地局設置にあたり、複数のキャリアに対応できるとともに、省スペース化、低コスト化ならびにスピードアップを図ることができる基地局用シェアリング設備を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、一実施の形態に係る基地局用シェアリング設備の概略的な構成を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態に係る基地局用シェアリング設備において屋上または基壇部に設置された架台および分岐箱を拡大して示す図である。
【
図3】
図3は、一実施の形態に係る架台の平面図である。
【
図4】
図4は、一実施の形態に係る架台の側面図である。
【
図5】
図5は、一実施の形態に係る架台の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、同一符号の構成要素の詳しい説明は繰り返さない。また、各図においては、図示の理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0021】
以下に説明する実施の形態では、「建物」としてビルを例に説明することがあるが、「建物」は、屋上または基壇部にアンテナを設置できるスペースを有する建築物であれば、ビルに限られるものではなく、たとえばマンション、学校、病院、役所、駅、ホテル、美術館、商業施設などであってもよい。
【0022】
(基地局用シェアリング設備の構成)
図1は、一実施の形態に係る基地局用シェアリング設備10の概略的な構成を示す図である。
図2は、一実施の形態に係る基地局用シェアリング設備10において屋上または基壇部31に設置された架台20および分岐箱11を拡大して示す図である。
【0023】
図1および
図2に示すように、基地局用シェアリング設備10は、建物30の屋上または基壇部31に設置される架台20および分岐箱11と、建物30のMDF(Main Distribution Frame)室に設置される第2光成端箱18と、第2光成端箱18と分岐箱11内
の第1光成端箱13とを接続する光ケーブル16であって、複数の芯を有する光ケーブル16と、建物30の電気室またはキュービクル35に設置される第2分電盤17と分岐箱11内の第1分電盤12とを接続する主電源ケーブル15と、を有している。
【0024】
このうち架台20は、複数の通信事業者(キャリア)のアンテナ41を取り付け可能な複数のポール21と、装置類支持部22とを有している。図示された例では、架台20には、4本のポール21が設けられており、4社のキャリアのアンテナ41をキャリアごとに取り付け可能に構成されているが、ポール21の数は4本に限定されるものでなく、2本または3本であってもよいし、5本以上であってもよい。また、図示は省略するが、1本のポールに複数のキャリアのアンテナ41が取り付けられてもよいし、1つのキャリアのアンテナ41が複数のポールに取り付けられてもよい。
図1に示すように、架台20は、コンクリート基礎32を介して、建物30の屋上または基壇部31に設置されてもよい。なお、
図1では、装置類支持部22の図示が省略されている。
【0025】
図3は、一実施の形態に係る架台20の平面図であり、
図4は、その側面図であり、
図5は、その正面図である。
【0026】
図2~5に示すように、複数のポール21は、架台20において建物30の屋上または基壇部31に並んで配置されていてもよい。具体的には、たとえば、複数のポール21は、建物30の屋上または基壇部31の一辺に沿って横に一列に並んで配置されていてもよいし、建物30の屋上または基壇部31の隅(90度折れ曲がったところ)に沿って一列に並んで配置されていてもよい。この場合、各ポール21にキャリアごとのアンテナ41が取り付けられると、各キャリアのアンテナ41が屋上または基壇部31の端部に並んで配置されることになるため、
図2に示すように、いずれのアンテナ41も他のアンテナの陰に隠れるようなことがなくなる。したがって、後発のキャリアであっても任意の向きに電波を照射することが可能であり、特定の場所への電波の照射が物理的に困難になるというような問題は生じなくなる。
【0027】
各ポール21の仕様(たとえば強度(耐荷重)、寸法、材質、腕の有無など)は、各キャリアの建築基準及び電波防護指針を満たすように適宜設計され得る。また、架台20の大きさおよび隣り合う2つのポール21の間隔は、屋上または基壇部31にあらかじめ設
置されている構造物(たとえば柱)の間隔やクリアランスを考慮するとともに、各キャリアのアンテナ41の電波が物理干渉せず、かつ、論理的な観点からも隣の電波が邪魔にならないよう、各キャリアのアンテナ41の距離および離隔を含めて検討することで、効率的な照射を実現できるバランスとなるように適宜設計され得る。
【0028】
装置類支持部22は、複数のキャリアの無線装置42を各キャリアのアンテナ41に近づくように持ち上げて支持するように構成されている。通常、アンテナ41と無線装置42とは同軸ケーブル51で接続されるところ、装置類支持部22が無線装置42をアンテナ41に近づくように持ち上げて支持することにより、アンテナ41と無線装置42との間の距離が短くなるため、同軸ケーブル51の長さを短くすることできる。これにより、同軸ケーブル51での通信ロスが軽減され、より良好な通信が可能となる。
【0029】
図1に示すように、分岐箱11は、第1分電盤12と第1光成端箱13とを有している。図示された例では、分岐箱11は、架台20に設置されているが、これに限定されるものではなく、架台20の外に設置されていてもよい。分岐箱11が架台20に設置されている場合には、架台20の外に設置されている場合に比べて省スペース化を図ることができる。
【0030】
図1に示すように、第1光成端箱13は、複数のキャリアの無線装置42から延びる通信ケーブル53が接続可能な複数の光接続部13aを有しており、光ケーブル16の芯を複数の光接続部13aに分配するように構成されている。
【0031】
第1分電盤12は、複数のキャリアの無線装置42から延びる電源ケーブル52が接続可能な複数の電源接続部12aを有しており、主電源ケーブル15から供給される電気を複数の電源接続部12aに分配するように構成されている。
【0032】
なお、図示された例では、第1分電盤12および第1光成端箱13は、一体の箱(分岐箱11)で構成されていたが、これに限定されるものではなく、第1分電盤12と第1光成端箱13とが分かれて構成されていてもよい。第1分電盤12および第1光成端箱13が一体の箱で構成されている場合には、第1分電盤12と第1光成端箱13とが分かれて構成されている場合に比べて、省スペース化を図ることができる。また、第1分電盤12および第1光成端箱13が一体の箱で構成されている場合には、第1分電盤12の電源接続部12aと第1光成端箱13の光接続部13aとが互いに近くに配置されることになるため、各キャリアの作業員が屋上または基壇部31にて設置作業を行う際に、通信ケーブル53の接続作業と電源ケーブル52の接続作業を同時に行うことが可能となり、作業効率が向上する。
【0033】
光ケーブル16は、一端が第1光成端箱13に接続されており、他端が建物30のMDF室33に配置された第2光成端箱18に接続されている。MDF室33内において、第2光成端箱18は、複数のキャリアの通信ケーブルを介してPD(Premise Distribution)盤34と接続されている。複数の芯を含む光ケーブル16が、建物30のMDF室33から屋上または基壇部31へと引き上げられ、第1光成端箱13にて、当該光ケーブル16の芯が複数のキャリアの無線装置42に対して分配されることで、MDF室33から屋上または基壇部31までの光ケーブル16の配線/配管の工事は一度でよくなり、各キャリアが個別に配線/配管の工事を行う必要がなくなる。また、光ケーブル16について配線/配管の省スペース化を図ることができる。
【0034】
主電源ケーブル15は、一端が第1分電盤12に接続されており、他端が建物30の電気室またはキュービクル35に配置された第2分電盤17にブレーカ19を介して接続されている。主電源ケーブル15が、建物30の電気室またはキュービクル35から屋上ま
たは基壇部31へと引き上げられ、第1分電盤12にて、当該主電源ケーブル15から供給される電気が複数のキャリアの無線装置42に対して分配されることで、電気室またはキュービクル35から屋上または基壇部31までの主電源ケーブル15の配線/配管の工事は一度でよくなり、各キャリアが個別に配線/配管の工事を行う必要がなくなる。また、主電源ケーブル15について配線/配管の省スペース化を図ることができる。
【0035】
図1に示すように、光ケーブル16および主電源ケーブル15は、建物30内を通っていてもよい。光ケーブル16および主電源ケーブル15が建物30内を通っている場合には、古い建物ほど配線/配管が容易ではないが、上述したように、本実施の形態によれば、光ケーブル16および主電源ケーブル15の配線/配管の工事が一度でよいため、各キャリアが個別に配線/配管の工事を行う場合に比べて、大幅な低コスト化、スピードアップを図ることが可能である。
【0036】
(基地局用シェアリング設備の設置方法)
次に、基地局用シェアリング設備10の設置方法の一例を説明する。
【0037】
まず、
図1に示すように、建物30の屋上または基壇部31に架台20と分岐箱11(第1分電盤12および第1光成端箱13)を設置するとともに、建物30のMDF室33に第2光成端箱18を設置する(ステップS11)。
【0038】
次いで、主電源ケーブル15を、建物30の電気室またはキュービクル35から屋上または基壇部31まで延びるように設置するとともに、複数の芯を含む光ケーブル16を、建物30のMDF室33から屋上または基壇部31まで延びるように設置する(ステップS12)。光ケーブル16および主電源ケーブル15は、建物30内を通るように設置されてもよい。
【0039】
なお、ステップS11とS12の工程は順序が逆であってもよいし、同時並行で行われてもよい。
【0040】
次に、MDF室33に設置された第2光成端箱18と屋上または基壇部31に設置された第1光成端箱13とを光ケーブル16で接続するとともに、電気室またはキュービクル35に設置された第2分電盤17と屋上または基壇部31に設置された第1分電盤12とを主電源ケーブル15で接続する(ステップS13)。光ケーブル16の芯は、第1光成端箱13にて複数の光接続部13aに分配される。また、主電源ケーブル15から供給される電気は、第1分電盤12にて複数の電源接続部12aに分配される。
【0041】
このようにして、基地局用シェアリング設備10を建物30に設置することができる。
【0042】
(基地局用シェアリング設備の使用方法)
基地局用シェアリング設備10が建物30に設置された後、各キャリアの作業員は、建物30の屋上または基壇部31において、アンテナ41を架台20のポール21に取り付けるとともに、無線装置42を装置類支持部22に取り付ける。そして、アンテナ41と無線装置42とを同軸ケーブル51で接続する。また、無線装置42から延びる通信ケーブル53を第1光成端箱13の光接続部13aに接続するとともに、無線装置42から延びる電源ケーブル52を第1分電盤12の電源接続部12aに接続する。また、各キャリアの作業員は、MDF室33において、PD盤34と第2光成端箱18とを通信ケーブルで接続する。
【0043】
このようにして、屋上または基壇部31とMDF室33での作業だけで、各キャリアのアンテナ41および無線装置42を建物30の屋上または基壇部31に設置して使用する
ことが可能となる。建物30にあらかじめ設置された基地局用シェアリング設備10を利用するため、各キャリアが個別に置局するコストが不要となり、かつ、各キャリアが個別に建物30の配線/配管工事を行う必要もなくなるため、エンドユーザに対しても迅速なサービスを展開できるようになる。また、アンテナ41および無線装置42が屋上または基壇部31に設置されることで、塔および電柱に設置される場合に比べて、設置および保守が容易となり、安全性も確保される。また、アンテナ41および無線装置42が設置される屋上または基壇部31は、建物30において一般の方が出入りしない場所であるため、総務省の定める電波防護指針を遵守することができる。
【0044】
以上のような本実施の形態によれば、建物30の屋上または基壇部31に設置される架台20が、複数のキャリアのアンテナ41を取り付け可能な複数のポール21を有するため、建物30の屋上または基壇部31への基地局設置にあたり、複数のキャリアに対応できるとともに、複数のキャリアが個別に基地局設置を行う場合と比較し、屋上または基壇部31での省スペース化を図ることができる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、複数の芯を含む光ケーブル16が建物30のMDF室33から屋上または基壇部31へと引き上げられ、第1光成端箱13にて、当該光ケーブル16の芯が複数のキャリアの無線装置42に対して分配されるため、MDF室33から屋上または基壇部31までの光ケーブル16の配線/配管の工事は一度でよく、各キャリアが個別に配線/配管の工事を行う必要がなくなる。これにより、低コスト化、スピードアップを図ることができる。また、光ケーブル16について配線/配管の省スペースを図ることができる。
【0046】
さらに、本実施の形態によれば、主電源ケーブル15が建物30の電気室またはキュービクル35から屋上または基壇部31へと引き上げられ、第1分電盤12にて、当該主電源ケーブル15から供給される電気が複数のキャリアの無線装置42に対して分配されるため、電気室またはキュービクル35から屋上または基壇部31までの主電源ケーブル15の配線/配管の工事は一度でよく、各キャリアが個別に配線/配管の工事を行う必要がなくなる。これにより、さらなる低コスト化、スピードアップを図ることができる。また、主電源ケーブル15について配線/配管の省スペース化を図ることができる。
【0047】
また、光ケーブル16および主電源ケーブル15が建物30内を通っている場合には、古い建物ほど配線/配管が容易ではないが、本実施の形態によれば、光ケーブル16および主電源ケーブル15の配線/配管の工事が一度でよいため、各キャリアが個別に配線/配管の工事を行う場合に比べて、大幅な低コスト化、スピードアップを図ることができる。
【0048】
また、本実施の形態によれば、第1分電盤12および第1光成端箱13が一体の箱(分岐箱11)で構成されているため、第1分電盤12および第1光成端箱13が分かれて設置される場合に比べて、省スペース化を図ることができる。また、第1分電盤12の電源接続部12aと第1光成端箱13の光接続部13aとが互いに近くに配置されることになるため、各キャリアの作業員が屋上または基壇部31にて設置作業を行う際に、通信ケーブル53の接続作業と電源ケーブル52の接続作業を同時に行うことが可能となり、作業効率が向上する。
【0049】
また、通常、アンテナ41と無線装置42とは同軸ケーブル51で接続されるが、本実施の形態によれば、架台20に設けられた装置類支持部22が、複数のキャリアの無線装置42を各キャリアのアンテナ41に近づくように持ち上げて支持するため、アンテナ41と無線装置42との間の距離が短くなり、同軸ケーブル51の長さを短くすることができる。これにより、同軸ケーブル51での通信ロスが軽減され、より良好な通信が可能と
なる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、架台20において、複数のポール21が一列に並んで配置されているため、各ポール21にキャリアごとのアンテナ41が取り付けられると、各キャリアのアンテナが一列に並んで配置されることになり、いずれのアンテナも他のアンテナの陰に隠れることがなくなる。これにより、後発のキャリアであっても任意の向きに電波を照射することが可能となり、特定の場所への電波の照射が物理的に困難になるというような問題は生じなくなる。
【0051】
なお、上述した実施の形態の記載ならびに図面の開示は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した実施の形態の記載または図面の開示によって特許請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。上述した実施の形態の構成要素は、発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 基地局用シェアリング設備
11 分岐箱
12 第1分電盤
13 第1光成端箱
15 主電源ケーブル
16 光ケーブル
17 第2分電盤
18 第2光成端箱
20 架台
21 ポール
22 装置類支持部
30 建物
31 屋上または基壇部
33 MDF室
34 PD盤
35 電気室またはキュービクル
51 同軸ケーブル
52 電源ケーブル
53 通信ケーブル