(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153521
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ガスマニホールド
(51)【国際特許分類】
F23K 5/00 20060101AFI20231011BHJP
F23D 14/08 20060101ALI20231011BHJP
F16J 15/14 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
F23K5/00 301B
F23D14/08 H
F16J15/14 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062843
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】志知 和幸
【テーマコード(参考)】
3K017
3K068
【Fターム(参考)】
3K017AB02
3K017AC02
3K068AA01
3K068BA01
3K068CA07
(57)【要約】
【課題】片面が開放された複数のガス室13
2,13
3と、隣接するガス室の間の隔壁部14と、各ガス室を隔壁部以外の部分で囲う周壁部15とを有するマニホールド本体1と、マニホールド本体の片面に、液状ガスケット3を介して隔壁部及び周壁部の端面に重なるように取付けられる蓋体2とを備え、各ガス室の片面が蓋体で気密に覆われるようにしたガスマニホールドにおいて、余剰の液状ガスケットがガス室内にはみ出さないようにして、且つ、隔壁部及び周壁部の端面と蓋体との間のシール性を十分に確保できるようにする。
【解決手段】蓋体2の内面に、隔壁部14及び周壁部15の端部が挿入される、隔壁部14及び周壁部15の肉厚より幅広の凹部22を設ける。隔壁部14及び周壁部15の端面と当該端面に対向する凹部22の内底面221との間に液状ガスケット3が挟まれ、隔壁部14及び周壁部15の端部外側に位置する凹部22内の部分が液状ガスケット3の溜り部222として機能する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面が開放された複数のガス室と、隣接するガス室の間の隔壁部と、各ガス室を隔壁部以外の部分で囲う周壁部とを有するマニホールド本体と、マニホールド本体の片面に、液状ガスケットを介して隔壁部及び周壁部の端面に重なるように取付けられる蓋体とを備え、各ガス室の片面が蓋体で気密に覆われるようにしたガスマニホールドにおいて、
蓋体の内面に、隔壁部及び周壁部の端部が挿入される、隔壁部及び周壁部の肉厚より幅広の凹部が設けられ、隔壁部及び周壁部の端面と当該端面に対向する凹部の内底面との間に液状ガスケットが挟まれ、隔壁部及び周壁部の端部外側に位置する凹部内の部分が液状ガスケットの溜り部として機能することを特徴とするガスマニホールド。
【請求項2】
前記マニホールド本体はダイカスト品であり、前記蓋体は板金のプレス成形品であることを特徴とする請求項1記載のガスマニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として複数のバーナに燃料ガスを分配するために用いられるガスマニホールドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスマニホールドとして、片面が開放された複数のガス室と、各ガス室の間の隔壁部と、各ガス室を隔壁部以外の部分で囲う周壁部とを有するマニホールド本体と、マニホールド本体の片面に、ガスケットを介して隔壁部及び周壁部の端面に重なるように取付けられる蓋体とを備え、各ガス室の片面が蓋体で気密に覆われるようにしたものは知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記従来例のものにおいては、ゴム製の成形品から成るガスケットを用いているが、コストダウンのために液状ガスケットを用いることが望まれている。ここで、2つの部材を液状ガスケットを用いて気密に接合する技術として、一方の部材の他方の部材に対向する端面の肉厚方向両側部に、他方の部材から離れる方向に傾斜した斜面部を形成して、一方の部材の端面と他方の部材との間に、斜面部によって液状ガスケットの溜り部を確保したものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
この技術をガスマニホールドに適用して、マニホールド本体の隔壁部及び周壁部の蓋体に対向する端面の肉厚方向両側部に、蓋体から離れる方向に傾斜した斜面部を形成することが考えられる。これによれば、隔壁部及び周壁部の端面の斜面部以外の部分と蓋体との間からはみ出す余剰の液状ガスケットが斜面部によって確保される溜り部に受け入れられる。そのため、余剰の液状ガスケットがガス室内にはみ出すことがなく、余剰の液状ガスケットに起因する異物がガス室に浮遊することで発生する目詰まり等を防止することができる。
【0005】
然し、このものでは、隔壁部及び周壁部の端面の肉厚方向幅のうち蓋体との間のシール性を確保できる部分が、斜面部を除く中央部分に限定されてしまう。その結果、隔壁部及び周壁部の端面と蓋体との間のシール性を十分に確保することが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-2594号公報
【特許文献2】特開平11-173424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、余剰の液状ガスケットがガス室内にはみ出さないようにして、且つ、隔壁部及び周壁部の端面と蓋体との間のシール性を十分に確保できるようにしたガスマニホールドを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、片面が開放された複数のガス室と、隣接するガス室の間の隔壁部と、各ガス室を隔壁部以外の部分で囲う周壁部とを有するマニホールド本体と、マニホールド本体の片面に、液状ガスケットを介して隔壁部及び周壁部の端面に重なるように取付けられる蓋体とを備え、各ガス室の片面が蓋体で気密に覆われるようにしたガスマニホールドにおいて、蓋体の内面に、前記隔壁部及び前記周壁部の端部が挿入される、隔壁部及び周壁部の肉厚より幅広の凹部が設けられ、隔壁部及び周壁部の端面と当該端面に対向する凹部の内底面との間に液状ガスケットが挟まれ、隔壁部及び周壁部の端部外側に位置する凹部内の部分が液状ガスケットの溜り部として機能することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、隔壁部及び周壁部の端面に、液状ガスケットの溜り部となる斜面部を形成せずに済む。従って、隔壁部及び周壁部の端面の肉厚方向幅の全てが蓋体との間のシール性を確保できる部分になる。その結果、液状ガスケットを用いても、隔壁部及び周壁部の端面と蓋体との間のシール性を十分に確保できる。また、凹部内に、隔壁部及び周壁部の端面と蓋体との間からはみ出す余剰の液状ガスケットを受け入れる溜り部が確保されるため、余剰の液状ガスケットがガス室内にはみ出すことはない。従って、余剰の液状ガスケットに起因する異物がガス室に浮遊することで発生する目詰まり等を防止することができる。
【0010】
また、本発明において、一層のコストダウンを図るには、マニホールド本体をダイカスト品とし、蓋体を板金のプレス成形品とすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態のガスマニホールドの斜め後方から見た斜視図。
【
図2】実施形態のガスマニホールドの斜め前方から見た斜視図。
【
図3】実施形態のガスマニホールドの構成要素であるマニホールド本体の斜め前方から見た斜視図。
【
図4】
図3のIV―IV線で切断した蓋板を取付けた状態の切断平面図。
【
図5】
図3のV―V線で切断した蓋板を取付けた状態の切断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図5に示す本発明の実施形態のガスマニホールドAは、横方向に並設した複数のバーナに燃料ガスを分配するものである。バーナの数は任意であるが、本実施形態では12個としている。バーナは、図示しないが、前後方向に長手であって、上端に、理論空燃比よりも燃料濃度が希薄な淡混合気を噴出する淡炎口と、淡炎口の横方向両外側に位置し、淡混合気よりも燃料濃度が濃い濃混合気を噴出する濃炎口とを有し、下部前端に、淡炎口用の淡流入口と、その上方に位置する濃炎口用の濃流入口とを有する公知の濃淡バーナで構成されている。
【0013】
ガスマニホールドAは、ダイカスト品から成るマニホールド本体1と、マニホールド本体1の片面たる前面に取付けた、板金のプレス成形品から成る蓋体2とを備えている。マニホールド本体1の後面には、各バーナの淡流入口と濃流入口とに向けて燃料ガスを噴射する淡ノズル11Aと濃ノズル11Bとをバーナの並設方向たる横方向の間隔を存して夫々バーナと同数、即ち、12個突設されている。また、マニホールド本体1の横方向片側に、下方にのびる垂下部1aを設けて、垂下部1aの下端部に、後方に開口する流入ポート12を形成している。
【0014】
また、マニホールド本体1は、垂下部1aに位置する、流入ポート12に連通する第1ガス室13
1と、
図3で右から数えて1番目乃至4番目の淡ノズル11A及び濃ノズル11Bに連通する第2ガス室13
2と、
図3で右から数えて5番目乃至12番目の淡ノズル11A及び濃ノズル11Bに連通する第3ガス室13
3とを有している。これら第1乃至第3の各ガス室13
1,13
2,13
3の片面たる前面は開放されている。また、マニホールド本体1の前面には、隣接するガス室の間、即ち、第1と第2の両ガス室13
1,13
2の間と、第1と第3の両ガス室13
1,13
3の間と、第2と第3の両ガス室13
2,13
3の間の隔壁部14と、第1乃至第3の各ガス室13
1,13
2,13
3を隔壁部14以外の部分で囲う周壁部15とが突設されている。そして、マニホールド本体1の前面に、シリコーンシール剤等から成る液状ガスケット3(
図4、
図5参照)を介してこれら隔壁部14及び周壁部15の前端面に重なるように蓋体2がネジ21により締結されている。これにより、第1乃至第3の各ガス室13
1,13
2,13
3の前面が蓋体2で気密に覆われる。
【0015】
更に、マニホールド本体1には、第1ガス室131から第2ガス室132に燃料ガスを供給する第1電磁弁41と、第1ガス室131から第3ガス室133に燃料ガスを供給する第2電磁弁42とが取付けられている。マニホールド本体1の第2と第3の各ガス室132,133の下端近傍に臨む部分には、第1と第2の各電磁弁41,42の弁孔41a,42aが形成されている。
【0016】
蓋体2の内面には、隔壁部14及び周壁部15の前端部が挿入される、隔壁部14及び周壁部15の肉厚より幅広の凹部22が設けられている。本実施形態では、板金のプレス加工で凹部22を形成している。尚、蓋体2の外面には、
図2に示す如く、凹部22のプレス加工で前方に膨出する凸条22aが形成されることになる。
図4、
図5に示す如く、液状ガスケット3が隔壁部14及び周壁部15の前端面と当該前端面に対向する凹部22の内底面221との間に挟まれる。そして、隔壁部14及び周壁部15の前端部外側に位置する凹部22の部分が液状ガスケット3の溜り部222として機能するようにしている。
【0017】
これによれば、隔壁部14及び周壁部15の前端面に、液状ガスケット3の溜り部となる斜面部を形成せずに済む。従って、隔壁部14及び周壁部15の前端面の肉厚方向幅の全てが蓋体2との間のシール性を確保できる部分になる。その結果、液状ガスケット3を用いても、隔壁部14及び周壁部15の前端面と蓋体2との間のシール性を十分に確保できる。また、凹部22内に、隔壁部14及び周壁部15の前端面と蓋体2との間からはみ出す余剰の液状ガスケット3を受け入れる溜り部222が確保されるため、余剰の液状ガスケット3が第1乃至第3の各ガス室131,132,133内にはみ出すことはない。従って、余剰の液状ガスケット3に起因する異物が各ガス室131,132,133に浮遊することで発生する淡ノズル11Aや濃ノズル11Bの目詰まりや電磁弁41、42の閉弁不良等を防止することができる。
【0018】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、蓋体2を板金のプレス成形品としているが、蓋体2をダイカスト品とすることも可能である。この場合は、蓋体2の内面に凹溝を成形し、この凹溝で隔壁部14及び周壁部15の端部が挿入される凹部を構成すればよい。但し蓋体2を板金のプレス成形品とすれば、コストダウンを図ることができ有利である。また、上記実施形態では、マニホールド本体1に淡ノズル11Aや濃ノズル11Bから成るノズルを設けているが、蓋体2にノズルを設けることも可能である。
【符号の説明】
【0019】
A…ガスマニホールド、1…マニホールド本体、131,132,133…ガス室、14…隔壁部、15…周壁部、2…蓋体、22…凹部、221…凹部の内底面、222…溜り部、3…液状ガスケット。